説明

アンテナ装置および無線通信装置

【課題】インピーダンスの整合状態を検出し自動的に整合させるインピーダンス可変整合部を備え、小型化・高性能化が可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】実施の形態のアンテナ装置は、給電点と反対側の端部が開放端となるアンテナと、給電点でアンテナに接続されるインピーダンス可変整合部と、端部からプローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置されるプローブと、プローブに接続され、プローブで測定される電力信号に基づきインピーダンス可変整合部を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、アンテナ装置および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの無線通信装置においては、アンテナの入力インピーダンスと無線機の出力インピーダンスの不整合により電力損失が生ずる場合がある。この電力損失を抑制するために、アンテナと無線機との間にインピーダンス可変整合部を設け、さらに何らかの手段で不整合を検出して、自動的にアンテナの入力インピーダンスと無線機の出力インピーダンスを整合させる方法がある。
【0003】
もっとも、上記方法において、アンテナと無線機との間に電流や電圧等を検出する検出部を設ける構成を採用すると、検出部のサイズ、周波数帯域、挿入損失、方向性、結合量等の要素がトレードオフの関係になる。したがって、インピーダンス可変整合部を含めたアンテナ装置の小型化・高性能化が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3075097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、インピーダンスの整合状態を検出し自動的に整合させるインピーダンス可変整合部を備え、小型化・高性能化が可能なアンテナ装置および無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態のアンテナ装置は、給電点と反対側の端部が開放端となるアンテナと、前記給電点で前記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合部と、前記端部からプローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置されるプローブと、前記プローブに接続され、前記プローブで測定される電力信号に基づき前記インピーダンス可変整合部を制御する制御部と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図2】第2の実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図3】第3の実施の形態のアンテナ装置の演算回路とインピーダンス整合部の構成の詳細を示す図である。
【図4】第4の実施の形態のアンテナ装置の演算回路とインピーダンス整合部の構成の詳細を示す図である。
【図5】第5の実施の形態のアンテナ装置の演算回路の構成の詳細を示す図である。
【図6】第6の実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図7】第7の実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【図8】第8の実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。なお、図面中、同一または類似の箇所には、同一または類似の符号を付している。
【0009】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、給電点と反対側の端部が開放端となるアンテナと、給電点でアンテナに接続されるインピーダンス可変整合部とを備える。そして、アンテナの開放端となる端部からプローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置されるプローブを備える。また、プローブに接続され、プローブで測定される電力信号に基づきインピーダンス可変整合部を制御する制御部を備える。
【0010】
本実施の形態のアンテナ装置においては、上記構成、特にアンテナの開放端近傍に検出部となるプローブを設けてアンテナの電力を検出する構成により、インピーダンス可変整合部を含めたアンテナ装置の小型化・高性能化が実現可能となる。
【0011】
図1は、本実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【0012】
アンテナ装置10は、給電点12aと反対側の端部12bが開放端となる逆Lアンテナ12と、給電点12aで逆Lアンテナ12に接続されるインピーダンス可変整合部14とを備える。そして、開放端である端部12bからプローブの先端までの離間距離(図中d)が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう近接して配置されるプローブ16を備える。また、プローブ16に接続され、プローブ16で測定される電力信号が入力され、この電力信号に基づきインピーダンス可変整合部14を制御する制御部18を備える。
【0013】
