説明

ウォーム軸の変位量検出方法

【課題】電動弁の入力トルクに対応して軸方向へ変位するウォーム軸の変位量を、簡易な手法で且つ高精度に検出するウォーム軸の変位量検出方法を提案する。
【解決手段】ウォーム軸21の軸方向変位に追従して回転する回転軸71の端面の中心位置に取り付けられた磁石72と、該回転軸71の端面中心位置から径方向へ離間した位置に配置した磁場センサ73を用い、ウォーム軸21の軸方向変位に追従して回転軸71が回転するとき、該回転軸71の回転に伴う磁場センサの感知信号の大きさの変化に基づいて回転軸71の回転角を取得し、該回転角に対応するウォーム軸21の変位量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電動弁に備えられ該電動弁への入力トルクに応じて軸方向へ変位するウォーム軸の変位量を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動弁においては、モータからの駆動力を、ウォーム及びこれに噛合するウォームホイールを介して弁棒に伝達し、該弁棒の軸方向への移動によって弁体を開閉するようになっている。さらに、ウォームはこれと一体化されたウォーム軸とともにその軸方向へ変位可能に構成され、該ウォーム軸の軸端側には該ウォーム軸の軸方向への変位力を受けて圧縮変位するスプリングカートリッジが備えられている。このスプリングカートリッジによって、弁棒側への伝達トルクが調整され、トルクスイッチとの共働によって過大トルクによる弁体等の損傷が未然に防止されるようになっている。
【0003】
ここで、上記ウォーム軸の軸方向への変位量は上記スプリングカートリッジの圧縮量に対応し、さらにこのスプリングカートリッジの圧縮量は弁棒に作用するトルクに対応する。従って、ウォーム軸の軸方向への変位量を検出できれば、この検出値に基づいて弁棒への入力トルクを知ることができる。
【0004】
ところで、電動弁における弁棒への入力トルクは、電動弁の作動に関する各種診断を行う場合において重要な要素の一つであり、この入力トルクをウォーム軸の変位量に基づいて検出できれば好都合であり、係る観点からウォーム軸の軸方向への変位量の検出手法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0005】
特許文献1に示されるウォーム軸の変位量の検出手法は、回転角センサを用いた手法であって、ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転するトルクスイッチスイッチシャフトに、回転角センサとして機能するポテンショメータを取付け、該ポテンショメータによってトルクスイッチスイッチシャフトの回転角を検出し、この回転角の検出値に基づいてウォーム軸の変位量を取得するものである。
【0006】
特許文献2に示されるウォーム軸の変位量の検出手法は、スプリングカートリッジの軸方向外方にレーザセンサを離間配置し、ウォーム軸と一体的に軸方向へ変位する部材に設定した測定点の位置を上記レーザセンサによって測定することで該ウォーム軸の軸方向への変位量を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−307033号公報。
【特許文献2】特開2005−188609号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に示されるようなポテンショメータで構成される回転角センサを用いたウォーム軸の軸方向変位量の検出手法によれば、トルクスイッチ近傍は多くのケーブルが入り組んで配置されていることから、この部位へのポテンショメータの取付けは難しく、多くの組付け作業工数を必要とする。また、ポテンショメータは、トルクスイッチスイッチシャフトに接触してその回転を受けるものであることから、該ポテンショメータの作動抵抗によってトルクスイッチの作動特性が変化するとか、接触状態の変化等の外乱要因によって検出精度が損なわれる等のことが懸念される。
【0009】
また、特許文献2に示されるようなレーザセンサを用いたウォーム軸の軸方向変位量の検出手法によれば、レーザ光の反射を利用して測距し、その距離の変化に基づいてウォーム軸の軸方向の変位量を検出するものであることから、反射光の適正な受光を確保する必要上、レーザセンサの配置作業が煩雑になるとか、測定点の汚れ程度によって検出精度が左右される、等の問題があった。
【0010】
そこで本願発明は、電動弁の入力トルクに対応して軸方向へ変位するウォーム軸の変位量を、非接触式の簡易な手法で且つ高精度に検出し得るようにしたウォーム軸の変位量検出方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として以下のような特有の構成を採用している。
【0012】
本願の第1の発明では、電動弁の入力トルクに対応して軸方向へ変位するウォーム軸の変位量を検出する変位量検出方法であって、上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸の端面の中心位置に取り付けられた磁石と、該回転軸の端面中心位置から径方向へ離間した位置に配置した磁場センサを用い、上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して上記回転軸が回転するとき、該回転軸の回転に伴う上記磁場センサの感知信号の変化に基づいて上記回転軸の回転角を取得し、該回転角に対応するウォーム軸の変位量を検出することを特徴としている。
【0013】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る電動弁におけるウォーム軸の変位量検出方法おいて、上記磁場センサを、アモルファス素子を用いた磁場センサで構成したことを特徴としている。
【0014】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る電動弁におけるウォーム軸の変位量検出方法において、上記回転軸を、トルクスイッチに備えられ上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸で構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願各発明では以下のような効果が得られる。
【0016】
(1) 本願の第1の発明に係るウォーム軸の変位量検出方法は、ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸の端面の中心位置に取り付けられた磁石と、該回転軸の端面中心位置から径方向へ離間した位置に配置した磁場センサを用い、上記回転軸の回転に伴う上記磁場センサの感知信号の大きさの変化に基づいて取得される上記回転軸の回転角からウォーム軸の変位量を検出するものである。従って、このウォーム軸の変位量検出方法によれば、
(a)ウォーム軸に接触することなく、非接触状態でウォーム軸の軸方向への変位量を検出するものであることから、接触式の変位量検出方法のような接触状態の変化等の外乱要因によって検出精度が損なわれるということがなく、高い検出精度が確保される、
(b)上記磁石からの磁力線を上記磁場センサで感知する構成であって、該磁場センサの取付作業における位置設定については、例えば、反射光を受光するレーザセンサを用いる場合ほどの厳密性は要求されないことから、磁場センサの取付作業が簡易となり、延いては作業コストの低廉化が図れるとともに、ウォーム軸の汚れ等の外乱要因によって検出精度が左右されることがなく検出精度の安定化及び信頼性が確保される、
等の効果が得られる。
【0017】
(2) 本願の第2の発明に係るウォーム軸の変位量検出方法によれば、上記(1)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記磁場センサを、アモルファス素子を用いた磁場センサで構成しているので、このアモルファス素子の特性、即ち、外部磁界としての上記磁石が上記回転軸と一体的に回転し、該磁石の磁力線に対する上記磁場センサの方向が変化すると、該磁場センサのインピーダンスが敏感に変化するという特性から、この敏感に変化するインピーダンス(即ち、磁気信号の変化)を感知することで、ウォーム軸の変位量検出が高い応答性の下で実現される。
【0018】
(3) 本願の第3の発明に係るウォーム軸の変位量検出方法によれば、上記(1)又は(2)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記回転軸を、トルクスイッチに備えられ上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸で構成しているので、例えば、ウォーム軸の変位量検出用に専用の回転軸を備える場合に比して、部材の共用化によるコストダウンが実現される。また、上記回転軸に対して非接触での検出手法であることから、上記磁場センサによるウォーム軸の変位量検出操作は、トルクスイッチの動作には何等影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係るウォーム軸の変位量検出方法の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0021】
図1には、本願発明に係るウォーム軸の変位量検出方法が適用される電動弁10を示している。この電動弁10は、弁本体部11と弁駆動部16を、ヨーク15を介して連結一体化して構成される。上記弁本体部11内には、弁座部12を開閉する弁体13が収容されている。上記弁体13には、上記ヨーク15を上下方向に貫通して上記弁駆動部16の上部に至る弁棒14が連結されており、該弁棒14を上記弁駆動部16によって上下方向へ昇降駆動することで上記弁体13が上記弁座部12に着座あるいは離座し、上記電動弁10が開閉される。
【0022】
上記弁駆動部16は、ウォーム22を備え電動機5によって回転駆動されるウォーム軸21と、上記ウォーム22と噛合し該ウォーム22側から回転力が伝達されるウォームホイール23と、上記弁棒14のネジ部に噛合するステムナット(図示省略)を内蔵し上記ウォームホイール23からの回転力を受けて上記ステムナットを回転駆動するドライブスリーブ26を備える。また、上記ウォーム軸21の軸端側には、駆動力のトルク調整を行うスプリングカートリッジ24が配置されている。
【0023】
即ち、上記ウォーム軸21は、図示しないスプライン結合構造を備えた二重軸構造とされ、上記ウォーム22と一体的にその軸方向へ変位可能とされている。そして、このウォーム軸21の軸端側に設けられた上記スプリングカートリッジ24は、該ウォーム軸21の軸方向変位を受けて圧縮され、その圧縮量とばね定数から求められる圧縮力に対応するトルクが上記弁棒14に作用する。
【0024】
このように上記ウォーム軸21の軸方向への変位量は、スプリングカートリッジ24の圧縮量、弁棒14に作用するトルクの算出要素となり、電動弁10の各種診断に利用されるものであることから、これを簡単かつ安価な手法で、しかもより精度良く検出する変位量検出方法の開発が要請されるところである。
【0025】
このようなウォーム軸21の変位量検出方法としては、接触式の変位センサを用いた検出方法とか非接触式のレーザセンサを用いた検出方法等が知られていることは既述の通りである。しかし、これら各検出方法においては、それぞれ特有の問題があり、最適な検出方法とは言い得ない。
【0026】
このような背景に鑑み、本願発明者は、ウォーム軸の変位量検出方法として、以下のような新規な構成を想到したものである。以下、これを具体的に説明する。
【0027】
この変位量検出方法は、上記ウォーム軸21の軸方向変位を、該ウォーム軸21の軸方向変位に追従して回転する回転軸の回転角として非接触状態で検出するものである。
【0028】
