説明

アンテナインピーダンス整合方法

【課題】インピーダンス整合をとるべきアンテナの種別にかかわらず、ほぼ同じの短い時間でインピーダンス整合が得られるようにしたアンテナインピーダンス整合方法を提供すること。
【解決手段】まず、リレー5の接点5a、5bを切り替え、送信機の出力を、整合回路2と前置整合回路3を迂回してアンテナに接続し、誤差検出回路1によりアンテナのインピーダンスを検出する。そして、制御回路4は、検出したアンテナインピーダンスからアンテナ判別テーブルを検索してアンテナの種別を判別し、この判別結果から整合回路2と前置整合回路3にプリセットされている整合特性を選択してアンテナインピーダンス整合をとるようにしたもの。予めアンテナの種別が判別されているので、整合回路2と前置整合回路3にプリセットされている整合特性の選択が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機器とアンテナのインピーダンス整合を取る方法に係り、特にHF帯のアンテナを無線機器に接続したときのインピーダンス整合が自動的に与えられるようにしたアンテナインピーダンス整合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送信機などの無線機器を使用する際にはアンテナの接続を要するが、このときアンテナのインピーダンスと無線機器のインピーダンスを整合(マッチング)させる必要がある。
例えば、HF送信機などの無線機器の場合、その出力インピーダンスIOUT は、通常、50Ω(公称値)であるのに対して、HF帯(短波帯)のアンテナの場合、そのアンテナインピーダンスIANT は一般に0.1Ωから10kΩ程度まであり、しかもこのインピーダンスは周波数によって変化する。
【0003】
そこで、従来から、アンテナインピーダンス整合用の装置を用い、使用する周波数帯毎にインピーダンスマッチングを取る方法が用いされている(例えば特許文献1などを参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−88201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、インピーダンスマッチングに必要な時間が、インピーダンス整合をとるべきアンテナの種別によって左右されてしまうという問題があった。
本発明の目的は、インピーダンス整合をとるべきアンテナの種別にかかわらず、ほぼ同一の時間で迅速にインピーダンス整合が得られるようにしたアンテナインピーダンス整合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、無線機器の出力とアンテナの間に接続した誤差検出手段と、整合特性がプリセットされている整合手段とを用い、前記無線機器の出力と前記アンテナの間のインピーダンス整合を、前記誤差検出手段によるインピーダンス誤差の検出結果に基づく前記整合手段の整合特性のプリセットにより行う方式のアンテナインピーダンス整合方法において、前記アンテナのインピーダンス特性に基づいて当該アンテナの種別を判別するアンテナ種別判別処理を実行し、前記整合手段の整合特性のプリセットが前記アンテナ種別判別処理によるアンテナ種別判別結果に基づいて実行されるようにして達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異なった特性の複数のアンテナを対象とした場合でも短時間でインピーダンス整合を得ることができる。
また、この結果、本発明によれば、制御回路の処理負荷が抑えられ、従って制御回路の回路規模が増大する虞がない。
しかも、このとき、本発明においては、アンテナの種別の如何に関わらず、整合処理に必要な時間の最大値は常に同じであり、従ってインピーダンス整合を得るまでの待ち時間に大きなばらつきがなく、この結果、システムの立ち上げに迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるアンテナインピーダンス整合方法において使用するアンテナインピーダンス整合用の装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明によるアンテナインピーダンス整合方法の一実施形態における動作を説明するための等価回路である。
【図3】HFアンテナの等価回路図である。
【図4】アンテナの周波数Fに対する抵抗成分とリアクタンス成分の変化を示した特性図である。
【図5】本発明によるアンテナインピーダンス整合方法の一実施形態における動作を説明するための等価回路である。
【図6】整合回路の一例を示す回路図である。
【図7】整合回路の他の一例を示す回路図である。
