説明

アンテナ付き樋

【課題】アンテナ部を保護でき、また、芯線部側端子の接続部分、編線側端子の接続部分の樋体外面からの突出長さを短くでき、結露水により芯線部側端子の接続部分、編線側端子の接続部分が導通し難くなる。
【解決手段】雨水を流すための樋体1と、この樋体1の外面に重複されるスロット28を有する金属板3を被覆材4で被覆して形成したアンテナ板5とを備え、前記アンテナ板5の前記スロット28の両側に一対の給電部9を設け、前記スロット28を跨ぐように一対の給電部9間に同軸ケーブル11の芯線外皮部33を架け渡して前記同軸ケーブル11の芯線部側端子8を前記一方の給電部9に接続し、且つ、前記同軸ケーブル11の編線側端子12を前記他方の給電部9に接続し、前記芯線外皮部33の前記給電部9間に架け渡した部位と前記樋体1の外面との間に、前記被覆材4が存在しない部位を形成して通水用隙間15とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ付き樋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、既に施工されている竪樋の外面にアンテナ部を取付ける技術が開示されている。
【0003】
このアンテナ部は、半円筒状の折り返し部の側方に半円筒状の給電部を突出した導電体からなるアンテナ素体を2枚組み合わせて構成される。
【0004】
アンテナ部は、既に施工されている竪樋の長手方向の中間部の外面側に、2枚のアンテナ素体の折り返し部を配置し、ねじにより2枚のアンテナ素体を連結することで、竪樋に取付ける。
【0005】
アンテナ部を竪樋外面側に取付けた状態で、半円筒状の給電部が竪樋の外面から側方に突出する。この突出した給電部の突出先端には、端子板がねじ止めされており、端子板に同軸ケーブルの端部を接続するための孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−168101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された従来例は以下の問題点がある。
【0008】
竪樋の外面に導電体からなるアンテナ素体が取付けられるので、アンテナ素体が露出し、錆等が発生しやすくアンテナ性能の低下のおそれがある。
【0009】
また、給電部、端子板が竪樋外面から側方に突出しているため、竪樋の外面から同軸ケーブルとの電気的接続部分までの突出距離が長くなり、竪樋としての外観を損ね、建物の価値が低下し、また、給電部への同軸ケーブルの接続部分に人や物が引っ掛かりやすい。
【0010】
本発明の目的は、アンテナ部を保護でき、芯線部側端子の接続部分、編線側端子の接続部分の樋体外面からの突出長さを短くでき、芯線部側端子の接続部分と編線側端子の接続部分が結露水を介して導通し難くなるアンテナ付き樋を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のアンテナ付き樋は、雨水を流すための樋体と、この樋体の外面に重複されるスロットを有する金属板を被覆材で被覆して形成したアンテナ板とを備え、前記アンテナ板の前記スロットの両側に一対の給電部を設け、前記スロットを跨ぐように一対の給電部間に同軸ケーブルの芯線外皮部を架け渡して前記同軸ケーブルの芯線部側端子を前記一方の給電部に接続し、且つ、前記同軸ケーブルの編線側端子を前記他方の給電部に接続し、前記芯線外皮部の前記給電部間に架け渡した部位と前記樋体の外面との間に、前記被覆材が存在しない部位を形成して通水用隙間とすることを特徴とする。
【0012】
また、前記芯線部側端子と編線側端子を一対のビスとナットで前記一対の給電部に接続し、前記一対のナットをそれぞれ前記給電部と前記樋体の外面との間に介在して前記芯線外皮部の前記給電部間に架け渡した部位を浮かせることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、金属板が被覆材で被覆されることで、金属板を保護して錆の発生などを抑制し、アンテナの性能の低下を抑制できる。樋体の外面に重複されるアンテナ板のスロットの両側に設けた一対の給電部に芯線部側端子と編線側端子を接続するので、芯線部側端子、編線側端子の接続部分の樋体外面からの突出長さを短くでき、人や物が引っ掛かったりしない。また、通水用隙間を形成することで、被覆材表面に発生した結露水が芯線外皮部の給電部間に架け渡した部位に溜まるのを抑制し、結露水により芯線部側端子の接続部分と編線側端子の接続部分の導通を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の要部拡大斜視図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線の拡大断面図である。
