説明

インプリント装置

【課題】熱によるスタンパの寸法変化を防止され、製造コストを削減可能なインプリント装置を提供すること。
【解決手段】表面に凹凸パターンを有するスタンパ56を、基板52上に供給された紫外線硬化樹脂材料54の上に配置し、該スタンパ56の背面を流体を用いて加圧することにより該スタンパ56を押圧し、紫外線を照射することにより、前記紫外線硬化樹脂材料54を硬化させ、前記基板52の表面に前記凹凸パターンの反転凹凸パターンを形成するインプリント装置10において、前記基板52を保持する保持部材14と、前記保持部材14と対向する耐圧体12と、前記紫外線の光源20と、を有し、前記耐圧体14はその底部に導光板16を収容し、該導光板16は前記保持部材14と対向して配置されており、前記光源20から発生した紫外線は、該導光板の側面16bから入射して該導光板16の前記保持部材14側から出射し、前記紫外線硬化樹脂材料に照射されることを特徴とするインプリント装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプリント装置、特に熱によるスタンパの寸法変化が防止され、製造コストを削減可能なインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイス、ディスプレイ、電子ペーパー、記録メディア、バイオチップ、光デバイスなどの製造工程における微細パターンの形成するための技術として、ナノインプリント技術が知られている。ナノインプリント技術は、従来のプレス技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細加工の技術である。この技術自体には解像度に限界がなく、解像度はスタンパ(即ち金型)の作製精度によって決定される。したがって、高い精度のスタンパさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィーより容易に且つはるかに安価な装置を用いて、極微細構造を形成することが可能である。
【0003】
インプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱し、スタンパ(金型)により塑性変形させた後、冷却してパターンを形成する熱インプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のスタンパを樹脂に押し当て、光を照射させることで基板上の樹脂を硬化させパターンを形成するUVインプリント技術である。特にUVインプリント技術は室温にてパターン形成できるため熱による基板、スタンパ間の線膨張係数差による歪が発生しにくく、高精度のパターン形成が可能であり、半導体等のリソグラフィ技術の代替技術として注目を集めている。
【0004】
UVインプリントを行うための装置として、例えば図3に記載のインプリント装置が知られている。このインプリント装置100は、紫外線硬化樹脂材料154が供給された基板152を保持する保持部材114と、支持体116に支持された石英ガラス118と、UVランプ120とを主として有するものであり、紫外線硬化樹脂材料154上にスタンパ(金型)156を載置し、石英ガラス118、支持体116、支持体116の下部に設けられたシール材122及びシール材122に取り付けられた可撓性膜124からなるキャビティ126に、流体給排管128から空気等の流体を供給することによりスタンパ156の上面を押圧し、水銀ランプ等のUVランプ120から紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂材料154を硬化させることにより、基板152上に微細な凹凸パターンを形成するものである。流体を用いて押圧しているので、均一圧でスタンパ156を紫外線硬化樹脂材料154に押圧することができる。そのため、均一圧で押圧することが難しい大面積のインプリントに主に用いられている。
【0005】
スタンパを均一に押圧する手段としては、熱インプリントに用いる装置であるが、可撓性膜を用いずに気体で直接スタンパを押圧するインプリント装置も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−154393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に記載の装置は、UVランプ(光源)120の影響により、UVインプリント時にスタンパ156の温度が上昇してその寸法が変化し、精確な凹凸パターンを基板152上に形成することができない場合があった。これは長距離ピッチの場合や、熱の影響を受けやすい樹脂製のスタンパを使用した場合に特に問題となる。また、流体による加圧に耐え得る厚さの石英ガラス(通常、5cm以上)を用いることが必要であり、製造コストが高いという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インプリント時において、スタンパの寸法変化が防止され、製造コストを削減可能なインプリント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、表面に凹凸パターンを有するスタンパを、基板上に供給された紫外線硬化樹脂材料の上に、当該凹凸パターン表面が密着するように配置し、該スタンパの背面を流体を用いて加圧することにより該スタンパを押圧し、該押圧状態で前記紫外線硬化樹脂材料に紫外線を照射することにより、前記紫外線硬化樹脂材料を硬化させ、前記基板の表面に前記凹凸パターンの反転凹凸パターンを形成するインプリント装置において、前記基板を保持する保持部材と、前記保持部材と対向する耐圧体と、前記紫外線の光源と、を有し、前記耐圧体はその底部に導光板を収容し、該導光板は前記保持部材と対向して配置されており、前記光源から発生した紫外線は、該導光板の側面から入射して該導光板の前記保持部材側から出射し、前記紫外線硬化樹脂材料に照射されることを特徴とするインプリント装置により達成される。