なお、図1では、アンテナ装置10は、インピーダンス可変整合部14の逆Lアンテナ12に対して反対側に接続される無線機30を示している。無線機30は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置10とこれに接続される無線機30が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
【0014】
逆Lアンテナ12は導体から構成されるアンテナであり、給電点12aから遠い側が接地されない開放端となっている。なお、逆Lアンテナ12を用いることは、アンテナ装置を備える無線通信装置の小型化や設計の容易化を図る観点から望ましいが、アンテナの形状は、逆Lアンテナに限られるものではない。
【0015】
インピーダンス可変整合部14は、可変インダクタ14aと可変容量14bから構成されている。ここでは、可変インダクタ14aと可変容量14bとから構成されているが、可変インダクタ14aや可変容量14bの使用数量や回路の接続トポロジーに制限は無い。また、可変インダクタ14aや可変容量14bの他にスイッチをインピーダンス可変素子として用いることも可能である。そして、これらの可変素子は、半導体、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等、その機能の実現手段を選ばない。
【0016】
プローブ16は、ここでは、対称な2本の導体で構成されたダイポール形状の差動型プローブである。アンテナ装置が接続される無線通信装置の電子部品等から発せられるノイズ耐性を高くする観点から差動型プローブであることが望ましいが、モノポール形状やループ形状等のプローブを適用することが可能である。
【0017】
なお、逆Lアンテナ12の端部12bとプローブ16の先端との離間距離は、それぞれの間の最も距離の遠い部分を測定して算出するものとする。
【0018】
制御部18は、電力検出器20と、演算回路22を備える。電力検出器20はプローブ16に接続され、演算回路22はインピーダンス可変整合部14に接続される。
【0019】
電力検出器20は、プローブ16で測定された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータを出力する機能を備える。また、演算回路22は、電力検出器20から知らされる検出電力が最大化するように、演算およびインピーダンス可変整合部14への制御信号の伝達を行う機能を備える。
【0020】
以下、本実施の形態のアンテナ装置の作用・効果について説明する。
【0021】
プローブ16は開放端となっている逆Lアンテナ12の端部12bの電荷量の変化を、容量結合により電力として検出する。そして、制御部18内の電力検出器20により、プローブ16で測定された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータが、制御部18内の演算回路22に出力される。演算回路22では、電力検出器20からもたらされる検出電力を最大化するように、演算およびインピーダンス可変整合部14への制御信号伝達を行う。
【0022】
一般に、アンテナはアンテナの入力インピーダンスと無線機の出力インピーダンスの整合状態が良いほど給電される電力が大きい。したがって、給電点12aから給電される電力が大きくなると、逆Lアンテナ12上の電流が大きくなる。このため、その給電点12aの反対側の開放端では電荷量が大きくなる。結果として、開放端となる端部12b近傍に配置したプローブ16との容量結合により、プローブ16による検出電力(電力信号)も大きくなる。したがって、プローブ16での検出電力を大きくするよう制御すれば、逆Lアンテナ12の整合状態が良くなることになる。すなわち、インピーダンス整合が実現されることになる。
【0023】
本実施の形態においては、制御部18が、プローブ16による検出電力に基づきインピーダンス可変整合部14を制御することで、インピーダンス整合を実現する。
【0024】
制御部18内の電力検出器20により、プローブ16で測定された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータが、制御部18内の演算回路22に出力される。演算回路22では、電力検出器20からもたらされる検出電力を最大化するように、インピーダンス可変整合部14を制御する。
【0025】
具体的には、例えば、制御部18は、演算回路22での演算およびその演算結果に基づく指示を制御信号として、インピーダンス可変整合部14に出力する。この信号により、インピーダンス可変整合部14内のインピーダンス可変素子(ここでは可変インダクタ14aと可変容量14b)のインピーダンス値を制御する。
【0026】
例えば、可変素子のインピーダンス値をランダムに変化させて、電力検出器20の検出電力が最大となった時の制御信号を記憶しておいても良いし、可変素子に与えられる全ての状態の組み合わせを設定してみて、検出電力が最大となる制御信号を記憶しておいても良い。制御部18での制御方法は、電力検出器20の検出電力を最大化できさえすれば、上述の簡便な方法、公知の方法など、あらゆる制御方法を取り得る。
【0027】
