説明

カメラシステム、及び交換レンズ

【課題】交換レンズと昇降ミラーとの干渉を回避しつつ、ユーザーの利便性を損なうことがないカメラシステムを提供する。
【解決手段】光学式ファインダーへ撮影光束を導く昇降ミラーを備えるカメラ本体と、該カメラ本体に着脱可能な交換レンズとで構成されるカメラシステムであって、交換レンズは、該交換レンズの固有情報を記憶する記憶手段と、固有情報をカメラ本体へ送信する送信手段とを有し、カメラ本体は、固有情報に基づいて昇降ミラーの位置を制御するカメラ制御手段を有し、該カメラ制御手段は、交換レンズの装着時に昇降ミラーの作動領域に交換レンズの構成要素が進入する構造であると固有情報から判断した場合は(ステップS12)、昇降ミラーの動作を禁止する(ステップS16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステム、及び交換レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換素子(撮像素子)を採用したデジタル一眼レフカメラの製品化が活発である。この撮像素子の主流のサイズ(撮像面積)としては、従来の銀塩フィルムの24×36mmと同等の大きさである35mmフルサイズと、これよりも小さいAPS−Cサイズとがある。ここで、APS−Cサイズの撮像素子を有するデジタル一眼レフカメラに、フルサイズ用の交換レンズを取り付けると、画角が狭くなり、望遠に相当してしまう。そのため、新たな広角レンズとして、マウント形状が同一で、対応サイズがAPS−Cサイズである専用の交換レンズが商品化されている。このAPS−Cサイズ専用の交換レンズは、フルサイズ用の交換レンズに対してバックフォーカスを短く設計することで、光学性能を満足させながら小型化を実現している。
【0003】
一方、バックフォーカスの短いAPS−Cサイズ専用の交換レンズを、フルサイズの撮像素子を有するデジタル一眼レフカメラに取り付けると、内部の昇降ミラーの作動時に交換レンズの最後端と昇降ミラーとが干渉してしまう。そこで、特許文献1は、通常時には昇降ミラーを撮影光路外に退避させ、交換レンズの最後端と昇降ミラーとが干渉しない交換レンズを取り付けた場合にのみ、昇降ミラーを撮影光路内に進入させるカメラシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−118777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたカメラシステムでは、電源を入れて交換レンズ側から該交換レンズに関する固有情報を受信しないと、昇降ミラーが撮影光路内に進入しない。したがって、カメラシステムに電源が入っていない状態では、ユーザーは、ファインダーを使用することができず、利便性を損なう。
【0006】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、交換レンズと昇降ミラーとの干渉を回避しつつ、ユーザーの利便性を損なうことがないカメラシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、光学式ファインダーへ撮影光束を導く昇降ミラーを備えるカメラ本体と、該カメラ本体に着脱可能な交換レンズとで構成されるカメラシステムであって、交換レンズは、該交換レンズの固有情報を記憶する記憶手段と、固有情報をカメラ本体へ送信する送信手段とを有し、カメラ本体は、固有情報に基づいて昇降ミラーの位置を制御するカメラ制御手段を有し、該カメラ制御手段は、交換レンズの装着時に昇降ミラーの作動領域に交換レンズの構成要素が進入する構造であると固有情報から判断した場合は、昇降ミラーの動作を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、交換レンズと昇降ミラーとの干渉を回避しつつ、ユーザーの利便性を損なうことがないカメラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカメラシステムの構成を示す概略図である。
【図2】カメラマイコンによる撮影待機までの処理を示すフローチャートである。
【図3】カメラマイコンによるレリーズ動作後の処理を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態のカメラマイコンによる処理を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態のカメラマイコンによる処理を示すフローチャートである。
【図6】カメラマイコンによるレリーズ動作後の処理を示すフローチャートである。
【図7】第4実施形態に係るカメラシステムの構成を示す概略図である。
