説明

インキ塗布方法、インキ塗布装置、インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法およびインキ塗布済の造作部材または家具部材

【課題】造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対して高速でインキを塗布することが可能なインキ塗布方法およびインキ塗布装置を提供する。
【解決手段】インキ塗布装置10は、幅木材11を支持して搬送する複数の搬送ローラー31と、搬送ローラー31により搬送される幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cおよびそれらの近傍の上面21に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を塗布する溶液塗布ロール32と、溶液塗布ロール32により塗布された溶液28のうち、上面21に残る溶液28を掻きとる吸水ロール33とを備えている。さらに、面取り部21aまたは縦溝21cに塗布された溶液28に対してインキ27を塗布するインキ塗布手段34が設けられている。このインキ塗布手段34は、その外周面上に付着されたインキ27を面取り部21aまたは縦溝21c上の溶液28に塗布する2段印刷版胴35,45を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布するインキ塗布方法およびインキ塗布装置に係り、とりわけ溝または面取り部に対して容易にかつ精度良くインキを塗布することができるインキ塗布方法およびインキ塗布装置に関する。また本発明は、インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法、並びに当該インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法により得られたインキ塗布済の造作部材または家具部材に関する。
【背景技術】
【0002】
造作部材または家具部材の上面には、装飾性のため溝または面取り部が形成されることがある。造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する方法として、インクを吐出するノズルを用いる方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1において、ドアパネルの搬送方向前後に近接して設けられた塗料吐出ノズルと吸込ノズルとを用いる溝塗装方法が提案されている。特許文献1においては、はじめに、塗料吐出ノズルから溝に塗料が供給され、次に、余分の塗料が吸込ノズルにより吸引されている。
【0004】
また特許文献2においては、ワークの一辺から他辺に通じる凹溝内に塗装をおこなうための溝塗装装置が示されている。この溝塗装装置は、ワークの凹溝内に塗料を塗布する塗布ノズルと、ワークの一辺側の端面に当接するとともに凹溝の一端に連通する凹部を形成した受ストッパーと、ワークの他辺側の端面に当接するとともに凹溝の他端に連通する凹部を形成してワークを受ストッパー側に押圧する押圧プッシャーと、受ストッパー及び押圧プッシャーにおける凹部の底部に連通して凹部内に流入した余分の塗料を吸引排出する吸引排出手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−216663号公報
【特許文献2】実開平6−3469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている溝塗装方法においては、余分の塗料を吸込ノズルにより吸引するため、塗料の無駄使いが多いという問題があり、さらに、吸込ノズルの吸引力によって溝内の塗料がドアパネルの表面に吸い上げられ、これによってドアパネルの表面が汚れてしまうという問題がある。また、特許文献2に開示されている溝塗装装置においては、高速で塗装を行うことが困難であり、さらに、造作部材または家具部材の溝または面取り部は、一般に積層体からなる造作部材または家具部材を切削などにより加工することにより形成されており、このため溝または面取り部にささくれなどの凹凸部が形成されやすく、これによって凹凸部においてインキかすれなどが生じ、塗装が不安定になることも考えられる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対して、インキを無駄に使うことなく、またインキかすれなどを生じさせることなく、高速で、容易かつ精度良くインキを塗布することが可能なインキ塗布方法、およびインキ塗布装置を提供することを目的とする。また本発明は、インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法、並びに当該インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法により得られたインキ塗布済の造作部材または家具部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有する造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する方法において、溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する工程と、塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する工程と、溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布する工程と、を備えたことを特徴とするインキ塗布方法である。
【0009】
本発明は、造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する方法であって、溝は、造作部材または家具部材の上面の全長または全幅にわたって延びるよう形成された貫通溝からなることを特徴とするインキ塗布方法である。
【0010】
本発明は、造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する方法であって、溝は、造作部材または家具部材の上面の内側から延びるよう形成された非貫通溝からなることを特徴とするインキ塗布方法である。
【0011】
本発明によるインキ塗布方法において、溝は、化粧シートから木質板にまで達していてもよい。
【0012】
本発明は、木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有する造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する装置において、造作部材または家具部材を支持して搬送する搬送ローラーと、搬送ローラーにより搬送される造作部材または家具部材の溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する溶液塗布手段と、溶液塗布手段により塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する溶液除去手段と、溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布するインキ塗布手段と、を備えたことを特徴とするインキ塗布装置である。
【0013】
本発明は、造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する装置であって、溝は、造作部材または家具部材の上面の全長または全幅にわたって延びるよう形成された貫通溝からなることを特徴とするインキ塗布装置である。
【0014】
本発明は、造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する装置であって、溝は、造作部材または家具部材の上面の内側から延びるよう形成された非貫通溝からなることを特徴とするインキ塗布装置である。
【0015】
本発明によるインキ塗布装置において、溝は、化粧シートから木質板にまで達していてもよい。
【0016】
本発明によるインキ塗布装置において、インキ塗布手段は、小径部と、小径部に連結して設けられた大径部とを含む2段印刷版胴を有していてもよい。2段印刷版胴は、好ましくは、造作部材または家具部材の搬送方向に対して逆向きに回転する。
【0017】
本発明によるインキ塗布装置において、インキ塗布手段は、造作部材または家具部材に対して相対移動可能なインキ塗布用ディスペンサーからなっていてもよい。
【0018】
本発明によるインキ塗布装置において、溶液除去手段は、吸水ロール駆動機構により駆動されて回転する吸水ロールからなっていてもよい。吸水ロールは、好ましくは、吸水ロール駆動機構により駆動されて造作部材または家具部材の搬送方向と同一の向きに回転する。
【0019】
本発明によるインキ塗布装置において、溶液塗布手段は、塗布ロール駆動機構により駆動されて回転する溶液塗布ロールからなっていてもよい。溶液塗布ロールは、好ましくは、塗布ロール駆動機構により駆動されて造作部材または家具部材の搬送方向と同一の向きに回転する。
【0020】
本発明によるインキ塗布装置において、溶液塗布手段は、造作部材または家具部材に対して相対移動可能な溶液塗布用ディスペンサーからなっていてもよい。
【0021】
