説明

アーク機器用電源装置

【課題】力率を改善することができるアーク機器用電源装置を提供する。
【解決手段】アーク機器用電源装置は、各整流素子に対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続され、三相交流電源を整流する三相全波整流回路と、前記三相交流電源と前記三相全波整流回路に接続された交流リアクトルと、前記三相全波整流回路の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの出力を高周波交流に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力を整流して負荷に供給する整流回路を備えている。さらに、アーク機器用電源装置は、前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御して、前記三相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる制御回路を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アーク溶接機やアーク溶断機等のアーク機器用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インバータ機器等の高調波を発生する機器の増加により、他の電気機器に様々な悪影響を与えている。そのため、各国では、用途や入力電力などに応じてクラス分けされた高調波電流規制が行われている。例えば、欧州ではIEC61000-3-2やIEC61000-3-12により高調波規格が規定され、日本ではJIS C 61000-3-2:2005により高調波規格が規定されている。
【0003】
このような規格による規制の対象は、家電機器だけでなく、溶接機や溶断機等の工業用の電気機器も当然含まれる。そこで、工業用の電気機器では、高調波の規制に対応するため、電源にPFC(power factor correction:力率改善)回路を設けたものが提案されている。例えば、図1に示すプラズマカッティングシステムでは、電源にPFC回路35を付加して高調波電流を抑制している(特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6363868号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムは、商用電源から三相の交流電力が入力される構成であるが、PFCはインダクタ、スイッチ及びダイオードを1組だけ備えた構成であった。そのため、このシステムでは、入力電圧Vinに対して入力電流Iinが図2に示すような波形となる。また、改善された力率は0.85〜0.9程度であり、力率をこれ以上改善することができなかった。
【0005】
そこで、この発明は、さらに力率を改善することができるアーク機器用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)各整流素子に対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続され、三相交流電源を整流する三相全波整流回路と、
前記三相交流電源と前記三相全波整流回路に接続された交流リアクトルと、
前記三相全波整流回路の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの出力を高周波交流に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を整流して負荷に供給する整流回路と、
前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御して、前記三相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる制御回路と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成においては、三相全波整流回路の各整流素子に対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続されており、制御回路は、各半導体スイッチング素子をスイッチング制御することで、三相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる。したがって、入力電流波形の形状を入力電圧波形とほぼ同様にすることが可能となり、力率をほぼ1にすることができので、従来の構成よりも力率を大幅に改善できる。また、この構成においては、従来のアーク用電源装置よりも部品点数を削減できるので、装置を小型にできる。また、部品点数が少ないので、信頼性を向上できる。さらに、全デジタル制御により、温度ドリフトによる出力変動を減少させることができる。また、制御回路の共通化により、開発時間を短縮でき、信頼を向上できる。
【0008】
(2)各整流素子の少なくとも2つに対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続され、単相交流電源を整流する単相全波整流回路と、
前記単相交流電源と前記単相全波整流回路に接続された交流リアクトルと、
前記単相全波整流回路の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの出力を高周波交流に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を整流して負荷に供給する整流回路と、