【0010】
従来から一般に使用されている水銀ランプ等の光源は通常それ自体から熱が発生し、その熱がスタンパに伝達するため寸法変化の原因となっていた。本発明では、光源から発生する紫外線を導光板を介在させて照射することにより、光源から発生する熱のスタンパへの伝達を防止し、スタンパの寸法変化を防止することが可能となる。また、高価な分厚い石英ガラスを設ける必要がないため、装置の製造コストを削減することが可能となる。
【0011】
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記耐圧体と前記保持部材の少なくとも一方に冷却手段が設けられている。
温度が上昇したとしても、冷却手段によりスタンパの温度上昇を防止することができる。
(2)前記耐圧体と前記保持部材の少なくとも一方に温度計が設けられ、該温度計と前記冷却手段により温度制御を行う制御部が設けられている。
インプリント装置の温度変化を常時監視して一定温度を維持することができる。
(3)前記スタンパが樹脂製のスタンパである。
本発明は、特に熱による寸法変化が比較的大きいとされている樹脂製のスタンパを使用するインプリントに好適である。
(4)前記光源はLEDであり、該LEDは、前記導光板の側面に対向して複数設けられ
発熱が少なく、赤外線が副次的に発生しないLEDを紫外線の光源として用いれば、導光板の側面に対向させて配置することができる。そのため、スタンパの温度上昇を防止できるとともに、装置全体をコンパクトに構成することができる。
(5)前記耐圧体は、前記導光板の側面に沿って設けられた導光棒を有し、前記光源は前記耐圧体の外部に配置され、前記紫外線は、前記光源と前記導光棒とを接続する光伝導手段を介して、前記導光棒から前記導光板の側面に入射する。
【0012】
光源を耐圧体の外部に配置し、スタンパからの距離を遠ざけることにより光源から発生する熱がスタンパに伝達することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインプリント装置によれば、熱によるスタンパの温度上昇を防止し、寸法変化を抑制することができるので、基板の所定の位置に精密に微細な凹凸パターンを形成することができる。したがって、高度な寸法精度が要求される用途に好適に使用することができるインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るインプリント装置の第一の実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係るインプリント装置の第二の実施の形態を示す概略断面図である。
【図3】従来のインプリント装置を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係るインプリント装置の第一の実施の形態を示す概略断面図である。本実施の形態に係るインプリント装置10は、主として、導光板16を底部に収容した耐圧体12と、基板52を保持可能な保持部材14とから構成され、基板52上にシート状に供給された紫外線硬化樹脂材料54にスタンパ56配置した後、スタンパ56の背面(上面)を流体供給管30から供給される流体により押圧し、耐圧体12の外部に設けられた光源20から発生する紫外線を導光板16の側面16bに入射させて下面16aから出射させ、紫外線硬化樹脂材料54に照射し、基板52上に凹凸パターンを形成するものである。以下、各構成についてそれぞれ詳細に説明する。
【0016】
耐圧体12は、後述する流体による加圧に耐え得るように剛性を有する部材、例えばSUS等から構成され、その形状は略直方体状に形成されている。底部12aは導光板16を嵌め込み可能な凹部12cを有し、その凹部12cに導光板16が備えられている。この導光板16は、その下面16aが後述する膜34を介して保持部材14の上面(基板保持面)14aと対向するように設けられ、下面16aが耐圧体12の底部12aの周囲の表面(凹部12c以外の領域)と同じ高さになるように設定される。
【0017】
導光板16は、側面(入射面)16bから紫外線を入射して、下面(出射面)16aから出射させることができるものであればどのようなものでも使用することができ、その例としては、紫外線を透過するアクリル樹脂、石英ガラス等の導光板が挙げられる。導光板16の厚さは特に限定されないが、3〜5mmである。導光板16をインプリント装置10に用いることにより、スタンパ56の温度上昇が防止できるだけでなく、従来のインプリント装置に用いられていた耐圧のための分厚い石英ガラス(5cm以上)を設ける必要がないため、装置の製造コストを削減することが可能となる。
【0018】
導光板16の側面16bには、側面16bに沿うように延在して設けられた導光棒18が設けられ、導光棒18は耐圧体12の外部に配置された光源20と光ファイバー等の光伝導手段19で接続されている。光源20から光伝達手段19に伝達した紫外線は、導光棒18から出射して、導光板16の側面16bに入射し、導光板16の下面(保持部材14側の面)16aから出射する。導光棒18は、石英ガラス等の紫外線を透過する材質から構成される導光棒が用いられ、その軸方向の長さは、設置する導光板16の側面16bの長手方向の長さとほぼ同じ長さである。
