説明

オーディオ装置

【課題】特別な防水性を要求されない簡易な構成でありながら浴室内で手軽に音楽等を聞くことができるオーディオ装置を提供する
【解決手段】浴室100の扉101の外面に貼り付けた振動体20をオーディオ信号に応じて振動させることにより、扉101がスピーカとして作用し、浴室100内部においてオーディオ信号に応じた音が再生される。従って、防水性能のいらない簡易な構成でありながら、普段使用しているオーディオ機器50の音楽等を浴室100の中で手軽に聞くことができる。電子回路を内蔵しているオーディオ機器50やオーディオ信号増幅装置10を浴室の内部に持ち込まなくて良いため、これらの電子機器が水に濡れて故障する問題が殆ど生じないという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等で手軽に音楽等を聞くことができるオーディオ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯音楽プレイヤーなどの携帯型のオーディオ装置が一般の需要者に広く普及しており、記憶容量やバッテリー寿命などの性能も大幅に向上していることから、どこでも手軽に好みの音楽等を聞くことができるようになってきている。近頃では、そうした利便性が日常生活において当たり前の状況となりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年の携帯型のオーディオ装置は極めて高機能になっている半面、非常にデリケートな電子回路を内蔵しているため、水に濡れて故障することも多くなっている。日常生活において想定される基本的な防水性能を高めた製品も開発されているが、完全に水没した状態で使用できるほど高い防水性能を持った機器は殆どなく、現状では高価な製品に限られている。
【0004】
そのため、どこでも音楽等を聞けることが当たり前となった昨今においても、自宅の浴室内で携帯型オーディオ装置の音楽等を聞くようなことは、ほとんど行われていない。しかしながら、浴室は日常の疲れを癒してリラックスできる貴重な場所であり、このような場所で手軽に音楽等を楽しめるようになれば利用者の利便性が更に向上する。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特別な防水性を要求されない簡易な構成でありながら浴室内で手軽に音楽等を聞くことができるオーディオ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオーディオ装置は、利用者の所定の音量指示操作に応じた音量調節信号を生成するリモートコントローラ制御回路、及び、前記音量調節信号を含んだ無線信号を送信する送信回路を備えるリモートコントローラと、入力される音響信号を増幅する増幅回路、前記無線信号を受信する受信回路、及び、前記受信回路において受信された前記無線信号に含まれる前記音量調節信号に応じて前記増幅回路の増幅率を制御する本体制御回路を備える音響信号増幅装置と、前記増幅回路から出力される増幅された音響信号に応じて振動する振動体と、前記振動体を浴室の扉の外面に貼り付ける貼り付け部材とを有する。
【0007】
好適に、前記リモートコントローラが、前記リモートコントローラ制御回路及び前記送信回路を内包する防水容器を備える。
【0008】
好適に、前記貼り付け部材が、一方の面において前記振動体に粘着し、他方の面において前記浴室の扉の外面に粘着する両面粘着シートを含む。
【0009】
好適に、入力される音響信号を第2無線信号に変換して送信する第2送信回路を有し、前記音響信号増幅装置が、前記第2無線信号を受信して音響信号に変換し、当該変換した音響信号を前記増幅回路に入力する第2受信回路を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浴室の扉の外面に貼り付けた振動体を音響信号に応じて振動させることにより、扉をスピーカとして作用させているので、特別な防水性能を持たない簡易な構成でありながら浴室の中で手軽に音楽等を聞くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るオーディオ装置の構成の一例を示す図である。
【図2】振動体について説明するための図である。
【図3】第1の実施形態に係るオーディオ装置おけるオーディオ信号増幅装置の構成の一例を示す図である。
【図4】リモートコントローラの構成の一例を示す図である。
【図5】リモートコントローラの外観と内部構造を説明するための図である。
