説明

アーク溶接制御方法およびアーク溶接装置

【課題】短絡発生時から予め定めた長期短絡判別時間が経過した場合には溶接電流を減少させ、後退送給によってワイヤ先端が母材から離れてアークを再発生させる制御では、それぞれの短絡からアーク発生直後のワイヤ送給状態は、前進送給によるアーク発生と後退送給によるアーク発生といった異なった状態になるため、規則的な安定したアーク状態や均一のあるビード幅を確保することが難しい。
【解決手段】溶接ワイヤの前進送給と後退送給を行って短絡溶接を行うアーク溶接制御方法であって、短絡期間では、短絡発生時から第1の所定期間の間は前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記第1の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを後退送給させ、アーク期間では、前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記短絡期間の前記溶接ワイヤの送給制御と前記アーク期間の前記ワイヤの送給制御とを交互に繰り返して溶接を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極である溶接ワイヤを送給しながら短絡溶接を行うアーク溶接制御方法およびアーク溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来技術の、短絡を伴うアーク溶接の溶接ワイヤ送給制御における出力波形図である。図8(A)は、溶接電圧Vwの時間変化を示す。図8(B)は、溶接電流Iwの時間変化を示す。図8(C)は、ワイヤ送給速度設定信号Frの時間変化を示す。図8(D)は、ワイヤ先端の送給速度Fsの時間変化を示す。
【0003】
図8において、時刻t1〜時刻t2の短絡期間Ts中は、短絡期間が予め定めた長期短絡判別時間Tt以下である。従って、図8(C)に示すように、ワイヤ送給速度設定信号Frは前進送給速度設定値Ffrのままであり、図8(D)に示すように、送給速度Fsは前進送給速度Ffsで送給される。
【0004】
続く時刻t2〜時刻t3のアーク期間Ta中は、図8(C)に示すように、上記の前進送給速度設定値Ffrのままであり、図8(D)に示すように、送給速度Fsは上記の前進送給速度Ffsで送給される。すなわち、通常短絡時は、短絡期間Tsとアーク期間Taにおいて、一定速度の前進送給を維持する。
【0005】
時刻t3において短絡が発生し長期短絡判別時間Ttが経過する時刻t4までは、図8(C)に示すように、ワイヤ送給速度設定信号Frは前進送給速度設定値Ffrのままであり、図8(D)に示すように、送給速度Fsは前進送給速度Ffsのままである。時刻t4において、上記の長期短絡判別時間Ttが経過したと判定されると、図8(C)に示すように、ワイヤ送給速度設定信号Frは、後退送給速度設定値Frrに切り換わり、図8(D)に示すように、送給速度Fsは慣性によるスロープで減速する。同時に、図8(B)に示すように、時刻t4から溶接電流Iwを低い値に減少させる。
【0006】
図8(D)に示すように、送給速度Fsは、減速して一旦0となり、その後に後退送給となり、時刻t5において、ワイヤ先端が母材から離れて短絡が解除されてアークが再発生する。このアーク再発生時の電流値は、図8(B)に示すように低い値である。そのため、スパッタはほとんど発生せず、アーク力も弱いので再短絡も発生しない。したがって、良好な長期短絡の解除を行うことができる。
【0007】
時刻t5において、アークが再発生すると、図8(C)に示すように、送給速度設定信号Ffは前進送給速度設定値Ffrに切り換わる。そして、図8(D)に示すように、送給速度Fsは、後退送給から減速、停止及び反転を経て、前進送給速度Ffsとなる。同時に、図8(B)に示すように、溶接電流Iwは、溶接電源装置の定電圧特性とアーク負荷とによって定まる前進送給速度Ffsに応じた値へと増加する。
【0008】
上記のように、従来の溶接ワイヤ送給制御は、短絡を伴うアーク溶接において、通常短絡時及び長期短絡時に良好な溶滴移行を行うことができ、かつ、アーク切れ、スパッタ及び再短絡の発生しない良好な短絡解除を行うことができる送給制御を目的としている。そして、短絡が発生した時点から予め定めた長期短絡判別時間が経過するまでは前記前進送給を継続すると共に溶接電流を増加させ、前記長期短絡判別時間が経過した後は前記後退送給に切り換えると共に前記溶接電流を減少させる。そして、前記後退送給によってワイヤ先端が母材から離れてアークが再発生すると前記前進送給に再び切り換えると共に前記溶接電流を前記前進送給の送給速度に応じた値に増加させることを特徴とするものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−298924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来のワイヤ送給制御は、図8に示すように、短絡発生時の時刻t3から予め定めた長期短絡判別時間Ttが経過した場合には溶接電流Iwを減少させ、後退送給によってワイヤ先端が母材から離れてアークを再発生(t5)させるものである。しかし、長期短絡判別時間Ttが経過しない場合の短い短絡期間と、長期短絡判別時間Ttが経過する場合の長い短絡期間といった、2つの短絡状態が存在することになる。そして、それぞれの短絡からアーク発生(短絡開放)直後のワイヤ送給状態は、前進送給によるアーク発生と、後退送給によるアーク発生といった、異なった状態になる。