説明

カバー

【課題】ヒンジ部の撓み特性を阻害することなく、ヒンジ部の強度アップを図ることができるカバーを提供する。
【解決手段】第1カバー部2と、第2カバー部10と、第1カバー部2と第2カバー部10の間を連結するヒンジ部20とを備え、ヒンジ部20を回転支点として第1カバー部2に対して第2カバー部10が回転自在に設けられたカバー1であって、ヒンジ部20は第1カバー部2及び第2カバー部10との連結端b1,b2の長さAがヒンジ部20の幅寸法aより長く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1カバー部と第2カバー部の間がヒンジ部で連結されたカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるバッテリーには、直接ヒューズユニットが付設されるものがある。バッテリーのバッテリーポストやヒューズユニットの端子部等が露出状態であると、水、塵によって腐食等が発生するため、バッテリーのヒューズユニットが付設された箇所の上部をカバーであるバッテリーカバーで被うことが一般的に行われる。バッテリカバーは、その一部がヒューズユニットの保守・点検用に開閉できるようになっている。
【0003】
この種の従来のバッテリーカバーとして特許文献1に開示されたものがある。このバッテリーカバー50は、図7(a)、(b)に示すように、第1カバー部51と、第2カバー部52と、第1カバー部51と第2カバー部52の間を連結するヒンジ部60とを備えている。
【0004】
第1カバー部51と第2カバー部52は、それぞれ底面側が開口された箱状である。第1カバー部51は、ヒューズユニット(図示せず)に固定される。
【0005】
ヒンジ部60は、可撓性を持たせるために第1カバー部51及び第2カバー部52より薄肉に形成されている。ヒンジ部60の連結長さdは、幅方向Wで同じ寸法に形成されている。
【0006】
上記従来例によれば、作業者が第2カバー部52の先端側を図7(a)のR矢印方向に操作すると、ヒンジ部60の撓み変形によって第2カバー部52が回転する。これによって、第2カバー部52を第1カバー部51のほぼ直交位置(開放位置)まで開くことができる。
【0007】
ところで、開放位置の第2カバー部52には、何らかの理由によってひねり等の外力が作用することが想定される。第2カバー部52に外力が作用すると、薄肉のヒンジ部60に応力が発生する。第2カバー部52に作用する外力がひねり荷重や横荷重の場合には、ヒンジ部60の両側のヒンジ端部に最大応力が発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−289171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来例では、ヒンジ部60の幅方向Wの全域でほぼ同じ強度であるため、ヒンジ部60のヒンジ端部が破損する恐れがある。
【0010】
ここで、ヒンジ部60の破損を防止するために、ヒンジ部60の肉厚を厚く形成することが考えられる。しかし、このように構成すると、ヒンジ部60の曲げ強度(撓み強度)が大きくなって、ヒンジ部60の撓み特性が阻害される。
【0011】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ヒンジ部の撓み特性を阻害することなく、ヒンジ部の強度アップを図ることができるカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1カバー部と、第2カバー部と、前記第1カバー部と前記第2カバー部の間を連結するヒンジ部とを備え、前記ヒンジ部を回転支点として前記第1カバー部に対して前記第2カバー部が回転自在に設けられたカバーであって、前記ヒンジ部は、前記第1カバー及び前記第2カバー部との連結端の長さが前記ヒンジ部の幅寸法より長く形成されている。
【0013】
