説明

アルミ−紙系廃棄物の資源化システム

【課題】アルミ及びパルプの回収精度が高く、当該回収処理に伴う排水処理が不要となるアルミ−紙系廃棄物の資源化システムの提供を目的とする。
【解決手段】パルプスラリーとアルミ等を分離するためのパルプ分離装置と、分離されたアルミ等からさらにパルプ分を回収するための洗浄装置と、洗浄されたアルミ等から脱水するための脱水装置と、分離されたパルプスラリーの濃縮装置と、濃縮されたパルプスラリーからパルプシートを得るためのパルプシート製造装置とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料の包装容器、食品(菓子等を含む)の包装材、医薬品の包装材等に広く使用されている、紙にアルミ箔を積層した包装材、又は紙にアルミ箔と樹脂フィルムを積層した包装材(以下、アルミ−紙系廃棄物と総称する)の廃棄物を資源化するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からパルパー装置にて故紙からパルプ分を回収し、リサイクルする方法は公知である。
例えば特許文献1は、アルミ,プラスチック,紙の複合材料をパルパーに投入し、パルプを回収した残部のアルミ,プラスチック分を沈降タンクを用いて精製する技術を開示するが、工程が複雑でパルプの回収やアルミの回収が不充分であった。
また、処理工程から発生する排水の処理装置も必要であった。
特許文献2は、液体カートン廃棄物をパルパーに投入し、パルプを除去した残りをガス化してアルミを回収する技術を開示するが、パルプの回収が不充分であり、アルミ側にパルプが残っているとガス化する際にパルプ分が炭化し、回収されるアルミの品質が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−65883号公報
【特許文献2】特表2002−522221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アルミ及びパルプの回収精度が高く、当該回収処理に伴う排水処理が不要となるアルミ−紙系廃棄物の資源化システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るアルミ−紙系廃棄物の資源化システムは、パルプスラリーとアルミ等を分離するためのパルプ分離装置と、分離されたアルミ等からさらにパルプ分を回収するための洗浄装置と、洗浄されたアルミ等から脱水するための脱水装置と、分離されたパルプスラリーの濃縮装置と、濃縮されたパルプスラリーからパルプシートを得るためのパルプシート製造装置とを備えたことを特徴とする。
ここで、アルミ−紙系廃棄物と表現したのは、飲料の包装容器(パック)、菓子類や食品の包装材、医薬品等の包装材には紙にアルミ箔を積層したものの他に樹脂フィルムにアルミ箔を積層又は、蒸着したものに紙を積層したものも広く使用されている。
これらの包装材からパルパーにてパルプ分を回収する際にパルプ分の回収が不充分であると回収されたアルミと樹脂フィルムとの積層体を乾留によりガス化する際にパルプ分が炭化したまま残ってしまい、回収されるアルミの純度が低下する問題が生じる。
そこで、本発明は複合包装材からパルプを充分に回収できるようにした点に特徴があり、アルミに樹脂フィルムがそのまま積層されたものも含める趣旨でアルミ等と表現する。
【0006】
さらに本発明にあっては、前記脱水装置、パルプスラリーの濃縮装置及びパルプシート製造装置から回収された水を前記パルプ分離及び洗浄装置に再利用することで系外に排水しないことを特徴とする。
このように脱水装置やパルプスラリーの濃縮装置及びパルプシート製造装置等、本システムの系から発生する水をそのままパルプ分離装置、洗浄装置に使用する水に用いることができるので完全なクローズドシステムになり、排水処理装置が不要となる。
なお、パルプシートには水分が20〜40%含まれているので系内にて不足する水は補給する。
【0007】
本発明にあって、パルプ分を精度高く回収することでその後のアルミ等の乾留処理にて炭化物を低減できることから、前記パルプ分離装置は処理槽を有し、当該処理槽内に撹拌羽根と、相対的に孔の大きい大孔プレート及びその外側に又は下に孔の小さい小孔プレートを重ねた二重スクリーンであるのが好ましく、前記洗浄装置は、パルプは通過するがアルミ等は通過しないスリットからなる洗浄スクリーンであるのが好ましい。
このようにすると、アルミ資源の回収が容易になり、前記回収されたアルミ等を乾留処理し、ガス化成分を除去するための乾留装置を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、包装材から効率よくパルプを回収でき、しかも系外に放出される排水がないので、従来コストアップの大きな要因であった排水処理が不要である。
また、包装材からパルプ分が除去された残りのアルミ箔又はアルミ箔と樹脂フィルム(シート)との積層体は還元条件下で、アルミが溶融しない200〜620℃以下の温度でガス化することで樹脂分が除去され、純度の高い金属アルミを資源として回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る包装材からの資源回収システムの構成例を示す。
【図2】パルプ分離装置の構造例を示す。
【図3】洗浄装置の構造例を示す。