そのため、規則的な安定したアーク状態や均一のビード幅を確保することが難しくなるといった課題がある。ここで、短絡溶接では、アーク安定性やビード外観を良好にするため、短絡周期が規則的であることが必要不可欠である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のアーク溶接制御方法は、溶接ワイヤの前進送給と後退送給を行って短絡溶接を行うアーク溶接制御方法であって、短絡期間では、短絡発生時から第1の所定期間の間は前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記第1の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを後退送給させ、アーク期間では、前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記短絡期間の前記溶接ワイヤの送給制御と前記アーク期間の前記ワイヤの送給制御とを交互に繰り返して溶接を行うものである。
【0012】
また、本発明のアーク溶接制御方法は、上記に加えて、短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度を、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度としたものである。
【0013】
また、本発明のアーク溶接制御方法は、上記に加えて、アーク期間では、前記溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度を、前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度としたものである。
【0014】
また、本発明のアーク溶接制御方法は、上記に加えて、アーク期間では、アーク発生時から第2の所定期間の間は溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、前記第2の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度で前進送給させるものである。
【0015】
また、本発明のアーク溶接制御装置は、消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアークの発生と短絡とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、少なくとも設定電流を設定するための溶接条件設定部と、前記溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給モータと、溶接出力を制御するスイッチング部と、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、前記溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡期間であるのかアーク期間であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、短絡状態であるときの溶接出力制御信号を出力する短絡制御部と、アーク状態であるときの溶接出力制御信号を出力するアーク制御部と、前記短絡制御部または前記アーク制御部からの信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する駆動部と、前記短絡/アーク検出部からの信号に基づいて前記ワイヤ送給モータを制御するワイヤ送給モータ制御部とを備え、前記ワイヤ送給モータ制御部は、ワイヤ送給速度を制御する信号を出力するワイヤ送給速度制御部と、前記ワイヤ送給モータの回転方向を指示する信号を出力するモータ極性切換制御部と、時間を計時する計時部とを有し、前記短絡期間では、短絡発生時から第1の所定期間の間は前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記第1の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを後退送給させ、前記アーク期間では、前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記短絡期間の前記溶接ワイヤの送給制御と前記アーク期間の前記ワイヤの送給制御とを交互に繰り返して溶接を行うものである。
【0016】
また、本発明のアーク溶接装置は、上記に加えて、短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度を、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度としたものである。
【0017】
また、本発明のアーク溶接装置は、上記に加えて、アーク期間では、前記溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度を、前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度としたものである。
【0018】