前記ヒンジ部は、前記第1カバー部との連結端と前記第2カバー部との連結端が徐々に互いに突出して緩いV字状に形成されているものを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒンジ部は、第1カバー及び第2カバー部との連結端の長さがヒンジ部の幅寸法より長いことから、従来例に較べて、ヒンジ部に作用する応力が相対的に小さくなるため、ヒンジ部のヒンジ端部の最大応力が低く抑えられる。従って、ヒンジ部の撓み特性を阻害することなく、ヒンジ部の強度アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)はバッテリカバーの斜視図、(b)はバッテリカバーの側面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、バッテリカバーの平面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は図2のA−A線断面図、(b)は図3(a)のB部拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、(a)は図2のC部拡大図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、第2カバー部が開状態であるバッテリカバーの斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態のバッテリカバーと比較例のバッテリカバーの応力分布の観測図である。
【図7】従来例を示し、(a)はバッテリカバーの斜視図、(b)はバッテリカバーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図6は本発明の一実施形態を示す。カバーであるバッテリーカバー1は、第1カバー部2と、第2カバー部10と、第1カバー部2と第2カバー部10の間に配置され、第1カバー部2と第2カバー部l0の間を連結するヒンジ部20とを備えている。
【0018】
第1カバー部2は、第1上面壁3と第1上面壁3の三方の縁端より下方に向かって配置された第1側面壁4とを有する。第1上面壁3のヒンジ部20の近傍位置には、端面に沿って回転規制突部5が突設されている。回転規制突部5は、第2カバー部10が第1カバー部2の直交方向を越えて回転しないように規制する。第1側面壁4の内面には、複数の係止爪部6が設けられている。複数の係止爪部6によって、第1カバー部2がヒューズユニット(図示せず)に固定される。
【0019】
第2カバー部10は、第2上面壁11と第2上面壁11の三方の縁端より下方に向かって配置された第2側面壁12とを有する。第2上面壁11の高さは、第1カバー部2の第1上面壁3と同じ高さである。第2上面壁11の先端には、操作つまみ部13が突設されている。第2側面壁12の内面には、一対の仮係止爪部14が設けられている。一対の仮係止爪部14によって、第2カバー部10が閉塞位置に仮係止される。
【0020】
ヒンジ部20は、第1カバー部2の第1上面壁3と第2カバー部10の第2上面壁11の互いに近接配置された一端面に沿って設けられている。従って、ヒンジ部20は、第1カバー部2及び第2カバー部10とほぼ同じ高さに配置されている。ヒンジ部20を回転支点として、第1カバー部2に対して第2カバー部10が図1及び図2の閉塞位置と図5の開位置との間で回転する。
【0021】
ヒンジ部20は、図3及び図4に詳しく示すように、第1カバー部2と第2カバー部10の肉厚より薄く形成されている。薄肉のヒンジ部20は、その幅方向Wの両側のヒンジ端部21と中央のヒンジ中央部22で肉厚が異なり、両側のヒンジ端部21がヒンジ中央部22より肉厚に厚く形成されている。そして、ヒンジ部20は、全体として所望の撓み特性に形成されている。
【0022】
ヒンジ部20は、上方から見て(上面視で)、幅方向Wの両側のヒンジ端からヒンジ中央に向かって、第1カバー部2との連結端b1と第2カバー部10との連結端b2が徐々に互いに突出して緩いV字状に形成されている。ヒンジ部20の連結寸法d(幅方向Wの直交方向の寸法)は、ヒンジ端からヒンジ中央に向かって徐々に狭くなっている。これにより、ヒンジ部20は、第1カバー部2及び第2カバー部10に連結する連結端b1,b2の長さAがヒンジ部20の幅寸法aより長く形成されている(図4(a)参照)。
【0023】
各ヒンジ端部21の側端面21aは、上方から見て(上面視で)、中央が窪んでいる半円状の円弧面、つまり、曲面に形成されている。
【0024】
上記構成において、第2カバー部10は、ヒンジ部30を回転支点として第1カバー部2に対しR矢印方向(図1に示す)に回転自在であり、この回転によって閉塞位置と開放位置との間で変移する。閉塞位置では、第1上面壁3と第2上面壁11が同一面上に配置され、ヒューズユニット(図示せず)等の上部を被う。開放位置では、第2上面壁11で塞がれていたヒューズユニット(図示せず)等の上部が露出する。これにより、ヒューズ(図示せず)の視認等を行うことができる。
【0025】
