カバーフィルムの製造方法及びカバーフィルム用フィルム
【課題】構成材料の材質や層厚にかかわらず、割れや亀裂跡(白濁)を発生させることなく、打抜き加工処理を適用できるカバーフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】コート層3Aを基体シート2A上に流体状に形成するコート層形成(工程P2)と、コート層3Aが形成された基体シート2Aをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃4で抜き加工したときにコート層3Aにクラックが入らない硬度である第1硬度にコート層3Aを硬化させる第1硬化工程(P3)と、第1硬化工程(P3)の後、基体シート2A及びコート層3Aを含むフィルム(6)を抜き加工によって所望の形状に形成する抜き加工工程(P4)と、抜き加工工程(P4)後のコート層3Aを第1硬度よりも高い第2硬度に硬化させる第2硬化工程(P5)とを有するカバーフィルムの製造方法である。
【解決手段】コート層3Aを基体シート2A上に流体状に形成するコート層形成(工程P2)と、コート層3Aが形成された基体シート2Aをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃4で抜き加工したときにコート層3Aにクラックが入らない硬度である第1硬度にコート層3Aを硬化させる第1硬化工程(P3)と、第1硬化工程(P3)の後、基体シート2A及びコート層3Aを含むフィルム(6)を抜き加工によって所望の形状に形成する抜き加工工程(P4)と、抜き加工工程(P4)後のコート層3Aを第1硬度よりも高い第2硬度に硬化させる第2硬化工程(P5)とを有するカバーフィルムの製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な基材シート上にハードコート層を形成して成るカバーフィルムの製造方法に関する。また、本発明は、そのカバーフィルムの製造方法に用いられるカバーフィルム用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル等といった各種の電子機器製品の表示面上にカバーフィルムを設けることが広く行われている。これは、主に、電子機器の表示面に傷が付くことを防止したり、当該表示面に塵、ゴミ等が付着することを防止するためである。
【0003】
このようなカバーフィルムの製造方法として、従来、特許文献1の[0004]段落において「樹脂積層シートの製造方法」として開示された方法がある。この従来方法は、アクリル樹脂シート等から成る基材シート上にハードコート層を形成し、次いで切削加工によって基材及びハードコート層を所望の外形形状に形成するという方法である。この従来方法においては、切削加工によって所望の外形形状を加工するのに長時間を要していた。すなわち、切削加工の生産性が著しく低かった。また、加工コストが非常に高かった。
【0004】
また、特許文献1の[0007]段落には、従来の一般的な樹脂積層シートを所望の形状に形成する方法として切削加工に代えて打抜き加工を用いた場合に、シートに割れが発生してしまうことが記載されている。樹脂積層シートを抜き加工することについては特許文献2の[0005]、[0018]の各段落にも開示されている。
【0005】
そして、特許文献1の[0009]段落には、そのような割れの発生を防止した樹脂積層シートの製造方法が開示されている。具体的には、基材シートとハードコート層との間に介在層を設け、基材シート及び介在層の材質を特定し、さらに介在層の厚さ及び製品である樹脂積層シート全体の厚さの両厚さを特定することにより、工具を用いて打抜き処理を行うときの打抜き加工性を向上させている。そして、これにより、樹脂積層シートの生産性の向上を企図している。しかしながら、この方法では、シートの構成材料の材質や厚さを限定しなければならず、汎用性に乏しく、実用的でなかった。
【0006】
本発明に関連する技術が特許文献3に開示されている。この技術は、いわゆるインサート成形と呼ばれる手法を用いてカバーフィルムとしてのインサート絵付け品を製造する方法に関するものである。このカバーフィルムの製造方法は、分かり易く示せば図12に示すように、オーバーコート層を含むインサート成形用シートを形成し(工程P501〜P504)、オーバーコート層を硬化させないうちに絞り成形によってシートを3次元形状に形成し(工程P505)、絞り成形処理後のシートを金型内に配置して射出成形を行い(工程P506〜P508)、そして、射出成形によって得られた接着一体化成形品の構成要素であるオーバーコート層にUV(紫外線)を照射してそれを硬化させることによりハードコート層を持ったカバーフィルムを製造する(工程P509)、という方法である。この従来技術と本発明との関連については、後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−049623号公報
【特許文献2】特許第4192128号公報
【特許文献3】特開2004−082565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、構成材料の材質や層厚にかかわらず、割れや亀裂跡(白濁)を発生させることなく、打抜き加工処理を適用できるカバーフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
また、そのようなカバーフィルムの製造方法を実施するのに好適であるカバーフィルム用フィルムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)コート層を基体シート上に流体状に形成するコート層形成工程と、(2)前記コート層が形成された前記基体シートをロール状に巻いたときに当該コート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度である第1硬度に前記コート層を硬化させる第1硬化工程と、(3)当該第1硬化工程の後に前記基体シート及び前記コート層を含むフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成する抜き加工工程と、(4)当該抜き加工工程後の前記コート層を前記第1硬度よりも高い第2硬度に硬化させる第2硬化工程とを有することを特徴とする。
【0010】
上記構成において、「刃」は、例えば周知のビク刃すなわち彫刻刃である。ビク刃の断面形状は、例えば図11に示すような鋭角的な断面形状である。
【0011】
「基体シート」は、透明で打抜き加工に適した材料であれば任意の材料を選定して使用できる。「透明」とは、例えば光透過率が70〜95%の状態である。このような材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
【0012】
「抜き加工」とは、ビク刃すなわち彫刻刃等といった刃工具を用いてシート部材を所定の形状に切断する加工であり、ロータリー刃を用いたロータリー打抜き加工や、昇降移動する刃工具を用いた平打ち加工、等を採用できる。
【0013】
一般に、基体シート上にコート層を形成した当初、そのコート層は流体状、例えば液体であるので、ベタ付いたり、流動したりして取り扱いが不便である。本発明では、第1硬化工程により、コート層が相対する部材に貼り付かない第1硬度に硬化させられるので、コート層は人の手にも貼り付かず、ロール状に巻いても貼り付きが発生せず、取り扱いが容易となる。
【0014】
また、そのように第1硬度に硬化させられた後でも、その第1硬度は刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度であるので、基体シートとコート層とから成るフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成した場合、そのフィルムには割れや亀裂跡(白濁)が発生することがない。
【0015】
そして、抜き加工後にコート層に放射線を照射することでそのコート層を硬化させることにより、表面層にハードコート層を形成できる。こうして、傷が付き難いカバーフィルムを製造することができる。また、切削加工やレーザ加工でなく抜き加工による処理なので、生産効率が非常に高い。さらに、基体シートやコート層の材質、厚さ等を特定のものに限定する必要がないので、極めて汎用性が高く、実用的である。
【0016】
特許文献3には、コート層を硬化させる前にそのコート層を含んだシートに対して絞り加工を行い、加工後のシート材に対して射出成形を行い、その射出成形処理後にコート層にUV照射を行って該コート層を硬化させることにより、保護カバーとして機能し得るカバーフィルムとしての絵付け品を製造するというインサート成形方法が開示されている。この方法は、コート層が柔らかいうちに絞り加工を行い、絞り加工後にコート層を硬化させて所望の硬さを得るという技術であり、従って、コート層が柔らかいうちに抜き加工を行い、抜き加工後にコート層を硬化させて所望の硬さを得るという本発明と関連していると考えることも可能ではある。
【0017】
しかしながら、特許文献3に開示された技術は、絞り加工によって3次元形状(立体形状)を形成する際の工夫であるのに対し、本発明は3次元形状の成形とは無関係である抜き加工による外形形状の形成に関するものであり、その意味では両者は全く異なった技術を取り扱っている。
【0018】
本発明において、第1硬化工程におけるコート層の第1硬度、及び第2硬化工程におけるコート層の第2硬度は、コート層を形成する材料の成分の割合によって調整できる。
【0019】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、前記第1硬度は鉛筆硬度2H未満の硬度であることが望ましい。
【0020】
鉛筆硬度はJISによって規定されている硬度である。鉛筆硬度nH(一般にはnは整数)は、硬さnHの鉛筆で対象物を擦ったときにその対象物に傷が付き、それ以下の硬さの鉛筆では傷が付かない状態であるときの硬度のことである。例えば、硬さ2Hの鉛筆で対象物を擦ると傷が付き、それ以下の硬さの鉛筆では傷か付かない場合、その対象物の鉛筆硬度は硬度2Hである。
【0021】
コート層が鉛筆硬度2H未満であれば、コート層が形成された基体シートをロール状に巻いたときにそのコート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにそのコート層にクラック(すなわち、割れや亀裂跡(白濁)が入らない状態を実現できる。
【0022】
一般に鉛筆硬度は1H、2H、3H、4H、…、のように整数で表示される。本発明で「鉛筆硬度2H未満」という場合には、「2H」未満の整数値である「1H」だけを指標する意味ではなく、鉛筆硬度「2H」よりも低い任意の無段階の連続的な硬度を指標している。
【0023】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、前記第2硬度は鉛筆硬度2H以上の硬度であることが望ましい。コート層が鉛筆硬度2H以上であれば、コート層を傷の付き難いハードコート層とすることができる。
【0024】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、前記コート層は熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを混合して成る樹脂によって形成されることが望ましく、前記第1硬化工程は、加熱によって前記熱硬化型樹脂を硬化させることによって行われ、そして前記第2硬化工程は、放射線照射によって前記放射線硬化樹脂を硬化させることによって行われることが望ましい。この構成により、コート層の第1硬化及び第2硬化を正確に実現できる。
【0025】
なお、「放射線」とは、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線(UV)、X線、ガンマ線等といった電磁波、又はアルファ線、ベータ線、中性子線、電子線等といった粒子線である。放射線硬化樹脂は、必要に応じて任意の材料を選定して使用できる。このような材料としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、熱硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(2)当該印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、加熱により前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程とをさらに有することができ、(3)前記抜き加工工程では、前記基体シート、前記コート層及び前記印刷層を含むフィルムに抜き加工を行うことができる。このカバーフィルムの製造方法は、熱硬化性インクを用いて印刷を行う場合に好適である。
【0027】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(2)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、(3)前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程とを有することができる。このカバーフィルムの製造方法は、放射線硬化性インクを用いて印刷を行う場合に好適である。
【0028】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、(1)前記基体シートは放射線吸収剤を含む樹脂によって形成することができ、この場合、その製造方法は、(2)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(3)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、を有することができる。このカバーフィルムの製造方法も、放射線硬化性インクを用いて印刷を行う場合に好適である。
