説明

アンテナ装置及び通信装置

【課題】アンテナ面積を小さくし、少なくとも半球面方向の指向性の制御が可能であり、電波の伝搬距離をより遠くにできるアンテナ装置及びそのアンテナ装置を用いた通信装置を提供すること。
【解決手段】平面アンテナ素子2を平行軸8を中心に回動させて指向性方向を平面7に垂直な方向(図4中のA方向)から当該平面7に平行な方向(図4中のC方向)までの1/4円周上に可変する一方、その可変範囲である1/4円周を直角方向軸19を中心に360度回動させることとした。従って、平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性を有するアンテナ装置及びそのアンテナ装置を用いた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器、特に携帯電話機や携帯情報端末に用いられたアンテナは無指向性のもが多かったが、通信の大容量高速化に伴いアンテナの利得向上が求められるようになった。
【0003】
そのため、アンテナに指向性を持たせると共にその指向性を制御する方法として複数のアンテナ素子を用いるアンテナアレイ等が考えられたが、アンテナ素子間隔がある程度必要なためアンテナ自体が大きくなってしまう点や指向性制御が複雑になってしまう等の問題があった。
【0004】
そこで、例えば複数のアンテナ素子と、そのアンテナ素子の隣接する素子同士を接続・非接続状態に制御するスイッチとを含むアンテナ装置であって、そのスイッチの制御によりアンテナ指向性の制御をすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−51572号公報(段落[0012]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のアンテナ装置では、アンテナ素子間隔が狭くなったとは言え、やはり複数のアンテナ素子が必要で面積を広く取ると共に電波の伝搬距離が落ちるという問題がある。
【0006】
また、例えば半球面の全てでアンテナの指向性方向を可変して満たすことは難しいし、多数のスイッチを用いるためその制御も必ずしも容易ではないという問題も考えられる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、アンテナ面積を小さくし、少なくとも半球面方向の指向性の制御が可能であり、電波の伝搬距離をより遠くにできるアンテナ装置及びそのアンテナ装置を用いた通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るアンテナ装置は、指向性を有する平面アンテナ素子と、前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な平行軸を中心として少なくとも90度回動可能に保持する保持部と、前記平面アンテナ素子を前記平面に平行でなく、かつ、前記平行軸に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも360度回動可能に、前記保持部を保持するベース部とを具備することを特徴とする。ここで、「指向性」とは、放射電波や受信電波が最も強くなる方向を有することをいい、「平面アンテナ素子」とは例えばパッチアンテナ等をいう。
【0009】
本発明では、例えば平面アンテナ素子を回動させて指向性方向を平面に垂直な方向から当初の平面に平行な方向までの1/4円周上に可変する一方、その可変範囲である1/4円周を直角方向軸を中心に360度回動させることで、平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できることとなる。
【0010】
また、平面アンテナ素子を回動させることで指向性方向を制御することとしたので、アレイアンテナのように複数のアンテナ素子を必要とせず、アンテナ装置の面積を小さくできると共に電波の伝搬距離が落ちることを防ぐことが可能となる。
【0011】
一方、平面アンテナ素子の回動方向を、単に平行軸を中心とする方向と平面に平行でその平行軸に直交する軸を中心とする方向とにすると、従来の同平面上MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)アクチュエータだと、最大回動範囲が限られている。
【0012】
その結果、平面アンテナ素子の指向性方向を例えば半球面上の全てに向けることができず、不足する可変方向を補うために複数の平面アンテナ素子が必要となり、アンテナ装置の面積を小さくすることができないと共に、その伝搬距離も落ちてしまうこととなる。
【0013】
これに対し、平面アンテナ素子の回動方向を平行軸と、平面に平行でなく、かつ、平行軸に直角な方向の直角方向軸とを中心とすることにより、十分な角度に当該平面アンテナ素子を回動できる。
【0014】
本発明の一の形態によれば、前記平面アンテナ素子は、前記平行軸に重なる一辺を有することを特徴とする。これにより、より平面アンテナの回動を安定的にすることができる。
【0015】
本発明の一の形態によれば、前記保持部は、一端側が前記ベース部に固定され、他端側が前記ベース部から離れるように湾曲可能な可動部を有し、前記平面アンテナ素子は、前記他端側で回動自在に保持されており、前記可動部の湾曲により前記一辺側が前記ベース部から離れることで前記平行軸を中心として回動するものであることを特徴とする。これにより、最初は例えば平面アンテナ素子の平面が垂直向きであるが、保持部の他端側がベース部から立上るにつれて平面アンテナ素子も一辺側が引き起こされるように、平行軸を中心として回動させることが可能となる。更に可動部を湾曲させて完全に平面の向きを90度回動させることもできる。
【0016】
ここで、可動部としては例えば「Bimorph方式ポリマーアクチュエータ」があるが、これに限られるものではなく熱による部材の変形や、静電力、圧電、電気化学反応等による変形のBimorph方式で回動させ、駆動するものでもよい。また、Bimorph方式ではないアクチュエータでもよい。例えばユニモルフ方式でもよい。
【0017】
本発明の他の形態に係るアンテナ装置は、指向性を有する平面アンテナ素子と、前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な第1の平行軸を中心として一方向回りに少なくとも90度回動可能に保持する第1の保持部と、前記平面アンテナ素子を前記第1の平行軸と平行な第2の平行軸を中心として前記一方向回りと反対回りに少なくとも90度回動可能に保持する第2の保持部と、前記平面アンテナ素子を前記平面に平行でなく、かつ、前記第1及び第2の平行軸方向に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも180度回動可能に、前記第1及び第2の保持部を保持するベース部とを具備することを特徴とする。
【0018】
本発明では、第1の平行軸を中心とする一方向回りと第2の平行軸を中心とする反対回りとを合わせて180度回動させることとしたので、1/2円周上に平面アンテナ素子の指向性方向を可変させることができる。また、その可変範囲である1/2円周を直角方向軸を中心に180度回動させることで、平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できることとなる。したがって、ベース部を360度回動できない場合でも少なくとも180度回動できれば平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できる。
