説明

エアープレッシングによるラミネーティング装置及びそのラミネーティング方法

【課題】ラミネーティング過程で発生する接触面上の気泡を除去できるようなエアープレッシングパターンを形成できるラミネーティング装置及びそのラミネーティング方法を提供する。
【解決手段】ラミネーティング装置は、キャリア装置及び正圧プレス装置を含み、キャリア装置は、被加工物である基板などを収容し、真空を形成して基板と基板とを固定圧着させ、正圧プレス装置は、キャリア装置の弾性膜に向かってエアーを噴射して基板間の接着力を高めると同時に、噴射されたエアーがまるで基板をその中心から縁部に掃き出すような効果を持たせることによって、ラミネーティング過程で発生しうる基板間の気泡を除去する。このようなエアープレッシングによる加圧では、基板などをチャンバーではなく別の移送可能なキャリア装置に収容するため、正圧プレス装置が複数個のキャリア装置に対して反復的なエアープレッシング工程を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアープレッシング(Air Pressing)により基板にフィルムまたはパネルを接着するラミネーティング装置及びそのラミネーティング方法に係り、特に、該当のラミネーティングに提供される基板またはフィルムを別途の真空キャリアまたはカートリッジに収納した後、エアープレッシングによりラミネーティングする装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明でいうラミネーティング(Laminating)とは、2以上の層(Layer)を互いに接着してパネルを形成することを意味する。ここで、パネルは、ガラス(Glass)、合成樹脂基板、半導体基板の他に、合成樹脂フィルム(Film)も含む。
【0003】
例えば、ディスプレイパネルの製作のために、パネル用のガラスに各種のフィルムをラミネートして接着する。また、ガラスとガラスとを接着するために両ガラスの間に接着用フィルムを介在してラミネートする。また、静電容量方式のタッチセンサーは、インジウムスズ酸化物(ITO:Indume Tin Oxide)パネルをエッチングして透明な電気的パターンを形成し、該パターン上に、アクリルなどの強化ガラスをOCA(Optical Clear Adhesive)フィルムでラミネートすることによって製造する。
【0004】
このようなラミネーティング過程では、接着面に気泡などが発生することがあるが、ガラスやディスプレイ用パネルの大きさが増加するにつれて気泡の除去もより難しくなるという問題があった。
【0005】
従来、基板またはフィルムの間に発生する気泡を除去する方法の一つとして、ラミネーティング処理したパネルを、大型チャンバー形態の加圧装置に入れて加圧する方法が用いられてきた。真空ポンプなどによりチャンバー内の圧力が変わりつつ加圧されたパネルは、中心から縁部へと押し出す力が発生し、気泡を押し出すようになる。シャルルボイルの法則(PV=nRT)によると、チャンバーの体積(V)は固定した値に該当するので、チャンバー内の圧力は温度の関数となる。もし、温度(T)を一定に保たなければならないとすれば、チャンバー内の圧力の変化は真空ポンプのみによってなされることになるので、その圧力変化は極めて徐々に為されざるを得ず、大型基板ではその効果が期待し難い。
【0006】
一方、このような気泡除去工程は、タッチセンサーの他、TFT−LCD(Thin Film Transistor−Liquid Crystal Display)パネル生産工程においてもLCDセルと偏光板との接着面に発生する気泡を除去するのに用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エアープレッシング(Air Pressing)により基板にフィルムまたはパネルを接着するラミネーティング装置及びそのラミネーティング方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ラミネーティング過程で発生する接触面上の気泡を除去できるようなエアープレッシングパターンを形成できるラミネーティング装置及びそのラミネーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によって2以上の層(Layer)が積層されてなるパネルを形成するラミネーティング装置は、キャリア装置と正圧プレス装置とを含む。