【図8】前置整合回路の一例を示す回路図である。
【図9】前置整合回路の他の一例を示す回路図である。
【図10】アンテナインピーダンス整合処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明によるアンテナインピーダンス整合方法にについて、図示の実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態において使用されるアンテナインピーダンス整合用の装置を示したもので、図示のように、誤差検出回路1、整合回路2、前置整合回路3、制御回路4、2回路2接点のリレー5、このリレー5の接点5a、5b、それに接続回路6を備えている。
そして、まず、誤差検出回路1と整合回路2、前置整合回路3、それに制御回路4は、送信機TXのアンテナ接続端子とアンテナANTの間に直列に接続され、これにより送信機TXの高周波出力が誤差検出回路1から整合回路2と前置整合回路3を介してアンテナANTアンテナに供給されるようになっている。
【0010】
このとき、誤差検出回路1は、送信機TXの出力インピーダンスとアンテナANTのインピーダンスの誤差(ミスマッチ)を抵抗成分(R)とリアクタンス成分(jX)からなる誤差信号として検出し、それを制御回路4に入力する働きと、送信機TXからアンテナANTに至る経路上での進行波(Pf)の強度と反射波(Pr)の強度を検出し、それを制御回路4に入力する働きとをする。
ここで整合回路2と前置整合回路3については後述することにして、制御回路4は、例えばMPU(マイクロプロセッサ)で構成され、これに所望のプログラムを格納することにより、必要とする制御に対応した動作が得られるようにしてある。
【0011】
そこで、この制御回路4は、誤差検出回路1から入力される誤差信号、すなわち抵抗成分(R)とリアクタンス成分(jX)からなる誤差信号に応じて整合回路2と前置整合回路3に夫々リレー駆動信号r1、r2 を供給し、これら整合回路2と前置制御回路3の整合特性を変化させ、抵抗成分(R)とリアクタンス成分(jX)の誤差が夫々0になるように制御する。
このときの誤差0とは、抵抗成分(R)の場合は50Ωに対する誤差、つまり抵抗成分(R)が50Ωに等しくなることであり、リアクタンス成分(jX)の場合は、それが0Ωになることである。
【0012】
こうして誤差が0(又は最小)になったら、制御回路4は、次に誤差検出回路1から入力される進行波(Pf)と反射波(Pr)の強度からVSWR(電圧定在波比)を算出し、算出されたVSWRの大きさが予め設定してある判定値以下であればインピーダンス整合が完了したものとするのである。
整合回路2は、図6(a)、(b)に示すように、可変容量型のコンデンサ7と、可変インダクタンス型のコイル8とをL字型に接続した、いわゆる“L型整合回路”で構成され、制御回路4から供給されるリレー駆動信号r1 によりリレーが動作することによりコンデンサ7の静電容量値とコイル8のインダクタンス値が切り替わり、整合特性が変化し必要とする整合が取れるようにしたものである。
【0013】
ところで、この“L型整合回路”は、理論上、最も整合範囲が広く得られる整合回路として知られているが、それでも整合が取れない場合がある。
そこで、図7(a)、(b)に示すように、コンデンサとインダクタンスの接続関係が変えられている整合回路を用意しておき、上記したように、図6の整合回路2では整合が取れない場合、この図7の整合回路2を選択して使用するようになっている。
【0014】
ここで、図6(a)と図7(a)における可変容量型コンデンサ7と可変インダクタンス型コイル8の詳細を示したのが図6(b)と図7(b)で、まず、可変容量型コンデンサ7は、リレー接点7Pと、静電容量値Cの単位コンデンサ素子7Cを直列に接続した回路を複数回路、例えばN回路、並列に接続したもので、リレー駆動信号r1 を供給してリレー接点7Pを1個ずつ閉じて行くことにより、1個の単位コンデンサ素子7Cの静電容量値Cを最小単位として最大静電容量値NCまでデジタル的に静電容量値を変えることができ、これにより可変容量型のコンデンサ7として機能するようにしたものである。
【0015】
また、可変インダクタンス型のコイル8は、図示のように、リレー接点8Pとインダクタンス値Lの単位コイル素子8Lを並列に接続した回路を複数回路、例えばM回路、直列に接続したもので、同じくリレー接点8Pを1個ずつ閉じて行くことにより、1個の単位コイル素子8Lのインダクタンス値Lを最小単位として最大インダクタンス値MLまでデジタル的にインダクタンス値を変えることができ、可変インダクタンス型のコイル8として機能するようにしたものである。
【0016】