前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御して、前記単相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる制御回路と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成においては、単相全波整流回路の少なくとも2つの整流素子に対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続されており、制御回路は、各半導体スイッチング素子をスイッチング制御することで、単相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる。したがって、入力電流波形の形状を入力電圧波形とほぼ同様にすることが可能となり、力率をほぼ1にすることができので、従来の構成よりも力率を大幅に改善できる。また、この構成においては、従来のアーク用電源装置よりも部品点数を削減できるので、装置を小型にできる。また、部品点数が少ないので、信頼性を向上できる。さらに、全デジタル制御により、温度ドリフトによる出力変動を減少させることができる。また、制御回路の共通化により、開発時間を短縮でき、信頼を向上できる。
【0010】
(3)前記制御回路は、前記各半導体スイッチング素子をオンにしたときに、前記交流リアクトルにエネルギーを蓄積し、前記各半導体スイッチング素子をオフにしたときに、前記交流リアクトルに蓄積したエネルギーで前記平滑コンデンサを充電する処理を繰り返して、入力電圧と入力電流との位相を一致させることを特徴とする。
【0011】
この構成においては、制御回路は、各半導体スイッチング素子をオン・オフすることで、交流リアクトルにエネルギーを蓄積し、この交流リアクトルに蓄積したエネルギーで平滑コンデンサを充電する処理を繰り返す。したがって、半導体スイッチング素子をオン時間とオフ時間を適切に制御することで、入力電圧と入力電流との位相を一致させることができる。
【0012】
(4)前記三相交流電源の各相の相電圧を検出する相電圧検出部と、
前記三相交流電源の各相の線電流を検出する線電流検出部と、
を備え、
前記制御回路は、前記相電圧検出部及び線電流検出部が検出した各相の相電圧及び線電流に基づいて、前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御することを特徴とする。
【0013】
この構成においては、制御回路は、前記相電圧検出部及び線電流検出部が検出した各相の相電圧及び線電流に基づいて、前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御する。したがって、入力電圧及び入力電流の状態を確実に把握できるので、入力電流波形の形状を入力電圧波形とほぼ同様にすることができる。
【0014】
(5)前記整流素子はダイオードであり、前記半導体スイッチング素子はIGBTである。
【0015】
この構成においては、IGBTは、入力信号によってオン・オフができる自己消弧型で、パワートランジスタ等の他のスイッチング素子よりも高速でスイッチングが可能であるため、大電力の高速スイッチングが可能となる。また、ダイオードとIGBTを逆並列接続することで、交流リアクトルへの誘導エネルギーの蓄積やこの誘導エネルギーを用いた平滑コンデンサの充電を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、商用電源が三相交流であっても単相交流であっても、力率をほぼ1にすることができ、従来の装置よりも大幅に力率を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図3は、この発明の第1実施形態のアーク機器用電源装置の構成図である。図3に示すように、アーク機器用電源装置(以下、電源装置と称する。)101は、インプットステージ121、インバータステージ131、DSPモジュール151・153、トーチ161、及びワークピース163を備えている。
【0018】
インプットステージ121は、線電流検出器123、相電圧検出器125、交流リアクトル(以下、リアクトルと称する。)127、及び三相全波整流回路129を備えている。
【0019】
線電流検出器123は、三相交流電源の各相の線電流を検出して、各線電流に応じた値をDSPモジュール151に出力する。なお、図3にはU,V,Wの各相にCTを設けた例を示しているが、例えばU相とW相にだけCTを設けても良い。この場合には、U相とW相の線電流から計算によりV相の線電流を求めることができる。
【0020】
相電圧検出器125は、三相交流電源の各相の電圧を検出して、各相電圧に応じた値をDSPモジュール151に出力する。
【0021】
DSPモジュール151は、線電流検出器123が検出した各相の線電流及び相電圧検出器125が検出した各相の相電圧に基づいて、三相全波整流回路129のIGBT(insulated gate bipolar transistor )171〜176に、スイッチング制御を行うための制御信号を出力する。
【0022】
リアクトル127は、平滑コンデンサ133を充電するためのエネルギーを蓄積する。
【0023】
三相全波整流回路129は、6つのダイオード(整流素子)D1〜D6と、6つのIGBT(半導体スイッチング素子)171〜176を備えている。6つのダイオードD1〜D6は、フルブリッジ型に接続され、それぞれIGBT(半導体スイッチング素子)171〜176が逆並列接続されている。ダイオードとIGBTを逆並列接続することで、後述するように、リアクトル127へのエネルギーの蓄積やこのエネルギーを用いたコンデンサ133の充電を容易に行うことができる。IGBT171〜176は、DSPモジュール151によりスイッチング動作を制御される。IGBTは、入力信号によってオン・オフができる自己消弧型であるので、大電力の高速スイッチングが可能となる。三相全波整流回路129は、三相交流電源U,V,Wからの交流電流を直流電流に整流する機能と、力率を改善する機能を備えている。
