説明

カメラシステム

【課題】撮像素子周辺に異物が付着することを防止したカメラシステムを提供する。
【解決手段】
撮影レンズ18からの光束により撮像を行う撮像素子34と、前記光束を反射する観察位置と前記光束を反射しない撮影位置との間で移動可能なメインミラー46と、前記メインミラーが移動する際、前記メインミラーと前記撮像素子とにより形成される空間に移動する移動部材42と、を有するカメラシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムに関し、より詳細には、撮像素子周辺に異物が付着することを防止したカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ交換式デジタルカメラなどでは、撮像素子の周辺に配置されたフィルタ等の表面に異物が付着し、撮影した映像に異物が写りこむ等の問題が発生している。撮像素子周辺に異物が付着するメカニズムとしては様々なものが考えられるが、例えば、カメラ内部に存在する異物が、振動もしくは空気の流れ等によって撮像素子周辺に向かって移動し、撮像素子周辺に付着する場合があると考えられる。
【0003】
この問題に対応したカメラシステムとして、例えば、ミラーボックスの下方に設けたLED等によって撮像素子を照明し、このとき撮像素子から出力される出力信号から、撮像素子近傍に付着した異物の有無を検出するカメラシステムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、従来技術に関するカメラシステムは、異物の付着自体を抑制するものではない。したがって、例えばカメラ内部に異物が比較的多く存在するような場合には、異物を検出する頻度が上昇し、異物を除去する動作を頻繁に行う必要があるという問題を有していた。
【特許文献1】特開2002−300442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、その目的は、撮像素子周辺に異物が付着することを防止したカメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るカメラシステムは、
撮影レンズ(18)からの光束により撮像を行う撮像素子(34)と、
前記光束を反射する観察位置と前記光束を反射しない撮影位置との間で移動可能なメインミラー(46)と、
前記メインミラーが移動する際、前記メインミラーと前記撮像素子とにより形成される空間に移動する移動部材(42)と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、例えば、前記移動部材は、前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記光束を反射しない第1位置に位置してもよい。
【0008】
また、例えば、前記移動部材は、回動することにより前記空間に移動してもよい。
【0009】
また、例えば、前記移動部材は、前記メインミラーが移動する際、前記撮像素子に対向する第2位置に位置してもよい。
【0010】
また、例えば、前記移動部材は、
前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記光束を反射しない第1位置に位置し、
前記メインミラーが前記観察位置から前記撮影位置に移動する間に、前記第1位置と前記空間との間を往復してもよい。
【0011】
また、例えば、本発明に係るカメラシステムは、前記メインミラーが内部に配置されたミラーボックス(20,20a)を有し、
前記移動部材は、前記空間に移動することによって前記ミラーボックス内の空気流を調整してもよい。
【0012】
また、例えば、前記移動部材は、前記ミラーボックス内の空気流を調整する平板部(42b)と、前記平板部に対して傾斜している縁部(42a)と、を有していてもよい。
【0013】
また、例えば、本発明に係るカメラシステムは、前記メインミラーが内部に配置されたミラーボックスを有し、
前記ミラーボックスは、外部へ空気流を排出可能な開口部(56)を有し、
前記移動部材は、前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記開口部の少なくとも一部を遮蔽していてもよい。
【0014】
また、例えば、本発明に係るカメラシステムは、前記メインミラーが内部に配置されたミラーボックスを有し、
前記撮影位置において前記メインミラーは前記ミラーボックスの一面(24a)に略平行であり、
前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記移動部材は前記ミラーボックスの前記一面と対向する面(39a,39b)に略平行であってもよい。
【0015】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの概略断面図、
図2は、図1に示すミラーボックス周辺を拡大して表した模式図であり、移動部材が第1位置に位置し、メインミラーが観察位置に位置する状態を表した図、
図3は、図2に示すミラーボックス周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第1位置から第2位置に移動する状態を表した図、
図4は、図2に示すミラーボックス周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第2位置に位置する状態を表した図、
図5は、図2に示すミラーボックス周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第2位置から第1位置に移動する状態を表した図、
図6は、図2に示すミラーボックス周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第1位置に位置し、メインミラーが撮影位置に位置する状態を表した図、
図7は、本発明の第2実施形態に係るカメラにおけるミラーボックス周辺を拡大して表した模式図であり、移動部材が第1位置に位置し、メインミラーが観察位置に位置する状態を表した図、
図8は、図7に示すミラーボックス周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第2位置に位置する状態を表した図、
図9は、本発明の一実施形態に係る一眼レフカメラの概要を表すブロック図、
図10は、図2に示す移動部材を表した斜視図である。
第1実施形態
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラ10の概略断面図である。カメラ10は、カメラボディ12と交換レンズ14を有しており、交換レンズ14は、レンズマウント16を介してカメラボディ12に取り付けられている。
【0018】
交換レンズ14は、撮影レンズ18を有しており、撮影レンズ18を介してカメラボディ12の内部に被写体光を導く。また、カメラボディ12の内部には、ミラーボックス20、ファインダユニット22、シャッタユニット38、光学フィルタ32および撮像素子34等が具備してある。
【0019】
ミラーボックス20の内部には、ミラーユニット40が配置されている。図1において、ミラーユニット40のメインミラー46は観察位置にある。観察位置にあるメインミラー46は、交換レンズ14の撮影レンズ18から導かれた被写体光を反射し、被写体光をファインダユニット22に導く。
【0020】
ファインダユニット22は、ファインダスクリーン24、ペンタプリズム26および接眼レンズ28等を有している。撮影者は、ファインダユニット22を介して、被写体像を視認することができる。
【0021】
カメラボディ12の背面には、背面液晶パネル36が備えられている。背面液晶パネル36は、カメラボディ12内部の制御回路によって制御され、メモリカードに記憶されている画像や、カメラ10の設定に関する情報等を表示することができる。
【0022】
なお、各部材の配置については、交換レンズ14に備えられる撮影レンズ18によって導入された被写体光が、撮像素子34に向かって、進行する方向をX軸の正方向として説明を行う。また、メインミラー46で反射された撮影光が、ペンタプリズム26に向かって進行する方向をZ軸の正方向、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向をY方向として説明を行う。なお、図1において、ミラーボックス20の内部は、ミラーボックス20内部の部品を見やすくするために、側面図で表している。
【0023】
図2は、図1に示すミラーボックス20周辺を拡大して表した模式図である。ミラーボックス20の周辺には、図1に示すように、ファインダスクリーン24、撮影レンズ18、測距部39およびシャッタユニット38等が配置されている。ミラーボックス20は、周辺に配置されたシャッタユニット38等とは独立した部材であってもよいが、周辺に配置された他の部材と一体となっていてもよい。
【0024】
本実施形態に係るミラーボックス20は、ミラーボックス20の周辺に配置された他の部材と一体となって構成されている。すなわち、ミラーボックス20のZ軸正方向側の面であるミラーボックス上面24aの一部は、ファインダスクリーン24のZ軸負方向側の面によって構成されている。また、ミラーボックス20のZ軸負方向側の面であるミラーボックス下面39aの一部は、測距部39のZ軸正方向側の面によって構成されている。
【0025】
