説明

アンテナ製造用金型装置

【課題】アンテナ製造用金型装置の設置スペースを小さく抑え、かつ、製造サイクルを短くする。
【解決手段】エレメントとグラウンドとが所定の距離を隔てて相対向する構造のアンテナを製造するための複数の金型が、それぞれの型締め方向へ連なるように設けられたアンテナ製造用金型装置であって、複数の金型は、アンテナとなる金属板を所定の形状に打ち抜く金型40と、打ち抜かれた金属板のエレメントとグラウンドとを相対向するように該金属板を曲げる金型42と、エレメントとグラウンドとを結合する樹脂製の支柱を成形する金型44とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車載用のアンテナ製造用金型装置に関し、詳しくはエレメントとグラウンドとが所定の距離を隔てて相対向する構造のアンテナを製造するためのアンテナ製造用金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンテナを製造するには、アンテナの素材である金属板を所定の形状に打ち抜き、打ち抜かれた金属板のエレメントとグラウンドとを相対向するように曲げ、さらにエレメントとグラウンドとを樹脂製の支柱で結合するといった多工程を要する。このような多工程にわたる製造を小スペースで効率よく行うための装置として、例えば特許文献1に開示されている金型装置が既に知られている。
この金型装置は、複数の金型を型締め方向へ多段に連ねており、それぞれの金型において個別の工程を行うようになっている。すなわち、仮に三工程を要する製造であれば、三段に連ねた金型に対し、素材を順に移して個々の加工を行うことで製品を完成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−015496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された金型装置によってアンテナを製造する場合、アンテナの素材である金属板の打ち抜き及び曲げの加工は行えるものの、エレメントとグラウンドとを結合する樹脂製支柱の成形は、別の成形装置を必要とする。このため、アンテナ製造装置としての設置スペースが大きくなるとともに、製造サイクルも長くなる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、アンテナ製造用金型装置の設置スペースを小さく抑え、かつ、製造サイクルを短くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、エレメントとグラウンドとが所定の距離を隔てて相対向する構造のアンテナを製造するための複数の金型が、それぞれの型締め方向へ連なるように設けられたアンテナ製造用金型装置であって、複数の金型は、アンテナとなる金属板を所定の形状に打ち抜く金型と、打ち抜かれた金属板のエレメントとグラウンドとを相対向するように該金属板を曲げる金型と、エレメントとグラウンドとを結合する樹脂製の支柱を成形する金型とからなっている。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、アンテナとなる金属板が、複数の金型に対して該金属板を所定の形状に打ち抜く金型、金属板を曲げる金型、樹脂製の支柱を成形する金型の順に送られるように構成されている。
【0008】
上記の構成においては、複数の金型を備えた一つ金型装置により、アンテナとなる金属板の打ち抜き及び曲げの加工に加えて樹脂成形も行うことができ、装置の設置スペースを小さくでき、かつ、アンテナの製造サイクルを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車載用のアンテナを表した斜視図。
【図2】アンテナ製造工程における第1加工品を表した平面図。
【図3】アンテナ製造工程における第2加工品を表した斜視図。
【図4】アンテナ製造工程における第3加工品を表した斜視図。
【図5】アンテナのカシメ箇所を拡大して表した斜視図。
【図6】アンテナ製造用金型装置の概要を表した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1に示されている電話用のアンテナ10は、金属板によってエレメント12がグラウンド16に対して相対向するように位置し、これらは短絡部18によって一体につながっている(図2)。エレメント12は電話の電波を受信する機能を果たし、グラウンド16はアンテナ10のグラウンド板として機能し、アンテナ10の受信性能を確立させる。
エレメント12からグラウンド16に向けて折曲げられた給電部14の先端部には、出力ケーブル22(同軸ケーブル)の内導体が接続され、グラウンド16に出力ケーブル22の外導体が接続されている。したがって、エレメント12で受信した電波信号は、出力ケーブル22を通じて受信機(図示省略)に送信される。
【0011】
このようにアンテナ10は、給電部14と出力ケーブル22との接続部付近に短絡部18を設けた「逆F型アンテナ」として機能し、アンテナ10の受信性能を充分に確保するには、エレメント12とグラウンド16との距離Lを一定に保つ必要がある。そこで、エレメント12とグラウンド16とは、距離Lを保つように4本の樹脂製の支柱20で結合されている。
なお、グラウンド16は車両ボデー24や車体フレーム等の上に装着される。
【0012】
アンテナ10は、その素材である金属板から複数の工程を経て製造される。
まず、金属板を所定の形状に打ち抜くとともに、絞り加工を行うことによって図2で示す第1加工品10Aが製造される。この第1加工品10Aにおいては、アンテナ10のエレメント12(給電部14を含む)、グラウンド16及び短絡部18に相当する外形状が打ち抜かれている。そこで第1加工品10Aの説明についても、製造完了後のアンテナ10において相当する部材名を用いることとする。
【0013】
第1加工品10Aのエレメント12には、三個の絞り12a,12b,12cが加工されている。絞り12aは、エレメント12の外形状の一部に沿った形状で、エレメント12の形状を維持するための補強を果たす。絞り12bは、絞り12aの中間から短絡部18に延びる直線形状で、エレメント12と短絡部18との間の曲げ角度を維持するための補強機能を果たす。絞り12cは、エレメント12と給電部14との境に位置し、これら相互間の曲げ角度を維持するための補強機能を果たす。
【0014】
第1加工品10Aのエレメント12には、樹脂製の各支柱20との結合箇所(4箇所)において貫通孔12eがそれぞれ打ち抜かれている。また、給電部14の先端部には、出力ケーブル22の内導体と接続するためのカシメ片14aが成形されている。