【図4】(a)は回収したアルミ箔と樹脂の混合物の外観写真を示し、(b)は回収したパルプ分の外観写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明に係る資源回収システムの構成例を示す。
パルプ分離装置10は処理槽11の上部に設けた包装材の廃棄物投入口からこの処理槽11に被処理物Mを投入する。
処理槽11の底部には撹拌羽根13と二重スクリーン12を有する。
ここで、撹拌羽根13はモーターで回転し、分離されたパルプ分はスラー状態で二重スクリーン12を通過する。
この底部の平面図を図2に示す。
底部に、孔径約10〜30mm(試験機は20mm)の孔Hを複数有するプレート状の大孔プレート12aの下に、1〜3mm(試験機は1.5mm)の孔hを複数有する網状の小孔プレート12bを有する。
図2(c)は二重スクリーン12の部分拡大断面図を示す。
大孔プレート12aとその下に配置した小孔プレート12bとは相互に左右に僅かにスライド可能になっていて、その左右の振動により、包装材廃棄物から紙層が膨潤分離することが確認できた。
このような二重スクリーンにしたことによりパルプの分離が効率よく行われ、二重スクリーンの孔を通過したパルプスラリーは実線で示すように、ポンプ10aによりパルプスラリー回収タンク50に回収される。
一方、処理槽11の底部に残ったアルミ等(アルミ+樹脂)はポンプ10bによりアルミ等の洗浄機20に投入される。
洗浄機20は図3に示すように、処理層21の投入口21aからアルミ又はアルミと樹脂の混合物が投入され、洗浄用の水Wが図1に点線で示したルートにて投入される。
処理槽21内にはモーター24にて回転羽根23が回転するとともに加圧ポンプ25にて内圧を上げる。
この際に細いスリットの洗浄スクリーン22から、パルプは通過するがアルミ等は通過しないようになっている。
洗浄スクリーン22の拡大図を図3(c)に示す。
内側に突出した断面略山形形状のスクリーンバー部材22aを複数平行に配置し、その間に0.3mm〜1.0mmのスリット22bの形成してある。
これにより、残っていたパルプ分はきれいに除去され、発生したパルプ分は配管21bにてパルプ分離装置10に戻される。
【0011】
洗浄されたアルミ等は脱水機30に投入され脱水された水は、洗浄機20及びパルプ分離装置10にリターンされる。
回収タンク50に回収されたパルプスラリーは、ポンプ50aによりパルプスラリー濃縮装置51に移送され高濃度のスラリーにし、発生した水は前工程にリターンされる。
パルプスラリー調整機52にてpH等の調整をし、ポンプ52aでパルプシート製造装置53に投入され、パルプシート54が製造される。
パルプシート製造装置は公知のパルプスラリーからシート状の原料紙を製造する各種装置を用いることができ、その際に出てくる水も図1の点線で示したルートでリターン再利用される。
なお、図4(a)は洗浄後のアルミと樹脂の混合物の外観写真で図4(b)はシートにする前のパルプの外観を示す。
【符号の説明】
【0012】
10 パルプ分離装置
11 処理槽
12 分離プレート
20 アルミ等の洗浄機
22 スクリーン
30 アルミ等の脱水機
40 回収アルミ等
50 パルプスラリー回収タンク
51 パルプスラリー濃縮装置
52 パルプスラリー調整槽
53 パルプシート製造装置
54 パルプシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプスラリーとアルミ等を分離するためのパルプ分離装置と、
分離されたアルミ等からさらにパルプ分を回収するための洗浄装置と、
洗浄されたアルミ等から脱水するための脱水装置と、
分離されたパルプスラリーの濃縮装置と、
濃縮されたパルプスラリーからパルプシートを得るためのパルプシート製造装置とを備えたことを特徴とするアルミ−紙系廃棄物の資源化システム。
【請求項2】
前記脱水装置、パルプスラリーの濃縮装置及びパルプシート製造装置から回収された水を前記パルプ分離及び洗浄装置に再利用することで系外に排水しないことを特徴とする請求項1記載のアルミ−紙系廃棄物の資源化システム。
【請求項3】
前記パルプ分離装置は処理槽を有し、当該処理槽内に撹拌羽根と、相対的に孔の大きい大孔プレート及びその外側に又は下に孔の小さい小孔プレートを重ねた二重スクリーンとを有することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミ−紙系廃棄物の資源化システム。
【請求項4】
前記洗浄装置は、パルプは通過するがアルミ等は通過しないスリットからなる洗浄スクリーンを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミ−紙系廃棄物の資源化システム。
【請求項5】
前記回収されたアルミ等を乾留処理し、ガス化成分を除去するための乾留装置を有することを特徴とするアルミ資源の回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76056(P2012−76056A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226061(P2010−226061)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【特許番号】特許第4748822号(P4748822)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(300071513)トナミ運輸株式会社 (6)
【Fターム(参考)】