本発明は、インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法において、木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有し、上面に溝または面取り部が形成された造作部材または家具部材を準備する工程と、造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する工程と、を備え、前記インキを塗布する工程は、前記溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する工程と、塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する工程と、溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布する工程と、を有することを特徴とするインキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法である。
【0022】
本発明は、インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法によって得られたインキ塗布済の造作部材または家具部材において、前記インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法は、木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有し、上面に溝または面取り部が形成された造作部材または家具部材を準備する工程と、造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する工程と、を備え、前記インキを塗布する工程は、前記溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する工程と、塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する工程と、溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布する工程と、を有することを特徴とするインキ塗布済の造作部材または家具部材である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、木質板と木質板上に積層された化粧シートとを有する造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布するとき、まず溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布し、次に、塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去し、その後、溝または面取り部の溶液に対してインキを塗布する。このようにして、上面の溝または面取り部に対してインキを容易かつ精度良く塗布することができる。このことにより、インキを無駄に使うことなく、またインキかすれなどを生じさせることなく、高速でインキを塗布することが可能となる。これによって、インキ塗布済の造作部材または家具部材を容易に製造することができる。また、造作部材または家具部材の上面の溝または面取り部に対してインクを塗布する際の溝または面取り部の形状に対する制約がなくなり、このため、種々の意匠を造作部材または家具部材に容易に表現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本実施の第1の実施の形態におけるインキ塗布装置全体を示す斜視図。
【図2】図2は、本実施の第1の実施の形態における幅木材の層構成を示す図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における幅木材を示す斜視図。
【図4】図4は、図3に示す幅木材をA−A方向からみた断面図。
【図5】図5(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態において、面取り部へインキを塗布するために用いられる2段印刷版胴を示す正面図および側面図、図5(c)は、図5(a)に示す2段印刷版胴のうちその端部を拡大して示す図。
【図6】図6(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態において、溝へインキを塗布するために用いられる2段印刷版胴を示す正面図および側面図、図6(c)は、図6(a)に示す2段印刷版胴のうちその端部を拡大して示す図。
【図7】図7(a)(b)(c)は、本発明の第1の実施の形態における幅木材の変形例を示す断面図。
【図8】図8は、本実施の第2の実施の形態におけるインキ塗布装置全体を示す斜視図。
【図9】図9(a)は、本実施の第2の実施の形態におけるドアパネルを示す斜視図、図9(b)は、図9(a)に示すドアパネルをB−B方向からみた断面図、図9(c)は、図9(a)に示すドアパネルをC−C方向からみた断面図。
【図10】図10は、本実施の第2の実施の形態におけるディスペンサーを示す斜視図。
【図11】図11(a)(b)(c)は、本実施の第2の実施の形態におけるインキ塗布方法を示す図。
【図12】図12は、本実施の第2の実施の形態におけるインキ塗布装置の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
はじめに、本発明における造作部材または家具部材について説明する。
本発明において造作部材とは、建築内部の仕上材、取付物のうち床材を除く部材のことであり、例えば建具、建具枠材、敷居材、鴨居材、幅木材、廻り縁材、腰壁材、階段踏み板、蹴込み板、階段側板、手すり材、框材、羽目板などを挙げることができる。
本発明において建具とは、ドアパネル、障子、襖など、建築内部の室を区切るよう開閉自在に取り付けられている部材のことである。
本発明において家具部材とは、たんす、机、椅子など、日常生活のための道具(家具)のための部材のことである。
【0026】
第1の実施の形態
本実施の形態においては、造作部材または家具部材の一例である幅木材11に対してインキを塗布する場合について説明する。はじめに図2乃至図4を参照して、幅木材11について説明する。
【0027】
幅木材
図2に示すように、幅木材11は、木質板12と、木質板12上に第1接着剤コート層13を介して積層された化粧シート14とを有している。幅木材11のうち木質板12の構成は特に限定されないが、例えば杉、檜、樫、ラワン、チークなどの樹木から構成される木材単板・合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。木質板12の厚さは特に限定されないが、例えば4〜20mmの範囲内であり、例えば5mmとなっている。
【0028】
幅木材11のうち第1接着剤コート層13の材質は特に限定されず、木質板12および化粧シート14に応じて適宜選択される。例えば第1接着剤コート層13として、酢酸ビニル樹脂系の接着剤を使用することができる。第1接着剤コート層13の厚さは、例えば30μmとなっている。
【0029】
次に、幅木材11のうち化粧シート14について説明する。化粧シート14の構成も特に限定されないが、例えば化粧シート14は、第1接着剤コート層13側から順に配置された基材シート15と、絵柄層16と、接着層17と、透明樹脂層18とプライマー層19と、表面保護層20とを有している。
【0030】
このうち基材シート15は、例えば、着色剤添加で着色隠蔽性とした茶褐色の厚み60μmのポリプロピレン系樹脂フィルムからなる。また絵柄層16は、例えば、この基材シート15の上面に、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダー樹脂とした用いた着色インキをグラビア印刷することにより形成されている。絵柄層16の上に形成される接着層17は、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を塗工することにより形成されており、その厚さは例えば2μmとなっている。接着層17の上に形成される透明樹脂層18は、例えばエチレン−プロピレン−ブテン共重合体を含み、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が添加されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを、Tダイで溶融押出塗工することにより形成されており、その厚さは例えば60μmとなっている。
【0031】
透明樹脂層18の上には、例えば、アクリル−ウレタンブロック共重合体の主剤とイソシアネートの硬化剤とからなる2液硬化型ウレタン樹脂の塗液を塗工することにより、厚さ2μmのプライマー層19が形成されている。プライマー層19の上には、例えば、ウレタンアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂をグラビアコートにより厚さ5μmで塗布した後、塗布された電離放射線硬化性樹脂に175keV、50kGyの条件で電子線を照射することにより、厚さ5μmの表面保護層20が形成されている。
【0032】
次に図3および図4を参照して、幅木材11の形状について説明する。図3は幅木材11を示す斜視図であり、図4は、図3の幅木材11をA−A方向から見た場合の断面を示す図である。図3に示すように、幅木材11は長方形の形状を有し、その長さは例えば4000mmであり、その幅は例えば50mmである。また図3に示すように、幅木材11の上面21の略中央には、上面21の全長にわたって延びる縦溝21c(貫通溝)が形成されており、上面21の長側部22,24側の端部には面取り部21aが形成されている。