【図4】同上の一部省略全体斜視図である。
【図5】同上の一部破断した斜視図である。
【図6】同上に用いるアンテナ板を示し、(a)は表面側から見た斜視図であり、(b)は背面側から見た斜視図である。
【図7】同上に用いる取付部材の斜視図である。
【図8】同上の施工状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面に基づいて一実施形態を説明する。
【0016】
アンテナ付き樋22は、基本的構成要素として、雨水を流すための樋体1と、この樋体1の外面に重複されるアンテナ板5を備える。
【0017】
添付図面の実施形態では、アンテナ付き樋22は、更に、筒状をした樋体1を覆う外筒部23を備えることで二重筒構造となっており、また、長手方向の端部に、樋体1に連通接続する接続体24を備える。
【0018】
アンテナ板5は、アンテナ部2を有する金属板3を被覆材4で被覆して形成される。
【0019】
アンテナ部2は、導電性の縦長矩形状の薄い金属板3(金属箔も含まれる)に樋体1の軸方向に沿って長く形成されたスロット28を設けたスロットアンテナにより構成される。
【0020】
図6の実施形態では、金属板3に形成するアンテナ部2にはスロット28が上下方向に複数並べて設けられており、隣接するスロット28同士は細溝25で接続されている。各スロット28は三角形の頂点を互いに突き合わせたようなボウタイ形状に形成されている。
【0021】
アンテナ部2は、第一の周波数帯(例えば473〜600MHz)の電波を受信する第一の受信部29と、第二の周波数帯(例えば600〜720MHz)の電波を受信する第二の受信部30を有している。
【0022】
第一の受信部29は、スロット28及び当該スロット28の周縁部により構成される。第二の受信部30は、このスロット28に対し上下方向に隣接する鋼板部分により構成される。
【0023】
第一の受信部29を構成するスロット28の上下方向の長さは、前記第一の周波数帯内の電波の電気的な半波長の長さと同じである。また、第二の受信部30の周方向の長さは、前記第二の周波数帯内の電波の電気的な半波長の長さと同じである。
【0024】
すなわち、第一の周波数帯内の中心周波数が536.5MHzであり、第一の周波数帯内の電波の電気的な半波長λ/2は約28cmであることから、各スロット28の上下方向の長さは約28cmとなっている。また、第二の周波数帯の中心周波数が660MHzであり、第二の周波数帯内の電波の電気的な半波長λ/2は約23cmであることから、第二の受信部30の周方向の長さは約23cmとなっている。
【0025】
金属板3のスロット28の両側の三角形の頂点部分がそれぞれ給電部9となっている。
【0026】
被覆材4は、例えばPETのような電気絶縁性を有する合成樹脂フィルムであり、この合成樹脂フィルムが金属板3の表裏両面又は表面側に重ねて接着されることで、金属板3が外部(少なくとも表面側)に露出しないように被覆材4で被覆される。これにより、アンテナ部2を備えた金属板3を保護し、錆び等が発生しないようにできる。
【0027】
ここで、被覆材4は給電部9の表面に対応する部位が除去されて給電用開口部16が形成されており、この給電用開口部16において、給電部9部分が露出する。アンテナ板5の給電部9部分には貫通孔7が形成される。
【0028】
また、被覆材4はスロット28部分も覆うように被覆されるが、スロット28の給電部9間の部分は被覆材4の一部に開口部6を形成することで被覆材4が存在しない部位が形成される。
【0029】
同軸ケーブル11は、内側の芯線32の外側を芯線外皮部33で覆い、芯線外皮部33の外周を編線34で覆い、更に編線34を外側外皮部35で覆うことで構成される。
【0030】
同軸ケーブル11の端部は、外側外皮部35を除去して編線34の端部が露出した部分が形成され、更に、編線34の端部より突出して芯線外皮部33が露出する部分が形成され、更に、芯線外皮部33の端部より芯線32が突出する部分が形成される。
【0031】
同軸ケーブル11における芯線32の端部が、芯線部側端子8を介して一方の給電部9に接続され、編線34の端部が編線側端子12を介して他方の給電部9に接続される。
【0032】
芯線部側端子8、編線側端子12の接続は、以下のようにして行われる。
【0033】
一方の給電部9の給電用開口部16に芯線部側端子8を配置すると共に給電部9の裏面にナット10を配置し、ビス14を芯線部側端子8の孔から貫通孔7を通してナット10に緩く螺合することで仮取付けをする。
【0034】