【0029】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記コート層が形成された側と反対側の前記基体シートに第2コート層を流体状に形成する第2コート層形成工程と、(2)前記第2コート層を、前記基体シートの曲がりを防止でき且つ刃で抜き加工したときに当該第2コート層にクラックが入らない硬度である第3硬度に硬化させる第2コート層硬化工程とを有することが望ましい。
【0030】
本発明において、コート層は硬化後の架橋硬化による収縮を生じ、この収縮により基体フィルムがカール、すなわち曲がることがある。この点に関し、本発明態様では、コート層が形成された側と反対側の基体シートに第2コート層を設け、その第2コート層を第3硬度、すなわち基体シートの曲がりを防止でき硬度に硬化させれば、基体シートのカールを防止できる。
【0031】
上記の第3硬度は、鉛筆硬度2H未満であることが望ましい。この硬度により、基体シートの表面側にコート層を設けた場合にカールが発生することを防止できる。しかも、抜き加工の際にクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)が入ることを防止できる。
【0032】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(2)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、(3)前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程とを有することができる。
【0033】
このカバーフィルムの製造方法は、コート層の反対側にカール防止用の第2コート層を設ける構成の場合に、放射線硬化性インクを用いて印刷を行うときに好適である。
【0034】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、(1)前記第2コート層は放射線吸収剤を含む樹脂によって形成できる。そして、この製造方法は、(2)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(3)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程とを有することができる。
【0035】
このカバーフィルムの製造方法は、コート層の反対側にカール防止用の第2コート層を設ける構成の場合に、放射線硬化性インクを用いて印刷を行うときに好適である。
【0036】
本発明において、第2コート層硬化工程における第2コート層の第3硬度は、第2コート層を形成する材料の成分の割合によって調整できる。
【0037】
本発明に係るカバーフィルム用フィルムは、基体シートと、当該基体シートに積層されたコート層とを有するカバーフィルム用フィルムであって、前記コート層は熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを含む樹脂によって形成されており、前記コート層は、加熱により前記熱硬化型樹脂が硬化され、放射線硬化樹脂は未硬化であることを特徴とする。
【0038】
このカバーフィルム用フィルムによれば、コート層が第1の硬度(例えば鉛筆硬度2H未満の硬度)へと熱硬化(第1の硬化)されていて、粘ツキや貼りツキが起こらないのでフィルムの取り扱いが容易である。具体的には、フィルムをロール状に巻き取ることも容易である。この巻き取りにより、フィルムの搬送が楽になる。
【0039】
また、熱硬化によるコート層の第1の硬化は、そのコート層が形成された基体シートをロール状に巻いたときにそのコート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにそのコート層にクラックが入らない程度の硬度である第1の硬度に抑えることができる。こうすれば、第1の硬化が終わってロール状等といった扱い易い状態に整えられたフィルムを抜き加工工程へ持ち運び、抜き加工を実施したとき、コート層にクラックを生じさせること無く、フィルムを所望の形状のカバーフィルムへと抜き加工することができる。コート層にクラックが生じないので、美麗な外観のカバーフィルムを製造できる。
【0040】
さらに、コート層は熱硬化型樹脂の他に放射線硬化型樹脂を含んでいるので、上記の抜き加工が終了した後にその放射線硬化型樹脂に放射線を当てて硬化(第2の硬化)をさせることができる。そして、この硬化によりコート層に所望の第2の硬度(例えば、鉛筆硬度2H以上の硬度)を付与することができ、その結果、容易には傷が付かないハードコート性を備えたカバーフィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0041】
(カバーフィルムの製造方法)
一般に、基体シート上にコート層を形成した当初、そのコート層は流体状、例えば液体であるので、べた付いたり、流動したりして取り扱いが不便である。本発明に係るカバーフィルムの製造方法では、第1硬化工程により、コート層が相対する部材に貼り付かない第1硬度に硬化させられるので、コート層は人の手にも貼り付かず、ロール状に巻いても貼り付きが発生せず、取り扱いが容易となる。
【0042】
また、そのように第1硬度に硬化させられた後でも、その第1硬度は刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度であるので、基体シートとコート層とから成るフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成した場合、そのフィルムには割れや亀裂跡(白濁)が発生することがない。
【0043】
そして、抜き加工後にコート層に放射線を照射することでそのコート層を硬化させることにより、表面層にハードコート層を形成できる。こうして、傷が付き難いカバーフィルムを製造することができる。また、切削加工やレーザ加工でなく抜き加工による処理なので、生産効率が非常に高い。さらに、基体シートやコート層の材質、厚さ等を特定のものに限定する必要がないので、極めて汎用性が高く、実用的である。
【0044】
(カバーフィルム用フィルム)
本発明に係るカバーフィルム用フィルムによれば、コート層が熱硬化(第1の硬化)されていて、粘ツキや貼りツキが起こらないのでフィルムの取り扱いが容易である。具体的には、フィルムをロール状に巻き取ることも容易である。この巻き取りにより、フィルムの搬送が楽になる。
【0045】
また、熱硬化によるコート層の第1の硬化は、そのコート層が形成された基体シートをロール状に巻いたときにそのコート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにそのコート層にクラックが入らない程度の硬度である第1の硬度に抑えることができる。こうすれば、第1の硬化が終わってロール状等といった扱い易い状態に整えられたフィルムを抜き加工工程へ持ち運び、抜き加工を実施したとき、コート層にクラックを生じさせること無く、フィルムを所望の形状のカバーフィルムへと抜き加工することができる。コート層にクラックが生じないので、美麗な外観のカバーフィルムを製造できる。
【0046】
さらに、コート層は熱硬化型樹脂の他に放射線硬化型樹脂を含んでいるので、上記の抜き加工が終了した後にその放射線硬化型樹脂に放射線を当てて硬化(第2の硬化)をさせることができる。そして、この硬化によりコート層に所望の第2の硬度(例えば、鉛筆硬度2H以上の硬度)を付与することができ、その結果、容易には傷が付かないハードコート性を備えたカバーフィルムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るカバーフィルムの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明で用いる基体シート及び本発明によって製造されるカバーフィルムのそれぞれの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るカバーフィルムの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図4】本発明で用いる基体シート及び本発明によって製造されるカバーフィルムのそれぞれの他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図6】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図7】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図8】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図9】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図10】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図11】本発明で用いる刃の形状の具体例を示す図である。
【図12】従来のカバーフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0049】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係るカバーフィルムの製造方法の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図2(b)に示すような長方形状のカバーフィルム1を製造するのに好適な製造方法である。カバーフィルム1は、例えば、携帯電話機の表示面や、PDA(Personal Digital Assistant 又は Personal Data Assistance)の表示面や、PDAの表示面に設けられたタッチパネルの表面、等に装着されてそれらの面を保護するために用いられる。
【0050】
本実施形態の製造方法では、図1において、基体シート2Aが用意される(工程P1)。基体シート2Aは、例えば図2(a)に示すように幅Wが広いロール状のシートとして提供される。ロール状の基体シート2Aは、主に、透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂によって形成されている。
【0051】
次に、基体シート2Aの表示側の表面である主面上にコート層3Aが積層、例えば塗布されて、フィルム6が形成される(工程P2)。コート層3Aは透明な樹脂によって形成されている。コート層3Aは、熱硬化型樹脂及び放射線硬化樹脂を含んだ樹脂によって形成されている。コート層3Aを形成する樹脂としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物等が用いられる。コート方法は周知の方法、例えば、ラミネート法、ロールコート法、スプレーコート法を採用できる。塗布された状態のコート層3Aは液体状、すなわち流体状であり、その硬度は、例えば鉛筆硬度1H以下である。
【0052】
次に、第1硬化工程P3において、フィルム6が加熱されてコート層3Aが第1硬度まで乾燥、すなわち硬化される。例えば、鉛筆硬度1H以下の硬度であったコート層3Aは、鉛筆硬度2H未満の適宜の第1硬度まで硬化される。この第1硬度は、具体的には、コート層3Aが形成された基体シート2Aをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにコート層3Aにクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)等が入らない硬度である。
【0053】
コート層3Aが第1硬化されたフィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で抜き加工処理場所へ搬送される。第1硬化されたコート層3Aは流動せず、べた付きもしないので、容易にロール状に巻き取ることができる。抜き加工処理場所へ搬送されたフィルム6は、抜き加工工程P4において刃工具4を用いて抜き加工(すなわち、打抜き加工)される。刃工具4としは、例えばビク刃すなわち彫刻刃を用いる。
【0054】
図1及びこれから説明する各図面において、各工程の間に描いた「実線」は、処理対象物であるフィルム等が同じ場所で連続的に各工程の処理を受けるか、同じ搬送ライン上で連続的に処理を受けることを示している。一方、各工程の間に描いた「破線」は、処理対象物を1つの工程処理場所から他の工程処理場所へ搬送することを示している。
もちろん、実際の作業においては、各工程の実施形態は図示した「実線」や「破線」で示される形態以外の任意の形態とすることができる。
【0055】
工程P4における抜き加工より、図2(b)に示すような所定形状(本実施形態では長方形状)のカバーフィルム1が複数個、同時に形成される。カバーフィルム1は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である鉛筆硬度2H未満であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0056】
次に、抜き加工後のカバーフィルム1のコート層3に放射線、例えばUV線(紫外線)が照射される(工程P5)。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。
【0057】
この第2硬度工程により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。その後、カバーフィルム1は、例えば、基体シート2の裏面側に接着層(例えば両面接着剤)が形成された後、携帯電話機等といった電子機器の表示面等といった対象物に装着される。これにより、電子機器等の表示面が傷、塵等から保護される。
【0058】
本実施形態では、カバーフィルム1を図2(b)の外形形状に仕上げる際に、切削加工やレーザ加工等といった個別の加工手法ではなく、多数個を一括して形成できる抜き加工を実現できるようになったので、実用的に非常に有利である。多数個取りなので製造コストも安くなる。しかも、抜き加工を採用したハードコートフィルムの製造方法であるにもかかわらず、フィルムに割れ、傷、亀裂跡(白濁)等が発生することを防止できる。
【0059】
なお、図1に示す工程図は、本発明の必須の工程要素を示したものであり、図示の工程要素に加えて必要に応じて他の工程要素を付加しても良い。
【0060】
(第2の実施形態)
図3は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法の他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(本実施形態では斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0061】
本実施形態において、基体シート準備工程P11から第1硬化工程P13までの工程は、図1の実施形態における基体シート準備工程P1から第1硬化工程P3までの工程と同じである。第1硬化工程(P13)後のフィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で印刷前処理場所へ搬送される。
【0062】
印刷前処理工程P14では、図4(a)のロール状の基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは第1硬度の状態であるので、この切断も容易且つ正確に行うことができる。
【0063】
前処理の終了後、印刷層形成工程P15において熱硬化性インクを用いて印刷処理が行われる。この印刷処理により、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0064】
次に、印刷層硬化工程P16において、フィルム6が加熱されて印刷層7が硬化される。その後、フィルム6は抜き加工工程P17へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である鉛筆硬度2H未満であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0065】
次に、第2硬化工程P18において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線、例えばUV線(紫外線)が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0066】
(第3の実施形態)
図5は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態も、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0067】
本実施形態において、基体シート準備工程P21から第1硬化工程P23までの工程は、図1の実施形態における基体シート準備工程P1から第1硬化工程P3までの工程と同じである。本実施形態では、その後、放射線吸収層形成工程P24において、コート層3Aが形成された主面と反対側の基体シート2Aの裏面上に、放射線吸収層8Aが形成される。放射線吸収層8Aは、本実施形態では、放射線であるUV(紫外)線を吸収してその進行を遮断する層である。
【0068】
その後、フィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で印刷前処理場所へ搬送される。印刷前処理工程P25では、図4(a)のロール状基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは第1硬度の状態であるので、この切断も容易且つ正確に行うことができる。
【0069】
前処理の終了後、印刷層形成工程P26において放射線硬化性インク(本実施形態ではUV線硬化性インク)を用いて印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0070】
その後、印刷層硬化工程P27において、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、印刷層7の表示面側には放射線吸収層8Aが設けられているので、このときの放射線は当該放射線吸収層8Aに吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは第1硬度(鉛筆硬度2H未満)の状態を維持する。
【0071】
その後、フィルム6は抜き加工工程P28へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である第1硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0072】
次に、第2硬化工程P29において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0073】
(第4の実施形態)
図6は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態も、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0074】
図5に示した実施形態では、工程P22で基体シート2Aの主面にコート層3Aを形成し、工程P24で基体シート2Aの裏面に放射線吸収層8Aを形成した。これに対し本実施形態では、初めに工程P32で放射線吸収層8Aを基体シート2Aの主面上に形成し、次いで工程P33でコート層3Aを放射線吸収層8Aの上に形成した。それ以降の工程は図5の実施形態と同じである。
【0075】
この実施形態においても、工程P37において印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、印刷層7の表示面側には放射線吸収層8Aが設けられているので、このときの放射線は当該放射線吸収層8Aに吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは工程P34で付与された第2硬化(鉛筆硬度2H未満)状態を維持する。
【0076】
そのため、工程P38において工具4を用いて抜き加工を行っても、コート層3Aに割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。次に、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0077】
(第5の実施形態)
図7は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態も、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0078】
本実施形態の製造方法では、図7の工程P41において、基体シート2Bが用意される。基体シート2Bは、例えば図4(a)に示すように幅Wが広いロール状のシートとして提供される。ロール状基体シート2Bは、透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)に放射線吸収剤を練り込んだ樹脂を主成分とする樹脂によって形成されている。
【0079】
次に、基体シート2Bの表示側の表面である主面上にコート層3Aが積層、例えば塗布される。コート層3Aは、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む透明な樹脂によって形成されている。コート方法は周知の方法、例えば、ラミネート法、ロールコート法、スプレーコート法を採用できる。
【0080】
第1硬化工程P43において、コート層3Aが加熱されて乾燥されて、鉛筆硬度1H以下の硬度であったコート層3Aが鉛筆硬度2H未満である第1硬度へと硬化される。この第1硬度は、具体的には、コート層3Aが形成された基体シート2Bをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにコート層3Aにクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)等が入らない硬度である。この第1硬化により、フィルム6は、コート層3Aがべた付かない状態となり、取扱者にとって取り扱い易い状態となる。
【0081】
次に、印刷前処理工程P44において、図4(a)のロール状の基体シート2Bが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは柔らかい第1硬度の状態であるので、この切断も容易に行うことができる。
【0082】
前処理の終了後、工程P45において印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は、放射線硬化インク(例えばUV硬化インク)を用いて行われる。印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0083】
その後、印刷層硬化工程P46において、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、基体シート2Bの内部には放射線吸収剤が練り込まれているので、このときの放射線は当該放射線吸収剤に吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは第1硬度の状態を維持する。
【0084】
その後、フィルム6は抜き加工工程P47へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である第1硬度(鉛筆硬度2H未満)であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0085】
次に、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度すなわち、鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0086】
(第6の実施形態)
図8は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図2(b)に示すような長方形状で印刷層を持たないカバーフィルム1を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0087】
本実施形態の製造方法では、図8において、基体シート2Aが用意される。基体シート2Aは、例えば図2(a)に示すように幅Wが広いロール状のシートとして提供される。ロール状基体シート2Aは、主に透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂によって形成されている。
【0088】
次に、基体シート2Aの表示側の表面である主面上に第1のコート層3Aが積層、例えば塗布される。第1のコート層3Aは、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む透明な樹脂によって形成されている。コート方法は周知の方法、例えば、ラミネート法、ロールコート法、スプレーコート法を採用できる。
【0089】
第1のコート層3Aが形成された後、その第1のコート層3Aに熱が加えられて、第1のコート層3Aが鉛筆硬度1H以下の硬度から鉛筆硬度2H未満である第1硬度へ硬化される。この第1硬度は、具体的には、コート層3Aが形成された基体シート2Aをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにコート層3Aにクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)等が入らない硬度である。この第1硬化により、フィルム6は、コート層3Aがべた付かない状態となり、取扱者にとって取り扱い易い状態となる。
【0090】
次に、工程P54において基体シート2Aの裏面に第2のコート層3Bを塗布し、さらに工程P55においてその第2のコート層3Bに熱が加えられて第2のコート層3Bを第3硬度まで硬化させる。基体シート2Aの表面にコート層3Aを形成して硬化させると、基体シート2Aはカールすなわち曲がりを生じることがある。本実施形態で基体シート2Aの裏面に第2のコート層3Bを形成するのは、基体シート2Aがそのようにカールすることを防止するためである。
【0091】
従って、第2のコート層3Bに付与される上記の第3硬度は、基体シート2Aがカールすなわち曲がることを防止できるに足る硬度である。また、後述の抜き加工工程P56において抜き加工が行われることを考慮すれば、上記の第3硬度は、刃で抜き加工したときに第2のコート層3Bにクラックが入らない硬度である。以上の事情から第3硬度は、より具体的には、鉛筆硬度2H未満の適宜の値である。
なお、第2のコート層3Bは、放射線硬化型樹脂によって形成され(工程P54)、放射線の照射を受けて第3硬度まで硬化される(工程P55)ものであっても良い。
【0092】
主面側のコート層3Aが第1硬度へ硬化され、裏面側のコート層3Bが第3硬度へ硬化された後、長尺上のフィルム6を巻き取る等して搬送し易い状態にし、そのフィルム6を抜き加工工程P56へ搬送する。
【0093】
抜き加工工程P56へ運ばれたフィルム6に対して、刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図2(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)のカバーフィルム1が形成される。カバーフィルム1は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3−1及び3−2を含んでいる。工程P56における抜き加工の時点ではコート層3A及び3Bはそれぞれ軟らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0094】
次に、抜き加工後のカバーフィルム1のコート層3−1に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3−1が第2硬度、すなわち鉛筆硬度3H、4H又はそれらの近傍の値まで硬化する。これにより、基体シート2Aの表面側に傷等が付き難いハードコート層3Aが形成される。
【0095】
反対側のコート層3−2は表面側に位置するコート層ではないので、必ずしも表面側のコート層3−1のように硬度が高くなくても良い、それ故、本実施形態では裏面のコート層3−2については、工程P57において更なる硬化処理は行わないこととしている。しかしながら、必要がある場合には、裏面のコート層3−2に対しても放射線照射を行って硬度をさらに高めても良い。
【0096】
(第7の実施形態)
図9は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7を持ったカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0097】
本実施形態において、基体シート準備工程P61から第2コート層硬化工程P65までの工程は、図8の実施形態における基体シート準備工程P51から第2コート層硬化工程P55までの工程と同じである。本実施形態では、その後、放射線吸収層形成工程P66において、コート層3Aが形成された主面と反対側の基体シート2Aの裏面上に、放射線吸収層8Aが形成される。放射線吸収層8Aは、本実施形態では、放射線であるUV(紫外)線を吸収してその進行を遮断する層である。
【0098】
その後、フィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で印刷前処理場所へ搬送される。印刷前処理工程P67では、図4(a)のロール状基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは第1硬度の状態であるので、この切断も容易且つ正確に行うことができる。
【0099】
前処理の終了後、印刷層形成工程P68において放射線硬化性インク(本実施形態ではUV線硬化性インク)を用いて印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0100】
その後、印刷層硬化工程P69において、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、印刷層7の表示面側には放射線吸収層8Aが設けられているので、このときの放射線は当該放射線吸収層8Aに吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは第1硬度(鉛筆硬度2H未満)の状態を維持する。
【0101】
その後、フィルム6は抜き加工工程P70へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3−1及び3−2を含んでいる。抜き加工工程時70におけるコート層3A及び3Bは抜き加工の時点では、それぞれ、軟らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0102】
次に、第2硬化工程P71において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3−1に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3−1が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0103】
(第8の実施形態)
図10は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7を持ったカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0104】
図8に示した実施形態では、工程P54において基体シート2Aの裏面に、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む透明な樹脂によって形成された第2のコート層3Bを塗布した。これに対し、本実施形態では、工程P84において、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む樹脂に、さらに放射線吸収剤を練り込んだ透明な樹脂よって形成された第2のコート層3Bを塗布した。
【0105】
次に、工程P85においてその第2のコート層3Bに熱が加えられて第2のコート層3Bを第3硬度まで硬化させる。この第3硬度は、基体シート2Aがカールすなわち曲がることを防止できるに足る硬度である。また、後述の抜き加工工程P89において抜き加工が行われることを考慮すれば、上記の第3硬度は、刃で抜き加工したときに第2のコート層3Bにクラックが入らない硬度である。以上の事情から第3硬度は、より具体的には、鉛筆硬度2H未満の適宜の値である。
【0106】
次に、印刷前処理工程P86において、図4(a)のロール状基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。このとき、コート層3A,3Bはそれぞれ柔らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、この切断も容易に行うことができる。
【0107】
前処理の終了後、工程P87において印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は、放射線硬化インクであるUV硬化インクを用いて行われる。印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0108】
その後、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、第2のコート層3Bの内部には放射線吸収剤が練り込まれているので、このときの放射線は当該放射線吸収剤に吸収されて第1のコート層3Aには到達せず、それ故、第1のコート層3Aは柔らかい状態である第1硬度を維持する。
【0109】
その後、フィルム6は抜き加工工程P89へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工(すなわち打抜き加工)が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が複数個、同時に形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2並びにそれに接着した同形状の第1のコート層3−1及び第2のコート層3−2を含んでいる。抜き加工工程P89の時点では、第1のコート層3A及び第2のコート層3Bはそれぞれに軟らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0110】
次に、第2硬化工程P90において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3−1に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3−1が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3−1が形成される。
【0111】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0112】
例えば、抜き加工によって形成するフィルムの外形形状は、図2(b)及び図4(b)に示すような長方形状に限られず、必要に応じて任意の外形形状にすることができる。また、印刷層7のパターン、すなわち模様は、図4(b)に示すような枠形状に限られず、必要に応じて任意の模様にすることができる。
【符号の説明】
【0113】
1.カバーフィルム、 2.基体シート、 2A.抜き加工前の基体シート、 2B.放射線吸収剤練りこみシート、 3,3−1,3−2.コート層、 3A.抜き加工前のコート層、 3B.第2のコート層、 4.刃工具、 6.フィルム、 7.印刷層、 8.放射線吸収層、 8A.抜き加工前の放射線吸収層、 11.カバーフィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な基材シート上にハードコート層を形成して成るカバーフィルムの製造方法に関する。また、本発明は、そのカバーフィルムの製造方法に用いられるカバーフィルム用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル等といった各種の電子機器製品の表示面上にカバーフィルムを設けることが広く行われている。これは、主に、電子機器の表示面に傷が付くことを防止したり、当該表示面に塵、ゴミ等が付着することを防止するためである。
【0003】
このようなカバーフィルムの製造方法として、従来、特許文献1の[0004]段落において「樹脂積層シートの製造方法」として開示された方法がある。この従来方法は、アクリル樹脂シート等から成る基材シート上にハードコート層を形成し、次いで切削加工によって基材及びハードコート層を所望の外形形状に形成するという方法である。この従来方法においては、切削加工によって所望の外形形状を加工するのに長時間を要していた。すなわち、切削加工の生産性が著しく低かった。また、加工コストが非常に高かった。
【0004】
また、特許文献1の[0007]段落には、従来の一般的な樹脂積層シートを所望の形状に形成する方法として切削加工に代えて打抜き加工を用いた場合に、シートに割れが発生してしまうことが記載されている。樹脂積層シートを抜き加工することについては特許文献2の[0005]、[0018]の各段落にも開示されている。
【0005】
そして、特許文献1の[0009]段落には、そのような割れの発生を防止した樹脂積層シートの製造方法が開示されている。具体的には、基材シートとハードコート層との間に介在層を設け、基材シート及び介在層の材質を特定し、さらに介在層の厚さ及び製品である樹脂積層シート全体の厚さの両厚さを特定することにより、工具を用いて打抜き処理を行うときの打抜き加工性を向上させている。そして、これにより、樹脂積層シートの生産性の向上を企図している。しかしながら、この方法では、シートの構成材料の材質や厚さを限定しなければならず、汎用性に乏しく、実用的でなかった。
【0006】
本発明に関連する技術が特許文献3に開示されている。この技術は、いわゆるインサート成形と呼ばれる手法を用いてカバーフィルムとしてのインサート絵付け品を製造する方法に関するものである。このカバーフィルムの製造方法は、分かり易く示せば図12に示すように、オーバーコート層を含むインサート成形用シートを形成し(工程P501〜P504)、オーバーコート層を硬化させないうちに絞り成形によってシートを3次元形状に形成し(工程P505)、絞り成形処理後のシートを金型内に配置して射出成形を行い(工程P506〜P508)、そして、射出成形によって得られた接着一体化成形品の構成要素であるオーバーコート層にUV(紫外線)を照射してそれを硬化させることによりハードコート層を持ったカバーフィルムを製造する(工程P509)、という方法である。この従来技術と本発明との関連については、後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−049623号公報
【特許文献2】特許第4192128号公報
【特許文献3】特開2004−082565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、構成材料の材質や層厚にかかわらず、割れや亀裂跡(白濁)を発生させることなく、打抜き加工処理を適用できるカバーフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
また、そのようなカバーフィルムの製造方法を実施するのに好適であるカバーフィルム用フィルムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)コート層を基体シート上に流体状に形成するコート層形成工程と、(2)前記コート層が形成された前記基体シートをロール状に巻いたときに当該コート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度である第1硬度に前記コート層を硬化させる第1硬化工程と、(3)当該第1硬化工程の後に前記基体シート及び前記コート層を含むフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成する抜き加工工程と、(4)当該抜き加工工程後の前記コート層を前記第1硬度よりも高い第2硬度に硬化させる第2硬化工程とを有することを特徴とする。
【0010】
上記構成において、「刃」は、例えば周知のビク刃すなわち彫刻刃である。ビク刃の断面形状は、例えば図11に示すような鋭角的な断面形状である。
【0011】
「基体シート」は、透明で打抜き加工に適した材料であれば任意の材料を選定して使用できる。「透明」とは、例えば光透過率が70〜95%の状態である。このような材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
【0012】
「抜き加工」とは、ビク刃すなわち彫刻刃等といった刃工具を用いてシート部材を所定の形状に切断する加工であり、ロータリー刃を用いたロータリー打抜き加工や、昇降移動する刃工具を用いた平打ち加工、等を採用できる。
【0013】
一般に、基体シート上にコート層を形成した当初、そのコート層は流体状、例えば液体であるので、ベタ付いたり、流動したりして取り扱いが不便である。本発明では、第1硬化工程により、コート層が相対する部材に貼り付かない第1硬度に硬化させられるので、コート層は人の手にも貼り付かず、ロール状に巻いても貼り付きが発生せず、取り扱いが容易となる。
【0014】
また、そのように第1硬度に硬化させられた後でも、その第1硬度は刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度であるので、基体シートとコート層とから成るフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成した場合、そのフィルムには割れや亀裂跡(白濁)が発生することがない。
【0015】
そして、抜き加工後にコート層に放射線を照射することでそのコート層を硬化させることにより、表面層にハードコート層を形成できる。こうして、傷が付き難いカバーフィルムを製造することができる。また、切削加工やレーザ加工でなく抜き加工による処理なので、生産効率が非常に高い。さらに、基体シートやコート層の材質、厚さ等を特定のものに限定する必要がないので、極めて汎用性が高く、実用的である。
【0016】
特許文献3には、コート層を硬化させる前にそのコート層を含んだシートに対して絞り加工を行い、加工後のシート材に対して射出成形を行い、その射出成形処理後にコート層にUV照射を行って該コート層を硬化させることにより、保護カバーとして機能し得るカバーフィルムとしての絵付け品を製造するというインサート成形方法が開示されている。この方法は、コート層が柔らかいうちに絞り加工を行い、絞り加工後にコート層を硬化させて所望の硬さを得るという技術であり、従って、コート層が柔らかいうちに抜き加工を行い、抜き加工後にコート層を硬化させて所望の硬さを得るという本発明と関連していると考えることも可能ではある。
【0017】
しかしながら、特許文献3に開示された技術は、絞り加工によって3次元形状(立体形状)を形成する際の工夫であるのに対し、本発明は3次元形状の成形とは無関係である抜き加工による外形形状の形成に関するものであり、その意味では両者は全く異なった技術を取り扱っている。
【0018】
本発明において、第1硬化工程におけるコート層の第1硬度、及び第2硬化工程におけるコート層の第2硬度は、コート層を形成する材料の成分の割合によって調整できる。
【0019】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、前記第1硬度は鉛筆硬度2H未満の硬度であることが望ましい。
【0020】
鉛筆硬度はJISによって規定されている硬度である。鉛筆硬度nH(一般にはnは整数)は、硬さnHの鉛筆で対象物を擦ったときにその対象物に傷が付き、それ以下の硬さの鉛筆では傷が付かない状態であるときの硬度のことである。例えば、硬さ2Hの鉛筆で対象物を擦ると傷が付き、それ以下の硬さの鉛筆では傷か付かない場合、その対象物の鉛筆硬度は硬度2Hである。
【0021】
コート層が鉛筆硬度2H未満であれば、コート層が形成された基体シートをロール状に巻いたときにそのコート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにそのコート層にクラック(すなわち、割れや亀裂跡(白濁)が入らない状態を実現できる。
【0022】
一般に鉛筆硬度は1H、2H、3H、4H、…、のように整数で表示される。本発明で「鉛筆硬度2H未満」という場合には、「2H」未満の整数値である「1H」だけを指標する意味ではなく、鉛筆硬度「2H」よりも低い任意の無段階の連続的な硬度を指標している。
【0023】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、前記第2硬度は鉛筆硬度2H以上の硬度であることが望ましい。コート層が鉛筆硬度2H以上であれば、コート層を傷の付き難いハードコート層とすることができる。
【0024】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、前記コート層は熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを混合して成る樹脂によって形成されることが望ましく、前記第1硬化工程は、加熱によって前記熱硬化型樹脂を硬化させることによって行われ、そして前記第2硬化工程は、放射線照射によって前記放射線硬化樹脂を硬化させることによって行われることが望ましい。この構成により、コート層の第1硬化及び第2硬化を正確に実現できる。
【0025】
なお、「放射線」とは、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線(UV)、X線、ガンマ線等といった電磁波、又はアルファ線、ベータ線、中性子線、電子線等といった粒子線である。放射線硬化樹脂は、必要に応じて任意の材料を選定して使用できる。このような材料としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、熱硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(2)当該印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、加熱により前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程とをさらに有することができ、(3)前記抜き加工工程では、前記基体シート、前記コート層及び前記印刷層を含むフィルムに抜き加工を行うことができる。このカバーフィルムの製造方法は、熱硬化性インクを用いて印刷を行う場合に好適である。
【0027】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(2)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、(3)前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程とを有することができる。このカバーフィルムの製造方法は、放射線硬化性インクを用いて印刷を行う場合に好適である。
【0028】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、(1)前記基体シートは放射線吸収剤を含む樹脂によって形成することができ、この場合、その製造方法は、(2)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(3)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、を有することができる。このカバーフィルムの製造方法も、放射線硬化性インクを用いて印刷を行う場合に好適である。
【0029】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記コート層が形成された側と反対側の前記基体シートに第2コート層を流体状に形成する第2コート層形成工程と、(2)前記第2コート層を、前記基体シートの曲がりを防止でき且つ刃で抜き加工したときに当該第2コート層にクラックが入らない硬度である第3硬度に硬化させる第2コート層硬化工程とを有することが望ましい。
【0030】
本発明において、コート層は硬化後の架橋硬化による収縮を生じ、この収縮により基体フィルムがカール、すなわち曲がることがある。この点に関し、本発明態様では、コート層が形成された側と反対側の基体シートに第2コート層を設け、その第2コート層を第3硬度、すなわち基体シートの曲がりを防止でき硬度に硬化させれば、基体シートのカールを防止できる。
【0031】
上記の第3硬度は、鉛筆硬度2H未満であることが望ましい。この硬度により、基体シートの表面側にコート層を設けた場合にカールが発生することを防止できる。しかも、抜き加工の際にクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)が入ることを防止できる。
【0032】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、(1)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(2)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、(3)前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程とを有することができる。
【0033】
このカバーフィルムの製造方法は、コート層の反対側にカール防止用の第2コート層を設ける構成の場合に、放射線硬化性インクを用いて印刷を行うときに好適である。
【0034】
本発明に係るカバーフィルムの製造方法において、(1)前記第2コート層は放射線吸収剤を含む樹脂によって形成できる。そして、この製造方法は、(2)前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、(3)前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程とを有することができる。
【0035】
このカバーフィルムの製造方法は、コート層の反対側にカール防止用の第2コート層を設ける構成の場合に、放射線硬化性インクを用いて印刷を行うときに好適である。
【0036】
本発明において、第2コート層硬化工程における第2コート層の第3硬度は、第2コート層を形成する材料の成分の割合によって調整できる。
【0037】
本発明に係るカバーフィルム用フィルムは、基体シートと、当該基体シートに積層されたコート層とを有するカバーフィルム用フィルムであって、前記コート層は熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを含む樹脂によって形成されており、前記コート層は、加熱により前記熱硬化型樹脂が硬化され、放射線硬化樹脂は未硬化であることを特徴とする。
【0038】
このカバーフィルム用フィルムによれば、コート層が第1の硬度(例えば鉛筆硬度2H未満の硬度)へと熱硬化(第1の硬化)されていて、粘ツキや貼りツキが起こらないのでフィルムの取り扱いが容易である。具体的には、フィルムをロール状に巻き取ることも容易である。この巻き取りにより、フィルムの搬送が楽になる。
【0039】
また、熱硬化によるコート層の第1の硬化は、そのコート層が形成された基体シートをロール状に巻いたときにそのコート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにそのコート層にクラックが入らない程度の硬度である第1の硬度に抑えることができる。こうすれば、第1の硬化が終わってロール状等といった扱い易い状態に整えられたフィルムを抜き加工工程へ持ち運び、抜き加工を実施したとき、コート層にクラックを生じさせること無く、フィルムを所望の形状のカバーフィルムへと抜き加工することができる。コート層にクラックが生じないので、美麗な外観のカバーフィルムを製造できる。
【0040】
さらに、コート層は熱硬化型樹脂の他に放射線硬化型樹脂を含んでいるので、上記の抜き加工が終了した後にその放射線硬化型樹脂に放射線を当てて硬化(第2の硬化)をさせることができる。そして、この硬化によりコート層に所望の第2の硬度(例えば、鉛筆硬度2H以上の硬度)を付与することができ、その結果、容易には傷が付かないハードコート性を備えたカバーフィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0041】
(カバーフィルムの製造方法)
一般に、基体シート上にコート層を形成した当初、そのコート層は流体状、例えば液体であるので、べた付いたり、流動したりして取り扱いが不便である。本発明に係るカバーフィルムの製造方法では、第1硬化工程により、コート層が相対する部材に貼り付かない第1硬度に硬化させられるので、コート層は人の手にも貼り付かず、ロール状に巻いても貼り付きが発生せず、取り扱いが容易となる。
【0042】
また、そのように第1硬度に硬化させられた後でも、その第1硬度は刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度であるので、基体シートとコート層とから成るフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成した場合、そのフィルムには割れや亀裂跡(白濁)が発生することがない。
【0043】
そして、抜き加工後にコート層に放射線を照射することでそのコート層を硬化させることにより、表面層にハードコート層を形成できる。こうして、傷が付き難いカバーフィルムを製造することができる。また、切削加工やレーザ加工でなく抜き加工による処理なので、生産効率が非常に高い。さらに、基体シートやコート層の材質、厚さ等を特定のものに限定する必要がないので、極めて汎用性が高く、実用的である。
【0044】
(カバーフィルム用フィルム)
本発明に係るカバーフィルム用フィルムによれば、コート層が熱硬化(第1の硬化)されていて、粘ツキや貼りツキが起こらないのでフィルムの取り扱いが容易である。具体的には、フィルムをロール状に巻き取ることも容易である。この巻き取りにより、フィルムの搬送が楽になる。
【0045】
また、熱硬化によるコート層の第1の硬化は、そのコート層が形成された基体シートをロール状に巻いたときにそのコート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにそのコート層にクラックが入らない程度の硬度である第1の硬度に抑えることができる。こうすれば、第1の硬化が終わってロール状等といった扱い易い状態に整えられたフィルムを抜き加工工程へ持ち運び、抜き加工を実施したとき、コート層にクラックを生じさせること無く、フィルムを所望の形状のカバーフィルムへと抜き加工することができる。コート層にクラックが生じないので、美麗な外観のカバーフィルムを製造できる。
【0046】
さらに、コート層は熱硬化型樹脂の他に放射線硬化型樹脂を含んでいるので、上記の抜き加工が終了した後にその放射線硬化型樹脂に放射線を当てて硬化(第2の硬化)をさせることができる。そして、この硬化によりコート層に所望の第2の硬度(例えば、鉛筆硬度2H以上の硬度)を付与することができ、その結果、容易には傷が付かないハードコート性を備えたカバーフィルムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るカバーフィルムの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明で用いる基体シート及び本発明によって製造されるカバーフィルムのそれぞれの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るカバーフィルムの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図4】本発明で用いる基体シート及び本発明によって製造されるカバーフィルムのそれぞれの他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図6】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図7】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図8】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図9】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図10】本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示す工程図である。
【図11】本発明で用いる刃の形状の具体例を示す図である。
【図12】従来のカバーフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0049】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係るカバーフィルムの製造方法の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図2(b)に示すような長方形状のカバーフィルム1を製造するのに好適な製造方法である。カバーフィルム1は、例えば、携帯電話機の表示面や、PDA(Personal Digital Assistant 又は Personal Data Assistance)の表示面や、PDAの表示面に設けられたタッチパネルの表面、等に装着されてそれらの面を保護するために用いられる。
【0050】
本実施形態の製造方法では、図1において、基体シート2Aが用意される(工程P1)。基体シート2Aは、例えば図2(a)に示すように幅Wが広いロール状のシートとして提供される。ロール状の基体シート2Aは、主に、透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂によって形成されている。
【0051】
次に、基体シート2Aの表示側の表面である主面上にコート層3Aが積層、例えば塗布されて、フィルム6が形成される(工程P2)。コート層3Aは透明な樹脂によって形成されている。コート層3Aは、熱硬化型樹脂及び放射線硬化樹脂を含んだ樹脂によって形成されている。コート層3Aを形成する樹脂としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物等が用いられる。コート方法は周知の方法、例えば、ラミネート法、ロールコート法、スプレーコート法を採用できる。塗布された状態のコート層3Aは液体状、すなわち流体状であり、その硬度は、例えば鉛筆硬度1H以下である。
【0052】
次に、第1硬化工程P3において、フィルム6が加熱されてコート層3Aが第1硬度まで乾燥、すなわち硬化される。例えば、鉛筆硬度1H以下の硬度であったコート層3Aは、鉛筆硬度2H未満の適宜の第1硬度まで硬化される。この第1硬度は、具体的には、コート層3Aが形成された基体シート2Aをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにコート層3Aにクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)等が入らない硬度である。
【0053】
コート層3Aが第1硬化されたフィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で抜き加工処理場所へ搬送される。第1硬化されたコート層3Aは流動せず、べた付きもしないので、容易にロール状に巻き取ることができる。抜き加工処理場所へ搬送されたフィルム6は、抜き加工工程P4において刃工具4を用いて抜き加工(すなわち、打抜き加工)される。刃工具4としは、例えばビク刃すなわち彫刻刃を用いる。
【0054】
図1及びこれから説明する各図面において、各工程の間に描いた「実線」は、処理対象物であるフィルム等が同じ場所で連続的に各工程の処理を受けるか、同じ搬送ライン上で連続的に処理を受けることを示している。一方、各工程の間に描いた「破線」は、処理対象物を1つの工程処理場所から他の工程処理場所へ搬送することを示している。
もちろん、実際の作業においては、各工程の実施形態は図示した「実線」や「破線」で示される形態以外の任意の形態とすることができる。
【0055】
工程P4における抜き加工より、図2(b)に示すような所定形状(本実施形態では長方形状)のカバーフィルム1が複数個、同時に形成される。カバーフィルム1は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である鉛筆硬度2H未満であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0056】
次に、抜き加工後のカバーフィルム1のコート層3に放射線、例えばUV線(紫外線)が照射される(工程P5)。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。
【0057】
この第2硬度工程により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。その後、カバーフィルム1は、例えば、基体シート2の裏面側に接着層(例えば両面接着剤)が形成された後、携帯電話機等といった電子機器の表示面等といった対象物に装着される。これにより、電子機器等の表示面が傷、塵等から保護される。
【0058】
本実施形態では、カバーフィルム1を図2(b)の外形形状に仕上げる際に、切削加工やレーザ加工等といった個別の加工手法ではなく、多数個を一括して形成できる抜き加工を実現できるようになったので、実用的に非常に有利である。多数個取りなので製造コストも安くなる。しかも、抜き加工を採用したハードコートフィルムの製造方法であるにもかかわらず、フィルムに割れ、傷、亀裂跡(白濁)等が発生することを防止できる。
【0059】
なお、図1に示す工程図は、本発明の必須の工程要素を示したものであり、図示の工程要素に加えて必要に応じて他の工程要素を付加しても良い。
【0060】
(第2の実施形態)
図3は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法の他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(本実施形態では斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0061】
本実施形態において、基体シート準備工程P11から第1硬化工程P13までの工程は、図1の実施形態における基体シート準備工程P1から第1硬化工程P3までの工程と同じである。第1硬化工程(P13)後のフィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で印刷前処理場所へ搬送される。
【0062】
印刷前処理工程P14では、図4(a)のロール状の基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは第1硬度の状態であるので、この切断も容易且つ正確に行うことができる。
【0063】
前処理の終了後、印刷層形成工程P15において熱硬化性インクを用いて印刷処理が行われる。この印刷処理により、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0064】
次に、印刷層硬化工程P16において、フィルム6が加熱されて印刷層7が硬化される。その後、フィルム6は抜き加工工程P17へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である鉛筆硬度2H未満であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0065】
次に、第2硬化工程P18において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線、例えばUV線(紫外線)が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0066】
(第3の実施形態)
図5は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態も、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0067】
本実施形態において、基体シート準備工程P21から第1硬化工程P23までの工程は、図1の実施形態における基体シート準備工程P1から第1硬化工程P3までの工程と同じである。本実施形態では、その後、放射線吸収層形成工程P24において、コート層3Aが形成された主面と反対側の基体シート2Aの裏面上に、放射線吸収層8Aが形成される。放射線吸収層8Aは、本実施形態では、放射線であるUV(紫外)線を吸収してその進行を遮断する層である。
【0068】
その後、フィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で印刷前処理場所へ搬送される。印刷前処理工程P25では、図4(a)のロール状基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは第1硬度の状態であるので、この切断も容易且つ正確に行うことができる。
【0069】
前処理の終了後、印刷層形成工程P26において放射線硬化性インク(本実施形態ではUV線硬化性インク)を用いて印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0070】
その後、印刷層硬化工程P27において、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、印刷層7の表示面側には放射線吸収層8Aが設けられているので、このときの放射線は当該放射線吸収層8Aに吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは第1硬度(鉛筆硬度2H未満)の状態を維持する。
【0071】
その後、フィルム6は抜き加工工程P28へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である第1硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0072】
次に、第2硬化工程P29において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0073】
(第4の実施形態)
図6は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態も、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0074】
図5に示した実施形態では、工程P22で基体シート2Aの主面にコート層3Aを形成し、工程P24で基体シート2Aの裏面に放射線吸収層8Aを形成した。これに対し本実施形態では、初めに工程P32で放射線吸収層8Aを基体シート2Aの主面上に形成し、次いで工程P33でコート層3Aを放射線吸収層8Aの上に形成した。それ以降の工程は図5の実施形態と同じである。