さらに、ミラーボックス20のX軸負方向側の面であるミラーボックス前面18aの一部は、撮影レンズ18のX軸正方向側の面によって構成されている。また、ミラーボックス20のX軸正方向側の面であるミラーボックス後面38aの一部は、シャッタユニット38のX軸負方向側の面によって構成されている。
【0026】
ミラーボックス20の内部には、メインミラー46およびサブミラー48を有するミラーユニット40と、移動部材42とが備えられている。本実施形態に係るカメラにおいて、メインミラー46の一方の端部46aは、Y軸方向に沿ったミラー回動軸Bに対して移動自在に取り付けられており、メインミラー46はミラー回動軸Bを中心として回動することができる。ミラー回動軸Bに取り付けられている一方の端部46aは、ミラーボックス上面24aおよびミラーボックス後面38aに近接する角部に配置されている。
【0027】
メインミラー46は、ミラー回動軸Bを中心として、図2に示す観察位置と、図6に示す撮影位置との間を回動することができる。メインミラー46が観察位置に位置するとき、ミラー回動軸Bに取り付けられている一方の端部46aとは反対側の端部である他方の端部46bは、ミラーボックス前面18aおよびミラーボックス下面39aに近接する角部に位置する。
【0028】
観察位置に位置するメインミラー46は、ミラーボックス前面18aからミラーボックス20の内部に導かれた被写体光を、ミラーボックス上面24aに向かって反射する。メインミラー46に反射された被写体光は、ファインダスクリーンおよびペンタプリズム等を有するファインダユニットに導かれ、ファインダユニットを覗く観察者の目に到達する。
【0029】
また、メインミラー46が観察位置に位置するとき、メインミラー46に取り付けられているサブミラー48は、メインミラー46に対して略90度の角度を有するように配置されている。サブミラー48は、メインミラー46を透過した被写体光の一部を、ミラーボックス下面39a側に配置された測距部39に導くことができる。測距部39は、被写体光から、被写体とカメラとの距離に関する情報を取得する。なお、本実施形態におけるサブミラー48は、キャッチャーピン50に係合するフック51を有している。
【0030】
それに対して、図6に示すように、メインミラー46が撮影位置に位置するとき、他方の端部46bは、ミラーボックス前面18aおよびミラーボックス上面24aに近接する角部に位置する。撮影位置に位置するメインミラー46は、被写体光の光路から退避させられており、ミラーボックス前面18aからミラーボックス20の内部に導かれた被写体光を反射しない。したがって、被写体光はミラーボックス20の内部を、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かって直進する。
【0031】
メインミラー46が撮影位置に位置した状態で、シャッターユニット38のシャッタ幕を開くことによって、被写体光は、ミラーボックス20を通過し、さらに光学フィルタ32を透過して撮像素子34に到達する。撮像素子34は、被写体光を光電交換して撮像を行う。また、メインミラーが撮影位置に位置するとき、サブミラー48は、メインミラー46と略平行になるように、メインミラー46に対して折り畳まれている。したがって、メインミラー46が撮影位置に位置した状態では、メインミラー46と同時に、サブミラー48も被写体の光路から退避させられている。
【0032】
図2に示す移動部材42は、Y軸方向に沿った回動軸Aに対して相対移動可能に取り付けられている基部42cと、基部42cとは反対側の端部である縁部42aと、基部42cと縁部42aとを接続する平板部42bを有している(図10)。図10に示すように、縁部42aは、平板部42bに対して傾斜している。基部42cから縁部42aまでの長さは、他の部材(特にメインミラー46とサブミラー48)と接触しない長さや形状であれば特に限定されないが、例えばメインミラー46における一方の端部46aから他方の端部46bまでの長さの30%から50%程度の長さとすることができる。
【0033】
本実施形態では、図2に示す回動軸Aは、ミラーボックス下面39aに設けられている。移動部材42は、回動軸Aを中心として、図2に示す第1の位置から、図4に示す第2の位置まで回動することができる。図2に示す第1の位置では、移動部材42の平板部42bは、ミラーボックス下面39aに接している。それに対して、図4に示す第2の位置では、移動部材42の平板部42bは、ミラーボックス下面39aから離れており、メインミラー46と撮像素子34とにより形成される空間に縁部42aが位置し、ミラーボックス下面39aに対して所定の角度を有している。
【0034】