また、本発明のアーク溶接装置は、上記に加えて、アーク期間では、アーク発生時から第2の所定期間の間は溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、前記第2の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度で前進送給させるものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、短絡期間では、短絡開放を円滑に行うための後退送給をする前に、基本ワイヤ送給速度または基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度で前進送給する。これにより、溶接ワイヤの溶融プールへの確実な短絡や溶接ワイヤにより溶融プールを押し込むことが可能となる。従って、微小短絡によるスパッタ抑制や溶け込み確保ができ、また、規則的な短絡周期を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度と溶接電流と溶接電圧の波形を示す図
【図2】本発明の実施の形態1におけるワイヤ送給速度と溶接電流と溶接電圧の波形を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における評価例を示す図
【図4】本発明の実施の形態1におけるアーク溶接装置の概略構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態2におけるワイヤ送給速度と溶接電流と溶接電圧の波形を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における評価例を示す図
【図7】本発明の実施の形態2におけるアーク溶接装置の概略構成図
【図8】従来のワイヤ送給制御における波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図7を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1におけるアーク溶接装置でアーク溶接制御方法を実施した際の出力波形を示す図である。図1は、ワイヤ送給速度WSと、溶接電圧Vと、溶接電流Iの時間変化を示しており、アーク期間と短絡期間が交互に繰り返している状態を示している。以下、図1を用いて、本実施の形態1のアーク溶接制御方法について説明する。
【0023】
図1において、時刻t1〜時刻t2は、短絡期間中の短絡初期期間WT1である。短絡初期期間WT1おいて、ワイヤ送給速度WSは、前進送給(正送)である基本ワイヤ送給速度WS1となるように制御する。なお、短絡初期期間WT1は、後述するように、例えば設定電流に応じて決定されるものである。また、基本ワイヤ送給速度WS1も、後述するように、例えば設定電流に応じて決定されるものである。
【0024】
ここで、基本ワイヤ送給速度WS1とは、溶接を行う前にアーク溶接装置に設定される設定電流に応じた基本となる所定のワイヤ送給速度である。また、短絡初期期間WT1は、基本ワイヤ送給速度WS1で溶接ワイヤを送給する場合に、溶接ワイヤと溶融プールとが確実に短絡するまでの期間であり、短絡発生時からの所定期間である。なお、溶接開始前に設定される設定電流とワイヤ送給速度とワイヤ送給量とは、比例の関係にあることは明らかである。従って、設定電流ではなく、設定されたワイヤ送給速度あるいは設定されたワイヤ送給量に応じて、基本ワイヤ送給速度WS1を決定するようにしてもよい。また、設定電流に応じて決定される短絡初期期間WT1等についても同様である。
【0025】
図1に示す短絡初期期間WT1が経過した後の時刻t2〜時刻t3において、短絡初期期間WT1が経過した時点である時刻t2から、短絡開放を円滑に行えるように、ワイヤ送給速度WSを後退送給(逆送)のワイヤ送給速度WS2にする。なお、ワイヤ送給速度WS2は、例えば設定電流に応じて決定されるものである。
【0026】
また、短絡期間の溶接制御として、短絡発生初期の時点である時刻t1からは、電流制御により溶接電流Iを所定の傾きで上昇させる。なお、短絡期間の終端直前、すなわち、時刻t3の直前においては、スパッタを低減するため、従来から知られているように、溶融した溶接ワイヤのくびれを検知して溶接電流Iを急峻に低減させるよう制御している。
【0027】
アーク期間である時刻t3〜時刻t4において、アーク発生初期の時点である時刻t3で、ワイヤ送給速度WSを、後退送給であるワイヤ送給速度WS2から前進送給である基本ワイヤ送給速度WS1に加速する。
【0028】
また、アーク期間の溶接制御として、時刻t3からは、電流制御により溶接電流Iを所定の傾きで上昇させる。その後、電圧制御を行い、基本溶接電圧VPを出力できるように溶接電流Iが出力される。そして、定電圧制御を行うことによりアーク長を維持できるので、微小短絡が発生し難いアーク状態を維持することができる。その後、アーク開始から所定時間後に電流制御を行い、溶接電流Iを微小短絡しても大粒スパッタが発生しにくい電流値である100A以下のベース電流IBに低減させる。
【0029】
なお、溶接電流Iは、所定の傾きでベース電流IBに移行するように制御する。このように、アーク開始時から所定時間後に、溶接電流Iがベース電流IBとなるように所定の傾きをもって減少させることにより、アーク状態の急激な変化を緩和することができる。ここで、ベース電流IBの値は、実験等により溶接対象に適するような値とすればよい。
【0030】
アーク期間では、電流制御によりベース電流IBの状態を保ち、次の短絡発生の時点である時刻t4を待つ状態とする。このように溶接電流Iをベース電流IBの状態に保つことで、短絡が発生しやすい状態を確保することと、微小短絡が発生したとしても溶接電流Iが低いため大粒のスパッタが発生しにくいという効果がある。