【0019】
本発明の一の形態によれば、前記平面アンテナ素子は、前記第1の平行軸に重なる一辺とその一辺に離間して対向し前記第2の平行軸に重なる他辺とを有することを特徴とする。これにより、例えば最初平面アンテナ素子の指向性方向をベース部に対し垂直向きにすると、第1の平行軸を中心として回動させる場合と第2の平行軸を中心として回動させる場合とで当該指向性方向を一方向回りと反対回りに容易に回動可能となる。
【0020】
本発明の一の形態によれば、前記第1の保持部は、一端側が前記ベース部に固定され、他端側が前記ベース部から離れるように湾曲可能な第1の可動部を有し、前記第2の保持部は、一端側が前記ベース部に固定され、他端側が前記ベース部から離れるように湾曲可能な第2の可動部を有し、前記平面アンテナ素子は、各前記他端側で回動自在に保持されており、前記第1の可動部の湾曲により前記一辺側が前記ベース部から離れることで前記第2の平行軸を中心として回動し、前記第2の可動部の湾曲により前記他辺側が前記ベース部から離れることで前記第1の平行軸を中心として回動するものであることを特徴とする。これにより、最初は例えば平面アンテナ素子の平面が垂直向きであるが、第1の保持部の他端側がベース部から立上るにつれて平面アンテナ素子も第2の平行軸を中心として回動し一辺側が引き起こされ、当該平面の向きを一方向回りと反対回りに可変させることが可能となる。更に第1の可動部を湾曲させて完全に平面の向きを例えば左側90度に回動させることもできる。また、第2の保持部の他端側がベース部から立上ると平面アンテナ素子は第1の平行軸を中心に回動し他辺側が引き起こされ、当該平面の向きを一方向回りに可変させることが可能となる。同様に、更に第2の可動部を湾曲させて完全に平面の向きを例えば右側90度に回動させることもできる。
【0021】
本発明の一の形態によれば、前記平面アンテナ素子は、略四角形を有し、前記一辺及び他辺の他の対向する二辺が前記第1及び第2の保持部の間に配置されていることを特徴とする。これにより、略四角形の平面アンテナ素子の平面全体を確実に第1及び第2の平行軸を中心として夫々90度回動でき、1/2円周上に平面アンテナ素子の指向性方向を可変させることが可能となる。
【0022】
本発明の一の形態によれば、前記ベース部を前記360度回動可能なベース可動部を更に具備することを特徴とする。ここで、「ベース可動部」とは、例えば熱、磁気力、静電力、電磁力や圧電等によりベース部を回動させるものの全てを言う。具体的にはマイクロモータ等がある。これにより、容易に平面アンテナ素子を直角方向軸を中心として回動させることができる。
【0023】
本発明の他の形態に係るアンテナ装置は、指向性を有する平面アンテナ素子と、前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な第1の平行軸を中心として第1の一方向回りに回動可能に保持する第1の保持部と、前記平面アンテナ素子を前記第1の平行軸と平行な第2の平行軸を中心として前記第1の一方向回りと反対回りに回動可能に保持する第2の保持部と、前記平面アンテナ素子を前記平面と平行で、かつ、前記第1及び第2の平行軸に直角な方向の第3の平行軸を中心として第2の一方向回りに回動可能に、前記第1及び第2の保持部を保持する第3の保持部と、前記平面アンテナ素子を前記第3の平行軸と平行な第4の平行軸を中心として前記第2の一方向回りと反対回りに回動可能に、前記第1及び第2の保持部を保持する第4の保持部と、前記平面アンテナ素子を前記第1、第2、第3及び第4の平行軸の少なくともいずれかを中心に回動可能に、前記第3及び第4の保持部を保持するベース部とを具備することを特徴とする。
【0024】
本発明では、第1から第4の保持部だけでなくベース部も第1から第4の平行軸中心に回動可能に保持しているので、第1から第4の保持部の可動による平面アンテナ素子の回動を90度未満の角度、例えば45度までの角度の回動とすることができる。足りない45度を第3の保持部及び第4の保持部を保持するベース部を動かすことにより全体で90度回動することができる。
【0025】
本発明の一の形態によれば、前記ベース部を保持する台と、そのベース部の少なくとも3箇所で当該各箇所での前記台からの高さを変更可能なベース可動部とを更に具備することを特徴とする。これにより、3箇所あるベース可動部を制御して、平面アンテナ素子の周囲360度の方角に第3の保持部及び第4の保持部を保持するベース部の傾きを向けることが可能となり、360度の方向で第1から第4の少なくともいずれかの平行軸を中心に平面アンテナ素子を回動させることができる。
【0026】
したがって、例えばベース部を平面アンテナ素子の平面に平行でなく、かつ、第1及び第2の平行軸方向に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも360度回動させなくとも、半球面の全面に平面アンテナ素子の指向性方向を向けることが可能となる。
【0027】
また、例えば第1及び第3の保持部での第1及び第3の平行軸を中心とする回動が夫々θ、φであるときも、平面アンテナ素子自体の回動は夫々のθ、φにベース可動部によるベース部の回動分を加算でき、アンテナ装置全体での回動角を大きくすることが可能となる。これによって、従来、回動角度を大きく取れず、アンテナ装置の指向性方向を半球面の全面に向けることができなかったものが、当該半球面の全面に向けることが可能となる。
【0028】
本発明の他の形態に係る通信装置は、指向性を有する平面アンテナ素子と、前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な平行軸を中心として少なくとも90度回動可能に保持する保持部と、前記平面アンテナ素子を前記平面に平行でなく、かつ、前記平行軸に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも360度回動可能に、前記保持部を保持するベース部と前記アンテナ素子に電気的に接続された配線を有する基板とを具備することを特徴とする。
【0029】
本発明では、例えば平面アンテナ素子を回動させて指向性方向を平面に垂直な方向から当初の平面に平行な方向までの1/4円周上に可変する一方、その可変範囲である1/4円周を直角方向軸を中心に360度回動可能なアンテナ装置を基板上に設けることとした。したがって半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できるので、アンテナ装置の面積を小さくできると共に電波の伝搬距離が落ちることを防ぐことが可能な通信装置とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、アンテナ面積を小さくし、少なくとも半球面方向の指向性の制御が可能であり、電波の伝搬距離が落ちることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づきアンテナ装置及びそのアンテナ装置を備えた通信装置について説明する。なお、アンテナ装置に設けられたアンテナとして平面アンテナ素子を説明するが、勿論これに限られるものではなく立体アンテナであってもよい。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図、図2はアンテナ装置の平面図及び図3は、ポリマーアクチュエータ素子の断面図である。