次に、前置整合回路3について説明する。
まず、図8は、この前置整合回路3の具体例(その1)で、この場合、図示のように、リレー接点9とコイル10の直列回路を複数個、整合回路2からアンテナANTに至るラインと共通電位点(アース)の間に並列に接続し、同じくリレー接点9とコンデンサ11の直列回路を複数回路、整合回路2からアンテナANTに至るラインと共通電位点の間に並列に接続して前置整合回路3としたものである。
【0017】
また、図9は、前置整合回路3の具体例(その2)で、これは、リレー接点9とコイル10の並列回路及びリレー接点9とコンデンサ11の並列回路を夫々複数、整合回路2からアンテナANTに至るラインに直列に接続して前置整合回路3としたものである。
【0018】
従って、まず、図8の前置整合回路3の場合、複数個あるリレーの接点9のコンデンサ側とコイル側の夫々において、各々少なくとも1個の接点をリレー駆動信号r2 により選択して閉じることにより、整合回路2からアンテナANTに至るラインと共通電位点(アース)の間に所望の共振周波数の並列共振回路を形成させることができ、このときは、
出力インピーダンスIOUT < アンテナインピーダンスIANT
の状態になっていたときに整合が取り易くすることができる。
【0019】
他方、図9の前置整合回路3の場合、複数個あるリレーの接点9のコンデンサ側とコイル側の夫々において、各々少なくとも1個の接点を、リレー駆動信号r2 により選択して閉じることにより、整合回路2からアンテナANTに至るラインに所望の共振周波数の直列共振回路を形成させることができ、このときは、
出力インピーダンスIOUT > アンテナインピーダンスIANT
の状態になっていた場合に整合が取り易くすることができる。
【0020】
ここで、この前置整合回路3を設けた理由について説明する。
上記したように、整合回路2には、理論上、最も広い整合範囲をもったL型整合回路が用いられているが、しかし、それでもコンデンサ7の可変容量範囲とコイル8の可変インダクタンス範囲は何れも有限であり、従って、例えばHFアンテナのように、アンテナインピーダンスが0.1Ω程度から10kΩ程度と広く、このため複数のHFアンテナに対応させなければならない場合、整合回路2だけでは整合が取れない場合が生じてしまう。
【0021】
そこで、この従来例では、前置整合回路3を設け、これにより、始めに広い範囲にわたって大まかに整合を取り、これにより、ある程度の範囲に絞込み、絞り込まれた範囲において整合回路2により細かく整合を取るようにしているのである。
【0022】
次に、この実施形態の動作について、図10のフローチャートにより説明する。
既に説明したように、アンテナは使用される周波数に応じてインピーダンス特性が変化するが、ここでHF帯のアンテナの場合、使用される周波数が特に広く、例えば2.00MHzから30.00MHzになっている。
一方、インピーダンス整合に必要な整合回路2の特性と前置整合回路3の特性については数多くの組み合わせが存在する。
従って、広帯域のアンテナの場合、やみくもに整合を取ろうとしたのでは極めて効率が悪く、ほとんど実用に耐えない。
【0023】
具体的に説明すると、この場合、制御回路4は、当該アンテナインピーダンス整合器に送信機とHFアンテナが接続され、所望の周波数の高周波出力が送信機から供給されるようになったとき、整合開始に必要な条件が整ったものとして能動化され、整合処理を開始する(ステップS1)。
このとき、まず、初期設定として、整合回路2のリレー接点と前置整合回路3のリレー接点をアトランダム(無作為)に選択した上で、それらに対応したリレー駆動信号r1、r2 を整合回路2と前置整合回路3に供給し、選択したリレー接点を組み合わせて閉じておく。
【0024】
そして、この後、誤差検出回路1から入力される誤差信号に応じて整合回路2と前置整合回路3に夫々異なったリレー駆動信号r1、r2 を次々と供給し、これら整合回路2と前置制御回路3の整合特性を順次変化させて行き、このことを抵抗成分(R)とリアクタンス成分(jX)の誤差が夫々0になるまで、或いは最小値に収斂するまで繰り返えし(ステップS2)、誤差が夫々0になったら、或いは最小値に収斂したら、ここで処理を終了するのである(ステップS3)。
【0025】
このとき、整合回路2と前置整合回路3のリレー接点は何れも複数個あり、従って、それらの組み合わせの数は幾何級数的に増大してしまう。
そして、これら多数の組み合わせを順次、試しながら誤差を調べてゆくのであるから、効率が悪くなるのは当然のことであり、従って、このままでは、あまり実用的とはいえなくなってしまう。
【0026】