第1加工品10Aのグラウンド16には、出力ケーブル22の外導体と接続するためのカシメ片16aが成形されている。さらに、このグラウンド16には、樹脂製の各支柱20との結合箇所(4箇所)において貫通孔16bがそれぞれ打ち抜かれている。
【0015】
第1加工品10Aを曲げ加工することにより、図3で示す第2加工品10Bが製造される。この第2加工品10Bは、第1加工品10Aのグラウンド16と短絡部18とを直角に曲げ、かつ短絡部18とエレメント12とを直角に曲げることで、エレメント12とグラウンド16とを相対向させている。また、第1加工品10Aの給電部14は、エレメント12に対してグラウンド16側へ直角に曲げられ、この給電部14の先端部(カシメ片14a)をグラウンド16に接近させている。
なお、前述のように第2加工品10Bにおけるエレメント12と短絡部18との間の曲げは絞り12bによって補強され、エレメント12と給電部14との間の曲げは絞り12cで補強されている。
【0016】
第2加工品10Bに対して4本の支柱20を樹脂成形することにより、図4で示す第3加工品10Cが製造される。これらの支柱20は、前述のようにエレメント12とグラウンド16との相互間の距離L(図1)を一定に保っている。そして、各支柱20とエレメント12とは個々の貫通孔12eに樹脂材が入り込むことで結合され、同じく各支柱20とグラウンド16とについても個々の貫通孔16bに樹脂材が入り込むことで結合されている。
第3加工品10Cにおける給電部14のカシメ片14a及びグラウンド16のカシメ片16aを、図5で示すように出力ケーブル22にそれぞれカシメつける。これにより、給電部14の先端部に出力ケーブル22の内導体が接続され、グラウンド16に出力ケーブル22の外導体が接続され、図1で示すアンテナ10が完成する。
【0017】
アンテナ10は図6で示す金型装置30によって製造される。この金型装置30の概要を説明すると、それぞれ上下型からなる金型40,42,44,46が個々の型締め方向(上下方向)へ連なるように設けられている。
具体的には、ベース等(図示省略)に立てられた上下方向に長い複数本(4本)のロッド38に対し、その先端側において固定ダイプレート32が固定され、基部側に可動ダイプレート34が設けられている。また、固定ダイプレート32と可動ダイプレート34との間には3枚の従動ダイプレート35,36,37が設けられている。そして、最上段の金型40は固定ダイプレート32と従動ダイプレート35との間に組付けられ、その下段の金型42は従動ダイプレート35,36の間に、その下段の金型44は従動ダイプレート36,37の間に、最下段の金型46は可動ダイプレート34と従動ダイプレート37との間にそれぞれ組付けられている。
【0018】
金型装置30における油圧シリンダ等(図示省略)の駆動制御によって可動ダイプレート34を各ロッド38に沿って上昇させると、最下段の金型46が型締めされた後、従動ダイプレート35,36,37が下側から順に押し上げられて金型40,42,44も下段から順に型締めされる。
そこで、これらの各金型40,42,44,46にアンテナ10を製造するために必要とする各工程を個別に行うことにより、一つの金型装置30でアンテナ10の素材である金属板から完成品を製造することができる。以下、その製造工程について説明する。
【0019】
まず、金型装置30における最上段の金型(打抜き金型)40に金属板をセットして型締めすることにより、金属板に対して前述の打ち抜き及び絞り加工が行われて図2で示す第1加工品10Aが製造される。この第1加工品10Aを次段の金型(曲げ金型)42にセットして型締めすることにより、前述の曲げ加工が行われて図3で示す第2加工品10Bが製造される。
次に、第2加工品10Bを次段の金型(成形金型)44にセットして型締めし、この成形金型44内に溶融樹脂を射出して前述の支柱20を成形する。これにより、図4で示す第3加工品10Cが製造される。この第3加工品10Cを出力ケーブル22と共に最下段の金型(カシメ金型)46にセットして型締めすることにより、前述のカシメ加工が行われて図1で示すアンテナ10が完成する。
【0020】
前述のように、金型装置30の各金型40,42,44,46の間において加工品10A〜10Cを移動させる手段としては、手動あるいは移動装置による自動を問わない。また、金型装置30における各金型40,42,44,46の並び順は、図6で示す順に限定されるものではない。ただし、加工の工程順については、金属板を打抜き金型40、曲げ金型42、成形金型44の順に移動させ、金属板を所定の形状に打ち抜いて曲げを行った後、支柱20を樹脂成形することが好ましい。なお、カシメ金型46によるカシメ加工については、手作業に代えることも可能である。
【0021】
金型装置30において、例えば打抜き金型40を複数にして金属板の打ち抜き加工を分担させてもよい。これは他の各金型42,44,46についても同様である。さらに、アンテナ10は電話用に限るものではなく、ラジオやテレビといった受信メディアや周波数も問わない。
【符号の説明】
【0022】
10 アンテナ
12 エレメント
16 グラウンド
30 金型装置
40 打抜き金型
42 曲げ金型
44 成形金型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレメントとグラウンドとが所定の距離を隔てて相対向する構造のアンテナを製造するための複数の金型が、それぞれの型締め方向へ連なるように設けられたアンテナ製造用金型装置であって、
複数の金型は、アンテナとなる金属板を所定の形状に打ち抜く金型と、打ち抜かれた金属板のエレメントとグラウンドとを相対向するように該金属板を曲げる金型と、エレメントとグラウンドとを結合する樹脂製の支柱を成形する金型とからなるアンテナ製造用金型装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたアンテナ製造用金型装置であって、
アンテナとなる金属板が、複数の金型に対して該金属板を所定の形状に打ち抜く金型、金属板を曲げる金型、樹脂製の支柱を成形する金型の順に送られるように構成されているアンテナ製造用金型装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−224634(P2011−224634A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98540(P2010−98540)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】