説明

ウレイド基、アミノカルボニル基及び置換基を有してもよい二環式基を置換基として有する新規ピロール誘導体

【課題】ウレイド基、アミノカルボニル基及び置換基を有してもよい二環式基を置換基として有する新規ピロール誘導体の提供。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物又はその塩はインターロイキン−6産生阻害活性を有し、インターロイキン−6が関与する疾患、眼炎症性疾患等の予防及び/又は治療剤として有用である。式中、R1はハロゲン原子、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ホルミル基又は置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基を、R2は置換基を有してもよい二環式炭化水素基又は置換基を有してもよい二環式複素環基を、R3は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又はアシル基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬として有用なウレイド基、アミノカルボニル基及び置換基を有してもよい二環式基を置換基として有する新規ピロール誘導体又はその塩に関する。該誘導体又はその塩はインターロイキン−6(以下、「IL−6」とする)産生阻害活性を有し、IL−6が関与するとされる疾患、特に眼炎症性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
IL−6は、B細胞の分化誘導因子として見出されたサイトカインであり、抗体産生系、肝における急性期蛋白の生合成誘導、インターロイキン−3との相乗作用に基づく造血幹細胞の増殖促進等の多彩な生理活性を有する。
【0003】
よって、IL−6の産生を制御できれば、IL−6が関与するとされる疾患の予防及び/又は治療が可能となる。
【0004】
IL−6が関与するとされる疾患としては、例えば、ポリクロナールB細胞異常疾患(心房内粘液腫、Castleman症候群、関節リウマチ、子宮頸癌、後天性免疫不全症候群、アルコール性肝硬変等)、リンパ系腫瘍(多発性骨髄腫、レンネルトTリンパ腫等)、メサンギウム増殖性腎炎、腎細胞癌、乾癬等が知られている(非特許文献1)。
【0005】
さらに最近になって、IL−6と加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫等の眼炎症性疾患との関係も知られるようになった(非特許文献2、3、4)。
【0006】
また、IL−6を制御する薬剤は多数知られており、例えば、EP4アゴニスト作用を有するベンゾイミダゾール誘導体がIL−6の産生を阻害することが特許文献1に、また、抗IL−6受容体抗体であるMRAが非特許文献5に記載されている。
【0007】
一方、ウレイド基を置換基として有するピロール誘導体が、その合成例と併せて非特許文献6に記載されている。また、アミノカルボニル基を置換基として有するピロール誘導体が免疫・アレルギー疾患の治療薬として特許文献2に記載されている。しかしながら、ウレイド基とアミノカルボニル基の両方を置換基として有するピロール誘導体は知られておらず、それらの置換基に加えて、二環式基も有するピロール誘導体は全く未知の化合物である。また、当然その用途も知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2003/086371号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/123671号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】別冊 医学のあゆみ サイトカイン-基礎から臨床応用まで- 28-35(1992)
【非特許文献2】Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.47,E-Abstract 905(2006)
【非特許文献3】Diabetes.Res.Clin.Pract.61,93-101(2003)
【非特許文献4】Ophthalmology,110,1690-1696(2003)
【非特許文献5】STN Registry files CAS No.375823-41-9
【非特許文献6】J.Chem.Soc.Perkin Transactions 1,5,483-497(1978)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウレイド基、アミノカルボニル基及び置換基を有してもよい二環式基を置換基として有する新規ピロール誘導体又はその塩の合成研究及びその誘導体又はその塩の薬理作用を見出すことは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等はウレイド基、アミノカルボニル基及び置換基を有してもよい二環式基を置換基として有する新規ピロール誘導体又はその塩の合成研究を行い、数多くの新規化合物を創製することに成功した。
【0012】
さらに、その誘導体又はその塩の薬理作用について種々研究した結果、本発明者等は、その誘導体又はその塩がIL−6産生阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩(以下、「本発明化合物」とする)及び本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有する医薬組成物に関する。その医薬用途における好ましい発明は、本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有するIL−6産生阻害剤又は本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有するIL−6が関与するとされる疾患の予防及び/又は治療剤に関し、特に好ましくは、本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有する眼炎症性疾患の予防及び/又は治療剤に関する。
【0014】
該医薬組成物の発明は、より具体的には、本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有する加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、結膜炎又はブドウ膜炎の予防及び/又は治療剤に関し、特に好ましくは、本発明化合物の少なくとも一つを有効成分として含有する加齢黄斑変性、糖尿病網膜症又は糖尿病黄斑浮腫の予防及び/又は治療剤に関する。
【化1】

【0015】


[R1はハロゲン原子、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ホルミル基又は置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基を示し;
2は置換基を有してもよい二環式炭化水素基又は置換基を有してもよい二環式複素環基を示し;
3は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又はアシル基を示す。以下、同じ。]
【発明の効果】
【0016】
本発明はウレイド基、アミノカルボニル基及び置換基を有してもよい二環式基を置換基として有する新規ピロール誘導体又はその塩を提供する。本発明化合物は優れたIL−6産生阻害活性を有し、IL−6産生阻害剤、IL−6が関与するとされる疾患の予防及び/又は治療剤、眼炎症性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0017】
より具体的には、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、結膜炎又はブドウ膜炎の予防及び/又は治療剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中で使用される文言(原子、基、環等)の定義について以下に詳しく説明する。尚、定義が準用される場合、その好ましい範囲等も準用される。
【0019】

「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を示す。
【0020】

「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1〜6個の直鎖又は分枝のアルキル基を示す。具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル基等が挙げられる。
【0021】

「低級アルケニル基」とは、炭素原子数が2〜6個の直鎖又は分枝のアルケニル基を示す。具体例として、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、エチルプロペニル、メチルブテニル基等が挙げられる。
【0022】

「低級シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3〜8個のシクロアルキル基を示す。具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0023】

「アリール基」とは、炭素原子数が6〜14個の単環式芳香族炭化水素基又は2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等が挙げられる。
【0024】

「低級アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペントキシ基等が挙げられる。
【0025】

「低級シクロアルキルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0026】

「アリールオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシ、ナフトキシ、アントリルオキシ、フェナントリルオキシ基等が挙げられる。
【0027】

「低級アルキルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソプロピルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、イソペンチルカルボニル基等が挙げられる。
【0028】

「アシル基」とは、-C(O)-Rtを示す。
【0029】

ここで、Rtは、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を示す。
【0030】

「複素環」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1又は複数個のヘテロ原子を環内に有する飽和或いは不飽和単環式複素環又は2環式若しくは3環式の縮合多環式複素環を示す。
【0031】

飽和の単環式複素環の具体例として、窒素原子を環内に有するピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、ピペリジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピリミジン、ピペラジン、ホモピペリジン、ホモピペラジン環等が、酸素原子を環内に有するテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン環等が、硫黄原子を環内に有するテトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン環等が、窒素原子と酸素原子を環内に有するオキサゾリジン、イソオキサゾリジン、モルホリン環等が、窒素原子と硫黄原子を環内に有するチアゾリジン、イソチアゾリジン、チオモルホリン環等が挙げられる。
【0032】

また、それらの飽和の単環式複素環はベンゼン環等と縮合してジヒドロインドール、ジヒドロインダゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロシンノリン、テトラヒドロフタラジン、テトラヒドロキナゾリン、テトラヒドロキノキサリン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、クロマン、イソクロマン、ジヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、チオクロマン、イソチオクロマン、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾイソオキサゾール、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、ジヒドロベンゾチアジン、キサンテン、4a−カルバゾール、ペリミジン環等の2環式又は3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0033】

不飽和の単環式複素環の具体例として、窒素原子を環内に有するジヒドロピロール、ピロール、ジヒドロピラゾール、ピラゾール、ジヒドロイミダゾール、イミダゾール、ジヒドロトリアゾール、トリアゾール、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、ピリジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロピリダジン、ピリダジン、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロピリミジン、ピリミジン、テトラヒドロピラジン、ジヒドロピラジン、ピラジン、トリアジン環等が、酸素原子を環内に有するジヒドロフラン、フラン、ジヒドロピラン、ピラン環等が、硫黄原子を環内に有するジヒドロチオフェン、チオフェン、ジヒドロチオピラン、チオピラン環等が、窒素原子と酸素原子を環内に有するジヒドロオキサゾール、オキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、イソオキサゾール、ジヒドロオキサジン、オキサジン環等が、窒素原子と硫黄原子を環内に有するジヒドロチアゾール、チアゾール、ジヒドロイソチアゾール、イソチアゾール、ジヒドロチアジン、チアジン環等が挙げられる。
【0034】

また、それらの不飽和の単環式複素環はベンゼン環等と縮合してインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ジヒドロキノリン、キノリン、ジヒドロイソキノリン、イソキノリン、フェナントリジン、ジヒドロシンノリン、シンノリン、ジヒドロフタラジン、フタラジン、ジヒドロキナゾリン、キナゾリン、ジヒドロキノキサリン、キノキサリン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、イソクロメン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、チオクロメン、イソチオクロメン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジン、フェノキサンチン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン環等の2環式又は3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0035】

尚、前記の複素環の内、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ジヒドロインドール、ピロール、ピリジン、ピラジン、フラン、チオフェン、ピラン、イソオキサゾール又はチアゾール環が好ましく、特に、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、ピラジン又はチオフェン環が好ましい。
【0036】

「複素環基」とは、複素環から水素1原子を除いた残基を示す。
【0037】

「複素環オキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が複素環基で置換された基を示す。
【0038】

「含窒素複素環」とは、複素環の内、環内に1又は複数個の窒素原子を含む環を示す。具体例として、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ホモピペラジン、モルホリン、ピロール、ピリジン環等が挙げられる。
【0039】

「二環式炭化水素基」とは、8〜10個の炭素原子で形成される二環式炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、ナフタレン環基、ジヒドロナフタレン環基、テトラヒドロナフタレン環基、オクタテトラヒドロナフタレン環基、インデン環基、インダン環基又はアズレン環基等が挙げられる。
【0040】

「二環式複素環基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1又は複数個と5〜9個の炭素原子で形成される二環式炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、インドール環基、ジヒドロインドール環基、インダゾール環基、ベンズイミダゾール環基、キノリン環基、ジヒドロキノリン環基、テトラヒドロキノリン環基、イソキノリン環基、フタラジン環基、キナゾリン環基、キノキサリン環基、テトラヒドロキノキサリン環基、ベンゾフラン環基、ジヒドロベンゾフラン環基、ベンゾジオキソール環基、ジヒドロベンゾジオキシン環基、ベンゾジオキシン環基、クロマン環基、ベンゾチオフェン環基、ジヒドロベンゾチオフェン環基、ベンゾオキサゾール環基、ジヒドロベンゾオキサゾール環基、ベンゾイソオキサゾール環基、ジヒドロベンゾオキサジン環基、ベンゾチアジン環基、ジヒドロベンゾチアジン環基、ベンゾチアゾール環基又はジヒドロベンゾチアゾール環基等が挙げられる。
【0041】

「置換基を有してもよい低級アルキル基」及び/又は「置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基」とは、ハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、ニトロ基、シアノ基及び-NRuv からなる群より選択される1又は複数の置換基を有してもよい「低級アルキル基」及び/又は「低級アルキルカルボニル基」を示す。
【0042】

「置換基を有してもよいアリール基」、「置換基を有してもよい二環式炭化水素基」及び/又は「置換基を有してもよい二環式複素環基」とは、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、カルボニル基(オキソ基)、ニトロ基、シアノ基及び-NRuvからなる群より選択される1又は複数の置換基を有してもよい「置換基を有してもよいアリール基」、「置換基を有してもよい二環式炭化水素基」及び/又は「置換基を有してもよい二環式複素環基」を示す。
【0043】

ここで、Ru及びRvは同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級シクロアルキル基、アリール基又は複素環基を示し、また、RuとRvが一緒になって、含窒素複素環を形成してもよい。
【0044】

本発明でいう「複数の置換基」とは、夫々の基が同一であっても異なるものであってもよい、置換可能な最大数以下を示し、その個数は2及び/又は3個の場合が好ましく、特に2個の場合が好ましい。
【0045】

また、「基」の概念には、前記で規定した「原子」、「基」、「環」等も含まれる。
【0046】

本発明でいう「IL−6産生阻害剤」とは、IL−6の産生を阻害することにより、医薬的作用を発現させる化合物をいう。
【0047】

本発明でいう「眼炎症疾患」とは、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎等が、好ましくは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症又は糖尿病黄斑浮腫が挙げられる。
【0048】

尚、前記した具体的な疾患は、本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】

本発明化合物における「塩」とは、医薬として許容される塩であれば、特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等の有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチル等との四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛等との金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−メチルアミノ−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
【0050】

本発明化合物に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0051】

また、本発明化合物は水和物又は溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0052】

本発明化合物にプロトン互変異性が存在する場合には、それらの互変異性体も本発明に含まれる。
【0053】

本発明化合物に結晶多形及び/又は結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合は、それらの結晶多形及び/又は結晶多形群(結晶多形システム)も本発明に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存等の条件及び/又は状態(尚、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形及び/又はその過程全体を意味する。
【0054】

(a)本発明化合物の例として、一般式(1)で示される化合物又はその塩において、各基が以下に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【0055】

(a1)R1はハロゲン原子、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ホルミル基又は置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基を示し;及び/又は
(a2)R2は置換基を有してもよい二環式炭化水素基又は置換基を有してもよい二環式複素環基を示し;及び/又は
(a3)R3は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又はアシル基を示す。
【0056】

すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(a1)、(a2)及び(a3)から選択される各組み合わせからなる化合物又はその塩が挙げられる。
【0057】

(b)本発明化合物における好ましい例として、一般式(1)で示される化合物又はその塩において、各基が下記に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【0058】

(b1)R1がハロゲン原子又は水素原子を示し;及び/又は
(b2)R2が置換基を有してもよいニ環式炭化水素基又は置換基を有してもよいニ環式複素環基を示し;及び/又は
(b3)R3が水素原子を示す。
【0059】

すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(b1)、(b2)及び/又は(b3)から選択される1又は2以上の各組み合わせからなる化合物又はその塩が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)の条件と組み合わせることもできる。
【0060】


(c)本発明化合物における好ましいニ環式炭化水素基の例として、ナフタレン環基又はテトラヒドロナフタレン環基を示す場合が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)及び/又は(b)の条件と組み合わせることもできる。
【0061】

(d)本発明化合物における好ましいニ環式複素環基の例として、インドール環基、ベンゾフラン環基、ジヒドロベンゾフラン環基、ベンゾジオキソール環基、ジヒドロベンゾジオキシン環基、ベンゾチオフェン環基、ベンゾオキサジン環基、ベンゾチアゾール環基又はベンゾチアジン環基を示す場合が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)及び/又は(b)の条件と組み合わせることもできる。
【0062】

(e)本発明化合物における特に好ましい具体例として下記の化合物又はその塩が挙げられる。
【0063】

・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0064】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(ベンゾフラン−2−イル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0065】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(ベンゾチオフェン−5−イル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0066】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(ベンゾフラン−5−イル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0067】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0068】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−メチルベンゾチオフェン−2−イル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0069】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル)ピロール−3−カルボキサミド。
【0070】

本発明化合物は、以下の方法により製造することができる。尚、個々の具体的な製造方法については、後述の実施例[製造例の項]で詳細に説明する。また、下記の合成経路中で使用されているHalはハロゲン原子を示す。
【0071】

本発明化合物の製造方法は、以下に示す方法に大別することができ、置換基の種類に応じて、適宜その方法を選択することができる。
【0072】

本発明化合物(I)は、合成経路1に従い製造することができる。すなわち、化合物(II)とイソシアン酸トリクロロアセチルをテトラヒドロフラン(以下、「THF」とする)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」とする)等の有機溶媒中、−80℃から室温で1時間から3時間反応させた後、さらにアンモニア−メタノール溶液を加えて、0℃から室温で1時間から72時間反応を続けることにより本発明化合物(I)を得ることができる。
【0073】
合成経路1
【化2】

【0074】

化合物(II)−(a)は、合成経路2−1に従い製造することができる。すなわち、化合物(III)を塩化メチレン、THF等の有機溶媒中、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、N−ブロモこはく酸イミド等のハロゲン化剤存在下、0℃から60℃で1時間から24時間処理することにより化合物(IV)を得ることができる。得られる化合物(IV)とマロナムアミジン(V)をエタノール、DMF等の有機溶媒中、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム等の塩基存在下、0℃から80℃で1時間から48時間反応させることにより化合物(II)−(a)を得ることができる。
【0075】
合成経路2−1
【化3】

【0076】

化合物(II)−(b)は、合成経路2−2に従い製造することができる。すなわち、化合物(II)−(c)とハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリール(VI)をTHF、DMF等の有機溶媒中、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の塩基存在下、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(II)−(b)を得ることができる。
【0077】
合成経路2−2
【化4】

【0078】

本発明化合物(I)−(a)は、合成経路3に従い製造することができる。すなわち、本発明化合物(I)−(b)を塩化メチレン、DMF等の有機溶媒中、N−クロロこはく酸イミド、N−ブロモこはく酸イミド等のハロゲン化剤存在下、室温から80℃で1時間から24時間処理することにより本発明化合物(I)−(a)を得ることができる。
【0079】
合成経路3
【化5】

【0080】

前記の合成経路により製造した本発明化合物は、汎用されている技術を使用して、前述した塩、水和物又は溶媒和物の形態とすることもできる。
【0081】

また、詳細については、後述の実施例「薬理試験の項」で説明するが、ヒト正常皮膚線維芽細胞由来CCD−1059Sk細胞を使用して、本発明化合物のTNFα誘発IL−6産生に対する阻害効果を検討した。その結果、本発明化合物は優れたIL−6産生阻害活性を示した。よって、本発明化合物はIL−6阻害剤として有用である。また、前述したとおりIL−6は種々の疾患の発現に関与しているので、IL−6阻害活性を有する本発明化合物は、IL−6が関与するとされる疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0082】

より具体的には、眼炎症性疾患の予防及び/又は治療剤として、特に、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0083】

本発明化合物は経口でも、非経口でも投与することができる。投与形態としては、経口投与、眼局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与等)、静脈内投与、経皮投与等が挙げられ、必要に応じて医薬として許容される添加剤を適宜選択して使用し、投与形態に適した剤型に製剤化することができる。
【0084】

投与剤型としては、経口剤の場合、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等が挙げられ、非経口剤としては、注射剤、点眼剤、眼軟膏、挿入剤等が挙げられる。
【0085】

例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の場合、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油等の滑沢剤;精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のコーティング剤;クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントール等の矯味剤、などを必要に応じて適宜選択して使用し、製剤化することができる。
【0086】

注射剤は、塩化ナトリウム等の等張化剤;リン酸ナトリウム等の緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の界面活性剤;メチルセルロース等の増粘剤等、などを必要に応じて適宜選択して使用し、製剤化することができる。
【0087】

点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤、などを必要に応じて適宜選択して使用し、製剤化することができ、そのpHは眼科用製剤に許容される範囲内であれば特に問題はなく、好ましくはpH4〜8の範囲が望ましい。
【0088】

眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を使用し、製剤化することができる。
【0089】

挿入剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸等の生体分解性ポリマーを使用して、製剤化することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤等を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0090】

眼内インプラント用製剤は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース等の生体分解性ポリマーを使用して製剤化することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤等を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0091】

本発明化合物の投与量は、剤型、患者の症状、年令、体重等に応じて適宜選択できる。例えば、経口投与の場合、0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜2500mg、特に好ましくは0.5から1000mgのものを1日あたり1〜数回に分けて投与することができる。注射剤の場合、0.00001〜2000mg、好ましくは0.0001〜1500mg、特に好ましくは0.001から500mgのものを1日あたり1〜数回に分けて投与することができる。点眼剤の場合、0.00001〜10%(w/v)、好ましくは0.0001〜5%(w/v)、特に好ましくは0.001〜1%のものを1日1〜数回点眼することができる。眼軟膏剤の場合、0.0001〜2000mgを含有するものを塗布することができる。挿入剤又は眼内インプラント用製剤の場合、0.0001〜2000mgを含有するものを挿入又はインプラントすることができる。
【0092】

以下に本発明化合物の製造例、製剤例及び薬理試験の結果を示す。尚、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0093】

[製造例]
参考例1−1
2−アミノ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド(参考化合物1−1)
氷冷下、マロナムアミジン塩酸塩(5.5g、40mmol)の脱水エタノール(130mL)懸濁液にナトリウムエトキシド(2.7g、40mmol)を加え、20分間撹拌した。さらに2−ブロモアセチルナフタレン(5.0g、20mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記参考化合物(1.5g)を黒色固体として得た(収率30%)。
【表1】

【0094】

参考例1−2
2−アミノ−5−(7−メトキシベンゾフラン−2−イル)ピロール−3−カルボキサミド(参考化合物1−2)
2−アセチル−7−メトキシベンゾフラン(1.0g、5.3mmol)の無水テトラヒドロフラン(25mL)溶液にフェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド(2.0g、5.3mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。不溶物を濾去した後、濾液を減圧濃縮することにより、2−ブロモアセチル−7−メトキシベンゾフランを含む混合物を得た。この混合物の無水N,N−ジメチルホルムアミド(40mL)溶液にマロナムアミジン塩酸塩(1.5g、11mmol)及び炭酸カリウム(1.5g、11mmol)を加え、60℃で一晩撹拌した。放冷後、反応液を水(200mL)で希釈し、酢酸エチル(100mL×2回)で抽出した。有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記参考化合物(0.33g)を緑黒色固体として得た(収率23%)。
【表2】

【0095】

以下、市販化合物及び参考化合物3−1、6−1を使用し、参考化合物1−1又は1−2の製造方法に準じて、参考化合物1−3〜20を得た。
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【0096】

参考例2
5’−クロロ−2’−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)アセトフェノン(参考化合物2−1)
5'−クロロ−2'−ヒドロキシアセトフェノン(0.86g、5.0mmol)、炭酸カリウム(1.4g、10mmol)及び3−ブロモ−2−メチルプロペン(0.56mL、5.5mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)懸濁液を60℃で4時間撹拌した。放冷後、反応液を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去することにより、標記参考化合物(1.1g)を橙色油状物として得た(収率96%)。
【表4】

【0097】

参考例3
7−アセチル−5−クロロ−2,2−ジメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン(参考化合物3−1)
5−クロロ−2−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)アセトフェノン(参考化合物2−1、6.6g、29mmol)の無水ジクロロメタン(200mL)溶液に、−70℃で塩化アルミニウム(6.0g、45mmol)を加え、1時間撹拌した。ゆっくりと−40℃まで昇温し、さらに1時間撹拌した。反応液に水(200mL)を加え、クロロホルム(100mL)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記参考化合物(1.1g)を無色固体として得た(収率17%)。
【表5】

【0098】

参考例4
3’−ブロモ−2’−(2−ブロモエトキシ)−5’−クロロアセトフェノン(参考化合物4−1)
3'−ブロモ−5'−クロロ−2'−ヒドロキシアセトフェノン(2.4g、10mmol)、炭酸カリウム(2.8g、20mmol)及び1,2−ジブロモエタン(3.5mL、41mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(30mL)懸濁液を50℃で一晩撹拌した。放冷後、反応液を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL×2回)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去することにより、標記参考化合物(4.4g)を橙色油状物として得た(定量的)。
【表6】

【0099】

参考例5
2−[3−ブロモ−2−(2−ブロモエトキシ)−5−クロロフェニル]−2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン(参考化合物5−1)
3'−ブロモ−2'−(2−ブロモエトキシ)−5'−クロロアセトフェノン(参考化合物4−1、4.4g、10mmol)、ネオペンチルグリコール(1.2g、12mmol)及びp−トルエンスルホン酸1水和物(0.22g、1.2mmol)の無水トルエン(50mL)溶液を加熱還流下で一晩撹拌した。放冷後、反応液に酢酸エチル(50mL)及び飽和重曹水(100mL)を加え、分配した。有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記参考化合物(2.8g)を薄黄色油状物として得た(収率63%)。
【表7】

【0100】

参考例6
7−アセチル−5−クロロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン(参考化合物6−1)
2−[3−ブロモ−2−(2−ブロモエトキシ)−5−クロロフェニル]−2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン(参考化合物5−1、2.8g、6.3mmol)の無水テトラヒドロフラン(30mL)溶液に、−70℃でn−ブチルリチウム−へキサン溶液(1.6M、4.7mL、7.6mmol)を5分間で滴下し、1.5時間撹拌した。さらに氷冷下で1時間、室温で一晩撹拌した。反応液を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)、飽和重曹水(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣にテトラヒドロフラン(30mL)、メタノール(5mL)及び1N塩酸(30mL)を加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン(10mL)で濾取することにより、標記参考化合物(0.31g)を黄白色固体として得た(収率25%)。
【表8】

【0101】

実施例1
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド(化合物1−1)
2−アミノ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド(参考化合物1−1、1.0g、4.0mmol)の無水テトラヒドロフラン(20mL)溶液に、−30℃でイソシアン酸トリクロロアセチル(470μL、4.0mmol)を5分間で滴下し、1.5時間撹拌した。さらに2.0Mアンモニア−メタノール溶液(20mL、40mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。析出した固体を濾取し、ジエチルエーテル−エタノール(3:1)混合溶媒(20mL)で洗浄した。固体を40℃減圧下で乾燥することにより、標記化合物(0.67g)を灰白色固体として得た(収率58%)。
【表9】

【0102】

以下、参考化合物1−2〜20を使用し、化合物1−1の製造方法に準じて、化合物1−2〜20を得た。
【表10−1】

【表10−2】

【表10−3】

【表10−4】

【表10−5】

【0103】

実施例2
2−アミノカルボニルアミノ−4−クロロ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド(化合物2−1)
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド(化合物1−1、92mg、0.31mmol)及びN−クロロこはく酸イミド(46mg、0.34mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(2mL)溶液を60℃で2時間撹拌した。放冷後、水(10mL)を加えて析出した固体を濾取し、水(10mL)及びアセトン(10mL)で洗浄した。固体を50℃減圧下で乾燥することにより、標記化合物(46mg)を薄褐色固体として得た(収率45%)。
【表11】

【0104】

実施例3
2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル)ピロール−3−カルボキサミド(化合物3−1)
2−アミノカルボニルアミノ−5−(5−ブロモ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル)ピロール−3−カルボキサミド(化合物1−7、45mg、0.12mmol)のメタノール−無水N,N−ジメチルホルムアミド(2:1)懸濁液(1.5mL)に10%パラジウム炭素(0.01g)を加え、水素雰囲気下室温で一晩撹拌した。不溶物を濾去後、濾液を減圧濃縮し、残渣に水(5mL)を加えた。析出した固体を濾取し、水(5mL)で洗浄した。固体を40℃減圧下で乾燥することにより、標記化合物(21mg)を桃色固体として得た(収率60%)。
【表12】

【0105】

尚、市販化合物はシグマアルドリッチ社、和光純薬工業株式会社、関東化学株式会社、東京化成工業株式会社、ナカライテスク株式会社等の2006年−2008年度カタログに収載されている化合物である。
【0106】

[製剤例]
本発明化合物の代表的な製剤例を以下に示す。
【0107】

1)錠剤(150mg中)
本発明化合物 1mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプン 40mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg

上記処方の錠剤にコーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコーン樹脂等の通常のコーティング剤)3mgを用いてコーティングを施し、目的とする錠剤を得ることができる。また、本発明化合物並びに添加物の種類及び/又は量を適宜変更することで、所望の錠剤を得ることもできる。
【0108】

2)カプセル剤(150mg中)
本発明化合物 5mg
乳糖 135mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg

本発明化合物並びに添加剤の種類及び/又は量を適宜変更することで、所望のカプセル剤を得ることができる。
【0109】

3)点眼剤(100ml中)
本発明化合物 100mg
塩化ナトリウム 900mg
ポリソルベート80 500mg
水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量

本発明化合物及び添加物の種類及び/又は量を適宜変更することで、所望の点眼剤を得ることができる。
【0110】

[薬理試験]
1.IL-6産生阻害活性測定試験
ヒト正常皮膚線維芽細胞由来CCD-1059Sk細胞(ATCC番号CRL-2072)からのTNFα誘発IL-6産生に対する阻害効果を評価した。IL-6量は、HTRFTM Human IL-6キット(シスバイオ・インターナショナル社製、カタログ番号62IL6PEB)を使用し、ホモジニアス時間分解蛍光法にて測定した。以下にその具体的な試験方法を記載する。
【0111】

(被験化合物溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、この溶液を0.1%非働化ウシ胎児血清、0.1mM MEM非必須アミノ酸溶液、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含むD-MEM培地(以下、「培地」とする)で希釈して40μM被験化合物溶液を調製した。
【0112】

(試験方法及び測定方法)
1)3×105cells/mLに調整したCCD-1059Sk細胞を384ウェルプレートへ10μLずつ播種して3×103cells/wellとした。
【0113】
2)37℃で数時間、CO2インキュベーター中で培養した後、被験化合物を各ウェルに5μLずつ添加した。
【0114】
3)37℃で1時間、CO2インキュベーター中で培養した後、40ng/mL TNFα溶液を各ウェルに5μLずつ添加した。
【0115】
4)37℃で16時間、CO2インキュベーター中で培養した後、フッ化カリウムを含む抗IL-6-クリプテート標識抗体及び抗IL-6-XL665標識抗体を各ウェルに10μLずつ添加した。
【0116】
5)室温で数時間インキュベーションした後、マルチモードプレートリーダーAnalystTM HT(モレキュラーデバイス社製)及びCriterion Hostソフトウェアv2.00(モレキュラーデバイス社製)を使用して各ウェルの蛍光強度比(665nm/620nm)を測定した後、IL-6量を算出した。
【0117】
6)被験化合物に代えて0.4%ジメチルスルホキシドを添加し、他は前記1〜5)と同じ操作を実施して、その結果をコントロールとした。
【0118】
7)被験化合物及びTNFα溶液に代えてそれぞれ0.4%ジメチルスルホキシド及び培地を添加し、他は前記1〜5)と同じ操作を実施して、その結果をバックグラウンドとした。
【0119】

(IL-6産生阻害率の計算式)
IL-6産生阻害率(%)は以下の式により算出した。
【0120】
IL-6産生阻害率(%) = 100×{1−(被験化合物のIL-6量−バックグラウンドのIL-6量)/(コントロールのIL-6量−バックグラウンドのIL-6量)}

(評価結果)
評価結果の一例として、被験化合物(化合物1−1、1−5、1−6、1−8、1−12、1−15及び3−1)の10μMにおけるIL-6産生阻害率(%)を表Iに示す。
【表I】

【0121】

表Iに示したとおり本発明化合物は優れたIL-6産生阻害活性を示した。よって、本発明化合物はIL-6産生阻害剤として使用でき、IL-6が関与するとされる疾患、眼炎症性疾患等の予防及び/又は治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
【化1】


[R1はハロゲン原子、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ホルミル基又は置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基を示し;
2は置換基を有してもよい二環式炭化水素基又は置換基を有してもよい二環式複素環基を示し;
3は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又はアシル基を示す。]
【請求項2】
一般式(1)において、
1がハロゲン原子又は水素原子を示し;
2が置換基を有してもよいニ環式炭化水素基又は置換基を有してもよいニ環式複素環基を示し;
3が水素原子を示す請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
一般式(1)において、
2が置換基を有してもよいニ環式炭化水素基である場合、該ニ環式炭化水素基がナフタレン環基又はテトラヒドロナフタレン環基である請求項2記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
一般式(1)において、
2が置換基を有してもよいニ環式複素環基である場合、該ニ環式複素環基がインドール環基、ベンゾフラン環基、ジヒドロベンゾフラン環基、ベンゾジオキソール環基、ジヒドロベンゾジオキシン環基、ベンゾチオフェン環基、ベンゾオキサジン環基、ベンゾチアゾール環基又はベンゾチアジン環基である請求項2記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2−ナフチル)ピロール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(ベンゾフラン−2−イル)ピロール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(ベンゾチオフェン−5−イル)ピロール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(ベンゾフラン−5−イル)ピロール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)ピロール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(3−メチルベンゾチオフェン−2−イル)ピロール−3−カルボキサミド、及び
・2−アミノカルボニルアミノ−5−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル)ピロール−3−カルボキサミドから選択される化合物又はその塩。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1記載の化合物又はその塩の少なくとも一つを含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1記載の化合物又はその塩の少なくとも一つを有効成分とするIL−6産生阻害剤。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1記載の化合物又はその塩の少なくとも一つを有効成分とするIL−6が関与するとされる疾患の予防又は治療剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1記載の化合物又はその塩を有効成分とする眼炎症性疾患の予防又は治療剤。
【請求項10】
眼炎症性疾患が加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、結膜炎又はブドウ膜炎である請求項9記載の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2010−77120(P2010−77120A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193743(P2009−193743)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】