説明

オイルシールおよびオイルシールの取付構造

【課題】方向性がなくシール性が高くて回転摩擦が低いオイルシールを提供すること。
【解決手段】弾性材料からなる環状シール本体2の穴部2aの両端に、それぞれ、同一形状のオイルリップ部2bを設けている。また、環状シール本体2の外周面における両端からの中間にその全周にわたってリブ状の外径シール部2cを設け、2つのオイルリップ部2b間に第1の凹部2dを形成し、環状シール本体2における外周側と2つのオイルリップ2bとの間に、それぞれ、第2の凹部2eを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルシールおよびオイルシールの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のオイルシールを示す断面図である。このオイルシール10は、図示しない被取付部材の回転軸が嵌合する内周の穴部10aの一方の端部に形成されたオイルリップ部10bによりシール性を確保し、一方方向(矢印A)からはシール性が有効であるが、反対側の方向(矢印B)からのシール性はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、回転軸への装着時に方向性を生ずることになり、取り付け方向を間違う誤組付けの発生を排除できない。また、外径シール部10cがフラットであるため、外径シール部と接するハウジング等の被装着部材との間のシール性を確保するため装着に大きな力を必要とし、装着による外径の変形が穴部10aの内径を縮小する方向に作用して回転軸の摩擦抵抗が増加することになるという問題がある。
【0004】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑み、方向性がなくシール性が高くて回転摩擦が低いオイルシールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のオイルシールは、弾性材料からなる環状シール本体2の穴部2aの両端に、それぞれ、同一形状のオイルリップ部2bが設けられていることを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決するためなされた請求項2記載の発明は、請求項1記載のオイルシールにおいて、前記環状シール本体2の外周面における前記両端からの中間に前記外周面の全周にわたって、リブ状の外径シール部2cが設けられ、2つの前記オイルリップ部2b間に第1の凹部2dが形成され、前記環状シール本体2における外周側と前記2つのオイルリップ部2bとの間に、それぞれ、第2の凹部2eが形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載のオイルシール取付構造は、回転軸4を収納するハウジング3のオイルシール取付部3bに請求項1または2に記載のオイルシール1を嵌合し、前記穴部2aに前記回転軸4を嵌合したことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するためなされた請求項4記載の発明は、請求項4記載のオイルシールの取付構造において、前記第1の凹部2dに回転摩擦低減用グリスが収容されていることを特徴とする。
【0009】
なお、上述の課題を解決するための手段の説明における参照符号は、以下の発明を実施するための最良の形態の説明における参照符号に対応しているが、これらは、特許請求の範囲の解釈を限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した本発明のオイルシールによれば、穴部両端に設けられた同一形状の2つのオイルリップ部が作用して、穴部の両方向からのシールが可能であり、装着に方向性がない。したがって、方向性を間違う誤組付けの発生が無く、シール性喪失による製品の機能不良の発生を排除できる。また、2つのオイルリップ部があるので、シール性が高い。
【0011】
請求項2に記載した本発明のオイルシールによれば、リブ状の外径シール部を設け、第1および第2の凹部による、オイルリップ部や外径シール部の変形に伴う逃がしが設けられているため、装着時の変形・縮小が少ないので、低い回転摩擦力で回転軸のシールが可能となる。
【0012】
請求項3に記載した発明のオイルシールの取付構造によれば、回転軸を収納するハウジングの内壁に本発明のオイルシールを嵌合し、穴部に回転軸を嵌合するので、オイルシールの取り付け時の方向性を間違う誤組付けの発生が無く、シール性喪失による製品の機能不良の発生を排除できる。
【0013】
請求項4に記載した発明のオイルシールの取付構造によれば、第1の凹部には回転摩擦低減用グリスが溜まっており、回転摩擦力の低減に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は、本発明のオイルシールの実施の形態を示す断面図である。オイルシール1は、NBR(ニトリルゴム)等の弾性材料からなる環状シール本体2において、内周側の穴部2aの両端部に、それぞれ、同一形状のオイルリップ部2bが設けられている。また、環状シール本体2のフラットな外周面における両端からの中間に、外周面の全周にわたってリブ状の外径シール部2cが設けられている。
【0015】
さらに、2つのオイルリップ部2b間に、穴部2aの内径が大きくなるように湾曲した凹部2d(第1の凹部)が形成され、環状シール本体2における外周側と2つのオイルリップ部2bとの間に、それぞれ、湾曲した凹部2e(第2の凹部)が形成されている。オイルシール1の形状は、穴部2aの中心を通る軸線と、外径シール部2cの中間を通ってこの軸線と直交する直交線とに対して、線対称になっている。
【0016】
次に、図2は、本発明のオイルシールの取付構造を説明する断面図である。オイルシール1は、製品、たとえばガス遮断装置、のハウジング3に一体形成されてその内周側に軸受5が嵌合される円筒状軸受取付部3aの下に形成された円形凹部であるオイルシール取付部3bに嵌合される。回転軸4は、軸受5で支持されて、一方の端部がハウジング3の内部に収納されると共に、オイルシール1を介して外部に露出している。この回転軸4は、遮断弁となるボール状弁体を回転駆動する駆動軸として働くものであり、内部に収納された一方の端部に、駆動軸の駆動源となるモータのギヤ伝達機構の一部を構成するギヤ6が嵌合されている。図示しないが、回転軸4の外部へ露出した方の端部は、ボール状弁体に接続されている。
【0017】
オイルシール1の外径シール部2cは、オイルシール取付部3bに嵌合された際にその内壁に密着してハウジング3側のシール性を維持する。オイルシール1のオイルリップ部2bは、回転軸4が嵌合された際にその外周と密接に接する。
【0018】
オイルシール1の凹部2dは、オイルシール1をオイルシール取付部3に嵌合する際の外径シール部2cの変形の逃がしとして働き、また、凹部2eは、回転軸4が嵌合される際のオイルリップ部2bの変形の逃がしとして働く。
【0019】
外部側のオイルリップ部2bは、回転軸4の外部側のシール性を確保し、内部側のオイルリップ部2bは、回転軸4の内部側のシール性を確保する。その結果、オイルシール1は、軸受5側からの潤滑用グリスの外部への流出と、外部からの異物や水の侵入を防止する。
【0020】
このように、本発明によれば、回転軸4のシールには2つのオイルリップ部2bが作用して、穴部2aの2方向からのシールが可能であり、装着の際に方向性がない。したがって、方向性を間違う誤組付けの発生が無く、シール性喪失による製品の機能不良の発生を排除できる。また、外径シール部2cやオイルリップ部2b変形に伴う逃がしが設けられているため、装着時の変形・縮小がないので、低い回転摩擦力で回転軸のシールが可能となる。
【0021】
以上の通り、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0022】
たとえば、凹部2dに回転軸4との回転摩擦低減用グリスを収容しても良い。この場合は、凹部2dは、外径シール部2cの変形の逃がしとして働くと共にグリス溜まりの機能も有する。そして、凹部2dには、常に回転摩擦低減用グリスが溜まっており、回転軸4との回転摩擦力低減に作用することになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るオイルシールの構成を示す断面図である。
【図2】本発明に実施の形態に係るオイルシールの取付構造を示す断面図である。
【図3】従来のオイルシールの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 オイルシール
2 環状シール本体
2a 穴部
2b オイルリップ部
2c 外径シール部
2d 凹部(第1の凹部)
2e 凹部(第2の凹部)
3 ハウジング
4 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料からなる環状シール本体の穴部の両端に、それぞれ、同一形状のオイルリップ部が設けられていることを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
請求項1記載のオイルシールにおいて、
前記環状シール本体の外周面における前記両端からの中間に前記外周面の全周にわたって、リブ状の外径シール部が設けられ、2つの前記オイルリップ部間に第1の凹部が形成され、前記環状シール本体における外周側と前記2つのオイルリップ部との間に、それぞれ、第2の凹部が形成されていることを特徴とするオイルシール。
【請求項3】
回転軸を収納するハウジングのオイルシール取付部に請求項1または2に記載のオイルシールを嵌合し、前記穴部に前記回転軸を嵌合したことを特徴とするオイルシールの取付構造。
【請求項4】
請求項3記載のオイルシールの取付構造において、
前記第1の凹部に回転摩擦低減用グリスが収容されていることを特徴とするオイルシールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−250310(P2009−250310A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97488(P2008−97488)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】