そこで、この実施形態では、予め使用が想定されるHFアンテナの種類と周波数に応じて、それに適合して必要になる整合回路2と前置整合回路3の特性を求め、それを与えるのに必要なリレー接点の組み合わせを決定し、表1に示す整合順プリセットテーブルとして制御回路4のソフトウエアプログラム内に記憶しておくようにする。
そして、整合処理に際しては、この整合順プリセットテーブルを使用し、周波数とHFアンテナの種類からテーブルを検索し、整合回路2と前置整合回路3のリレー接点の組み合わせが直ちに得られるようにしている。
【0027】
【表1】

【0028】
ここで、この表1に示す整合順プリセットテーブルは、周波数F1、F2、F3、・・・・、Fmの各々において、アンテナA、B、C、・・・・、Nの夫々に最適な整合特性a、b、c、・・・・、nを予め求めておき、アンテナAからアンテナNまで順番に並べてテーブル化したもので、このとき周波数を列方向(縦方向)にとり、整合順番は行方向(横方向)にとって、アンテナに対応する整合特性を整合順番方向に並べ、周波数毎に縦方向に並べて配置したものである。
【0029】
例えば、周波数F1のときアンテナAに対して最適な整合特性a1は整合順番1の第1行に配置し、周波数F2のときの最適整合特性a2は第2行に、そして周波数Fmに最適な整合特性amは整合順番1の最下行(m行)に配置する。
次に、周波数F1のときアンテナBに対して最適な整合特性b1は整合順番2の第1行に配置し、周波数F2のときの最適整合特性b2は第2行に、そして周波数Fmに最適な整合特性bmは整合順番2の最下行に配置するのである。
【0030】
そして、このときの整合特性a、b、c、・・・・、mについては、夫々整合回路2のリレー接点7P、8Pと前置整合回路3のリレー接点9の夫々について、何れを閉じれば良いのかを表わすデータとして、予め求められていて、それら接点を指定する情報が記述されている。
【0031】
そこで、この実施形態においては、HFアンテナを接続してインピーダンス整合をとる際、制御回路4は、整合回路2のリレー接点7P、8Pと前置整合回路3のリレー接点9の夫々についてアトランダムに選択してはその都度、整合が取れるか否かを順次調べて行くのではなく、表1の整合順プリセットテーブルに従って整合処理を実行する。
【0032】
まず、送信機TXの出力周波数をF1にし、次いで制御回路4は整合順番1から整合順番nまで整合処理を実行する。
整合順番1では、整合特性をa1にし、抵抗成分(R)とリアクタンス成分(jX)の誤差が夫々最小値に収斂するか否かを判定し、最小値に収斂していれば、ここで整合動作を終える。このとき、整合特性をa1にするとは、上記したように、この整合特性a1を与えるのに必要な接点を閉じることを意味する。
【0033】
整合順番1で最小値に収斂しなかった場合は、次に整合順番2を実行する。すなわち整合特性をb1にし、整合が取れるか否かを判定する。
そして、整合順番2でも整合が取れずに終わったら、次に整合順番3に移行するという処理を、整合が取れるまで順次、整合順番に従って実行するのである。
こうして周波数F1において整合順番1から整合順番nまでの処理を実行しても整合が取れなかったら、次に周波数をF2にする。そして、この周波数F2において再び整合順番1から整合順番nまでの処理を実行し、その都度、整合が取れるか否かを判定し、これを周波数Fmまで順次、実行する。
【0034】
そうすると、この過程で、何れは整合が取れる。何故なら、この表1は、上記したように、予め使用が想定されているHFアンテナの種類と周波数に応じて、それに適合して必要になる整合回路2と前置整合回路3の特性を求め、それを与えるのに必要なリレー接点の組み合わせを決定し、それをリスト化したものだからであり、従って想定外のアンテナと周波数が使用されない限り、遅かれ早かれ必ず整合が得られる筈だからである。
【0035】
従って、この実施形態によれば、インピーダンス整合に必要な整合回路の特性データがテーブルから与えられるので、リレー接点の夫々についてアトランダムな選択が不要になり、この結果、インピーダンス整合に必要な時間が短縮でき、処理に必要な制御回路の負荷が軽減できる。
しかし、この場合、インピーダンス整合の対象として想定されるアンテナの種別の多様化に配慮がされているとはいえず、異なった特性の複数のアンテナを対象とした場合、必ずしも短時間でインピーダンス整合が得られるとは限らない。
【0036】
ここで、表1のテーブルを見れば明らかなように、この場合、複数種のアンテナの中から任意に又は恣意的に決められた特定のアンテナから同じく任意又は恣意的に順番(整合順番)が決められていて、それに従って順番に整合を取るための処理が進められるようになっている。
このため、インピーダンス整合を取るための処理に入るまでの時間が、このときにインピーダンス整合を必要とするアンテナの順番によって異なり、順番が後になっているアンテナほどインピーダンス整合に必要な時間が長くなってしまい、この結果、必ずしも短時間でインピーダンス整合が得られるとは限らなくなってしまう。
【0037】
そこで、この実施形態においては、更にリレー5と接続回路6を設け、これによりインピーダンス整合をとるべきアンテナの種別が異なっても、ほぼ同一の時間でインピーダンス整合が得られるようにしたもので、以下、この点について、詳細に説明する。
既に説明したように、この実施形態においては、図1の装置を用いてインピーダンス整合を取るのであるが、このとき、それに先立って上記したアンテナ種別判別処理、すなわち、アンテナの種別を判別するアンテナ種別判別処理を実行する。
そして、このために制御回路4は、そのMPUがプログラムされている。
【0038】
ここで、まず、リレー5は、制御回路4から供給されるリレー駆動信号r5 により切換制御され、上記した通常のアンテナインピーダンス整合処理時には接点5a、5bを図示の状態、つまり下側の回路に閉じ、アンテナ種類判別処理時には接点5a、5bを図の上側に閉じ、誤差検出回路1からアンテナANTに至る経路を接続回路6による経路に切り替える働きをする。
次に、接続回路6は、アンテナ種類判別処理時に整合回路2と前置整合回路3をバイパス(迂回)し、必要に応じてアンテナ種類判別を容易にするための回路素子を誤差検出回路1とアンテナANTの間に接続する働きをする。
【0039】
そして、このアンテナ種別判別処理においては、まず、アンテナAXTを装置に接続する。そして、制御回路4に処理を開始させるのであるが、このとき予め送信機TXを動作させ、周波数Faの高周波信号が誤差検出回路1に入力されるようにしてから制御回路4に処理を開始させる。
このときの高周波信号については、誤差検出回路1による誤差信号の検出を可能にするために使用するのが目的であるから、低レベルの出力(例えば25W)による信号で良い。
【0040】
次に、制御回路4は、リレー駆動信号r5 をリレー5に供給し、リレー接点5a、5bを接続回路6側に切り替える。そうすると、誤差検出回路1からアンテナANTに、接続回路6の回路素子を介して周波数Faの高周波信号が供給されるようにする。この状態を図2の等価回路に示す。
ここでは、接続回路6の回路素子として抵抗を用いた場合が示されているが、しかし、これには、図2に示すように、抵抗以外の他の回路素子を適用してもよい。
【0041】
例えば、アンテナのリアクタンス分が少なくて種別の判定が困難な場合には、回路素子としてリアクタンス成分を「+jX」方向に増加補正するため、所望のインダクタンス値のコイルを用い、このとき必要に応じてコイルと抵抗の直列回路を用い、リアクタンス成分と抵抗成分の双方を補正するようにしてもよい。
また、リアクタンス分を「−jX」方向にした方が種別判定しやすい場合にはコンデンサを接続し、このとき必要に応じてコンデンサと抵抗の直列回路を用い、リアクタンス成分と抵抗成分の双方を補正するようにしてもよい。
ここで特に何も問題が無ければ、単に電線で接続だけにしてもよい。
【0042】
そして、このとき誤差検出回路1は、図示のように、このとき接続回路6を介して接続されているアンテナANTの抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)を検出し、制御回路4に供給する。
そこで、制御回路4は、これらの抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)をA/Dコンバータによりアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル化された抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)を、予めソフトに用意してあるアンテナ判定テーブルにあるデータと比較し、いま現在、装置に接続されているアンテナの種別を特定する。
【0043】
このため、予め使用対象となる複数のHFアンテナを想定し、それらの各々について個別に抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)を調べ、各アンテナについて、その抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)の値を対にしたテーブルを作成し、それを上記したアンテナ種別判別テーブルとして制御回路4のMPUのソフトに格納しておく。
例えば、アンテナAについて調べた結果、その抵抗成分(R)がRAでリアクタンス成分(±jX)が+jXAであったら、「RA:jXA」の項に「アンテナA」を書き込み、アンテナBの抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)を調べたら抵抗成分(R)がRBでリアクタンス成分(±jX)が−jXBであったら、「RB:−jXB」の項には「アンテナBを書き込んでアンテナ種別判別テーブルとするのである。
【0044】
ここで、このときのアンテナの種別判定について、その原理と共に説明する。
まず、ここで、よく知られているように、アンテナの等価回路は、図3に示すように、抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)の直列回路として表わされ、従ってインピーダンスZは(R±jX)となる。
また、これらアンテナの抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)は周波数によって変化し、さらに、その変化の状態はアンテナの種類によって異なったものとなる。
【0045】
ここで図4は、一例として3種類のアンテナA、B、Cの夫々の周波数Fに対する抵抗成分(RA、RB、RC)とリアクタンス成分(jXA、jXB、jXC)の変化を示した特性図で、この図を見れば明らかなように、アンテナの抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)は、夫々がアンテナ毎に異なった態様で変化していることが判る。
従って、これら抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)を見れば、このときに接続されているアンテナANTの種別が識別でき、種別を判定することができる。
【0046】
このとき、図4には、或る特定の周波数(周波数Fa)において、抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)が、アンテナAとアンテナBそれにアンテナCのそれぞれで大きく異なっている状態が示されている。
そこで、予め、使用が想定されているアンテナについて、このような特定の周波数の存在について調べ、周波数Faを求めておく。
そして、このアンテナ種別判別テーブルの作成に際しては、送信機TXから周波数Faの高周波信号を出力させた状態でアンテナの抵抗成分(R)とリアクタンス成分(±jX)の検出を行うようにする。
【0047】
このとき図4の横軸における周波数Fmin と周波数Fmax は、HF帯の最小周波数と最大周波数に合わせてあり、このときの各帯域における中心周波数は、夫々上記した周波数F1、F2、F3、・・・・、Fnである。
ここで、例えば周波数F1の場合、帯域幅は2.00MHz〜2.49МHzとなり、周波数F2の帯域の場合、2.50MHz〜2.99МHzとなる。
【0048】
こうしてアンテナ種別判別処理を実行して、アンテナの種別が特定できたら、例えば、装置に接続されたアンテナについて調べた結果、その抵抗成分(R)がRAでリアクタンス成分(±jX)が+jXAであったら、アンテナ種別判別テーブルの項目「RA:jXA」を見ることにより、いま接続されたアンテナは「アンテナA」であることが直ちに分かり、アンテナの種別が特定できる。
【0049】
ここで制御回路4は、再びリレー5にリレー駆動信号r5を出力し、図5に示すように、リレー接点5a、5bを接続回路6側から整合回路2と前置整合回路3側に切り替え、この状態で従来例と同じくインピーダンス整合処理を実行する。
しかして、このとき、従来例の場合とは異なり、表1の整合順プリセットテーブルを使用するのではなく、表2のアンテナ順プリセットテーブルを使用して整合特性をプリセットするようになっている。
【0050】
【表2】

【0051】
この表2のアンテナ順プリセットテーブルは、周波数毎の整合特性を、アンテナの種別をパラメータとして、縦に配列したもので、図示のように、例えばアンテナAの列には、周波数Fを変数(F1、F2、・・・・)にし、それに対応する整合特性a(a1、a2、・・・・)を上から下に配列し、アンテナBの列には、同じく周波数Fを変数にし、それに対応する整合特性b(b1、b2、・・・・)を上から下に配列したものであり、従ってアンテナの種別が予め分かっていれば、そのアンテナの列についてだけ、各周波数について順次、整合特性を選択してはインピーダンス整合が取れているか否かを調べて行けばよく、これだけで当該アンテナに必要な整合のための整合特性に必ず到達することができる。
【0052】