【図8】第4実施形態のカメラマイコンによる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るカメラシステムの構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るカメラシステムの構成を示す概略図である。カメラシステム1は、交換レンズ2と、この交換レンズ2を着脱可能とするカメラ本体3とを有する。交換レンズ2は、複数のレンズ(光学素子)からなる光学素子群4を内包する鏡筒であり、接続部5を介してカメラ本体3(レンズマウント3a)に交換可能に接続される。この交換レンズ2は、駆動系として、絞り駆動用モータ6と、レンズ駆動用モータ7と、エンコーダ8とを備え、また、制御系として、レンズマイコン9を備える。絞り駆動用モータ6及びレンズ駆動用モータ7は、光学素子群4を構成する光学絞りや各駆動レンズを駆動する駆動手段である。エンコーダ8は、この駆動手段の各種駆動量を検知する検知手段である。レンズマイコン9は、交換レンズ2内の構成要素を制御するレンズ制御手段である。本実施形態では、レンズマイコン9は、交換レンズ2特有のイニシャルデータ(固有情報)を記憶する記憶手段であり、かつ、カメラ本体3に対してイニシャルデータを送信する送信手段でもある。
【0012】
カメラ本体3は、デジタル一眼レフ方式の撮像装置本体であり、被写体像を受光するCCDセンサー10と、ユーザーが被写体像を視認するためのファインダー11と、撮影光路に進入することで被写体像をファインダー11に導く昇降ミラー12とを備える。CCDセンサー10は、光電変換素子(撮像素子)であり、例えばCCDセンサー10に代えて、CMOSセンサー等の光電変換素子を採用することも可能である。ファインダー11は、フォーカシングスクリーン13、プリズム14及び接眼レンズ15を有する光学式ファインダーである。昇降ミラー12は、ミラーボックス16内で、モータ17の駆動により昇降動作を行う反射板である。以下、図1に示すように昇降ミラー12が撮影光路内に進入している状態を、撮影の待機状態という意味で「作動待機状態」と表記し、一方、昇降ミラー12が撮影光路外へ移動し、ファインダー11の入光部を塞いでいる状態を、「退避状態」と表記する。また、カメラ本体3は、制御系として、カメラマイコン18と、画像信号処理回路19と、ミラー駆動回路20と、レンズ判別回路21とを備える。カメラマイコン18は、カメラ本体3内の構成要素を制御するカメラ制御手段であり、特に、本実施形態では、昇降ミラー12の位置(状態)を制御する位置制御手段でもある。画像信号処理回路19は、CCDセンサー10から画像信号を受信し、画像に変換する画像処理手段である。ミラー駆動回路20は、カメラマイコン18からの指示に基づいてモータ17を駆動させることで、昇降ミラー12の位置を適宜設定する駆動処理手段である。レンズ判別回路21は、カメラマイコン18がレンズマイコン9から受信したイニシャルデータに基づいて交換レンズ2の種類等を判別するレンズ判別手段である。更に、カメラ本体3は、ユーザーが操作を実施するレリーズスイッチ(SW)22と、電源部23と、被写体画像や操作補助アイコン等を表示する液晶モニター(画像表示手段)24とを備える。
【0013】
更に、交換レンズ2及びカメラ本体3は、それぞれ、カメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられた際に相互に通信を行うための通信接点ユニット25、26を備える。レンズマイコン9は、通信接点ユニット25、26を介し、カメラ本体3側から制御信号や電力供給を受けて絞り駆動用モータ6やレンズ駆動用モータ7等の制御を実施する。また、カメラマイコン18は、通信接点ユニット25、26を介して、レンズマイコン9からイニシャルデータを取得する。
【0014】
次に、本実施形態に係るカメラシステム1の動作について説明する。まず、カメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられていない状態では、昇降ミラー12は、作動待機位置にあり、ユーザーは、ファインダー11により被写体を視認可能である。次に、ユーザーがレンズマウント3aに交換レンズ2を取り付けると、交換レンズ2側の通信接点ユニット25と、カメラ本体3側の通信接点ユニット26とが接続される。そして、カメラマイコン18は、レンズ判別回路21を介して、レンズマイコン9から交換レンズ2のイニシャルデータを読み取る。
【0015】