以上のように、本実施の形態によれば、検出部となるプローブ16を開放端であるアンテナ先端近傍に配置することにより、アンテナのインピーダンス整合状態を、プローブ16による検出電力の大小で評価することが可能である。したがって、アンテナ装置の使用周波数によらず広い無線周波数帯域で精度の高いインピーダンス整合を簡易かつ小型の構成で実現できる。また、本実施の形態のアンテナ装置におけるインピーダンス整合のための損失はプローブの検出電力のみである。したがって、極めて低損失なアンテナ装置が実現できる。さらに、制御部18によるインピーダンス可変整合部14の制御で、自動的にインピーダンス整合を実行することが可能となる。
【0028】
本実施の形態において、開放端である端部12bからプローブの先端までの離間距離を、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下と規定する理由は以下の通りである。アンテナの開放端となる端部12bは電荷の腹、電流の節となる。このため、この位置でプローブの検出電力を最大化するよう制御すると、アンテナを流れる電流も増大し、アンテナが共振し、インピーダンス整合した状態となる。一方、アンテナの開放端となる端部12bからアンテナの給電点12a側へ向かい使用する最大無線周波数の波長の4分の1となるアンテナ上の位置は、使用する最大無線周波数の信号がアンテナに入力された時、電荷の節、電流の腹となる位置である。したがって、この位置でプローブの検出電力を最大化するよう制御すると、アンテナを流れる電流が抑制され、アンテナが不整合の状態となる。したがって、アンテナに給電される電力を検出する位置としては不適である。
【0029】
アンテナの開放端となる端部12bから使用する最大無線周波数に対応する波長の8分の1の位置は、端部12bと4分の1波長の位置との中間地点であり、この位置よりも端部12b側であれば、プローブの検出電力を最大化することにより、アンテナを共振・整合状態を向上させることが可能である。いいかえれば、8分の1波長の位置よりも4分の1波長側で検出電力を最大化しようとすると、アンテナの整合状態が劣化することになる。
【0030】
したがって、端部12bから8分の1波長の位置までのアンテナ上の位置は、アンテナに給電される電力を検出する位置としては好適であるといえる。アンテナ上でアンテナ端部12bから使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下の位置にプローブの先端を配置すれば、すべての使用無線周波数に対して、波長の8分の1以下の位置にプローブの先端位置がくることになる。よって、アンテナに給電される電力を評価し、検出電力を最大化するよう制御することで、アンテナのインピーダンス整合を図ることが可能となる。
【0031】
また、アンテナから離間するほど、プローブ16の容量結合による電力検出能力は低下する。アンテナの開放端となる端部12bからの空間的な離間距離が使用無線周波数の波長の8分の1の位置にあれば、電力検出能力の低下はインピーダンス整合の精度を出すうえで十分な許容範囲に収まる。よって、使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下の位置にプローブの先端を配置すれば、すべての使用無線周波数に対して、アンテナに給電される電力の大小を好適に検出し、アンテナのインピーダンス整合を実現することが可能である。
【0032】
なお、本実施の形態において、プローブ16の共振周波数がアンテナ装置で使用される最大無線周波数よりも高いことが望ましい。プローブ16の共振周波数がアンテナ装置で使用される最大無線周波数以下になると、プローブ16の途中に節を含むような電流分布となる。このため、アンテナとの容量結合が複雑になり、プローブ16の検出電力を最大にすることによって、インピーダンス整合が実現されるという単純な関係が崩れてしまうからである。プローブ16の共振周波数がアンテナ装置で使用される最大無線周波数よりも高いことにより、給電点12aから給電される電力が大きくなると、プローブ16による検出電力(電力信号)も大きくなるという関係が使用される無線周波数によらず、実現される。
【0033】
(第2の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、アンテナが給電点側から見て枝分かれした形状を呈し、すべての枝の端部が開放端であり、すべての端部からプローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置される。アンテナが枝分かれすること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容の記載については省略する。
【0034】
図2は、本実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【0035】
アンテナ装置40は、アンテナが給電点32a側から見て二股に枝分かれた形状を備えるモノポールアンテナ32を備える。双方の枝の端部32b、32cが開放端である。そして、双方の開放端である端部32b、32cからプローブ16の先端までの離間距離(図中d、d)が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置される。本実施の形態では、モノポールアンテナ32の一方の枝を折り曲げることで、上記離間距離の関係を実現している。
【0036】
本実施の形態のアンテナ装置は、モノポールアンテナ32が二股に枝分かれした導体を備えることで、2つの異なる無線周波数帯域に対応することが可能である。そして、モノポールアンテナ32上の支配的な電流分布が2つの導体のいずれになろうとも、一つの機構で高精度なインピーダンス整合を実現することが可能となる。
