説明

インクジェット用インク

【課題】インクジェットヘッドの耐久性を低下させない溶媒を使用できるイミド系の化合物を含み、且つ、インク中にイミド系の化合物を高濃度で含有し、常温保存における保存安定性が良好で、1回のジェッティングで比較的厚い(1μm以上の)膜を形成でき、さらに、製膜時に耐熱性、電気絶縁性が高く、十分な機械的強度を有する、反り量の少ない絶縁膜を得ることができるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを用いて得られるイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含む、インクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット用インクに関し、例えば電子部品製作において絶縁膜層を形成するためのイミド化合物、該化合物を用いて形成されるイミド化合物の膜、および該イミド化合物の膜を形成したフィルム基板、該フィルム基板を有する電子部品、および該イミド化合物の膜を形成したシリコンウエハー基板、該シリコンウエハー基板を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
イミド結合を有する化合物(イミド系化合物)の1種であるポリイミドは耐熱性、電気絶縁性に優れるため電子通信分野で広く用いられている材料である(例えば、特許文献1〜3参照。)。
ポリイミドを所望のパターン膜として使用する場合、従来はエッチングや感光性ポリイミドを用いてパターンを形成することが一般的であったが、フォトレジスト、現像液、エッチング液、剥離液などの多種大量の薬液が必要であり、さらに煩雑な工程を要するものであった。そこで、近年、インクジェットにより所望のパターン膜を形成する方法が検討されている。
インクジェット用インクは各種提案されているが(例えば、特許文献4〜5参照。)、インクジェット用インクとして吐出・印刷するためには、粘度、表面張力、溶剤の沸点等の様々なパラメータを最適化して行かなくてはならない。例えば、粘度に関しては、一般的には1〜50mPa・s程度、好ましくは5〜30mPa・s程度の低粘度であることが求められ、特にピエゾ方式のインクジェット印刷の場合は圧電素子の吐出圧力が小さいため、粘度が大きくなると場合によっては吐出不能となったりする。表面張力については、20〜70mN/mの範囲、好ましくは20〜45mN/mの範囲に調整しなければならない。表面張力が小さいと、インクはプリンターヘッドのノズルから出た直後に広がってしまい良好な液滴が形成できなくなる。反対に大きすぎるとメニスカスを形成できなくなるため吐出不能になったりする。さらに、溶剤の沸点は100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲に入る必要がある。沸点が低すぎると、プリンターヘッドのノズル部のインク中の溶剤が蒸発してしまう。そのためインクの粘度が変わり吐出できなくなったり、あるいはインクの成分が固化してしまうことがある。逆に沸点が高すぎると、印刷後の乾燥が遅すぎて印刷パターンが悪化することがある。
【0003】
ポリイミド系のインクジェット用インクは、ポリアミド酸が比較的高分子量であるため、インクジェット用インクとして最適な粘度のインクを調製するためには、溶媒の割合を増やしてインク中のポリアミド酸含有量を少なくする必要がある。しかし、これによって、1回のインクジェッティングで得られる膜の厚さが薄くなってしまうという問題がある。
例えば、ポリアミド酸の重量平均分子量を10,000〜50,000に制御することによりインクの低粘度化を図り、ポリアミド酸の含有量を大きくすることが提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、ポリマー濃度が15〜20重量%程度と小さいものであった。また、粘度も15〜25mPa・sと比較的高いためインクジェット吐出不良が生じ易いという問題がある。
【0004】
また、熱架橋剤と、該熱架橋剤と反応可能な基を有する平均分子量300〜9,000のポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールを含有するインクジェット用熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献7参照)。熱架橋剤と反応可能なフェノール性水酸基、カルボキシル、スルホンアミドなどの基を有するポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールを含有する組成物に関するものであり、該組成物はエポキシ化合物、メチロール化合物、アルコキシメチロール化合物、ビスマレイミド、不飽和結合を有するビスイミド化合物、アセチレン化合物などの熱架橋剤を必須とするため、保存安定性や熱硬化時の残存未反応物等が問題である。
【0005】
一方、モノアミンと酸無水物基を1つ有する化合物とを用いて得られるイミド化合物は、各種提案されている。
例えば、(A)ポリフェニレンエーテル20〜80重量部、(B)スチレン系重合体、ポリアミドまたはスチレン系重合体とポリアミドの組合せ80〜20重量部、(C)下記に示されるハロゲン置換フタリミドシラン系化合物(イミド化合物)0.1〜7重量部からなる難燃性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、該技術はポリフェニレンエーテル、スチレン系重合体、ポリアミド等の樹脂組成物に少量(0.1〜7重量部)のハロゲン置換フタリミドシラン系化合物(イミド化合物)を添加して難燃性を付与するものである。溶融混錬後、ペレット化して成形するものであり、インクジェット用インクとはその設計思想、使用法が全く異なるものである。


【0006】
ポリシロキサンを含有することを特徴とするポジ型フォトレジスト組成物において、活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物として、下記に示されるイミノスルホネート誘導体(PAG6:イミド化合物)が提案されている(例えば、特許文献9参照)。しかしながら、該技術のポジ型フォトレジスト組成物は、基板上にスピナー、コーター等で塗布後、所定のマスクを通して露光し、ベークを行い現像することによりレジストパターンを得るものであり、インクジェット印刷により直接パターンを得る、インクジェット用インクとはその設計思想、使用法が全く異なるものである。


【0007】
下記に示される新規エポキシ化合物(イミド化合物)とその製造方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。しかしながら、該技術は電気・電子・光学部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、接着剤及び粉体塗料等の原料用途に有用である新規エポキシ化合物を提供するものであり、インクジェット用インクの成分としての使用は何ら想定されていない。

【0008】
(a)ポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、(c)溶剤、(d)下記に示されるイミドシラン化合物(イミド化合物)を含有する感光性シロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献11参照)。

【0009】
また、(a)下記に示されるイミド基含有シラン化合物(イミド化合物)とオルガノシラン化合物の1種以上を反応させて得られるポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、(c)溶剤、を含有する感光性シロキサン組成物において、イミド基含有シラン化合物の含有量がポリシロキサンに対して30モル%以上である感光性シロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献12参照)。


しかしながら、該技術の感光性シロキサン組成物は、スピンナー、ディッピング、スリットなどの方法により基板上に塗布し、プリベークの後、紫外線可視露光機を用い所望のマスクを介してパターニング露光後、現像によりポジ型のパターンを得るものであり、インクジェット印刷により直接パターンを得る、インクジェット用インクとはその設計思想、使用法が全く異なるものである。
【0010】
さらに、モノアミンと酸無水物基を2つ有する化合物(テトラカルボン酸二無水物とを用いて得られるイミド化合物についても、各種提案されている。
例えば、(A)特定構造のポリアミド酸および特定構造の可溶性ポリイミドからなるマトリックス樹脂の群の少なくとも一種と、(B)M(OR7mで表される化合物、特定構造の硝酸化合物および特定構造のジピバロイルメタン化合物からなる金属化合物の群の少なくとも一種と、(C)特定構造のアミン化合物、特定構造の酢酸化合物、特定構造のアセトン化合物、特定構造のアミド酸および下記に示される分子鎖末端にアルコキシル基を有するイミド(イミド化合物)からなる安定剤の群の少なくとも一種とからなる高誘電性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献13参照)。



(mは0、1の整数)
該技術は、耐熱性の高いポリアミド酸化合物および可溶性ポリイミド化合物の少なくとも一種からなるマトリックス樹脂、高誘電性の金属化合物および安定剤としてのイミド化合物を、水とともに混合して得られる、特殊な高誘電性樹脂組成物である。
【0011】
また、前記の特許文献11においても、(a)ポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、(c)溶剤、(d)下記に示されるイミドシラン化合物(イミド化合物)を含有する感光性シロキサン組成物が提案されているが、前述したとおり、インクジェット印刷により直接パターンを得る、インクジェット用インクとはその設計思想、使用法が全く異なるものである。


【0012】
以上のように、モノアミンと酸無水物基を1つ有する化合物とを用いて得られるイミド化合物は、各種提案されているが、すべてインクジェット用インクとしての使用を想定されているものでなく、インクジェット用インクとして必要な粘度や表面張力の最適化については何ら考慮されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−039714号公報
【特許文献2】特開2003−238683号公報
【特許文献3】特開2004−094118号公報
【特許文献4】特開2003−213165号公報
【特許文献5】特開2006−131730号公報
【特許文献6】特開2005−187596号公報
【特許文献7】特開2007−314647号公報
【特許文献8】特開平7−179745号公報
【特許文献9】特開2001−100418号公報
【特許文献10】国際公開WO2008/020637号パンフレット
【特許文献11】国際公開WO2008/065944号パンフレット
【特許文献12】特開2008−185672号公報
【特許文献13】特開平6−234917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述する状況の下、粘度、表面張力、溶剤の沸点等の様々なパラメータをインクジェット印刷用に最適化したインクジェット用インクにおいて、インクジェットヘッドの耐久性を低下させない溶媒を使用できるイミド系の化合物を含むインクジェット用インクが求められている。また、インク中にイミド系の化合物を高濃度で含有し、常温保存における保存安定性が良好で、1回のジェッティングで比較的厚い(1μm以上の)膜を形成できる、インクジェット用インクが求められている。
さらに、製膜時に耐熱性、電気絶縁性が高く、十分な機械的強度を有する、反り量の少ない絶縁膜を得ることができるインクジェット用インクが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを用いて得られるイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含む、インクジェット用インクとすることにより、ヘッドへのダメージを低減でき、さらにインク中の含有濃度を向上させたインクジェット用インクが得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下のようなインクジェット用インク等を提供する。
【0016】
[1] モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを用いて得られるイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含む、インクジェット用インク。
[2] イミド化合物(A)が、式(1)で表される化合物である、前記[1]項に記載のインクジェット用インク。


式(1)中、Rは炭素数1〜100の二価の有機基であり、Rは炭素数1〜100の一価の有機基である。
[3] モノアミン(a1)が、式(2)で表され、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、式(3)で表される、前記[1]項又は前記[2]項に記載のインクジェット用インク。


式(2)中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、Yは炭素数1〜20の二価の有機基であり、式(3)中、Rは炭素数1〜100の二価の有機基である。
[4] イミド化合物(A)の含有量が、インクジェット用インク全重量に対して5〜95重量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[5] モノアミン(a1)が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシランおよびm−アミノフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選ばれる1以上であり、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、無水フタル酸、無水トリメリット酸、3−メチルフタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、こはく酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン1,2−ジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、アリルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルナジック酸無水物、ブチルこはく酸無水物、n−オクチルこはく酸無水物、デシルこはく酸無水物、ドデシルこはく酸無水物、テトラデシルこはく酸無水物、ヘキサデシルこはく酸無水物、オクタデシルこはく酸無水物、2−ブテン−1−イルこはく酸無水物、2−ヘキセン−1−イルこはく酸無水物、n−オクテニルこはく酸無水物、n−デセニルこはく酸無水物、2−ドデセン−1−イルこはく酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、ヘキサデセニルこはく酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、p−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、p−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、トリメトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドおよびトリエトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドからなる群から選ばれる1以上である、前記[1]項又は前記[2]項に記載のインクジェット用インク。
[6] モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを反応溶媒中で反応させた後、140〜230℃で1.5〜10時間還流して得られるイミド化合物(A)を含む、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[7] インクジェット吐出温度時のインクの粘度が5〜30mPa・sである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[8] インクジェット用インクの表面張力が20〜45mN/mである前記[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[9] 溶媒(B)が、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランからなる群から選ばれる1以上である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[10] 溶媒(B)の含有量が、インクジェット用インク全重量に対して、5〜95重量%である前記[9]項に記載のインクジェット用インク。
[11] 溶媒(B)の含有量が、インクジェット用インク全重量に対して、15〜70重量%である前記[9]項に記載のインクジェット用インク。
[12] 溶媒(B)全重量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1以上の溶媒が0〜20重量%である、前記[1]〜[11]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[13] 溶媒(B)全重量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1以上の溶媒の含有量が0重量%である、前記[1]〜[11]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[14] モノアミン(a1)が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、無水フタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、シトラコン酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、およびアリルナジック酸無水物からなる群から選ばれる1以上であり、溶媒(B)が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルである、前記[1]項に記載のインクジェット用インク。
[15] モノアミン(a1)が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、無水フタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、シトラコン酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、およびアリルナジック酸無水物からなる群から選ばれる1以上であり、溶媒(B)が、テトラエトキシシランである、前記[1]項に記載のインクジェット用インク。
[16] さらに、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、シリコン化合物、エポキシ化合物、アクリル化合物、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、及びエポキシ硬化剤からなる群から選ばれる1以上を含む、前記[1]〜[15]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[17] 高分子化合物が、少なくとも、ジアミン(a3)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)とを用いて得られ、式(4)で表される構成単位を有する、ポリアミド酸またはそのイミド化重合体である、前記[16]項に記載のインクジェット用インク。


式(4)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rは炭素数2〜100の二価の有機基である。
[18] ジアミン(a3)が、式(5)で表されるジアミンであり、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)が、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物、及び、酸無水物基を有するモノマーと他の重合性モノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1以上である、前記[17]項に記載のインクジェット用インク。






式(5)中、Rは炭素数2〜100の二価の有機基であり、式(6)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基である。
[19] 式(5)で表されるジアミン(a3)が、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ベンジジン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン及び式(7)で表される化合物からなる群から選ばれる1つ以上である、前記[18]項に記載のインクジェット用インク。


式(7)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル又はフェニルであり、Rはそれぞれ独立してメチレン、フェニレン又はアルキルで置き換えられたフェニレンであり、xはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。
[20] 式(6)で表される酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)が、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物及びブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1つ以上である、前記[18]に記載のインクジェット用インク。
[21] 高分子化合物が、重量平均分子量30,000〜500,000のポリアミド酸またはそのイミド化重合体である、前記[17]〜[20]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[22] エポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキシランを有するモノマーの重合体、及び、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1つ以上である、前記[16]項に記載のインクジェット用インク。
[23] エポキシ化合物が、式(I)〜(V)からなる群から選ばれる1つ以上である、前記[16]項に記載のインクジェット用インク。


式(V)中、Rcは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり、Reは式(VI)〜(VIII)からなる群から選ばれる一価の有機基である。


式(VI)中、Rfは水素又は炭素数1〜3のアルキルである。
[24] 前記[1]〜[23]のいずれかに記載のインクジェット用インクから得られる、イミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜。
[25] 前記[1]〜[23]のいずれかに記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布して膜を形成した後、膜を硬化処理して得られる、イミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜。
[26] 前記[1]〜[23]のいずれかに記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布して膜を形成する工程、及び、膜を硬化処理する工程を含む、イミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜の形成方法。
[27] 前記[24]項又は前記[25]項に記載のイミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜が基板上に形成されたフィルム基板。
[28] 前記[27]項に記載のフィルム基板を有する電子部品。
[29] 前記[24]項又は前記[25]項に記載のイミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜が基板上に形成されたシリコンウエハー基板。
[30] 前記[29]項に記載のシリコンウエハー基板を有する電子部品。
【0017】
本明細書中、「有機基」とは特に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜100の炭化水素基が挙げられる。
【0018】
また、一価の有機基としては、具体的には、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいシリル、置換基を有していてもよいアルキルチオ(−SY、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルを示す。)、置換基を有していてもよいアリールチオ(−SY、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールを示す。)、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル(−SO、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルを示す。)、置換基を有していてもよいアリールスルホニル(−SO、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールを示す。)が挙げられる。
【0019】
本明細書において、「炭素数1〜20の炭化水素基」の炭化水素は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。炭素数1〜20の炭化水素が非環式の場合には、直鎖状でもよいし、枝分かれでもよい。「炭素数1〜20の炭化水素基」には、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数4〜20のアルキルジエニル、炭素数6〜18のアリール、炭素数7〜20のアルキルアリール、炭素数7〜20のアリールアルキル、炭素数4〜20のシクロアルキル、炭素数4〜20のシクロアルケニルなどが含まれる。
【0020】
本明細書において、「炭素数1〜20のアルキル」は、炭素数1〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「炭素数2〜20のアルケニル」は、炭素数2〜10のアルケニルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルケニルであることが更に好ましい。アルケニルの例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「炭素数2〜20のアルキニル」は、炭素数2〜10のアルキニルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキニルであることが更に好ましい。アルキニルの例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「炭素数4〜20のアルキルジエニル」は、炭素数4〜10のアルキルジエニルであることが好ましく、炭素数4〜6のアルキルジエニルであることが更に好ましい。アルキルジエニルの例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「炭素数6〜18のアリール」は、炭素数6〜10のアリールであることが好ましい。アリールの例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「炭素数7〜20のアルキルアリール」は、炭素数7〜12のアルキルアリールであることが好ましい。アルキルアリールの例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「炭素数7〜20のアリールアルキル」は、炭素数7〜12のアリールアルキルであることが好ましい。アリールアルキルの例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「炭素数4〜20のシクロアルキル」は、炭素数4〜10のシクロアルキルであることが好ましい。シクロアルキルの例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「炭素数4〜20のシクロアルケニル」は、炭素数4〜10のシクロアルケニルであることが好ましい。シクロアルケニルの例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「炭素数1〜20のアルコキシ」は、炭素数1〜10のアルコキシであることが好ましく、炭素数2〜6のアルコキシであることが更に好ましい。アルコキシの例としては、制限するわけではないが、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0030】
本明細書において、「炭素数6〜20のアリールオキシ」は、炭素数6〜10のアリールオキシであることが好ましい。アリールオキシの例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「アルキルチオ(−SY、式中、Yは置換を有してもよい炭素数2〜20のアルキルを示す。)」および「アルキルスルホニル(−SO、式中、Yは置換を有してもよい炭素数1〜20のアルキルを示す。)」において、YおよびYは、炭素数2〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数2〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「アリールチオ(−SY、式中、Yは置換を有してもよい炭素数6〜18のアリールを示す。)」および「アリールスルホニル(−SO、式中、Yは置換を有してもよい炭素数6〜18のアリールを示す。)」において、YおよびYは、炭素数6〜10のアリールであることが好ましい。アリールの例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0033】
「炭素数1〜20の炭化水素基」、「炭素数1〜20のアルコキシ」、「炭素数6〜20のアリールオキシ」、「アミノ」、「シリル」、「アルキルチオ」、「アリールチオ」、「アルキルスルホニル」、「アリールスルホニル」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、エステル、カルボキシル、アミド、アルキン、トリメチルシリル、アミノ、ホスホニル、チオ、カルボニル、ニトロ、スルホ、イミノ、ハロゲノ、またはアルコキシなどを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上、置換可能な最大数まで導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
本明細書において、「置換基を有してもよいアミノ」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0035】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0036】
以上、一価の有機基の具体例を挙げたが、本明細書中、二価の有機基の具体例としては、本明細書中に記載された一価の有機基においてさらに価数を1つ増やした基が挙げられる。同様に、本明細書中、三価の有機基の具体例としては、本明細書中に記載された一価の有機基においてさらに価数を2つ増やした基が挙げられる。さらに、本明細書中、四価の有機基の具体例としては、本明細書中に記載された一価の有機基においてさらに価数を3つ増やした基が挙げられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクは、例えば、インクジェットヘッドへのダメージを抑えることができる。また、インクの常温保存における保存安定性が良好である。本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクに用いられるイミド化合物を用いると、インク中に高濃度で含有させることができるため、1回のジェッティングで比較的厚い膜厚(1μm以上)を有するイミド化合物の膜を形成することができる。
さらに、本発明の高分子化合物(好ましくは本発明のポリアミド酸)、または/および本発明のエポキシ化合物を併用することにより、製膜時に十分な機械的強度を得ることができ、インクジェット印刷に適した低粘度化と25重量%以上の高濃度化の両立が可能である。
【0038】
また、パターン状のイミド化合物の膜の形成のために、本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクを用いる場合、インクジェット印刷により必要な部分のみに描画すればよいため、エッチング等の他の方法に比べて材料使用量は圧倒的に少なく、フォトマスクを使用する必要等がないので多品種大量生産が可能であり、また、製造に要する工程数が少ないものとすることができる。また、本発明のイミド化合物の膜又はパターン状のイミド化合物の膜から形成された絶縁膜は、例えば、耐熱性、電気絶縁性が高く、十分な機械的強度を有し、反り量が少なく、電子部品の信頼性、歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを用いて得られるイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含むインクジェット用インク、当該インクを用いたイミド化合物の膜の形成方法等を提供する。なお、本発明のインクジェット用インクは、無色であっても有色であってもよい。
【0040】
1 イミド化合物(A)
イミド化合物(A)は、少なくとも、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを用いて得ることができる。
【0041】
本発明のインクジェット用インクに含まれるイミド化合物(A)は、少なくとも、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とからなる群から選ばれる1以上を反応させる工程を用いて得ることができるが、当該製法で得られたイミド化合物に限定されるものではない。
【0042】
イミド化合物(A)としては、式(1)で表される化合物が挙げられる。式(1)におけるRは酸無水物基を1つ有する化合物(a2)の反応残基であり、Rはモノアミン(a1)の反応残基である。反応残基とは、モノアミン(a1)又は酸無水物基を1つ有する化合物(a2)において、式(1)に含まれるイミド結合を構成する部位以外の基を意味する。
式(1)におけるRとRはそれぞれ独立して炭素数1〜100の有機基であれば特に限定されるものではない。「炭素数1〜100の有機基」は、好ましくは炭素数2〜70の有機基であり、より好ましくは炭素数4〜50の有機基である。
【0043】
以下に、イミド化合物(A)を得るために用いることができる、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを説明する。
なお、Rは、好ましくは以下に示す酸無水物基を1つ有する化合物(a2)の反応残基であり、Rは、好ましくは以下に示すモノアミン(a1)の反応残基である。
【0044】
1.1 モノアミン(a1)
モノアミン(a1)としては、式(2)で表される化合物が挙げられる。式(2)中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の有機基であり、Yは炭素数1〜20の有機基である。有機基の説明は、前述した説明を援用することができる。
【0045】
モノアミン(a1)としては、アミノ基を1つ有していれば特に限定されないが、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン又はm−アミノフェニルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0046】
これらの中でも、例えば得られる膜の耐久性が優れるという点から、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシランが好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0047】
これらのモノアミンは単独でも、2種以上を組み合わせても使用できる。
【0048】
1.2 酸無水物基を1つ有する化合物(a2)
酸無水物基を1つ有する化合物(a2)としては、式(3)で表される化合物が挙げられる。式(3)中、Rは炭素数1〜100の有機基である。有機基の説明は、前述した説明を援用することができる。
【0049】
酸無水物基を1つ有する化合物(a2)としては、酸無水物基を1つ有していれば特に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、3−メチルフタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、こはく酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン1,2−ジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、アリルこはく酸無水物、2−ブテン−1−イルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルナジック酸無水物、ブチルこはく酸無水物、n−オクチルこはく酸無水物、ドデシルこはく酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、p−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、p−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、トリメトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリド又はトリエトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドが挙げられる。
【0050】
これらの中でも、無水フタル酸、無水トリメリット酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、シトラコン酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、およびアリルナジック酸無水物が好ましい。これらの酸無水物基を1つ有する化合物(a2)は1種単独でまたは2種以上を組み合わせてもよい。
【0051】
1.3 イミド化合物(A)を合成するための反応条件
イミド化合物(A)は、少なくとも、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを反応させる工程を用いて得ることができる。
【0052】
1.3.1 反応原料の仕込量
モノアミン(a1)及び酸無水物基を1つ有する化合物(a2)の仕込量は、1モルのモノアミン(a1)に対して、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)を0.5〜2.0モル用いることが好ましく、0.7〜1.5モル用いることがより好ましく、1.0〜1.2モル用いることがさらに好ましい。
【0053】
1.3.2 反応溶媒
イミド化合物(A)を合成するために用いられる反応溶媒は、当該イミド化合物(A)が合成できれば特に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン又はジフェニルジエトキシシランが挙げられる。
【0054】
これらの反応溶媒の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランを用いると、反応後に当該溶媒をそのままインクジェット用溶媒として用いても、インクジェットヘッドへのダメージが少ないインクとすることができるので好ましい。
【0055】
これらの反応溶媒は単独でも、2種以上の混合溶媒としても使用できる。また、上記反応溶媒以外に他の溶媒を混合して用いることもできる。
【0056】
反応溶媒は、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)との合計100重量部に対し100重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するので好ましい。反応は0℃〜200℃で、0.2〜20時間反応させるのが好ましい。
【0057】
1.3.3 反応系への添加順序
反応原料の反応系への添加順序は特に限定されない。すなわち、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを同時に反応溶媒に加える、モノアミン(a1)を反応溶媒中に溶解させた後に酸無水物基を1つ有する化合物(a2)を添加する、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)を反応溶媒中に溶解させた後にモノアミン(a1)を添加する等、いずれの方法も用いることができる。
【0058】
1.3.4 イミド化
本発明のイミド化合物(A)は、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)と反応溶媒中で反応させて得られるアミド酸化合物をイミド化することにより得ることができる。
本発明のアミド酸化合物は、脱水触媒および脱水剤を用いた化学的方法、あるいは熱的方法によりイミド化することにより得ることができるが、好ましくは、精製処理を行なわないでインクの成分として使用できる熱的方法でイミド化することである。さらに好ましくは、モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)と反応溶媒中で反応させた後、還流してイミド化することである。還流の条件は、使用する反応溶媒により異なるが、好ましくは140〜230℃で1.5〜10時間還流する。還流温度が140℃以上であるとイミド化が十分に進み強固な膜を得ることができる。還流温度が230℃以下であると比較的沸点の高い溶媒を用いても還流可能である。
特に、モノアミン(a1)として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン又はm−アミノフェニルメチルジエトキシシラン等のアミノ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物を用いる場合、還流の過程でイミド化で生成する水がアルコキシシランの一部の加水分解に消費され、イミド化と加水分解が同時に進行するため好ましい。理由は定かでないが、アミド酸化合物のイミド化、及び部分的な加水分解により発生するシラノール基(およびアルコール)がインクジェットインクの特性に好ましい影響を与えて、200℃以下の比較的低温焼成においても、電気的、機械的、熱的特性の良好なイミド化合物の強固な膜が形成できると推定している。
【0059】
1.4 イミド化合物(A)の含有量
イミド化合物(A)の含有量は、インクジェット用インク全重量に対して、5〜95重量%とすることが好ましく、25〜70重量%とすることがより好ましく、30〜50重量%とすることがさらに好ましい。5重量%以上では、1回のジェッティングで形成できるイミド化合物の膜が薄くなり過ぎることがなく、95重量%以下では、インクジェット用インクの粘度が大きくなり過ぎず、ジェッティング特性がよい。
【0060】
2 溶媒(B)
本発明のインクジェット用インクは、例えば、イミド化合物(A)を溶媒(B)に溶解して得ることができる。したがって、本発明のインクジェット用インクに含まれる溶媒は、イミド化合物(A)を溶解することができる溶媒であれば特に制限されない。また、単独ではイミド化合物(A)を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合して溶解可能にすることによって、インクジェット用インクに含まれる溶媒(B)として用いることが可能である。なお、インクジェット用インクに含まれる溶媒(B)としては、上述するように、イミド化合物(A)の合成で用いた反応溶媒をそのまま用いてもよい。
【0061】
2.1 溶媒の具体例
溶媒(B)としては、例えば、乳酸エチル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、マロン酸ジエチル、エタノール、2−プロパノール、ジオキサン、エチレングリコール、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、カルバミド酸エステル、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド又はγ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0062】
これらの溶媒の中でも、例えば、インクジェットヘッドへのダメージを抑える観点から、乳酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランを含むことが好ましい。
【0063】
これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
2.2 溶媒の含有量
また、溶媒(B)の含有量は、インクジェット用インク全重量に対して、5〜95重量%(溶媒以外の成分の固形分濃度が5〜95重量%)とすることが好ましく、10〜80重量%(固形分濃度が20〜90重量%)とすることがより好ましく、15〜75重量%(固形分濃度が25〜85重量%)とすることがさらに好ましい。5重量%以上では、インクジェット用インクの粘度が大きくなり過ぎず、ジェッティング特性は良好であり、95重量%以下では、1回のジェッティングで形成できるイミド化合物の膜が薄くなり過ぎることがない。
【0065】
2.3 インクの表面張力と溶媒との関係
インクの表面張力は、インクジェット用インクの塗布性に大きく影響するため、インクの表面張力を20〜70mN/m、好ましくは20〜45mN/mに調整する。
【0066】
表面張力を20〜70mN/mの範囲に調整するには、溶媒選定が重要である。表面張力が20〜70mN/mの範囲にある1種の溶媒を用いてもよいが、例えば表面張力の大きな溶媒(例えば、γ−ブチロラクトン:43mN/m)および表面張力の小さな溶媒(例えば、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル:24mN/m、あるいはエチレングリコールモノブチルエーテル:32mN/m)を混合して用いると溶媒組成で表面張力を微調整できるので好ましい。
【0067】
2.4 含有しないことが好ましい溶媒
また、本発明のインクジェット用インクに含まれる溶媒(B)には、インクジェットヘッドを溶解または腐食する溶媒を含有しないことが好ましい。
【0068】
インクジェットヘッドを溶解または腐食する溶媒としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、又はカルバミド酸エステル等が挙げられる。
【0069】
インクジェットヘッドを溶解または腐食する溶媒の含有量は、インク中に含まれる溶媒(B)の全重量に対して、0〜20重量%に抑えることが好ましく、0〜10重量%に抑えることがより好ましく、0重量%に抑えることがさらに好ましい。
【0070】
3 本発明のインクジェット用インクに添加してもよい添加剤
本発明のインクジェット用インクは、例えば、イミド化合物(A)と、溶媒(B)とを混合して得られるが、必要により、さらに各種添加剤を含んでもよい。各種添加剤としては、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、又はシリコン化合物等が挙げられる。
さらに、目的とする特性によっては、エポキシ化合物、アクリル化合物、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、無水トリメリット酸等のエポキシ硬化剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー、顔料、染料等の添加剤を必要により選択して添加してもよい。
【0071】
3.1 高分子化合物
本発明のインクジェット用インクは、さらに各種高分子化合物を含むことができる。高分子化合物の具体例としては、ポリアミド酸、可溶性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸エステル、ポリエステル、アクリル酸ポリマー、アクリレートポリマー、ポリビニルアルコール、又はポリオキシエチレン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくはポリアミド酸または可溶性ポリイミド等のポリイミド系高分子化合物である。
【0072】
本発明の高分子化合物は、例えば、少なくとも、ジアミン(a3)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)とを用いて得られ、式(4)で表される構成単位を有する、ポリアミド酸またはそのイミド化重合体である。



上記式(4)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rは炭素数2〜100の二価の有機基である。
【0073】
本発明において、ジアミン(a3)としては、式(5)で表されるジアミンを用いることができる。
【0074】


式(5)中、Rは炭素数2〜100の二価の有機基である。
【0075】
本発明でポリアミド酸またはそのイミド化重合体の合成に用いられるジアミン(a3)の具体例としては、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ベンジジン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン及び下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0076】


上記式(7)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル又はフェニルであり、Rはそれぞれ独立してメチレン、フェニレン又はアルキルで置き換えられたフェニレンであり、xはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。
【0077】
本発明に用いる高分子化合物としてのポリアミド酸またはそのイミド化重合体を合成するために用いることができるジアミン(a3)は、本明細書のジアミンに限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他にも種々の形態のジアミン、例えば、国際公開WO2008/059986号パンフレットに記載されているジアミンを用いることができる。
また、ジアミン(a3)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。すなわち、2種以上の組み合わせとしては、上記ジアミン同士、上記ジアミンとそれ以外のジアミン、または、上記ジアミン以外のジアミン同士を用いることができる。
【0078】
本発明に用いる酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)としては、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物、及び、酸無水物基を有するモノマーと他の重合性モノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1以上を用いることができる。
【0079】



式(6)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基である。
【0080】
本発明でポリアミド酸またはそのイミド化重合体の合成に用いられる酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4ージカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物及びブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0081】
本発明において、ポリアミド酸またはそのイミド化重合体を合成するために用いることができる酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)は、本明細書の化合物に限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他にも種々の形態のテトラカルボン酸二無水物、例えば、国際公開WO2008/059986号パンフレットに記載されているテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
また、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0082】
本発明において、重量平均分子量30,000〜500,000のポリアミド酸またはそのイミド化重合体が、高分子化合物として利用できる。重量平均分子量が30,000以上の高分子化合物を併用することにより、製膜時に十分な機械的強度が得ることができ、重量平均分子量が500,000以下の高分子化合物を併用することにより、溶媒に対する溶解性を向上させ、25重量%以上の高濃度化と低粘度化を両立することができるので、得られる塗膜の膜厚を大きくすることが可能である。また、本発明において、高分子化合物の重量平均分子量は35,000〜200,000であることが好ましく、40,000〜150,000であることがさらに好ましい。
【0083】
ポリアミド酸またはそのイミド化重合体等の高分子化合物の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。例えば、具体的には得られたポリアミド酸をジメチルホルムアミド(DMF)でポリアミド酸の濃度が約1重量%になるように希釈し、カラムとして、Shodex Asahipak GF−510 HQおよびShodex Asahipak GF−310 HQを用いて、DMFを展開剤としてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めることができる。
【0084】
さらに、本発明の高分子化合物は、例えば、国際公開WO2008/059986号パンフレットに記載されている式(I-1)で表される構成単位を有し、式(I-2)及び式(I-3)で表される分子末端基の群から選ばれる1以上の分子末端基を有する重量平均分子量1,000〜20,000のポリアミド酸またはそのイミド化重合体を好ましく挙げることができる。
【0085】


式(I-1)中、R10は炭素数1〜100の四価の有機基であり、R11は炭素数1〜100の二価の有機基であり、R12は炭素数1〜100の一価の有機基であり、R13は炭素数1〜100の二価の有機基である。
【0086】
3.2 アルケニル置換ナジイミド化合物
本発明のインクジェット用インクは、さらに各種アルケニル置換ナジイミド化合物を含むことができる。アルケニル置換ナジイミド化合物は、分子内に少なくとも1つのアルケニル置換ナジイミド構造を有する化合物である。好ましくは、例えば、国際公開WO2008/059986号パンフレットに記載されている、式(II-1)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0087】


式(II-1)中、R14およびR15はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかであり、nは1〜2の整数であり、
n=1のとき、R16は水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−{(C2q)O(C2rO)2sX}(ここで、q、r、sはそれぞれ独立に選ばれた2〜6の整数、tは0または1の整数及びuは1〜30の整数、Xは水素または水酸基である)で表されるポリオキシアルキレンアルキル、−(R)−C−R17(ここで、aは0または1の整数、Rは炭素数1〜4のアルキレン、R17は水素もしくは炭素数1〜4のアルキルを表す)で表される基、−C−T−C(ここで、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−S−もしくはSO−である)で表される基、またはこれらの基の芳香環に直結した1〜3個の水素が水酸基で置換された基であり、
n=2のとき、R16は−C2p−(ここで、pは2〜20の整数)で表されるアルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、−{(C2qO)(C2rO)2s}−(ここで、q、r、sはそれぞれ独立に2〜6の整数、tは0または1の整数及びuは1〜30の整数である)で表されるポリオキシアルキレン、炭素数6〜12のアリーレン、−(R17−C−R18−(ここで、aは0または1の整数、R17及びR18は独立に選ばれた炭素数1〜4のアルキレンである)で表される基、−C−T−C−(ここで、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−O−、−OCC(CHO−、−S−、−SO−)で表される基、またはこれらの基の芳香環に直結する1〜3個の水素が水酸基で置換された基である。
【0088】
また、式(II-1)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物の中でも、
14およびR15はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかであり、
nが2であり、
16が、−C2p−(ここで、pは2〜10の整数)で表されるアルキレン、−(R17−C−R18−(ここで、aは0または1の整数、R17及びR18は独立に選ばれた炭素数1〜4のアルキレンである)で表される基、または−C−T−C−(ここで、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−O−、−OCC(CHO−、−S−、−SO−)で表される基である、アルケニル置換ナジイミド化合物が好ましい。
【0089】
また、式(II-1)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物の中でも、
14およびR15がそれぞれ独立に水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
nが2であり、
16が−(CH−、式(II-2)で表される基または式(II-3)で表される基である、アルケニル置換ナジイミド化合物が好ましい。
【0090】


【0091】
3.3 シリコン化合物
本発明のインクジェット用インクは、さらにシリコン化合物を含むことができる。シリコン化合物の具体例としては、分子内にアミド酸構造を有するシリコン化合物であるシリコンアミド酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0092】
好ましくは、例えば、国際公開WO2008/123190号パンフレットに記載されている、分子内に少なくとも2つのアミド酸構造を有する、式(III)で表されるシリコンアミド酸、又は式(IV)で表されるシリコンアミド酸が挙げられる。式(III)で表されるシリコンアミド酸の中でも、式(III-1)、(III-2)又は(III-3)で表されるシリコンアミド酸が好ましい。また、式(IV)で表されるシリコンアミド酸の中でも、式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)又は(IV-4)で表されるシリコンアミド酸が好ましい。
【0093】


式(III)中、Xは、炭素数1〜100の四価の有機基であり、R、R及びRは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、それらは同一または異なっていてもよく、Yは、炭素数1〜20の有機基である。
【0094】


式(III-1)、(III-2)又は(III-3)中、R、R及びRは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、それらは同一または異なっていてもよく、R、R及びRの内の少なくとも一つは、炭素数1〜20のアルコキシ基を含み、aは、1〜20の整数である。
【0095】


式(IV)中、R、R及びRは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、それらは同一または異なっていてもよく、Y’は、炭素数1〜20の三価の有機基であり、X’は炭素数1〜100の二価の有機基である。
【0096】


式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)又は(IV-4)中、R、R及びRは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、R、R及びRの内の少なくとも一つは、炭素数1〜20のアルコキシ基を含み、式(IV-3)のRは炭素数2〜30の一価の有機基であり、式(IV-4)のRは水素又は炭素数1〜20のアルキルであり、aは、1〜20の整数である。
【0097】
3.4 エポキシ化合物
本発明のインクジェット用インクは、エポキシ化合物をさらに含んでもよい。インクジェット用インクに含まれるエポキシ化合物は、オキシランやオキセタンを有すれば特に限定されないが、オキシランを2つ以上有する化合物が好ましい。
【0098】
インクジェット用インク中のエポキシ化合物の濃度は特に限定されないが、インクジェット用インク全重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がさらに好ましい。この濃度範囲であると、インクジェット用インクから形成された塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性が良好である。
【0099】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキシランを有するモノマーの重合体、又はオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0100】
オキシランを有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、又はメチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、オキシランを有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、又はN−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0101】
オキシランを有するモノマーの重合体及びオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、又はスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0102】
エポキシ化合物の具体例としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、商品名「エピコート1004」、「エピコート1256」(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、商品名「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド3000」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、又はN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
これらの中でも、商品名「アラルダイトCY184」、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「テクモアVG3101L」、商品名「エピコート828」は、得られるイミド化合物の膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
【0103】
さらにエポキシ化合物の具体例としては、式(I)〜(V)の化合物が挙げられる。これらの中でも、式(I)および(V)の化合物は、得られるイミド化合物の膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
【0104】


式(V)中、Rcは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり、Reは式(VI)〜(VIII)からなる群から選ばれる一価の有機基である。
【0105】
式(V)中、Rcは炭素数2〜100の四価の有機基であるが、例えば式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物残基と式(V’)で表されるヒドロキシルを有する化合物の反応によって得られるテトラカルボン酸残基である。





式(6)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基である。
式(V’)中、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり、Reは下記式(VI)〜(VIII)からなる群から選ばれる一価の有機基である。
式(V’)中、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であるが、例えば、炭素数1〜30の直鎖状又は分枝状の二価の有機基であり、環構造又は酸素を含んでいてもよく、環構造としては、フェニル、シクロヘキシル、ナフチル、シクロヘキセニル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルなどが挙げられる。
式(V)、式(V’)中、Reは、オキセタン、オキシラン又はシクロヘキセンを有してもよい一価の有機基であり、好ましくは式(VI)〜(VIII)からなる群から選ばれる一価の有機基である。


式(VI)中、Rfは水素又は炭素数1〜3のアルキルである。
式(V)で表される化合物として、特に好ましくは式(V”)の化合物が挙げられる。



式(V)で表される化合物は、例えば、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物と式(V’)で表されるヒドロキシルを有する化合物とを溶媒中で反応させて製造することができる。
なお、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、好ましくは本発明の高分子化合物(ポリアミド酸またはそのイミド化重合体)の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物である。
式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物を1モルに対して、式(V’)で表されるヒドロキシルを有する化合物を1.9〜2.1モル用いることが好ましく、式(V’)で表されるヒドロキシルを有する化合物を1.95〜2.05モル用いることがさらに好ましく、式(V’)で表されるヒドロキシルを有する化合物を2モル用いることが特に好ましい。式(V’)で表されるヒドロキシルを有する化合物は、2種以上の化合物を併用してもよいが、同じであることが好ましい。
また、式(V)で表される化合物は、例えば、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物とヒドロキシル及び二重結合を有する化合物とを反応させた後、得られた化合物の二重結合部分を酸化させてエポキシ基にすることにより、製造することができる。
式(V)で表される化合物を合成するために用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えばイミド化合物(A)を合成するための溶媒を挙げることができる。
溶媒は、式(V)で表される化合物を製造する原料の合計100重量部に対し50重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するので好ましい。反応温度は80℃〜130℃で、反応時間は2〜8時間が好ましい。また、反応原料の反応系への添加順序に特に限定されない。
【0106】
エポキシ化合物は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
インクジェット用インクがこれらのエポキシ化合物を含有すると、インクジェット用インクから形成された塗膜の耐熱性が良好となるため好ましい。
【0107】
3.6 アクリル化合物
インクジェット用インクに添加されてもよいアクリル化合物としては、アクリル基やメタクリル基を有していれば特に限定されない。
【0108】
インクジェット用インク中のアクリル化合物の濃度は特に限定されないが、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。この濃度範囲であると、インクジェット用インクから形成された塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性が良好である。
【0109】
アクリル化合物としては、例えば、ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマー、ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマー、二官能(メタ)アクリレート、または三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0110】
ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、または1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。中でも、形成される膜を柔軟にできる点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましい。
【0111】
ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、(メタ)アクリルアミド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、またはシクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]を挙げることができる。
【0112】
二官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、またはジペンタエリスリトールジアクリレートを挙げることができる。
【0113】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、またはウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのアクリル化合物は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0114】
3.6 界面活性剤
インクジェット用インクに添加されてもよい界面活性剤を添加としては、塗布性を向上できる点から、例えば、商品名「Byk−300」、「Byk−306」、「Byk−335」、「Byk−310」、「Byk−341」、「Byk−344」、「Byk−370」(ビック・ケミー(株)製)等のシリコン系界面活性剤;商品名「Byk−354」、「ByK−358」、「Byk−361」(ビック・ケミー(株)製)等のアクリル系界面活性剤、商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」(ネオス(株)製)等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
界面活性剤は、下地基板への濡れ性、レベリング性、又は塗布性を向上させるために使用するものであり、インクジェット用インク100重量部に対し0.01〜1重量部添加して用いられることが好ましい。
【0115】
3.7 帯電防止剤
インクジェット用インクに添加されてもよい帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩が挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
帯電防止剤は、帯電を防止するために使用するものであり、インクジェット用インク100重量部に対し0.01〜1重量部添加して用いられることが好ましい。
【0116】
3.8 カップリング剤
インクジェット用インクに添加されてもよいカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、公知のカップリング剤を用いることができる。添加されるカップリング剤はシランカップリング剤が好ましく、具体的には、トリアルコキシシラン化合物又はジアルコキシシラン化合物などを挙げることができる。好ましくは、例えば、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランである。これらの中でも、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0117】
これらのカップリング剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。カップリング剤は、インクジェット用インク100重量部に対し0.01〜3重量部添加して用いられることが好ましい。
【0118】
3.9 エポキシ硬化剤
インクジェット用インクに添加されてもよいエポキシ硬化剤としては、特に限定されるものではなく、公知のエポキシ硬化剤を用いることができる。具体的には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物などが挙げられる。さらに具体的には、ジシアンジアミド等のジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等の有機酸ジヒドラジド、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物などの酸無水物、またはトリメリット酸が挙げられる。中でも透明性が良好なトリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物が好ましい。
【0119】
これらのエポキシ硬化剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。エポキシ硬化剤は、インクジェット用インク100重量部に対し0.2〜5重量部添加して用いられることが好ましい。
【0120】
4 インクジェット用インク
4.1 インクジェット用インクの粘度
本発明においてインクジェット用インクの粘度は特に限定されないが、常温(25℃)でジェッティングを行う場合は、その粘度が1〜50mPa・sであると、インクジェット塗布方法によるジェッティング精度が向上する点で好ましい。また、25℃におけるインクジェット用インクの粘度は、より好ましくは5〜30mPa・s、さらに好ましくは8〜15mPa・s(25℃)である。粘度が15mPa・s(25℃)より小さいと、インクジェット吐出不良が生じることがない。
インクヘッドを加熱してジェッティングを行う場合は、加熱温度(好ましくは40〜120℃)におけるインクジェット用インクの粘度は1〜50mPa・sが好ましく、5〜30mPa・sであればさらに好ましく、8〜15mPa・sが特に好ましい。加熱温度における粘度が15mPa・sより小さいと、インクジェット吐出不良が生じることがない。
【0121】
4.2 インクジェット用インクの表面張力
インクの表面張力は、インクジェット用インクの塗布性に大きく影響する。インクの表面張力が20〜70mN/mの範囲であると、良好なインクジェット吐出ができるので好ましい。より好ましくは20〜45mN/m、さらに好ましくは25〜40mN/mに調整する。表面張力が20〜70mN/mの範囲であればインク吐出口におけるインクメニスカスが安定になり、インクの吐出は良好となる。
【0122】
4.3 インクジェット用インクの水分量
本発明においてインクジェット用インク中の水分量は、10,000ppm以下が好ましく、5,000ppm以下がさらに好ましい。これらの水分量であると、インクジェット用インクの粘度変化が少なく保存安定性に優れるので好ましい。
【0123】
5 イミド化合物の膜
本発明のイミド化合物の膜は、本発明のインクジェット用インクを、例えば、基板表面にインクジェットにより塗布し、ホットプレート、またはオーブン等で加熱処理することにより、全面または所定のパターン状(たとえばライン状)のイミド化合物の膜として得ることができる。また、本発明のイミド化合物の膜の形成は、加熱処理に限定されず、UV処理やイオンビーム、電子線、ガンマ線等の処理でもよい。
【0124】
5.1 インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布
インクジェット塗布方法には、インクの吐出方法により各種のタイプがある。吐出方法としては、例えば、圧電素子型、バブルジェット(登録商標)型、又は連続噴射型、静電誘導型が挙げられる。本発明にかかるインクは、インクに含まれる各成分を適正に選択することにより、様々な方法でジェッティングが可能であり、インクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。本発明のイミド化合物をインクジェット用インクとして用いた場合、1回のジェッティングで塗布する膜厚を厚くすることが可能である。本発明において、インクジェット用インクは、1回のジェッティングにより、膜厚を1μm以上にできることが好ましく、5μm以上にできることがより好ましく、9μm以上にできることが特に好ましい。得られる膜厚が1μm以上であると、インクジェット用インクから膜を生産するための時間とコストを削減できるので好ましい。
【0125】
本発明にかかるインクを用いて塗布を行うのに好ましい吐出方法は、圧電素子型である。この圧電素子型のヘッドは、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクとを備えた、オンデマンドインクジェット塗布ヘッドであり、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させる。
【0126】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。また、インク収容部は塗布ヘッドに対し分離可能または分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0127】
また、塗布ヘッドに対し好ましい負圧を作用させるための構成をインクタンクに設ける場合には、インクタンクのインク収納部に吸収体を配置した形態、あるいは可撓性のインク収容袋とこれに対しその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態等を採用することができる。塗布装置は、上述のようにシリアル塗布方式を採るもののほか、塗布媒体の全幅に対応した範囲にわたって塗布素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
【0128】
5.2 イミド化合物の膜の形成
インクジェット塗布方法を用いて、基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェットによって塗布した後、ホットプレート、またはオーブン等での加熱により溶媒を気化等させて除去する、すなわち乾燥する。この加熱条件は各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常70〜150℃で、オーブンを用いた場合は5〜15分間、ホットプレートを用いた場合は1〜5分間乾燥する。
【0129】
さらに乾燥した後、塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性、さらには十分な機械的強度を得るために、150〜350℃、好ましくは200〜300℃で、オーブンを用いた場合30〜90分間、ホットプレートを用いた場合は5〜30分間加熱処理(硬化処理)することにより、イミド化合物の膜が形成される。インクジェット塗布方法を用いて、パターン状に印刷した場合には、パターン状の膜が形成される。本明細書では、特に言及のない限り、イミド化合物の膜は、パターン状のイミド化合物の膜を含むものとする。
【0130】
6 基板
本発明のフィルム基板は、例えば、インクジェット等の方法により配線が形成されたポリイミドフィルム等の基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって全面または所定のパターン状(ライン状等)に塗布し、その後、当該基板を乾燥し、さらに加熱することにより、イミド化合物の膜が形成されて得られる。
【0131】
本発明のシリコンウエハー基板は、例えば、インクジェット等の方法によりシリコンウエハー等の基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって全面または所定のパターン状に塗布し、その後、当該基板を乾燥し、さらに加熱することにより、イミド化合物の膜が形成されて得られる。
【0132】
本発明で用いることができるイミド化合物の膜は、好ましくは上述したポリイミドフィルム等の基板上、あるいはシリコンウエハー基板上に形成されるが、特にこれに限定されるものではなく公知の基板上に形成することができる。
本発明に適用可能な基板としては、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、FR−5、CEM−3、又はE668等の各種規格に適合する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板、又はBTレジン基板が挙げられる。
また、本発明に適用可能な他の基板としては、例えば、銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロム、又はステンレス等の金属からなる基板(それらの金属の表面を有する基板であってもよい)や;酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネル、又はスポジュメン等のセラミックスからなる基板(それらのセラミックスの表面を有する基板であってもよい)や;PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマー、又は液晶ポリマー等の樹脂からなる基板(それらの樹脂の表面を有する基板であってもよい)や;ゲルマニウム、又はガリウム砒素等の半導体基板や;ガラス基板や;あるいは酸化スズ、酸化亜鉛、ITO、又はATO等の電極材料が表面に形成された基板や;αGEL(アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)、又はγGEL(ガンマゲル)(以上、株式会社タイカの登録商標)等のゲルシートが挙げられる。
【0133】
7 電子部品
例えば、予め配線が形成されたポリイミドフィルム等のフィルム基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布し、その後、このフィルム基板を乾燥し、さらに加熱することによって、絶縁性を有するイミド化合物の膜で被覆されたフレキシブルな電子部品が得られる。
例えば、シリコンウエハー基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布し、その後、このシリコンウエハー基板を乾燥し、さらに加熱することによって、絶縁性を有するイミド化合物の膜で被覆された半導体素子等の電子部品が得られる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0135】
実施例および比較例で用いる、モノアミン(a1)、溶媒(B)、及び添加剤の名称を略号で示す。以下の記述にはこの略号を使用する。
モノアミン(a1)
APSE:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
APMES:3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン
溶媒(B)
EDM :ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
GBL :γ−ブチロラクトン
NMP :N−メチル−2−ピロリドン
添加剤又はその原料
EP1 :エチレングリコールジグリシジルエーテル
EP2 :下記式(V”)の化合物


ODPA :3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
DDS :3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
BANI−X:N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド) (丸善石油化学株式会社製)
BANI−M:ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン (丸善石油化学株式会社製)
【0136】
実施例における各物性の測定方法は、以下の通りである。
【0137】
(i)粘度
インクジェット用インクの粘度は、25℃にて、E型粘度計(TOKYO KEIKI製 VISCONIC ELD)で測定した。インクジェット用インクの粘度の保存安定性を見るために、必要に応じて、室温(25℃)で60日保存後の粘度、冷凍(−20℃)で60日保存後の粘度を測定した。
【0138】
(ii)重量平均分子量
高分子化合物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定した。試料をジメチルホルムアミド(DMF)で試料濃度が約1重量%になるように希釈し、GPC装置として日本分光株式会社製、JASCO GULLIVER 1500 (インテリジェント示差屈折率計 RI−1530)を用いて、上記希釈液を展開剤としてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。カラムは、Shodex Asahipak GF−510 HQおよびShodex Asahipak GF−310 HQの2本をこの順序に接続して使用し、カラム温度40℃、流速1.0ml/minの条件で測定した。
【0139】
(iii)ライン幅、エッジの直線性
株式会社キーエンス製のカラーレーザー顕微鏡VK8710で観察した。
ライン幅は、装置に付属している解析ソフトを用いて測定した。また、エッジの直線性は、目視で確認した。
【0140】
(iv)膜厚
KLA−Tencor Japan株式会社製の触針式膜厚計αステップ200を使用し、3箇所の測定値の平均値を膜厚とした。
【0141】
(v) 体積抵抗率、誘電率、耐電圧
スピンコートによりクロム基板上にインクを塗布し、所定の条件(所定の温度、時間)で乾燥させ、さらにオーブンに入れて所定の条件(所定の温度、時間)で加熱した。その後、イミド化合物の膜上にアルミニウムを蒸着させ電極を作成した(イミド化合物の膜厚:2μm)。
誘電率は、プレシジョンLCRメーター E4980A(Agilent Technologies社製)を用いて測定した。体積抵抗率および耐電圧は、ディジタル超絶縁/微少電流計 DSM−8104(日置電機株式会社製)を用いて測定した。
【0142】
(vi) 線膨張係数
インクジェット用インクを基材(アルミホイル)上にアプリケーターを用いて塗布した。ホットプレートを用いて、所定の条件で乾燥させ、さらにオーブンに入れて所定の条件で加熱し、基材の片面に製膜した。
基材からイミド化合物の膜を剥離した後、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TMA/SS6100)を用いて、熱線膨張係数を測定した。
測定条件を下記に示す。
試料長さ:10mm
試料幅:3mm
膜厚:100μm
昇温開始温度:30℃
昇温終了温度:300℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:空気中
線膨張係数の算出:50〜125℃(ファーストスキャン)
【0143】
(vii) 5%重量減温度
5%重量減温度は、線膨張係数測定用の試料片を用いて、示差熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメント社製、SSC5200)で測定した。
測定条件を下記に示す。
試料重量:5mg
膜厚:100μm
昇温開始温度:30℃
昇温終了温度:500℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:空気中
【0144】
(viii) 折り曲げ試験
インクジェット用インクを基材(東レデュポン株式会社製カプトン200H(厚さ50μm))上にアプリケーターを用いて塗布した。ホットプレートを用いて、所定の条件で乾燥させ、さらにオーブンに入れて所定の条件で加熱し、基材の片面に製膜した(イミド化合物の膜厚:15μm)。基材のTD方向(Transverse direction)が試験試料の長さ方向となるように、幅1.5cm、長さ13cmに裁断し、試験試料を作成した。
試験試料は、耐折性試験機(株式会社東洋精機製作所製、MIT−DA)を用いて、折り曲げ面の曲率半径0.38mm、折り曲げ角135°、張力4.9Nとし、毎分175回の速度で折り曲げをおこない、所定回数でのクラックの有無を観察した。
【0145】
(ix) 反り試験
40×40mm基材(東レデュポン株式会社製カプトン200H(厚さ50μm))の中央部30×30mmを残し、接着剤付のPIテープを用いてガラス基板(50×50mm)上に固定する。スピンコートにより基材上にインクを塗布し、所定の条件で乾燥させ、15分放冷後PIテープを剥して1時間静置した。さらに基材をオーブンに入れて所定の条件で加熱した後、放冷した(イミド化合物の膜厚:10μm)。基材を平坦面上に置き、平坦面からの4隅のそり高さを測定し、その平均値を反り量とした。
【0146】
[実施例1] インクジェット用インク(1)
反応容器に、無水フタル酸(4.2105g)、APSE(6.2919g)およびテトラエトキシシラン(4.5124g)を仕込み、180℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をインクジェット用インク(1)とした。インク中の固形分濃度は70重量%であり、インクの粘度は18.5mPa・sであった。
【0147】
インクジェット用インク(1)をインクジェット用インクとして使用し、インクジェット塗布装置DMP−2831(FUJIFILM Dimatix社製)で1.5mm厚のガラス板上に1ドット幅でドットピッチ25μmに設定し、長さ5cmのライン塗布を常温(25℃)で行った。インクジェットヘッドのヒーターを50℃に設定し、ピエゾ電圧は20V、駆動周波数は5kHzとした。次に、基板を130℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで30分間加熱し、ライン状に形成された絶縁性のイミド化合物の膜を得た。
【0148】
得られたイミド化合物の膜のライン幅、エッジの直線性を光学顕微鏡で観察し、さらに膜厚を測定した。得られたイミド化合物の膜のライン幅は160μmであり、エッジの直線性はギザギザしておらず良好であった。また、得られたイミド化合物の膜のラインの膜厚は9.1μmであった。
【0149】
得られたインクの特性(粘度、粘度の保存安定性)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、5%重量減温度、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、130℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで30分間加熱して作製した。
【0150】
【表1】

【0151】
[実施例2] インクジェット用インク(2)
反応容器に、無水こはく酸(3.2718g)、APSE(7.2324g)およびテトラエトキシシラン(4.5024g)を仕込み、180℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をインクジェット用インク(2)とした。インク中の固形分濃度は70重量%であり、インクの粘度は24.9mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法で、ライン塗布及びイミド化合物を膜製した後、得られたイミド化合物の膜のライン幅、エッジの直線性及びラインの膜厚の評価を行った。得られたイミド化合物の膜のライン幅は110μmであり、エッジの直線性はギザギザしておらず良好であった。また、得られたイミド化合物の膜のラインの膜厚は10.2μmであった。
【0152】
得られたインクの特性(粘度、粘度の保存安定性)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、線膨張係数、5%重量減温度)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、130℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで30分間加熱して作製した。
【0153】
【表2】

【0154】
[実施例3] インクジェット用インク(3)
反応容器に、無水シトラコン酸(2.3652g)、APSE(4.6484g)およびテトラエトキシシラン(3.0050g)を仕込み、180℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をインクジェット用インク(3)とした。インク中の固形分濃度は70重量%であり、インクの粘度は9.9mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
【0155】
得られたインクの特性(粘度)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、5%重量減温度)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、130℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで30分間加熱して作製した。
【0156】
【表3】

【0157】
[実施例4] インクジェット用インク(4)
反応容器に、無水シトラコン酸(2.7098g)、APSE(5.3224g)およびテトラエトキシシラン(2.0035g)を仕込み、180℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をインクジェット用インク(4)とした。インク中の固形分濃度は80重量%であり、インクの粘度は17.4mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
【0158】
得られたインクの特性(粘度、粘度の保存安定性)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、5%重量減温度、折り曲げ試験、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、130℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで30分間加熱して作製した。
【0159】
【表4】

【0160】
[実施例5] インクジェット用インク(5)
実施例4で得られたインクジェット用インク(4)(5.0g)にエポキシ化合物としてEP1(0.8g)、EDM(1.055g)を加えた溶液をインクジェット用インク(5)とした。インク中の固形分濃度は70重量%であり、インクの粘度は10.2mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
得られたインクの特性(粘度、粘度の保存安定性)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、線膨張係数、5%重量減温度、折り曲げ試験、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、120℃のホットプレートで20分間乾燥した後、160℃のオーブンで30分間加熱して作製した。
【0161】
【表5】

【0162】
[実施例6] インクジェット用インク(6)
反応容器に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(15.49g)、ODPA(20.68g)およびEDM(36.17g)を仕込み、115℃で4.5時間加熱攪拌した。反応後の反応溶液をEP2のEDM50重量%溶液とした。
実施例4で得られたインクジェット用インク(4)(5.0g)にエポキシ化合物としてEP2のEDM50重量%溶液(1.6g)およびEDM(3.0g)を加えた溶液をインクジェット用インク(6)とした。インク中の固形分濃度は50重量%であり、インクの粘度は7.8mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
得られたインクの特性(粘度、粘度の保存安定性)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、線膨張係数、5%重量減温度、折り曲げ試験、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、120℃のホットプレートで5分間乾燥した後、160℃のオーブンで30分間加熱して作製した。
【0163】
【表6】

【0164】
[実施例7] インクジェット用インク(7)
反応容器に、無水こはく酸(8.764g)、APSE(19.300g)およびEDM(12.027g)を仕込み、165℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をイミド化合物溶液(1)とした。溶液中の固形分濃度は70重量%であり、溶液の粘度は23.1mPa・sであった。
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた300mlの四つ口フラスコに、以下に示すとおりに原料を仕込み、乾燥窒素気流下室温で22時間攪拌したところ、淡黄色透明なポリアミド酸の12重量%溶液を得た。この溶液の粘度は1198mPa・sであり、GPCで測定した重量平均分子量は124,600であった
ODPA 10.34g
BAPP 13.67g
GBL 88.01g
EDM 87.99g
この溶液の内、10.01gを反応容器にとりわけ、これにGBL 5.002gおよびEDM 5.001gを加えて攪拌したポリアミド酸溶液を高分子化合物溶液(1)とした。溶液中の固形分濃度は6重量%であり、溶液の粘度は34.2mPa・sであった。
イミド化合物溶液(1)(3.504g)に高分子化合物溶液(1)(1.505g)を加えた溶液をインクジェット用インク(7)とした。インク中の固形分濃度は50.8重量%であり、インクの粘度は13.5mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
得られたインクの特性(粘度)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、線膨張係数、5%重量減温度、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、180℃のオーブンで60分間加熱して作製した。
【0165】
【表7】

【0166】
[実施例8] インクジェット用インク(8)
反応容器に、無水シトラコン酸(2.3652g)、APSE(4.6484g)およびEDM(3.0050g)を仕込み、150℃で3時間還流した。反応後の反応溶液をイミド化合物溶液(2)とした。溶液中の固形分濃度は70重量%であり、溶液の粘度は13.1mPa・sであった。
イミド化合物溶液(2)(2.510g)に実施例7で得られた高分子化合物溶液(1)(2.200g)を加えた溶液をインクジェット用インク(8)とした。インク中の固形分濃度は40重量%であり、インクの粘度は9.9mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
得られたインクの特性(粘度)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、5%重量減温度、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、180℃のオーブンで60分間加熱して作製した。
【0167】
【表8】

【0168】
[実施例9] インクジェット用インク(9)
反応容器に、無水こはく酸(31.34g)、APSE(34.68g)、APMES(29.97g)およびEDM(24.02g)を仕込み、175℃で3時間還流して黄色透明溶液を得た。この溶液(27.61g)にエポキシ化合物としてEP2(5.52g)、EDM(3.31g)およびGBL(4.05g)を加えた溶液をインクジェット用インク(9)とした。インク中の固形分濃度は60重量%であり、インクの粘度は20.17mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
【0169】
得られたインクの特性(粘度)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、5%重量減温度、折り曲げ試験、反り試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、80℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで60分間加熱して作製した。
【0170】
【表9】

【0171】
[実施例10] インクジェット用インク(10)
反応容器に、無水トリメリット酸(11.359g)、APSE(9.814g)およびAPMES(2.827g)を仕込み、135℃で3時間還流して黄色透明溶液を得た。この溶液(9.10326g)にエポキシ化合物としてEP1(1.551g)およびEDM(7.010g)を加えた溶液をインクジェット用インク(10)とした。インク中の固形分濃度は50重量%であり、インクの粘度は41.0mPa・sであった。
次に、このインクを用いて、実施例1と同様の方法でライン塗布及びイミド化合物の膜を作製したところ、実施例1と同様にライン状イミド化合物の膜が得られた。
【0172】
得られたインクの特性(粘度)およびインクを用いて得られるイミド化合物の膜の特性(体積抵抗率、誘電率、耐電圧、5%重量減温度、折り曲げ試験)を評価した。評価結果を以下に示す。
なお、イミド化合物の膜は、80℃のオーブンで30分間乾燥した後、180℃のオーブンで60分間加熱して作製した。
【0173】
【表10】

【0174】
[比較例1]インクジェット用インク(C1)
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、以下に示すとおりに原料を仕込み、乾燥窒素気流下40℃で10時間攪拌した後、70℃に昇温して8時間攪拌し、黄色透明なポリアミド酸の8重量%溶液を得た。この溶液をそのままインクジェット用インク(C1)とした。
ODPA 20.0g
DDS 16.0g
NMP 414.0g
【0175】
このインクジェット用インク(C1)の粘度を実施例1と同じ条件で測定した。その結果、粘度は9.1mPa・s(25℃)であった。また、インクジェット用インク(C1)では、溶媒としてEDMを使用すると反応生成物が析出するため、NMPを使用した。GPCで測定した重量平均分子量は25,000であった。
【0176】
次に、このインク(C1)を用いて、実施例1と同様の方法で、ライン塗布及びイミド化合物の膜を作製した後、得られたイミド化合物の膜のライン幅、エッジの直線性及びラインの膜厚の評価を行った。
その結果、イミド化合物の膜のライン幅は610〜680μmとなり、塗布したときの幅より大幅に広がってしまった。また、エッジの直線性も不十分でギザギザがあった。さらに、ラインの膜厚は0.4μmであり、十分な厚さが得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明の活用法として、例えば、フレキシブル配線基板用絶縁膜、半導体素子用絶縁膜、およびそれらを用いた電子部品等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指摘
モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを用いて得られるイミド化合物(A)と、溶媒(B)とを含む、インクジェット用インク。
【請求項2】
イミド化合物(A)が、式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のインクジェット用インク。


式(1)中、Rは炭素数1〜100の二価の有機基であり、Rは炭素数1〜100の一価の有機基である。
【請求項3】
モノアミン(a1)が、式(2)で表され、酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、式(3)で表される、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。


式(2)中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1〜100の一価の有機基であり、Yは炭素数1〜20の二価の有機基であり、式(3)中、Rは炭素数1〜100の二価の有機基である。
【請求項4】
イミド化合物(A)の含有量が、インクジェット用インク全重量に対して、5〜95重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
モノアミン(a1)が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシランおよびm−アミノフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選ばれる1以上であり、
酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、無水フタル酸、無水トリメリット酸、3−メチルフタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、こはく酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン1,2−ジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、アリルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルナジック酸無水物、ブチルこはく酸無水物、n−オクチルこはく酸無水物、デシルこはく酸無水物、ドデシルこはく酸無水物、テトラデシルこはく酸無水物、ヘキサデシルこはく酸無水物、オクタデシルこはく酸無水物、2−ブテン−1−イルこはく酸無水物、2−ヘキセン−1−イルこはく酸無水物、n−オクテニルこはく酸無水物、n−デセニルこはく酸無水物、2−ドデセン−1−イルこはく酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、ヘキサデセニルこはく酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、p−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、p−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、トリメトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドおよびトリエトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドからなる群から選ばれる1以上である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
モノアミン(a1)と酸無水物基を1つ有する化合物(a2)とを反応溶媒中で反応させた後、140〜230℃で1.5〜10時間還流して得られるイミド化合物(A)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
インクジェット吐出温度時のインクの粘度が5〜30mPa・sである請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
インクジェット用インクの表面張力が20〜45mN/mである請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
溶媒(B)が、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランおよびジフェニルジエトキシシランからなる群から選ばれる1以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
溶媒(B)の含有量が、インクジェット用インク全重量に対して、5〜95重量%である請求項9に記載のインクジェット用インク。
【請求項11】
溶媒(B)の含有量が、インクジェット用インク全重量に対して、15〜70重量%である請求項9に記載のインクジェット用インク。
【請求項12】
溶媒(B)全重量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1以上の溶媒が0〜20重量%である、請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項13】
溶媒(B)全重量に対して、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムおよびカルバミド酸エステルからなる群から選ばれる1以上の溶媒の含有量が0重量%である、請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項14】
モノアミン(a1)が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、
酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、無水フタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、シトラコン酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、およびアリルナジック酸無水物からなる群から選ばれる1以上であり、
溶媒(B)が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルである、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項15】
モノアミン(a1)が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、
酸無水物基を1つ有する化合物(a2)が、無水フタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、シトラコン酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、およびアリルナジック酸無水物からなる群から選ばれる1以上であり、
溶媒(B)が、テトラエトキシシランである、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項16】
さらに、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、シリコン化合物、エポキシ化合物、アクリル化合物、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、及びエポキシ硬化剤からなる群から選ばれる1以上を含む、請求項1〜15のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項17】
高分子化合物が、少なくとも、ジアミン(a3)と酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)とを用いて得られ、式(4)で表される構成単位を有する、ポリアミド酸またはそのイミド化重合体である、請求項16に記載のインクジェット用インク。


式(4)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rは炭素数2〜100の二価の有機基である。
【請求項18】
ジアミン(a3)が、式(5)で表されるジアミンであり、酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)が、式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物、及び、酸無水物基を有するモノマーと他の重合性モノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1以上である、請求項17に記載のインクジェット用インク。







式(5)中、Rは炭素数2〜100の二価の有機基であり、式(6)中、Rは炭素数2〜100の四価の有機基である。
【請求項19】
式(5)で表されるジアミン(a3)が、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ベンジジン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン及び式(7)で表される化合物からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項18に記載のインクジェット用インク。


式(7)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル又はフェニルであり、Rはそれぞれ独立してメチレン、フェニレン又はアルキルで置き換えられたフェニレンであり、xはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。
【請求項20】
式(6)で表される酸無水物基を2つ以上有する化合物(a4)が、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物及びブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項18に記載のインクジェット用インク。
【請求項21】
高分子化合物が、重量平均分子量30,000〜500,000のポリアミド酸またはそのイミド化重合体である、請求項17〜20のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項22】
エポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキシランを有するモノマーの重合体、及び、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項16に記載のインクジェット用インク。
【請求項23】
エポキシ化合物が、式(I)〜(V)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項16に記載のインクジェット用インク。

式(V)中、Rcは炭素数2〜100の四価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の二価の有機基であり、Reは式(VI)〜(VIII)からなる群から選ばれる一価の有機基である。

式(VI)中、Rfは水素又は炭素数1〜3のアルキルである。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載のインクジェット用インクから得られる、イミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれかに記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布して膜を形成した後、膜を硬化処理して得られる、イミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれかに記載のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布して膜を形成する工程、及び、膜を硬化処理する工程を含む、イミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜の形成方法。
【請求項27】
請求項24又は25に記載のイミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜が基板上に形成されたフィルム基板。
【請求項28】
請求項27に記載のフィルム基板を有する電子部品。
【請求項29】
請求項24又は25に記載のイミド化合物の膜またはパターン状のイミド化合物の膜が基板上に形成されたシリコンウエハー基板。
【請求項30】
請求項29に記載のシリコンウエハー基板を有する電子部品。

【公開番号】特開2010−189631(P2010−189631A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8636(P2010−8636)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】