説明

インバータ装置

【課題】インバータ装置の信頼性を高めると共に、梱包の開梱や電源への接続を要することなくインバータ装置に係る情報を設定したり確認することができる利便性に優れたインバータ装置を提供する。
【解決手段】本実施形態のインバータ装置は、電波を授受するアンテナと、不揮発性の第1記憶手段及び第2記憶手段と、前記第1記憶手段の記憶内容の更新を検知する比較手段とを具備する。前記第1記憶手段は、前記アンテナと電気的に接続され、当該アンテナで受信した電波をエネルギー源として動作する。前記第2記憶手段は、制御部の制御に用いられる情報であって前記第1記憶手段に予め記憶された情報に対応する情報を記憶する。前記比較手段は、前記インバータ装置の起動時において前記第1記憶手段に記憶されている情報と前記第2記憶手段に記憶されている情報とを比較することで、前記アンテナで受信した電波に含まれる情報に基づく前記第1記憶手段の記憶内容の更新を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インバータ装置は、例えば誘導電動機を可変速駆動するためのインバータ回路を備えると共にそのインバータ回路の制御や操作入力機能を実現する制御部を備えており、加速時間や減速時間、上限周波数、下限周波数等の各種のパラメータ値を設定できるようになっている。
【0003】
この点、インバータ装置の制御用電源は、当該インバータ装置内の電圧変更手段によって、商用電源から生成されるもので、例えば、商用電源電圧を整流した直流電圧でコンデンサを充電し、このコンデンサに充電された電圧をトランジスタにてオンオフ制御し、このオンオフ制御による電圧を電源トランスを介して降圧することで得られる(例えば、特許文献1参照)。こうして、制御用電源が各制御部に供給されることで、制御部は予め記憶された制御プログラムに従って動作し、メモリに記憶されたパラメータの読出しや書込み等が可能となる。
【0004】
制御用電源は、上記のようにインバータ装置内にて商用電源から生成されるため、パラメータの設定等を行う場合には、インバータ回路を駆動させる必要がなくても、インバータ本体への商用電源の接続が必要になる。従って、インバータ装置に商用電源を接続できない場合、パラメータの設定等を行うには、外部から制御用電源を別途供給することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4335208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インバータ装置に対して商用電源のみならず外部からの制御用電源も供給できない状況にあっては、インバータ制御に係るパラメータ等の情報の閲覧や設定はもちろん、当該情報の妥当性の検証も行うことができない。また、インバータ装置が梱包されている場合には、当該梱包を開梱したうえで、前記の商用電源或は制御用電源への接続作業を行う必要がある。
【0007】
そこで、インバータ装置の信頼性を高めると共に、梱包の開梱や電源への接続を要することなくインバータ装置に係る情報を設定したり確認することができる利便性に優れたインバータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のインバータ装置は、負荷を駆動するインバータ回路と当該インバータ回路を制御する制御部とを備えたものであり、電波を授受するアンテナと、不揮発性の第1記憶手段及び第2記憶手段と、前記第1記憶手段の記憶内容の更新を検知する比較手段とを具備する。前記第1記憶手段は、前記アンテナと電気的に接続され、当該アンテナで受信した電波をエネルギー源として動作する。前記第2記憶手段は、前記制御部の制御に用いられる情報であって前記第1記憶手段に予め記憶された情報に対応する情報を記憶する。前記比較手段は、前記インバータ装置の起動時において前記第1記憶手段に記憶されている情報と前記第2記憶手段に記憶されている情報とを比較することで、前記アンテナで受信した電波に含まれる情報に基づく前記第1記憶手段の記憶内容の更新を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態を示すインバータ装置の内部構造を説明するための模式図
【図2】(a)及び(b)は第1及び第2記憶手段のそれぞれの記憶領域を説明するための概念図、(c)は第1及び第2の記憶手段を単一の記憶手段で構成した場合の概念図
【図3】インバータ装置における電源投入時の処理の流れを示すフローチャート
【図4】第2実施形態を示す図3相当図
【図5】第3実施形態を示す図1相当図
【図6】図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本実施形態について図1から図3を参照して説明する。インバータ装置10は、例えば、図示しない交流電源装置から電源が与えられ、その電源(商用電源)に基づいて図示しない誘導電動機を駆動するようになっている。