【0033】
このうち縦溝21cは、図4に示すように、底面21dと、底面21dから直立する一対の側面21eとからなっている。このように底面21dと一対の側面21eとからなる縦溝21cにおいて、縦溝21cの幅および深さは例えば5mmおよび3mmとなっている。また、面取り部21aにおいて、面取り部21aの幅および深さは例えば5mmおよび3mmとなっている。
【0034】
なお図4に示すように、幅木材11は、木質板12を化粧シート14によって巻き込む、いわゆるラッピングという手法により形成されている。この場合、図4に示すように、木質板12の上面、側面および底面の一部が化粧シート14により覆われており、木質板12の底面における化粧シート14の巻き込み長さは例えば5mmとなっている。また図4に示すように、幅木材11の縦溝21cは、幅木材11の化粧シート14から木質板12にまで達する深さを有している。なお、このような縦溝21cは、幅木材11に例えば切削加工を施すことにより形成されるが、この際、縦溝21cのうち木質板12にまで達する部分には、ささくれなどの凹凸部が形成されやすい。そのような凹凸部の高さは、例えば100〜200μmである。
なお、幅木材11の密着性を向上させるため、幅木材11に後述する溶液28およびインキ27を塗布する前に、幅木材11のうち面取り部21aおよび縦溝21cを含む上面21にコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0035】
溶液およびインキ
次に、幅木材11の面取り部21aおよび縦溝21cに塗布されるインキ27、およびインキ27に対して親和性を持つ溶液28について説明する。
【0036】
まずインキ27について説明する。インキ27の種類は特に限定されず、化粧シート14の分野で用いられる公知のインキ27が挙げられる。例えば、公知の染料又は顔料を結着剤樹脂とともに溶剤又は分散剤中に溶解又は分散させて得られる着色インキ等である。
【0037】
顔料又は染料としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。また、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等をさらに含んでもよい。
【0038】
結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
次に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28について説明する。溶液28は、使用されるインキ27に対して親和性を有していれば特に限定されず、例えば、水とIPA(イソプロピルアルコール)との混合溶液、水とTPM(トリフェニルメタン)との混合溶液、または水とDMP(ジプロピレングリコールメチルエーテル)との混合溶液などが挙げられる。なお、濡れ拡がり特性と乾燥特性の点で考えると、溶液28として、良好な濡れ拡がり性と適度な乾燥特性を有する水とIPAとの混合溶液を用いることが好ましい。
さらに、幅木材11の面取り部21aおよび縦溝21cとの結合を強固にすることを目的に、溶液28中で分散する、または溶液28に可溶な架橋剤を加えることもできる。
【0040】
インキ塗布装置
次に、図1、図5および図6を参照して、幅木材11の上面21に形成された面取り部21aおよび縦溝21cに対してインキ27を塗布するインキ塗布装置10について説明する。
【0041】
図1に示すように、インキ塗布装置10は、幅木材11を支持して搬送する複数の搬送ローラー31と、搬送ローラー31により搬送される幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cおよびそれらの近傍の上面21に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を塗布する溶液塗布ロール32(溶液塗布手段)と、溶液塗布ロール32により塗布された溶液28のうち、幅木材11の上面21に残る溶液28を掻きとって除去する吸水ロール33(溶液除去手段)と、面取り部21aまたは縦溝21cの溶液28に対してインキ27を塗布するインキ塗布手段34とを備えている。
【0042】
このうち溶液塗布ロール32は、クッション性のあるスポンジ状のロールから形成されていることが好ましい。ロールの材質の種類は特に限定されないが、例えばウレタン樹脂系の材料を使用することができる。また溶液塗布ロール32には、インキ27に対して親和性を持つ溶液28が予め浸透されている。また吸水ロール33も、吸水性のあるスポンジ状のロールから形成されている。これらの溶液塗布ロール32および吸水ロール33は、それぞれシャフト32a,33aにより回動自在に支持されるとともに、幅木材11の上面21に押し当てられている。また、各シャフト32a,33aの高さは調整可能となっており、このため、各シャフト32a,33aの高さを調整することにより、幅木材11の上面21に押し当てられている溶液塗布ロール32および吸水ロール33の押し当て量(押し当て強さ)を調整することができる。
【0043】
また図1に示すように、溶液塗布ロール32は、シャフト32aを介して塗布ロール駆動機構51により回転駆動されている。このため、溶液塗布ロール32によって幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cおよびそれらの近傍の幅木材11の上面21に溶液28を塗布する際、幅木材11上で溶液塗布ロール32が空回りすることはない。このことにより、幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cおよびそれらの近傍の幅木材11の上面21に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を確実に塗布することができる。
なお溶液塗布ロール32の回転の向きは特に限定されないが、好ましくは、図1において矢印で示すように、溶液塗布ロール32は、塗布ロール駆動機構51により駆動されて幅木材11の搬送方向と同一の向きに回転する。
【0044】
また図1に示すように、吸水ロール33は、シャフト33aを介して吸水ロール駆動機構52により回転駆動されている。このため、吸水ロール33によって幅木材11の上面21に残る溶液28を掻きとる際、幅木材11上で吸水ロール33が空回りすることはない。このことにより、幅木材11の上面21に残る溶液28を精度良く掻きとることができる。
なお吸水ロール33の回転の向きは特に限定されないが、好ましくは、図1において矢印で示すように、吸水ロール33は、吸水ロール駆動機構52により駆動されて幅木材11の搬送方向と同一の向きに回転する。
【0045】
幅木材11の搬送速度、すなわち各搬送ローラー31の回転速度は、10〜100m/minの範囲内で制御部50により制御されている。同様に、溶液塗布ロール32および吸水ロール33の回転速度は、制御部50により制御されている。溶液塗布ロール32および吸水ロール33の回転速度は、幅木材11の搬送速度、幅木材11の層構成および溶液28の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば溶液塗布ロール32の回転速度(溶液塗布ロール32の周速度)は5〜40m/minの範囲内となっており、吸水ロール33の回転速度(吸水ロール33の周速度)は5〜60m/minの範囲内となっている。
【0046】
またインキ塗布手段34は、回動自在に支持され、その外周面上に付着されたインキ27を面取り部21aまたは縦溝21cの溶液28に塗布する2段印刷版胴35または2段印刷版胴45と、回動自在に支持されるとともにインキパン37内のインキ27に浸るよう設けられ、そして2段印刷版胴35,45の外周面上にインキ27を付着させるファニッシャーロール36とを有している。図1に示すように、2段印刷版胴35により、インキ27が面取り部21aの溶液28に塗布され、2段印刷版胴45により、インキ27が縦溝21cの溶液28に塗布される。
【0047】
また2段印刷版胴35,45は、図1に示すように、2段印刷版胴35,45の外周面が幅木材11と接する位置において2段印刷版胴35,45の外周面が幅木材11の搬送方向に対して逆向きに回転するよう、駆動機構(図示せず)により駆動される。また、インキパン37には排出チューブ38の一端が接続されており、排出チューブ38の他端は、インキ27を一時的に貯蔵するインキバッファタンク39に接続されている。このインキバッファタンク39にはインキタンク40が接続されており、このため、インキタンク40に蓄えられているインキ27は、インキバッファタンク39および排出チューブ38を経由してインキパン37へ供給される。
【0048】
次に図5を参照して、インキ27を面取り部21aの溶液28に塗布する2段印刷版胴35について詳述する。図5(a)は、幅木材11の搬送方向から見た場合の2段印刷版胴35を示す正面図であり、図5(b)は、2段印刷版胴35を示す側面図である。また図5(c)は、図5(a)に示す2段印刷版胴35のうちその外周面近傍(図5(a)において点線で囲まれた部分)を拡大して示す図である。
【0049】