【0075】
この実施形態においても、工程P37において印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、印刷層7の表示面側には放射線吸収層8Aが設けられているので、このときの放射線は当該放射線吸収層8Aに吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは工程P34で付与された第2硬化(鉛筆硬度2H未満)状態を維持する。
【0076】
そのため、工程P38において工具4を用いて抜き加工を行っても、コート層3Aに割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。次に、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0077】
(第5の実施形態)
図7は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態も、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7(斜線で示す枠領域)が設けられたカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0078】
本実施形態の製造方法では、図7の工程P41において、基体シート2Bが用意される。基体シート2Bは、例えば図4(a)に示すように幅Wが広いロール状のシートとして提供される。ロール状基体シート2Bは、透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)に放射線吸収剤を練り込んだ樹脂を主成分とする樹脂によって形成されている。
【0079】
次に、基体シート2Bの表示側の表面である主面上にコート層3Aが積層、例えば塗布される。コート層3Aは、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む透明な樹脂によって形成されている。コート方法は周知の方法、例えば、ラミネート法、ロールコート法、スプレーコート法を採用できる。
【0080】
第1硬化工程P43において、コート層3Aが加熱されて乾燥されて、鉛筆硬度1H以下の硬度であったコート層3Aが鉛筆硬度2H未満である第1硬度へと硬化される。この第1硬度は、具体的には、コート層3Aが形成された基体シート2Bをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにコート層3Aにクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)等が入らない硬度である。この第1硬化により、フィルム6は、コート層3Aがべた付かない状態となり、取扱者にとって取り扱い易い状態となる。
【0081】
次に、印刷前処理工程P44において、図4(a)のロール状の基体シート2Bが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは柔らかい第1硬度の状態であるので、この切断も容易に行うことができる。
【0082】
前処理の終了後、工程P45において印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は、放射線硬化インク(例えばUV硬化インク)を用いて行われる。印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0083】
その後、印刷層硬化工程P46において、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、基体シート2Bの内部には放射線吸収剤が練り込まれているので、このときの放射線は当該放射線吸収剤に吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは第1硬度の状態を維持する。
【0084】
その後、フィルム6は抜き加工工程P47へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3を含んでいる。コート層3Aは抜き加工の時点では軟らかい硬度である第1硬度(鉛筆硬度2H未満)であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0085】
次に、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3が第2硬度すなわち、鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0086】
(第6の実施形態)
図8は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図2(b)に示すような長方形状で印刷層を持たないカバーフィルム1を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0087】
本実施形態の製造方法では、図8において、基体シート2Aが用意される。基体シート2Aは、例えば図2(a)に示すように幅Wが広いロール状のシートとして提供される。ロール状基体シート2Aは、主に透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂によって形成されている。
【0088】
次に、基体シート2Aの表示側の表面である主面上に第1のコート層3Aが積層、例えば塗布される。第1のコート層3Aは、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む透明な樹脂によって形成されている。コート方法は周知の方法、例えば、ラミネート法、ロールコート法、スプレーコート法を採用できる。
【0089】
第1のコート層3Aが形成された後、その第1のコート層3Aに熱が加えられて、第1のコート層3Aが鉛筆硬度1H以下の硬度から鉛筆硬度2H未満である第1硬度へ硬化される。この第1硬度は、具体的には、コート層3Aが形成された基体シート2Aをロール状に巻いたときにコート層3Aが相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときにコート層3Aにクラック、すなわち割れや亀裂跡(白濁)等が入らない硬度である。この第1硬化により、フィルム6は、コート層3Aがべた付かない状態となり、取扱者にとって取り扱い易い状態となる。
【0090】
次に、工程P54において基体シート2Aの裏面に第2のコート層3Bを塗布し、さらに工程P55においてその第2のコート層3Bに熱が加えられて第2のコート層3Bを第3硬度まで硬化させる。基体シート2Aの表面にコート層3Aを形成して硬化させると、基体シート2Aはカールすなわち曲がりを生じることがある。本実施形態で基体シート2Aの裏面に第2のコート層3Bを形成するのは、基体シート2Aがそのようにカールすることを防止するためである。
【0091】
従って、第2のコート層3Bに付与される上記の第3硬度は、基体シート2Aがカールすなわち曲がることを防止できるに足る硬度である。また、後述の抜き加工工程P56において抜き加工が行われることを考慮すれば、上記の第3硬度は、刃で抜き加工したときに第2のコート層3Bにクラックが入らない硬度である。以上の事情から第3硬度は、より具体的には、鉛筆硬度2H未満の適宜の値である。
なお、第2のコート層3Bは、放射線硬化型樹脂によって形成され(工程P54)、放射線の照射を受けて第3硬度まで硬化される(工程P55)ものであっても良い。
【0092】
主面側のコート層3Aが第1硬度へ硬化され、裏面側のコート層3Bが第3硬度へ硬化された後、長尺上のフィルム6を巻き取る等して搬送し易い状態にし、そのフィルム6を抜き加工工程P56へ搬送する。
【0093】
抜き加工工程P56へ運ばれたフィルム6に対して、刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図2(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)のカバーフィルム1が形成される。カバーフィルム1は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3−1及び3−2を含んでいる。工程P56における抜き加工の時点ではコート層3A及び3Bはそれぞれ軟らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0094】
次に、抜き加工後のカバーフィルム1のコート層3−1に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3−1が第2硬度、すなわち鉛筆硬度3H、4H又はそれらの近傍の値まで硬化する。これにより、基体シート2Aの表面側に傷等が付き難いハードコート層3Aが形成される。
【0095】
反対側のコート層3−2は表面側に位置するコート層ではないので、必ずしも表面側のコート層3−1のように硬度が高くなくても良い、それ故、本実施形態では裏面のコート層3−2については、工程P57において更なる硬化処理は行わないこととしている。しかしながら、必要がある場合には、裏面のコート層3−2に対しても放射線照射を行って硬度をさらに高めても良い。
【0096】
(第7の実施形態)
図9は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7を持ったカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0097】
本実施形態において、基体シート準備工程P61から第2コート層硬化工程P65までの工程は、図8の実施形態における基体シート準備工程P51から第2コート層硬化工程P55までの工程と同じである。本実施形態では、その後、放射線吸収層形成工程P66において、コート層3Aが形成された主面と反対側の基体シート2Aの裏面上に、放射線吸収層8Aが形成される。放射線吸収層8Aは、本実施形態では、放射線であるUV(紫外)線を吸収してその進行を遮断する層である。
【0098】
その後、フィルム6は、巻き取る等して持ち運び易くした上で印刷前処理場所へ搬送される。印刷前処理工程P67では、図4(a)のロール状基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。コート層3Aは第1硬度の状態であるので、この切断も容易且つ正確に行うことができる。
【0099】
前処理の終了後、印刷層形成工程P68において放射線硬化性インク(本実施形態ではUV線硬化性インク)を用いて印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0100】
その後、印刷層硬化工程P69において、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、印刷層7の表示面側には放射線吸収層8Aが設けられているので、このときの放射線は当該放射線吸収層8Aに吸収されてコート層3Aには到達せず、それ故、コート層3Aは第1硬度(鉛筆硬度2H未満)の状態を維持する。
【0101】
その後、フィルム6は抜き加工工程P70へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2及びそれに接着した同形状のコート層3−1及び3−2を含んでいる。抜き加工工程時70におけるコート層3A及び3Bは抜き加工の時点では、それぞれ、軟らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0102】
次に、第2硬化工程P71において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3−1に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3−1が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3が形成される。
【0103】
(第8の実施形態)
図10は、本発明に係るカバーフィルムの製造方法のさらに他の実施形態を示している。この実施形態は、例えば図4(b)に示すような長方形状で印刷層7を持ったカバーフィルム11を製造するのに好適な製造方法である。なお、これ以降の説明で、これまでの実施形態での説明と共通する点は適宜に説明を省略する。
【0104】
図8に示した実施形態では、工程P54において基体シート2Aの裏面に、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む透明な樹脂によって形成された第2のコート層3Bを塗布した。これに対し、本実施形態では、工程P84において、熱硬化型樹脂及び放射線硬化型樹脂の両方を含む樹脂に、さらに放射線吸収剤を練り込んだ透明な樹脂よって形成された第2のコート層3Bを塗布した。
【0105】
次に、工程P85においてその第2のコート層3Bに熱が加えられて第2のコート層3Bを第3硬度まで硬化させる。この第3硬度は、基体シート2Aがカールすなわち曲がることを防止できるに足る硬度である。また、後述の抜き加工工程P89において抜き加工が行われることを考慮すれば、上記の第3硬度は、刃で抜き加工したときに第2のコート層3Bにクラックが入らない硬度である。以上の事情から第3硬度は、より具体的には、鉛筆硬度2H未満の適宜の値である。
【0106】
次に、印刷前処理工程P86において、図4(a)のロール状基体シート2Aが印刷処理に適した形状、例えばスリット状又はシート状に切断される。このとき、コート層3A,3Bはそれぞれ柔らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、この切断も容易に行うことができる。