ここで、図1(a)に示すように、交換レンズ2の構成要素である光学素子群4の最後端4a(最後端4a保持部)が、接続部5よりも大きく外部に突き出し、昇降ミラー12の作動領域(移動半径内)に進入する構造を有する場合を想定する。このとき、昇降ミラー12は、作動待機位置にある場合は、最後端4aと干渉しないが、作動待機位置から退避位置へと向かう作動領域(図中破線部)にある場合は、最後端4aと干渉する。カメラマイコン18は、取り付けられた交換レンズ2が上記のような構造を有することを取得したイニシャルデータから判定する。この場合、カメラマイコン18は、一旦昇降ミラー12のクイックリターン動作(撮影時の動作、以下、単に「動作」と表記する)を禁止し、ユーザーに対して交換レンズ2を取り外すよう、指示を液晶モニター24に表示する。
【0016】
一方、図1(b)に示すように、光学素子群4の最後端4bが、接続部5からの突き出しが小さく、バックフォーカスが十分な距離として設定されているため、昇降ミラー12の作動領域に進入しない構造を有する場合を想定する。このとき、昇降ミラー12は、作動待機位置にある場合も、作動待機位置から退避位置へと向かう作動領域にある場合も、最後端4aと干渉しない。カメラマイコン18は、取り付けられた交換レンズ2が、昇降ミラー12と最後端4aとが干渉しない構造を有することを、取得したイニシャルデータから判定する。この場合、カメラマイコン18は、昇降ミラー12の動作を許可する。ユーザーは、ファインダー11を介して被写体を確認可能であり、レリーズスイッチ22を操作することにより、昇降ミラー12が動作をして、CCDセンサー10が被写体からの撮影光束を受光可能となる。
【0017】
次に、カメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられた後、撮影待機の状態となるまでのカメラマイコン18による処理について説明する。図2は、カメラマイコン18の処理の流れを示すフローチャートである。カメラ本体3の初期状態は、上述のように昇降ミラー12が作動待機位置にあり、この状態でレンズマウント3aに交換レンズ2が取り付けられる。まず、カメラマイコン18は、通信接点ユニット26を介してカメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられたか否かを判定し、取り付けられていなければ(NO)、取り付けられるまで待機する(ステップS10)。ここで、カメラマイコン18は、交換レンズ2が取り付けられたと判定すると(YES)、次に、レンズマイコン9からイニシャルデータを受信する(ステップS11)。次に、カメラマイコン18は、レンズ判別回路21による判定結果を参照し、取り付けられた交換レンズ2が、昇降ミラー12の作動を可能とする対応レンズであるかどうかを判定する(ステップS12)。このとき、イニシャルデータは、交換レンズ2の構造が、カメラ本体3の機種に対して、交換レンズ2の装着時に昇降ミラー12の作動領域に交換レンズ2の構成要素が進入する構造であるかどうかを示す情報を含む。ここで、昇降ミラー12が動作可能な対応レンズであると判定した場合は(YES)、次に、カメラマイコン18は、昇降ミラー12に対して通常動作の準備を指示する(ステップS13)。そして、カメラマイコン18は、再度、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを確認し(ステップS14)、装着中であれば(YES)、レリーズスイッチ22の操作待機状態(撮影待機状態)へと移行する(ステップS15)。なお、ステップS14にて、カメラマイコン18が、上記処理中に交換レンズ2が取り外されていると判定した場合は(NO)、ステップS10に戻り、再び交換レンズ2が取り付けられるまで待機する。
【0018】
一方、ステップS12にて、カメラマイコン18は、昇降ミラー12が動作不可能な未対応レンズであると判定した場合は(NO)、一旦、昇降ミラー12の動作を禁止する(ステップS16)。次に、カメラマイコン18は、液晶モニター24に警告画像を表示させ、ユーザーに対して交換レンズ2の取り外しを促す(ステップS17)。そして、カメラマイコン18は、ユーザーにより交換レンズ2が取り外されたか否かを判定し(ステップS18)、取り外されたと判定した場合は(YES)、ステップS10に戻り、新たな種類の交換レンズ2が取り付けられるまで待機する。なお、ステップ18にて、カメラマイコン18は、取り外されていないと判定した場合は(NO)、ステップS17に戻る。
【0019】