【0024】
インバータステージ131は、平滑コンデンサ(以下、コンデンサと称する。)133、インバータ回路135、高周波変圧器137、全波整流回路139、平滑リアクトル141、電流検出器143、及びパルストランス145を備えている。
【0025】
コンデンサ133は、インプットステージ121が整流した電圧を平滑化する。
【0026】
インバータ回路135は、4つのダイオード(整流素子)D7〜D10と、4つのIGBT(半導体スイッチング素子)181〜184を備えている。4つのダイオードD7〜D10は、フルブリッジ型に接続され、それぞれIGBT181〜184が逆並列接続されている。IGBT181〜184は、パルストランス145を介してDSPモジュール153によりスイッチング動作を制御される。インバータ回路135は、直流電圧を例えば20kHzから100kHzの高周波交流電圧に変換する。
【0027】
高周波変圧器137は、インバータ回路135が生成した高周波電圧を変圧する。アーク機器の負荷により異なるが、高周波変圧器137は、インバータ回路135により変換された高周波交流電圧を例えば60Vに変圧する。
【0028】
全波整流回路139は、フルブリッジ型に接続された4つのダイオードD11〜D14を備えている。全波整流回路139は、高周波変圧器137が変圧した高周波交流電圧を全波整流する。全波整流回路139のダイオードD12・D14カソードは、負出力端子149に接続されている。
【0029】
平滑リアクトル141は、全波整流された高周波電圧を平滑化する。平滑リアクトル141は、正出力端子147に接続されている。
【0030】
ワークピース163は、正出力端子147に接続されている。
【0031】
トーチ161は、負出力端子149に接続されている。
【0032】
全波整流回路139で全波整流回路された高周波電圧は、平滑リアクトル141で平滑化されて、トーチ161及びワークピース163に供給される。
【0033】
電流検出器143は、トーチ161及びワークピース163に流れる電流を検出して、その電流に応じた信号をDSPモジュール153に出力する。
【0034】
DSPモジュール153は、電流検出器143が出力した信号に応じた制御信号を、パルストランス145を介してインバータ回路135に出力する。そして、DSPモジュール153は、この制御信号により、インバータ回路135のIGBT181〜184のスイッチング動作を制御する。
【0035】
電源装置101は以上のような構成であり、ユーザは電源装置101のトーチ161及びワークピース163を用いてアーク溶接やアーク溶断を行うことができる。
【0036】
次に、電源装置101の特徴である力率改善について説明する。電源装置101のDSPモジュール151は、線電流検出器123及び相電圧検出器125で三相交流電源のU,V,Wの各相の線電流及び相電圧を検出する。そして、DSPモジュール151は、三相全波整流回路129のIGBT171〜176に対して制御信号を出力してスイッチング制御(パルス幅変調(PWM))を行い、三相交流電源のU,V,Wの各相の線電流を相電圧の位相に一致させるとともに、出力電圧を一定電圧に制御する。
【0037】
具体的には、電源装置101では、三相交流電源111の各相とも、以下に説明する制御を行う。図4Aは交流電源の入力電圧波形図、図4B及び図4Cはスイッチング素子の制御信号の波形図、図4Dは交流電源の入力電流波形図、並びに図4Eは交流電源の入力電圧及び入力電流の波形図である。
【0038】
三相交流電源111のU相を例に挙げて説明する。DSPモジュール151は、相電圧検出器125で三相交流電源111のU相の相電圧を検出し、線電流検出器123でU相の線電流を検出する。DSPモジュール151は、図4Aに示すように、三相交流電源111のU相電圧の極性が正のときには、図4Bに示すように、下側のIGBT172に制御信号(チョッパ信号)Scp1を出力して、このIGBT172を所定の周波数でオン・オフを繰り返し実行させる。
【0039】
IGBT172がオンのときには、リアクトル127、IGBT172、ダイオードD4・D6の経路に電流が流れて、リアクトル127に誘導エネルギーが蓄積される。また、IGBT172をオフのときには、リアクトル127に蓄積されたエネルギーによる誘導電流がダイオードD1を介してコンデンサ133に流れて、コンデンサ133が充電される。したがって、IGBT172のオンとオフの時間を適切に制御することにより誘導エネルギーを自由に変化させることができる。また、IGBT172のオン時間をオフ時間よりも長くなるように制御することで、コンデンサ133の両端電圧を電源電圧よりも高くできる。例えば、三相交流電源111の入力電圧V1が220Vであるのに対して、コンデンサ133の充電電圧V2は最大で約380Vにすることができる。
【0040】
一方、DSPモジュール151は、図4Aに示すように、三相交流電源111のU相電圧の極性が負のときには、図4Cに示すように、上側のIGBT171に制御信号(チョッパ信号)Scp2を出力して、このIGBT171を所定の周波数でオン・オフさせる。IGBT171がオンのときには、ダイオードD3・D5、IGBT171、リアクトル127の経路に電流が流れてリアクトル127に誘導エネルギーが蓄積される。また、IGBT171のオフのときには、リアクトル127に蓄積されたエネルギーによる誘導電流がダイオードD3・D5を介してコンデンサ133に流れて、コンデンサ133が充電される。