図5(a)(b)に示すように、2段印刷版胴35は、小径部41と、小径部41に連結して設けられた大径部42とを含んでいる。このうち小径部41の厚さは1.2mmであり、大径部42の厚さは0.8mmである。また小径部41の半径と大径部42の半径の差は1.5mmである。この半径の差に起因して、図5(c)に示すように、2段印刷版胴35を回転させて幅木材11の面取り部21aにインキ27を塗布する際、小径部41の端部41aと大径部42の端部42aとの間において、小径部41の半径と大径部42の半径の差1.5mmに対応する領域には、その表面が表面張力により湾曲しているインキ27の液塊27aが形成される。
【0050】
次に図6を参照して、インキ27を縦溝21cの溶液28に塗布する2段印刷版胴45について詳述する。図6(a)は、幅木材11の搬送方向から見た場合の2段印刷版胴45を示す正面図であり、図6(b)は、2段印刷版胴45を示す側面図である。また図6(c)は、図6(a)に示す2段印刷版胴45のうちその外周面近傍(図6(a)において点線で囲まれた部分)を拡大して示す図である。
【0051】
図6(a)(b)に示すように、2段印刷版胴45は、2つの小径部46と、2つの小径部46の間に連結して設けられた大径部47とを含んでいる。このうち小径部46の厚さは0.6mmであり、大径部47の厚さは0.4mmである。また各小径部46の半径と大径部47の半径の差は1mmである。この半径の差に起因して、図6(c)に示すように、2段印刷版胴45を回転させて幅木材11の縦溝21cにインキ27を塗布する際、各小径部46の端部46aと大径部47の端部47aとの間において、各小径部46の半径と大径部47の半径の差1mmに対応する領域には、その表面が表面張力により湾曲しているインキ27の液塊27aがそれぞれ形成される。
【0052】
インキ塗布方法
次に、幅木材11の上面21に形成された面取り部21aおよび縦溝21cに対してインキ27を塗布する方法について説明する。
【0053】
はじめに、図1に示すように、長側部22,24の上端部にそれぞれ面取り部21aが形成されるとともに、上面21に縦溝21cが形成された幅木材11を準備する。次に、幅木材11の長側部22,24の長さ方向がインキ塗布装置10の搬送ローラー31の搬送方向と一致するよう幅木材11の方向を整えた後、幅木材11の他側の短側部25がインキ塗布装置10の溶液塗布ロール32に到達するまで、搬送ローラー31により幅木材11を搬送する。この際、幅木材11の搬送速度が70m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31を制御する。
【0054】
次に、図1に示すように、幅木材11の上面21に押し当てられた溶液塗布ロール32により、幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cおよびそれらの近傍の幅木材11の上面21に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を塗布する。この際、溶液塗布ロール32の回転速度が40m/minとなるよう、制御装置50により塗布ロール駆動機構51を制御する。次に、各搬送ローラー31により幅木材11を吸水ロール33に送った後、溶液塗布ロール32により幅木材11に塗布された溶液28のうち幅木材11の上面21に残る溶液28を、吸水ロール33により掻きとる。この際、吸水ロール33の回転速度が60m/minとなるよう、制御装置50により吸水ロール駆動機構52を制御する。この場合、幅木材11の上面21は一般に凹凸の少ない滑らかな表面からなり、このため、幅木材11の上面21に残る溶液28を吸水ロール33により掻きとることは容易である。このようにして、図1に示すように、幅木材11のうち面取り部21aおよび縦溝21cのみが溶液28により被覆される。
【0055】
次に、各搬送ローラー31により幅木材11の他側の短側部25がインキ塗布手段34の2段印刷版胴35,45に送られると、幅木材11の搬送速度が30m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31を制御する。その後、2段印刷版胴35により、面取り部21a上の溶液28に対してインキ27を塗布し、同時に2段印刷版胴45により、縦溝21c上の溶液28に対してインキ27を塗布する。
この際、前述のように、回転する2段印刷版胴35の小径部41の端部41aと大径部42の端部42aとの間において、小径部41の半径と大径部42の半径の差1.5mmに対応する領域には、その表面が表面張力により湾曲しているインキ27の液塊27aが形成されている。また、幅木材11の面取り部21a上にはインキ27に対して親和性を持つ溶液28が塗布されている。このため、2段印刷版胴35に吸着されているインキ27の液塊27aを、幅木材11の面取り部21aに接触させることにより、溶液28中にインキ27を浸透させることができる。この場合、溶液28がインキ27に対して親和性を有しているため、2段印刷版胴35の配置を幅木材11の面取り部21aに対して正確に設定する必要はなく、インキ27の液塊27aを幅木材11の面取り部21a上の溶液28に任意の位置で接触させることができればよい。このようにして、幅木材11のうち面取り部21aにインキ27が塗布される。
同様に、回転する2段印刷版胴45の各小径部46の端部46aと大径部47の端部47aとの間において、小径部46の半径と大径部47の半径の差1mmに対応する領域には、その表面が表面張力により湾曲しているインキ27の液塊27aがそれぞれ形成されている。また、幅木材11の縦溝21c上にはインキ27に対して親和性を持つ溶液28が塗布されている。このため、2段印刷版胴45に吸着されているインキ27の液塊27aを、幅木材11の縦溝21cに接触させることにより、溶液28中にインキ27を浸透させることができる。この場合、溶液28がインキ27に対して親和性を有しているため、2段印刷版胴45の配置を幅木材11の縦溝21cに対して正確に設定する必要はなく、インキ27の液塊27aを幅木材11の縦溝21c上の溶液28に任意の位置で接触させることができればよい。例えば、縦溝21cの側面21e上の溶液28にインキ27の液塊27aを接触させることにより、縦溝21cの側面21eおよび底面21d上の溶液28中にインキ27を浸透させることができる。このようにして、幅木材11のうち縦溝21cにインキ27が塗布される。
【0056】
幅木材11の面取り部21aおよび縦溝21c全域にわたってインキ27を塗布し、その後、幅木材11の一側の短側部23が2段印刷版胴35,45に到達するまで幅木材11を各搬送ローラー31により搬送した後、幅木材11の搬送速度が再び70m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31を制御する。これによって、その面取り部21aおよび縦溝21cにインキ27が塗布された幅木材11がインキ塗布装置10から送り出され、このようにして、インキ27塗布済の幅木材11が製造される。
【0057】
このように本実施の形態によれば、幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cおよびそれらの近傍の上面21に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28が塗布された後、幅木材11の上面21に残る溶液28が掻きとられる。このため、幅木材11のうち面取り部21aまたは縦溝21cのみを溶液28により容易に被覆することができる。
【0058】
また本実施の形態によれば、幅木材11のうちインキ27に対して親和性を持つ溶液28により被覆された面取り部21aまたは縦溝21cに対してインキ27が塗布される。このため、インキ27を無駄に使うことなく、またインキ27かすれなどを生じさせることなく、幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cに対して高速で、容易かつ精度良くインキ27を塗布することできる。このことにより、インキ27塗布済の幅木材11を容易に製造することが可能となる。
【0059】
また本実施の形態によれば、前述のとおり、面取り部21aまたは縦溝21cにインキ27を塗布する前に、面取り部21aまたは縦溝21cを溶液28により被覆する。一般に溶液28の粘性はインキ27よりも低く、このため、縦溝21cに、縦溝21cを形成するための切削加工時に発生した化粧シート14のささくれや木質板12のささくれがあったとしても、溶液28がこれらのささくれの下に回りこむことができる。このため、溶液28により被覆された縦溝21cにインキ27が塗布されるとき、インキ27がこれらのささくれの下に回りこむことができる。このことにより、縦溝21cにささくれが形成されている場合であっても、塗布ムラを発生することなく縦溝21cにインキ27を均一に塗布することができる。
【0060】
さらに本実施の形態によれば、インキ塗布手段の34の2段印刷版胴35は、小径部41と、小径部41に連結して設けられた大径部42とを含み、小径部41の半径と大径部42の半径の差に対応する領域には、その表面が表面張力により湾曲している液体領域27aが形成されている。また、幅木材11の面取り部21a上にはインキ27に対して親和性を持つ溶液28が塗布されている。このため、2段印刷版胴35に吸着されているインキ27の液塊27aを、幅木材11の面取り部21aに塗布されている溶液28に接触させることにより、溶液28中にインキ27を浸透させ、これによって、面取り部21aに対してインキ27を塗布することができる。このため、2段印刷版胴35の配置を幅木材11の面取り部21aに対して正確に設定する必要はなく、このことにより、インキ塗布装置10の構成を簡略化するとともに、インキ27塗布時の幅木材11の搬送速度を大きくすることができる。
【0061】
また本実施の形態によれば、インキ塗布手段の34の2段印刷版胴45は、2つの小径部46と、2つの小径部46の間に連結して設けられた大径部47とを含み、各小径部46の半径と大径部47の半径の差に対応する領域には、その表面が表面張力により湾曲している液体領域27aがそれぞれ形成されている。また、幅木材11の縦溝21c上にはインキ27に対して親和性を持つ溶液28が塗布されている。このため、2段印刷版胴45に吸着されているインキ27の液塊27aを、幅木材11の縦溝21cに塗布されている溶液28に接触させることにより、溶液28中にインキ27を浸透させ、これによって、縦溝21cに対してインキ27を塗布することができる。このため、2段印刷版胴45の配置を幅木材11の縦溝21cに対して正確に設定する必要はなく、このことにより、インキ塗布装置10の構成を簡略化するとともに、インキ27塗布時の幅木材11の搬送速度を大きくすることができる。
【0062】
さらに本実施の形態によれば、はじめに、幅木材11の搬送速度が70m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31が制御され、その後、幅木材11がインキ塗布手段34の2段印刷版胴35,45に送られると、幅木材11の搬送速度が30m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31が制御される。その後、幅木材11の短側部23が2段印刷版胴35,45に到達した後は、幅木材11の搬送速度が再び70m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31が制御される。このように、2段印刷版胴35により幅木材11にインキ27が塗布される間の幅木材11の搬送速度を小さくし、一方、幅木材11にインキ27が塗布される前後での幅木材11の搬送速度を大きくすることにより、幅木材11の面取り部21aおよび縦溝21cに正確にインキ27を塗布するとともに、幅木材11の塗装工程全体に要する時間を短縮することができる。
【0063】
なお、本実施の形態において、吸水ロール33が1段に配置された例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、吸水ロール33を2段または3段あるいはそれ以上配置してもよい(図1の二点鎖線参照)。これによって、1段目の吸水ロール33によっては幅木材11の上面21に塗布された溶液28を完全に掻きとることができない場合であっても、2段目以降の吸水ロール33により幅木材11の上面21に塗布された溶液28を完全に掻きとることができる。
【0064】
また、本実施の形態において、縦溝21cが、化粧シート14から木質板12にまで達する深さを有するよう形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、縦溝21cは、木質板12にまで達する深さを有していなくてもよい。
【0065】
また、本実施の形態において、幅木材11の一側の長側部22側の端部に形成された面取り部21a、および幅木材11の他側の長側部24側の端部に形成された面取り部21aにインキ27が塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、幅木材11の一側の短側部23側の端部に形成された面取り部、および幅木材11の他側の短側部25側の端部に形成された面取り部にインキ27を塗布してもよい。
【0066】
また、本実施の形態において、幅木材11の縦溝21c、すなわち幅木材11の長側部22,24と平行な方向に延びる溝にインキ27が塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、幅木材11の短側部23,25と平行な方向に延びる幅木材11の横溝にインキ27を塗布してもよい。
【0067】
また、本実施の形態において、幅木材11の上面21の略中央には縦溝21cが形成され、上面21の長側部22、24側の端部には面取り部21aが形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図7(a)に示すように、幅木材11の上面21の長側部22、24のうちどちらか一方の長側部の端部にのみ面取り部21aが形成されていてもよい。また図7(b)に示すように、縦溝21cが化粧シート14により覆われていてもよい。また縦溝21cは、図7(c)に示すように、傾斜面21fを有していてもよい。
【0068】
また、本実施の形態において、2段印刷版胴35,45は、2段印刷版胴35,45の外周面が幅木材11と接する位置において、2段印刷版胴35,45の外周面が幅木材11の搬送方向に対して逆向きに回転するよう、駆動機構により駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、2段印刷版胴35,45の外周面が幅木材11と接する位置において、2段印刷版胴35,45の外周面が幅木材11の搬送方向に対して同じ向きに回転するよう、2段印刷版胴35,45を駆動機構により駆動してもよい。
【0069】
また、本実施の形態において、はじめに、幅木材11の搬送速度が70m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31が制御され、その後、幅木材11がインキ塗布手段34の2段印刷版胴35,45に送られると、幅木材11の搬送速度が30m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31が制御され、その後、幅木材11の短側部23が2段印刷版胴35,45に到達した後、幅木材11の搬送速度が再び70m/minとなるよう、制御装置50により各搬送ローラー31が制御される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、幅木材11の搬送速度が常に一定となるよう、制御装置50により各搬送ローラー31を制御してもよい。また、幅木材11の搬送速度を、幅木材11の面取り部21aまたは縦溝21cの寸法や、インキ27および溶液28の特性などに応じて、適宜調整してもよい。
【0070】
また、本実施の形態において、2段印刷版胴35の小径部41の厚さは1.2mmであり、大径部42の厚さは0.8mmであり、小径部41の半径と大径部42の半径の差は1.5mmである例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、小径部41および大径部42の厚さおよび半径を、幅木材11の面取り部21aの寸法に応じて適宜設定してもよい。例えば、小径部41の半径と大径部42の半径の差を、面取り部21aの深さの0.3〜3倍になるよう設定してもよい。
【0071】
また、本実施の形態において、2段印刷版胴45の小径部46の厚さは0.6mmであり、大径部47の厚さは0.4mmであり、小径部46の半径と大径部47の半径の差は1mmである例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、小径部46および大径部47の厚さおよび半径を、幅木材11の縦溝21cの寸法に応じて適宜設定してもよい。例えば、小径部46の半径と大径部47の半径の差を、縦溝21cの深さの0.3〜3倍になるよう設定してもよい。
【0072】
また、本実施の形態において、溶液塗布ロール32および吸水ロール33がそれぞれシャフト32a、33aを介して塗布ロール駆動機構51および吸水ロール駆動機構52により回転駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、塗布ロール駆動機構51および吸水ロール駆動機構52が設けられていなくてもよい。塗布ロール駆動機構51および吸水ロール駆動機構52が設けられていない場合であっても、溶液塗布ロール32および吸水ロール33は、シャフト32a、33aにより回動自在に支持されるとともに幅木材11の上面21に押し当てられており、このため幅木材11が各搬送ローラー31により搬送される際、溶液塗布ロール32および吸水ロール33と幅木材11との間に働く摩擦力により、溶液塗布ロール32および吸水ロール33を回転させることができる。
【0073】
第2の実施の形態
次に図8乃至図12を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで、図8は、本実施の第2の実施の形態におけるインキ塗布装置全体を示す斜視図であり、図9(a)は、本実施の第2の実施の形態におけるドアパネルを示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)に示すドアパネルをB−B方向からみた断面図であり、図9(c)は、図9(a)に示すドアパネルをC−C方向からみた断面図である。図10は、本実施の第2の実施の形態におけるディスペンサーを示す斜視図であり、図11(a)(b)(c)は、本実施の第2の実施の形態におけるインキ塗布方法を示す図である。図12は、本実施の第2の実施の形態におけるインキ塗布装置の変形例を示す斜視図である。
【0074】
図8乃至図12に示す第2の実施の形態において、造作部材または家具部材は、上面に縦溝および横溝が形成されたドアパネルからなり、インキ塗布装置は、ドアパネルの縦溝または横溝およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する溶液塗布手段と、溶液塗布手段により塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する溶液除去手段と、縦溝または横溝に塗布された溶液に対してインキを塗布するインキ塗布手段とを備えている。図8乃至図12に示す第2の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0075】
ドアパネル
はじめに図9(a)(b)(c)を参照して、造作部材または家具部材の一例であるドアパネル70について説明する。はじめにドアパネル70の形状について説明する。
【0076】
図9(a)に示すように、ドアパネル70は長方形の形状を有し、その長さは例えば2200mmであり、その幅は例えば860mmである。また図9(a)(b)(c)に示すように、ドアパネル70の上面73には、ドアパネル70の長側部76,78と平行に延びる縦溝74bと、ドアパネル70の短側部77,79と平行に延びる横溝74aとが形成されており、これらの横溝74aおよび縦溝74bにより、ドアパネル70の飾り74が構成されている。図9(a)に示すように、横溝74aおよび縦溝74bは、ドアパネル70の上面73の内側から延びるよう形成された非貫通溝となっている。
【0077】
このうち横溝74aは、図9(b)に示すように、底面74cと、底面74cから直立する一対の側面74dとからなっている。このように底面74cと一対の側面74dとからなる横溝74aにおいて、横溝74aの幅および深さは例えば7mmおよび2mmとなっている。また縦溝74bは、図9(c)に示すように、底面74eと、底面74eから直立する一対の側面74fとからなっている。このように底面74eと一対の側面74fとからなる縦溝74bにおいて、縦溝74bの幅および深さは例えば7mmおよび2mmとなっている。
【0078】
次にドアパネル70の層構成について説明する。図9(b)(c)に示すように、ドアパネル70は、木質板71と、木質板71上に接着剤層(図示せず)を介して積層された化粧シート72とを有している。
【0079】
ドアパネル70の木質板71および化粧シート72の構成は特に限定されないが、例えばドアパネル70の木質板71および化粧シート72は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態における幅木材11の木質板12および化粧シート14と略同一の構成を有している。木質板71の厚さは特に限定されないが、例えば15〜50mmの範囲内であり、例えば25mmとなっている。化粧シート72の厚さも特に限定されないが、例えば0.05〜1.0mmの範囲内であり、例えば0.2mmとなっている。また図9(b)(c)に示すように、ドアパネル70の横溝74aおよび縦溝74bは、ドアパネル70の化粧シート72から木質板71にまで達する深さを有している。
なお、図1乃至図7に示す第1の実施の形態における幅木材11の場合と同様に、ドアパネル70を、木質板71を化粧シート72によって巻き込む、いわゆるラッピングという手法により形成してもよい(図示せず)。この場合、木質板71の上面、側面および底面の一部が化粧シート72により覆われる。この際、横溝74aおよび縦溝74bは、化粧シート72により覆われていてもよく、化粧シート72により覆われていなくてもよい。
また、ドアパネル70の密着性を向上させるため、ドアパネル70に後述する溶液28およびインキ27を塗布する前に、ドアパネル70のうち横溝74aおよび縦溝74bを含む上面73にコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0080】
インキ塗布装置
次に、図8および図10を参照して、ドアパネル70の上面73に形成された横溝74aおよび縦溝74bに対してインキ27を塗布するインキ塗布装置10について説明する。
【0081】
インキ塗布装置10は、ドアパネル70を支持して搬送する複数の搬送ローラー31と、搬送ローラー31により搬送されるドアパネル70の横溝74aまたは縦溝74bおよびそれらの近傍の上面73に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を塗布する溶液塗布手段と、溶液塗布手段により塗布された溶液28のうち、ドアパネル70の上面73に残る溶液28を掻きとって除去する溶液除去手段と、横溝74aまたは縦溝74bの溶液28に対してインキ27を塗布するインキ塗布手段とを備えている。
【0082】
このうち溶液塗布手段は、図8に示すように、ドアパネル70の縦溝74bおよびそれらの近傍の上面73に溶液28を塗布する縦溝溶液塗布用ディスペンサー61と、ドアパネル70の横溝74aおよびそれらの近傍の上面73に溶液28を塗布する横溝溶液塗布用ディスペンサー62とからなる。また図8に示すように、溶液除去手段は、ドアパネル70の横溝74aに平行に延びる吸水ロール63からなる。また図8に示すように、インキ塗布手段は、縦溝74bの溶液28に対してインキ27を塗布する縦溝インキ塗布用ディスペンサー65と、横溝74aの溶液28に対してインキ27を塗布する横溝インキ塗布用ディスペンサー66とからなる。
【0083】
次に図10を参照して、縦溝溶液塗布用ディスペンサー61、横溝溶液塗布用ディスペンサー62、縦溝インキ塗布用ディスペンサー65および横溝インキ塗布用ディスペンサー66について詳述する。なお各ディスペンサー61,62,65,66は、配置または用いられる塗布材が異なるのみであるから、ここでは、各ディスペンサー61,62,65,66のうち横溝溶液塗布用ディスペンサー62について説明する。他のディスペンサー61,65,66の構成は、横溝溶液塗布用ディスペンサー62の構成と略同一である。
【0084】
図10に示すように、横溝溶液塗布用ディスペンサー62は、溶液28を収納する本体部62aと、本体部62aに塗布材供給タンク(図示せず)からの溶液28をバルブ62cを介して供給する塗布材供給管62bと、本体部62aにエアを供給するエア供給管62dと、エアからの圧力を受けた溶液28が吐出される開口部62eとを有している。開口部62eから吐出される溶液28の流量は、バルブ62cの開閉、エアの圧力の調整などにより制御される。また横溝溶液塗布用ディスペンサー62内に設けられた弁(図示せず)を閉めることにより、開口部62eからの溶液28の吐出を停止することもできる。
【0085】
図10に示すように、横溝溶液塗布用ディスペンサー62は支持機構62fにより支持されており、この支持機構62fは、任意の方向において移動可能となるようディスペンサー駆動機構(図示せず)によって保持されている。このため後述するように、ドアパネル70の横溝74aに溶液28を塗布する際、横溝溶液塗布用ディスペンサー62を上下方向および水平方向に任意に移動させることができ、これによって、搬送中のドアパネル70の横溝74aに溶液28を塗布することが可能となる。
【0086】
次に吸水ロール63について詳述する。前述のとおり、吸水ロール63はドアパネル70の横溝74aに平行に延びており、この場合、図8に示すように、吸水ロール63は、横溝74aを全体にわたって覆う程度に横溝74aに平行に延びている。このため後述するように、ドアパネル70に塗布された溶液28を除去する際、吸水ロール63によって、横溝74aおよび縦溝74bの近傍の上面73に残る溶液28を掻きとって除去することができる。
【0087】
吸水ロール63は、吸水性のあるスポンジ状のロールから形成されており、また吸水ロール63は、シャフト63aにより回動自在に支持されるとともに、ドアパネル70の上面73に押し当てられている。また、シャフト63aの高さは調整可能となっており、このため、シャフト63aの高さを調整することにより、ドアパネル70の上面73に押し当てられている吸水ロール63の押し当て量(押し当て強さ)を調整することができる。
【0088】
また図8に示すように、吸水ロール63は、シャフト63aを介して吸水ロール駆動機構64により回転駆動されている。このため、吸水ロール63によってドアパネル70の上面73に残る溶液28を掻きとる際、ドアパネル70上で吸水ロール63が空回りすることはない。このことにより、ドアパネル70の上面73に残る溶液28を精度良く掻きとることができる。
なお吸水ロール63の回転の向きは特に限定されないが、好ましくは、図8において矢印で示すように、吸水ロール63は、吸水ロール駆動機構64により駆動されてドアパネル70の搬送方向と同一の向きに回転する。
【0089】
ドアパネル70の搬送速度、すなわち各搬送ローラー31の回転速度は、制御部50により制御されている。同様に、吸水ロール63の回転速度および各ディスペンサー61,62,65,66の移動速度または移動タイミングも、制御部50により制御されている。吸水ロール63の回転速度は、ドアパネル70の搬送速度、ドアパネル70の層構成および溶液28の種類などに応じて適宜設定される。
【0090】
インキ塗布方法
次に、ドアパネル70の上面73に形成された横溝74aおよび縦溝74bに対してインキ27を塗布する方法について、図11(a)(b)(c)を参照して説明する。
【0091】
はじめに、上面73に横溝74aおよび縦溝74bが形成されたドアパネル70を準備する。次に、ドアパネル70の長側部76,78の長さ方向がインキ塗布装置10の搬送ローラー31の搬送方向と一致するようドアパネル70の方向を整えた後、図11(a)に示すように、ドアパネル70の短側部79側の横溝74aがインキ塗布装置10の横溝溶液塗布用ディスペンサー62の設置場所に到達するまで、搬送ローラー31によりドアパネル70を搬送する。
【0092】
次に図11(b)に示すように、横溝溶液塗布用ディスペンサー62により、短側部79側の横溝74aおよびその近傍の上面73に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を塗布する。この際、横溝溶液塗布用ディスペンサー62が横溝74aに沿って図11(b)の紙面手前側から紙面奥側に向って移動するよう、制御装置50によりディスペンサー駆動機構(図示せず)を制御する。なお横溝溶液塗布用ディスペンサー62により横溝74aおよびその近傍の上面73に溶液28を塗布する間も、ドアパネル70が搬送ローラー31によって搬送されており、このため制御装置50は、横溝溶液塗布用ディスペンサー62がドアパネル70と同一の速度でドアパネル70の搬送方向に移動するとともに、横溝溶液塗布用ディスペンサー62が横溝74aの延びる方向にも移動するよう、ディスペンサー駆動機構を制御する。
【0093】
また図11(b)に示すように、ドアパネル70の縦溝74bが縦溝溶液塗布用ディスペンサー61の設置場所に到達すると、縦溝溶液塗布用ディスペンサー61により縦溝74bおよびその近傍の上面73に溶液28が塗布される。
【0094】
次に図11(c)に示すように、各搬送ローラー31によりドアパネル70を吸水ロール63に送った後、吸水ロール63により、ドアパネル70に塗布された溶液28のうちドアパネル70の上面73に残る溶液28を掻きとる。この場合、ドアパネル70の上面73は一般に凹凸の少ない滑らかな表面からなり、このため、ドアパネル70の上面73に残る溶液28を吸水ロール63により掻きとることは容易である。このようにして、図11(c)に示すように、ドアパネル70のうち横溝74aおよび縦溝74bのみが溶液28により被覆される。
【0095】
次に、短側部79側の横溝74aを横溝インキ塗布用ディスペンサー66の設置場所まで送り、その後、図11(c)に示すように、横溝インキ塗布用ディスペンサー66により横溝74a上の溶液28に対してインキ27を塗布する。この際、前述の横溝溶液塗布用ディスペンサー62の場合と同様に、横溝インキ塗布用ディスペンサー66が横溝74aに沿って図11(c)の紙面手前側から紙面奥側に向って移動するよう、制御装置50により横溝インキ塗布用ディスペンサー66のディスペンサー駆動機構を制御する。ここで前述のように、横溝74a上の溶液28はインキ27に対して親和性を有しており、このため、横溝インキ塗布用ディスペンサー66から吐出されるインキ27を横溝74a上の溶液28に任意の位置で接触させることにより、溶液28中にインキ27を浸透させることができ、これによって横溝74aにインキ27を塗布することができる。
【0096】
また図11(c)に示すように、ドアパネル70の縦溝74bが縦溝インキ塗布用ディスペンサー65の設置場所に到達すると、縦溝インキ塗布用ディスペンサー65により縦溝74b上の溶液28に対してインキ27を塗布する。この場合も、溶液28はインキ27に対して親和性を有しており、このため、縦溝インキ塗布用ディスペンサー65から吐出されるインキ27を縦溝74b上の溶液28に任意の位置で接触させることにより、溶液28中にインキ27を浸透させることができ、これによって縦溝74bにインキ27を塗布することができる。
【0097】
この間、図11(c)に示すように、短側部77側の横溝74aが横溝溶液塗布用ディスペンサー62の設置場所に到達すると、横溝溶液塗布用ディスペンサー62を図11(c)に示す紙面奥側から紙面手前側に向って移動するよう、制御装置50によりディスペンサー駆動機構を制御し、これによって短側部77側の横溝74aおよびその近傍の上面73に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28を塗布する。その後、短側部77側の横溝74aにおいて、短側部79側の横溝74aの場合と同様に、横溝74a近傍の上面73に残る溶液28が吸水ロール63により掻きとられた後、横溝インキ塗布用ディスペンサー66によってインキ27が塗布される。このようにして、横溝74aおよび縦溝74bからなる飾り74にインキ27を塗布することができ、これによって、インキ塗布済のドアパネル70を製造することができる。
【0098】
このように本実施の形態によれば、ドアパネル70の横溝74aまたは縦溝74bおよびそれらの近傍の上面73に、インキ27に対して親和性を持つ溶液28が塗布された後、ドアパネル70の上面73に残る溶液28が掻きとられる。このため、ドアパネル70のうち横溝74aおよび縦溝74bのみを溶液28により容易に被覆することができる。
【0099】
また本実施の形態によれば、ドアパネル70のうちインキ27に対して親和性を持つ溶液28により被覆された横溝74aおよび縦溝74bに対してインキ27が塗布される。このため、インキ27を無駄に使うことなく、またインキ27かすれなどを生じさせることなく、ドアパネル70の横溝74aおよび縦溝74bに対して高速で、容易かつ精度良くインキ27を塗布することできる。このことにより、インキ27塗布済のドアパネル70を容易に製造することが可能となる。
【0100】
また本実施の形態によれば、前述のとおり、横溝74aおよび縦溝74bにインキ27を塗布する前に、横溝74aおよび縦溝74bを溶液28により被覆する。一般に溶液28の粘性はインキ27よりも低く、このため、横溝74aおよび縦溝74bに、横溝74aおよび縦溝74bを形成するための切削加工時に発生した化粧シート72のささくれや木質板71のささくれがあったとしても、溶液28がこれらのささくれの下に回りこむことができる。このため、溶液28により被覆された横溝74aおよび縦溝74bにインキ27が塗布されるとき、インキ27がこれらのささくれの下に回りこむことができる。このことにより、横溝74aおよび縦溝74bにささくれが形成されている場合であっても、塗布ムラを発生することなく横溝74aおよび縦溝74bにインキ27を均一に塗布することができる。
【0101】
なお、本実施の形態において、吸水ロール63が1段に配置された例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、吸水ロール63を2段または3段あるいはそれ以上配置してもよい(図8の二点鎖線参照)。これによって、1段目の吸水ロール63によってはドアパネル70の上面73に塗布された溶液28を完全に掻きとることができない場合であっても、2段目以降の吸水ロール63によりドアパネル70の上面73に塗布された溶液28を完全に掻きとることができる。
【0102】
また、本実施の形態において、横溝74aおよび縦溝74bが、化粧シート72から木質板71にまで達する深さを有するよう形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、横溝74aまたは縦溝74bは、木質板71にまで達する深さを有していなくてもよい。
【0103】
また、本実施の形態において、吸水ロール63がシャフト63aを介して吸水ロール駆動機構64により回転駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、吸水ロール駆動機構64が設けられていなくてもよい。吸水ロール駆動機構64が設けられていない場合であっても、吸水ロール63は、シャフト63aにより回動自在に支持されるとともにドアパネル70の上面73に押し当てられており、このためドアパネル70が各搬送ローラー31により搬送される際、吸水ロール63とドアパネル70との間に働く摩擦力により、吸水ロール63を回転させることができる。
【0104】
また、本実施の形態において、横溝溶液塗布用ディスペンサー62によって横溝74aおよびその近傍の上面73に溶液28が塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、横溝74aに沿って移動可能に支持されている刷毛、スプレーなどにより、横溝74aおよびその近傍の上面73に溶液28を塗布してもよい。
【0105】
また、本実施の形態において、縦溝溶液塗布用ディスペンサー61によって縦溝74bおよびその近傍の上面73に溶液28が塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図1乃至図7に示す第1の実施の形態の場合と同様に、溶液塗布ロール32により、縦溝74bおよびその近傍の上面73に溶液28を塗布してもよい(図12参照)。
【0106】
また、本実施の形態において、横溝インキ塗布用ディスペンサー66によって横溝74a上の溶液28にインキ27が塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、横溝74aに沿って移動可能に支持されている刷毛、スプレーなどにより、横溝74a上の溶液28にインキ27を塗布してもよい。
【0107】
また、本実施の形態において、縦溝インキ塗布用ディスペンサー65によって縦溝74b上の溶液28にインキ27が塗布される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図1乃至図7に示す第1の実施の形態の場合と同様に、2段印刷版胴35により、縦溝74b上の溶液28にインキ27を塗布してもよく(図12参照)、その他、円板やスタンプなどによって縦溝74b上の溶液28にインキ27を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 インキ塗布装置
