説明

エンジンの潤滑構造

【課題】フィルター室内においてオイルを広範囲に流動させ、オイルの冷却性能を向上させることが可能なエンジンの潤滑構造を提供する。
【解決手段】本発明は、エンジン1の内部から排出されたオイルを導入するオイル導入口24a、24bと、オイル導入口24a、24bから導入されたオイルを濾過するオイルフィルター18と、オイルフィルター18によって濾過されたオイルをエンジン1の内部へと導出するオイル導出口22と、を有するフィルター室14を備えたエンジン1の潤滑構造であって、フィルター室14には、オイル導入口24a、24bとオイルフィルター18の間の空間をオイル導入口24a、24b側からオイルフィルター18側に向かう複数の流路27、28に区画するガイドリブ26が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンにオイルを供給するエンジンの潤滑構造に関し、特に、オイルフィルターを備えたエンジンの潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルポンプ等によって循環させたオイルによってエンジンの内部を潤滑する構成が周知である。このようにオイルによってエンジンの内部を潤滑すると、金属粉等の異物がオイルに混入するため、オイルフィルターを用いてオイルから異物を除去する必要がある。このオイルフィルターは、通常、オイル導入口とオイル導出口を備えたフィルター室に収納されており、エンジンの内部から排出されたオイルが、オイル導入口を介してフィルター室内に導入され、オイルフィルターによって濾過された後、オイル導出口からエンジンの内部へと導出されるようになっている。
【0003】
また、上記したオイルを冷却する構成も種々考案されている。例えば、特許文献1には、フィルター室が設けられたフィルターケースを冷却水ポンプのポンプハウジングと一体的に形成する構成が開示されている。また、特許文献2には、放熱フィンによってオイルの過熱を抑制する構成が開示されている。更に、特許文献3には、フィルター室を構成するオイルフィルターボデイに冷却水通路を形成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−174125号公報
【特許文献2】実用新案登録第2587569号公報
【特許文献3】実公平2−13704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエンジンの潤滑構造では、フィルター室内においてオイルを広範囲に流動させるための手段が講じられておらず、フィルター室内に導入されたオイルの一部はフィルター室内に滞留し、フィルター室内に導入されたオイルの大部分は、フィルター室内を十分に流動することなくオイルフィルターを通過していた。そのため、オイルがフィルター室において十分に冷却されないままエンジンの内部に供給されてしまうことになり、たとえオイルの冷却構造を設けたとしても、オイルの冷却効果を十分に高めることは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、フィルター室内においてオイルを広範囲に流動させ、オイルの冷却性能を向上させることが可能なエンジンの潤滑構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジンの内部から排出されたオイルを導入するオイル導入口と、該オイル導入口から導入されたオイルを濾過するオイルフィルターと、該オイルフィルターによって濾過されたオイルを前記エンジンの内部へと導出するオイル導出口と、を有するフィルター室を備えたエンジンの潤滑構造であって、前記フィルター室には、前記オイル導入口と前記オイルフィルターの間の空間を前記オイル導入口側から前記オイルフィルター側に向かう複数の流路に区画するガイドリブが設けられていることを特徴とする。
【0008】
このような構成を採用することにより、ガイドリブによってオイルを分流し、複数の方向への指向性をオイルに持たせることが可能となる。これに伴って、フィルター室内においてオイルを広範囲に流動させることが可能となり、オイルの冷却性能を高めることが可能となる。
【0009】
また、前記ガイドリブの基端部は、前記オイル導入口を複数に分割するように設けられていても良い。
【0010】
このようにガイドリブの基端部によってオイル導入口を複数に分割することで、オイル導入口からフィルター室内にオイルが導入される時点でオイルを分流することが可能となる。これに伴って、オイルの分流効果を更に高めることが可能となり、フィルター室内においてオイルをより広範囲に流動させることが可能となる。
【0011】
更に、前記オイルフィルターは、該オイルフィルターの取付方向視で放射状を成すように配置されるエレメントを備え、前記ガイドリブの先端部は、前記オイルフィルターの取付方向視で前記エレメントの外周部が形成する円の接線方向に沿うように配置されていても良い。
【0012】
このような構成を採用することにより、ガイドリブによって分流されたオイルが、エレメントの中心に向かって直線状に流動するのではなく、エレメントの外周部に沿って回り込みながらエレメントに流入することになる。これに伴って、オイル内に含まれる金属粉等の異物をエレメントの外周部の広い範囲で捕捉することが可能となり、異物が一カ所に集中して目詰まり等の不具合が発生するのを抑制することが可能となる。
【0013】
更にまた、前記フィルター室は、前記エンジンに冷却水を移送するウォーターポンプを備えたポンプ室と隣接して設けられ、前記ガイドリブは、前記フィルター室と前記ポンプ室を仕切る隔壁から前記フィルター室側に向かって突設されていても良い。
【0014】
このような構成を採用することにより、ポンプ室内の冷却水によって隔壁及びガイドリブが冷却されることになり、ガイドリブによってオイルを効果的に冷却することが可能となる。つまり、ポンプ室内の冷却水とフィルター室内のオイルの熱交換効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルター室内においてオイルを広範囲に流動させ、オイルの冷却性能を向上させることが可能なエンジンの潤滑構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンを示す右側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジンにおいて、ポンプカバーを取り外した状態の要部を示す右側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るエンジンにおいて、ポンプカバーを取り付けた状態の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るエンジンにおいて、ポンプカバーを取り付けた状態の要部を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態に係るエンジン1について説明する。以下、図1における右側、左側、奥側、手前側をそれぞれ正面側(前側)、背面側(後側)、左側、右側として説明する。
【0018】
まず、エンジン1の全体の構成について図1を用いて説明する。エンジン1は、例えばオフロード型の自動二輪車に搭載されるものであり、水冷式の単気筒型エンジンである。図1に示されるように、エンジン1は、左右二分割式のクランクケース2と、クランクケース2の前部から略上方に延設されるシリンダ3と、シリンダ3の略上方に設けられるシリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上面を被覆するヘッドカバー5と、を備えている。
【0019】
クランクケース2には、クランク軸(図示せず)が左右方向に軸支されており、このクランク軸は、クラッチ及び変速装置(いずれも図示せず)を介して、被駆動部(例えば、自動二輪車の後輪)と接続されている。そして、エンジン1が駆動すると、クランク軸の回転がクラッチ及び変速装置を介して被駆動部に伝達され、被駆動部が回転するようになっている。クラッチは、クラッチケース6に収納されている。クラッチケース6の右側面には、その中央部から後部にかけてクラッチカバー7が取り付けられている。
【0020】
シリンダ3内には、ピストン(図示せず)が昇降可能に収納されている。ピストンは、コンロッド(図示せず)を介してクランク軸と接続されており、ピストンの昇降運動がコンロッドを介して回転に変換され、クランク軸に伝達されるように構成されている。
【0021】
シリンダヘッド4の後部にはスロットルボディ8が接続されている。スロットルボディ8は、エアクリーナボックス(図示せず)と一体のインテークマニホールド10に接続されている。そして、エアクリーナボックスから導入された空気が、インテークマニホールド10及びスロットルボディ8を介して、シリンダ3とシリンダヘッド4の間に設けられた燃焼室(図示せず)に導入されるようになっている。スロットルボディ8には、燃料噴射装置(図示せず)が取り付けられており、この燃料噴射装置によって、シリンダヘッド4側に向かって所定のタイミングで燃料が噴射されるようになっている。スロットルボディ8の前方には、エンジン1の点火時期を制御するCDIユニット11が設けられている。
【0022】
シリンダヘッド4の前部には、エキゾーストパイプ12が接続されている。エキゾーストパイプ12は、マフラー(図示せず)に接続されており、シリンダヘッド4からの排気を、エキゾーストパイプ12及びマフラーを介してエンジン1の後方に排出できるようになっている。エキゾーストパイプ12には、カバー13が取り付けられている。
【0023】
次に、上記のような構成のエンジン1の内部を潤滑及び冷却するための構成について、主に図2〜図4を用いて説明する。なお、図2及び図4における白抜き矢印は、オイルの流れを示している。また、図3は、後上方からの斜視図であるため、実際の上下関係と図面上の上下関係は逆転している。
【0024】
図2に示されるように、クラッチケース6の右側面には、クラッチカバー7の前方にフィルター室14が設けられ、フィルター室14の前下方には、ポンプ室15がフィルター室14と隣接して設けられている。フィルター室14とポンプ室15の周囲は、周壁16によって囲繞されており、フィルター室14とポンプ室15は隔壁17によって仕切られている。
【0025】
まず、フィルター室14について詳細に説明すると、フィルター室14には、側面視で正円状を成すフィルター取付部19が設けられ、このフィルター取付部19にオイルフィルター18が取り付けられている。本実施形態では、オイルフィルター18の取付方向は、右から左に向かう方向である。
【0026】
図3に最も良く示されるように、オイルフィルター18は、多数の丸穴が設けられた円筒部材20と、この円筒部材20に周設されるエレメント21と、を備えている。円筒部材20の中心部には、オイル導出口22(図2参照)が設けられ、オイル導出口22は、エンジン1の内部と連通している。
【0027】
エレメント21は、フィルター室14の深さ方向(本実施形態では左右方向)に設置されており、オイルフィルター18の取付方向視(本実施形態では側面視と同一の視線方向)で放射状を成すように配置されている。エレメント21は、多数のひだによって形成されており、ひだごとに複数のスリット48(図3参照)が左右方向に設けられている。なお、スリット48はエレメント21を構成するすべてのひだに設けられているが、図3では一個のひだに設けられたスリット48のみを表示し、その他のひだに設けられたスリット48については記載が省略されている。
【0028】
フィルター室14の前部には、オイル導入口24が設けられている。オイル導入口24は、エンジン1の内部と連通するオイル通路25の上端側に設けられている。
【0029】
フィルター室14の前部には、ガイドリブ26がフィルター室14の深さ方向に設けられている。ガイドリブ26は、フィルター室14とポンプ室15を仕切る隔壁17からフィルター室14側に向かって突設されている。ガイドリブ26は、オイル導入口24とオイルフィルター18の間の空間をオイル導入口24側からオイルフィルター18側に向かう上下一対の流路(上側流路27、下側流路28)に区画している。ガイドリブ26の基端部は、オイル導入口24の一部(本実施形態では、上下方向中央部)を覆うように設けられ、オイル導入口24を上下に2分割している。以下、特に上下の区別をしない場合には、「オイル導入口24」と記載し、上下の区別をする場合には、「上側のオイル導入口24a」、「下側のオイル導入口24b」と記載する。なお、オイル導入口24aとオイル導入口24bは、図3において太線で表示されている。
【0030】
ガイドリブ26は後上方に向かって延びている。図2に二点鎖線Xで示されるように、ガイドリブ26の先端部は、オイルフィルター18の取付方向視でエレメント21の外周部23(円筒部材20から離間した側の端部)が形成する円(本実施形態では、オイルフィルター18の取付方向視でフィルター取付部19の輪郭と重なる円)の接線方向に沿うように湾曲している。
【0031】
フィルター室14には、オイル導入口24やガイドリブ26よりも下方に、3本の内側冷却フィン30が設けられている。各内側冷却フィン30は、隔壁17からフィルター室14側に突設されている。各内側冷却フィン30は、後上方に向かって延びており、ガイドリブ26と同様にフィルター室14の深さ方向に設けられている。各内側冷却フィン30は、オイルフィルター18のエレメント21と一定距離だけ離間するように配置されている。
【0032】
次に、ポンプ室15について説明すると、ポンプ室15の上端部は、クラッチケース6とクランクケース2に跨って設けられた流通路31を介して、エンジン1の内部(例えば、シリンダ3とシリンダヘッド4の内部)に設けられたウォータージャケット(図示せず)に接続されている。ポンプ室15には、ウォーターポンプ32が収納されている。ウォーターポンプ32は、左右方向に設けられてポンプ室15を貫通する回転軸33と、この回転軸33に取り付けられたインペラ34と、を備えている。インペラ34は、オイルフィルター18のエレメント21との間で各内側冷却フィン30を挟む位置に設けられている。
【0033】
図4に最も良く示されるように、クラッチケース6の右側面には、フィルター室14を囲繞するとともにポンプ室15を覆うようにして、ポンプカバー35が取り付けられている。ポンプカバー35は、複数のボルト36によってクラッチケース6及びクランクケース2に固定されている。
【0034】
ポンプカバー35の後部には、フィルター室14と対応する形状の開口部37が設けられ、ポンプカバー35の右側面には、開口部37の周囲にフランジ部38が設けられている。フランジ部38には、開口部37を覆うようにしてオイルフィルターカバー40(図1参照)が接合されており、これにより、フィルター室14の右側面が閉止されている。オイルフィルターカバー40は、複数のボルト41(図1参照)によってポンプカバー35、クラッチケース6及びクランクケース2に固定されている。
【0035】
ポンプカバー35の前後方向中央部には、開口部37側に向かって5本の外側冷却フィン42が突設されている。各外側冷却フィン42は、後上方に向かって延びており、ガイドリブ26や各内側冷却フィン30と側面視で重ならない位置に配置されている。下側の3本の外側冷却フィン42の基端部は、リブ43によって互いに接続されている。各外側冷却フィン42は、各内側冷却フィン30と同様に、オイルフィルター18のエレメント21と一定距離だけ離間するように配置されている。
【0036】
ポンプカバー35の前部には、略上下方向に延びる連通管44が一体形成されている。連通管44の下端部は、ポンプ室15内と連通している。図1に示されるように、連通管44の上端部は、左右のインレットホース45を介して、エンジン1の前方に配置されたラジエーター46の下端部に接続されている。ラジエーター46の上端部は、エンジン1の内部に設けられたウォータージャケットにアウトレットホース47を介して接続されている。
【0037】
上記の如く構成されたものにおいて、エンジン1の稼働時には、エンジン1から排出されたオイルが、オイルポンプ(図示せず)によってオイル通路25から上下のオイル導入口24a、24bを介してフィルター室14に導入される。その際には、フィルター室14の深さ方向と垂直にオイルが導入される。
【0038】
図2及び図4に示されるように、上側のオイル導入口24aからフィルター室14に導入されたオイルは、上側流路27に沿ってオイルフィルター18側に流動し、オイルフィルター18に上方から流入する。また、下側のオイル導入口24bからフィルター室14に導入されたオイルは、下側流路28に沿って広がりながら流動し、オイルフィルター18に上下方向中央付近又は下方から流入する。
【0039】
このようにしてオイルフィルター18に流入したオイルは、オイルフィルター18のエレメント21によって濾過された後、オイル導出口22からエンジン1の内部に供給される。そして、エンジン1の内部を潤滑した後、再度フィルター室14に戻される。このようなプロセスが繰り返されることで、オイルが循環する。
【0040】
また、エンジン1の稼働時には、ウォーターポンプ32が駆動してインペラ34が回転軸33を中心に回転し、これに伴って、ラジエーター46内の冷却水が左右のインレットホース45とポンプカバー35の連通管44を介して、ポンプ室15に流入する。この冷却水は、流通路31を介してエンジン1のウォータージャケットに供給され、エンジン1の内部を冷却する。その後、冷却水は、アウトレットホース47からラジエーター46に戻り、ラジエーター46内を通過することで冷却される。このようなプロセスが繰り返されることで、冷却水が循環する。
【0041】
以上のように、本実施形態では、オイル導入口24とオイルフィルター18の間の空間をオイル導入口24側からオイルフィルター18側に向かう上側流路27と下側流路28に区画するガイドリブ26が設けられており、このガイドリブ26によってオイルを分流し、複数の方向への指向性をオイルに持たせることが可能となる。これに伴って、フィルター室14内においてオイルを広範囲に流動させることが可能となり、例えばオイルフィルター18の真下にガイドリブ26を介さずにオイル導入口24を配置するような場合と比較して、熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0042】
また、ガイドリブ26の基端部によってオイル導入口24が上下に2分割されているため、オイル導入口24からフィルター室14内にオイルが導入される時点で、オイルを分流することが可能となる。これに伴って、オイルの分流効果を更に高めることが可能となる。
【0043】
更に、ガイドリブ26の先端部は、オイルフィルター18の取付方向視でエレメント21の外周部23が形成する円の接線方向に沿うように湾曲しているため、ガイドリブ26によって分流されたオイルは、エレメント21の中心に向かって直線状に流入するのではなく、エレメント21の外周部23に沿って回り込みながらエレメント21に流入することになる。これに伴って、オイル内に含まれる金属粉等の異物をエレメント21の外周部23の広い範囲で捕捉することが可能となり、異物が一カ所に集中して目詰まり等の不具合が発生するのを抑制することが可能となる。特に、本実施形態では、ガイドリブ26の両側面29(図2参照)をエレメント21の外周部23の接線方向に沿って湾曲させているため、上記の効果を更に大きくすることが可能となる。
【0044】
更にまた、ガイドリブ26は、フィルター室14とポンプ室15の隔壁17に設けられているため、ラジエーター46で冷却された直後にポンプ室15内に流入する冷却水によって隔壁17及びガイドリブ26が冷却されることになり、これに伴って、ガイドリブ26によってオイルを効果的に冷却することが可能となる。つまり、ポンプ室15内の冷却水とフィルター室14内のオイルの熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0045】
また、フィルター室14とポンプ室15を隣接して配置することで、冷却水の流路とオイルの流路をレイアウト上可能な限り接近させることが可能となり、冷却水とオイルの熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0046】
また、各内側冷却フィン30がフィルター室14とポンプ室15の隔壁17に設けられているため、ラジエーター46で冷却された直後にポンプ室15内に流入する冷却水によって、各内側冷却フィン30が効率的に冷却されることになる。これに伴って、各内側冷却フィン30のオイルとの熱交換性能を高めることが可能となり、フィルター室14内のオイルを一層効果的に冷却することが可能となる。
【0047】
また、このように各内側冷却フィン30を隔壁17に設けることで、冷却水を循環させるインペラ34に近接した位置に各内側冷却フィン30が配置されることになり、これに伴って各内側冷却フィン30がエンジン1の熱による影響を受けにくくなる。そのため、各内側冷却フィン30によるオイルの冷却効果を一層高めることが可能となる。また、フィルター室14の周壁16が各内側冷却フィン30を覆うように配置されているため、冷却水とオイルの熱交換効率を一層向上させることが可能となる。
【0048】
また、各内側冷却フィン30及び各外側冷却フィン42は、オイルフィルター18のエレメント21と一定距離だけ離間するように配置されているため、各内側冷却フィン30及び各外側冷却フィン42によってオイルの流れが阻害されることがなく、オイルがエレメント21の外周部23に沿って回り込みながら、円滑に流動することになる。そのため、エレメント21の外周部23の広い範囲から均一にオイルをエレメント21内に導入することができ、エレメント21が局所的にオイルを吸い込むことによる目詰まりを防止し、エレメント21の長寿命化に貢献する。
【0049】
また、下側のオイル導入口24bが内側冷却フィン30及び外側冷却フィン42の近傍に配置されているため、下側のオイル導入口24bから導入されたオイルの一部は、強制的に各冷却フィン30、42に接触した後、オイルフィルター18へと移動することになる。これに伴って、従来と比較して熱交換効率を一層高めることが可能となる。
【0050】
また、ラジエーター46からの冷却水が流入するポンプ室15を覆うポンプカバー35に各外側冷却フィン42を配置することで、ラジエーター46からの冷却水をフィルター室14内のオイルの冷却に有効利用することが可能となる。
【0051】
また、フィルターケースごと交換が行われるいわゆるカートリッジ式のオイルフィルター18では、通常、フィルター室14の深さ方向からオイルが流入するため、オイルは広がりながらエレメント21の外周部23を通過し、金属粉等の異物がエレメント21の一部に集中する虞は少ない。一方で、本実施形態のようにオイルの流入方向がフィルター室14の深さ方向と垂直になる構成では、オイルの流れが当たる部分において異物が集中的に捕捉されて、目詰まり等の不具合が発生する虞が有る。そのため、本発明の構成を用いて、オイルを広域に分散させることが望ましい。
【0052】
本実施形態では、一つのガイドリブ26によってオイル導入口24が上下に2分割される場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複数のガイドリブ26によってオイル導入口24を3個以上に分割しても良い。
【0053】
また、他の異なる実施形態では、オイルを循環させるオイルポンプ(図示せず)とウォーターポンプ32を同軸上に配置し、冷却水によって冷却された軸を介してオイルポンプ及びオイルを冷却するように構成しても良い。この場合には、オイルの冷却性能を更に高めることが可能となる。
【0054】
本実施形態では、単気筒型のエンジン1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、V型、並列2気筒型、並列4気筒型等の他の異なるタイプのエンジン1に本発明の構成を適用しても良い。本実施形態では、オフロード型の自動二輪車のエンジン1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、オンロード型、スクータ型等の他の異なるタイプの自動二輪車のエンジン1に本発明の構成を適用しても良い。また、ATV(不整地走行車両)、自動車(四輪車)、雪上車、船外機等のエンジン1に、本発明の構成を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 エンジン
14 フィルター室
15 ポンプ室
17 隔壁
18 オイルフィルター
22 オイル導出口
23 外周部
24 オイル導入口
26 ガイドリブ
27 上側流路
28 下側流路
32 ウォーターポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの内部から排出されたオイルを導入するオイル導入口と、該オイル導入口から導入されたオイルを濾過するオイルフィルターと、該オイルフィルターによって濾過されたオイルを前記エンジンの内部へと導出するオイル導出口と、を有するフィルター室を備えたエンジンの潤滑構造であって、
前記フィルター室には、前記オイル導入口と前記オイルフィルターの間の空間を前記オイル導入口側から前記オイルフィルター側に向かう複数の流路に区画するガイドリブが設けられていることを特徴とするエンジンの潤滑構造。
【請求項2】
前記ガイドリブの基端部は、前記オイル導入口を複数に分割するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの潤滑構造。
【請求項3】
前記オイルフィルターは、該オイルフィルターの取付方向視で放射状を成すように配置されるエレメントを備え、
前記ガイドリブの先端部は、前記オイルフィルターの取付方向視で前記エレメントの外周部が形成する円の接線方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの潤滑構造。
【請求項4】
前記フィルター室は、前記エンジンに冷却水を移送するウォーターポンプを備えたポンプ室と隣接して設けられ、
前記ガイドリブは、前記フィルター室と前記ポンプ室を仕切る隔壁から前記フィルター室側に向かって突設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの潤滑構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100753(P2013−100753A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244128(P2011−244128)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】