【0019】
紫外線の光源20としては、超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光、LED等を挙げることができる。この中でも赤外線の発生が少ないLEDを使用することが好ましい。照射時間は、紫外線硬化性樹脂の種類、ランプの種類、照射の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。
【0020】
本実施の形態では、導光板16の下面16aに赤外線カットフィルムを設けてもよい。列挙した光源20からは副次的に赤外線も発生し得るが、導光板16に赤外線カットフィルムを設けて赤外線をカットすることにより、赤外線によりスタンパ56が温度上昇して寸法変化することを防止することができる。
【0021】
更に、本発明では、導光板16の下面16aに紫外線を拡散する拡散フィルムを設けてもよい。拡散フィルムを設けることより、導光板16から出射された紫外線を拡散させることができ、均一に紫外線硬化樹脂材料54に照射することができる。なお、拡散フィルムと赤外線カットフィルムの両方を設ける場合、その積層順序は特に限定されない。
【0022】
本発明では、導光板16の上面(耐圧体12と接触している面)は、導光板16の側面16bから入射した紫外線を、導光板16の下面16a側に向けて散乱させて下面16aから出射させる光散乱加工処理が施されていてもよい。
【0023】
本実施の形態では、紫外線は、導光板16は一方の側面16bのみから入射させているが、他方の側面側にも導光棒を設けて導光板16の両側面から入射させてもよい。これにより照度分布が良好となり、均一に紫外線硬化樹脂材料54に照射することができる。
【0024】
保持部材14は、剛性を有する材質、例えばSUS等から構成され、その形状は略直方体状に形成されている。そして、その上面14aで基板52を水平に保持している。
【0025】
耐圧体12及び保持部材14の内部には、冷却媒体が流動する冷却手段としての冷却媒体管24が設けられている。冷却媒体管24は、耐圧体12には導光板16の近傍に、保持部材14には基板保持面14aの近傍にそれぞれ設けられている。冷却媒体としては、水や油等の液体や空気や不活性ガス等の気体を用いることができる。これにより、導光板16から発熱が生じたとしても、スタンパ56の寸法変化を確実に防止することが可能となる。
【0026】
耐圧体12及び保持部材14には、それぞれの内部の温度を測定する温度計28が設けられている。温度計28は、耐圧体12には、導光板16近傍の温度を測定するように設置することが好ましく、保持部材14には、基板52を保持する面14aの近傍の温度を測定するように設置することが好ましい。また、本発明に係るインプリント装置10には、冷却手段24及び温度計28により耐圧体12及び保持部材14の温度制御を行う制御部(図示せず)が設けられている。これにより、インプリント装置10の稼働時において、常時一定温度に維持することが可能となる。
【0027】
また、耐圧体12の内部には、導光板16の外側の位置に断熱手段としての断熱材26が設けられている。断熱材26を設けることにより、装置10全体に熱が拡散することを防止することができる。断熱材26としては、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂等の発泡体やグラスウール、ロックウール等の繊維系断熱材を使用することができる。断熱材は保持部材14の内部にも設けてもよい。
【0028】
耐圧体12の下面12aの外周上にはOリングシール材等のシール材22が設けられている。シール材22には、可撓性を有する膜34が取り付けられており、これにより流体を供給するキャビティ36が形成されている。
【0029】
膜34は、紫外線を透過する材料から構成されていることが必要であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、PMMA、ポリシクロオレフィン、フッ素系樹脂等のフィルムから構成され、厚さは例えば、50μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mmの厚さに設定される。
【0030】
キャビティ36には、耐圧体12に設けられた流体給排管30から流体が供給され、キャビティ36内が加圧される構成とされている。この流体としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を用いることができる。流体によりキャビティ36内が加圧されることにより、スタンパ56の背面を均一圧で押圧することができ、押圧状態で紫外線が紫外線硬化樹脂材料54に照射される。
【0031】
図示していないが、耐圧体12と保持部材14のうち少なくとも一方を上下移動させる上下移動手段が設けられており、押圧時において、耐圧体12と保持部材14との間隔が調整される。
【0032】
本実施の形態では、スタンパ56に押圧力を付与する手段は膜34を介して流体により間接的に押圧する例を示しているが、これに限られるものではなく、特許文献1に記載のように膜を介さずに流体で直接押圧する構成としてもよい。この場合、流体には、空気や不活性ガス等の気体が用いられる。
【0033】
図2は、本発明に係るインプリント装置の第二の実施の形態を示す概略断面図である。第二の実施の形態のインプリント装置40において特徴的なことは、光源として紫外線を照射可能なLED(発光ダイオード)42を用い、導光板16の両側面16b、16cに対向配置させていることである。
