説明

カメラレンズ用ワイパー

【課題】車載用カメラのレンズに付着した付着物を適切に除去することが可能な小型のカメラレンズ用ワイパーを提供する。
【解決手段】カメラレンズ用ワイパー10は、車外に露出した車載カメラ50のレンズ51の付着物を除去する拭取部11と、水分を検知して変形する高分子樹脂を用いて拭取部11を駆動させる駆動部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外に露出した車載カメラのレンズの付着物を除去するカメラレンズ用ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲の情景を撮影するのに車載カメラが利用されている。このような車載カメラは、レンズが車外に露出して配置されるものが多い。このようなレンズにあっては水滴や汚れが付着することがあり、付着した場合には適切に車両の周囲の情景を撮影することができなくなることもある。このような水滴や汚れを除去する技術として下記に出典を示す特許文献1−3に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドライト用ワイパーは、ロータ部と払拭部とを備えて構成される。ロータ部は車両の走行時に生じる気流により回転する。払拭部はロータ部に付設される。これにより、車両の走行時に生じる気流を利用して払拭部を回転させ、ヘッドライトに付着した泥土等を払拭する。
【0004】
また、特許文献2に記載の球形ハウジング用ワイパー装置は、ワイパーアームと、ワイパー部材と、駆動手段とを備えて構成される。ワイパーアームは両端部をハウジングの球面状の透明窓の中心軸近傍に回動可能に設けられる。ワイパー部材はワイパーアームの内側に設けられて、透明窓の曲面に沿う円弧面を有して構成される。駆動手段はワイパーアームを往復運動させる。
【0005】
また、特許文献3に記載のカメラ洗浄装置は、洗浄液噴射ノズルと、エアー噴射ノズルとを備えて構成される。洗浄液噴射ノズルは、カメラレンズまたは当該カメラレンズの前面側を覆う透明板を被洗浄面とし、当該被洗浄面に対して洗浄液を噴射する。エアー噴射ノズルは、被洗浄面に対して圧縮空気を噴射する。洗浄液噴射ノズル及びエアー噴射ノズルは、カメラレンズによる撮像範囲の外側に配設され、少なくともエアー噴射ノズルは、被洗浄面に対して斜め上方から圧縮空気を噴射する位置に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭49−19558号公報
【特許文献2】特開平10−216049号公報
【特許文献3】特開2009−81765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載の技術を利用すれば、レンズを直接洗浄することができるので、レンズを清浄にすることができる。ここで、車載カメラはコスト面やデザイン面から小型で構成される。このような車載カメラに、特許文献1及び2に記載の技術を適用した場合には、車載カメラユニットが大型化してしまう。また、特に特許文献1のようにレンズの中心を回転軸と回転するものであれば、撮影して得られた画像に回転軸が映り込み、適切に車両の周囲の情景を撮影することができない。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術によれば、エアーを利用するため適切に水滴や汚れを除去することができない場合がある。また、エアーを吹き付ける装置をレンズの斜め上方に設ける必要があるので、装置が大型化してしまう。更には、コーティング材を塗布することも考えられるが、時間の経過と共にコーティング材が落ちてしまい効果がなくなってしまう。また、このようなコーティング材では細かい水滴や汚れは完全に除去することができない。
【0009】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車載用カメラのレンズに付着した付着物を適切に除去することが可能な小型のカメラレンズ用ワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るカメラレンズ用ワイパーの特徴構成は、車外に露出した車載カメラのレンズの付着物を除去する拭取部と、水分を検知して変形する高分子樹脂を用いて前記拭取部を駆動させる駆動部と、を備えている点にある。
【0011】
このような特徴構成とすれば、高分子樹脂の検知結果に基づき拭取部が車載カメラのレンズに沿って移動することができるので、レンズに付着した付着物を適切に除去することが可能となる。また、高分子樹脂が拭取部を駆動させるので、別途、制御系を備える必要がない。したがって、カメラレンズ用ワイパーを小型化することができる。
【0012】
また、前記高分子樹脂の少なくとも一部が、前記拭取部として用いられていると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、高分子樹脂自体を拭取部として利用することが可能となる。したがって、よりコンパクトにカメラレンズ用ワイパーを構成することができる。
【0014】
また、前記高分子樹脂が、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリアニリンのうちの一つであると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、高分子樹脂が適切に水分を検知することができる。したがって、駆動部が拭取部を駆動させることができる。
【0016】
また、前記高分子樹脂が長尺状に構成され、当該長尺状の少なくとも一端が、前記車載カメラに固定されてあると好適である。
【0017】
このような構成とすれば、固定された部分を支点として、高分子樹脂が拭取部を駆動することができる。したがって、車載カメラのレンズの表面に沿って適切に拭取部を移動させることが可能となる。
【0018】
また、前記拭取部の外形が円柱状に構成されてあると好適である。
【0019】
このような構成とすれば、拭取部の外形が円柱状に構成されているので、拭取部をレンズに押し当てることにより、拭取部とレンズとの間の隙間をなくすことができる。したがって、レンズに付着した付着物を確実に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両に備えられる車載カメラを模式的に示した図である。
【図2】カメラレンズ用ワイパーが備えられた車載カメラの模式図である。
【図3】カメラレンズ用ワイパーの動作について模式的に示した図である。
【図4】その他の実施形態に係るカメラレンズ用ワイパーを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係るカメラレンズ用ワイパーは、車載カメラのレンズに付着した付着物を除去する機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0022】
図1に示されるように、車両1のリアエンブレム近傍に車載カメラ50が備えられる。このような車載カメラ50は、車外、特に車両1の後方の情景を撮影する。車載カメラ50は、車外の情景を鮮明に撮影するために車外に設けられる。したがって、車載カメラ50のレンズ51は、車外に露出して配設される。本実施形態に係るレンズ51は、車両1の外側方向に突出する凸レンズが利用され、カメラレンズ用ワイパー10は、このような凸レンズの表面に沿って動作する。
【0023】
次に、カメラレンズ用ワイパー10の構成について説明する。図2(a)には本実施形態に係るカメラレンズ用ワイパー10の斜視図が示され、図2(b)には本実施形態に係るカメラレンズ用ワイパー10の側面図が示される。カメラレンズ用ワイパー10は、拭取部11と、駆動部12と、固定部13とを備えて構成される。
【0024】
拭取部11は、レンズ51の付着物を除去する。上述のように、レンズ51は車外に露出して配設される。このため、レンズ51には水滴や汚れが付着する。このような水滴や汚れが上述の付着物に相当する。拭取部11は、このような付着物を拭取った際にレンズ51を傷付けないように、拭取り用の柔らかいゴム(例えば硬度1以下)を用いて構成される。拭取部11の根元部分には、後述する駆動部12が付設される。
【0025】
拭取部11は外形が円柱状に構成される。円柱状とは、真円の柱状に限定されるものではなく、楕円の柱状も含まれる。このように拭取部11を構成することにより、レンズ51に対して確実に接触させることが可能となる。
【0026】
駆動部12は、水分を検知して変形する高分子樹脂を用いて拭取部11を駆動させる。高分子樹脂は、外部刺激を受け、形状や体積を変化させる高分子材料である。このような高分子樹脂の一例として、例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等が挙げられる。本実施形態では、このような高分子樹脂のうちの一つが用いられる。外部刺激としては、水分が相当する。このような高分子樹脂は、水分を吸収するとイオンの活動が活発になり、電気が流れ易くなる。このため、BZ(Belousov-Zhabotinsky)反応やバイオマス反応等により自励振動をおこし、例えば電気を供給しなくても駆動する。また、上記のような高分子樹脂は、水滴のような比較的体積の大きい水分を検知するだけでなく、湿度が所定の値に達した場合に水分があると検知し、形状が変化する。
【0027】
本実施形態に係るカメラレンズ用ワイパー10の駆動部12は、外部から通電して動作するものではなく、上述のように水分を検知して動作する。したがって、雨や雪が降り、高分子樹脂近傍の湿度が所定の値に達すると、自動的に駆動部12が動作する。このような駆動部12は、水分を検知すると、予め設定された方向に変形することになる。すなわち、駆動部12が高分子樹脂が水分を検知すると、レンズ51の表面に沿って拭取部11が移動する。これにより、高分子樹脂を3次元的に駆動することができるので、レンズ51の形状に合わせて拭取部11を押し当てて、押し当てた状態でスライドさせることが可能となる。
【0028】
本実施形態では、高分子樹脂は、長尺状に構成される。その一端は、車載カメラ50に固定され、他端は、上述の拭取部11が付設される。本実施形態では、一端に固定部13(後述する)が付設され、固定部13を介して車載カメラ50に固定される。
【0029】
固定部13は、高分子樹脂の一端を車載カメラ50に固定する。これにより、固定部13を支点として高分子樹脂の形状を変形させることができるので、凸レンズからなるレンズ51の表面に沿って拭取部11を移動させることが可能となる。本実施形態では、固定部13はボルトが相当し、高分子樹脂は当該ボルトにより車載カメラ50の筐体に締結固定される。
【0030】
次に、実際にレンズ51に沿ってカメラレンズ用ワイパー10を動作させた場合の形態を説明する。図3には、カメラレンズ用ワイパー10の動作形態が示される。図3において左側に示されたものが車載カメラ50の側面図であり、右側に示されたものが車載カメラ50の斜視図である。カメラレンズ用ワイパー10は、レンズ51と車載カメラ50の筐体の隙間に格納される(図3(a))。このため、使用しない場合には目障りになることがない。また、洗車等の際に誤って破損されることもない。
【0031】
本実施形態に係るカメラレンズ用ワイパー10は、上述のように水分を検知して駆動部12が拭取部11を駆動する。水分が検知されると、自動的にカメラレンズ用ワイパー10がレンズ51の表面に沿って移動する。これにより、拭取部11がレンズ51の表面に押し当てられながら移動するので、レンズ51の表面の水滴や汚れ等の付着物が除去される(図3(b)−図3(d))。このように、本実施形態に係るカメラレンズ用ワイパー10によれば、車両1のユーザによる操作スイッチの操作は不要である。
【0032】