【0011】
図1に模式的に示すように、インバータ装置10は、例えばMOSFETやIGBT等のスイッチング素子を3相ブリッジ接続して構成されるインバータ回路11(インバータ主回路)、インバータ回路11を制御する第1制御部12、不揮発性の記憶手段としての第1記憶手段13及び第2記憶手段14、アンテナ15等を備えている。このインバータ装置10では、第1制御部12や各記憶手段13,14等に対して、例えば5Vに降圧した制御電源を供給するための電圧変更手段16(制御用電源生成手段)を有する。即ち、電圧変更手段16により供給される制御電源は、インバータ装置10において前記商用電源に基づき生成されるもので、図1の符号16aは、その制御電源ラインを示している。
【0012】
第1制御部12は、マイクロコンピュータで構成されており、例えば、CPU、フラッシュメモリ12a(第3記憶手段)、RAM等を備えている。前記RAMは、CPUが処理を実行する場合のワークエリアとして使用される。第1制御部12には、インバータ装置10に対する各種の入力操作を行うための操作パネル部(図示せず)が接続されると共に、当該操作パネル部に設けられた表示器17(表示手段)が接続されている。
【0013】
また、第1制御部12に対して、個別の第1記憶手段13及び第2記憶手段14が接続(外付け)されている。第1記憶手段13は、例えば不揮発性の記憶手段としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)13a、図示しない制御回路、無線通信部等を備え、前記アンテナ15で受けた電波をエネルギー源として動作するように構成されている。即ち、第1記憶手段13では、図1に示すリーダ/ライタ装置18(外部処理装置)から送信された電波をアンテナ15で受信することで、前記制御電源によらずに、当該電波から電力と各種情報を得るようになっている。前記無線通信部は、アンテナ15で受信した電波に含まれるデータ信号が配線15aを介して伝達されると、そのデータ信号を元のデータに復調する処理を行う。第1記憶手段13の制御回路は、そのデータ(リーダ/ライタ装置18からの指示データ)の内容に従って、EEPROM13aの記憶内容の書込み等を行う。また、前記制御回路は、リーダ/ライタ装置18からの指示データに基づいて、EEPROM13aに保存しているデータを送信するための制御を前記無線通信部に対して行い、EEPROM13aから取出されたデータは、前記無線通信部において所定の周波数帯に変調され、配線15aを介してアンテナ15からリーダ/ライタ装置18側に送信される。尚、アンテナ15は、電波を送受信するループ状をなすもので、配線15aを介して第1記憶手段13の無線通信部に接続される。
【0014】
EEPROM13aには、例えば、製造業者により設定される製造業者設定情報、ユーザにより設定されるユーザ設定情報、製造履歴、運転履歴等、インバータ装置10に係る複数のパラメータを含む各種情報が予め記憶されている。具体的には、図2(a)の概念図に示すように、EEPROM13aには、例えば、誘導電動機の可変速駆動に係る加速時間や減速時間、上限周波数、下限周波数等の複数のパラメータの設定値が、夫々のアドレス(パラメータアドレス)と共に記憶されるパラメータ情報記憶領域131a、インバータの形式ごとに付与される(機種を識別するための)インバータ形式情報が記憶される形式情報記憶領域132a等の複数の記憶領域が設けられている。
【0015】
一方、第2記憶手段14は、例えばEEPROMからなる。この第2記憶手段14(以下、EEPROM14と称す)には、上記EEPROM13aに対応する情報を含む各種情報が予め記憶されている。具体的には、図2(b)に示すように、前記パラメータ情報記憶領域131aにおける複数のパラメータの設定値及びパラメータアドレスに一致する情報が記憶されるパラメータ情報記憶領域141、前記形式情報記憶領域132aのインバータ形式情報と一致するインバータ形式情報が記憶される形式情報記憶領域142等の複数の記憶領域が設けられている。
【0016】
尚、EEPROM13aとEEPROM14は、夫々の記憶領域が同一の記憶手段の記憶領域を分割して設定したものであってもよい。つまり、図2(c)は変更形態を示すもので、1つの不揮発性の記憶手段(例えばEEPROM50)において第1記憶領域(501、502、…)に記憶された前記複数のパラメータ、パラメータアドレス、インバータ形式情報等を、当該EEPROM50の第2記憶領域(511、512、…)に複製しておく。こうして、EEPROM13aとEEPROM14に代えて単一のEEPROM50を用いることで、安価で簡単な構成にすることができると共にコンパクトな構成にすることができる。
【0017】