【0041】
したがって、DSPモジュール151は、上記のようにIGBT171及びIGBT172のオン時間とオフ時間を適切に制御することで、図4Dに示すように、入力電流Iinを入力電圧Vinと同相の正弦波状の波形に整形することができる。
【0042】
また、IGBT171,172のオン・オフのデューティ比を固定せずに、電源の電圧波形に応じて可変制御すれば、電流波形の変動(歪み)を抑制するとともに、電流波形の形状を電圧波形にさらに近似させることが可能になる。
【0043】
このように、本発明の電源装置101では、図4Eに示すように三相交流電源のU,V,Wの各相の線電流Iinの位相を相電圧Vinの位相に一致させるとともに、出力電圧を一定電圧に制御することができるので、力率をほぼ1にすることができる。
【0044】
また、本発明の電源装置101では、従来のアーク用電源装置よりも部品点数を削減できるので、装置を小型にできる。また、部品点数が少ないので、信頼性を向上できる。さらに、全デジタル制御により、温度ドリフトによる出力変動を減少させることができる。また、制御回路の共通化により、開発時間を短縮でき、信頼を向上できる。
【0045】
次に、本願発明は単相交流電源に接続する電源装置にも適用できる。図5は、この発明の第2実施形態のアーク機器用電源装置の構成図である。図6は、この発明の第2実施形態のアーク機器用電源装置の変形例を示す構成図である。
【0046】
図5に示すように、電源装置201は、インプットステージ221、インバータステージ131、DSPモジュール251・153、トーチ161、及びワークピース163を備えている。
【0047】
インプットステージ221は、線電流検出器223、相電圧検出器225、交流リアクトル227、及び単相全波整流回路229を備えている。
【0048】
線電流検出器223は、単相交流電源211の線電流を検出して、線電流に応じた値をDSPモジュール251に出力する。
【0049】
相電圧検出器225は、単相交流電源211の電圧を検出して、相電圧に応じた値をDSPモジュール251に出力する。
【0050】
交流リアクトル227は、コンデンサ133を充電するためのエネルギーを蓄積する。
【0051】
単相全波整流回路229は、フルブリッジ型に接続されている4つのダイオード(整流素子)D21〜D24を備え、さらにダイオードD21,D22には、それぞれIGBT(半導体スイッチング素子)271〜272が逆並列接続されている。IGBT271〜272は、DSPモジュール251によりスイッチング動作を制御される。単相全波整流回路229は、単相交流電源211からの交流電流を直流電流に整流する機能と、力率を改善する機能を備えている。
【0052】
インバータステージ131は、図3に示した電源装置101のインバータステージ131と同じ構成であり、DSPモジュール153がインバータステージ131を制御して、図3を用いて説明した動作を行う。詳細な構成の図示を省略するが、インバータステージ131は、コンデンサ133、インバータ回路135、高周波変圧器137、全波整流回路139、平滑リアクトル141、電流検出器143、及びパルストランス145を備えている。
【0053】
また、電源装置101と同様に、ワークピース163はインバータステージ131の正出力端子147に接続され、トーチ161はインバータステージ131の負出力端子149に接続されている。
【0054】
電源装置201は以上のような構成であり、ユーザは電源装置201のトーチ161及びワークピース163を用いてアーク溶接やアーク溶断を行うことができる。
【0055】
次に、電源装置201の特徴である力率改善について説明する。電源装置201のDSPモジュール251は、線電流検出器223及び相電圧検出器225で単相交流電源211の線電流Iin及び相電圧Vinを検出する。そして、DSPモジュール251は、単相全波整流回路229のIGBT271〜272に対して制御信号を出力してスイッチング制御(パルス幅変調(PWM))を行い、単相交流電源211の線電流Iinを相電圧Vinの位相に一致させるとともに、出力電圧を一定電圧に制御する。
【0056】
具体的には、電源装置201のDSPモジュール251は、相電圧検出器225で三相交流電源111の相電圧を検出し、線電流検出器223で線電流を検出する。DSPモジュール251は、図4Aに示したように、単相交流電源211の相電圧の極性が正のときには、図4Bに示すように、下側のIGBT272に制御信号(チョッパ信号)Scp1を出力して、このIGBT272を所定の周波数でオン・オフさせる。IGBT272がオンのときには、リアクトル227、IGBT272、ダイオードD24の経路に電流が流れてリアクトル227に誘導エネルギーが蓄積される。また、IGBT272がオフのときには、リアクトル227に蓄積されたエネルギーによる誘導電流がダイオードD1を介してコンデンサ133に流れて、コンデンサ133が充電される。この充電電流によりコンデンサ133の両端電圧が電源電圧よりも高くなる。
【0057】
一方、DSPモジュール251は、図4Aに示すように、単相交流電源211の相電圧の極性が負のときには、図4Cに示すように、上側のIGBT271に制御信号(チョッパ信号)Scp2を出力して、このIGBT271を所定の周波数でオン・オフさせる。IGBT271がオンのときには、ダイオードD3・D5、IGBT271、リアクトル227の経路に電流が流れてリアクトル227に誘導エネルギーが蓄積される。また、IGBT271のオフのときには、リアクトル227に蓄積されたエネルギーによる誘導電流がダイオードD3・D5を介してコンデンサ133に流れて、コンデンサ133が充電される。この充電電流によりコンデンサ133の両端電圧が電源電圧よりも高くなる。