移動部材42の平板部42bおよび縁部42aは、後述のように、メインミラー46の回動に同期して移動し、メインミラー46の回動によって生じる空気流を制御することができる。すなわち、移動部材42が、図2に示す第1の位置から移動すると、移動部材42の平板部42bがミラーボックス下面39aから離れて、ミラーボックス下面39aに対して0度より大きく90度より小さい角度を有し、撮像素子34に対向する。したがって、移動部材42は、メインミラー46の回動によって生じる空気の流れのうち、特にミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れを弱めることができる。
【0035】
図9は、本発明の一実施形態に係る一眼レフカメラ10の概要を表すブロック図である。カメラ10は、カメラ10全体の動作を制御する制御回路68を有している。制御回路68は、カメラ10に備えられた他の部分から信号を受信することができる。また制御回路68は、必要に応じて演算等を行ったり、カメラ10に備えられた他の部分に対して、他の部分を制御するための信号を送信することができる。
【0036】
撮影レンズ検出部62は、撮影レンズ18を備える交換レンズが、カメラボディに取り付けられたことを検出し、制御回路68に検出信号を送ることができる。制御回路68は、撮影レンズ18を備える交換レンズが、カメラボディに適切に取り付けられていることを確認したうえで、カメラ10に撮影動作を行わせることができる。カメラ10には、電源部64が備えられており、制御回路68は、カメラ10の各部分に電力を供給することができる。
【0037】
ミラー駆動回路66は、制御回路68からの制御を受けて、ミラーボックスの内部に備えられたミラーユニット40を駆動する。例えば撮影動作において、制御回路68は、操作部70からの操作信号を受けて、ミラー駆動回路66に制御信号を発信する。制御信号を受信したミラー駆動回路66は、ミラーユニット40のメインミラー46を回動させる。
【0038】
ミラーユニット40のメインミラー46によって反射されていた被写体光は、ミラーユニット40のメインミラー46が回動させられることによって、ファインダユニット22の側からシャッタユニット38の側へ進行方向を変化させられる。制御回路68は、ミラーユニット40のメインミラー46を回動させる際、シャッタユニット38を制御してシャッタを開き、露光動作を行う。撮像素子34は、シャッタが開かれることによって導かれた被写体光を光電交換し、撮像を行う。
【0039】
図4等に示すミラーユニット40のメインミラー46は、ミラーボックス20の内部を回動する際、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れを発生させる場合がある。このとき、ミラーボックス20の内部に異物が存在する場合は、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れに乗って、異物が移動する。メインミラー46が回動した際にシャッタが開くため、ミラーボックス前面18aから後面38aに向かう空気の流れが強い場合は、空気の流れに乗って移動する異物が、撮像素子34周辺の光学フィルタ32等に到達し、光学フィルタ32等に付着する可能性が高くなる。
【0040】
本実施形態に係るカメラ10において、図10に示すミラー駆動回路66は、ミラーユニット40だけでなく、移動部材42も駆動することができる。ミラー駆動回路66は、図4等に示すメインミラーの回動に同期させて、移動部材42を回動させることによって、ミラーボックス前面18aから後面38aに向かう空気の流れを弱めることができる。したがって、ミラーボックス20の内部に存在する異物が、空気の流れに乗って光学フィルタ32等に到達して光学フィルタ32等に付着することを防止できる。
【0041】
図9に示すカメラ10は、メモリカードスロット74を有しており、メモリカードスロット74にはメモリカード76が挿入されている。制御回路68は、撮像素子34で撮像された画像を、メモリカード76に記録することができる。また、カメラ10は、カメラボディ内部に内蔵されたメモリ72を有しており、撮像された画像は、メモリ72に記録されてもよい。
【0042】
以下に、図2〜図6に示す模式図を用いて、一連の撮影動作におけるミラーユニット40および移動部材42の動きと、ミラーボックス20の周辺に発生する空気の流れについて説明する。レリーズボタン等によって構成される操作部70(図9)から、制御回路68に撮像信号が入力される前の段階では、メインミラー46は、図2に示すように、観察位置に配置されている。また、移動部材42は、第1の位置に配置されている。撮像動作において、メインミラー46および移動部材42は、ミラー回動軸Bまたは回動軸Aを中心として回動し、メインミラー46および移動部材42の配置は、図2から図6に示すように、順次変化する。
【0043】
図9に示す操作部70から撮像信号が入力されると、ミラー駆動回路66は、制御回路68からの制御を受けて、ミラーユニット40および移動部材42の駆動を開始する。まず、ミラー駆動回路66は、サブミラー48を移動させることによって、サブミラー48のフック51とキャッチャーピン50との係合を解除し、さらに、メインミラー46を、ミラー回動軸Bを中心として回動させる(図3)。図3は、メインミラー46が、観察位置から撮像位置に向かって移動を開始した直後の状態を表したものである。
【0044】
図3において、メインミラー46の他方の端部46bは、ミラーボックス下面39aに近接する位置から、ミラーボックス上面24aに近接する位置に向かって移動を開始している。本実施形態に係るミラーボックス20の内部は、必ずしも密閉空間とはなっていないが、周辺を多くの部材で覆われているため、ミラーボックス20の内部で発生した空気の流れは、ミラーボックス20の内部を循環する傾向にある。
【0045】
したがって、メインミラー46の他方の端部46bが移動を始めると、図3の矢印80で示すように、他方の端部46bの移動方向とは逆方向であるミラーボックス上面24aから下面39aに向かう空気の流れが発生する。特に、ミラーボックス20がコンパクトに作製されているカメラ10においては、他方の端部46bと、ミラーボックス前面18aとの間隙が狭いため、メインミラー46が発生させる空気の流れが強くなる傾向にある。
【0046】
図9に示すミラー駆動回路66は、図3に示すメインミラー46を駆動するのに同期して、移動部材42を駆動する。移動部材42は、回動軸Aを中心として回動を開始し、移動部材42の縁部42aおよび平板部42bが、ミラーボックス下面39aから離れる。すなわち、移動部材42は、メインミラー46の他方の端部46bと、ミラーボックス下面39aとの間の空間を塞ぐように回動する。
【0047】
したがって、メインミラー46が移動する際に発生させる空気の流れ(矢印80)は、移動部材42によって遮られる。すなわち移動部材42は、ミラーボックス下面39aに沿って、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れを遮り、弱めることができる。なお、移動部材42は、メインミラー46と同時に回動を開始してもよく、また、メインミラー46が回動を始める直前または直後に回動を開始してもよい。
【0048】
図4では、図3に示す状態からメインミラー46がさらに回動し、メインミラー46の他方の端部46bが、ミラーボックス下面39aからさらに離れている。移動部材42は、図3に示す状態からさらに回動し、第2の位置に位置している。
【0049】
移動部材42が第2の位置に位置しているとき、移動部材42の平板部42bは、ミラーボックス下面39aに対して0度より大きく90度より小さい所定の角度を有する。平板部42bとミラーボックス下面39aとの間に形成される所定の角度は特に限定されないが、前記所定の角度は、移動部材42とミラーユニットとが衝突しないように設計される。また、第2の位置における平板部42bの角度は、メインミラー46が発生させる空気の流れを効果的に弱めることや、移動部材42自体が発生させる空気の流れを強くしすぎないことなどを考慮して設計される。
【0050】
第2の位置に位置している移動部材42は、メインミラー46の下方(Z軸負方向側)の空間を遮っているので、メインミラー46が移動する際に発生させる空気の流れ(矢印82)を遮ることができる。したがって、第2の位置に位置している移動部材42は、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れを弱めることができる。
【0051】
図3の矢印83に示すように、移動部材42を用いることにより、縁部42aを周り込む空気の流れ(矢印83)は、メインミラー46が発生させる空気の流れ(矢印82)に対して十分に弱められている。特に、本実施形態に係る移動部材42の縁部42aは、平板部42bに対して傾斜しているため、ミラーボックス前面18a側から後面38a側へ空気が回り込む現象が抑制されている。
【0052】
なお、図4に示す状態では、サブミラー48がメインミラー46に対して折り畳まれ始めており、移動部材42の背面(X軸正方向側の面)に接近している。したがって、縁部42aを周り込む空気の流れ(矢印83)は、サブミラー48によっても弱められる。
【0053】
図5では、図4に示す状態からメインミラー46がさらに回動し、メインミラー46の他方の端部46bは、ミラーボックス下面39aからさらに離れている。また、ミラーユニット40のサブミラー48は、メインミラー46に対して折り畳まれつつある。
【0054】
移動部材42は、図4に示す第2の位置から、再び図2に示す第1の位置に向かって移動している途中である。このように、本実施形態では、移動部材42を第1の位置と第2の位置との間で往復運動させる。これによって、移動部材42は、メインミラー46またはサブミラー48と衝突することを回避しながら、ミラーボックス20の内部の空気の流れを効果的に制御できる。また、移動部材42の縁部42aの軌跡と、メインミラーの他方の端部46bと軌跡が交わっているため、ミラーボックス20の内部の空気の流れを効果的に制御できると同時に、ミラーボックス20をコンパクトにできる。
【0055】
移動部材42は、図5に示す位置においても、メインミラー46およびサブミラー48の下方(Z軸負方向側)の空間を遮っているので、メインミラー46が移動する際に発生させる空気の流れ(矢印84)を遮ることができる。したがって移動部材42は、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れを弱めることができる。
【0056】
また、移動部材42を用いることにより、縁部42aを周り込む空気の流れ(矢印85)は、メインミラー46が発生させる空気の流れ(矢印84)に対して十分に弱められている。また、サブミラー48は、縁部42aを周り込む空気の流れ(矢印85)や、メインミラー46が発生させる空気の流れ(矢印84)を弱めることができる。
【0057】
図6では、図5に示す状態からメインミラー46がさらに回動し、メインミラー36は撮影位置に位置している。撮影位置に位置するメインミラー46は、ミラーボックス上面24aに近接し、かつ、ミラーボックス上面24aに対して略平行になるように配置されている。また、サブミラー48はメインミラー46に対して折り畳まれている。さらに、移動部材42は、図5に示す状態からさらに第1の位置に向かって回動し、図6では第1の位置に位置している。第1の位置に位置する移動部材42は、ミラーボックス上面24aに対向するミラーボックス下面39aに近接し、かつ、ミラーボックス下面39aに対して略平行になるように配置されている。
【0058】
図6に示す状態では、ミラーユニット40および移動部材42は、被写体光の光路から退避させられており、ミラーボックス前面18aからミラーボックス20の内部に入射した被写体光は、ミラーボックス後面38aに到達する。ここで、図9に示す制御回路68は、シャッタユニット38のシャッタ(不図示)を開いて被写体光を撮像素子34に導くようにシャッタユニット38を制御し、露光動作を行う。
【0059】
本実施形態に係るカメラ10では、メインミラー46が観察位置から撮影位置に向かって移動する際に、移動部材42がメインミラー46と同期して回動することによって、ミラーボックス前面18aから後面38aに向かう空気の流れを弱めている。したがって、ミラーボックス20の内部に異物が存在する場合であっても、当該異物が、空気の流れに乗って撮像素子34の方向へ向かって移動する現象を抑制できる。これにより、メインミラー46が観察位置から撮影位置に移動した直後に、シャッタユニット38のシャッタを開いて露光動作が行われる場合であっても、ミラーボックス20内等に存在していた異物が移動し、撮像素子34周辺の部材に付着することを防止できる。
【0060】
すなわち、本実施形態に係るカメラ10は、ミラーボックス20の周辺の異物が、メインミラー46の回動によって発生させられた空気の流れに乗って撮像素子34付近まで移動し、光学フィルタ32等に付着する現象を防止することができる。本実施形態に係るカメラ10は、光学フィルタ32等に異物が付着するのを抑制することができるため、撮像した画像に異物が写り込む現象を防止することができる。また、本実施形態に係るカメラ10によれば、光学フィルタ32等に付着した異物の除去動作を行う頻度を低減することができる。
第2実施形態
【0061】
図7は、本発明の第2実施形態に係るカメラにおけるミラーボックス20aの周辺を拡大して表した模式図である。第2実施形態に係るカメラに備えられたミラーボックス20aのミラーボックス下面39bには、メインミラー46の回動によって発生させられ空気の流れをミラーボックス20aの外に導く貫通孔56が形成されている。第2実施形態に係るカメラは、ミラーボックス下面39bに貫通孔56が形成されている以外は、第1実施形態に係るカメラと同様である。
【0062】
図7において、メインミラー46は観察位置に、移動部材42は第1の位置にそれぞれ位置しており、一連の撮影動作が始まる前におけるミラーボックス20a内部の状態を表している。第2実施形態に係るカメラに備えられたミラーボックス20aにおいて、図7に示す状態は、第1実施形態に係るカメラに備えられたミラーボックス20における図2に示す状態に相当する。