次に、本実施形態の作用について図3も参照しながら説明する。図3は、インバータ装置10に電源が投入されて起動する場合に、第1制御部12により実行される処理内容を示すフローチャートである。尚、図3に示す不揮発性メモリ13aはEEPROM13aに相当し、不揮発性メモリ14はEEPROM14に相当する。
【0018】
図3に示すように、電源が投入されると、第1制御部12は、第1記憶手段13のEEPROM13aに記憶されているインバータ形式情報と、第2記憶手段としてのEEPROM14に記憶されているインバータ形式情報とを読込んで、双方のインバータ形式情報が一致するか否かを判断する(ステップS1,S2)。
【0019】
ここで、電源投入前にリーダ/ライタ装置18によりEEPROM13aの記憶内容が更新されていて、双方のインバータ形式情報が一致しない場合には(NO)、表示器17にインバータ形式情報が異なる旨を表示すると共に(ステップS3)、その表示器17の表示によりユーザにパラメータの書換えの可否を問う(ステップS4)。そして、ユーザによる前記操作パネル部を介した「書換え」の指示が無い場合(即ち、書換え不可の場合、ステップS5にてNO)、EEPROM14内の全てのパラメータに係る情報とインバータ形式情報とをEEPROM13aへ複写する(ステップS6)。この複写、つまり元の情報に戻すための上書き更新により、EEPROM13aとEEPROM14には、リーダ/ライタ装置18によるデータ更新前の同一のパラメータ、パラメータアドレス及びインバータ形式情報が保持される。
【0020】
また、前記ステップS2で、第1制御部12によりインバータ形式情報が一致すると判断された場合(YES)にも、ユーザにパラメータの書換えの可否を問い(ステップS4)、書換え不可であればEEPROM14内の全てのパラメータに係る情報とインバータ形式情報とをEEPROM13aへ複写する(ステップS6)。こうして、インバータ装置10において通常動作が行われ、第1制御部12は後述の制御プログラムに基づきEEPROM14のパラメータの値を用いて動作する。
【0021】
一方、ユーザにより前記操作パネル部を介してパラメータの「書換え」の指示がなされると(ステップS5にてYES)、第1制御部12は、同一のパラメータアドレスを持った、EEPROM13a内のパラメータとEEPROM14内のパラメータとを順次比較する(ステップS7)。これにより、異なる設定値のパラメータが検出された場合には、EEPROM13のパラメータを表示器17に表示して(ステップS8)、ユーザに当該パラメータの書換えの可否を問う(ステップS9)。この場合、当該パラメータは、書換えが指示された時点で(YES)EEPROM13aからEEPROM14へ複写され(ステップS10)、書換え不可の時には(NO)EEPROM14のパラメータがEEPROM13aへ複写される(ステップS11)。
【0022】
次いで、第1制御部12は、全てのパラメータの比較が終了していない場合(ステップS12にてNO)、以降のパラメータについても上記と同様の比較を行うと共に(ステップS13,S7)、異なる設定値のパラメータが検出される度に、ユーザの書換え指示に基づくデータの更新S8,S9,S10,S11を行う。そして、全てのパラメータの比較が終了した後に(ステップS12にてYES)、インバータ装置10において通常動作が行われる。
【0023】
上記実施形態と異なり、本来ならば、インバータ装置への電源の供給ができない状態では、記憶手段に記憶された情報の読出しや書込みはもちろん、当該情報の妥当性の検証も行うことができない。これに対し、本実施形態のインバータ装置10は、前記アンテナ15で受信した電波をエネルギー源として動作する第1記憶手段を備えることから、電源の供給ができない状態、或はインバータ装置10が梱包されている状態であっても当該梱包を開梱することなく、リーダ/ライタ装置18を用いて電波(無線)によりEEPROM13aに記憶された情報の読出しや書込みを行うことができる。
【0024】
特に、本実施形態の第1制御部12は、インバータ装置10の起動時において第1記憶手段としてのEEPROM13aに記憶されている情報と前記第2記憶手段としてのEEPROM14に記憶されている情報とを比較することで、アンテナ15で受信した電波に含まれる情報に基づくEEPROM13aの記憶内容の更新を検知する比較手段として構成されている。これによれば起動時に、第1制御部12によって、電波によるEEPROM13aの記憶内容の更新を確実に検知することができる。従って、リーダ/ライタ装置18等によりEEPROM13aに誤った情報が書込まれたとしても、不適切なデータ(パラメータの値など)が用いられることを回避することができ、インバータ装置10の信頼性を高めることができる。
【0025】
前記EEPROM13aの記憶内容の更新が検知された場合に、その更新された情報が第1制御部12の制御に反映することが可能な情報か否かを判断するための判断手段を備える。具体的には、判断手段は、その更新された情報をEEPROM14に書込んで更新するか否かを判断するものであり、第1制御部12は、前記判断手段の判断結果を参照して更新前あるいは更新後の情報に基づく制御を行う。