【0037】
(第3の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、制御部が、プローブに接続される電力検出器と、電力検出器のアナログ出力をバイナリデータに変換するAD変換器と、あるサンプリング時刻におけるバイナリデータを記憶するバッファと、AD変換器のバイナリデータとバッファに記憶されたバイナリデータの値を比較する比較器と、比較器の比較論理に連動してカウント数が増減し、そのバイナリ出力がインピーダンス可変整合部内の複数のインピーダンス可変素子に接続されるアップダウンカウンタと、を備える。制御部の演算回路の詳細構成を記載する点、および、インピーダンス可変整合部の構成が異なる点以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、以下、第1の実施の形態と重複する内容の記載については省略する。
【0038】
図3は、本実施の形態のアンテナ装置の演算回路とインピーダンス整合部の構成の詳細を示す図である。
【0039】
演算回路22は、電力検出器20に接続するAD変換器34と、AD変換器34に接続されるバッファ36と、AD変換器34およびバッファ36に接続される比較器38と、比較器38に接続されるアップダウンカウンタ42とから構成される。
【0040】
そして、インピーダンス可変整合部14は、アップダウンカウンタ42に接続する複数のスイッチと容量からなる可変容量44から構成されている。可変容量44には、アップダウンカウンタ42との間にインダクタ46が設けられている。
【0041】
可変容量44は、無線機30とアンテナ12との間の線路に各容量が並列に接続されている。
【0042】
AD変換器34は、電力検出器20から得られる検出電力値に相当する直流電圧または直流電流に対応するバイナリデータを出力する。バッファ36は、クロック信号などにより指定されたタイミングでバイナリデータを保持する。
【0043】
比較器38は、電力検出器20からのバイナリデータ(P)とバッファからのバイナリデータ(Q)を比較して、その大小の結果を論理出力する。アップダウンカウンタ42は、比較器38からの論理出力に応じて、カウント数が増減する。すなわち、バイナリデータをアップカウントまたはダウンカウントする。
【0044】
比較器38に接続されるバイナリデータPとQは、比較演算を行う時点のデータPと、1サンプリング前のデータQである。P>Qであれば、検出電力は増大したことになり、P<Qであれば、検出電力が減少したことになる。
【0045】
可変容量44の容量値可変範囲の中に、検出電力が最大となる容量値が存在するならば、アップダウンカウンタ42を、P>Qの論理出力によりアップカウントし、P<Qの論理出力によりダウンカウントすれば、このカウント数に基づきインピーダンス整合部14に制御信号を送ることで検出電力が最大となるように可変容量44を制御できる。
【0046】
本実施の形態のアンテナ装置によっても、第1の実施の形態と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0047】
(第4の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、インピーダンス可変整合回路のインピーダンス可変素子が、可変容量ダイオードである。また、制御部にDA変換器が設けられる。この2点以外は第3の実施の形態と同様である。したがって、第3の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0048】
図4は、本実施の形態のアンテナ装置の演算回路とインピーダンス整合回路の構成の詳細を示す図である。
【0049】
本実施の形態のアンテナ装置において、演算回路62は、電力検出器20に接続するAD変換器34と、AD変換器34に接続するバッファ36と、AD変換器34およびバッファ36に接続する比較器38と、比較器38に接続するアップダウンカウンタ42と、アップダウンカウンタ42のバイナリ出力に接続するDA変換器64とから構成される。そして、インピーダンス可変整合部14は、DA変換器64に接続する可変容量ダイオード66とインダクタ76から構成されている。可変容量ダイオード66は、例えば、MEMSが用いられる。
【0050】
DA変換器64は、アップダウンカウンタ42のバイナリ出力に比例した直流電圧または直流電流を、インピーダンス可変整合部14へバイアス電圧として出力する。アップダウンカウンタ42のカウント数のバイナリ出力とDA変換器64の電圧出力が比例するので、第3の実施形態と同様に、検出電力が最大となるようにインピーダンス可変整合部14を制御できる。
【0051】
本実施の形態のアンテナ装置によっても、第3の実施の形態と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0052】
(第5の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、制御部が、プローブに接続される電力検出器と、電力検出器のアナログ出力をバイナリデータに変換するAD変換器と、第1の時刻におけるバイナリデータを記憶する第1のバッファと、第1の時刻の1サンプリング前の第2の時刻のバイナリデータを記憶する第2のバッファと、第1のバッファと第2のバッファに記憶されたバイナリデータの値を比較する比較器と、比較器の比較論理に連動してカウント数が増減するアップダウンカウンタと、アップダウンカウンタのカウント数のバイナリ値に応じてインピーダンス可変整合部へバイアス電圧を出力するDAコンバータと、備える。制御部の構成以外は第4の実施の形態と同様であるので、第4の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0053】
図5は、本実施の形態のアンテナ装置の演算回路の構成の詳細を示す図である。
【0054】
演算回路52は、電力検出器(図示せず)に接続するAD変換器34と、AD変換器34に接続する第1のバッファ54と、第1のバッファ54に接続される第2のバッファ56と、第1のバッファ54および第2のバッファ56に接続される比較器38と、比較器38に接続するアップダウンカウンタ42と、DA変換器64から構成される。DA変換器64の出力はインピーダンス可変整合部(図示せず)に接続される。
【0055】
AD変換器34は、電力検出器から得られる検出電力値に相当する直流電圧または直流電流に対応するバイナリデータを出力する。第1のバッファ54は、クロック信号などにより指定されたタイミングで第1の時刻におけるバイナリデータ(P)を記憶する。第2のバッファ56は、第1の時刻の1サンプリング前の第2の時刻のバイナリデータ(Q)を記憶する。
【0056】
比較器38は、第1のバッファ54からのバイナリデータ(P)と第2のバッファ56からのバイナリデータ(Q)の値を比較して、その大小の結果を論理出力する。アップダウンカウンタ42は、比較器38からの論理出力に応じて、カウント数を増減させる。すなわち、カウント数のバイナリデータをアップカウントまたはダウンカウントする。そして、DAコンバータ64がアップダウンカウンタ42のカウント数のバイナリ値に応じてインピーダンス可変整合部へバイアス電圧を出力する。
【0057】
本実施の形態によれば、比較器38において比較するバイナリデータを、ともにバッファに記憶されたデータとすることにより、AD変換器34から出力されるデータを用いる第3の実施の形態に比較して、バイナリデータを同期して確実に取り込むことができ、より安定した動作が可能となる。したがって、より精度よくインピーダンス整合を実現することが可能となる。
【0058】
(第6の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、インピーダンス可変整合部のアンテナに対して反対側に接続される電力増幅器をさらに備え、電力増幅器の利得信号が制御部に入力され、利得信号に基づき制御部がインピーダンス可変整合部を制御する。上記構成以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0059】
図6は、本実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【0060】
本実施の形態のアンテナ装置60は、逆Lアンテナ12と、逆Lアンテナ12の給電点12aに接続されたインピーダンス可変整合部14と、インピーダンス可変整合部14に接続する利得可変電力増幅器68と、逆Lアンテナ12の端部12bから使用する最大無線周波数の波長の8分の1以下の距離に近接して配置されたプローブ16を備える。また、プローブ16に接続され、プローブ16で測定される電力信号が入力され、この電力信号に基づきインピーダンス可変整合部14を制御する制御部18を備える。
【0061】
制御部18は、電力検出器20と、演算回路22を備える。電力検出器20はプローブ16に接続され、演算回路22はインピーダンス可変整合部14に接続される。
【0062】
そして、演算回路22は、利得可変電力増幅器68と電力検出器20に接続される。演算回路22と利得可変電力増幅器68は利得制御線72により接続される。インピーダンス可変整合部14は、可変インダクタ14aと可変容量14bから構成されている。
【0063】
利得可変電力増幅器68は、利得制御線72で伝達される利得制御信号によって定められた利得分だけ無線周波数の信号電力を増幅する。さらに、利得可変電力増幅器68の利得信号が制御部18に入力され、利得信号に基づき制御部18がインピーダンス可変整合部14を制御する。
【0064】
ここで、利得可変電力増幅器68の利得をAとする。利得Aが変化すると電力検出器20の検出電力もAに比例して変化する。そこで、演算回路22において、電力検出器20の出力に対して常にA分の1倍するように演算していれば、制御対象となるデータは利得可変出力増幅器68が無い場合と同じになる。したがって、利得可変電力増幅器の利得Aが時間的に変化しても、第1の実施の形態と同様に、アンテナを自動的にインピーダンス整合することができる。
【0065】
(第7の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、利得可変電力増幅器が演算回路ではなく電力検出器に接続される以外は第6の実施の形態と同様である。したがって、第6の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0066】
図7は、本実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【0067】
本実施の形態のアンテナ装置70は、逆Lアンテナ12と、逆Lアンテナ12の給電点12aに接続されたインピーダンス可変整合部14と、インピーダンス可変整合部14に接続する利得可変電力増幅器68と、逆Lアンテナ12の先端から使用する最大無線周波数の波長の8分の1以下の距離に近接して配置されたプローブ16を備える。また、プローブ16に接続され、プローブ16で測定される電力信号が入力され、この電力信号に基づきインピーダンス可変整合部14を制御する制御部18を備える。
【0068】
制御部18は、電力検出器20と、演算回路22を備える。電力検出器20はプローブ16に接続され、演算回路22はインピーダンス可変整合部14に接続される。
【0069】
そして、電力検出器20は、利得可変電力増幅器68に接続される。電力検出器20と利得可変電力増幅器68は利得制御線72により接続される。インピーダンス可変整合部14は、可変インダクタ14aと可変容量14bから構成されている。
【0070】
利得可変電力増幅器68は、利得制御線72で伝達される利得制御信号によって定められた利得分だけ無線周波数の信号電力を増幅する。
【0071】
電力検出器22は、基準とする電力を可変して検出された電力との比較を繰り返すことにより検出電力を計算するため、その基準となる電力を利得可変電力増幅器68の利得Aの情報を含む利得制御信号に比例させることにより、電力検出器22の検出電力は、利得A倍された基準電力周辺で高い解像度の電力検出を行える。このため、本実施の形態のアンテナ装置によれば、利得可変出力増幅器68が無い場合と同様の精度で、アンテナを自動的にインピーダンス整合することが可能となる。
【0072】
(第8の実施の形態)
本実施の形態のアンテナ装置は、先端同士が隣接する2本のアンテナを備え、一方のアンテナを第1の実施の形態におけるプローブとして利用し、インピーダンス整合を行う。以下、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0073】
図8は、本実施の形態のアンテナ装置の構成を示す模式図である。
【0074】
本実施の形態のアンテナ装置80は、開放端である2つの端部12bの離間距離(図中d)が使用する無線周波数の波長の8分の1以下の距離に近接して配置された2つの逆Lアンテナ12と、2つの逆Lアンテナ12の給電点12aそれぞれに接続された2つのインピーダンス可変整合部14と、逆Lアンテナ12とインピーダンス可変整合部14の接続を切り替える切替スイッチ12とを備えている。また、切替スイッチ82に接続される制御部18を備える。
【0075】
インピーダンス可変整合部14は、可変インダクタ14aと可変容量14bから構成されている。また、制御部18は、電力検出器20と、演算回路22を備える。電力検出器20は切替スイッチ82に接続され、演算回路22は2つのインピーダンス可変整合部14に接続される。
【0076】
2つの逆Lアンテナ12は、一方が送信を行っている際に、他方は第1の実施形態におけるプローブ16と同様に、受信電力を、切替スイッチ82を介して接続された電力検出器20に創出することができる。
【0077】
切替スイッチ82は、電力検出器20に送出する無線信号を、2つの逆Lアンテナ12から取り出された無線信号のいずれかに切り替えることができる。
【0078】
ここで、2つの逆Lアンテナ12の一方のみが送信を行っている場合、切替スイッチ82を他方の逆Lアンテナ12側に切り替えておけば、第1の実施形態と同様の作用により、送信を行っている側のアンテナを自動的にインピーダンス整合することができる。これを交互に繰り返せば、両方のアンテナを自動的にインピーダンス整合すること可能である。いずれのアンテナが送信を行っているかは、無線機から制御信号を得る方法、取り出した2つの電力を比較して大きいほうを送信とする方法など、が考えられる。
【0079】
本実施の形態によれば、MIMO(Multiple Input Multiple Output)等のアレーアンテナにおいて、構成部品を大幅に増やすことなく高精度のインピーダンス整合を実現することが可能となる。
【0080】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0081】
例えば、インピーダンス整合部について、インピーダンス可変素子を複数系統設けて、それぞれの系統についてインピーダンス整合をとる動作を繰り返すことにより、インピーダンス整合を図る構成としてもかまわない。具体的には、例えば、第3の実施の形態と同様の線路に並列結合される容量を第1のインピーダンス可変素子とし、加えて、線路に直列接合される容量を第2のインピーダンス可変素子として設ける。この第1のインピーダンス可変素子と第2のインピーダンス可変素子で、それぞれ独立にインピーダンス整合をとるよう制御部で制御する。この方法により、さらに高精度なインピーダンス整合を実現できる。
【0082】
また、実施の形態においては、アップダウンカウンタを用いて、このカウントに基づきインピーダンス整合部に制御信号を送ることで検出電力が最大となるよう制御する方法を示した。これに対し、例えば、インピーダンス整合部の容量を適宜変化させて、検出電力と制御信号の対応を記憶させておき、検出電力が最大となる制御信号の値を採用してインピーダンス整合を行う方法であってもかまわない。
【0083】