ここで、図5は、上記したアンテナ種別判別処理を実行し、アンテナの種別が特定できた後、インピーダンス整合処理に移行したときの等価回路で、このとき整合回路2には図7の回路を用い、前置整合回路3には図9の回路を適用したものである。
そして、いま、このとき装置に接続したアンテナANTの種別がA、つまりアンテナAであると特定されていたとする。
そうすると、この場合、制御回路4は、表2のアンテナ順プリセットテーブルのアンテナAの項にあるインピーダンス整合特性を用いて処理を進める。
【0053】
すなわち、まず、送信機TXをオンにし、その出力周波数をF1からF2、・・・、Fmと順次、切り替えられて行き、これに合わせ、その都度、整合特性をa1からa2・・・に順次、切り替えては誤差検出回路1から入力されてくる抵抗成分(R)とリアクタンス成分(jX)を調べ、それらの誤差が夫々最小値に収斂するか否かを判定し、最小値に収斂し他と判定されたら、そこで整合動作を終えるのである。
ここで整合特性をa1にするということの意味は、上記したように、この整合特性a1を与えるのに必要な接点、つまり整合回路2ではリレー接点7P、8Pの中で、前置整合回路3においてはリレー接点9の中で、各々対応する接点を閉じることである。
【0054】
そして、この処理を最後の周波数Fmまで順次、実行して行けばインピーダンスマッチングに必要な整合特性に必ず到達する。
何故なら、この表2は、上記したように、予め使用が想定されているHFアンテナの種類と周波数に応じて、それに適合して必要になる整合回路2と前置整合回路3の特性を求め、それを与えるのに必要なリレー接点の組み合わせを決定し、それをリスト化したものだからであり、従って想定外のアンテナと周波数が使用されない限り、遅かれ早かれ必ず整合が得られる筈だからである。
【0055】
そうすると、この場合、インピーダンスマッチングに必要な整合特性を得るのに要した回数は、最大でもアンテナの種別数nとなる。
これは、この場合、アンテナANTの種別が既に特定され、アンテナAであることが予め分かっていることによる。
一方、このアンテナ種別判別処理を行わなかった場合、インピーダンスマッチングに必要な整合特性を得るのに必要な回数は、最大の場合、周波数の種類mとアンテナの種別数nの積である(m×n)回にもなってしまう。例えば、周波数が5種類でアンテナが8種類の場合、上記実施形態では、最大でも8回で済むが、アンテナ種別判別処理を行わなかった場合は、最大の場合、40回(5×8=40)にもなる。
【0056】
従って、この実施形態によれば、異なった特性の複数のアンテナを対象とした場合でも短時間でインピーダンス整合を得ることができる。
また、この結果、上記実施形態によれば、制御回路4の処理負荷が抑えられ、従って制御回路4の回路規模が増大する虞がない。
しかも、このとき、アンテナの種別の如何に関わらず、最大回数は常に同じであり、従ってインピーダンス整合を得るまでの待ち時間に大きなばらつきがなく、この結果、システムの立ち上げに迅速に対応することができる。
【0057】
ここで、上記実施形態の場合、アンテナ種別判別処理があるので、その分、処理が多くなっている。
しかし、このアンテナ種別判別処理に必要な時間は、制御回路4に用いたMPUの処理速度にもよるが、およそ10mS〜50mS程度で済み、従って、インピーダンス整合処理時間の短縮によるメリットに比較してほとんど問題にならないといえる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、アンテナを使用する機器ならどのような用途の無線機器にも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 誤差検出回路
2 整合回路
3 前置整合回路
4 制御回路
5 リレー
5a、5b リレーの接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機器の出力とアンテナの間に接続した誤差検出手段と、整合特性がプリセットされている整合手段とを用い、前記無線機器の出力と前記アンテナの間のインピーダンス整合を、前記誤差検出手段によるインピーダンス誤差の検出結果に基づく前記整合手段の整合特性のプリセットにより行う方式のアンテナインピーダンス整合方法において、
前記アンテナのインピーダンス特性に基づいて当該アンテナの種別を判別するアンテナ種別判別処理を実行し、前記整合手段の整合特性のプリセットが前記アンテナ種別判別処理によるアンテナ種別判別結果に基づいて実行されることを特徴とするアンテナインピーダンス整合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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