図1において、符号70は、上記ウォーム軸21の軸方向変位に追従して回転する回転軸71を備えたトルクスイッチである。尚、図1においては、上記ウォーム軸21の軸方向変位と、上記トルクスイッチ70側の上記回転軸71の回転との連動機構についてはその図示を省略している。
【0029】
また、上記回転軸71の端面の中心位置には磁石72が取付けられており、該磁石72は上記ウォーム軸21の軸方向変位に対応して、上記回転軸71と一体的に回転する。
【0030】
一方、上記磁石72から上記回転軸71の端面の径方向へ適宜離間した位置には、上記磁石72から発生する磁力線を感知して磁場の大きさに対応した信号を出力するアモルファス素子を用いた磁場センサ73が配置されている。
【0031】
係る構成において、上記ウォーム軸21の軸方向変位に追従して上記トルクスイッチ70の回転軸71が回転変位すると、この回転軸71の回転変位と一体的に上記磁石72が回転する。このように上記磁石72が上記回転軸71と一体的に回転すると、この回転に伴って該磁石72から生じている磁力線の上記磁場センサ73に対する方向(即ち、磁力線の方向と磁場センサ73の相対位置)が変化し、該磁場センサ73によって感知される磁気信号の大きさが変化する。
【0032】
従って、この磁気信号の変化に基づいて上記トルクスイッチ70の回転軸71の回転角を取得することができる。そして、この回転角に基づいて、該回転角の大きさに比例するウォーム軸の軸方向変位量が取得され、さらに、ウォーム軸の軸方向変位量に対応する上記スプリングカートリッジ24の圧縮量と圧縮力、及び弁棒14に作用するトルクも取得することができる。
【0033】
以上のように、この実施形態に係るウォーム軸の変位量検出方法によれば、ウォーム軸21に接触することなく、非接触状態で該ウォーム軸21の軸方向変位量を検出するものであることから、接触式の検出方法のような接触状態の変化等の外乱要因によって検出精度が損なわれるということがなく、高い検出精度が確保される。
【0034】
また、上記磁石72からの磁力線を上記磁場センサ73で感知する構成であって、該磁場センサ73の取付作業における位置設定については、例えば、反射光を受光するレーザセンサを用いる場合ほどの厳密性は要求されないことから、磁場センサ72の取付作業が簡易となり、延いては作業コストの低廉化が図れるとともに、ウォーム軸の汚れ等の外乱要因によって検出精度が左右されることがなく検出精度の安定化及び信頼性が確保される。
【0035】
さらに、上記磁場センサ73を、アモルファス素子を用いた磁場センサで構成しているので、このアモルファス素子の特性、即ち、外部磁界としての上記磁石72が上記回転軸71と一体的に回転し、該磁石72の磁力線に対する上記磁場センサ73の方向が変化すると、該磁場センサのインピーダンスが敏感に変化するという特性から、この敏感に変化するインピーダンス(即ち、磁気信号の変化)を感知することで、ウォーム軸の変位量検出が高い応答性の下で実現される。
【0036】
また、この実施形態のように、トルクスイッチに備えられ上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸71に上記磁石72を取付けるようにすれば、例えば、ウォーム軸の変位量検出用に専用の回転軸を備える場合に比して、部材の共用化によるコストダウンが実現される。また、上記回転軸71に対して非接触での検出手法であることから、上記磁場センサ73によるウォーム軸21の変位量検出操作は、トルクスイッチ70の動作には何等影響を与えることがない。
【符号の説明】
【0037】
5 ・・電動機
10 ・・電動弁
11 ・・弁本体部
12 ・・弁座部
13 ・・弁体
14 ・・弁棒
15 ・・ヨーク
16 ・・弁駆動部
21 ・・ウォーム軸
22 ・・ウォーム
23 ・・ウォームホイール
24 ・・スプリングカートリッジ
26 ・・ドライブスリーブ
70 ・・トルクスイッチ
71 ・・回転軸
72 ・・磁石
73 ・・回転角センサ(磁場センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁の入力トルクに対応して軸方向へ変位するウォーム軸の変位量を検出する変位量検出方法であって、
上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸の端面の中心位置に取り付けられた磁石と、該回転軸の端面中心位置から径方向へ離間した位置に配置した磁場センサを用い、
上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して上記回転軸が回転するとき、該回転軸の回転に伴う上記磁場センサの感知信号の変化に基づいて上記回転軸の回転角を取得し、該回転角に対応するウォーム軸の変位量を検出することを特徴とするウォーム軸の変位量検出方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記磁場センサが、アモルファス素子を用いた磁場センサで構成されていることを特徴とするウォーム軸の変位量検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記回転軸が、トルクスイッチに備えられ上記ウォーム軸の軸方向変位に追従して回転する回転軸であることを特徴とするウォーム軸の変位量検出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−102883(P2012−102883A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28809(P2012−28809)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2009−537881(P2009−537881)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】