【0031】
本実施の形態1のアーク溶接制御方法は、上記した短絡期間とアーク期間の制御のサイクルを繰り返すものである。特に、ワイヤ送給速度WSに関し、アーク期間は前進送給の基本ワイヤ送給速度WS1とする。短絡期間は、短絡発生時からの所定期間である短絡初期期間WT1の間はアーク期間と同様に前進送給の基本ワイヤ送給速度WS1とし、短絡初期期間WT1の経過後は、後退送給のワイヤ送給速度WS2とする。そして、このようなアーク期間と短絡期間のワイヤ送給制御を繰り返すものである。
【0032】
なお、図2に示すように、短絡初期期間WT1の時刻t1〜時刻t2において、ワイヤ送給速度WSを、基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS3となるように制御してもよい。このように、短絡初期期間WT1のワイヤ送給速度WSを、基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS3とすることにより、被溶接物への溶け込みをさらに深くすることが可能となる。なお、ワイヤ送給速度WS3は、例えば設定電流に応じて決定されるものである。また、このワイヤ送給制御では、基本ワイヤ送給速度WS1は、平均ワイヤ送給速度となる場合もある。
【0033】
また、図示していないが、短絡初期期間WT1の経過後の時点である時刻t2から、ワイヤ送給速度WSを、基本ワイヤ送給速度WS1よりも低いワイヤ送給速度WS2に減速する際、所定の傾きをもって移行させるように制御してもよい。このように、ワイヤ送給速度WSの変化に所定の傾きをもたせることにより、ワイヤ送給速度WSの急激な変化を緩和することができる。
【0034】
また、アーク発生初期の時点である時刻t3から、ワイヤ送給速度WSを、ワイヤ送給速度WS2から基本ワイヤ送給速度WS1まで加速する際にも、図示していないが、所定の傾きをもって移行さように制御してもよい。このように、ワイヤ送給速度WSを、定常溶接期間の基本ワイヤ送給速度WS1になるように所定の傾きをもって加速させることにより、アーク状態の急激な変化を緩和することができ、また、アーク発生時直後の微小短絡をさらに少なくすることができる。
【0035】
さらに、アーク発生初期の時点である時刻t3から、ワイヤ送給速度WSを、ワイヤ送給速度WS2から基本ワイヤ送給速度WS1に加速する際に、アーク発生初期である時刻t3から所定時間経過した後に前進送給し、加速を開始するように制御してもよい。アーク発生初期から所定の遅延時間が経過した後にワイヤ送給速度WSの加速を開始させることにより、アーク発生時直後の微小短絡をさらに少なくすることができる。
【0036】
ここで、短絡初期期間WT1と短絡初期のワイヤ送給速度WS3との組み合わせの適正領域の一例を図3に示す。図3は、ワイヤ径φ1.4を使用し、CO2溶接で設定電流300A(基本ワイヤ送給速度WS1=9.0m/min)を溶接条件とした場合の評価事例である。
【0037】
図3に示す適正領域は、アーク安定性と被溶接物への溶け込み効果の2つを評価項目とし、短絡初期期間WT1と短絡初期のワイヤ送給速度WS3のそれぞれの適正値を表したものである。
【0038】
短絡初期期間WT1と短絡初期のワイヤ送給速度WS3のいずれも値が小さい場合には、アーク安定性はあるが、溶け込み効果がなくなる。また逆に、短絡初期期間WT1と短絡初期のワイヤ送給速度WS3のいずれも値が大きい場合には、溶け込み効果はあるが、アーク安定性が損なわれる。
【0039】
よって、アーク安定性と溶け込み効果とを両立させるためには、図3に示す、安定性があり、かつ、溶け込み効果がある適性領域が必要となってくる。すなわち、アーク安定性と溶け込み効果がある場合の短絡初期期間WT1と短絡初期のワイヤ送給速度WS3を選定するようにする必要がある。なお、図3に示すものは、上記溶接条件下での適正領域であり、異なる溶接条件では適正領域は異なる。
【0040】
ここで、上記のアーク溶接制御を行うためのアーク溶接装置について、図4を用いて説明する。なお、ワイヤ送給制御に関する点を中心に説明する。
【0041】
図4において、アーク溶接装置は、入力電源1から入力した電力を整流する1次整流部2と、1次整流部2の出力を交流に変換するスイッチング部3と、スイッチング部3の出力を変圧するトランス4と、トランス4の出力を整流する2次整流部5およびDCL6と、スイッチング部3を制御する駆動部7と、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部8と、溶接電流を検出する溶接電流検出部9と、溶接電圧検出部8の出力および/または溶接電流検出部9の出力に基づいて溶接状態が短絡状態であるのかアーク状態であるのかを検出する短絡/アーク検出部10と、短絡状態である場合の溶接出力制御を行う短絡制御部11と、アーク状態である場合の溶接出力制御を行うアーク制御部12と、溶接ワイヤ21の送給制御を行うワイヤ送給モータ制御部13と、設定電流や溶接ワイヤ径や溶接ワイヤ材質等の溶接条件を設定するための溶接条件設定部25を備えている。
【0042】
なお、ワイヤ送給モータ制御部13は、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26から構成される。
【0043】
また、溶接ワイヤ21は、ワイヤ送給モータ20により送給される。そして、溶接ワイヤ21には、チップ22を介して電力が供給され、溶接ワイヤ21と被溶接物24との間で溶接アーク23が発生して溶接が行われる。
【0044】
なお、例えば、チップ22は図示しない溶接トーチに設けられ、この溶接トーチは図示しない産業用ロボットを構成するマニピュレータに取り付けられ、マニピュレータの動作により溶接トーチを移動させるようにしても良い。そして、産業用ロボットを構成しマニピュレータの動作を制御する図示しないロボット制御装置の内部に、1次整流部2からモータ極性切換え制御部17までの各構成要素と溶接条件設定部25と後退送給制御部26を設けるようにしてもよい。
【0045】
溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続され、検出した電圧に対応した信号を出力する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて、溶接出力電圧が一定値以上であるのか未満であるのかを判定し、この判定結果により溶接ワイヤ21が被溶接物24に接触短絡しているか、それとも非接触状態で溶接アーク23を発生しているかを判定して判定信号を出力する。なお、短絡/アーク検出部10は、溶接電流検出部9の出力に基づいて判定を行うようにしてもよいし、溶接電圧検出部8と溶接電流検出部9の両方の出力に基づいて判定を行うようにしてもよい。
【0046】
次に、短絡/アーク検出部10の判定後の送給制御について説明する。
【0047】
ワイヤ送給モータ制御部13は、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26から構成されている。
【0048】
短絡/アーク検出部10からの信号が短絡判定を示すものである場合、短絡初期時間計時部15は、短絡発生時からの時間を計時する。そして、短絡初期時間計時部15が、短絡初期期間WT1が経過したと判定するまでの間は、短絡初期送給制御部16は、ワイヤ送給速度WSを基本ワイヤ送給速度WS1とすることを示す信号を出力する。なお、短絡初期時間計時部15は、設定電流と短絡初期期間WT1とを対応付けた表あるいは数式を備えている。そして、短絡初期時間計時部15は、溶接条件設定部25で設定された設定電流に基づいて、短絡初期期間WT1を決定する。ここで、表や数式は、例えば実験等により事前に求めておくものである。また、モータ極性切換え制御部17は、前進送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが、前進送給の基本ワイヤ送給速度WS1となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。
【0049】
次に、短絡初期時間計時部15が、短絡発生時から短絡初期期間WT1が経過したと判定すると、後退送給制御部26は、ワイヤ送給速度WSを後退送給時の速度であるワイヤ送給速度WS2とすることを示す信号を出力し、モータ極性切換え制御部17は、後退送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが後退送給のワイヤ送給速度WS2となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。なお、後退送給制御部26は、設定電流と後退送給速度であるワイヤ送給速度WS2とを対応付けた表あるいは数式を備えている。そして、後退送給制御部26は、溶接条件設定部25で設定された設定電流に基づいて、ワイヤ送給速度WS2を決定する。ここで、表や数式は、例えば実験等により事前に求めておくものである。
【0050】
一方、短絡/アーク検出部10からの信号がアーク判定を示すアーク期間の場合、基本ワイヤ送給制御部14は、ワイヤ送給速度WSを基本ワイヤ送給速度WS1とすることを示す信号を出力する。モータ極性切換え制御部17は、前進送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが前進送給の基本ワイヤ送給速度WS1となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。
【0051】
本実施の形態1のアーク溶接装置は、上記した短絡期間のワイヤ送給制御とアーク期間のワイヤ送給制御を周期的に繰り返すものである。
【0052】
なお、短絡初期時間計時部15が短絡初期期間WT1が経過したと判定するまでの間に短絡初期送給制御部16が出力するワイヤ送給速度WSを示す信号は、基本ワイヤ送給速度WS1ではなく、基本ワイヤ送給速度WS1より高いワイヤ送給速度WS3とするようにしても良い。この場合、短絡初期送給制御部16は、設定電流と前進送給であるワイヤ送給速度WS3とを対応付けた表あるいは数式を備えている。そして、短絡初期送給制御部16は、溶接条件設定部25で設定された設定電流に基づいて、ワイヤ送給速度WS3を決定する。ここで、表や数式は、例えば実験等により事前に求めておくものである。そして、基本ワイヤ送給速度WS1とワイヤ送給速度WS3のどちらになるように制御するかは、予め短絡初期送給制御部16に設定するようにしておけばよい。
【0053】
そして、短絡初期期間WT1のワイヤ送給速度WSを、基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS3とすることにより、被溶接物への溶け込みを、基本ワイヤ送給速度WS1の場合よりも深くすることが可能となる。
【0054】
なお、上記したアーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
【0055】