そして、実施の形態の説明においては、アンテナ装置、無線通信装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされるアンテナ装置、無線通信装置に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0084】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのアンテナ装置、無線通信装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0085】
10 アンテナ装置
12 逆Lアンテナ
12a 給電点
12b 端部(開放端)
14 インピーダンス整合部
16 プローブ
18 制御部
20 電力検出器
22 演算回路
34 AD変換器
36 バッファ
38 比較器
40 アンテナ装置
42 アップダウンカウンタ
44 可変容量
52 演算回路
54 第1のバッファ
56 第2のバッファ
60 アンテナ装置
62 演算回路
64 DA変換器
68 利得可変電力増幅器
70 アンテナ装置
72 利得制御線
80 アンテナ装置
82 切替スイッチ






【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電点と反対側の端部が開放端となるアンテナと、
前記給電点で前記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合部と、
前記端部からプローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置されるプローブと、
前記プローブに接続され、前記プローブで測定される電力信号に基づき前記インピーダンス可変整合部を制御する制御部と、
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記プローブの共振周波数が前記最大無線周波数よりも高いことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記プローブが差動型プローブであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナが前記給電点側から見て枝分かれした形状を有し、すべての枝の端部が開放端であり、すべての前記端部から前記プローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう前記プローブが配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記プローブに接続される電力検出器と、
前記電力検出器のアナログ出力をバイナリデータに変換するAD変換器と、
あるサンプリング時刻におけるバイナリデータを記憶するバッファと、
前記AD変換器のバイナリデータと前記バッファに記憶されたバイナリ―データの値を比較する比較器と、
前記比較器の比較論理に連動してカウント数が増減し、そのバイナリ出力が前記インピーダンス可変整合部内の複数のインピーダンス可変素子に接続されるアップダウンカウンタと、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記プローブに接続される電力検出器と、
前記電力検出器のアナログ出力をバイナリデータに変換するAD変換器と、
第1の時刻における前記バイナリデータを記憶する第1のバッファと、
前記第1の時刻の1サンプリング前の第2の時刻のバイナリデータを記憶する第2のバッファと、
前記第1のバッファと前記第2のバッファに記憶されたバイナリデータの値を比較する比較器と、
前記比較器の比較論理に連動してカウント数が増減するアップダウンカウンタと、
前記アップダウンカウンタのカウント数のバイナリ値に応じて、前記インピーダンス可変整合部へバイアス電圧を出力するDAコンバータと、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記インピーダンス可変整合部の前記アンテナに対して反対側に接続される電力増幅器をさらに備え、
前記電力増幅器の利得信号が前記制御部に入力され、前記利得信号に基づき前記制御部が前記インピーダンス可変整合部を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項8】
給電点から離間する端部が開放端となるアンテナ、前記給電点で前記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合部、前記端部からプローブの先端までの離間距離が、アンテナ装置において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう配置されるプローブ、前記プローブに接続され、前記プローブで測定される電力信号に基づき前記インピーダンス可変整合部を制御する制御部を有するアンテナ装置と、
前記インピーダンス可変整合部の前記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、を備えることを特徴とする無線通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16949(P2013−16949A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147022(P2011−147022)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】