次に、芯線外皮部33の端部を両給電部9間に架け渡すように配置し、一方の給電部9の金属板3の露出部と芯線部側端子8との間に芯線32の端部を差し込む。この状態で、芯線32を給電部9の金属板3と芯線部側端子8とに電気的に接触させた状態で、ビス14を締め付けて電気的、機械的に接続する。
【0035】
次に、芯線外皮部33の端部を両給電部9間に架け渡すように配置すると、編線34の端部が他方の給電部9の金属板3の露出部に当接する。この状態で、編線34の端部の露出部分に編線側端子12を被せ、ビス14を編線側端子12の孔から貫通孔7を通してナット10に螺合して、編線34を給電部9の金属板3と編線側端子12とに電気的、機械的に接続する。
【0036】
前記のように、同軸ケーブル11を接続した状態のアンテナ板5は、水平断面C字状又は多角形状となるよう上下方向に一様に湾曲させて円筒状又は角筒状をした樋体1の外周面に巻いて重ね、接着や取付部材31を用いて取付けられる。
【0037】
添付図面に示す実施形態は、図7に示すような取付部材31を用いて図4、図5に示すように取付けた例を示している。
【0038】
アンテナ板5を樋体1の外面に重ねて取付けた状態で、芯線外皮部33の給電部9間に架け渡した部位と樋体1の外面との間に、開口部6が位置し、この開口部6により被覆材が存在しない部位が形成され、被覆材4がない部位が通水用隙間15となる。
【0039】
本実施形態では、更に、図3のように芯線部側端子と編線側端子をビス14で接続するための一対のナット10がそれぞれ給電部9と前記樋体1の外面との間に介在され、これにより芯線外皮部33の給電部9間に架け渡した部位が樋体1の外面から浮く。
【0040】
前述のように給電部9に機械的、電気的に接続された同軸ケーブル11は樋体1の外面に巻付けられたアンテナ板5の外面に樋体1の軸方向に沿って配置される。
【0041】
軸方向に沿って配置するに当っては、スロット28を避けて配置される。
【0042】
アンテナ板5を樋体1の外周面に取付けるための取付部材31は、非導電性の合成樹脂のような非導電性材料により形成されている。また、図7のように、取付部材31は、一対の半体38の一端部同士を軸受部39で回動自在に連結して構成され、一対の半体38の他端部の係止部40と被係止部41が係止自在となっている。
【0043】
取付部材31は、同軸ケーブル11のアンテナ板5に対する位置を保持するケーブル保持部42を備え、このケーブル保持部42に同軸ケーブル11が保持される。
【0044】
また、各取付部材31は、径外方向に突出する複数の突出部を有する。本実施形態の取付部材31は、軸受部39と、係止部40及び被係止部41と、ケーブル保持部42との計4箇所の突出部を有する。突出部は周方向に等間隔で配置されており、すなわち90°ごとに径外方向に突出する。
【0045】
外周にアンテナ板5を巻いた樋体1に外筒部23を被せることで、二重筒構造のアンテナ付き樋22が構成される。
【0046】
外周にアンテナ板5を巻いた樋体1に外筒部23を被せると、取付部材31に突出部を設けているので、外筒部23の略中心に樋体1と樋体1に設けられたアンテナ板5の中心が配置されると共に、外筒部23の内周面に当接又は近接対向するようになる。
【0047】
ここで、前述のように同軸ケーブル11の端部を給電部9に機械的、電気的に接続する部分は、樋体1の外面から径方向の外側に、ナット10、給電部9、芯線32(又は編線34)、芯線部側端子8(編線側端子12)、ビス14の頭部がコンパクトに積層された状態となり、樋体1の外面からビス14の頭部までの突出長さを短くすることが可能となる。
【0048】
したがって、ビス14の頭部を、取付部材31の突出部とほぼ同じ突出長さ又は短い突出長さとすることが可能となり、芯線部側端子8(編線側端子12)を給電部9に機械的、電気的に接続する部分を、樋体1と外筒部23との間のスペース内に配置することが可能となる。
【0049】
このように、外筒部23により芯線部側端子8(編線側端子12)を給電部9に機械的、電気的に接続する部分が外部に露出しないように覆うことで、雨水、外気、太陽光に晒されず、劣化が抑制される。
【0050】
また、芯線部側端子8(編線側端子12)を給電部9に機械的、電気的に接続する部分に、人や物が引っ掛かるのが防止される。
【0051】
二重筒構造のアンテナ付き樋22は、長手方向の端部に、接続体24が備えられ、上下の接続体24に樋体1と、外筒部23の上下方向の両端部が接続され、上下の接続体24は樋体1に連通する。
【0052】
樋体1の軸方向に沿った同軸ケーブル11は、接続体24に設けた引出部43に至り、同軸ケーブル11の端部に設けた接続具44が引出部43を構成する孔に嵌め込んで取付けられる。
【0053】
接続具44には、テレビ側ケーブル45の端部に設けた接続具が電気的に接続される。このテレビ側ケーブル45は、建物46の外壁47や軒天井48から建物内に導入され、既存の建物46内のテレビ側に接続される。
【0054】
図8は、アンテナ付き樋22が竪樋の一部として用いられた例を示している。図8において、符号49は軒樋、50は集水器、51はエルボ、52は呼び樋、53は一般の竪樋を示している。
【0055】
アンテナ付き樋22を竪樋の一部として用いる場合、アンテナ付き樋22の接続体24を一般の竪樋53やエルボ51に接続し、筒状をした樋体1内に雨水を流す。
【0056】
接続の際、アンテナ付き樋22を軸芯を中心に回転して、アンテナ部2を最も強い受信方向に向ける。
【0057】
前記アンテナ付き樋22において、アンテナ板5の表面に結露水が発生する場合がある。
【0058】
結露水が発生すると、結露水はアンテナ板5の表面に沿って図1の矢印aのように下方に流れる。
【0059】
矢印aのように流れる結露水が、両給電部9間に架け渡たされた芯線外皮部33の位置に至ると、芯線外皮部33と樋体1の外面との間に被覆材4がない部位である通水用隙間15が形成されるので、結露水は通水用隙間15を通過して図1の矢印bのように下方に流れる。
【0060】
これにより、結露水が、両給電部9間に架け渡たされた芯線外皮部33部分において滞留するのが抑制され、結露水が溜まることによる芯線端部の電気的接続部分と、編線34端部の電気的接続部分が導通するのが抑制され、アンテナ性能の劣化が抑制される。
【0061】
ここで、実施形態は、一対のナット10が給電部9と前記樋体1の外面との間に介在され、芯線外皮部33の給電部9間に架け渡した部位が樋体1の外面から浮かせられるので、通水用隙間15がさらに大きく形成され、結露水の通水がいっそうスムーズになされる。
【0062】
なお、取付部材31部分においては上下及び内側に開口した溝状をしたケーブル保持部42を複数個設けることで、一のケーブル保持部42は同軸ケーブル11を挿通保持するが、他のケーブル保持部42は溝が上下に開口した状態なので、結露水がこの溝を通って流れる。
【0063】
前述の実施形態においては、ビス14で接続する際に、芯線32と芯線部側端子8を接続し、編線34と編線側端子12を接続した例を示したが、予め芯線32に固着した芯線部側端子8をビス14、ナット10で一方の給電部9に接続し、予め編線34に固着した編線側端子12をビス14、ナット10で他方の給電部9に接続してもよい。
【0064】
また、前述の実施形態においては、外筒部23を設けた例で説明したが、外筒部23を設けないものであってもよい。外筒部23を設けない場合、金属板3は被覆材4で覆われるので、金属板3は雨水、外気、太陽光にさらされず、アンテナ部2の劣化を抑制できる。
【0065】
また、この場合も、芯線部側端子8(編線側端子12)を給電部9に機械的、電気的に接続する部分の突出長さを短くでき、人や物が引っ掛かるのが抑制される。
【符号の説明】
【0066】
1 樋体
2 アンテナ部
3 金属板
4 被覆材
5 アンテナ板
6 開口部
8 芯線側端子
9 給電部
10 ナット
11 同軸ケーブル
12 編線部側端子
14 ビス
15 通水用隙間







【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を流すための樋体と、この樋体の外面に重複されるスロットを有する金属板を被覆材で被覆して形成したアンテナ板とを備え、
前記アンテナ板の前記スロットの両側に一対の給電部を設け、前記スロットを跨ぐように一対の給電部間に同軸ケーブルの芯線外皮部を架け渡して前記同軸ケーブルの芯線部側端子を前記一方の給電部に接続し、且つ、前記同軸ケーブルの編線側端子を前記他方の給電部に接続し、前記芯線外皮部の前記給電部間に架け渡した部位と前記樋体の外面との間に、前記被覆材が存在しない部位を形成して通水用隙間とすることを特徴とするアンテナ付き樋。
【請求項2】
前記芯線部側端子と編線側端子を一対のビスとナットで前記一対の給電部に接続し、前記一対のナットをそれぞれ前記給電部と前記樋体の外面との間に介在して前記芯線外皮部の前記給電部間に架け渡した部位を浮かせることを特徴とする請求項1記載のアンテナ付き樋。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195862(P2012−195862A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59701(P2011−59701)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】