【0033】
アンテナ装置1は、図1に示すように指向性を有する平面アンテナ素子2、その平面アンテナ素子2を回動可能に保持する保持部3及び当該保持部3を保持するベース部4を有する。また、アンテナ装置1はベース部4を可動するベース可動部5を有する。
【0034】
ここで、平面アンテナ素子2は例えば図1に示すように略四角形状のパッチアンテナで、その電波信号の送受信表面である平面7を有し、当該平面7に直交する方向(図1中のAの矢印方向)に指向性を備える。
【0035】
また、平面アンテナ素子2は例えば図2に示すように平面7に平行な平行軸8に当該四角形の一辺2aが重なるように形成されており、その一辺2aの両端付近に平行軸8の方向(図2中のX軸方向)に突出する突起部9を有している。
【0036】
保持部3は、例えば図1及び図2に示すように平面アンテナ素子2を間に挟むように互いに対向する略板形状の保持部3a,3bからなり、ベース部4の上面に配置されている。
【0037】
また、保持部3a,3bは夫々一端側10と他端側11を有し、一端側はベース部4の上面に例えば接着固定され、他端側11は夫々可動部12a,12bを有する。
【0038】
他端側11には、例えば図2に示すように突起部9が回動可能なように凹部13が設けられており、その中に突起部9の一部が挿入されている。尚、図2では突起部が短く描かれているが、これに限られるものではないことは無論である。
【0039】
可動部12a,12bは、例えば一端側10がベース部4の上面に固定されたまま他端側11が当該上面から離れるように湾曲することが可能で、例えばBimorph方式のポリマーアクチュエータ素子14により構成されてもよい。また、熱による部材の変形や、静電力、圧電、電気化学反応等による変形のBimorph方式で湾曲させてもよい。Bimorph方式ではないアクチュエータを使っても可能である。
【0040】
ここで、ポリマーアクチュエータ素子14は、例えば図3に示すように陽イオン物質が含浸されたイオン導電性高分子膜(イオン導電性高分子フィルム)15と、該イオン導電性高分子膜15の両面それぞれに設けられる電極膜16a,16bとを備えている。また、該電極膜16a,16bの夫々に電気的に接続された図示しない配線を備えており、当該配線より電極膜16a,16b間に電圧が印加されることによりイオン導電性高分子膜15が湾曲または変形するものである。
【0041】
これにより、可動部12aを湾曲させて平面アンテナ素子2の一辺(2a)側をベース部4の上面から離れさせると、突起部9は平行軸上で例えばベース部4の上面を基準に少なくとも90度回動可能となる。
【0042】
ベース部4は、例えば図1及び図2に示すように平板形状を有し、その上面17に保持部3a,3bの一端側10が固定されている。
【0043】
また、ベース可動部5は、例えばベース部4の裏側(保持部3と反対側)に図示しないマイクロモータが設けられており、当該マイクロモータの回転軸がベース部4に連結されている。これにより、回転軸の回動によりベース部4を平面アンテナ素子2の平面7に平行ではなく、かつ、平行軸8に直角な方向(図1中のZ軸方向)の直角方向軸19を中心として360度回動させることが可能となり、保持部3a,3bを同様に回動させることができる。
【0044】
その結果、保持部3a,3bに保持されている平面アンテナ素子2も平面7に平行ではなく、かつ、平行軸8に直角な方向(図1中のZ軸方向)の直角方向軸19を中心として360度回動することとなる。
【0045】
勿論、ベース可動部5はマイクロモータに限られず、熱による部材の変形や、磁気力や静電力、電磁力、圧電等により回動させ、駆動することも可能である。
【0046】
尚、上述の説明では保持部3として平面アンテナ素子2の両側に保持部3a,3bを設けたが、いずれか一方だけでも良いことは勿論である。これにより、部品点数を少なくすることができる。ただし、上述のように両側に設けたほうがより安定的に平面アンテナ素子2を平行軸8を中心に回動できる。
【0047】
以上のように構成されたアンテナ装置1の動作について平面アンテナ素子の回動を中心に説明する。図4は、平面アンテナ素子の動作を説明する図及び図5は、可動部が湾曲したときの説明図である。
【0048】
まず、例えば図4に示すように平面アンテナ素子2の指向性方向Aが図4中のZ軸方向を向いているとする。
【0049】
ここで、可動部12a,12b及びベース可動部5を制御するアンテナ駆動制御回路により可動部12a,12bの例えばポリマーアクチュエータ素子14の電極膜16a,16b間に電圧が印加されるとポリマーアクチュエータ素子自身が片方膨張、もう片方収縮する。これにより、可動部12a,12bは例えば上方に湾曲し他端側11がベース部4の上面から離れる。これに伴って平面アンテナ素子2の一辺2aも、保持部3a,3bの両他端側11に引き起こされるようにベース部4の上面から離れる。
【0050】
一方、その平面アンテナ素子2の当該一辺2aに対向する他辺2bは、一辺2aが引き起こされていてもベース部4の上面にあるから、結局、平面アンテナ素子2の平面は傾き、当該一辺2aに重なる平行軸8を中心に回動することとなる。尚、言うまでも無く、より安定的回動のために、他辺2bが回動できるように固定されても良い。
【0051】
更にポリマーアクチュエータ素子14に電圧が印加されると、例えば図5に示すように可動部12a,12bは更に湾曲し、一辺2aは他辺2bに対し真上まで起き上がることとなる。このとき、平面アンテナ素子2が平行軸8を中心として反時計回りに回動する。
【0052】
その結果、平面アンテナ素子2は上方(図4中のZ軸方向)を向いていた状態から左横向き(図4中のY軸方向)に、その向きを連続的に変える。すなわち、その指向性方向Aから図4及び図5のY軸方向に平行となる指向性方向Cに向きを連続的に変え、1/4円周上にその指向性方向を変更することが可能となる。
【0053】
そして、アンテナ駆動制御回路によりベース可動部5の例えばマイクロモータに電流が供給されると、当該マイクロモータが回動して、ベース部4を回動させる。その結果、平面アンテナ素子2は、例えば図4に示すようにマイクロモータの回転軸が360度回動すると、当該1/4円周の可変範囲が更に直角方向軸19を中心に360度回動し、結果的に平面アンテナ素子2の指向性方向の可変範囲が半球面上の全ての方向となる。
【0054】
このように本実施形態によれば、平面アンテナ素子2を平行軸8を中心に回動させて指向性方向を平面7に垂直な方向(図4中のA方向)から当該平面7に平行な方向(図4中のC方向)までの1/4円周上に可変する一方、その可変範囲である1/4円周を直角方向軸19を中心に360度回動させることとした。従って、平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できることとなる。
【0055】
また、平面アンテナ素子2を回動させることで指向性方向を制御することとしたので、アレイアンテナのように複数のアンテナ素子を必要とせず、アンテナ装置1の面積を小さくできると共に電波の伝搬距離が落ちることを防ぐことが可能となる。
【0056】
また、平面アンテナ素子2は、平行軸8に重なる一辺2aを有することとしたので、より平面アンテナ素子2の回動を安定的にすることができる。
【0057】
更に保持部3a,3bは、一端側10がベース部4に固定され、他端側11がベース部4から離れるように湾曲可能な可動部12a,12bを有し、平面アンテナ素子2は、他端側11で回動自在に保持されている。また、可動部12a,12bの湾曲により一辺2aがベース部4から離れることで平行軸8を中心として回動することとした。従って、最初は例えば平面アンテナ素子2の平面7が垂直向きであるが、保持部3a,3bの他端側11がベース部4から立上るにつれて平面アンテナ素子2も一辺2aが引き起こされるように、平行軸8を中心として回動させることが可能となる。更に可動部を湾曲させて図5に示すように完全に平面7の向きを90度回動させることもできる。
【0058】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図及び図7は、平面アンテナ素子の平面図である。尚、これ以降の発明の説明では、上述した実施形態に係るアンテナ装置の部材や機能等について同様なものは説明を簡略または省略して、異なる点を中心に説明する。
【0059】
図6に示すようにアンテナ装置101は、指向性を有する平面アンテナ素子2、その平面アンテナ素子2を回動可能に保持する保持部103及び当該保持部103を保持するベース部4を有する。また、アンテナ装置1はベース部4を可動するベース可動部5を有する。
【0060】
ここで、平面アンテナ素子2は例えば図7に示すように平面7に平行で互いに離間する第1の平行軸108a及び第2の平行軸108bを有し、第1の平行軸108aに四角形の一辺2aが重なり、第2の平行軸108bにその一辺2aに対向する他辺2bが重なるように形成されている。また、平面アンテナ素子2は,その一辺2aの後述する第1の保持部の他端側付近に第1の平行軸108aの方向(図2中のX軸方向)に突出する突起部9を有している。同様に平面アンテナ素子2は,その他辺2bの後述する第2の保持部の他端側付近に第2の平行軸108bの方向(図2中のX軸方向)に突出する突起部9を有している。
【0061】
保持部103は、例えば図7に示すように平面アンテナ素子2を間に挟むように互いに対向し、後述する一端部及び他端部が夫々逆側に位置する略板形状の第1及び第2の保持部103a,103bからなり、ベース部4の上面に配置されている。
【0062】
また、第1及び第2の保持部103a,103bは夫々一端側10と他端側11を有し、一端側10はベース部4の上面に例えば接着固定されている。また、他端側11には第1の保持部103aは第1の可動部112aを、第2の保持部103bは第2の可動部112bを有する。ここで、第1及び第2の可動部112a,112bの構成は、第1の実施形態の可動部12a,12bと同様であるのでその説明を省略する。
【0063】
他端側11には、例えば図7に示すように突起部9が回動可能なように凹部13が設けられており、その中に突起部9の一部が嵌挿されている。
【0064】
また、ベース可動部5は、例えばベース部4の裏側(保持部103と反対側)に図示しないマイクロモータが設けられており、当該マイクロモータの回転軸がベース部4に連結されている。これにより、回転軸の回動によりベース部4を平面アンテナ素子2の平面7に平行ではなく、かつ、第1及び第2の平行軸108a,108bに直角な方向(図1中のZ軸方向)の直角方向軸119を中心として360度回動させることが可能となり、第1及び第2の保持部103a,103bを同様に回動させることができる。ここで、直角方向軸119は、例えば図6に示すように第1及び第2の平行軸108a,108bの中間に位置することとなる。
【0065】
その結果、第1及び第2の保持部103a,103bに保持されている平面アンテナ素子2も平面7に平行ではなく、かつ、第1及び第2の平行軸108a,108bに直角な方向(図1中のZ軸方向)の直角方向軸119を中心として360度回動することとなる。
【0066】
以上のように構成されたアンテナ装置101の動作について平面アンテナ素子の回動を中心に説明する。図8は、平面アンテナ素子の動作を説明する図、図9は、第1の可動部が湾曲したときの説明図及び図10は、第2の可動部が湾曲したときの説明図である。
【0067】
まず、例えば図8に示すように平面アンテナ素子2の指向性方向Aが図8中のZ軸方向を向いているとする。
【0068】
ここで、例えば第1及び第2の可動部112a,112bを制御するアンテナ駆動制御回路により第1の可動部112aの電極膜16a,16b間に電圧が印加されるとポリマーアクチュエータ素子14自身が片方膨張、もう片方収縮する。これにより、第1の可動部112aは例えば上方に湾曲し他端側11がベース部4の上面から離れる。これに伴って平面アンテナ素子2の一辺2aも、第1の保持部103aの他端側11に引き起こされるようにベース部4の上面から離れる。
【0069】
一方、第2の可動部112bはアンテナ駆動制御回路により電極膜16a,16b間に電圧が印加されないので湾曲せず、第2の保持部103bの他端側11はベース部4の上面から離れることが無い。これにより、平面アンテナ素子2の他辺2bは、引き起こされること無くベース部4の上面に接したままとなり、結局、平面アンテナ素子2の平面は傾き、当該他辺2bに重なる第2の平行軸108bを中心に回動することとなる。
【0070】
更にポリマーアクチュエータ素子14に電圧が印加されると、例えば図9に示すように第1の可動部112aは更に湾曲し、一辺2aは他辺2bに対し真上まで起き上がることとなる。このとき、平面アンテナ素子2が第2の平行軸108bを中心として一方向回りと反対回りとしての反時計回りに回動する。
【0071】
その結果、平面アンテナ素子2は上方(図8中のZ軸方向)を向いていた状態から左横向き(図8中のY軸方向)に、その向きを連続的に変える。すなわち、その指向性方向Aから図8及び図9のY軸方向に平行となる指向性方向Cに向きを連続的に変え、1/4円周上にその指向性方向を変更することが可能となる。
【0072】
更に今度は、アンテナ駆動制御回路により第2の可動部112bの電極膜16a,16b間に電圧が印加されると第2の可動部112bは,例えば上方に湾曲し他端側11がベース部4の上面から離れる。これに伴って平面アンテナ素子2の他辺2bも、第2の保持部103bの他端側11に引き起こされるようにベース部4の上面から離れる。
【0073】
一方、第1の可動部112aにはアンテナ駆動制御回路により電極膜16a,16b間に電圧が印加されないので湾曲せず、第1の保持部103aの他端側11はベース部4の上面から離れることが無い。これにより、平面アンテナ素子2の一辺2aは、引き起こされること無くベース部4の上面に接したままとなり、結局、平面アンテナ素子2の平面7は傾き、当該一辺2aに重なる第1の平行軸108aを中心に回動することとなる。
【0074】
更にポリマーアクチュエータ素子14に電圧が印加されると、例えば図10に示すように第2の可動部112bは更に湾曲し、他辺2bは一辺2aに対し真上まで起き上がることとなる。すなわち、平面アンテナ素子2が第1の平行軸108aを中心として一方向回りとしての時計回りに回動する。
【0075】
その結果、平面アンテナ素子2は上方(図8中のZ軸方向)を向いていた状態から右横向き(図8中のY軸方向)に、その向きを連続的に変える。すなわち、その指向性方向Aから図8及び図9のY軸方向に平行となる指向性方向C´に向きを連続的に変え、1/4円周上にその指向性方向を変更することが可能となる。
【0076】