カメラレンズ用ワイパー10は水分や汚れを除去する程度で良いので、拭取部11を大きくする必要がない。したがって、車載カメラ50を小型に実現することができる。更に、拭取部11を大きくする必要がないので、車載カメラ50の視野を悪化させることもない。
【0033】
拭取部11がレンズ51の端部まで移動すると(図3(c))、拭取部11はレンズ51の表面に沿って移動開始位置まで戻る(図3(d))。本カメラレンズ用ワイパー10は、このように移動開始位置と端部との間をレンズ51の表面に沿って移動する。この移動は、高分子樹脂が水分を検知しなくなった場合に終了する。
【0034】
このように本カメラレンズ用ワイパー10によれば、高分子樹脂の動きに合わせて拭取部11が車載カメラ50のレンズ51に沿って移動することができるので、レンズ51に付着した付着物を適切に除去することが可能となる。また、高分子樹脂を用いて駆動部12が拭取部11を駆動するので、別途、モータ等を備える必要がない。したがって、カメラレンズ用ワイパー10を小型化することができる。
【0035】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、高分子樹脂で拭取部11が構成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、高分子樹脂の一部を柔らかいゴム(例えば硬度1)で被覆して構成することも可能である。或いは、水分を通過させるような材料で高分子樹脂を覆うことにより、拭取部11を構成することも可能である。係る場合であっても、レンズ51に付着する付着物を適切に除去することは当然に可能である。
【0036】
上記実施形態では、拭取部11の根元部分に高分子樹脂が付設されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、高分子樹脂の少なくとも一部を、拭取部11として用いることも可能である。このような形態が、図4に示される。このような場合であっても、レンズ51に付着する付着物を適切に除去することができる。
【0037】
上記実施形態では、高分子樹脂が長尺状に構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。高分子樹脂を長尺状以外の形状で構成することも当然に可能である。
【0038】
上記実施形態では、レンズ51が凸レンズであるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。レンズ51が凹レンズ或いは平面レンズから構成される場合であっても、カメラレンズ用ワイパー10が凹レンズ或いは平面レンズに付着した付着物を除去することは当然に可能である。
【0039】
上記実施形態では、高分子樹脂は、一端が車載カメラ50に固定されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。高分子樹脂の両端を車載カメラ50に固定するように構成することも当然に可能である。
【0040】
上記実施形態では、拭取部11の外形が円柱状に構成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。拭取部11の外形を角柱状に構成することも当然に可能である。
【0041】
上記実施形態では、拭取部11の一端に高分子樹脂が付設されているとして図示した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、高分子樹脂を水分を検知する検知手段として用いることが可能である。上述のように高分子樹脂は、水分を吸収するとイオンの活動が活発になり、電気が流れ易くなる。このようなイオンの活動は微量の水分でも活発になるので高分子樹脂は乾燥状態から微量に動作する。このため、例えば電気信号でこのような動きを制御部が検出し、ワイパー駆動スイッチをONにするよう構成できる。このような構成であっても、駆動部12が高分子樹脂を用いて水分を検知し、これをトリガとして拭取部11を駆動させることを実現できる。
【0042】
本発明は、車外に露出した車載カメラのレンズの付着物を除去するカメラレンズ用ワイパーに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:カメラレンズ用ワイパー
11:拭取部
12:駆動部
50:車載カメラ
51:レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に露出した車載カメラのレンズの付着物を除去する拭取部と、
水分を検知して変形する高分子樹脂を用いて前記拭取部を駆動させる駆動部と、
を備えるカメラレンズ用ワイパー。
【請求項2】
前記高分子樹脂の少なくとも一部が、前記拭取部として用いられている請求項1に記載のカメラレンズ用ワイパー。
【請求項3】
前記高分子樹脂が、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリアニリンのうちの一つである請求項1又は2に記載のカメラレンズ用ワイパー。
【請求項4】
前記高分子樹脂が長尺状に構成され、当該長尺状の少なくとも一端が、前記車載カメラに固定されてある請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラレンズ用ワイパー。
【請求項5】
前記拭取部の外形が円柱状に構成されてある請求項1から4のいずれか一項に記載のカメラレンズ用ワイパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−81097(P2013−81097A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220354(P2011−220354)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】