【0010】
前記キャリア装置は、前記パネル用被加工物を収容する内部空間部を形成し、上側が開放されたフレームと、前記フレームの開放された上側部分を覆って前記内部空間部を密閉する弾性膜と、前記内部空間部を真空状態にさせて負圧を形成する真空生成手段と、を備え、負圧で前記被加工物の位置を固定して互いに接着させる。
【0011】
前記正圧プレス装置は、前記キャリア装置と結合して、前記キャリア装置の弾性膜に高圧のエアーを噴射して、前記固定されている被加工物をさらに圧着させることによって接着させる。
【0012】
実施例によって、前記正圧プレス装置は、前記エアーを前記弾性膜に噴射する複数個のノズル部とノズル弁とを含む。ノズル弁は、前記複数個のノズル部に提供されるエアーを個別に制御して、前記弾性膜に噴射されたエアーが、前記弾性膜の中心から縁部に向かう放射状の流れを形成するようにすることによって、エアーが前記被加工物をその中心から縁部に掃き出すような効果をもたらし、接着面の気泡を除去する。
【0013】
例えば、前記複数個のノズル部は、前記キャリア装置と結合するノズルプレート上に形成され、前記ノズルプレートの中心に配置される第1のノズル部と、前記第1のノズル部を取り囲む領域に配置される第2のノズル部と、前記第2のノズル部を取り囲む領域に配置される第3のノズル部と、を含む。前記第1のノズル部、第2のノズル部及び第3のノズル部が順次開放されることによって、前記放射形エアーの流れを形成する。
【0014】
他の実施例によって、前記正圧プレス装置は、前記弾性膜との間に密閉された正圧空間を形成しながら前記キャリア装置と結合して、前記エアーを前記正圧空間を通して前記弾性膜に噴射し、この場合、前記正圧空間の圧力が、設定された基本圧力(Pi)を維持しながら周期的に、設定された最高圧力(Pmax)になるように制御することによって、前記弾性膜を通して前記基板に提供される圧力に周期的にインパクトを持たせることができる。このようなインパクトは、気泡の除去効果をより強化し、その分、接着面における接着力をより強化する。
【0015】
実施例によって、本発明のラミネーティング装置は、前記キャリア装置を一定の温度に加熱して前記接着を促進する加熱手段をさらに含むことができる。
【0016】
また、前記被加工物が2枚の透明基板の間に紫外線硬化樹脂が塗布されてなるものである場合、本発明のラミネーティング装置は、前記キャリア装置の弾性膜に紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線ランプをさらに含むことができる。この場合、前記弾性膜は紫外線を透過させうる合成樹脂膜としなければならない。
【0017】
本発明の他の実施例によって2以上の層が積層されてなるパネルを形成するラミネーティング方法は、一面が弾性膜から形成されて密閉された内部空間部を有するキャリア装置に、前記パネル用被加工物を収容し、前記内部空間部を真空にして前記弾性膜により前記被加工物同士が圧着しつつ固定されるようにする段階と、前記キャリア装置を加熱して前記被加工物間の接着を促進させる段階と、前記キャリア装置の弾性膜に向かって高圧のエアーを噴射して前記被加工物同士をより圧着して前記接着を促進するエアープレッシング段階と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るラミネーティング装置は、真空固定後にエアープレス(Air Pressing)方式によるラミネーティング工程を行う。本発明のラミネーティング装置は、基板などを収容するために別個の移送可能なキャリア装置を用いるから、一つのキャリア装置へのラミネーティング工程後に直ちに次のキャリア装置へのラミネーティング工程を行うことができる。これによって、エアープレッシング動作に提供される正圧プレス装置の接着時間(tack time)を低減し、正圧プレス装置の効率を極大化することができる。
【0019】
本発明のラミネーティング装置はエアープレッシングを行うに当たって、エアープレッシング動作が基板の中心から縁部に向かって掃き出すような効果をもたらし、ラミネーティング過程で接着面に発生しうる気泡を除去することができる。
【0020】
また、本発明のラミネーティング装置は、一定の正圧を均一に提供せず、インパクト(Impact)を与える如き圧力の変化を与えることで、エアープレッシングによる基板と基板またはフィルム間の密着を強化し、接着面に発生しうる気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のラミネーティング装置を示す図である。
【図2】本発明のキャリア装置を示す断面図である。
【図3】正圧プレス装置に装着されたキャリア装置の断面図である。
【図4】正圧プレスユニットに結合された状態のキャリア装置を示す断面図である。
【図5】ノズルプレートの平面図である。
【図6】正圧空間内における圧力の変移を示すグラフである。
【図7】本発明のラミネーティング方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2を参照すると、本発明のラミネーティング装置100は、2以上の層(Layer)を互いに接着してパネルを形成するラミネーティング工程に使われる。ここで、パネルには、ガラス(Glass)、合成樹脂基板、半導体基板の他、合成樹脂フィルム(Film)も含まれる。
【0024】
したがって、このラミネーティング工程には、ガラス上に薄膜合成樹脂フィルムを接着する工程、ガラスとガラスとの間に接着剤や接着フィルムを積層して互いに接着する工程、ディスプレイ用パネル上にフィルムを接着する工程、透明電極であるインジウムスズ酸化物(ITO)が形成されているガラス上に、強化ガラスを、OCA(Optically Clear Adhesive)フィルムや紫外線硬化樹脂にて接着してタッチスクリーン用のパネルを製造する工程、ガラスや合成樹脂パネル上に偏光フィルムまたは紫外線遮断フィルムなどを接着してサングラスやゴーグルを製造する工程などのいずれも該当することができる。以下では、このような工程の代表として、ITOパネル(以下、‘第1の基板'という。)11と強化ガラス(以下、‘第2の基板'という。)13とをOCAフィルム(以下、‘接着フィルム'と略す。)15を用いて接着する例を取り上げて説明する。
【0025】
ラミネーティング装置100は、少なくとも一つのキャリア装置110と、キャリア装置110に対してエアープレッシング(Air Pressing)を行う正圧プレス装置150と、を含む。キャリア装置110は、ラミネーティングでパネルを成形する被加工物(第1の基板、フィルム及び第2の基板)を収容したまま別の移送手段130によって正圧プレス装置150に移送され、該キャリア装置110内に収容されている基板11〜15を正圧プレス装置150でエアープレッシングすることでラミネーティング工程を行う。
【0026】
キャリア装置110は、上側が開放された内部空間部201を形成するフレーム101と、フレーム101に支持され、フレーム101の開放された上側を覆って内部空間部201を密閉する弾性膜103と、を含み、内部空間部201には、被加工物である基板11,13,15が収容される。上述した如く、ラミネーティング工程の種類に応じて、内部空間部201に収容される基板の種類を自由に可変することができる。
【0027】
弾性膜103は、若干の弾性を有する合成樹脂膜とする。ITOパネル11と強化ガラス13との間に紫外線硬化樹脂を塗布して接着する場合、弾性膜103は、紫外線透過可能な膜としなければならず、例えば、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate;PMMA)、ポリカーボネート(Polycarbonate;PC)、透明性ポリオレフィン系樹脂、透明性アクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene copolymer;ABS)などのスチレン系樹脂などを使用することができる。
【0028】
弾性膜103の厚さは1mm以下のものとすることが好ましく、概してその面積などに照らして0.2mm〜1mmの厚さとすることが好ましい。
【0029】
キャリア装置110は、内部空間部201を真空にするために、フレーム101の一側に形成された真空生成手段203を含む。
【0030】
真空生成手段203は、内部空間部201とフレーム101の外側とを連通させてエアー(Air)の排出経路を提供する排出管205と、排出管205に連結されて内部空間部201中のエアーを吸入することで、内部空間部201を真空にさせる真空ポンプ(図示せず)と、を含む。真空生成手段203により内部空間部201は略10-1barの負圧、すなわち真空を維持する。
【0031】
キャリア装置110の内部空間部201に第1の基板11及び第2の基板13を収容するために、図2に示すように、フレーム101が上部と下部とに分けられ、上部キャリア207と下部キャリア209とに区分されるようになる。当然ながら、上部キャリア207と下部キャリア209とが結合する場合、その間に設けられたOリング(O Ring)などによって内部空間部201をシールすることができる。
【0032】
次に、キャリア装置110の動作について簡単に説明する。
【0033】
まず、上部キャリア207が開放された状態で下部キャリア209の底部に第1の基板11を配置し、第1の基板11の上面に接着フィルム15と第2の基板13を順次に配置する。
【0034】
真空生成手段203によって内部空間部201に負圧、すなわち、真空が形成される場合、弾性膜103は、内部空間部201に向かって作用する外部の大気圧によって内部空間部201に押し入れられるようになり、内部空間部201に収容されている第2の基板13と第1の基板11とを加圧して密着させる。この場合、流体の特性の上、大気圧が弾性膜103の全面に均一に作用するから、平板状の第1の基板11及び第2の基板13が全体として均一な圧力で加圧されることとなる。
【0035】
キャリア装置110で加圧された第1の基板11及び第2の基板13は、その位置及び形態が固定される。したがって、キャリア装置110は、後で行われる加熱工程または正圧プレス装置150におけるエアープレッシング工程中に発生しうる第1の基板11または第2の基板13自体の歪みまたは位置ずれなどを防止することができる。
【0036】
キャリア装置110は、移送装置130により正圧プレス装置150内に移送される。
【0037】
実施例によっては、例えば、キャリア装置110は、正圧プレス装置150に移送される前に、移送経路の一側に別途に設けられた加熱装置170によって一定の温度まで加熱されることもできる。この加熱装置170の加熱によって第1の基板11と第2の基板13とが接着フィルム15にて熱接着されることとなる。この場合、キャリア装置110は、第2の基板13及び第1の基板11を負圧で固定して保持することによって、第2の基板13及び第1の基板11が加熱によって熱変形することを防止する。
【0038】
加熱装置170は、図1に示すように、キャリア装置110と別個として設けられることが好ましいが、別の実施例では、平板状のセラミックヒーターの形態としてキャリア装置110の一側に設けることもできる。
【0039】
図1乃至図4を参照すると、正圧プレス装置150は、エアープレスユニット151と、キャリア装着部155と、バックアップユニット157と、を含み、キャリア装置110及び移送手段130とは独立した一つの別体の装置とされる。
【0040】
図3に示すように、キャリア装着部155は、移送手段130によって正圧プレス装置150内に移送されるキャリア装置110を収容し、垂直移送手段155−1を備えて、収容しているキャリア装置110を垂直方向に移送することで、図4に示すように、上側に設けられたエアープレスユニット151に結合させる。正圧プレス装置150は、キャリア装着部155の垂直移送手段155−1に代わり、エアープレスユニット151を垂直移送させる移送手段を含むこともできる。
【0041】
バックアップユニット157は、図3に示すように、キャリア装置110がキャリア装着部155によって上側に移送されてエアープレスユニット151と結合する際に、キャリア装置110またはキャリア装着部155の下部へと支持部材157−1を移送させることで、エアープレスユニット151からキャリア装置110に加えられる正圧が支持部材157−1によって支持されるようにする。
【0042】
エアープレスユニット151は、キャリア装着部155の上方に設けられ、キャリア装着部155により垂直移送されたキャリア装置110と結合(Docking)する。エアープレスユニット151は、その下方にノズルプレート153が露出して形成され、外部のエアーポンプ(図示せず)に連結されて、エアーポンプ(図示せず)から提供される高圧のエアーを一定の範囲の正圧で制御し、ノズルプレート153からキャリア装置110の弾性膜103に噴射する。
【0043】
ノズルプレート153は、キャリア装置110の上部キャリア207に密着結合して弾性膜103との間に空間(以下、‘正圧空間'という。)401を形成する。ノズルプレート153は、複数個のノズル部301,303,305,307を含み、各ノズル部301,303,305,307は、複数個のノズル309を含む。
【0044】
次に、正圧プレス装置150の動作について簡単に説明する。
【0045】
上述した如く、キャリア装置110内の第1の基板11及び第2の基板13は、正圧プレス装置150に移送される前に既にその位置及び形態がキャリア装置110内で負圧で固定された状態である。以降、第1の基板11及び第2の基板13は加熱装置170で加熱された状態で正圧プレス装置150のキャリア装着部155に移送される。
【0046】
キャリア装着部155は、キャリア装置110を垂直移送してエアープレスユニット151のノズルプレート153に結合させる。
【0047】
エアープレスユニット151は、エアーポンプ(図示せず)から提供される設定された圧力(正圧)のエアーを、ノズルプレート153から弾性膜103、すなわち、正圧空間401に噴射することで、第1の基板11及び第2の基板13を正圧で再び加圧する。この加圧工程により、加熱された第1の基板11と第2の基板13とがより密着されつつ接着力もより大きくなる。このとき、弾性膜103は内部空間部201へ押し入れられる。
【0048】
ノズルプレート153から噴射されるエアーは流体であるから、作用する範囲内では同一の力で作動し、加圧範囲に対してスタンプ(Stamp)やローラー(Roller)のような固体による直接加圧に比べて遥かに均一な圧力を得ることができる。
【0049】
ノズルプレート153における複数個のノズル部301,303,305,307は、ノズルプレート153の中心から縁部に向かって順次配置されることができる。また、ノズル部301,303,305,307のそれぞれは、他のノズル部とは区分された別の管路を介してエアーポンプ(図示せず)と連結され、且つ、別個のノズル弁151−1によって制御される。図5は、ノズルプレート153の中心から同心状に第1乃至第4のノズル部301,303,305,307が配置された例を示す。
【0050】
ノズル部からの正圧噴射は、ノズルプレート153の中心から始めて順次加えていく形態とする。例えば、第1のノズル部301→第2のノズル部303→第3のノズル部305→第4のノズル部307の順にエアーを噴射する。このとき、第2のノズル部303が噴射される時に第1のノズル部301は正圧噴射をそのまま維持し、第3のノズル部305が噴射される時に第1及び第2のノズル部303は正圧噴射をそのまま維持し、第4のノズル部307が噴射される時に第1乃至第3のノズル部305は正圧噴射をそのまま維持する。
【0051】
これにより、弾性膜103に提供されるエアーは、図5に示すように、弾性膜103の中心から縁部に向かって放射状の流れを形成することとなる。このような高圧流体の放射状の流れは、まるで弾性膜103または第2の基板13を中心から縁部の方に掃き出すような効果を招くことができる。これによって、第2の基板13は、単純な加圧の形態に比べて、第1の基板11へとより密着するようになり、第2の基板13と第1の基板11との間に存在しうる気泡などをより効果的に除去することができる。
【0052】
さらに、キャリア装置110がエアープレスユニット151に結合する際に正圧空間401を密閉した後、図6に示すように、エアープレスユニット151が正圧空間401の圧力に一定の変位を与えることもできる。
【0053】
図6を参照すると、正圧空間401の圧力(P)を、基本圧力(Pi)を維持しながら一定の周期で最高圧力(Pmax)まで上昇するように制御する。こうすると、単に一定の正圧を弾性膜103に提供する場合とは違い、あたかも周期的に弾性膜103に衝撃を加えるような効果が得られる。その結果、第2の基板13と第1の基板11との密着力が増大する他、第2の基板13と第1の基板11との間に残存する気泡などの除去効果もより増大する。
【0054】
図6は、正圧空間401における圧力(P)の変化が、概して正弦波曲線を描く例を示しており、このために、エアープレスユニット151は、図4に示すように、正圧空間401に連結された自動弁(Auto Valve)403と、逃し弁(Relief Valve)405とを備えることができる。自動弁403は正圧空間401に連結され、エアープレスユニット151から提供される制御信号に応じて0〜t1、t2〜t3、t4〜t5では閉じた状態、t1〜t2、t3〜t4では開いた状態を維持するように制御される。逃し弁405は、自動弁403と大気との間に連結されて、基本圧力(Pi)を維持させる。
【0055】
自動弁403が閉じている状態の区間で、エアープレスユニット151は、圧力センサー(図示せず)を用いて、ノズルプレート153から正圧空間401に与えられる圧力が最高圧力(Pmax)となるようにノズル弁151−1を制御する。これによって、0〜t1、t2〜t3、t4〜t5の区間では圧力が最高圧力(Pmax)まで増加する。t1〜t2、t3〜t4の区間では、自動弁403が開くと正圧空間401内の圧力は再び下がる。しかし、基本圧力(Pi)になると、後段に配置されている逃し弁405が閉じるので、正圧空間401内の圧力は、基本圧力(Pi)〜最高圧力(Pmax)の間を維持するようになり、図6に示すグラフのような圧力変化を示すことができる。
【0056】
正圧空間401への圧力制御は、図6に示すグラフに限定されず、周期的に衝撃(Impact)を与えうるいかなる形態の圧力変化にすることもできる。
【0057】
さらに、正圧プレス装置150は、エアーポンプ(図示せず)で生成されたエアーを一定の温度まで加熱するプレスユニット用ヒーター(図示せず)を含み、ノズル部301,303,305,307から噴射されるエアーの温度を変化させることもできる。
【0058】
以下では、図1乃至図7を参照して、本発明のラミネーティング方法について説明する。
【0059】
<キャリア装置に被加工物を収納して負圧で固定:S601、S603>
まず、上部キャリア207を下部キャリア209と分離し、第1の基板11、接着フィルム15及び第2の基板13を、キャリア装置110内に配置する(S601)。次に、真空生成手段203により内部空間部201を真空にし、第1の基板11、接着フィルム15及び第2の基板13を密着させながら第1の基板11と第2の基板13との位置を固定させる(S603)。
【0060】
<プレヒーティング(Pre−Heating):S605>
キャリア装置110を、正圧プレス装置150に移送する前に加熱装置170を用いて一定の温度まであらかじめ加熱する。キャリア装置110が第2の基板13及び第1の基板11を負圧で固定している状態であるから、加熱によって第2の基板13などは熱変形しない。
【0061】
<正圧プレス装置に結合:S607〜S609>
プレヒーティングされたキャリア装置110を、移送手段130により正圧プレス装置150に移送してキャリア装着部155にセッティングし、キャリア装着部155の垂直移送手段155−1によりキャリア装置110をエアープレスユニット151にドッキングさせる。
【0062】
<正圧空間に正圧を提供:S611>
キャリア装置110をエアープレスユニット151にドッキングさせることで、密閉された正圧空間401を形成する。エアープレスユニット151は、ノズルプレート153から、設定された圧力のエアーを正圧空間401を経由して弾性膜103に噴射することによって正圧を提供する。この時、上述した如く、ノズルプレート153から噴射されるエアーは、ノズル弁151−1で複数個のノズル部301,303,305,307を個別に制御することによって、ノズルプレート153の中心から縁部に向かって放射状のエアー流れを形成させることが好ましい。また、正圧空間401内の圧力を、設定された圧力に一定に維持せず、図6に示すように、基本圧力(Pi)を維持しながら一定の周期で最高圧力(Pmax)が提供される形態として変化を与えることが好ましい。
【0063】
このように、単純に正圧空間401へのエアーを通じて正圧を提供するに加えて、一定したエアーの流れを形成し、与えられる正圧にインパクトを持たさせることによって、第2の基板13と第1の基板11との密着力を増大させ、かつ、第2の基板13と第1の基板11との間に発生しうる気泡などを除去することができる。
【0064】
また、正圧空間401に噴射されるエアーを、プレスユニット用ヒーター(図示せず)で一定の温度に加熱することによって、キャリア装置110内における接着フィルム15による第1の基板11と第2の基板13との接着をより円滑にさせることもできる。

【0065】
<キャリア装置の離脱:S613>
エアープレスユニット151がキャリア装置110に一定時間正圧を提供した後、キャリア装着部155はキャリア装置110を下降させてエアープレスユニット151から分離させ、移送手段130はキャリア装置110を正圧プレス装置150から離脱させる。
【0066】
正圧プレス装置150から分離されたキャリア装置110は依然として一定の熱エネルギーを保有している状態であるから、負圧を維持したまま一定時間大気上で自然冷却する。
【0067】
しかし、キャリア装置110のフレーム101は一般に潜熱が大きいから、キャリア装置110の冷却は普通の自然冷却に比べて長時間にわたって徐々になされる。
【0068】
加熱工程により加熱された基板の冷却は徐々になされるべきで、急速に冷却してはならない。したがって、従来のチャンバー(Chamber)形態の装備を用いる場合は、加熱後の冷却工程もチャンバー内で徐々になされなければならず、チャンバーの効率が著しく低下するという不具合があった。
【0069】
しかし、本発明のキャリア装置は、自体保有している潜熱を用いて第1の基板11及び第2の基板13が急速冷却されることを防止し、急速冷却に伴う歪みも防止する。
【0070】
また、キャリア装置110は正圧プレス装置150から分離された状態で冷却されるから、正圧プレス装置150は、エアープレッシング済みのキャリア装置が離脱された後、新しいキャリア装置を取り込んで正圧プレス工程を引き続き行うことができる。
【0071】
別の実施例として、第1の基板11と第2の基板13との間に紫外線硬化樹脂を塗布して接着する場合にも、本発明のラミネーティング装置100を使用することができる。この場合、ラミネーティング装置100は、正圧プレス装置150を通過したキャリア装置110の弾性膜103に向けて紫外線を照射する紫外線ランプ(図示せず)が、図1の加熱装置170の代わりにさらに含まれることができる。また、上述したとおり、弾性膜103は、紫外線を透過させうる透明な膜とする必要がある。
【0072】
以上では、本発明の好適な実施例について図示し説明してきたが、本発明は、上記の特定の実施例に限定されるものではない。よって、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱しない限度内で、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者には様々な変形実施が可能であり、それらの変形実施は本発明の技術的思想や展望と別個のものとして理解してはならない。
【符号の説明】
【0073】
100 ラミネーティング装置
101 フレーム
103 弾性膜
110 キャリア装置
130 移送手段
150 正圧プレス装置
151 エアープレスユニット
151−1 ノズル弁
153 ノズルプレート
155 キャリア装着部
155−1 垂直移送手段
157 バックアップユニット
157−1 支持部材
170 加熱手段
201 内部空間部
203 真空生成手段
205 排出管
207 上部キャリア
209 下部キャリア
301,303,305,307 ノズル部
309 ノズル
401 正圧空間
403 自動弁
405 逃し弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の層が積層してなるパネルを形成するラミネーティング装置であって、
前記パネル用被加工物を収容する内部空間部を形成し、且つ、上側が開放されたフレームと、前記フレームの開放された上側部分を覆って前記内部空間部を密閉する弾性膜と、前記内部空間部を真空状態にさせて負圧を形成する真空生成手段と、を備え、負圧で前記被加工物の位置を固定させて相互接着するキャリア装置と、
前記キャリア装置と結合し、前記キャリア装置の弾性膜に高圧のエアーを噴射して、前記固定されている被加工物をさらに加圧して接着させる正圧プレス装置と、
を含むことを特徴とする、ラミネーティング装置。
【請求項2】
前記正圧プレス装置は、
前記エアーを前記弾性膜に噴射する複数個のノズル部と、
前記複数個のノズル部に提供されるエアーを個別に制御することで、前記弾性膜に噴射されるエアーが、前記弾性膜の中心から縁部に向かう放射状の流れを形成するようにする複数個のノズル弁と、を含み、
前記被加工物をその中心から縁部に掃き出すようにして接着させることを特徴とする、請求項1に記載のラミネーティング装置。
【請求項3】
前記複数個のノズル部は、
前記キャリア装置と結合するノズルプレート上に形成され、
前記ノズルプレートの中心に配置される第1のノズル部と、前記第1のノズル部を取り囲む領域に配置される第2のノズル部と、前記第2のノズル部を取り囲む領域に配置される第3のノズル部と、を含み、
前記第1のノズル部、第2のノズル部及び第3のノズル部が順次開放されることによって前記放射状のエアーの流れを形成することを特徴とする、請求項2に記載のラミネーティング装置。
【請求項4】
前記正圧プレス装置は、
前記弾性膜との間に密閉された正圧空間を形成しながら前記キャリア装置と結合して、前記エアーを前記正圧空間を通して前記弾性膜に噴射し、
前記正圧空間の圧力が、設定された基本圧力(Pi)を維持しながら周期的に設定された最高圧力(Pmax)となるように制御することによって、前記弾性膜を通して前記基板に提供される圧力に周期的にインパクトを持たせることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラミネーティング装置。
【請求項5】
前記キャリア装置を一定の温度に加熱して前記接着を促進する加熱手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のラミネーティング装置。
【請求項6】
前記被加工物が2枚の透明基板の間に紫外線硬化樹脂が塗布されてなるものである場合、
前記キャリア装置の弾性膜に紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させる紫外線ランプをさらに含み、
前記弾性膜は、紫外線を透過させうる合成樹脂膜であることを特徴とする、請求項1に記載のラミネーティング装置。
【請求項7】
前記キャリア装置を前記正圧プレス装置に移送し、前記正圧プレス装置から離脱させる移送手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のラミネーティング装置。
【請求項8】
2以上の層が積層してなるパネルを形成するラミネーティング方法であって、
一面が弾性膜から形成されて密閉した内部空間部を有するキャリア装置に前記パネル用の被加工物を収容し、前記内部空間部を真空にして前記弾性膜によって前記被加工物同士を圧着しながら固定させる段階と、
前記キャリア装置を加熱して前記被加工物間の接着を促進する段階と、
前記キャリア装置の弾性膜に向けて高圧のエアーを噴射して、前記被加工物同士をより加圧して前記接着を促進するエアープレッシング段階と、
を含むことを特徴とする、ラミネーティング方法。
【請求項9】
前記エアープレッシング段階で、
別個のノズル弁によってそれぞれ制御される複数個のノズル部を用いて前記高圧のエアーを噴射し、
前記弾性膜に噴射されるエアーが、前記弾性膜の中心から縁部に向かう放射状の流れを形成するように前記ノズル弁を制御することで、前記被加工物をその中心から縁部に掃き出すようにして相互圧着させることを特徴とする、請求項8に記載のラミネーティング方法。
【請求項10】
前記エアープレッシング段階で、
前記弾性膜の上面に密閉された正圧空間を形成して、前記エアーが前記正圧空間を通して前記弾性膜に噴射されるようにし、
前記正圧空間の圧力が、設定された基本圧力(Pi)を維持しながら周期的に設定された最高圧力(Pmax)となるように制御することによって、前記弾性膜を通して前記被加工物に提供される圧力に周期的にインパクトを持たせることを特徴とする、請求項8に記載のラミネーティング方法。
【請求項11】
前記被加工物が2枚の透明基板の間に紫外線硬化樹脂が塗布してなるものである場合、前記エアープレッシング段階の後に、前記キャリア装置の弾性膜に向かって紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させる段階をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のラミネーティング方法。
【請求項12】
移送手段により前記キャリア装置が移送されながら、前記各段階を別個の空間で行うことを特徴とする、請求項8に記載のラミネーティング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−121315(P2012−121315A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67787(P2011−67787)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(507148928)アプロシステム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】