従って、第1及び第2の可動部112a,112bを夫々別々に湾曲させることで合わせて1/2円周上にその指向性方向を変更することが可能となる。
【0077】
そして、アンテナ駆動制御回路によりベース可動部5の例えばマイクロモータに電圧が印加されると、当該マイクロモータが回動して、ベース部4を回動させる。その結果、平面アンテナ素子2はマイクロモータの回転軸が180度回動すると、当該1/2円周の可変範囲が更に直角方向軸119を中心に180度回動し、結果的に平面アンテナ素子2の指向性方向の可変範囲が半球面上の全ての方向となる。
【0078】
これにより、ベース部4を360度回動できない場合でも少なくとも180度回動できれば平面上の半球表面の全方向に平面アンテナ素子2の指向性方向を制御できる。
【0079】
すなわち、例えば2本のBimorph方式ポリマーアクチュエータ素子で第1及び第2の平行軸108a,108bを中心に、反時計と時計方向夫々90度の変化ができ、全部で180度の変化ができる。したがって、この場合には、ベース可動部5が180度の動作のみでよいこととなる。
【0080】
このように本実施形態によれば、第1の平行軸108aを中心とする一方向回りと第2の平行軸108bを中心とする反対回りとを合わせて180度回動させれば、1/2円周上に平面アンテナ素子2の指向性方向を可変させることができる。一方、その可変範囲である1/2円周を直角方向軸119を中心に180度回動させることで、平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できることとなる。したがって、ベース部4を360度回動できない場合でも少なくとも180度回動できれば平面上の半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できる。
【0081】
また、平面アンテナ素子2は、第1の平行軸108aに重なる一辺2aとその一辺2aに離間して対向し第2の平行軸108bに重なる他辺2bとを有することとした。従って、例えば最初平面アンテナ素子2の指向性方向をベース部4に対し垂直向き(図8中のA方向)にすると、第1の平行軸108aを中心として回動させる場合と第2の平行軸108bを中心として回動させる場合とで当該指向性方向を一方向回りと反対回りに容易に回動可能となる。
【0082】
更に第1の保持部103aは、一端側10がベース部4に固定され、他端側11がベース部から離れるように湾曲可能な第1の可動部112aを有し、第2の保持部103bは、一端側10がベース部4に固定され、他端側11がベース部4から離れるように湾曲可能な第2の可動部112bを有する。また、平面アンテナ素子2は、各他端側11で回動自在に保持されており、第1の可動部112aの湾曲により一辺2aがベース部4から離れることで第2の平行軸108bを中心として回動することとした。
【0083】
従って、最初は例えば平面アンテナ素子2の平面7が垂直向き(図8中のA方向)であるが、第1の保持部103aの他端側11がベース部4から立上るにつれて平面アンテナ素子2も第2の平行軸108bを中心として回動し一辺2aが引き起こされる。これにより、当該平面7の向きを一方向回りと反対回り(例えば反時計回り)に可変させることが可能となる。更に第1の可動部112aを湾曲させて完全に平面の向きを例えば左側90度に回動させることもできる。
【0084】
また、第2の保持部103bの他端側11がベース部4から立上ると平面アンテナ素子2は、第1の平行軸108aを中心に回動し他辺2bが引き起こされ、当該平面7の向きを一方向回りに可変させることが可能となる。同様に、更に第2の可動部112bを湾曲させて完全に平面7の向きを例えば右側90度に回動させることもできる。
【0085】
更に平面アンテナ素子2は、略四角形を有し、一辺2a及び他辺2bの他の対向する二辺が第1及び第2の保持部103a,103bの間に配置されていることとした。従って、略四角形の平面アンテナ素子2の平面全体を確実に第1及び第2の平行軸108a,108bを中心として夫々90度回動でき、1/2円周上に平面アンテナ素子2の指向性方向を可変させることが可能となる。
【0086】
また、ベース部4を360度回動可能なベース可動部5を具備することとしたので、容易に平面アンテナ素子2を直角方向軸119を中心として回動させることができる。
【0087】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図及び図12はアンテナ装置の平面図である。
【0088】
図11に示すようにアンテナ装置201は、平面アンテナ素子2、その平面アンテナ素子2を保持する第1及び第2の保持部203a,203b及び第1及び第2の保持部203a,203bを保持する第3及び第4の保持部203c,203dを有する。また、アンテナ装置201は、その第3及び第4の保持部203c,203dを保持するベース部204、当該ベース部を保持する台及び当該ベース部の各箇所の高さを変更可能なベース可動部205を有する。
【0089】
ここで、平面アンテナ素子2は例えば図12に示すように平面7に互いに離間する第1の平行軸208a及び第2の平行軸208bを有し、第1の平行軸208aに略四角形の一辺2aが重なり、第2の平行軸208bにその一辺2aに対向する他辺2bが重なるように形成されている。また、平面アンテナ素子2は、その一辺2aの第1の保持部203aの後述する他端側付近に第1の平行軸208aの方向(図12中のX軸方向)に突出する突起部9を有している。
【0090】
同様に平面アンテナ素子2は、その他辺2bの第2の保持部203bの後述する他端側付近に第2の平行軸208bの方向(図12中のX軸方向)に突出する突起部9を有する。
【0091】
第1及び第2の保持部203a,203bは、図11及び図12に示すように平面アンテナ素子2を間に挟むように互いに対向し、後述する一端部及び他端部が夫々逆側に位置する略板形状の203a,203bからなる。
【0092】
また、第1及び第2の保持部203a,203bは、例えば図11及び図12に示すように夫々一端側10と他端側11とを有し、各一端側10は枠体220の内壁に固定され、他端側11は夫々第1及び第2の可動部112a,112bを有する。従って、第1及び第2の保持部203a,203bは枠体220に保持されていることとなる。
【0093】
他端側11には、例えば図12に示すように突起部9が回動可能なように凹部13が設けられており、その中に突起部9の一部が挿入されている。従って、平面アンテナ素子2は第1及び第2の保持部203a,203bの間で第1及び第2の平行軸208a,208bを中心として回動可能に保持されていることになる。
【0094】
ここで、枠体220は、例えば図11及び図12に示すように外側4辺の内の第1の保持部203a側の辺220cに重なる第3の平行軸208cを有し、当該辺220cに対向する辺220dに重なる第4の平行軸208dを有する。
【0095】
また、枠体220は、例えば図11及び図12に示すように、第1の保持部203aの一端側10付近の角部に、第3の平行軸方向(図12中のY軸方向)に突出する突起部9を有する。同様に、第2の保持部203bの一端側10付近の角部に、第4の平行軸方向(図12中のY軸方向)に突出する突起部9を有する。
【0096】
次に、第3及び第4の保持部203c,203dは例えば図11及び図12に示すように夫々一端側10と他端側11とを有し、各一端側10は略枠形状のベース部204の内壁に固定され、他端側11は夫々第3及び第4の可動部212c,212dを有する。従って、第3及び第4の保持部203c,203dはベース部204に保持されていることとなる。
【0097】
第3及び第4の保持部203c,203dは、他端側11に例えば図12に示すように突起部9が回動可能なように凹部13が設けられており、その中に突起部9の一部が挿入されている。従って、枠体220は第3及び第4の保持部203c,203dの間で第3及び第4の平行軸208c,208dを中心として回動可能に保持されていることになる。
【0098】
これにより、枠体220に第1及び第2の保持部203a,203bが固定されているので、第3及び第4の保持部203c,203dは第1及び第2の保持部203a,203bを夫々第3及び第4の平行軸208c,208dを中心に回動可能に保持することとなる。
【0099】
更に第1及び第2の保持部203a,203bは、平面アンテナ素子2を保持するので結局、第3及び第4の保持部203c,203dは、平面アンテナ素子2を第3及び第4の平行軸208c,208dを中心に回動可能に保持することとなる。
【0100】
ベース部204は、例えば図11に示すように略枠形状を有し、後述するベース可動部205によって第3及び第4の保持部203c,203dを第1、第2、第3及び第4の平行軸208a,208b,208c,208dの少なくともいずれかを中心に回動可能に保持している。
【0101】
ここで、第3及び第4の保持部203c,203dは、枠体220を介して第1及び第2の保持部203a,203bを保持しており、更に第1及び第2の保持部203a,203bは平面アンテナ素子2を保持している。従って、ベース部204は平面アンテナ素子2を第1、第2、第3及び第4の平行軸208a,208b,208c,208dの少なくともいずれかを中心に回動可能に保持していることとなる。
【0102】
ここで、第3及び第4の可動部212c,212dは、例えば第1及び第2の可動部112a,112bと同様であり枠体220を第3及び第4の平行軸208c,208dを中心として回動可能である。また、可動方法は第1及び第2の可動部112a,112bと同様、例えばBimorph方式のポリマーアクチュエータ素子14でもよい。また、可動方法はこれに限られるものではなく例えば熱による部材の変形、磁気力や、電磁力や圧電等を利用してもよい。
【0103】
ベース可動部205は、例えば図11及び図12に示すようにベース部204の下面221に3つ(205a,205b,205c)設けられており、その3つのベース可動部205で平面7に平行にベース部204を保持することが可能である。そのベース可動部205の上にベース部204が配置されていることになる。勿論、ベース部204の各コーナーに夫々配置されるように、ベース可動部205を4つ設けてもよいし、更に多くのベース可動部205を設けて、より細かくベース可動部205の回動を制御できるようにしてもよい。
【0104】
また、3つのベース可動部205は、ベース部204の対応する箇所での台222の上面223からの高さを個別的に変更可能であり、これによりベース部204の傾きを自在に変更できることとなる。
【0105】
ここで、台222は例えば図11に示すように略矩形状を有し、その上面223に3つのベース可動部205a,205b,205cが配置され、その上に第3及び第4の保持部203c,203dを保持するベース部204が載置されている。
【0106】
更にベース可動部205は、その可動方法として熱や磁気力、静電力、電磁力や圧電が利用可能であり、圧電による場合は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の圧電体と電極とを数十層以上交互に積層してその積層方向の伸縮を利用することができる。
【0107】
以上のように構成されたアンテナ装置201の動作について平面アンテナ素子の回動を中心に説明する。図13は、平面アンテナ素子の第2の平行軸中心の回動を説明する図及び図14は、平面アンテナ素子の第3の平行軸中心の回動を説明する図である。
【0108】
まず、例えば図11に示すように平面アンテナ素子2の指向性方向Aが図11中のZ軸方向を向いているとする。
【0109】
ここで、例えば第1、第2、第3及び第4の可動部112a,112b,212c,212d及びベース可動部205を制御するアンテナ駆動制御回路によりベース可動部205a,205b,205cの圧電体に、例えば図13に示すように対応するベース部204の各箇所が一平面上に傾斜して並ぶように、夫々所定の電圧が印加される。その結果、例えば図13に示すように平面アンテナ素子2は、上方(図12中のZ軸方向)を向いていた状態から第2の平行軸208bを中心としてθ1だけ回動し、その指向性方向も図13中の矢印Bに変化する。
【0110】
次に、アンテナ駆動制御回路により例えば第1の可動部112aのポリマーアクチュエータ素子14に電圧が印加されると、当該ポリマーアクチュエータ素子14がその他端側11がベース部204を離れるように湾曲する。その結果、平面アンテナ素子2は図13に示すように左横向き(図10中のY軸方向)になるように第2の平行軸208bを中心として、更に反時計回りにθ2だけ回動し、その指向性方向も図13中の矢印Cに変化する。
【0111】
従って、例えば第1の可動部112aの可動とベース可動部205の駆動により、平面アンテナ素子2はその指向性方向がZY軸平面上で上向き(Z軸方向向き)状態から左横向き(Y軸方向向き)状態に回動することとなる。このように、例えば第1の可動部112a及びベース可動部205を用いることで第2の平行軸208bを中心としてより大きな回動角度を得ることが可能となる。
【0112】
また、ベース部204をアンテナ駆動制御回路により例えば図14に示すように、左側及び右側のベース可動部205b,205cによるベース部204の当該箇所の台222からの高さを同じにする。更に中央奥のベース可動部205aによる台222からの高さを前2つの高さより高くすることにより、図14の紙面観察側に傾斜させることができる。例えばその傾斜は、当初の平面アンテナ素子2の平面7から第3の平行軸208c中心に角度φ1だけ手前に回動させるものとする。
【0113】
次に、アンテナ駆動制御回路により例えば第4の可動部212dのポリマーアクチュエータ素子14に電圧が印加されると、当該ポリマーアクチュエータ素子14がその他端側11がベース部204を離れるように湾曲する。その結果、平面アンテナ素子2は図14に示すように紙面観察側向き(図14中のX軸方向)に第3の平行軸208cを中心として、更に反時計回りにφ2だけ回動し、その指向性方向も図14の紙面に直交する方向に変化する。
【0114】
従って、ベース可動部205a,205b,205cの可動と第4の可動部212dの可動により、平面アンテナ素子2はその指向性方向がZX軸平面上で上向き(Z軸方向向き)状態から紙面観察側向き(X軸方向向き)状態に回動することとなる。このように、例えば第4の可動部212d及びベース可動部205を用いることで第3の平行軸208cを中心としてより大きな回動角度を得ることが可能となる。
【0115】
更に例えば、ベース可動部205a,205b,205cの駆動を夫々関係付けて制御することでベース部204の台222の上面223に対する傾斜は、ZY軸平面上やZX軸平面上だけでなく、360度方向に傾斜可能である。
【0116】
例えば図13の状態で中央奥の高さをベース可動部205aで高くさせ、右側の高さをベース可動部205cで少し低くさせると、ベース部204はその傾きの向きを図13のXY軸平面で右に少し回転させることとなる。その場合は、例えば第1の可動部112aだけではなく第4の可動部212dも駆動させることで、ZY軸平面上とZX軸平面との間の所定の平面上でもベース可動部205による回動角度にプラスすることができ、平面アンテナ素子2のより大きな回動角度を確保することが可能となる。
【0117】
従って、ベース可動部205a,205b,205cの駆動と第1、第2、第3及び第4の可動部112a,112b,212c,212dの可動により、平面アンテナ素子2はその指向性方向を半球面の前面に向けることが可能となる。
【0118】
このように本実施形態によれば、第1から第4の保持部203a,203b,203c,203dだけでなくベース部204も第1から第4の平行軸208a,208b,208c,208d中心に回動可能に保持している。従って、第1から第4の保持部203a,203b,203c,203dの可動による平面アンテナ素子の回動を90度未満の角度、例えば45度までの角度の回動とすることができる。足りない45度をベース可動部205でベース部204を動かすことにより全体で90度回動することができる。
【0119】
また、ベース部204を保持する台222と、そのベース部204の少なくとも3箇所で当該各箇所での台222からの高さを変更可能なベース可動部205とを更に具備することとした。従って、3箇所あるベース可動部205a,205b,205cを制御して、平面アンテナ素子2の周囲360度の方角にベース部204の傾きを向けることが可能となり、360度の方向で第1から第4の少なくともいずれかの平行軸を中心に平面アンテナ素子2を回動させることができる。
【0120】
例えばベース部204を平面アンテナ素子2の平面7に平行でなく、かつ、第1及び第2の平行軸方向に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも360度回動させなくとも、半球面の全面に平面アンテナ素子2の指向性方向を向けることが可能となる。
【0121】
更に例えば第1の保持部203aでの第2の平行軸208bを中心とする回動がθであるときも、平面アンテナ素子自体の回動はそのθにベース可動部205によるベース部204の回動分を加算でき、アンテナ装置全体での回動角を大きくすることが可能となる。これによって、従来、回動角度を大きく取れず、アンテナ装置の指向性方向を半球面の全面に向けることができなかったものが、当該半球面の全面に向けることが可能となる。
【0122】
図15は、本発明の第4の実施形態に係る通信装置の斜視図である。ただし、通信装置のうちのアンテナ装置と配線の一部を表し、そのほかの回路等は省略している。
【0123】
通信装置300は、例えば図15に示すようにアンテナ装置1及び基板351を有する。また、基板351は、そのアンテナ装置1の可動部12a,12bを制御するアンテナ駆動制御回路352、アンテナ装置1の平面アンテナ素子2に電気的に接続された図示しない送受信切替えスイッチ、その送受信切替えスイッチに電気的に接続された図示しないLNA(Low Noise Amplifier)等及びそれらを電気的に結ぶ配線としての信号線路353等を有している。
【0124】
基板351は、例えば略矩形の低誘電率ガラス基板であり、石英やパイレックス(登録商標)、液晶用基板等が用いられている。
【0125】
アンテナ駆動制御回路352は、可動部12及びベース可動部5に所定の時に所定の信号電流を供給し、平面アンテナ素子2を半球面の所定の方向に指向性方向を向けるようにさせることができる。
【0126】
例えば平面アンテナ素子2で受信した電波信号の強弱を図示しない受信回路等で検知し、その情報をアンテナ駆動制御回路352に供給するようにし、アンテナ駆動制御回路352で当該平面アンテナ素子2の指向性方向を半球面上で走査して、最もその電波信号が強い方向を検出する。これにより、常に最も送受信状況の最適な平面アンテナ素子2の方向を維持することができ、携帯電話機や情報端末での通信状況を常に最適なものとすることができる。
【0127】
信号線路353は、送受信切替えスイッチや平面アンテナ素子2等に電気的に接続されており、例えば金、アルミニウムやチタン等により形成されている。
【0128】
尚、可動部12及びベース可動部5の動作は、受信回路で検知される電波が弱くなったことを検出したときから始まるようにし、最大の電波を検知したとの情報を受取ったときに駆動を停止するようにアンテナ駆動制御回路352で制御しても良い。
【0129】
このように本実施形態によれば、例えば平面アンテナ素子2を回動させて指向性方向を平面7に垂直な方向から当初の平面に平行な方向までの1/4円周上に可変する一方、その可変範囲である1/4円周を直角方向軸19を中心に360度回動可能なアンテナ装置1を基板上に設けることとした。従って、半球表面の全方向に当該指向性方向を制御できるので、アンテナ装置1の面積を小さくできると共に電波の伝搬距離が落ちることを防ぐことが可能な通信装置300とすることができる。
【0130】
特に当該アンテナ装置1をMEMS技術で基板上に他の回路と一緒に形成して、1チップ・トランシーバとして携帯電話機や情報端末等の通信装置に用いることで、より小型軽量で低コスト・多機能化を図ることができる。
【0131】
尚、上述の通信装置300に用いられるアンテナ装置は勿論アンテナ装置1に限られるものではなく、アンテナ装置101,201も適用可能である。
【0132】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述したいずれの実施形態にも限定されず、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更し或は上述した各実施形態を組み合わせて実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】第1の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るアンテナ装置の平面図である。
【図3】ポリマーアクチュエータ素子の断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る平面アンテナ素子の動作を説明する図である。
【図5】第1の実施形態に係る可動部が湾曲したときの説明図である。
【図6】第2の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図7】第2の実施形態に係る平面アンテナ素子の平面図である。
【図8】第2の実施形態に係る平面アンテナ素子の動作を説明する図である。
【図9】第2の実施形態に係る第1の可動部が湾曲したときの説明図である。
【図10】第2の実施形態に係る第2の可動部が湾曲したときの説明図である。
【図11】第3の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図12】第3の実施形態に係るアンテナ装置の平面図である。
【図13】第3の実施形態に係る平面アンテナ素子の第2の平行軸中心の回動を説明する図である。
【図14】第3の実施形態に係る平面アンテナ素子の第3の平行軸中心の回動を説明する図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る通信装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0134】
1,101,201…アンテナ装置
2…平面アンテナ素子
3…保持部
4,204…ベース部
5,205…ベース可動部
7…平面
8…平行軸
9…突起部
10…一端側
11…他端側
12…可動部
19,119…直角方向軸
103a,203a…第1の保持部
103b,203b…第2の保持部
108a,208a…第1の平行軸
108b、208b…第2の平行軸
112a…第1の可動部
112b…第2の可動部
203c…第3の保持部
203d…第4の保持部
208c…第3の平行軸
208d…第4の平行軸
212c…第3の可動部
212d…第4の可動部
222…台
300…通信装置
351…基板
353…信号線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有する平面アンテナ素子と、
前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な平行軸を中心として少なくとも90度回動可能に保持する保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記平面に平行でなく、かつ、前記平行軸に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも360度回動可能に、前記保持部を保持するベース部と
を具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置であって、
前記平面アンテナ素子は、前記平行軸に重なる一辺を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置であって、
前記保持部は、
一端側が前記ベース部に固定され、他端側が前記ベース部から離れるように湾曲可能な可動部を有し、
前記平面アンテナ素子は、前記他端側で回動自在に保持されており、前記可動部の湾曲により前記一辺側が前記ベース部から離れることで前記平行軸を中心として回動するものであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
指向性を有する平面アンテナ素子と、
前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な第1の平行軸を中心として一方向回りに少なくとも90度回動可能に保持する第1の保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記第1の平行軸と平行な第2の平行軸を中心として前記一方向回りと反対回りに少なくとも90度回動可能に保持する第2の保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記平面に平行でなく、かつ、前記第1及び第2の平行軸方向に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも180度回動可能に、前記第1及び第2の保持部を保持するベース部と
を具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナ装置であって、
前記平面アンテナ素子は、前記第1の平行軸に重なる一辺とその一辺に離間して対向し前記第2の平行軸に重なる他辺とを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナ装置であって、
前記第1の保持部は、
一端側が前記ベース部に固定され、他端側が前記ベース部から離れるように湾曲可能な第1の可動部を有し、
前記第2の保持部は、
一端側が前記ベース部に固定され、他端側が前記ベース部から離れるように湾曲可能な第2の可動部を有し、
前記平面アンテナ素子は、各前記他端側で回動自在に保持されており、前記第1の可動部の湾曲により前記一辺側が前記ベース部から離れることで前記第2の平行軸を中心として回動し、前記第2の可動部の湾曲により前記他辺側が前記ベース部から離れることで前記第1の平行軸を中心として回動するものであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアンテナ装置であって、
前記平面アンテナ素子は、略四角形を有し、前記一辺及び他辺の他の対向する二辺が前記第1及び第2の保持部の間に配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のアンテナ装置であって、
前記ベース部を前記360度回動可能なベース可動部を更に具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
指向性を有する平面アンテナ素子と、
前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な第1の平行軸を中心として第1の一方向回りに回動可能に保持する第1の保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記第1の平行軸と平行な第2の平行軸を中心として前記第1の一方向回りと反対回りに回動可能に保持する第2の保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記平面と平行で、かつ、前記第1及び第2の平行軸に直角な方向の第3の平行軸を中心として第2の一方向回りに回動可能に、前記第1及び第2の保持部を保持する第3の保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記第3の平行軸と平行な第4の平行軸を中心として前記第2の一方向回りと反対回りに回動可能に、前記第1及び第2の保持部を保持する第4の保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記第1、第2、第3及び第4の平行軸の少なくともいずれかを中心に回動可能に、前記第3及び第4の保持部を保持するベース部と
を具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のアンテナ装置であって、
前記ベース部を保持する台と、そのベース部の少なくとも3箇所で当該各箇所での前記台からの高さを変更可能なベース可動部とを更に具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
指向性を有する平面アンテナ素子と、
前記平面アンテナ素子を前記平面と平行な平行軸を中心として少なくとも90度回動可能に保持する保持部と、
前記平面アンテナ素子を前記平面に平行でなく、かつ、前記平行軸に直角な方向の直角方向軸を中心として少なくとも360度回動可能に、前記保持部を保持するベース部と
前記アンテナ素子に電気的に接続された配線を有する基板と
を具備することを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−266818(P2007−266818A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87093(P2006−87093)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】