【0026】
これによれば、インバータ装置10の制御において対応できないデータが設定されることを判断手段により確実に回避することができ、より信頼性を高めることができる。また、本実施形態の判断手段は、第1制御部12の制御に反映するか否かをユーザにより選択可能とした選択入力手段(前記操作パネル部及び第1制御部12)である。これによれば、前記比較手段によりEEPROM13a,14間のデータの相違を検知した上で、誤データが無いことをユーザにおいて確認することができ、誤データに基づくインバータ装置10の誤動作を確実に防止することができる。
【0027】
前記比較手段によりEEPROM13aの記憶内容の更新が検知された場合に、その更新に係る情報を表示するための表示器17を備える。これによれば、EEPROM13aの記憶内容の更新を容易に把握することができ、利便性を向上させることができる。
【0028】
前記比較手段によりEEPROM13aの記憶内容の更新が検知された場合に、EEPROM13aに記憶されているパラメータのうちEEPROM14に記憶されているパラメータと異なるパラメータを表示器17に順次表示し、その表示されたパラメータごとに、前記選択入力手段によって第1制御部12の制御に反映するか否かを選択することが可能に構成されている。これによれば、異なるパラメータ毎にユーザの意思を反映させることができると共に、誤データに基づくインバータ装置10の誤動作を確実に防止することができる。
【0029】
前記比較手段は、EEPROM13aに記憶されているパラメータの設定値及びパラメータアドレスと、EEPROM14に記憶されているパラメータの設定値及びパラメータアドレスとを比較することで、前記第1記憶手段において更新されたパラメータを検知する。これによれば、EEPROM13aと14との間で、同一のパラメータアドレスを有するパラメータを比較することで、設定値の異なるパラメータを確実に検知することができる。
【0030】
前記比較手段は、EEPROM13aに記憶されているインバータ形式情報と、EEPROM14に記憶されているインバータ形式情報とを比較することで、EEPROM13aにおいて電波により更新されたインバータ形式情報を検知する。これによれば、インバータ形式情報の相違を検知することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0031】
前記第1制御部12による比較処理を、上記実施形態ではインバータ装置10の電源投入時の起動の際に行うものとしたが、当該起動後に定期的に行うようにしてもよい。また、第1制御部12による処理内容としては、前記ステップS1〜S6を省略し、前記ステップS7〜S13を実行するようにしてもよい。
【0032】
以下、図4〜図6は、他の実施形態を示すものであり、既述の部分と同一部分には同一符号を付す等して説明を省略し、異なる点につき説明する。
<第2実施形態>
第2実施形態のEEPROM14には、EEPROM13aに記憶されたパラメータに対応する情報として、当該パラメータが記憶されたアドレスの範囲(有効アドレス範囲)と、第1制御部12による適正な制御が可能なパラメータの設定値の範囲(有効設定値範囲)とが予め記憶されている。
【0033】
図4に示すように、電源が投入されると、第1制御部12は、EEPROM13aに記憶されている複数のパラメータと、EEPROM14に記憶されている前記有効アドレス範囲及び有効設定値範囲とを読込んで、双方を比較する(ステップS21,S22)。より具体的には、第1制御部12は、EEPROM13aの各パラメータについて、夫々のアドレスが前記有効アドレス範囲内に在り且つ夫々の設定値が前記有効設定値範囲内に在るかを判断する。そして、第1制御部12は、EEPROM13aの複数のパラメータの内、1つでも前記有効アドレス範囲外、又は前記有効設定値範囲外のパラメータが有ると判断した場合には(ステップS23にてNO)、表示器17にパラメータの設定異常を表示する(ステップS24)。このように、リーダ/ライタ装置18等によりEEPROM13aに不適切な情報が書込まれている場合、EEPROM14内の全てのパラメータがEEPROM13aに複写され(ステップS25)、インバータ装置10における動作が停止されることとなる。
【0034】
一方、前記ステップS23で、EEPROM13aのパラメータの全てが前記有効アドレス範囲内に在り且つ前記有効設定値範囲内に在ると判断された場合には、続いて、同一のパラメータアドレスを持ったEEPROM13a内のパラメータとEEPROM14内のパラメータとを順次比較する(ステップS26)。この比較において、全てのパラメータがEEPROM13aとEEPROM14とで一致する場合には(ステップS27にてNO)、インバータ装置10において通常動作が行われる。