11 幅木材
12 木質板
13 第1接着剤コート層
14 化粧シート
15 基材シート
16 絵柄層
17 接着層
18 透明樹脂層
19 プライマー層
20 表面保護層
21 幅木材の上面
21a 幅木材の上面の面取り部
21c 幅木材上面の縦溝
21d 縦溝の底面
21e 縦溝の側面
21f 傾斜面
22 一側の長側部
23 一側の短側部
24 他側の長側部
25 他側の短側部
27 インキ
27a インキの液塊
28 溶液
31 搬送ローラー
32 溶液塗布ロール
32a 溶液塗布ロール用シャフト
33 吸水ロール
33a 吸水ロール用シャフト
34 インキ塗布手段
35 面取り部用2段印刷版胴
36 ファニッシャーロール
37 インキパン
38 排出チューブ
39 インキバッファタンク
40 インキタンク
41 面取り部用2段印刷版胴の小径部
41a 小径部の端部
42 面取り部用2段印刷版胴の大径部
42a 大径部の端部
45 縦溝用2段印刷版胴
46 縦溝用2段印刷版胴の小径部
46a 小径部の端部
47 縦溝用2段印刷版胴の大径部
47a 大径部の端部
50 制御部
51 塗布ロール駆動機構
52 吸水ロール駆動機構
61 縦溝溶液塗布用ディスペンサー
62 横溝溶液塗布用ディスペンサー
62a 本体部
62b 塗布材供給管
62c バルブ
62d エア供給管
62e 開口部
62f 支持機構
63 吸水ロール
63a シャフト
64 吸水ロール駆動機構
65 縦溝インキ塗布用ディスペンサー
66 横溝インキ塗布用ディスペンサー
70 ドアパネル
71 木質板
72 化粧シート
73 ドアパネルの上面
74 ドアパネルの飾り
74a 横溝
74b 縦溝
74c 横溝の底面
74d 横溝の側面
74e 縦溝の底面
74f 縦溝の側面
75 ドアノブ
76 一側の長側部
77 一側の短側部
78 他側の長側部
79 他側の短側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有する造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する方法において、
溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する工程と、
塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する工程と、
溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布する工程と、を備えたことを特徴とするインキ塗布方法。
【請求項2】
造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する方法であって、
溝は、造作部材または家具部材の上面の全長または全幅にわたって延びるよう形成された貫通溝からなることを特徴とする請求項1に記載のインキ塗布方法。
【請求項3】
造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する方法であって、
溝は、造作部材または家具部材の上面の内側から延びるよう形成された非貫通溝からなることを特徴とする請求項1に記載のインキ塗布方法。
【請求項4】
溝は、化粧シートから木質板にまで達することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインキ塗布方法。
【請求項5】
木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有する造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する装置において、
造作部材または家具部材を支持して搬送する搬送ローラーと、
搬送ローラーにより搬送される造作部材または家具部材の溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する溶液塗布手段と、
溶液塗布手段により塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する溶液除去手段と、
溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布するインキ塗布手段と、を備えたことを特徴とするインキ塗布装置。
【請求項6】
造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する装置であって、
溝は、造作部材または家具部材の上面の全長または全幅にわたって延びるよう形成された貫通溝からなることを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項7】
造作部材または家具部材の上面に形成された溝に対してインキを塗布する装置であって、
溝は、造作部材または家具部材の上面の内側から延びるよう形成された非貫通溝からなることを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項8】
溝は、化粧シートから木質板にまで達することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のインキ塗布装置。
【請求項9】
インキ塗布手段は、小径部と、小径部に連結して設けられた大径部とを含む2段印刷版胴を有することを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項10】
2段印刷版胴は、造作部材または家具部材の搬送方向に対して逆向きに回転することを特徴とする請求項9に記載のインキ塗布装置。
【請求項11】
インキ塗布手段は、造作部材または家具部材に対して相対移動可能なインキ塗布用ディスペンサーからなることを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項12】
溶液除去手段は、吸水ロール駆動機構により駆動されて回転する吸水ロールからなることを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項13】
吸水ロールは、吸水ロール駆動機構により駆動されて造作部材または家具部材の搬送方向と同一の向きに回転することを特徴とする請求項12に記載のインキ塗布装置。
【請求項14】
溶液塗布手段は、塗布ロール駆動機構により駆動されて回転する溶液塗布ロールからなることを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項15】
溶液塗布ロールは、塗布ロール駆動機構により駆動されて造作部材または家具部材の搬送方向と同一の向きに回転することを特徴とする請求項14に記載のインキ塗布装置。
【請求項16】
溶液塗布手段は、造作部材または家具部材に対して相対移動可能な溶液塗布用ディスペンサーからなることを特徴とする請求項5に記載のインキ塗布装置。
【請求項17】
インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法において、
木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有し、上面に溝または面取り部が形成された造作部材または家具部材を準備する工程と、
造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する工程と、を備え、
前記インキを塗布する工程は、前記溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する工程と、塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する工程と、溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布する工程と、を有することを特徴とするインキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法。
【請求項18】
インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法によって得られたインキ塗布済の造作部材または家具部材において、
前記インキ塗布済の造作部材または家具部材の製造方法は、木質板と、木質板上に積層された化粧シートとを有し、上面に溝または面取り部が形成された造作部材または家具部材を準備する工程と、造作部材または家具部材の上面に形成された溝または面取り部に対してインキを塗布する工程と、を備え、
前記インキを塗布する工程は、前記溝または面取り部およびそれらの近傍の上面に、インキに対して親和性を持つ溶液を塗布する工程と、塗布された溶液のうち、上面に残る溶液を除去する工程と、溝または面取り部に塗布された溶液に対してインキを塗布する工程と、を有することを特徴とするインキ塗布済の造作部材または家具部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−62670(P2011−62670A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217363(P2009−217363)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】