以上説明したように、ヒンジ部20は、第1カバー部2及び第2カバー部10に連結する連結端b1,b2の長さAがヒンジ部20の幅寸法aより長く設定されている。従って、従来例(ヒンジ部20の連結端の長さが幅寸法aと同じ)と比較して、ヒンジ部20の肉厚を厚くしなくてもヒンジ部20の各位置に作用する応力が相対的に小さくなる。これにより、ヒンジ部20のヒンジ端部21の最大応力が低く抑えられる。従って、ヒンジ部20の撓み特性を阻害することなく、ヒンジ部20の強度アップを図ることができる。
【0026】
ヒンジ部20の連結端b1,b2の寸法が長くなると応力が小さくなる理由は、次のように考えることができる。応力σは、集中荷重をF、断面積をSとすると、σ=F/Sである。ヒンジ部20の断面積Sは、ヒンジ部20の板厚をt、ヒンジ部20の幅寸法をLとすると、S=t×Lである。従って、σ=F/(t×L)となる。
【0027】
ここで、ヒンジ部20の幅寸法Lは、図4(a)に示すように、従来例ではa寸法であり、本実施形態では実質的にA寸法と考えられる。Aの方がaより大きいことは明らかである。従って、ヒンジ部20に作用する応力σが相対的に小さくなる。
【0028】
ヒンジ部20は、両側のヒンジ端部21がヒンジ中央部22より肉厚が厚く形成されている。これにより、ヒンジ部20の所望の撓み特性を維持しつつ、ヒンジ端部21の最大応力を更に低くできる。
【0029】
ヒンジ端部21の側端面21aは曲面である。これにより、急激な形状変化に起因する応力集中がヒンジ端部21の側端面21aに発生するのを防止できる。
【0030】
(応力分布の測定)
本実施形態に係るバッテリーカバー1と、ヒンジ部20の連結長さdを幅方向Wで同じものとしたバッテリーカバー(比較例)について、ヒンジ部20の応力分布状態を実験により測定した。例えば、応力分布は、光弾性体でバッテリーカバー1を作製し、そのバッテリーカバー1の第2カバー部10に荷重を作用させ、その際にヒンジ部20に作用する応力の画像を観察した。バッテリーカバー1に作用する応力としては、回転側である第2カバー部10にひねり荷重を作用させた。
【0031】
すると、図6に示すような応力分布が得られた。各部の負荷度合いは、4段階で表示した。最も負荷が高い箇所は、黒塗りとし、負荷が低くなるにつれてハッチングの密度を低くして表示した。この測定結果より、ヒンジ部20のヒンジ端部21の発生する応力は、実施形態のモデルが比較例のモデルに較べて低くなっていることが確かめられた。
【0032】
(その他)
前記実施形態では、ヒンジ部20は、第1カバー部2との連結端b1と第2カバー部10との連結端b2が徐々に互いに突出して緩いV字状に形成され、これにより第1カバー部2及び第2カバー部10の連結端b1,b2の長さAがヒンジ部20の幅寸法aより長く形成されている。しかし、ヒンジ部20の連結端b1,b2の長さAを長くする形状は、種々考えられ、これに限定されるものではない。
【0033】
前記実施形態では、カバーはバッテリーカバー1であるが、本発明は、それ以外のカバーにも適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0034】
1 バッテリーカバー(カバー)
2 第1カバー部
10 第2カバー部
20 ヒンジ部
b1 第1ヒンジ部との連結端
b2 第2ヒンジ部との連結端
A 連結端の長さ
a ヒンジ部の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カバー部と、第2カバー部と、前記第1カバー部と前記第2カバー部の間を連結するヒンジ部とを備え、前記ヒンジ部を回転支点として前記第1カバー部に対して前記第2カバー部が回転自在に設けられたカバーであって、
前記ヒンジ部は、前記第1カバー及び前記第2カバー部との連結端の長さが前記ヒンジ部の幅寸法より長く形成されていることを特徴とするカバー。
【請求項2】
請求項1記載のカバーであって、
前記ヒンジ部は、前記第1カバー部との連結端と前記第2カバー部との連結端が徐々に互いに突出して緩いV字状に形成されていることを特徴とするカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−54947(P2013−54947A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192819(P2011−192819)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】