次に、取り付けられた交換レンズ2が昇降ミラー12の動作を可能とする対応レンズである場合の、カメラマイコン18の撮影後(レリーズ動作後)の処理について説明する。図3は、この場合のカメラマイコン18の処理の流れを示すフローチャートである。カメラマイコン18は、レリーズ動作後、まず、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを判定する(ステップS21)。ここで、カメラマイコン18は、交換レンズ2を装着中であると判定した場合(YES)、昇降ミラー12を、ミラー駆動回路20を介して作動待機位置に移動させ(ステップS22)、クイックリターン動作の準備を行う(ステップS23)。次に、カメラマイコン18は、再度、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを確認し(ステップS24)、装着中であれば(YES)、レリーズスイッチ22の操作待機状態(撮影待機状態)へと移行する(ステップS25)。なお、カメラマイコン18が、ステップS21にて、交換レンズ2が取り外されたと判定した場合や(NO)、ステップS24にて、上記処理中に交換レンズ2が取り外されたと判定した場合は(NO)、ステップS26に移行する。ステップS26にて、カメラマイコン18は、昇降ミラー12を退避位置に設定し、昇降ミラー12は、退避状態となる。そして、カメラマイコン18は、新たな交換レンズ2の取り付けまで待機する(ステップS27)
【0020】
以上のように、本発明によれば、カメラマイコン18は、レンズマイコン9から得られたイニシャルデータに基づいて取り付けられた交換レンズ2の構造を判別し、その構造により、カメラ本体3、特に、昇降ミラー12の制御を変更する。したがって、例えば、バックフォーカスが短くなる交換レンズ2をカメラ本体3に取り付けてしまった場合でも、カメラマイコン18が、予め昇降ミラー12のクイックミラー動作を禁止するので、交換レンズ2と昇降ミラー12との干渉を防止できる。更に、この場合、昇降ミラー12は、通常時には撮影光路内の作動待機位置にあるため、カメラ本体3の電源がOFFの状態でも、ファインダー11が使用可能となり、ユーザーの利便性を損なわない。
【0021】
なお、イニシャルデータは、交換レンズ2の構造が、カメラ本体3の機種に対して、交換レンズ2の装着時に昇降ミラー12の作動領域に交換レンズ2の構成要素が進入する構造であるかどうかを示す情報を含むとしたが、本発明は、これに限らない。例えば、イニシャルデータが、単に交換レンズ2の種類を示す情報であっても良い。この場合、レンズ判別回路21に、交換レンズの種類毎の、交換レンズの装着時に昇降ミラー12の作動領域に交換レンズの構成要素が進入する構造であるかどうかを示す情報を予め記憶させ、イニシャルデータと、記憶している情報とを比較参照させれば良い。更に、イニシャルデータが、単に交換レンズ2の識別番号等の標識のみを示す情報であっても良い。この場合、例えば、カメラマイコン18は、レンズ判別回路21を介して交換レンズ2の構造を判別しなくとも、標識を参照することのみで自動的に昇降ミラーの動作を禁止させても良い。これにより、交換レンズ2が既に販売済みの製品であっても、カメラ本体3側の情報を常に最新のものに書き換えることで、本発明が対応可能となる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るカメラシステムについて説明する。図4は、第1実施形態において、カメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられた後、撮影待機の状態となるまでのカメラマイコン18による処理の流れを示す図2のフローチャートに対応した、第2実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。以下、図4に示す本実施形態の処理は、図2に示すステップS12以降の変更例となるため、ここでは、該ステップS12に対応したステップS32より説明する。なお、本実施形態に係るカメラシステムの構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0023】
まず、カメラマイコン18は、図2のステップS12と同様に、取り付けられた交換レンズ2が、昇降ミラー12の動作を可能とする対応レンズであるかどうかを判定する(ステップS32)。ここで、カメラマイコン18は、昇降ミラー12が動作不可能な未対応レンズであると判定した場合は(NO)、ミラー駆動回路20に対して、不図示のミラー退避手段の作動を指示する(ステップS36)。ミラー退避手段は、カメラ本体3に交換レンズ2を装着させたまま、光学素子群4の最後端4aに干渉することなく、昇降ミラー12を退避状態の位置(退避位置)に作動させる手段である。このミラー退避手段としては、例えば、昇降ミラー12を複数のミラー部材で形成することにより昇降ミラー12を折りたたんで退避位置に移動させる機構がある。