【0035】
また、第1制御部12は、異なる設定値のパラメータを検出した場合には、EEPROM13のパラメータを表示器17に表示して(ステップS28)、ユーザに当該パラメータの書換えの可否を問う(ステップS29)。この場合、当該パラメータは、書換えが指示された時点で(YES)EEPROM13aからEEPROM14へ複写され(ステップS30)、書換え不可の時には(NO)EEPROM14のパラメータがEEPROM13aへ複写される(ステップS31)。
【0036】
本第2実施形態において、第1制御部12は、EEPROM13aのパラメータの設定値とEEPROM14の前記有効設定値範囲とを照合することでEEPROM13aにおいて電波により更新された前記有効設定値範囲外のパラメータを検知すると共に、EEPROM13aのパラメータのアドレスとEEPROM14の前記有効アドレス範囲とを照合することでEEPROM13aにおいて電波により更新された前記有効アドレス範囲外のパラメータを検知する。従って、第1制御部12による適正な制御ができない可能性のあるパラメータを事前に確実に検知することができる。尚、前記有効設定値範囲と前記有効アドレス範囲とのうち少なくとも一方を、EEPROM14に記憶させるようにしてもよい。
【0037】
本第2実施形態では、前記有効設定値範囲外或は前記有効設定値範囲外のパラメータが検知された場合に、EEPROM13a内の全てのパラメータに関して制御への反映を禁止するように構成したが、当該有効設定値範囲外或は当該有効設定値範囲外のパラメータに関して制御への反映を禁止するように構成してもよい。何れの構成であっても、誤データに基づくインバータ装置10の誤動作を確実に防止することができる。
【0038】
また、本第2実施形態では、前記設定値範囲外或は前記アドレス範囲外のパラメータを検知した場合には、その旨を表示器17に表示してインバータ装置10における動作が停止されることから、誤データに基づくインバータ装置10の誤動作を、より確実に防止することができる。更には、本第2実施形態の判断手段は、前記選択入力手段と第1制御部12(ステップS22、S23)とで構成されているため、双方の判断結果が相俟ってインバータ装置10の信頼性を極力高めることができる。
【0039】
尚、EEPROM13a及びEEPROM14とは異なる不揮発性の第3記憶手段(例えば、図1に示すフラッシュメモリ12a)に、その第1制御部12による適正な制御が可能なパラメータの有効設定値範囲、又はパラメータの有効アドレス範囲を記憶させてもよい。この場合、第1制御部12は、EEPROM13aのパラメータについて、夫々の設定値がフラッシュメモリ12aの前記有効設定値範囲外に在るか否か、又は夫々のアドレスがフラッシュメモリ12aの前記有効アドレス範囲外に在るか否かを判断することで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0040】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態を示すものであり、インバータ装置10´は、同図に示す複数の制御部12,20が協働して、それぞれにより実行される制御プログラムに基づきインバータ回路11を制御するようになっている。
【0041】
詳細には、EEPROM13aには、例えば、第1制御部12のCPUにより実行される第1制御部12用の第1制御プログラムと、当該プログラムのバージョン情報(例えばバージョンを識別するためのコード)と、この第1制御部12との協働が可能な第2制御部20用の第2制御プログラムのバージョン情報(例えば当該バージョンの範囲)とが記憶されている。一方、EEPROM14には、第2制御部20のCPUにより実行される第2制御部20用の第2制御プログラムが、当該プログラムのバージョン情報(例えばバージョンを識別するためのコード)と共に記憶されている。この第2制御部20には、図5に示すように、電圧変更手段16から制御電源が供給される。また、第2制御部20は、通信線21を介して第1制御部12と通信を行う。
【0042】
第1記憶手段13の前記制御部は、自身(EEPROM13a)への書込みを禁止するための書込禁止機能を有する第1書込制御手段として構成されている。即ち、第1記憶手段13は、例えば、インバータ装置10´の起動の度に書込み禁止を設定するようになっており、リーダ/ライタ装置18により新たな情報をEEPROM13aに書込む際には、予め設定された暗証コード(パスワード)と一致するパスワードの入力が必要となる。従って、リーダ/ライタ装置18を用いて電波によりパスワードを送信し、書込み禁止を解除することを条件に、EEPROM13aに記憶されている第1制御プログラムの書換えが行われる。
【0043】