【0034】
LEDはそれ自体からの発熱が極めて小さいため、耐圧体の内部に直接設けることができる。また、LEDは、副次的に赤外線が発生することもなく、赤外線がスタンパに照射されることによる温度上昇による寸法変化を防止することができる。
【0035】
LED42は導光板16の側面16b、16cに複数個対向配置されている。配置するLEDの個数は、紫外線硬化樹脂を硬化させることができる数だけあればよく、例えば、導光板16の側面16bの長手方向10cm当たり3〜9個である。LED42は紫外線を出射可能なLED42であり、その波長は、200〜400nm、好ましくは300〜400nmの範囲である。また、本実施の形態において、冷却媒体管24はLED42の近傍に、LED42を取り囲むように設けられている。冷却媒体管24は第一の実施の形態と同様に、導光板16上に更に設けてもよい。本実施の形態において説明した構成以外の構成は第一の実施の形態と同様であり、同一の符号で示している。
【0036】
各実施の形態において、基板52に所望のパターンを形成するためのスタンパ56は、紫外線透過性を有する従来から公知のスタンパを使用することができる。具体的には、例えば、石英ガラス、樹脂等を使用することができる。樹脂製のスタンパとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル等の離型性の良い樹脂で作製されたスタンパが用いられる。上述したように、本発明はインプリント装置全体の温度を一定に維持することができるので、本発明に係るインプリント装置は、熱による寸法変化が比較的大きい樹脂製のスタンパを用いるインプリントに好適である。
【0037】
本発明において、紫外線硬化樹脂材料54は、紫外線硬化性樹脂と光重合開始剤を含む。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、エポキシ樹脂、イミド系オリゴマー、ポリエン・チオール系オリゴマー等が挙げられる。
【0038】
ウレタンアクリレートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類とポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)トリオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA等のポリオール類と2−ヒドロキシエチルアクリレート2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレート類とを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基とウレタン結合を有するものである。
【0039】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、無水フタル酸とプロピレンオキサイドとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、トリメリット酸とジエチレングリコールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
エポキシアクリレートは、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物とアクリル酸又はメタクリル酸との反応により合成されたものであり、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールSとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシアクリレート、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシアクリレート、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0041】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物や臭素化物等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が好ましく、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α−α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体;ハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキシド、アシルフォスフォナート、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、鉄−アレン錯体化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、オニウム塩、ピリジニウム塩、アルミニウム錯体/シラノール塩、トリクロロメチルトリアジン誘導体等が挙げられる。上記オニウム塩やピリジニウム塩の対アニオンとしては、例えば、SbF6−、PF6−、AsF6−、BF4−、テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート、トリフルオロメタンスルフォネート、メタンスルフォネート、トリフルオロアセテート、アセテート、スルフォネート、トシレート、ナイトレート等が挙げられる。
【0043】
光重合開始剤の添加量は、一般に紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部であり、好ましくは、0.5〜10重量部である。
【0044】
以下、本発明のインプリント装置によりインプリントを行う過程について説明する。
【0045】
まず、基板52に紫外線硬化樹脂54をシート状に塗布し、次いで紫外線硬化樹脂54上にスタンパ(テンプレート)56を配置する。この際、精確な位置合わせが必要な場合には、適宜アライメントを行う。
【0046】
次に、この積層体を保持部材14の所定の位置に配置した後、耐圧体12と保持部材14との間隔を上下移動手段で調節し、シール材22が可撓性膜22を介して保持部材14の上面(基板保持面)14aと密着した状態とする。その後、流体給排管30から流体を供給し、キャビティ36内を加圧(例えば、1〜50bar)することにより、スタンパ56を紫外線硬化樹脂材料54に押圧する。この押圧状態で、紫外線を光源20(図1)又はLED42(図2)から導光板16を介して照射して紫外線硬化樹脂材料54を硬化させた後、耐圧体12と保持部材14を引き離す。これにより、基板52上に微細な凹凸パターンを形成することができるが、この動作中に、上述した温度計28、冷却媒体管24及び制御部(図示せず)により、耐圧体12及び保持部材14の温度制御を行うことが好ましい。温度制御により設定する温度は、スタンパ56の寸法が変化しない温度、特に、スタンパの設定温度の±5℃、好ましくは±1℃、特に好ましくは±0.5℃の範囲で設定することが好ましい。これにより、寸法変化を確実に防止することができ、所望とする凹凸パターンを高精度で形成することが可能となる。ここで、スタンパの設定温度とは、スタンパの作製において設定される、所望の寸法を示す温度のことをいい、例えば、設定温度が23℃のスタンパを使用する場合は、22〜24℃、好ましくは22.5〜23.5℃の温度となるように温度制御を行う。スタンパの設定温度は、通常1〜30℃、特に20〜25℃の範囲内の温度に設定される。
【0047】
本発明は上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のインプリント装置を用いれば、高品質な電子ディスプレイ、電子ペーパー等の情報表示用パネルの隔壁や電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)等を有利に得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 インプリント装置
12 耐圧体
14 保持部材
16 導光板
18 導光棒
19 光伝達手段
20 光源
22 シール材
24 冷却媒体管
26 断熱材
28 温度計
30 流体配給管
34 膜
36 キャビティ
40 インプリント装置
42 LED
52 基板
54 紫外線硬化樹脂材料
56 スタンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸パターンを有するスタンパを、基板上に供給された紫外線硬化樹脂材料の上に、当該凹凸パターン表面が密着するように配置し、該スタンパの背面を流体を用いて加圧することにより該スタンパを押圧し、該押圧状態で前記紫外線硬化樹脂材料に紫外線を照射することにより、前記紫外線硬化樹脂材料を硬化させ、前記基板の表面に前記凹凸パターンの反転凹凸パターンを形成するインプリント装置において、
前記基板を保持する保持部材と、前記保持部材と対向する耐圧体と、前記紫外線の光源と、を有し、
前記耐圧体はその底部に導光板を収容し、該導光板は前記保持部材と対向して配置されており、
前記光源から発生した紫外線は、該導光板の側面から入射して該導光板の前記保持部材側から出射し、前記紫外線硬化樹脂材料に照射されることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記耐圧体と前記保持部材の少なくとも一方に冷却手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記耐圧体と前記保持部材の少なくとも一方に温度計が設けられ、
該温度計と前記冷却手段により温度制御を行う制御部が設けられたことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記スタンパが樹脂製のスタンパであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記光源はLEDであり、
該LEDは、前記導光板の側面に対向して複数設けられたことを特徴とする請求項1〜4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記耐圧体は、前記導光板の側面に沿って設けられた導光棒を有し、
前記光源は前記耐圧体の外部に配置され、
前記紫外線は、前記光源と前記導光棒とを接続する光伝導手段を介して、前記導光棒から前記導光板の側面に入射することを特徴とする請求項1〜4に記載のインプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169498(P2012−169498A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30190(P2011−30190)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】