【0107】
前処理の終了後、工程P87において印刷処理が行われて、図4(b)に示すように、カバーフィルム11の裏面(主面の裏側の面)に所定模様(本実施形態では長方形の枠状模様)の印刷層7が形成される。このとき、文字、ロゴ等が印刷されることもある。このときの印刷は、放射線硬化インクであるUV硬化インクを用いて行われる。印刷は公知の印刷手法、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
【0108】
その後、印刷層7に放射線であるUV線が照射されて、印刷層7が硬化される。このとき、第2のコート層3Bの内部には放射線吸収剤が練り込まれているので、このときの放射線は当該放射線吸収剤に吸収されて第1のコート層3Aには到達せず、それ故、第1のコート層3Aは柔らかい状態である第1硬度を維持する。
【0109】
その後、フィルム6は抜き加工工程P89へ運ばれる。そして、フィルム6に対して刃工具4を用いて抜き加工(すなわち打抜き加工)が行われる。これにより、図4(b)に示すように、所定形状(本実施形態では長方形状)で印刷層7が形成されたカバーフィルム11が複数個、同時に形成される。カバーフィルム11は、抜き加工後の長方形状の基体シート2並びにそれに接着した同形状の第1のコート層3−1及び第2のコート層3−2を含んでいる。抜き加工工程P89の時点では、第1のコート層3A及び第2のコート層3Bはそれぞれに軟らかい硬度である第1硬度及び第3硬度であるので、工具4を用いて抜き加工を行っても、割れ、傷、亀裂跡(白濁)は発生せず、美麗な外観に仕上げられる。
【0110】
次に、第2硬化工程P90において、抜き加工後のカバーフィルム11のコート層3−1に放射線であるUV線が照射される。このUV照射により、コート層3−1が第2硬度へ硬化される。第2硬度は、例えば鉛筆硬度2H以上の適宜の硬度値、例えば鉛筆硬度3H、鉛筆硬度4H又はそれらの近傍の硬度値である。この第2硬化により、傷等が付き難いハードコート層3−1が形成される。
【0111】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0112】
例えば、抜き加工によって形成するフィルムの外形形状は、図2(b)及び図4(b)に示すような長方形状に限られず、必要に応じて任意の外形形状にすることができる。また、印刷層7のパターン、すなわち模様は、図4(b)に示すような枠形状に限られず、必要に応じて任意の模様にすることができる。
【符号の説明】
【0113】
1.カバーフィルム、 2.基体シート、 2A.抜き加工前の基体シート、 2B.放射線吸収剤練りこみシート、 3,3−1,3−2.コート層、 3A.抜き加工前のコート層、 3B.第2のコート層、 4.刃工具、 6.フィルム、 7.印刷層、 8.放射線吸収層、 8A.抜き加工前の放射線吸収層、 11.カバーフィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コート層を基体シート上に流体状に形成するコート層形成工程と、
前記コート層が形成された前記基体シートをロール状に巻いたときに当該コート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度である第1硬度に前記コート層を硬化させる第1硬化工程と、
当該第1硬化工程の後、前記基体シート及び前記コート層を含むフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成する抜き加工工程と、
当該抜き加工工程後の前記コート層を前記第1硬度よりも高い第2硬度に硬化させる第2硬化工程と、
を有することを特徴とするカバーフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1硬度は、鉛筆硬度2H未満の硬度であることを特徴とする請求項1記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2硬度は、鉛筆硬度2H以上の硬度であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記コート層は、熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを混合して成る樹脂によって形成され、
前記第1硬化工程は、加熱によって前記熱硬化型樹脂を硬化させることによって行われ、
前記第2硬化工程は、放射線照射によって前記放射線硬化樹脂を硬化させることによって行われる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、熱硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
当該印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、加熱により前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、をさらに有しており、
前記抜き加工工程では、前記基体シート、前記コート層及び前記印刷層を含むフィルムに抜き加工を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記基体シートは放射線吸収剤を含む樹脂によって形成されており、
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記コート層が形成された側と反対側の前記基体シートに第2コート層を流体状に形成する第2コート層形成工程と、
前記第2コート層を、前記基体シートの曲がりを防止でき且つ刃で抜き加工したときに当該第2コート層にクラックが入らない硬度である第3硬度に硬化させる第2コート層硬化工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程と、
を有することを特徴とする請求項8記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第2コート層は放射線吸収剤を含む樹脂によって形成されており、
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
を有することを特徴とする請求項8記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記第3硬度は、鉛筆硬度2H未満であることを特徴とする請求項8から請求項9のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記コート層についての前記第1硬度及び前記第2硬度は当該コート層の材料成分によって決まることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記放射線は、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線(UV)、X線、ガンマ線等といった電磁波であるか、又はアルファ線、ベータ線、中性子線、電子線等といった粒子線であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項14】
基体シートと、当該基体シートに積層されたコート層とを有するカバーフィルム用フィルムであって、
前記コート層は熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを含む樹脂によって形成されており、
前記コート層は、加熱により前記熱硬化型樹脂が硬化され、放射線硬化樹脂は未硬化である
ことを特徴とするカバーフィルム用フィルム。
【請求項1】
コート層を基体シート上に流体状に形成するコート層形成工程と、
前記コート層が形成された前記基体シートをロール状に巻いたときに当該コート層が相対する部材に貼り付かず且つ刃で抜き加工したときに当該コート層にクラックが入らない硬度である第1硬度に前記コート層を硬化させる第1硬化工程と、
当該第1硬化工程の後、前記基体シート及び前記コート層を含むフィルムを抜き加工によって所望の形状に形成する抜き加工工程と、
当該抜き加工工程後の前記コート層を前記第1硬度よりも高い第2硬度に硬化させる第2硬化工程と、
を有することを特徴とするカバーフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1硬度は、鉛筆硬度2H未満の硬度であることを特徴とする請求項1記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2硬度は、鉛筆硬度2H以上の硬度であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記コート層は、熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを混合して成る樹脂によって形成され、
前記第1硬化工程は、加熱によって前記熱硬化型樹脂を硬化させることによって行われ、
前記第2硬化工程は、放射線照射によって前記放射線硬化樹脂を硬化させることによって行われる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、熱硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
当該印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、加熱により前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、をさらに有しており、
前記抜き加工工程では、前記基体シート、前記コート層及び前記印刷層を含むフィルムに抜き加工を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記基体シートは放射線吸収剤を含む樹脂によって形成されており、
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記コート層が形成された側と反対側の前記基体シートに第2コート層を流体状に形成する第2コート層形成工程と、
前記第2コート層を、前記基体シートの曲がりを防止でき且つ刃で抜き加工したときに当該第2コート層にクラックが入らない硬度である第3硬度に硬化させる第2コート層硬化工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
前記印刷層形成工程の前に行われる工程であって、前記コート層と前記印刷層との間に放射線吸収層を形成する放射線吸収層形成工程と、
を有することを特徴とする請求項8記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記第2コート層は放射線吸収剤を含む樹脂によって形成されており、
前記第1硬化工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線硬化性インクを用いて前記基体シート上又は前記コート層上に印刷層を形成する印刷層形成工程と、
前記印刷層形成工程の後で前記抜き加工工程の前に、放射線照射によって前記印刷層を硬化させる印刷層硬化工程と、
を有することを特徴とする請求項8記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記第3硬度は、鉛筆硬度2H未満であることを特徴とする請求項8から請求項9のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記コート層についての前記第1硬度及び前記第2硬度は当該コート層の材料成分によって決まることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記放射線は、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線(UV)、X線、ガンマ線等といった電磁波であるか、又はアルファ線、ベータ線、中性子線、電子線等といった粒子線であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1つに記載のカバーフィルムの製造方法。
【請求項14】
基体シートと、当該基体シートに積層されたコート層とを有するカバーフィルム用フィルムであって、
前記コート層は熱硬化型樹脂と放射線硬化型樹脂とを含む樹脂によって形成されており、
前記コート層は、加熱により前記熱硬化型樹脂が硬化され、放射線硬化樹脂は未硬化である
ことを特徴とするカバーフィルム用フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−81406(P2012−81406A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229178(P2010−229178)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【出願人】(591134465)株式会社サンパック (6)
【出願人】(592091220)株式会社コスモテック (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【出願人】(591134465)株式会社サンパック (6)
【出願人】(592091220)株式会社コスモテック (13)
【Fターム(参考)】
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