更なるミラー退避手段としては、昇降ミラー12をCCDセンサー10側、即ち、昇降ミラー12の回転軸方向へスライドさせた後に退避位置に移動させる機構がある。ここで、カメラマイコン18は、昇降ミラー12を退避状態でそのまま保持する(ステップS37)。この状態でユーザーが被写体を捕捉すると、カメラマイコン18は、CCDセンサー10より画像信号処理回路19を介して画像信号を受信し、液晶モニター24に被写体像を表示させることができる(ステップS38)。これにより、ユーザーは、液晶モニター24にて被写体像の構図を確認することができる(ライブビューモード)。次に、カメラマイコン18は、図2のステップS14と同様に、再度、交換レンズ2がカメラ本体3に取り付けられた状態であるかを確認する(ステップS34)。
【0024】
このように、本実施形態によれば、カメラマイコン18は、レンズマイコン9から得られたイニシャルデータに基づいて、取り付けられた交換レンズ2の構造を判別し、その構造により、上記のようなミラー退避手段を作動させる。このミラー退避手段により、カメラ本体3に取り付けた交換レンズ2が、昇降ミラー12が動作不可能な未対応レンズである場合でも、その状態のまま、昇降ミラー12を退避位置に作動させることができる。これにより、カメラマイコン18は、ミラー退避手段が作動した後に、自動的にライブビューモードへ移行させることができるので、ユーザーの利便性が向上する。
【0025】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るカメラシステムについて説明する。図5は、第1実施形態において、カメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられた後、撮影待機の状態となるまでのカメラマイコン18による処理の流れを示す図2のフローチャートに対応した、第3実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。以下、図5に示す本実施形態の処理は、図2に示すステップS18以降の変更例となるため、ここでは、該ステップS18に対応したステップS48より説明する。なお、カメラシステムの構成は、本実施形態においても第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0026】
まず、カメラマイコン18は、図2のステップS18と同様に、ユーザーにより交換レンズ2が取り外されたか否かを判定する(ステップS48)。ここで、交換レンズ2が取り外されていると判定した場合(NO)、カメラマイコン18は、昇降ミラー12を退避位置に作動させ(ステップS49)、退避状態でそのまま保持する(ステップS50)。次に、カメラマイコン18は、液晶モニター24に交換レンズ2が取り付け可能であるとの情報を表示させる(ステップS51)。次に、カメラマイコン18は、交換レンズ2がカメラ本体3に取り付けられたかどうかを判定する(ステップS52)。ここで、交換レンズ2がカメラ本体3に取り付けられたと判定した場合(YES)、カメラマイコン18は、図4のステップS38と同様に、液晶モニター24に被写体像を表示させることができるライブビューモードに移行する(ステップS53)。そして、カメラマイコン18は、図2のステップS14と同様に、再度、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを確認する(ステップS44)。なお、ステップS52にて交換レンズ2がカメラ本体3に取り付けられていないと判定した場合は(NO)、再度、ステップS50に移行する。
【0027】
次に、取り付けられた交換レンズ2が、昇降ミラー12が動作不可能な未対応レンズである場合の、カメラマイコン18の撮影後(レリーズ動作後)の処理について説明する。図6は、この場合のカメラマイコン18の処理の流れを示すフローチャートである。カメラマイコン18は、レリーズ動作後、まず、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを判定する(ステップS61)。ここで、カメラマイコン18は、交換レンズ2を装着中であると判定した場合は(YES)、昇降ミラー12を退避状態にてそのまま保持する(ステップS62)。次に、カメラマイコン18は、ステップS53と同様に、ライブビューモードに移行し、液晶モニター24に被写体像を表示させる(ステップS63)。そして、カメラマイコン18は、再度、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを確認し(ステップS64)、装着中であれば(YES)、レリーズスイッチ22の操作待機状態(撮影待機状態)へと移行する(ステップS65)。なお、カメラマイコン18が、ステップS61にて、交換レンズ2が取り外されていると判定した場合や(NO)、ステップS64にて、上記処理中に交換レンズ2が取り外されていると判定した場合には(NO)、ステップS66に移行する。そして、カメラマイコン18は、昇降ミラー12を作動待機位置に設定し(ステップS66)、昇降ミラー12は、作動待機状態となる(ステップS67)。