以上のように、本実施の形態1のアーク溶接装置およびアーク溶接制御方法によれば、短絡期間において、短絡開放を円滑に行うためのワイヤ送給速度WS2である後退送給を行う前に、基本ワイヤ送給速度WS1または基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS3で前進送給を行うことで、溶融プールへの確実な短絡や溶融プールを押し込むことが可能となる。これらにより、短絡期間における微小短絡によるスパッタ抑制や溶け込みが確保でき、規則的な短絡周期を実現することができる。
【0056】
(実施の形態2)
本実施の形態2において、実施の形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施の形態1と異なる主な点は、短絡開放時であるアーク発生時から次の短絡発生時までのアーク期間において、ワイヤ送給を前進送給させて前記基本ワイヤ送給速度WS1に戻すことに加え、短絡周期を規則的にするため、アーク発生時点から所定時間後に、ワイヤ送給速度WSを基本ワイヤ送給速度WS1から基本ワイヤ送給速度WS1よりも高い前進送給のワイヤ送給速度WS4に加速するようにした点である。なお、ワイヤ送給速度WS4は、設定電流に応じて決定されるものである。
【0057】
図5は、本実施の形態2における短絡を伴うアーク溶接のアーク溶接制御方法を説明するための出力波形を示す図である。図5に、ワイヤ送給速度WSと、溶接電圧Vと、溶接電流Iの時間変化を示す。
【0058】
図5に示す短絡初期期間WT1である時刻t1〜時刻t2において、ワイヤ送給速度WSは、基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS3を維持するように制御する。このように、短絡初期期間WT1の間、基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS3で前進送給することにより、被溶接物への溶け込みを通常より深くすることが可能となる。
【0059】
短絡初期期間WT1が経過した後の時刻t2〜時刻t3では、短絡開放を円滑に行えるように、時刻t2以降は、ワイヤ送給速度WSが後退送給であるワイヤ送給速度WS2となるように制御される。
【0060】
次に、アーク期間である時刻t3〜t4では、時刻t3以降は、ワイヤ送給速度WSが、後退送給であるワイヤ送給速度WS2から前進送給である基本ワイヤ送給速度WS1となるように制御される。
【0061】
そして、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、アーク発生初期である時刻t3から時刻t5までの短絡誘発期間WT2を設けており、アーク発生時から短絡誘発期間WT2が経過した時点である時刻t5において、ワイヤ送給速度WSを基本ワイヤ送給速度WS1よりも高い短絡誘発送給速度であるワイヤ送給速度WS4に加速するように溶接ワイヤ21の送給を制御する。このようにすることで、短絡周期を規則的にすることができる。なお、短絡誘発期間WT2は、設定電流に応じて決定されるものである。
【0062】
ここで、時刻t3〜時刻t5の期間である短絡誘発させるための短絡誘発期間WT2と短絡誘発のワイヤ送給速度WS4との組み合わせの適正領域の一例を図6に示す。
【0063】
図6は、ワイヤ径φ1.4を使用し、CO2溶接で設定電流300A(基本ワイヤ送給速度WS1=9.0m/min)の溶接条件における評価事例である。
【0064】
図6に示す適正領域は、アーク安定性と短絡誘発効果の2つを評価項目とし、短絡誘発期間WT2と短絡誘発のワイヤ送給速度WS4のそれぞれの適正値を表したものである。
【0065】
短絡誘発のワイヤ送給速度WS4の値が大きい場合には、短絡誘発効果はあるが、アーク安定性がなくなる。また、短絡誘発期間WT2の値が大きい場合には、アーク安定性と短絡誘発効果が損なわれる。すなわち、短絡誘発期間WT2は、長くすることが良くないことがわかる。
【0066】
よって、アーク安定性と短絡誘発効果を両立させるためには、図6に示す、安定性があり、かつ、誘発効果がある適性領域が必要となってくる。なお、図6に示す結果は、上記溶接条件下での適正領域であり、異なる溶接条件では適正領域は異なる。
【0067】
ここで、以上のようなアーク溶接制御を行うためのアーク溶接装置について、図7を用いて説明する。なお、ワイヤ送給制御に関する点を中心に説明する。また、実施の形態1で説明した図4に示すアーク溶接装置と同一の箇所については同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図7において、図4と異なる主な点は、ワイヤ送給モータ制御部13が、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と後退送給制御部26に加え、短絡誘発時間制御部18と、短絡誘発送給制御部19を備えている点である。
【0069】
溶接電圧検出部8は、溶接用電源出力端子間に接続され、検出した電圧に対応した信号を出力する。短絡/アーク検出部10は、溶接電圧検出部8からの信号に基づいて、溶接出力電圧が一定値以上か未満かを判定し、この判定結果により溶接ワイヤ21が被溶接物24に接触短絡している短絡状態であるのか、それとも非接触状態で溶接アーク23を発生しているアーク状態であるのかを判定して判定信号を出力する。
【0070】
次に、短絡/アーク検出部10の判定後の送給制御について説明する。
【0071】
ワイヤ送給モータ制御部13は、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、短絡誘発時間制御部18と、短絡誘発送給制御部19から構成されている。
【0072】
短絡/アーク検出部10からの信号が短絡判定を示すものである場合、短絡初期時間計時部15は、短絡発生時からの時間を計時する。そして、短絡初期時間計時部15が、短絡初期期間WT1が経過したと判定するまでの間は、短絡初期送給制御部16は、基本ワイヤ送給速度WS1より高いワイヤ送給速度WS3とすることを示す信号を出力する。また、モータ極性切換え制御部17は、前進送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26と、短絡誘発時間制御部18と、短絡誘発送給制御部19を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが、基本ワイヤ送給速度WS1より高い前進送給のワイヤ送給速度WS3となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。
【0073】
短絡初期時間計時部15が、短絡発生時から短絡初期期間WT1が経過したと判定すると、後退送給制御部26は、ワイヤ送給速度を後退送給であるワイヤ送給速度WS2とすることを示す信号を出力し、モータ極性切換え制御部17は、後退送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26と、短絡誘発時間制御部18と、短絡誘発送給制御部19を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが後退送給のワイヤ送給速度WS2となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。
【0074】
一方、短絡/アーク検出部10からの信号がアーク判定を示すアーク期間の場合、基本ワイヤ送給制御部14は、ワイヤ送給速度WSを基本ワイヤ送給速度WS1とすることを示す信号を出力する。モータ極性切換え制御部17は、前進送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26と、短絡誘発時間制御部18と、短絡誘発送給制御部19を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが基本ワイヤ送給速度WS1となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。
【0075】
また、短絡誘発時間制御部18は計時機能を有しており、アーク発生時からの時間を計時する。そして、短絡誘発時間制御部18が、アーク発生時から短絡誘発期間WT2が経過したか否かを判定する。短絡誘発時間制御部18が、アーク発生時から短絡誘発期間WT2が経過したと判定した場合、短絡誘発送給制御部19は、前進送給であり基本ワイヤ送給速度WS1よりも高い短絡誘発のワイヤ送給速度WS4とすることを示す信号を出力し、モータ極性切換え制御部17は、前進送給を示す信号を出力する。そして、基本ワイヤ送給制御部14と、短絡初期時間計時部15と、短絡初期送給制御部16と、モータ極性切換え制御部17と、後退送給制御部26と、短絡誘発時間制御部18と、短絡誘発送給制御部19を構成要素とするワイヤ送給モータ制御部13からの信号を受信したワイヤ送給モータ20は、ワイヤ送給速度WSが前進送給のワイヤ送給速度WS4となるように溶接ワイヤ21の送給制御を行う。
【0076】
なお、短絡誘発時間制御部18は、設定電流と短絡誘発期間WT2とを対応付けた表あるいは数式を備えている。そして、短絡誘発時間制御部18は、溶接条件設定部25で設定された設定電流に基づいて、短絡誘発期間WT2を決定する。ここで、表や数式は、例えば実験等により事前に求めておくものである。
【0077】
また、短絡誘発送給制御部19は、設定電流と前進送給であるワイヤ送給速度WS4とを対応付けた表あるいは数式を備えている。そして、短絡誘発送給制御部19は、溶接条件設定部25で設定された設定電流に基づいて、ワイヤ送給速度WS4を決定する。ここで、表や数式は、例えば実験等により事前に求めておくものである。
【0078】
本実施の形態2のアーク溶接装置は、上記した短絡期間のワイヤ送給制御とアーク期間のワイヤ送給制御を周期的に繰り返すものである。
【0079】
なお、アーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
【0080】
以上のように、本実施の形態2のアーク溶接装置およびアーク溶接制御方法によれば、アーク期間において短絡誘発を行うために基本ワイヤ送給速度WS1よりも高いワイヤ送給速度WS4で前進送給することで、溶融プールへの確実な短絡や溶融プールを押し込むことが可能となる。これらにより、微小短絡によるスパッタ抑制や溶け込み確保ができ、規則的な短絡周期を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、ワイヤ送給速度として前進送給と後退送給を繰り返すアーク溶接において、緻密なワイヤ送給速度を実現することにより、スパッタを低減しながら、溶け込みを確保できるなどの溶接品質面にも対応でき、消耗電極である溶接ワイヤを連続的に送給しながらアーク溶接を行うアーク溶接制御方法やアーク溶接装置として産業上有用である。
【符号の説明】
【0082】
WS ワイヤ送給速度
V 溶接電圧
I 溶接電流
IP ピーク電流
IB ベース電流
VP 基本溶接電圧
WS1 基本ワイヤ送給速度
WS2 ワイヤ送給速度
WS3 ワイヤ送給速度
WS4 ワイヤ送給速度
WT1 短絡初期期間
WT2 短絡誘発期間
1 入力電源
2 1次整流部
3 スイッチング部
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 駆動部
8 溶接電圧検出部
9 溶接電流検出部
10 短絡/アーク検出部
11 短絡制御部
12 アーク制御部
13 ワイヤ送給モータ制御部
14 基本ワイヤ送給制御部
15 短絡初期時間計時部
16 短絡初期送給制御部
17 モータ極性切換え制御部
18 短絡誘発時間制御部
19 短絡誘発送給制御部
20 ワイヤ送給モータ
21 溶接ワイヤ
22 チップ
23 溶接アーク
24 被溶接物
25 溶接条件設定部
26 後退送給制御部
Vw 溶接電圧
Iw 溶接電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤの前進送給と後退送給を行って短絡溶接を行うアーク溶接制御方法であって、
短絡期間では、短絡発生時から第1の所定期間の間は前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記第1の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを後退送給させ、
アーク期間では、前記溶接ワイヤを前進送給させ、
前記短絡期間の前記溶接ワイヤの送給制御と前記アーク期間の前記ワイヤの送給制御とを交互に繰り返して溶接を行うアーク溶接制御方法。
【請求項2】
短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度である請求項1記載のアーク溶接制御方法。
【請求項3】
アーク期間では、前記溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、
短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度は、前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度である請求項1記載のアーク溶接制御方法。
【請求項4】
アーク期間では、アーク発生時から第2の所定期間の間は溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、前記第2の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度で前進送給させる請求項1から3のいずれか1項に記載のアーク溶接制御方法。
【請求項5】
消耗電極である溶接ワイヤと被溶接物との間でアークの発生と短絡とを繰り返して溶接を行うアーク溶接装置であって、
少なくとも設定電流を設定するための溶接条件設定部と、
前記溶接ワイヤを送給するためのワイヤ送給モータと、
溶接出力を制御するスイッチング部と、
溶接電圧を検出する溶接電圧検出部と、
前記溶接電圧検出部の出力に基づいて短絡期間であるのかアーク期間であるのかを検出する短絡/アーク検出部と、
短絡状態であるときの溶接出力制御信号を出力する短絡制御部と、
アーク状態であるときの溶接出力制御信号を出力するアーク制御部と、
前記短絡制御部または前記アーク制御部からの信号に基づいて前記スイッチング部を制御する駆動部と、
前記短絡/アーク検出部からの信号に基づいて前記ワイヤ送給モータを制御するワイヤ送給モータ制御部とを備え、
前記ワイヤ送給モータ制御部は、ワイヤ送給速度を制御する信号を出力するワイヤ送給速度制御部と、前記ワイヤ送給モータの回転方向を指示する信号を出力するモータ極性切換制御部と、時間を計時する計時部とを有し、
前記短絡期間では、短絡発生時から第1の所定期間の間は前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記第1の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを後退送給させ、前記アーク期間では、前記溶接ワイヤを前進送給させ、前記短絡期間の前記溶接ワイヤの送給制御と前記アーク期間の前記ワイヤの送給制御とを交互に繰り返して溶接を行うアーク溶接装置。
【請求項6】
短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度は、設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度である請求項5記載のアーク溶接装置。
【請求項7】
アーク期間では、前記溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、
短絡期間における第1の所定期間の間に溶接ワイヤを前進送給させる際のワイヤ送給速度は、前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度である請求項5記載のアーク溶接装置。
【請求項8】
アーク期間では、アーク発生時から第2の所定期間の間は溶接ワイヤを設定電流に応じた基本ワイヤ送給速度で前進送給させ、前記第2の所定期間の経過後は前記溶接ワイヤを前記基本ワイヤ送給速度よりも高いワイヤ送給速度で前進送給させる請求項5から7のいずれか1項に記載のアーク溶接装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate