説明

インバータ装置

【課題】チョッパ用インダクタを使わないチョッパ回路を形成し、それを併用した安価なインバータ装置を提供する。
【解決手段】主スイッチング回路30はそのオン期間の間に平滑用コンデンサ61電圧を副スイッチング素子40へ順方向に印加する平滑用コンデンサ側スイッチング素子31を含み、かつ整流電源10電圧を副スイッチング素子40へ順方向に印加する整流電源側スイッチング素子32を含む。平滑用コンデンサ側スイッチング素子31と逆並列に接続する主フライホイールダイオード51を備える。副スイッチング素子40と逆並列に接続する副フライホイールダイオード52を備える。整流電源側スイッチング素子32をそのターンオンにより平滑用コンデンサ側スイッチング素子31をターンオフさせるように該平滑用コンデンサ側スイッチング素子31へ接続する。整流電源側スイッチング素子32をチョッパ用スイッチング素子とし、誘導性負荷90をチョッパ用インダクタとするチョッパ回路を併用する。専用のチョッパ用インダクタを使わない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は交流電源電圧を整流する整流電源を含み、平滑用コンデンサを含み、誘導性負荷を含むハーフブリッジ形のインバータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】整流電源電圧を平滑する平滑用コンデンサを用いると整流電源の力率が低下する。そこで整流電源とチョッパ用インダクタとチョッパ用スイッチング素子を含むチョッパ回路を設け、チョッパ回路の出力で平滑用コンデンサを充電し、それらの後段にインバータ回路を配置する。このようにすると、高力率化する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前段にチョッパ回路を配置する前記方式はチョッパ用インダクタを必要とする。そのために高価である。またインバータ動作とは無関係なチョッパ用インダクタに電力損失が発生し、装置全体の効率を悪くする。本発明の主たる目的はチョッパ用インダクタを使わないチョッパ回路を形成し、それを併用した安価なインバータ装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明においては、交流電源電圧を整流する整流電源を備える。平滑用コンデンサを備える。主スイッチング回路を備える。前記主スイッチング回路と順直列に接続する副スイッチング素子を備える。前記主スイッチング回路・副スイッチング素子を交互にオンオフするように制御するスイッチング制御回路を備える。誘導性負荷を前記副スイッチング素子へ並列に接続する中間電源用コンデンサを備える。前記主スイッチング回路はそのオン期間の間に前記平滑用コンデンサ電圧を前記副スイッチング素子へ順方向に印加する平滑用コンデンサ側スイッチング素子を含み、かつ前記整流電源電圧を前記副スイッチング素子へ順方向に印加する整流電源側スイッチング素子を含む。前記平滑用コンデンサ側スイッチング素子と逆並列に接続する主フライホイールダイオードを備える。前記副スイッチング素子と逆並列に接続する副フライホイールダイオードを備える。前記整流電源側スイッチング素子をそのターンオンにより前記平滑用コンデンサ側スイッチング素子をターンオフさせるように該平滑用コンデンサ側スイッチング素子へ接続する。本発明においては前記整流電源側スイッチング素子をチョッパ用スイッチング素子とし、前記誘導性負荷をチョッパ用インダクタとするチョッパ回路を併用する。専用のチョッパ用インダクタを使わない。
【0005】
【発明の実施の形態】図1・図2を用いて説明する。図1R>1・図2の本発明に係るインバータ装置は、交流電源11電圧を整流する整流電源10を備える。平滑用コンデンサ61を備える。主スイッチング回路30を備える。主スイッチング回路30と順直列に接続する副スイッチング素子40を備える。主スイッチング回路30・副スイッチング素子40を交互にオンオフするように制御するスイッチング制御回路20を備える。誘導性負荷90を副スイッチング素子40へ並列に接続する中間電源用コンデンサ62を備える。主スイッチング回路30はそのオン期間の間に平滑用コンデンサ61電圧を副スイッチング素子40へ順方向に印加する平滑用コンデンサ側スイッチング素子31を含み、かつ整流電源10電圧を副スイッチング素子40へ順方向に印加する整流電源側スイッチング素子32を含む。平滑用コンデンサ側スイッチング素子31と逆並列に接続する主フライホイールダイオード51を備える。副スイッチング素子40と逆並列に接続する副フライホイールダイオード52を備える。整流電源側スイッチング素子32をそのターンオンにより平滑用コンデンサ側スイッチング素子31をターンオフさせるように該平滑用コンデンサ側スイッチング素子31へ接続する。
【0006】本発明においては整流電源側スイッチング素子32をチョッパ用スイッチング素子とし、誘導性負荷90をチョッパ用インダクタとするチョッパ回路を併用する。専用のチョッパ用インダクタを使わない。チョッパ回路の動作は整流電源側スイッチング素子(チョッパ用スイッチング素子)32のターンオンに始まる。しかし、整流電源側スイッチング素子32がターンオンするだけでは始まらない。整流電源側スイッチング素子32がターンオンし、かつ平滑用コンデンサ側スイッチング素子31がターンオフしなければならない。チョッパ用インダクタが誘導性負荷90であるためである。平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のオン時に副スイッチング素子40に高い平滑用コンデンサ61電圧が印加する。そこに、平滑用コンデンサ61電圧よりも低い整流電源10電圧を整流電源側スイッチング素子32を介して印加することはできない。図1について補足する。整流電源10は交流電源11を含み、かつ整流用ダイオード12〜15を含む。主スイッチング回路30に属する平滑用コンデンサ側スイッチング素子31・整流電源側スイッチング素子32はトランジスタである。整流電源側スイッチング素子32がターンオンすると、平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のベース電流が引き抜かれ、平滑用コンデンサ側スイッチング素子31がターンオフする。副スイッチング素子40もトランジスタである。スイッチング制御回路20は他励のタイマ回路である。スイッチング制御回路20は図2に示す二種の信号S30・S40を出力する。210はスイッチング制御回路20に付属する補助制御回路である。信号S30は補助制御回路210を介して平滑用コンデンサ側スイッチング素子31あるいは整流電源側スイッチング素子32へ供給される。信号S40は副スイッチング素子40に供給される。19は初期充電用ダイオードである。整流電源10電圧が初期充電用ダイオード19を介して平滑用コンデンサ61に印加し、平滑用コンデンサ61を充電する。その状況下でスイッチング動作が始まる。誘導性負荷90は蛍光灯点灯回路であり、蛍光ランプ91と蛍光ランプ91に直列のバラスト用インダクタ92と蛍光ランプ91に並列の予熱用コンデンサ93を含む。よく知れれているように、それら全体は誘導性負荷として機能する。中間電源用コンデンサ62は副スイッチング素子40オン時の誘導性負荷90電圧を与える。誘導性負荷90右端・平滑用コンデンサ61上端間に図外の第3のコンデンサを接続してもよい。その場合は平滑用コンデンサ61・中間電源用コンデンサ62・前記第三コンデンサの三つとなるが、その三つのうちの一つを省略することが可能である。平滑用コンデンサ61を省略した場合の平滑用コンデンサは中間電源用コンデンサ62・前記第三コンデンサの直列回路(複合コンデンサ)となる。中間電源用コンデンサ62を省略した場合の中間電源用コンデンサは平滑用コンデンサ61・前記第三コンデンサの直列回路(複合コンデンサ)となる。平滑用コンデンサ61・前記第三コンデンサの直列回路(複合コンデンサ)は副スイッチング素子40オン時の誘導性負荷90電圧を与えるので、図1同効である。本明細書におけるコンデンサの用語は複合コンデンサを含む。
【0007】図2を併用して説明する。信号S30のオン電圧は抵抗211・212を介して平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のベースに印加し、これがターンオンする。S31はその動作を示す。一方、信号S30のオン電圧は補助制御回路210に属する抵抗213・ダイオード214・コンデンサ215・ツェナーダイオード216・抵抗217を介して整流電源側スイッチング素子32のベースに印加する。これらの素子は一種の遅延回路を構成する。このため、t1だけ遅れて整流電源側スイッチング素子32もターンオンする。整流電源側スイッチング素子32のターンオンはより正確にはターンオン可能な状態である。誘導性負荷90の左端は整流電源10正極電位よりも高い平滑用コンデンサ61正極電位に保持されているので、実際には整流電源側スイッチング素子32にすぐに電流が流れる訳ではない。しかし、整流電源側スイッチング素子32は平滑用コンデンサ側スイッチング素子31に対する信号S30のオン電圧を無効とする。S30端子→抵抗211→ダイオード218→整流電源側スイッチング素子32→S30端子の閉回路に電流が流れ、抵抗211に信号S30のオン電圧に等しい電圧効果が生ずる。そのために、平滑用コンデンサ側スイッチング素子31がターンオフする。かくして信号S30のオン電圧期間t1+t2は平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のオン期間(S31のオン期間)t1と整流電源側スイッチング素子32のオン期間(S32のオン期間)・t2に区分される。信号S30のオン電圧期間t1+t2が終了すると整流電源側スイッチング素子32がターンオフする。それ以降は副フライホイールダイオード52のオン期間t3となる。信号S40は整流電源側スイッチング素子32のターンオフ後であって副フライホイールダイオード52のターンオフ前にオン電圧に変化する。このオン電圧変化が早すぎると、整流電源側スイッチング素子32・副スイッチング素子40が同時導通し、遅すぎると誘導性負荷90電流に休止期間が生ずる。ダイオード218がないと、整流電源10電圧が平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のオン電圧として作用する。説明の便宜上、図2は副フライホイールダイオード52のオン期間t3終了の時点で信号S40がオン電圧に変化するものとして描かれている。従って、信号S40のオン電圧期間t4は副スイッチング素子40のオン期間と一致するので、わかり易い。副スイッチング素子40のオン期間t4の後に続く期間t5は主フライホイールダイオード51のオン期間である。図2は、主フライホイールダイオード51のオン期間t5の終了時点と信号s30のオン電圧変化点は一致するものとして描かれている。図3〜図7を併用してさらに説明する。
【0008】(1)図3の動作図2の平滑用コンデンサ側スイッチング素子31オン期間t1に、図3の電流it1が流れる。電流it1は誘導性負荷90電流の一部である。電流it1は平滑用コンデンサ61電圧による電流であり、安定である。たとえ整流電源10電圧(瞬時値)が低くあるいはゼロであっても、オン期間t1は誘導性負荷90電流の休止期間とはならずに、右向き誘導性負荷90電流はゼロから立ち上がる。
(2)図4の動作図2の整流電源側スイッチング素子32オン期間t2に図4の電流it2が流れる。電流it2は誘導性負荷90電流の一部である。電流it2は瞬時値が変化する整流電源10電圧に依存する電流であり、不安定である。電流it1終期値(t1終了時点の電流)がベースとなり電流it2が形成される。電流it2は整流電源10電圧(瞬時値)が低ければ減少傾向電流となり、高ければ増加傾向電流となる。期間t2の動作は一種のチョッパ動作である。整流電源10・チョッパ用スイッチング素子(整流電源側スイッチング素子32)・チョッパ用インダクタ(誘導性負荷90)でなされるチョッパ動作である。この場合の誘導性負荷90はチョッパ用インダクタ兼用形誘導性負荷90となる。この場合のチョッパ用インダクタ電流は誘導性負荷90電流そのものであり、無駄がない。
【0009】期間t2は整流電源10給電期間であり、整流電源10電圧(瞬時値)が高い場合はもとより低い場合にも給電がなされるため、整流電源10導通角が増し、力率を高める。
(3)図5の動作図2の副フライホイールダイオード52オン期間t3に図5の電流it3が流れる。
(4)図6の動作図2の副スイッチング素子40オン期間t4に図6の電流it4が流れる。
(5)図7の動作図2の主フライホイールダイオード51オン期間t5に図7の電流it5が流れる。図7の後で図3へ戻り、以下は繰り返し動作となる。これらの過程で電流it1・it2・it3・it4・it5を形成し、インバータ動作ないしはチョッパ動作を形成する。それらの電流it1・it2・it3・it4・it5は誘導性負荷90電流であり、無駄がない。図8の他の実施例について説明する。主スイッチング回路30は平滑用コンデンサ側スイッチング素子31・整流電源側スイッチング素子32を含む。スイッチング制御回路に20に補助制御回路が付属する点は図1と同じである。しかして、図1の補助制御回路210が図8の220のごとくに変化する。図1の部品符号・説明をなるべくそのまま転用し、主として図8の補助制御回路220について説明する。スイッチング制御回路20の信号S30を補助制御回路220のS30+・S30−端子に印加する。信号S40を副スイッチング素子40の信号端子S40+・S40−に印加する。信号S30のオン電圧は抵抗2211と抵抗2221・コンデンサ2231の回路を介して平滑用コンデンサ側スイッチング素子31の信号入力端子に印加する。また信号S30のオン電圧は抵抗2212と抵抗2222・コンデンサ2232の回路を介して整流電源側スイッチング素子32の信号入力端子に印加する。抵抗2212よりも抵抗2211の方が相対的に低抵抗である。このため、平滑用コンデンサ側スイッチング素子31の方が先にターンオンする。平滑用コンデンサ側スイッチング素子31がターンオンすると、ダイオード2242・平滑用コンデンサ側スイッチング素子31の回路が働いて整流電源側スイッチング素子32のターンオンを阻止する。やがてコンデンサ2231の充電が深まると、平滑用コンデンサ側スイッチング素子31がオフ傾向を示し始めターンオフする。その過程で整流電源側スイッチング素子32がターンオンする。その過程でダイオード2241・整流電源側スイッチング素子32の回路が働いて平滑用コンデンサ側スイッチング素子31にターンオフを促し、かつオフ状態に保持する。整流電源側スイッチング素子32のターンオンにより平滑用コンデンサ側スイッチング素子31をターンオフさせる点は図1同様である。信号S30によって規定される主スイッチング回路30のオン期間は平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のオン期間と、整流電源側スイッチング素子32のオン期間に区分される。主スイッチング回路30のオン期間の間に平滑用コンデンサ側スイッチング素子31・整流電源側スイッチング素子32のオンオフを繰り替えさせることも可能である。繰り替えさせると、整流電源10電圧(瞬時値)変動が希釈化され、誘導性負荷90電流は安定化する。ダイオード2241は整流電源10電圧が平滑用コンデンサ側スイッチング素子31のオン電圧として作用することを防止する。ダイオード2242は平滑用コンデンサ61電圧が整流電源側スイッチング素子32のオン電圧として作用することを防止する。
【0010】
【発明の効果】本発明はチョッパ用インダクタ兼用形誘導性負荷とするものである。これによれば、高力率・高効率形のインバータ装置が得られる。また、整流電源側スイッチング素子を利用して平滑用コンデンサ側スイッチング素子をターンオフさせる仕組みであるため、安価となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインバータ装置の回路図である。
【図2】図1の信号波形図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図3の次のステップを示す同様な動作説明図である。
【図5】図4の次のステップを示す同様な動作説明図である。
【図6】図5の次のステップを示す同様な動作説明図である。
【図7】図6の次のステップを示す同様な動作説明図である。
【図8】図1とは異なる形態の図1同様の回路図である。
【符号の説明】
10:整流電源、11:交流電源、20:スイッチング制御回路、30:主スイッチング回路、31:平滑用コンデンサ側スイッチング素子、32:整流電源側スイッチング素子、40:副スイッチング素子、51:主フライホイールダイオード、52:副フライホイールダイオード、61:平滑用コンデンサ、62:中間電源用コンデンサ、90:誘導性負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】交流電源電圧を整流する整流電源を備え、平滑用コンデンサを備え、主スイッチング回路を備え、前記主スイッチング回路と順直列に接続する副スイッチング素子を備え、前記主スイッチング回路・副スイッチング素子を交互にオンオフするように制御するスイッチング制御回路を備え、誘導性負荷を前記副スイッチング素子へ並列に接続する中間電源用コンデンサを備え、前記主スイッチング回路はそのオン期間の間に前記平滑用コンデンサ電圧を前記副スイッチング素子へ順方向に印加する平滑用コンデンサ側スイッチング素子を含みかつ前記整流電源電圧を前記副スイッチング素子へ順方向に印加する整流電源側スイッチング素子を含み、前記平滑用コンデンサ側スイッチング素子と逆並列に接続する主フライホイールダイオードを備え、前記副スイッチング素子と逆並列に接続する副フライホイールダイオードを備え、前記整流電源側スイッチング素子をそのターンオンにより前記平滑用コンデンサ側スイッチング素子をターンオフさせるように該平滑用コンデンサ側スイッチング素子へ接続したことを特徴とするインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−295866(P2000−295866A)
【公開日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−129014
【出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(000005474)日立照明株式会社 (130)
【Fターム(参考)】