【0028】
このように、本実施形態によれば、カメラマイコン18は、予め取得したイニシャルデータに基づいて昇降ミラー12を常に退避状態に保持させることで、昇降ミラー12が動作不可能な交換レンズ2を使用可能とする。これにより、上記実施形態と同様、交換レンズ2と昇降ミラー12との干渉を防止することができる。更に、あらゆる交換レンズの使用に際してもバックフォーカスの制約を受けることがないため、最適な交換レンズを選択することができ、延いては、カメラシステム全体の光学性能の向上を図ることができる。
【0029】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るカメラシステムについて説明する。本実施形態における交換レンズ2は、光軸方向に対して光学素子群4の最後端4cが移動するズームレンズである。図7は、この場合のカメラシステム1の構成を示す概略図である。特に、図7(a)は、光学素子群4の最後端4cがCCDセンサー10側へ延長したWIDE状態を示し、一方、図7(b)は、光学素子群4の最後端4cが交換レンズ2の鏡筒内側に収縮したTELE状態を示す。この場合、光学素子群4を構成する駆動レンズは、第1実施形態で示したように、レンズ駆動用モータ7にて駆動され、エンコーダ8にてズームポジションが検出される。なお、その他のカメラシステムの構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0030】
まず、カメラマイコン18は、交換レンズ2がカメラ本体3に取り付けられた際、取得したイニシャルデータから交換レンズ2の構造について判定する。このとき、まず、カメラマイコン18は、取り付けられた交換レンズ2がWIDE状態となるとき、昇降ミラー12の作動領域に進入する構造(第1の条件)であるか確認する。同様に、カメラマイコン18は、取り付けられた交換レンズ2がTELE状態となるとき、昇降ミラー12の作動領域に進入しない構造(第2の条件)であるか確認する。まず、第1の条件を満たす場合、光学素子群4の最後端4cは、昇降ミラー12が作動待機状態であるときには、昇降ミラー12に干渉せず、一方、昇降ミラー12が作動領域で作動すると、昇降ミラー12に干渉する。そこで、この場合は、カメラマイコン18は、一旦、昇降ミラー12の動作を禁止し、液晶モニター24に警告画像を表示させ、ユーザーに対して交換レンズ2の取り外しや、ズームポジションの変更を促す。次に、第1の条件に加えて、第2の条件も満たす場合、ユーザーがズームポジションを変更することで、交換レンズ2の状態をTELE状態とすれば、昇降ミラー12が作動領域で作動しても、光学素子群4の最後端4cと干渉することはない。そこで、この場合は、カメラマイコン18は、昇降ミラー12の動作を許可する。したがって、ユーザーは、ファインダー11による被写体の視認が可能となり、通常の撮影が可能となる。
【0031】
次に、カメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられた後、撮影待機の状態となるまでのカメラマイコン18による処理について説明する。図8は、カメラマイコン18の処理の流れを示すフローチャートである。カメラ本体3の初期状態は、昇降ミラー12が作動待機位置にあり、この状態でレンズマウント3aに交換レンズ2が取り付けられる。まず、カメラマイコン18は、通信接点ユニット26を介してカメラ本体3に交換レンズ2が取り付けられたか否かを判定し、取り付けられていなければ(NO)、取り付けられるまで待機する(ステップS70)。ここで、カメラマイコン18は、交換レンズ2が取り付けられたと判定すると(YES)、次に、レンズマイコン9からイニシャルデータを受信する(ステップS71)。このとき、カメラマイコン18は、レンズ判別回路21により、取得したイニシャルデータに基づいて、取り付けられた交換レンズ2が上記の条件を満たすような構造を有しているか確認する。次に、カメラマイコン18は、レンズマイコン9から、エンコーダ8が検出した光学素子群4内の可動レンズのズームポジションを受信する(ステップS72)。次に、次に、カメラマイコン18は、光学素子群4内の可動レンズのズームポジションが、昇降ミラー12の動作を可能とする位置にあるかどうかを判定する(ステップS73)。