上記構成において、例えば第1制御部12がマスタ、第2制御部20がスレーブとなることで、マスタ側がインバータ回路11を制御するための複数のタスクの処理を分散させるように切り分けを行い、それぞれに実行させるなどする。すると、前記のプログラムの書換えにより、第1制御部12用の第1制御プログラムと、第2制御部20用の第2制御プログラムとの間で、互いにバージョンが異なることも想定される。そこで、本第3実施形態では、図6に示す処理が行われることで、当該第1制御プログラムと予め記憶されている第2制御プログラムとが、第1制御部12と第2制御部20との協働が可能な組み合わせか否かを検知する。
【0044】
即ち、電源が投入されると、第1記憶手段13の前記制御回路は、EEPROM13aへの書込み禁止を設定する(ステップS41)。次いで、第1制御部12は、EEPROM13aに記憶されている第2制御プログラムのバージョン範囲と、EEPROM14に記憶されている第2制御プログラムのバージョンとを読出して(ステップS42,S43)、これら読出した第2制御プログラムのバージョンがそのバージョン範囲内に在るか比較する(ステップS44)。
【0045】
ここで、第1制御部12は、ステップS43で読出したバージョンがステップS42で読出したバージョン範囲内に在ると判断した場合には(ステップS45にてYES)、EEPROM13aに記憶された第1制御プログラムに基づいて通常動作を開始する(ステップS46)。一方、第1制御部12は、前記ステップS45にてNOと判断した場合、換言すれば当該第1制御部12と第2制御部20との協働が不能な組み合わせを検知した場合、その組み合わせ異常を表示器17に表示して、インバータ装置10´における動作が停止されることとなる(ステップS47)。
【0046】
上記構成によれば、両EEPROM13a,14が記憶している第2制御プログラムのバージョン情報を比較することに基づき、第1制御プログラムと第2制御プログラムとが、第1制御部12と第2制御部20との協働が可能な組み合せか否かを検知することができる。従って、インバータ装置10´の信頼性を高めることができる等、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
第1制御部12と第2制御部20との協働が不能な組み合せが検知された場合、その組み合せ異常を表示器17に表示させるため、ユーザに対してプログラムの更新による異常を起動時に報知することができる。また、第1制御部12によって第2制御プログラムのバージョンがそのバージョン範囲内に在るか否かを判断するため、利便性を向上させることができる。
【0048】
第1記憶手段13は、第1書込制御手段としてインバータ装置の起動の度に書込み禁止を設定し、予め設定されたパスワードと一致するパスワードが外部から入力されることにより書込み禁止を解除する。これによれば、リーダ/ライタ装置18等による不用意なプログラムの書換えを防止することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0050】
第1記憶手段、第2記憶手段及び第3記憶手段は、EEPROMやフラッシュメモリを備えたものに限定するものではなく、各種の不揮発性の記憶手段を用いることができる。図2(c)の如く第1記憶手段及び第2記憶手段を一体化させた1つの記憶手段を使用する場合、所謂オンチップメモリでも、外付けメモリの何れであっても良い。
【0051】
第2記憶手段への書込みを禁止するための第2書込制御手段を備えた構成としてもよい。具体的には、第1制御部12を、EEPROM13aの記憶内容にEEPROM14への書込み禁止に関する情報が含まれる場合に、EEPROM14に対する書込み禁止を設定する第2書込制御手段としてもよい。これによれば、不用意な情報の書換えを防止することができる等、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0052】
第1実施形態のインバータ形式情報と同様に、第1制御部12により実行される第1制御プログラムのバージョン情報について、EEPROM13a,14間での相違を検知するように構成してもよい。即ち、EEPROM13aに、第1制御プログラムを当該プログラムのバージョン情報と共に記憶させ、第1制御部12を、EEPROM13aに記憶されている第1制御プログラムのバージョン情報と、EEPROM14に記憶されている第1制御プログラムのバージョン情報とを比較することで、当該バージョンの相違を検知するように構成する。これによれば、不適切なプログラムの書換えに基づくインバータ装置10の誤動作を確実に防止することができる。
【0053】
第3実施形態において、インバータ装置10´に制御部が3つ以上内蔵されていても良い。前記インバータ形式情報に代えて、容量形式(例えば200V,3.7kWなど)を示すコード等を用いてもよい。