【0063】
図8は、第2実施形態に係るカメラに備えられたミラーボックス20aにおいて、メインミラー46が図7に示す観察位置から、撮影位置に向かって移動している状態を表したものである。移動部材42は第2の位置に位置しており、第2実施形態に係るカメラに備えられたミラーボックス20aにおいて、図8に示す状態は、第1実施形態に係るカメラに備えられたミラーボックス20における図4に示す状態に相当する。
【0064】
第2実施形態に係るミラーボックス20aの内部でも、第1実施形態と同様に、メインミラー46の回動によって空気の流れが発生させられる。すなわち、メインミラー46の他方の端部46bが移動を始めると、図3の矢印80で示すように、他方の端部46bの移動方向とは逆方向であるミラーボックス上面24aから下面39bに向かう空気の流れが発生する。
【0065】
ここで第2実施形態に係るミラーボックス20aでは、ミラーボックス下面39bに貫通孔56が形成されている。そのため、メインミラー46の回動によって発生させられたミラーボックス上面24aから下面39bに向かう空気の流れは、貫通孔56を介してミラーボックス20aの外部に導かれる。したがって、ミラーボックス20aは、メインミラー46の回動によって発生させられた空気の流れ(矢印86)が、ミラーボックス20aの内部の形状に沿って向きを変化させられ、ミラーボックス前面18aから後面38aに向かう空気の流れになることを抑制している。
【0066】
また、移動部材42は、第1実施形態と同様に、ミラーボックス下面39bから離れ、メインミラー46の他方の端部46bと、ミラーボックス下面39bとの間を塞ぐように回動する。したがって移動部材42は、ミラーボックス下面39bに沿って、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れ(矢印87)を遮り、弱めることができる。
【0067】
このように、第2実施家形態に係るミラーボックス20aでは、貫通孔56によって、ミラーボックス前面18aから後面38aに向かう空気の流れが発生することを抑制し、それと合わせて、移動部材42によって、ミラーボックス前面18aからミラーボックス後面38aに向かう空気の流れ(矢印87)を遮り、弱めることができる。
【0068】
したがって、第2実施家形態に係るミラーボックス20aでは、ミラーボックス20aの内部に異物が存在する場合であっても、当該異物が、空気の流れに乗って撮像素子34の方向へ向かって移動する現象を効果的に抑制できる。また、第1実施形態と同様に、シャッタユニット38のシャッタを開いて露光動作が行われる際に、ミラーボックス20aの周辺の異物が撮像素子34付近まで移動して光学フィルタ32等に付着することを防止できる。
【0069】
なお、第2実施形態に係るミラーボックス20aの変形例として、図7に示す移動部材42の配置を換えたものが挙げられる。すなわち、変形例に係るミラーボックス20aでは、移動部材42が、図7に示す第1の位置において貫通孔56を遮蔽する。第1位置に位置する移動部材42が、貫通孔56を遮蔽することによって、例えば撮像動作が行われていない状態等において、ミラーボックス20aの内部に異物が入ることを防止できる。また、ミラーボックス20aの遮蔽性を高めることができる。
その他の実施形態
【0070】
第1実施形態および第2実施形態では、移動部材が第1位置と第2位置の間を回動しながら往復することによってミラーボックス内部の空気流を制御したが、移動部材の動きとしてはこれに限定されない。例えば、他の実施形態においては、移動部材が往復直線運動を行うものであってもよく、また、移動部材を回転運動させるものであってもよい。また、移動部材は、ミラーボックスの外部と内部の間を移動してもよく、さらに、ミラーボックスの内部には複数の移動部材が設けられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示すミラーボックスの周辺を拡大して表した模式図であり、移動部材が第1位置に位置し、メインミラーが観察位置に位置する状態を表した図である。
【図3】図3は、図2に示すミラーボックスの周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第1位置から第2位置に移動する状態を表した図ある。
【図4】図4は、図2に示すミラーボックスの周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第2位置に位置する状態を表した図である。
【図5】図5は、図2に示すミラーボックスの周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第2位置から第1位置に移動する状態を表した図である。
【図6】図6は、図2に示すミラーボックスの周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第1位置に位置し、メインミラーが撮影位置に位置する状態を表した図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係るカメラにおけるミラーボックスの周辺を拡大して表した模式図であり、移動部材が第1位置に位置し、メインミラーが観察位置に位置する状態を表した図である。
【図8】図8は、図7に示すミラーボックス周辺の他の状態を表した模式図であり、移動部材が第2位置に位置する状態を表した図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る一眼レフカメラの概要を表すブロック図である。
【図10】図10は、図2に示す移動部材を表した斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
18… 撮影レンズ
20,20a… ミラーボックス
24a… ミラーボックス上面
39a,39b… ミラーボックス下面
42… 移動部材
42a… 縁部
42b… 平板部
46… メインミラー
56… 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズからの光束により撮像を行う撮像素子と、
前記光束を反射する観察位置と前記光束を反射しない撮影位置との間で移動可能なメインミラーと、
前記メインミラーが移動する際、前記メインミラーと前記撮像素子とにより形成される空間に移動する移動部材と、を有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
前記移動部材は、前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記光束を反射しない第1位置に位置することを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記移動部材は、回動することにより前記空間に移動することを特徴とする請求項1または2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記移動部材は、前記メインミラーが移動する際、前記撮像素子に対向する第2位置に位置することを特徴とする請求項1〜3に記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記移動部材は、
前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記光束を反射しない第1位置に位置し、
前記メインミラーが前記観察位置から前記撮影位置に移動する間に、前記第1位置と前記空間との間を往復することを特徴とする請求項1〜4に記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記メインミラーが内部に配置されたミラーボックスを有し、
前記移動部材は、前記空間に移動することによって前記ミラーボックス内の空気流を調整することを特徴とする請求項1〜5に記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記移動部材は、前記ミラーボックス内の空気流を調整する平板部と、前記平板部に対して傾斜している縁部と、を有することを特徴とする請求項6に記載のカメラシステム。
【請求項8】
前記メインミラーが内部に配置されたミラーボックスを有し、
前記ミラーボックスは、外部へ空気流を排出可能な開口部を有し、
前記移動部材は、前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記開口部の少なくとも一部を遮蔽することを特徴とする請求項7に記載のカメラシステム。
【請求項9】
前記メインミラーが内部に配置されたミラーボックスを有し、
前記撮影位置において前記メインミラーは前記ミラーボックスの一面に略平行であり、
前記メインミラーが前記観察位置または前記撮影位置にある際、前記移動部材は前記ミラーボックスの前記一面と対向する面に略平行であることを特徴とする請求項1〜8に記載のカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−267957(P2009−267957A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117480(P2008−117480)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】