【0058】
このような動作により、コンデンサ133に流れる電流波形Iinは、図4Dに示すように、交流電源の電圧波形Vinとほぼ相似な波形になる。また、IGBT271,272のオン、オフのデューティ比を固定せずに、電源の電圧波形に応じて可変制御すれば、電流波形の変動(歪み)を抑制するとともに、電流波形の形状を電圧波形にさらに近似させることが可能になる。
【0059】
これにより、本発明の電源装置101では、単相交流電源211の線電流Iinを相電圧Vinの位相に一致させるとともに、出力電圧を一定電圧に制御することができるので、力率をほぼ1にすることができる。
【0060】
図5に示したインプットステージ221の単相全波整流回路229は、図6に示す単相全波整流回路229Bのように、ダイオードD22とD24に対してIGBTを逆並列接続することも可能である。
【0061】
図6に示した構成でも、図5の構成と同様に、単相交流電源の線電流を相電圧の位相に一致させるとともに、出力電圧を一定電圧に制御することができるので、力率をほぼ1にすることができる。
【0062】
なお、図5,図6に示した電源装置201,202では、単相全波整流回路の2つのダイオードにスイッチング素子であるIGBTを逆並列接続した例を示したがこれに限るものではなく、単相全波整流回路を構成する4つのダイオードのうち少なくとも2つにスイッチング素子を逆並列接続すれば、単相交流電源の線電流を相電圧の位相に一致させるとともに、出力電圧を一定電圧に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】PFC回路を備えた従来の電気機器のブロック図である。
【図2】従来の電気機器の入力電圧波形及び入力電流波形を示す図である。
【図3】この発明の第1実施形態のアーク機器用電源装置の構成図である。
【図4】交流電源の入力電圧・電流波形図、及びスイッチング素子の制御信号波形図である。
【図5】この発明の第2実施形態のアーク機器用電源装置の構成図である。
【図6】この発明の第2実施形態のアーク機器用電源装置の変形例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0064】
101,201,202…電源装置 111…三相交流電源 121,221…インプットステージ 131…インバータステージ 151,153,251…DSPモジュール 161…トーチ 163…ワークピース
171〜176,181〜184,271〜274…IGBT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各整流素子に対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続され、三相交流電源を整流する三相全波整流回路と、
前記三相交流電源と前記三相全波整流回路に接続された交流リアクトルと、
前記三相全波整流回路の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの出力を高周波交流に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を整流して負荷に供給する整流回路と、
前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御して、前記三相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる制御回路と、
を備えたアーク機器用電源装置。
【請求項2】
各整流素子の少なくとも2つに対して半導体スイッチング素子が逆並列に接続され、単相交流電源を整流する単相全波整流回路と、
前記単相交流電源と前記単相全波整流回路に接続された交流リアクトルと、
前記単相全波整流回路の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの出力を高周波交流に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を整流して負荷に供給する整流回路と、
前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御して、前記単相交流電源の入力電圧と入力電流との位相を一致させる制御回路と、
を備えたアーク機器用電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記各半導体スイッチング素子をオンにしたときに、前記交流リアクトルにエネルギーを蓄積し、前記各半導体スイッチング素子をオフにしたときに、前記交流リアクトルに蓄積したエネルギーで前記平滑コンデンサを充電する処理を繰り返して、入力電圧と入力電流との位相を一致させる請求項1または2に記載のアーク機器用電源装置。
【請求項4】
前記三相交流電源の各相の相電圧を検出する相電圧検出部と、
前記三相交流電源の各相の線電流を検出する線電流検出部と、
を備え、
前記制御回路は、前記相電圧検出部及び線電流検出部が検出した各相の相電圧及び線電流に基づいて、前記各半導体スイッチング素子をスイッチング制御する請求項1に記載のアーク機器用電源装置。
【請求項5】
前記整流素子はダイオードであり、前記半導体スイッチング素子はIGBTである請求項1または2に記載のアーク機器用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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