インバータ装置10,10´の駆動対象は誘導電動機に限らず、ブラシレス直流電動機やIPM(Interior Permanent Magnet)電動機等の永久磁石型電動機であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
図面中、10,10´はインバータ装置、10はインバータ回路、12は第1制御部(比較手段、判断手段、選択入力手段)、12aは第3記憶手段、13は第1記憶手段(第1書込制御手段)、14は第2記憶手段、15はアンテナ、17は表示手段、20は第2制御部、を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するインバータ回路と当該インバータ回路を制御する制御部とを備えたインバータ装置において、
電波を授受するアンテナと、
情報を記憶する不揮発性の記憶手段であって、前記アンテナと電気的に接続され、当該アンテナで受信した電波をエネルギー源として動作する第1記憶手段と、
前記制御部の制御に用いられる情報であって前記第1記憶手段に予め記憶された情報に対応する情報を記憶した不揮発性の第2記憶手段と、
前記インバータ装置の起動時において前記第1記憶手段に記憶されている情報と前記第2記憶手段に記憶されている情報とを比較することで、前記アンテナで受信した電波に含まれる情報に基づく前記第1記憶手段の記憶内容の更新を検知する比較手段と、
を具備することを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記比較手段により前記第1記憶手段の記憶内容の更新が検知された場合に、その更新された情報が前記制御部の制御に反映することが可能な情報か否かを判断するための判断手段を備え、
前記制御部は、前記判断手段の判断結果を参照して更新前あるいは更新後の情報に基づく制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記比較手段により前記第1記憶手段の記憶内容の更新が検知された場合に、その更新された情報を前記第2記憶手段に書込んで更新するか否かを判断するための判断手段を備え、
前記制御部は、前記判断手段の判断結果を参照して更新前あるいは更新後の情報に基づく制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記比較手段により前記第1記憶手段の記憶内容の更新が検知された場合に、その更新された情報を前記制御部の制御に反映するか否かをユーザにより選択可能とした選択入力手段であることを特徴とする請求項2又は3記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記比較手段により前記第1記憶手段の記憶内容の更新が検知された場合に、その更新に係る情報を表示するための表示手段を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記第1記憶手段には、インバータ装置に係る複数のパラメータが記憶され、
前記比較手段により前記第1記憶手段の記憶内容の更新が検知された場合に、前記第1記憶手段に記憶されているパラメータのうち前記第2記憶手段に記憶されているパラメータと異なるパラメータを前記表示手段に順次表示し、その表示されたパラメータごとに、前記選択入力手段によって前記制御部の制御に反映するか否かを選択することが可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記第1記憶手段には、インバータ装置に係るパラメータの設定値及び当該パラメータのアドレスが記憶され、
前記比較手段は、前記第1記憶手段に記憶されている前記パラメータの設定値及び前記アドレスと、前記第2記憶手段に記憶されている前記パラメータの設定値及び前記アドレスとを比較することで、前記第1記憶手段において更新されたパラメータを検知するように構成されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記第1記憶手段には、インバータ装置の形式に係る形式情報が記憶され、
前記比較手段は、前記第1記憶手段に記憶されている前記形式情報と、前記第2記憶手段に記憶されている前記形式情報とを比較することで、前記第1記憶手段において更新された形式情報を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記第1記憶手段には、前記制御部により実行される制御プログラムが、当該プログラムのバージョン情報と共に記憶され、
前記比較手段は、前記第1記憶手段に記憶されている制御プログラムのバージョン情報と、前記第2記憶手段に記憶されている制御プログラムのバージョン情報とを比較することで、前記第1記憶手段と前記第2記憶手段との間における当該バージョンの相違を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項10】
前記第2記憶手段には、前記制御部による適正な制御が可能なパラメータの設定値範囲、又はパラメータのアドレス範囲が記憶され、
前記比較手段は、
前記第1記憶手段に記憶されているパラメータの設定値と前記第2記憶手段に記憶されている前記設定値範囲とを照合することで前記第1記憶手段において更新された前記設定値範囲外のパラメータを検知し、
又は、前記第1記憶手段に記憶されているパラメータのアドレスと前記第2記憶手段に記憶されている前記アドレス範囲とを照合することで前記第1記憶手段において更新された前記アドレス範囲外のパラメータを検知するように構成されていることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項11】
前記第1記憶手段及び第2記憶手段とは異なる不揮発性の第3記憶手段を備え、
第3記憶手段には、前記制御部による適正な制御が可能なパラメータの設定値範囲、又はパラメータのアドレス範囲が記憶され、
前記比較手段は、
前記第1記憶手段に記憶されているパラメータの設定値と前記第3記憶手段に記憶されている前記設定値範囲とを照合することで前記第1記憶手段において更新された前記設定値範囲外のパラメータを検知し、
又は、前記第1記憶手段に記憶されているパラメータのアドレスと前記第3記憶手段に記憶されている前記アドレス範囲とを照合することで前記第1記憶手段において更新された前記アドレス範囲外のパラメータを検知するように構成されていることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記比較手段により前記設定値範囲外のパラメータが検知された場合に、前記第1記憶手段内の全てのパラメータ或は当該設定値範囲外のパラメータに関して制御への反映を禁止し、又は、前記比較手段により前記アドレス範囲外のパラメータが検知された場合に、前記第1記憶手段内の全てのパラメータ或は当該アドレス範囲外のパラメータに関して制御への反映を禁止するように構成されていることを特徴とする請求項10又は11記載のインバータ装置。
【請求項13】
前記インバータ装置は、前記制御部が複数搭載され、当該複数の制御部が協働して前記インバータ回路を制御すると共に、前記複数の制御部のそれぞれにより実行される制御プログラムを、各プログラムのバージョン情報と共に個別の記憶手段に記憶させるように構成した場合、
前記第1記憶手段には、前記複数の制御部のうちの第1制御部用の第1制御プログラムと、前記第1制御部との協働が可能な第2制御部用の第2制御プログラムのバージョン情報とが記憶され、
前記比較手段は、前記第1記憶手段に記憶されている前記第2制御プログラムのバージョン情報と前記第2記憶手段に記憶されている前記第2制御プログラムのバージョン情報とを比較することで、これら第1制御プログラムと第2制御プログラムとが、前記第1制御部と前記第2制御部との協働が可能な組み合わせか否かを検知するように構成されていることを特徴とする請求項1から12の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項14】
前記第1制御プログラム及び前記第2制御プログラムについて前記比較手段により前記第1制御部と前記第2制御部との協働が不能な組み合わせが検知された場合、その組み合わせ異常を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項13記載のインバータ装置。
【請求項15】
前記第1記憶手段と前記第2記憶手段は、夫々の記憶領域が同一の記憶手段の記憶領域を分割して設定されたものであることを特徴とする請求項1から14の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項16】
前記第1記憶手段への書込みを禁止するための第1書込制御手段を備え、
前記第1書込制御手段は、前記インバータ装置の起動の度に書込み禁止を設定し、予め設定された暗証コードと一致する暗証コードが外部から入力されることにより書込み禁止を解除することを特徴とする請求項1から15の何れかに記載のインバータ装置。
【請求項17】
前記第2記憶手段への書込みを禁止するための第2書込制御手段を備え、
前記第2書込制御手段は、前記第1記憶手段の記憶内容に前記第2記憶手段への書込み禁止に関する情報が含まれる場合に、当該第2記憶手段に対する書込み禁止を設定することを特徴とする請求項1から16の何れかに記載のインバータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−39713(P2012−39713A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176190(P2010−176190)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(302038844)東芝シュネデール・インバータ株式会社 (78)
【Fターム(参考)】