ここで、可動レンズのズームポジションが、昇降ミラー12の動作を可能とする位置にあると判定した場合(YES)、次に、カメラマイコン18は、昇降ミラー12に対して通常動作の準備を指示する(ステップS74)。そして、カメラマイコン18は、カメラ本体3が交換レンズ2を装着中であるかどうかを再度確認し(ステップS75)、装着中であれば(YES)、レリーズスイッチ22の操作待機状態へと移行する(ステップS76)。ステップS75にて、カメラマイコン18が、上記処理中に交換レンズ2が取り外されていると判定した場合は(NO)、ステップS70に戻り、再び交換レンズ2が取り付けられるまで待機する。
【0032】
一方、ステップS73にて、カメラマイコン18は、上記可動レンズのズームポジションが、昇降ミラー12の動作を不可能とする位置にあると判定した場合(NO)、一旦、昇降ミラー12の動作を禁止する(ステップS77)。次に、カメラマイコン18は、液晶モニター24に警告画像を表示させ、ユーザーに対して可動レンズのズームポジションの変更を促し、ステップS72に戻る(ステップS78)。
【0033】
このように、本実施形態によれば、ズームポジションによりバックフォーカスが変化する交換レンズを使用する場合には、交換レンズ2と昇降ミラー12とが干渉しないようにズームポジションを変化させることで、本カメラシステムが使用可能となる。なお、本実施形態では、上記WIDE状態をバックフォーカスの短い状態としたが、例えば、エンコーダ8による分割を多分割化し、カメラマイコン18は、分割ゾーン毎に昇降ミラー12の動作が可能かどうか判定しても良い。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、カメラ本体3が、画像表示手段である液晶モニター24を予め備えているものとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、カメラ本体3は、予め液晶モニター24を備えていない場合でも、外付けで対応するビューファインダーを別途設置する構成としても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 カメラシステム
2 交換レンズ
3 カメラ本体
4 光学素子群
9 レンズマイコン
11 ファインダー
12 昇降ミラー
18 カメラマイコン
21 レンズ判別回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式ファインダーへ撮影光束を導く昇降ミラーを備えるカメラ本体と、該カメラ本体に着脱可能な交換レンズとで構成されるカメラシステムであって、
前記交換レンズは、該交換レンズの固有情報を記憶する記憶手段と、前記固有情報を前記カメラ本体へ送信する送信手段とを有し、
前記カメラ本体は、前記固有情報に基づいて前記昇降ミラーの位置を制御するカメラ制御手段を有し、
前記カメラ制御手段は、前記交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であると前記固有情報から判定した場合は、前記昇降ミラーの動作を禁止することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
前記固有情報に基づいて前記交換レンズの構造を判別するレンズ判別手段を有し、
前記カメラ制御手段は、前記レンズ判別手段の判定結果から前記交換レンズの構造が、該交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であると判定した場合には、前記昇降ミラーの動作を禁止することを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記固有情報は、前記交換レンズの構造が、前記カメラ本体に対して、前記交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であるかどうかを示す情報を含むことを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記固有情報は、前記交換レンズの種類を示す情報であり、
前記レンズ判別手段は、前記固有情報と、前記交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であるかどうかについて予め記憶した情報とを比較参照することで、前記交換レンズの構造を判別することを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記カメラ制御手段は、前記レンズ判別手段により、前記交換レンズの構造が、該交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入しない構造であると判定した場合には、前記昇降ミラーの位置を撮影光路内の作動待機位置に保持することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記カメラ本体は、前記昇降ミラーの前記作動領域を、撮影時の作動領域よりも小さくしつつ、前記昇降ミラーを前記作動待機位置から撮影光路外の退避位置へ移動させるミラー退避手段を有し、
前記カメラ制御手段は、前記レンズ判別手段により、前記交換レンズの構造が、該交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であると判定した場合には、前記ミラー退避手段により前記昇降ミラーを前記退避位置に退避させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記昇降ミラーは、複数のミラー部材で形成され、
前記ミラー退避手段は、前記複数のミラー部材を折りたたんで前記退避位置に移動させる機構であることを特徴とする請求項6に記載のカメラシステム。
【請求項8】
前記ミラー退避手段は、前記昇降ミラーを、該昇降ミラーの回転軸方向にスライドさせた後、前記退避位置に移動させる機構であることを特徴とする請求項6に記載のカメラシステム。
【請求項9】
前記交換レンズは、該交換レンズを構成する可動レンズのズームポジションを検出する検出手段を有し、
前記カメラ制御手段は、前記固有情報に基づく前記レンズ判別手段による判定結果に加えて、前記検出手段が検出した前記ズームポジションに基づいて、前記昇降ミラーの動作を制御することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のカメラシステム。
【請求項10】
前記カメラ制御手段は、前記ズームポジションが前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する位置であると判定した場合には、前記昇降ミラーの動作を禁止し、一方、前記ズームポジションが前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入しない位置であると判定した場合には、前記昇降ミラーの位置を撮影光路内の作動待機位置に保持することを特徴とする請求項9に記載のカメラシステム。
【請求項11】
前記カメラ本体は、前記撮影光束を受光し、画像信号を送信する光電変換素子を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のカメラシステム。
【請求項12】
前記カメラ本体は、前記光電変換素子から受信した画像信号に基づいて、被写体像を表示する画像表示手段を備えることを特徴とする請求項11に記載のカメラシステム。
【請求項13】
前記カメラ制御手段は、前記レンズ判別手段により、前記交換レンズの構造が、該交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であると判定した場合には、前記画像表示手段に警告画像を表示させることを特徴とする請求項12に記載のカメラシステム。
【請求項14】
前記カメラ制御手段は、前記ミラー退避手段により前記昇降ミラーを前記退避位置に退避させた後、前記画像表示手段に前記被写体像を表示させることを特徴とする請求項12に記載のカメラシステム。
【請求項15】
前記カメラ制御手段は、前記ズームポジションが前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する位置であると判定した場合には、前記画像表示手段に警告画像を表示させることを特徴とする請求項12に記載のカメラシステム。
【請求項16】
光学式ファインダーへ撮影光束を導く昇降ミラーを備えるカメラ本体に対して着脱可能である交換レンズであって、
前記交換レンズの固有情報を記憶する記憶手段を有し、
前記固有情報は、前記交換レンズの構造が、前記カメラ本体の機種に対して、前記交換レンズの装着時に前記昇降ミラーの作動領域に前記交換レンズの構成要素が進入する構造であるかどうかを示す情報を含むことを特徴とする交換レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−248103(P2011−248103A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121386(P2010−121386)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】