【図6】第2の実施形態に係るオーディオ装置の構成の一例を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係るオーディオ装置におけるオーディオ信号増幅装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るオーディオ装置の構成の一例を示す図である。
本実施形態に係るオーディオ装置は、浴室100の扉101をスピーカとして作用させるように構成されており、例えば図1に示すように、オーディオ信号増幅装置10と、振動体20と、リモートコントローラ30とを有する。
【0013】
振動体20は、オーディオ信号増幅装置10から供給されるオーディオ信号に応じて振動するデバイスであり、例えば図2(A)に示すように、貼り付け部材25によって浴室100の扉101の外面(浴室の外側の面)に貼り付けられる。貼り付け部材25は、両面に粘着性を持ったシートであり、一方の面が振動体20の振動面に貼り付けられ、他方の面が扉101に貼り付けられる。
【0014】
図2(B),(C)は、振動体20の外観例を示す。図2(B)は振動体20を表側(非貼り付け面側)から見た図であり、図2(C)は振動体20を裏側(貼り付け面側)から見た図である。この図の例において、振動体20はほぼ正方形の板体であり、その一辺の縁にオーディオ信号供給用ケーブルの端子を挿し込むためのジャック(挿入口)が設けられている。
【0015】
オーディオ信号増幅装置10は、携帯音楽プレイヤーや携帯ラジオ等のオーディオ機器50から出力されるオーディオ信号を増幅して振動体20に供給する装置である。オーディオ信号増幅装置10は、例えば図3に示すように、本体制御回路11と、受信回路12と、LED回路13と、増幅回路14とを有する。
【0016】
増幅回路14は、オーディオ機器50から供給されるオーディオ信号S_INを本体制御回路11の制御信号に応じたゲイン(増幅率)で増幅し、その増幅結果のオーディオ信号S_OUTを振動体20に出力する。
【0017】
受信回路12は、リモートコントローラ30から送信される無線信号を受信し、これに含まれる音量調節信号を無線信号から取り出して(検波して)本体制御回路11に出力する。
【0018】
LED回路13は、本体制御回路11から供給される制御信号に応じて点灯又は消灯する1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を含んだ回路であり、装置の動作状態を表示する。
【0019】
本体制御回路11は、オーディオ信号増幅装置10の全体的な動作を制御する回路である。すなわち本体制御回路11は、受信回路12において受信された無線信号に含まれる音量調節信号に応じて、増幅回路14の増幅率を制御する制御信号を生成する。また、本体制御回路11は、内部電源の電圧レベルを監視して、電圧レベルが所定のしきい値に達しているか否かを判定し、その判定結果に応じてLED回路13のLEDを点灯又は消灯する制御信号を生成する。
本体制御回路11は、例えば、プログラムを格納した不揮発メモリと、このプログラムの命令コードに従って処理を実行するCPUと、CPUの処理過程で一時的に使用されるデータやプログラムコードを格納する作業メモリを有する。
【0020】
リモートコントローラ30は、利用者1がオーディオ信号増幅装置10を遠隔操作するための装置であり、例えば図4に示すように、リモートコントローラ制御回路31と、ボタン32,33と、送信回路34を有する。
【0021】
ボタン32,33は、利用者1によって操作(押下)されると、その操作に応じた電気信号を発生してリモートコントローラ制御回路31に入力する。ボタン32は音量の増大を指示する電気信号を発生し、ボタン33は音量の減少を指示する電気信号を発生する。
【0022】
送信回路34は、リモートコントローラ制御回路3から出力される音量調節信号を含んだ無線信号を生成してオーディオ信号増幅装置10に送信する。
【0023】
リモートコントローラ制御回路31は、リモートコントローラ30の全体的な動作を制御する回路である。すなわちリモート本体制御回路31は、ボタン32,33の操作により発生した電気信号に応じて、増幅回路14の増幅率を増大若しくは減少させる音量調節信号を生成し、送信回路34に出力する。
リモートコントローラ制御回路31は、例えば、プログラムを格納した不揮発メモリと、このプログラムの命令コードに従って処理を実行するCPUと、CPUの処理過程で一時的に使用されるデータやプログラムコードを格納する作業メモリを有する。
【0024】
図5は、リモートコントローラ30の外観と内部構造の一例を示す図である。図5(A)はリモートコントローラ30の正面図を示し、図5(B)は断面図を示す。
図5の例において、リモートコントローラ30は、やや縦長の板状の外形を有する。この板状の外形を形成する容器(シャーシ)38の中に、上述したリモートコントローラ制御回路31や送信回路34、電池などの電子部品35を載せた回路基板36が内包される。また、上述したボタン32,33も容器38に内包される。容器38においてボタン32,33に当接する部分は、外側からボタン32,33を押下できるように変形可能に構成されている。
容器38は、所定の規準の防水性能を有しており、浴室内部でお湯の中に落としても内部に水が浸入しないように構成されている。
【0025】
ここで、上述した構成を有する図1に示すオーディオ装置の動作を説明する。
まず利用者1は、入浴の前に、浴室100の扉101の外面に振動体20を貼り付け部材25で貼り付けておく。また、利用者1は、携帯音楽プレイヤー等のオーディオ機器50の信号出力端子とオーディオ信号増幅装置10の信号入力端子とを適当な長さのケーブルで接続するとともに、オーディオ信号増幅装置10の信号出力端子と振動体20の信号入力端子とをケーブルで接続しておく。
【0026】
次に、利用者1は、オーディオ信号増幅装置10とオーディオ機器50の電源をそれぞれオン状態とし、オーディオ機器50から所望のオーディオ信号を出力させる。これにより、オーディオ機器50から出力されるオーディオ信号がオーディオ信号増幅装置10において増幅され、増幅されたオーディオ信号が振動体20を駆動する。振動体20がオーディオ信号に応じて振動することにより、振動体20を貼り付けられた扉101がスピーカとして作用する。その結果、浴室100の内部では、オーディオ信号に応じた音が再生される。
【0027】
利用者1が浴室100の内部でリモートコントローラ30のボタン32,33を操作すると、この操作に応じた音量調節信号がリモートコントローラ30からオーディオ信号増幅装置10へ無線により送信され、この音量調節信号に応じて増幅回路14の増幅率が調節される。これにより、振動体20へ供給されるオーディオ信号のレベルが調節され、浴室100の内部における音量が調節される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係るオーディオ装置によれば、浴室100の扉101の外面に貼り付けた振動体20をオーディオ信号に応じて振動させることにより、扉101がスピーカとして作用し、浴室100内部においてオーディオ信号に応じた音が再生される。
従って、防水性能のいらない簡易な構成でありながら、普段使用しているオーディオ機器50の音楽等を浴室100の中で手軽に聞くことができる。特に、電子回路を内蔵しているオーディオ機器50やオーディオ信号増幅装置10を浴室の内部に持ち込まなくて良いため、これらの電子機器が水に濡れて故障する問題が殆ど生じないという利点がある。
【0029】
また、本実施形態に係るオーディオ装置によれば、浴室100の扉101をスピーカとして作用させるため、浴室100の内部で音が響き易くなり、振動体20の駆動信号が比較的小さい場合でも聴取に十分な音量が得られる。従って、オーディオ信号増幅装置10における電池の消耗が小さいという利点がある。
【0030】
また、本実施形態に係るオーディオ装置によれば、リモートコントローラ30において電子部品35やボタン32,33を内包する容器38が所定の規準の防水性能を有しているので、利用者1は浴室100の中で湯船に浸かりながら容易に音量を調節できる。リモートコントローラ30は、オーディオ機器50やオーディオ信号増幅装置10などに比べて内部の電子回路やボタン等の操作機構が非常に単純であるため、比較的簡易な構成の容器38によって所望の防水性能を得ることができる。
【0031】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態に係るオーディオ装置では、オーディオ機器10とオーディオ信号増幅装置10がケーブルによって接続されている。これに対し、本実施形態に係るオーディオ装置では、これらの機器の間で無線によりオーディオ信号が伝送される。
【0032】
図6は、本実施形態に係るオーディオ装置の構成の一例を示す図である。
図6に示すオーディオ装置は、図1に示すオーディオ装置におけるオーディオ信号増幅装置10をオーディオ信号増幅装置10Aへ変更するとともに、送信回路40を追加したものであり、他の構成要素は図1に示すオーディオ装置と同様である。
【0033】
送信回路40は、オーディオ機器50において出力されるオーディオ信号を含んだ無線信号(第2無線信号)に変換してオーディオ信号増幅装置10Aに送信する。
【0034】
オーディオ信号増幅装置10Aは、例えば図7に示すように、オーディオ信号増幅装置10(図3)と同様の構成に加えて、受信回路15を有する。
受信回路15は、送信回路40から送信された無線信号(第2無線信号)を受信してオーディオ信号に変換し、当該変換したオーディオ信号を増幅回路14に入力する。
リモートコントローラ30の送信回路34と送信回路40は異なる周波数帯の無線信号を生成し、互いに混信を生じないように構成されている。
【0035】
このように、本実施形態によれば、オーディオ機器50からオーディオ信号増幅装置10Aへのオーディオ信号の伝送が無線により行われるため、オーディオ機器50とオーディオ信号増幅装置10Aをケーブルで接続する必要がない。
これにより、宅内における通常の設置場所(例えば充電スタンド)にオーディオ機器50を置いたままで、浴室前のオーディオ信号増幅装置10Aにオーディオ信号を伝送できるので、利用者1が浴室の前までオーディオ機器50を運ぶ手間を省略できる。
【0036】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0037】
上述した実施形態では、オーディオ信号増幅装置10に入力可能なオーディオ信号が1系統に限られているが、本発明はこれに限定されない。例えば、オーディオ信号増幅装置10に複数系統のオーディオ信号を入力する入力端子と、この複数系統のオーディオ信号から1系統のオーディオ信号を選択するセレクタ回路とを設け、セレクタ回路により選択されたオーディオ信号を増幅回路14へ入力するようにしてもよい。この場合、セレクタ回路におけるオーディオ信号の選択を、リモートコントローラ30において送信される制御信号により制御してもよい。
【0038】
上述した実施形態では、浴室の扉の外面に振動体を貼り付ける例が挙げられているが、本発明はこれに限定されない。例えば部屋と部屋を仕切る扉や窓、壁などに振動体を貼り付けて、これらの場所をスピーカとして作用させることにより、オーディオ信号を再生させてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10,10A…オーディオ信号増幅装置、11…本体制御回路、12,15…受信回路、13…LED回路、14…増幅回路、20…振動体、25…貼り付け部材、30…リモートコントローラ、31…リモートコントローラ制御回路、32,33…ボタン、34,40…送信回路、35…電子部品、36…回路基板、38…容器(防水容器)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の所定の音量指示操作に応じた音量調節信号を生成するリモートコントローラ制御回路、及び、前記音量調節信号を含んだ無線信号を送信する送信回路を備えるリモートコントローラと、
入力される音響信号を増幅する増幅回路、前記無線信号を受信する受信回路、及び、前記受信回路において受信された前記無線信号に含まれる前記音量調節信号に応じて前記増幅回路の増幅率を制御する本体制御回路を備える音響信号増幅装置と、
前記増幅回路から出力される増幅された音響信号に応じて振動する振動体と、
前記振動体を浴室の扉の外面に貼り付ける貼り付け部材と
を有するオーディオ装置。
【請求項2】
前記リモートコントローラが、前記リモートコントローラ制御回路及び前記送信回路を内包する防水容器を備える、
請求項1に記載のオーディオ装置。
【請求項3】
前記貼り付け部材が、一方の面において前記振動体に粘着し、他方の面において前記浴室の扉の外面に粘着する両面粘着シートを含む、
請求項1又は2に記載のオーディオ装置。
【請求項4】
入力される音響信号を第2無線信号に変換して送信する第2送信回路を有し、
前記音響信号増幅装置が、前記第2無線信号を受信して音響信号に変換し、当該変換した音響信号を前記増幅回路に入力する第2受信回路を有する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のオーディオ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate