説明

カルバゾール誘導体

【課題】酸化反応の繰り返しに耐性を有する発光素子用材料を製造するための原料として
有用なカルバゾール誘導体を提供することを課題とする。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体である。一般式(1)にお
いて、Rは、水素、メチル、エチル、tert−ブチル等の炭素数1以上4以下のアル
キル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル等の炭素数1以上12以下のアリール基の中か
ら選ばれるいずれか一を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバゾール誘導体に関し、特に発光素子用材料を得る為の原料として用い
ることのできるカルバゾール誘導体に関する。また、そのカルバゾール誘導体を用いて得
られた発光素子用材料および、その発光素子用材料を用いて作製された発光素子、電子機
器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ等の画素として発光素子が用いられるようになってきている。この
ような発光素子は、一般的に一対の電極間に発光物質を含む層が挟まれた構造を有する。
【0003】
発光素子の分野では、発光効率、色度がよく、若しくは消光等を防ぐことができる発光
素子を得るために、発光素子を作製するための材料となる物質についての様々な研究が行
われている。中でも発光物質(発光素子を駆動させたときに発光を呈する物質)として用
いられる物質は、一般にゲストと称され、より効率良く発光するようなゲストの開発が進
められている。例えば、特許文献1では、発光効率が高く、発光寿命の長い有機EL素子
用材料に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−131541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発光素子においては、正孔若しくは電子の授受によって電極間を電流が流れ
る。そして、発光層において、これらのキャリアはゲストにトラップされて再結合する。
つまり、ゲストは酸化若しくは還元された状態を経て、励起状態になる。そして、励起状
態になったゲストは基底状態へ戻るときに発光する。基底状態に戻ったゲストは、キャリ
アの再結合によって再び励起状態になった後、基底状態に戻るときに発光する。このよう
な励起と発光とが繰り返されるゲストは、すなわち酸化若しくは還元が繰り返されるゲス
トは、酸化若しくは還元されるうちに性質の異なるものになってしまうことがある。励起
と発光を繰り返すうちにゲストの性質が変化してしまうと、所望の発光が得られなくなっ
たり、キャリアの輸送性が変化して素子の劣化の原因となりうる。したがって、ゲストに
は、効率良く発光するだけでなく、酸化若しくは還元に対して耐性を有することが求めら
れる。
【0006】
また、発光素子を効率良く発光させる為に、ゲストに効率良くキャリアをトラップさせ
、キャリアの再結合効率を向上させることも求められる。多くの発光素子では、発光層は
、ホストと称される基質にゲストが分散された構成を有しており、ホストのHOMO準位
よりもゲストのHOMO準位が高く、若しくはホストのLUMO準位よりもゲストのLU
MO準位が低くなるようにホストとゲストを組み合わせることで、キャリアをトラップさ
せ易くなる。しかし、キャリアをトラップさせ易くなる一方で、HOMO準位とLUMO
準位との間のエネルギーギャップが狭くなってしまい所望の色度の発光を呈するような発
光素子が得られなくなる場合も生じる。このような問題は、特に青色の発光を呈する発光
素子において顕著である。
【0007】
そこで、本発明は、酸化反応の繰り返しに耐性を有する発光素子用材料を製造する原料
として有用なカルバゾール誘導体を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、酸化反応の繰り返しに耐性を有する発光素子用材料を提供することを
課題とする。
【0009】
本発明は、酸化反応の繰り返しに耐性を有し、長期間、良好な発光を得られる発光素子
を提供することを課題とする。なお、本明細書における「酸化反応の繰り返し」とは、中
性の物質を電気的に酸化した後、中性の状態に戻す過程の酸化プロセスを繰り返すことを
意味している。
【0010】
また、本発明は、色度の良好な青色の発光を呈する発光素子、発光装置、電子機器を提
供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一は、下記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体である。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(1)において、Rは、水素、メチル、エチル、tert−ブチル等の炭素数
1以上4以下のアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル等の炭素数1以上12以下
のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。
【0014】
本発明の一は、下記一般式(2)で表される発光素子用材料である。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(2)において、Rは水素または下記一般式(3)で表される基を表す。また
、R、Rは、水素、メチルまたはtert−ブチルのいずれかを表し、少なくとも一
方は水素を表す。また、一般式(2)、(3)において、Rは、水素、メチル、エチル
、tert−ブチル等の炭素数1以上4以下のアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフ
チル等の炭素数1以上12以下のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。
【0017】
【化3】

【0018】
本発明の一は、電極間に発光層を有し、該発光層は、下記一般式(4)で表される発光
物質と、該発光物質よりも大きいイオン化ポテンシャル及び該発光物質よりも大きいエネ
ルギーギャップを有するホストとを含むことを特徴とする発光素子である。ホストは正孔
の輸送性よりも電子の輸送性が高い物質であることが好ましい。
【0019】
【化4】

【0020】
一般式(4)において、Rは水素または下記一般式(5)で表される基を表す。また
、R、Rは、水素、メチルまたはtert−ブチルのいずれかを表し、少なくとも一
方は水素を表す。また、一般式(4)、(5)において、Rは、水素、メチル、エチル
、tert−ブチル等の炭素数1以上4以下のアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフ
チル等の炭素数1以上12以下のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。
【0021】
【化5】

【0022】
本発明の一は、電極間に発光層を有し、該発光層は、上記一般式(4)で表される発光
物質と、該発光物質よりも大きいイオン化ポテンシャル及び該発光物質よりも大きいエネ
ルギーギャップを有するホストとを含むことを特徴とする発光素子である。ホストは正孔
の輸送性よりも電子の輸送性が高い物質であることが好ましい。
【0023】
本発明の一は、本発明の発光装置を表示部または照明部に用いていることを特徴とする
電子機器である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施によって、酸化反応の繰り返しに対し優れた耐性を有する発光素子用材料
を製造するのに有用なカルバゾール誘導体を得られる。また、本発明の実施によって、酸
化反応の繰り返しに対し優れた耐性を有する発光素子用材料を得られる。また、本発明の
実施によって、酸化反応の繰り返しに耐性を有し、長期間、良好な状態で発光させること
ができる発光装置を得られる。また、本発明の実施によって、長期間、良好に、表示動作
あるいは照明することができる電子機器を得られる。
【0025】
本発明の実施によって、色度の良好な青色の発光を呈することができ、発光物質として
用いる発光素子用材料を製造するのに有用なカルバゾール誘導体が得られる。また、本発
明の実施によって、色度の良好な青色の発光を呈することができる発光素子用材料が得ら
れる。本発明の実施によって、色度の良い青色の発光を呈し、色彩の優れた画像を映す発
光装置を得ることができる。また、本発明の実施によって、色度の良い青色の発光を呈し
、色彩の優れた画像を映す電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の発光素子の態様について説明する図。
【図2】本発明の発光装置の態様について説明する図。
【図3】本発明の発光装置に含まれる回路について説明する図。
【図4】本発明の発光装置の態様について説明する上面図。
【図5】本発明の発光装置のフレーム動作の態様について説明する図。
【図6】本発明の発光装置に含まれる回路の態様について説明する図。
【図7】本発明の発光装置の態様について説明する断面図。
【図8】本発明の電子機器の態様について説明する図。
【図9】本発明の電子機器の態様について説明する図。
【図10】実施例1で製造した発光素子用材料のH−NMRチャート。
【図11】実施例2で製造した発光素子用材料のH−NMRチャート。
【図12】実施例2で製造した発光素子用材料の吸収スペクトル。
【図13】実施例2で製造した発光素子用材料の発光スペクトル。
【図14】実施例2で製造した発光素子用材料のCV測定結果。
【図15】実施例3で製造した発光素子用材料のH−NMRチャート。
【図16】実施例3で製造した発光素子用材料の吸収スペクトル。
【図17】実施例3で製造した発光素子用材料の発光スペクトル。
【図18】実施例3で製造した発光素子用材料のCV測定結果。
【図19】実施例で作製した発光素子について説明する図。
【図20】実施例4で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図21】実施例4で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図22】実施例4で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図23】実施例5で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図24】実施例5で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図25】実施例5で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図26】実施例6で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図27】実施例6で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図28】実施例6で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図29】実施例7で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図30】実施例7で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図31】実施例7で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図32】実施例8で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図33】実施例8で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図34】実施例8で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図35】実施例9で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図36】実施例9で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図37】実施例9で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図38】実施例10で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図39】実施例10で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図40】実施例10で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図41】実施例11で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図42】実施例11で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図43】実施例11で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図44】実施例12で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図45】実施例12で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図46】実施例12で作製した発光素子の発光スペクトル。
【図47】実施例13で作製した発光素子の電圧−輝度特性。
【図48】実施例13で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。
【図49】実施例13で作製した発光素子の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一態様について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施する
ことが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を
様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本形態の記載内容に
限定して解釈されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
本発明のカルバゾール誘導体、及びその製造方法の一態様について説明する。
【0029】
本発明のカルバゾール誘導体の具体的態様として、下記構造式(1)〜(9)で表され
るカルバゾール誘導体が挙げられる。
【0030】
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0031】
下記一般式(6)で表され、より具体的には構造式(1)〜(9)で表される本発明の
カルバゾール誘導体は、合成スキーム(a−1)で表されるように、カルバゾールを骨格
に含む化合物(化合物A)と1,4−ジブロモベンゼンとを反応させて、N−(4−ブロ
モフェニル)カルバゾールを骨格に含む化合物Bを合成した後、さらにパラジウム触媒を
用いたアニリンとのカップリング反応を行なうことによって得られる。
【0032】
【化15】

【0033】
【化16】

【0034】
一般式(6)及び合成スキーム(a−1)において、R10は、水素、メチル、エチル
、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル等
の炭素数1〜12のアリール基の中から選ばれるいずれか一の基を表す。なお、アリール
基は、置換基を有していてもよいし、若しくは無置換であってもよい。
【0035】
なお、本発明のカルバゾール誘導体の合成法は、合成スキーム(a−1)で表される合
成法に限定されるものではなく、その他の合成法によって合成されていてもよい。
【0036】
以上に説明した本発明のカルバゾール誘導体は、酸化反応の繰り返しに対し優れた耐性
を有する発光素子用材料を製造する原料として非常に有用である。また、以上に説明した
本発明のカルバゾール誘導体は、色度の良い青色の発光を呈する発光物質を製造する原料
としても有用である。
【0037】
(実施の形態2)
本発明のカルバゾール誘導体を用いたアントラセン誘導体の製造方法の一態様について
説明する。
【0038】
下記合成スキーム(b−1)で表されるように、一般式(6)で表されるカルバゾール
誘導体とジフェニルアントラセン骨格を有する化合物Cとをパラジウム触媒等の金属触媒
を用いたカップリング反応させることによって、下記一般式(7)で表され、発光素子用
材料として有用なアントラセン誘導体を得ることができる。
【0039】
【化17】

【0040】
【化18】

【0041】
一般式(7)及び合成スキーム(b−1)において、R10は、水素、メチル、エチル
、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル等
の炭素数1〜12のアリール基の中から選ばれるいずれか一の基を表す。R11は水素、
メチルまたはtert−ブチルのいずれかを表す。
【0042】
以上のようにして得られたアントラセン誘導体は、酸化反応の繰り返しに耐性を有し、
また、青色の発光を呈することができる。その為、特に発光物質(ゲストとも称される)
として機能する発光素子用材料として有用である。また、一般式(7)で表されるアント
ラセン誘導体は、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(
略称:t−BuDNA)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニル
アントラセン(略称:CzPA)、ジフェニルアントラセン等の電子輸送性に優れ、エネ
ルギーギャップが広く青色の発光を呈する発光物質に対するホストとして有効である有機
化合物と組み合わせて用いるのに非常に適している。一般式(7)で表されるアントラセ
ン誘導体と、t−BuDNA、CzPA、ジフェニルアントラセン等とを組み合わせて用
いることによって、適度に正孔をトラップし、発光層からその他の層への正孔の突き抜け
を低減すると共に、色度の良い青色の発光を呈することのできる発光素子を作製すること
ができる。
【0043】
なお、合成スキーム(b−1)で用いられている化合物Cは、例えば、下記合成スキー
ム(b−2)で表されるような合成によって得られる。
【0044】
【化19】

【0045】
合成スキーム(b−2)において、R11は水素またはtert−ブチルを表す。
【0046】
(実施の形態3)
本発明のカルバゾール誘導体を用いたアントラセン誘導体の合成の一態様について説明
する。
【0047】
下記合成スキーム(c−1)で表されるように、一般式(6)で表されるカルバゾール
誘導体とジフェニルアントラセン骨格を有する化合物Dとをパラジウム触媒等の金属触媒
を用いたカップリング反応させることによって、下記一般式(8)で表され、発光素子用
材料として有用なアントラセン誘導体を得ることができる。
【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
一般式(8)及び合成スキーム(c−1)において、R10は、水素、メチル、エチル
、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル等
の炭素数1〜12のアリール基の中から選ばれるいずれか一の基を表す。R12、R13
は、水素、メチルまたはtert−ブチルのいずれかを表し、少なくとも一方は水素を表
す。
【0051】
以上のようにして得られたアントラセン誘導体は、酸化反応の繰り返しに耐性を有し、
また、青色の発光を呈することができる。その為、特に発光物質として機能する発光素子
用材料として有用である。また、一般式(8)で表されるアントラセン誘導体は、t−B
uDNA、CzPA等の電子輸送性に優れ、エネルギーギャップが広く青色の発光を呈す
る発光物質に対するホストとして有効である有機化合物と組み合わせて用いるのに非常に
適している。一般式(8)で表されるアントラセン誘導体と、t−BuDNA、CzPA
、ジフェニルアントラセン等とを組み合わせて用いることによって、適度に正孔をトラッ
プし、発光層からその他の層への正孔の突き抜けを低減すると共に、色度の良い青色の発
光を呈することのできる発光素子を作製することができる。
【0052】
なお、合成スキーム(c−1)で用いられている化合物Dは、例えば、下記合成スキー
ム(c−2)で表されるような合成によって得られる。
【0053】
【化22】

【0054】
合成スキーム(c−2)において、R12、R13は、水素、メチルまたはtert−
ブチルのいずれかを表し、少なくとも一方は水素を表す。
【0055】
以上のように、実施の形態2、3では、本発明のカルバゾール誘導体と、アントラセン
誘導体とをカップリング反応させて発光素子用材料を製造する態様について述べたが、ア
ントラセン誘導体だけでなくペリレン誘導体、またはフェナントレン誘導体と本発明のカ
ルバゾール誘導体とをカップリング反応させて発光素子用材料を製造してもよい。
【0056】
(実施の形態4)
本発明のカルバゾール誘導体を用いて合成された発光素子用材料を用いて作製された発
光素子の一態様について図1を用いて説明する。
【0057】
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素
子が表されている。そして、発光層113には、一般式(7)または(8)で表されるア
ントラセン誘導体が含まれている。また、図1の発光素子では、第1の電極101と発光
層113との間に、正孔注入層111と正孔輸送層112とが順に積層されて設けられ、
第2の電極102と発光層113との間に、電子注入層115と電子輸送層114とが順
に積層されて設けられている。
【0058】
このような発光素子において、第1の電極101側から注入された正孔と、第2の電極
102側から注入された電子とは、発光層113において再結合し、一般式(7)または
(8)で表されるアントラセン誘導体を励起状態にする。そして、励起状態となったアン
トラセン誘導体は基底状態に戻るときに発光する。このように、一般式(7)または(8
)で表されるアントラセン誘導体は発光物質として機能する。
【0059】
以下、第1の電極101、第2の電極102、及び第1の電極101と第2の電極10
2との間に設けられた各層について具体的に説明する。
【0060】
第1の電極101と第2の電極102とについて特に限定はなく、インジウム錫酸化物
(ITO)、または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20重量%の酸化亜鉛を含
む酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(
W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu
)、パラジウム(Pd)等を用いて形成することができる。また、アルミニウムの他、マ
グネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムとの合金等も第1の電極101を形成
するのに用いることができる。なお、第1の電極101及び第2の電極102の形成方法
について特に限定はなく、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
なお、発光した光を外部に取り出すために、第1の電極101と第2の電極102のいず
れか一または両方は、インジウム錫酸化物等を用いて、若しくは銀、アルミニウム等を数
nm〜数十nmの厚さとなるように成膜して、可視光が透過できるように、形成すること
が好ましい。
【0061】
正孔注入層111は、第1の電極101から正孔輸送層112へ正孔の注入を補助する
機能を有する層である。正孔注入層111を設けることによって、第1の電極101と正
孔輸送層112との間のイオン化ポテンシャルの差が緩和され、正孔が注入され易くなる
。正孔注入層111は、正孔輸送層112を形成している物質よりもイオン化ポテンシャ
ルが小さく、第1の電極101を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが大きい
物質、または正孔輸送層112と第1の電極101との間に1〜2nmの薄膜として設け
たときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。正孔注
入層111を形成するのに用いることのできる物質の具体例として、フタロシアニン(略
称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、或いは
ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT
/PSS)等の高分子等が挙げられる。つまり、正孔注入層111におけるイオン化ポテ
ンシャルが正孔輸送層112におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に小さくなるよ
うな物質を正孔輸送性物質の中から選択することによって、正孔注入層111を形成する
ことができる。なお、正孔注入層111を設ける場合、第1の電極101は、インジウム
錫酸化物等の仕事関数の高い物質を用いて形成することが好ましい。
【0062】
正孔輸送層112とは、第1の電極101側から注入された正孔を発光層113へ輸送
する機能を有する層である。このように、正孔輸送層112を設けることによって、第1
の電極101と発光層113との距離を離すことができ、その結果、第1の電極101等
に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。正孔輸送層は、
正孔輸送性物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm/Vs以上の
正孔移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。なお、正孔輸送性物質とは、
電子よりも正孔の移動度が高く、電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移
動度/電子移動度)が好ましくは100よりも大きい物質をいう。正孔輸送層112を形
成するのに用いることができる物質の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフ
チル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3
−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4
’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、
4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフ
ェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−
トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1
,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB
)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCT
A)、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナ
ジルフタロシアニン(略称:VOPc)、4,4’−ビス[N−(4−ビフェニリル)−
N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BBPB)等が挙げられる。なお、正孔輸送性
物質の中でも特にホストとして用いられる物質よりもエネルギーギャップの大きい物質を
選択して正孔輸送層112を形成することがより好ましい。また、正孔輸送層112は、
以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい

【0063】
発光層113は、一般式(7)または(8)で表されるアントラセン誘導体が、該アン
トラセン誘導体の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有し、ま
た該アントラセン誘導体の有するイオン化ポテンシャルよりも大きいイオン化ポテンシャ
ルを有する物質(ホストと称される)からなる層中に、分散して含まれた層であることが
好ましい。これによって、該アントラセン誘導体からの発光が、該アントラセン誘導体自
体の濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。なお、エネルギーギャップ
とはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう。
【0064】
より具体的には、ホストとして用いる物質は、5.4eVよりも大きいイオン化ポテン
シャル及び2.8eVよりも大きいエネルギーギャップを有し、正孔よりも電子の輸送性
が高い物質であることが好ましい。このような物質として、例えば、t−BuDNA、C
zPA、及びジフェニルアントラセン等のアントラセン誘導体、BCP等のフェナントロ
リン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体が挙げられる。これらの物質の
中から一または二以上の物質を選択して一般式(7)または(8)で表されるアントラセ
ン誘導体が分散状態となるように混合すればよい。発光層113をこのような構成とする
ことによって、一般式(7)または(8)で表されるアントラセン誘導体に効率良く正孔
をトラップさせることができ、その結果、発光効率の良い発光素子を得ることができる。
また、電子輸送層114はエネルギーギャップの小さい物質で形成されることが多く、発
光層113から励起エネルギーが移動し易いが、発光層113を以上のような構成とする
ことによって、発光層113における正孔と電子の再結合領域(発光領域)が正孔輸送層
112側に形成されるようになり、電子輸送層114への励起エネルギーの移動を防ぐこ
とができる。その結果、発光層113と異なる層において発光が生じることに起因した色
度の低下を防ぐことができる。なお、発光層113のように複数の化合物が混合された層
は、共蒸着法を用いて形成することができる。ここで、共蒸着とは、一つの処理室内に設
けられた複数の蒸着源からそれぞれ原料を気化させ、気化した原料を気相状態で混合し、
被処理物上に堆積させる蒸着法をいう。
【0065】
電子輸送層とは、第2の電極102から注入された電子を発光層113へ輸送する機能
を有する層である。このように、電子輸送層114を設けることによって、第2の電極1
02と発光層113との距離を離すことができ、その結果、第2の電極102等に含まれ
ている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。電子輸送層は、電子輸送
性物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm/Vs以上の電子移動
度を有する物質を用いて形成することが好ましい。なお、電子輸送性物質とは、正孔より
も電子の移動度が高く、正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正
孔移動度)が好ましくは100よりも大きい物質をいう。電子輸送層114を形成するの
に用いることができる物質の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム
(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:A
lmq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:B
eBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミ
ニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト
]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチア
ゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)
−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PB
D)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジア
ゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニ
ル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:T
AZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(
4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナ
ントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4−ビス(
5−メチルベンズオキサゾル−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)等が挙げられる
。なお、電子輸送性物質の中でも特にホストとして用いられる物質よりもエネルギーギャ
ップの大きい物質を選択して電子輸送層114を形成することがより好ましい。また、電
子輸送層114は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造
の層であってもよい。
【0066】
電子注入層115は、第2の電極102から電子輸送層114へ電子の注入を補助する
機能を有する層である。電子注入層115は、BPhen、BCP、p−EtTAZ、T
AZ、BzOs等の電子輸送層114を形成するのに用いることのできる物質の中から、
電子輸送層114の形成に用いる物質よりも電子親和力が相対的に大きい物質を選択して
用いることによって形成することができる。このようにして電子注入層115を形成する
ことによって第2の電極102と電子輸送層114との間の電子親和力の差が緩和され、
電子が注入され易くなる。また、電子注入層115には、Li、Cs等のアルカリ金属、
リチウム酸化物(LiO)、カリウム酸化物(KO)、ナトリウム酸化物(Na
)等のアルカリ金属の酸化物、カルシウム酸化物(CaO)、マグネシウム酸化物(Mg
O)等のアルカリ土類金属の酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(Cs
F)等のアルカリ金属のフッ化物、フッ化カルシウム(CaF)等のアルカリ土類金属
のフッ化物、またはMg、Ca等のアルカリ土類金属等の無機物が含まれていてもよい。
また、電子注入層115は以上に述べたような有機物を含む構成であってもよいし、また
は、LiF等のアルカリ金属のフッ化物、またはCaF等のアルカリ土類金属のフッ化
物等の無機物からなる構成であってもよい。このようにLiF等のアルカリ金属のフッ化
物、またはCaF等のアルカリ土類金属のフッ化物等の無機物を用いて1〜2nmの薄
膜として電子注入層115が設けられることによって電子注入層115のエネルギーバン
ドが曲がる、或いは電子注入層115にトンネル電流が流れることにより、第2の電極1
02から電子輸送層114へ電子の注入が容易となる。
【0067】
なお、正孔注入層111に換えて正孔発生層が設けられていてもよいし、または電子注
入層115に換えて電子発生層を設けられていてもよい。
【0068】
ここで、正孔発生層とは、正孔を発生する層である。正孔輸送性物質の中から選ばれた
少なくとも一の物質と、正孔輸送性物質に対して電子受容性を示す物質とを混合すること
によって正孔発生層を形成することができる。ここで、正孔輸送性物質としては、正孔輸
送層112を形成するのに用いることのできる物質と同様の物質を用いることができる。
また、電子受容性を示す物質としては、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウ
ム酸化物、レニウム酸化物等の金属酸化物を用いることが好ましい。
【0069】
また、電子発生層とは、電子を発生する層である。電子輸送性物質の中から選ばれた少
なくとも一の物質と、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質とを混合することに
よって電子発生層を形成することができる。ここで、電子輸送性物質としては電子輸送層
114を形成するのに用いることのできる物質と同様の物質を用いることができる。また
、電子供与性を示す物質としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれ
た物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリ
ウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。
【0070】
以上のような態様の発光素子は、第1の電極101を形成後、その上に、正孔注入層1
11、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を順に積
層させて形成した後、第2の電極102を形成する作製方法によって作製することもでき
るし、または、第2の電極102を形成後、その上に、電子注入層115、電子輸送層1
14、発光層113、正孔輸送層112、正孔注入層111を順に積層させて形成した後
、第1の電極101を形成する作製方法によって作製することもできる。なお、正孔注入
層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、
それぞれ、蒸着法、またはインクジェット法、または塗布法等、いずれの方法で形成され
ていても構わない。また、第1の電極101または第2の電極102についても、スパッ
タリング法または蒸着法等、いずれの方法を用いて形成されていても構わない。
【0071】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、本発明のアントラセン誘導体のように
アントラセン骨格およびアミン骨格を含む化合物を用いて作製されている為、酸化反応の
繰り返しによる発光物質の性質の変化に伴った発光素子の特性変化が少なく、長期間、安
定な発光を呈することができる。また、本発明のアントラセン誘導体を用いて作製されて
いる為、色度の良い青色の発光を呈することができる。
【0072】
(実施の形態5)
実施の形態4において説明した本発明の発光素子は、酸化反応の繰り返しに耐性を有し
、長期間、良好な状態で発光させることができる為、本発明の発光素子を用いることによ
って、長期間に渡り、良好な表示画像等を提供することができる発光装置を得ることがで
きる。また、実施の形態4において説明した本発明の発光素子は色度の良い青色の発光を
呈することができる為、本発明の発光素子を用いることによって色度の良い青色の発光を
呈し、色彩の優れた画像を映す発光装置を得ることができる。
【0073】
本形態では、表示機能を有する発光装置の回路構成および駆動方法について図2〜5を
用いて説明する。
【0074】
図2は本発明を適用した発光装置を上面からみた模式図である。図2において、基板6
500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号
線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソー
ス信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信
号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(フ
レキシブルプリントサーキット)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回
路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6
514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、
リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基板(PWB)650
4が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と
同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上に
ICチップを実装したもの(TCP)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
【0075】
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列してい
る。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方
向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には
、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
【0076】
図3は、一画素を動作するための回路を表した図である。図3に示す回路には、第1の
トランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
【0077】
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極
と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領
域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタ
の構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域である
かを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとし
て機能する領域を、それぞれ第1電極、第2電極と表記する。
【0078】
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によっ
て電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線9
11と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続ま
たは非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ
920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続
するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線
911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線9
12に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接
続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し
、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッ
チ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ9
19についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、ス
イッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
【0079】
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例え
ば図4の上面図に表すように配置することができる。図4において、第1のトランジスタ
1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ
1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタ1002の第1電極は電流
供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信
号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
【0080】
次に、駆動方法について説明する。図5は時間経過に伴ったフレームの動作について説
明する図である。図5において、横方向は時間経過を表し、縦方向はゲート信号線の走査
段数を表している。
【0081】
本発明の発光装置を用いて画像表示を行うとき、表示期間においては、画面の書き換え
動作と表示動作とが繰り返し行われる。この書き換え回数について特に限定はないが、画
像をみる人がちらつき(フリッカ)を感じないように少なくとも1秒間に60回程度とす
ることが好ましい。ここで、一画面(1フレーム)の書き換え動作と表示動作を行う期間
を1フレーム期間という。
【0082】
1フレーム期間は、図5に示すように、書き込み期間501a、502a、503a、
504aと保持期間501b、502b、503b、504bとを含む4つのサブフレー
ム501、502、503、504に時分割されている。発光するための信号を与えられ
た発光素子は、保持期間において発光状態となっている。各々のサブフレームにおける保
持期間の長さの比は、第1のサブフレーム501:第2のサブフレーム502:第3のサ
ブフレーム503:第4のサブフレーム504=2:2:2:2=8:4:2:
1となっている。これによって4ビット階調を表現することができる。但し、ビット数及
び階調数はここに記すものに限定されず、例えば8つのサブフレームを設け8ビット階調
を行えるようにしてもよい。
【0083】
1フレーム期間における動作について説明する。まず、サブフレーム501において、
1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。従って、行によって書き込み期間の
開始時間が異なる。書き込み期間501aが終了した行から順に保持期間501bへと移
る。当該保持期間において、発光するための信号を与えられている発光素子は発光状態と
なっている。また、保持期間501bが終了した行から順に次のサブフレーム502へ移
り、サブフレーム501の場合と同様に1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われ
る。以上のような動作を繰り返し、サブフレーム504の保持期間504b迄終了する。
サブフレーム504における動作を終了したら次のフレームへ移る。このように、各サブ
フレームにおいて発光した時間の積算時間が、1フレームにおける各々の発光素子の発光
時間となる。この発光時間を発光素子ごとに変えて一画素内で様々に組み合わせることに
よって、明度および色度の異なる様々な表示色を形成することができる。
【0084】
サブフレーム504のように、最終行目までの書込が終了する前に、既に書込を終え、
保持期間に移行した行における保持期間を強制的に終了させたいときは、保持期間504
bの後に消去期間504cを設け、強制的に非発光の状態となるように行を制御すること
が好ましい。そして、強制的に非発光状態にした行については、一定期間、非発光の状態
を保つ(この期間を非発光期間504dとする)。そして、最終行目の書込期間が終了し
たら直ちに、一行目から順に次の(またはフレーム)の書込期間に移行する。これによっ
て、サブフレーム504の書き込み期間と、その次のサブフレームの書き込み期間とが重
畳することを防ぐことができる。
【0085】
なお、本形態では、サブフレーム501乃至504は保持期間の長いものから順に並ん
でいるが、必ずしも本形態のような並びにする必要はなく、例えば保持期間の短いものか
ら順に並べられていてもよいし、または保持期間の長いものと短いものとがランダムに並
んでいてもよい。また、サブフレームは、さらに複数のフレームに分割されていてもよい
。つまり、同じ映像信号を与えている期間、ゲート信号線の走査を複数回行ってもよい。
【0086】
ここで、書込期間および消去期間における、図3で示す回路の動作について説明する。
【0087】
まず書込期間における動作について説明する。書込期間において、n行目(nは自然数
)のゲート信号線911は、スイッチ918を介して書込用ゲート信号線駆動回路913
と電気的に接続し、消去用ゲート信号線駆動回路914とは非接続である。また、ソース
信号線912はスイッチ920を介してソース信号線駆動回路915と電気的に接続して
いる。ここで、n行目(nは自然数)のゲート信号線911に接続した第1のトランジス
タ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、
この時、1列目から最終列目迄のソース信号線912に同時に映像信号が入力される。な
お、各列のソース信号線912から入力される映像信号は互いに独立したものである。ソ
ース信号線912から入力された映像信号は、各々のソース信号線912に接続した第1
のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。こ
の時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、発光素子903は発光または
非発光が決まる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2
のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによっ
て発光素子903が発光する。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場
合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力され
ることによって発光素子903が発光する。
【0088】
次に消去期間における動作について説明する。消去期間において、n行目(nは自然数
)のゲート信号線911は、スイッチ919を介して消去用ゲート信号線駆動回路914
と電気的に接続し、書込用ゲート信号線駆動回路913とは非接続である。また、ソース
信号線912はスイッチ920を介して電源916と電気的に接続している。ここで、n
行目のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力さ
れ、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄の
ソース信号線に同時に消去信号が入力される。ソース信号線912から入力された消去信
号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジ
スタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信
号によって、電流供給線917から発光素子903への電流の供給が阻止される。そして
、発光素子903は強制的に非発光となる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャ
ネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの
信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。一方、第2のトランジス
タ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow
Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。
【0089】
なお、消去期間では、n行目(nは自然数)については、以上に説明したような動作に
よって消去する為の信号を入力する。しかし、前述のように、n行目が消去期間であると
共に、他の行(m行目(mは自然数)とする)については書込期間となる場合がある。こ
のような場合、同じ列のソース信号線を利用してn行目には消去の為の信号を、m行目に
は書込の為の信号を入力する必要があるため、以下に説明するように動作させることが好
ましい。
【0090】
先に説明した消去期間における動作によって、n行目の発光素子903が非発光となっ
た後、直ちに、ゲート信号線911と消去用ゲート信号線駆動回路914とを非接続の状
態とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912とソース信号線駆動回
路915と接続させる。そして、ソース信号線912とソース信号線駆動回路915とを
接続させる共に、ゲート信号線と書込用ゲート信号線駆動回路913とを接続させる。そ
して、書込用ゲート信号線駆動回路913からm行目のゲート信号線911に選択的に信
号が入力され、第1のトランジスタ901がオンすると共に、ソース信号線駆動回路91
5からは、1列目から最終列目迄のソース信号線912に書込の為の信号が入力される。
この信号によって、m行目の発光素子は、発光または非発光となる。
【0091】
以上のようにしてm行目について書込期間を終えたら、直ちに、n+1行目の消去期間
に移行する。その為に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接
続とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912を電源916と接続す
る。また、ゲート信号線と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、ゲ
ート信号線については、消去用ゲート信号線駆動回路914と接続状態にする。そして、
消去用ゲート信号線駆動回路914からn+1行目のゲート信号線に選択的に信号を入力
して第1のトランジスタ901に信号をオンする共に、電源916から消去信号が入力さ
れる。このようにして、n+1行目の消去期間を終えたら、直ちに、m+1行目の書込期
間に移行する。以下、同様に、消去期間と書込期間とを繰り返し、最終行目の消去期間ま
で動作させればよい。
【0092】
なお、本形態では、n行目の消去期間とn+1行目の消去期間との間にm行目の書込期
間を設ける態様について説明したが、これに限らず、n−1行目の消去期間とn行目の消
去期間との間にm行目の書込期間を設けてもよい。
【0093】
また、本形態では、サブフレーム504のように非発光期間504dを設けるときにお
いて、消去用ゲート信号線駆動回路914と或る一のゲート信号線とを非接続状態にする
と共に、書込用ゲート信号線駆動回路913と他のゲート信号線とを接続状態にする動作
を繰り返している。このような動作は、特に非発光期間を設けないフレームにおいて行っ
ても構わない。
【0094】
(実施の形態6)
本発明の発光素子を含む発光装置の一態様について、図6の断面図を用いて説明する。
【0095】
図6において、点線で囲まれている四角の部分は、本発明の発光素子12を駆動するた
めに設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、実施の形態4で説明した
ような、第1の電極13と第2の電極14との間に発光層15を有し、該発光層15にお
いて本発明のカルバゾール誘導体を用いて製造された本発明のアントラセン誘導体を発光
物質として含む発光素子である。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第
1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に
接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている
別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本形態に
おいて、基板10上に設けられている。
【0096】
なお、図6に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート
電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造について
は、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合に
は、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でも
よいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ
型)でもよい。
【0097】
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでも
よい。また、セミアモルファス等でもよい。
【0098】
なお、セミアモルファス半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結
晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有す
る半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるもので
ある。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。
ラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi
結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。セミア
モルファス半導体は、未結合手(ダングリングボンド)を終端するために水素またはハロ
ゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。セミアモルファス半導体は、所
謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。SiH、Si
、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFの中から選ばれた気体をグロー
放電分解(プラズマCVD)して形成する。これらの気体をH、又は、HとHe、A
r、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は
2〜1000倍の範囲とする。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は
1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzとする。基板加熱温度は3
00℃以下でよく、好ましくは100〜250℃とする。膜中の不純物元素として、酸素
、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm以下とすることが望ましく
、特に、酸素濃度は5×1019/cm以下、好ましくは1×1019/cm以下と
する。
【0099】
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或い
はシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって
形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって
形成されたものでもよい。
【0100】
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、
トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成す
るトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置で
あることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか
一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで
構成された回路を有する発光装置でもよい。
【0101】
さらに、第1層間絶縁膜16は、図6(A)、(B)、(C)に示すように多層でもよ
いし、または単層でもよい。なお、第1層間絶縁膜16aは酸化珪素や窒化珪素のような
無機物から成り、第1層間絶縁膜16bはアクリルやシロキサン(シロキサンは、シリコ
ン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、フルオロ基ま
たは水素または有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)を有する)または塗布成膜
可能な酸化珪素等の物質から成る。さらに、第1層間絶縁膜16cはアルゴン(Ar)を
含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここ
に述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組
み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機膜または有機膜の両方を用
いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたもので
もよい。
【0102】
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ま
しい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成さ
れる。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、ま
たは両方を用いて形成されたものでもよい。
【0103】
なお、図6(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素
子12の間に設けられた構成であるが、図6(B)のように、第1層間絶縁膜16(16
a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであ
ってもよい。図6(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜1
9を貫通し、配線17と接続している。
【0104】
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層で
もよい。第2層間絶縁膜19aはアクリルやシロキサン、または塗布成膜可能な酸化珪素
等の物質から成る。さらに、第2層間絶縁膜19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜
から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以
外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよ
い。このように、第2層間絶縁膜19は、無機膜または有機膜の両方を用いて形成された
ものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0105】
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で
構成されている場合、図6(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と
第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが
透光性を有する物質で構成されている場合、図6(B)の白抜きの矢印で表されるように
、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は
反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が
第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透
光性を有する物質で構成されている場合、図6(C)の白抜きの矢印で表されるように、
第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反
射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられて
いることが好ましい。
【0106】
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなる
ように電圧を印加したときに動作するように発光層15が積層されたものであってもよい
し、或いは、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低く
なるように電圧を印加したときに動作するように発光層15が積層されたものであっても
よい。前者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、
トランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
【0107】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するア
クティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特
に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置であってもよい。図7には本発明
を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。図7において、基板951上
には、電極952と電極956との間に、芳香族炭化水素と金属酸化物とを含む層および
発光層等を含む多層構造の層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953
で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層9
54の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっ
ていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、
底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺
(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。
このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐこ
とが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発
光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0108】
(実施の形態7)
本発明の発光素子用材料用いて作製された発光素子を有する発光装置は、酸化反応の繰
り返しに耐性を有し、長期間、良好な状態で発光動作させることができる。従って、その
ような本発明の発光装置を表示部若しくは照明部に用いることで、長期間に渡り良好な表
示画像を提供できる電子機器、あるいは長期間に渡り良好に照明させることのできる電子
機器を得ることができる。
【0109】
本発明を適用した発光装置を実装した電子機器の一実施例を図8に示す。
【0110】
図8(A)は、本発明を適用して作製したパーソナルコンピュータであり、本体552
1、筐体5522、表示部5523、キーボード5524などによって構成されている。
実施の形態1、2で説明したような本発明の発光素子を画素として用いた発光装置(例え
ば実施の形態3、4で説明したよう構成を含む発光装置)を表示部として組み込むことで
、表示部における欠陥が少なく表示画像の誤認がなく、また色彩の優れた表示画像を提供
できるパーソナルコンピュータを完成できる。また、本発明の発光素子を光源として用い
た発光装置を、バックライトとして組み込んでもパーソナルコンピュータを完成させるこ
とができる。具体的には、図9に示すように、筐体5511と筐体5514とに液晶装置
5512と発光装置5513とが嵌め込まれた照明装置を表示部として組み込めばよい。
なお、図9において、液晶装置5512には外部入力端子5515が装着されており、発
光装置5513には、外部入力端子5516が装着されている。
【0111】
図8(B)は、本発明を適用して作製した電話機であり、本体5552には表示部55
51と、音声出力部5554、音声入力部5555、操作スイッチ5556、5557、
アンテナ5553等によって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示
部として組み込むことで、表示部における欠陥が少なく表示画像の誤認がなく、また色彩
の優れた表示画像を提供できる電話機を完成できる。
【0112】
図8(C)は、本発明を適用して作製したテレビ受像機であり、表示部5531、筐体
5532、スピーカー5533などによって構成されている。本発明の発光素子を有する
発光装置を表示部として組み込むことで、表示部における欠陥が少なく表示画像の誤認が
なく、また色彩の優れた表示画像を提供できるテレビ受像機を完成できる。
【0113】
以上のように本発明の発光装置は、各種電子機器の表示部として用いるのに非常に適し
ている。なお、電子機器は、本形態で述べたものに限定されるものではなく、ナビゲーシ
ョン装置等、その他の電子機器であってもよい。
【0114】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらの例によ
って何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0115】
本発明のカルバゾール誘導体の実施例の一として、構造式(1)で表されるカルバゾー
ル誘導体の合成について説明する。
【0116】
まず、N−(4−ブロモフェニル)カルバゾールの合成方法について説明する。1,4
−ジブロモベンゼンを56.3g(0.24mol)、カルバゾールを31.3g(0.
18mol)、よう化銅(I)を4.6g(0.024mol)、炭酸カリウムを66.
3g(0.48mol)、18−クラウン−6−エーテルを2.1g(0.008mol
)、300mLの三口フラスコに入れ窒素置換し、DMPUを8mL加え、180℃で6
時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷ましてから、吸引ろ過により沈殿物を除去し、ろ
液を希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウ
ムにより乾燥した。乾燥後、反応混合物を自然ろ過濃縮し、得られた油状物質をシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製し、クロロホ
ルム、ヘキサンにより再結晶したところ、目的物の淡褐色プレート状結晶を20.7g、
収率35%で得た。
【0117】
この化合物のH−NMRを次に示す。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δppm:8.14(d,δ=7.8H
z,2H),7.73(d,δ=8.7Hz,2H),7.46(d,δ=8.4Hz,
2H),7.42−7.26(m,6H)。
【0118】
また、N−(4−ブロモフェニル)カルバゾールの合成スキーム(d−1)を次に示す

【0119】
【化23】

【0120】
次に、N−(4−ブロモフェニル)カルバゾールを5.4g(17.0mmol)、ア
ニリンを1.8mL(20.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム
(0)(略称:Pd(dba))を100mg(0.17mmol)、ナトリウム−t
ert−ブトキシド(略称:tert−BuONa)3.9g(40mmol)を200
mLの三口フラスコに入れ窒素置換し、トリ−tert−ブチルホスフィン(10%ヘキ
サン溶液)(略称:P(tert−Bu))を0.1mL、トルエン50mLを加えて
、80℃、6時間撹拌した。反応混合物を、フロリジール、セライト、アルミナを通して
ろ過し、ろ液を水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。反応混合物を自
然ろ過し、ろ液を濃縮して得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキ
サン:酢酸エチル=9:1)により精製したところ目的物を4.1g、収率73%で得た
。核磁気共鳴法(H−NMR)によって、この化合物が9−[4−(N−フェニルアミ
ノ)フェニル]カルバゾール(略称:YGA)であることを確認した。
【0121】
この化合物のH−NMRを次に示す。また、H−NMRチャートを図10(A)、
(B)に示す。なお、図10(B)は、図10(A)における6.7ppm〜8.6pp
mの範囲を拡大して表したチャートである。
【0122】
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δppm:8.47(s,1H),8.
22(d,δ=7.8Hz,2H),7.44−7.16(m,14H),6.92−6
.87(m,1H)。
【0123】
また、9−[4−(N−フェニルアミノ)フェニル]カルバゾールの合成スキーム(d
−2)を次に示す。
【0124】
【化24】

【実施例2】
【0125】
実施例1によって得られたカルバゾール誘導体を用いた本発明のアントラセン誘導体の
合成について説明する。
【0126】
[ステップ1:9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラ
センの合成]
窒素気流下、5.0gの1,4−ジブロモベンゼンの乾燥エーテル溶液(200mL)
に、−78℃において、1.58mol/Lのブチルリチウムヘキサン溶液(13.4m
L)を滴下した。滴下終了後、同温度にて1時間攪拌した。−78℃にて2−tert−
ブチルアントラキノン(2.80g)の乾燥エーテル溶液(40mL)を滴下し、その後
反応溶液をゆっくり室温まで昇温した。およそ12時間程度室温で攪拌した後、水を加え
、酢酸エチルで水層を抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、
濾過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン−酢酸エチル
)によって精製し、化合物を5.5gの重量で得た。
【0127】
得られた化合物を核磁気共鳴法(H−NMR)によって測定したところ、9,10−
ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,1
0−ジヒドロアントラセンであることが確認できた。
【0128】
この化合物のH−NMRを次に示す。
H−NMR(300MHz、CDCl);δ=1.31(s,9H)、2.81(s
,1H)、2.86(s,1H)、6.82−6.86(m,4H)、7.13−7.1
6(m,4H)、7.36−7.43(m,3H)、7.53−7.70(m,4H)。
【0129】
また、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジ
ヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンの合成スキーム(e−1)を次に示す。
【0130】
【化25】

【0131】
大気下、上記のようにして合成した9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−te
rt−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン987mg(
1.55mmol)、ヨウ化カリウム664mg(4mmol)、ホスフィン酸ナトリウ
ム一水和物を1.48g(14mmol)を、氷酢酸12mLにて懸濁し、2時間還流加
熱撹拌した。室温まで冷ましたのち、生じた析出物を濾過し、メタノール約50mLで洗
浄し、ろ物を得た。ろ物を乾燥させて淡黄色粉末の化合物700mgを得た。収率は82
%だった。この化合物を核磁気共鳴法(H−NMR、13C−NMR)によって測定し
たところ、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン
であることが確認できた。
【0132】
この化合物のH−NMRと13C−NMRとを次に示す。
【0133】
H−NMR(300MHz、CDCl);δ=1.28(s,9H)、7.25−
7.37(m,6H)、7.44−7.48(m,1H)、7.56−7.65(m,4
H)、7.71−7.76(m,4H)。
【0134】
13C−NMR(74MHz、CDCl);δ=30.8、35.0、120.8、
121.7、121.7、124.9、125.0、125.2、126.4、126.
6、126.6、128.3、129.4、129.7、129.9、131.6、13
1.6、133.0、133.0、135.5、135.7、138.0、138.1、
147.8。
【0135】
また、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンの
合成スキーム(e−2)を次に示す。
【0136】
【化26】

【0137】
[ステップ2:YGABPAの合成]
窒素下で、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセ
ンを540mg(1.0mmol)、実施例1により合成した9−[4−(N−フェニル
アミノ)フェニル]カルバゾール(略称:YGA)を670mg(2.0mmol)、ビ
ス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を12mg(0.02mmol)、トリ
−tert−ブチルホスフィン110mg(0.2mmol)、ナトリウム−tert−
ブトキシド600mg(6.2mmol)の混合物に脱水トルエン10mLを加えた。こ
れを窒素雰囲気下で90℃、5時間加熱撹拌した。反応終了後、反応混合物にトルエン約
100mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られ
たろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)
にて精製し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行ったところ500mgの黄緑色粉末
を得た(収率48%)。核磁気共鳴法(H−NMR)によって、この黄緑色粉末が9,
10−ビス(4−{N−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−N−フェニルアミノ}
フェニル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:YGABPA)であることを確
認した。
【0138】
この化合物のH−NMRを次に示す。また、H−NMRチャートを図11(A)、
(B)に示す。なお、図11(B)は、図11(A)における7ppm〜8.5ppmの
範囲を拡大して表したチャートである。
【0139】
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δppm:8.25(s,4H),7.
87−7.16(m,35H),1.28(s,9H)。
【0140】
また、YGABPAの合成スキーム(e−3)を次に示す。
【0141】
【化27】

【0142】
また、YGABPAの吸収スペクトルを図12に示す。図12において横軸は波長(n
m)、縦軸は強度(任意単位)を表す。また、図12において、(a)は単膜状態におけ
る吸収スペクトルであり、(b)はトルエンに溶解させた状態における吸収スペクトルで
ある。また、YGABPAの発光スペクトルを図13に示す。図13において横軸は波長
(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。また、(a)は、単膜状態における発光
スペクトル(励起波長358nm)であり、(b)はトルエンに溶解させた状態における
発光スペクトル(励起波長358nm)である。図13から、YGABPAからの発光は
、単膜状態において474nmにピークを有し、トルエン中において460nmにピーク
を有することが分かる。そしてこれらの発光は、青色系の発光色として視認された。この
ように、YGABPAは、青色系の発光を呈する発光物質として適する物質であることが
分かった。
【0143】
また、得られたYGABPAを蒸着法によって成膜し、薄膜状態におけるYGABPA
のイオン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定し
たところ、5.44eVであった。また、薄膜状態におけるYGABPAの吸収スペクト
ルを、UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペ
クトルの長波長側の吸収端の波長をエネルギーギャップ(2.86eV)とし、LUMO
準位を求めたところ、LUMO準位は−2.58eVであった。
【0144】
さらに、得られたYGABPAの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー
電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、Tは500℃以上
であり、良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0145】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、YGABPAの酸化還元反応
特性について調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製
、型番:ALSモデル600A)を用いた。
【0146】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支
持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を1
00mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるYGABPAを1
mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極
(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・
エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極としては
Ag/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞれ
用いた。
【0147】
酸化反応特性については次のようにして調べた。
基準電極に対する作用電極の電位を0.20Vから0.80Vまで変化させた後、0.8
0Vから0.20Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。な
お、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0148】
還元反応特性については次のようにして調べた。
基準電極に対する作用電極の電位を−0.90Vから−2.60Vまで変化させた後、−
2.60Vから−0.90Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定
した。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0149】
YGABPAの酸化反応特性について調べた結果を図14(A)に示す。また、YGA
BPAの還元反応特性について調べた結果を図14(B)に示す。図14(A)、(B)
において、横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助
電極との間に流れた電流値(1×10−5A)を表す。
【0150】
図14(A)から酸化電位は0.61V(vs.Ag/Ag電極)であることが分か
った。また、図14(B)から還元電位は−2.36V(vs.Ag/Ag電極)であ
ることが分かった。また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸
化反応と還元反応のいずれについてもCV曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化
が見られない。このことから、本発明のアントラセン誘導体は酸化還元反応に対して極め
て安定であることが分かった。
【実施例3】
【0151】
実施例1によって得られたカルバゾール誘導体を用いたアントラセン誘導体の合成につ
いて説明する。
【0152】
[ステップ1:9−フェニル−10−(4−ブロモフェニル)アントラセン(略称:PA
)の合成]
(i)9−フェニルアントラセンの合成。
9−ブロモアントラセンを5.4g(21.1mmol)、フェニルボロン酸を2.6g
(21.1mmol)、Pd(OAc)(0)を60mg(0.21mmol)、2M
のKCO水溶液を10mL(20mmol)、P(o−tolyl)を263mg
(0.84mmol)、1,2−ジメトキシエタン(略称:DME)を20mL混合し、
80℃、9時間撹拌した。反応後、析出した固体を吸引ろ過で回収してから、トルエンに
溶かしフロリジール、セライト、アルミナを通してろ過をした。ろ液を水、飽和食塩水で
洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、ろ液を濃縮したところ目的物である
9−フェニルアントラセンの淡褐色固体を21.5g、収率85%で得た(合成スキーム
(f−1))。
【0153】
【化28】

【0154】
(ii)9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの合成。
9−フェニルアントラセン6.0g(23.7mmol)を四塩化炭素80mLに溶かし
、その反応溶液へ、滴下ロートにより、臭素3.80g(21.1mmol)を四塩化炭
素10mLに溶かした溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応後、チ
オ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応をストップさせた。有機層をNaOH水溶液、飽和
食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、ろ液を濃縮しトルエンに溶
かしフロリジール、セライト、アルミナろ過を行なった。ろ液を濃縮し、ジクロロメタン
、ヘキサンにより再結晶を行なったところ、目的物である9−ブロモ−10−フェニルア
ントラセンの淡黄色固体を7.0g、収率89%で得た(合成スキーム(f−2))。
【0155】
【化29】

【0156】
(iii)9−ヨード−10−フェニルアントラセンの合成。
9−ブロモ−10−フェニルアントラセン3.33g(10mmol)をテトラヒドロフ
ラン(略称:THF)80mLに溶かし、−78℃にしてから、その反応溶液へ滴下ロー
トにより、n−BuLi(1.6M)7.5mL(12.0mmol)を滴下し1時間攪
拌した。ヨウ素5g(20.0mmol)をTHF20mLに溶かした溶液を滴下し、−
78℃でさらに2時間攪拌した。反応後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応をスト
ップした。有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネシウムで
乾燥した。自然濾過後ろ液を濃縮し、エタノールにより再結晶したところ、目的物である
9−ヨード−10−フェニルアントラセンの淡黄色固体を3.1g、収率83%で得た(
合成スキーム(f−3))。
【0157】
【化30】

【0158】
(iv)9−フェニル−10−(4−ブロモフェニル)アントラセン(略称:PA)の合
成。
9−ヨード−10−フェニルアントラセン1.0g(2.63mmol)、p−ブロモフ
ェニルボロン酸542mg(2.70mmol)、Pd(PPh(0)46mg(
0.03mmol)、2MのKCO水溶液3mL(6mmol)、トルエン10mL
を80℃、9時間撹拌した。反応後、トルエンを加えてからフロリジール、セライト、ア
ルミナを通してろ過をした。ろ液を水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し
た。自然ろ過後、ろ液を濃縮し、クロロホルム、ヘキサンにより再結晶したところ目的物
である9−フェニル−10−(4−ブロモフェニル)アントラセンの淡褐色固体を562
mg、収率45%で得た(合成スキーム(f−4))。
【0159】
【化31】

【0160】
[ステップ2:YGAPAの合成]
9−フェニル−10−(4−ブロモフェニル)アントラセン409mg(1.0mmo
l)、YGA339mg(1.0mmol)、Pd(dba)(0)6mg(0.01
mmol)、tert−BuONa500mg(5.2mol)、P(tert−Bu)
0.1mL、トルエン10mL、80℃で4時間攪拌した。反応後、溶液を水で洗浄し
、水層をトルエンで抽出し、有機層と併せて飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾
燥した。自然ろ過後、濃縮し得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘ
キサン:トルエン=7:3)により精製し、ジクロロメタン、ヘキサンにより再結晶した
ところ目的物であるYGAPAの黄色粉末状固体を534mg、収率81%で得た(合成
スキーム(f−5))。この化合物を核磁気共鳴法(H−NMR)によって測定したと
ころ、9−(4−{N−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−N−フェニルアミノ}
フェニル)−10−フェニルアントラセンであることが確認できた。
【0161】
【化32】

【0162】
この化合物のH−NMRを次に示す。また、H−NMRチャートを図15(A)、
(B)に示す。なお、図15(B)は、図15(A)における6.5ppm〜8.5pp
mの範囲を拡大して表したチャートである。
【0163】
H−NMR(300MHz,DMSO−d);δ=7.22−7.30(m、4H)
、7.39−7.47(m、21H)、7.58−7.68(m、7H)、7.78(d
、J=8.1Hz,2H)、8.26(d、J=7.2Hz,2H)。
【0164】
また、YGAPAの吸収スペクトルを図16に示す。図16において横軸は波長(nm
)、縦軸は強度(任意単位)を表す。また、図16において(a)は単膜状態における吸
収スペクトルであり、(b)はトルエンに溶解させた状態における吸収スペクトルである
。また、YGAPAの発光スペクトルを図17に示す。図17において横軸は波長(nm
)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。また、(a)は、単膜状態における発光スペク
トル(励起波長390nm)であり、(b)はトルエンに溶解させた状態における発光ス
ペクトル(励起波長370nm)である。図17から、YGAPAからの発光は、単膜状
態において461nmにピークを有し、トルエン中において454nmにピークを有する
ことが分かる。そしてこれらの発光は、青色系の発光色として視認された。このように、
YGAPAは、青色系の発光を呈する発光物質として適する物質であることが分かった。
【0165】
また、得られたYGAPAを蒸着法によって成膜し、薄膜状態におけるYGAPAのイ
オン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したと
ころ、5.55eVであった。また、薄膜状態におけるYGAPAの吸収スペクトルを、
UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペクトル
の長波長側の吸収端の波長をエネルギーギャップ(2.95eV)とし、LUMO準位を
求めたところ、LUMO準位は−2.60eVであった。
【0166】
さらに、得られたYGAPAの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電
子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、Tは402℃以上で
あり、良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0167】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、YGAPAの酸化還元反応特
性について調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、
型番:ALSモデル600A)を用いた。
【0168】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支
持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を1
00mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるYGAPAを1m
mol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(
ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エ
ー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極としてはA
g/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用
いた。
【0169】
酸化反応特性については次のようにして調べた。
基準電極に対する作用電極の電位を−0.35Vから0.75Vまで変化させた後、0.
75Vから−0.35Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した
。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0170】
還元反応特性については次のようにして調べた。
基準電極に対する作用電極の電位を−0.55Vから−2.4Vまで変化させた後、−2
.4Vから−0.05Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した
。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0171】
YGAPAの酸化反応特性について調べた結果を図18(A)に示す。また、YGAP
Aの還元反応特性について調べた結果を図18(B)に示す。図18(A)、(B)にお
いて、横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極
との間に流れた電流値(1×10−5A)を表す。
【0172】
図18(A)から酸化電位は0.6V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かっ
た。また、図18(B)から還元電位は−2.29V(vs.Ag/Ag電極)である
ことが分かった。また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化
反応と還元反応のいずれについてもCV曲線のピークが明確に観測された。このことから
、本発明のアントラセン誘導体は酸化還元反応に対して良好な可逆性を示す物質であり、
特に、本発明のカルバゾール誘導体を含むため酸化反応について優れた可逆性を示すこと
が分かった。つまり、酸化反応の繰り返しに対して耐性があり、物質の変化が起こりにく
いことがわかった。
【実施例4】
【0173】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。
【0174】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、第1の電極は、2mm×2mmの大きさを有する
正方形の形状となるように形成した。
【0175】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0176】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、銅フタロシアニンからなる第1の層303を形成した。第1の
層303の厚さは20nmとなるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作さ
せたときに正孔注入層として機能する層である。
【0177】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは40nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0178】
次に、第2の層304の上に、t−BuDNAとYGABPAとを含む第3の層305
を共蒸着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、t−B
uDNAとYGABPAとの質量比は1:0.05=t−BuDNA:YGABPAとな
るようにした。これによって、YGABPAはt−BuDNAから成る層に分散されたよ
うな状態となる。この第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能
する層である。なお、YGABPAは発光物質として機能する。
【0179】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0180】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0181】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0182】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0183】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0184】
測定結果を図20、21に示す。図20は電圧−輝度特性について、図21は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図20において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図21において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0185】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図22に示す。図22において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図22より、本実施例の発光素子
は462nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.20)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例5】
【0186】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光
素子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ
異なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為
、本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0187】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、第1の電極は、2mm×2mmの大きさを有する
正方形の形状となるように形成した。
【0188】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0189】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、銅フタロシアニンからなる第1の層303を形成した。第1の
層303の厚さは20nmとなるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作さ
せたときに正孔注入層として機能する層である。
【0190】
次に、第1の層303の上に、4,4’−ビス[N−(4−ビフェニリル)−N−フェ
ニルアミノ]ビフェニル(略称:BBPB)から成る第2の層304を蒸着法によって形
成した。第2の層304の厚さは40nmとなるようにした。この第2の層304は、発
光素子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0191】
次に、第2の層304の上に、t−BuDNAとYGABPAとを含む第3の層305
を共蒸着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、t−B
uDNAとYGABPAとの質量比は1:0.05=t−BuDNA:YGABPAとな
るようにした。これによって、YGABPAはt−BuDNAから成る層に分散されたよ
うな状態となる。この第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能
する層である。なお、YGABPAは発光物質として機能する。
【0192】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0193】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0194】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0195】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0196】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0197】
測定結果を図23、24に示す。図23は電圧−輝度特性について、図24は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図23において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図24において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0198】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図25に示す。図25において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図25より、本実施例の発光素子
は465nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.22)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例6】
【0199】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光
素子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ
異なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為
、本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0200】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、第1の電極は、2mm×2mmの大きさを有する
正方形の形状となるように形成した。
【0201】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0202】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、DNTPDからなる第1の層303を形成した。第1の層30
3の厚さは50nmとなるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作させたと
きに正孔注入層として機能する層である。
【0203】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0204】
次に、第2の層304の上に、t−BuDNAとYGABPAとを含む第3の層305
を共蒸着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、t−B
uDNAとYGABPAとの質量比は1:0.1=t−BuDNA:YGABPAとなる
ようにした。これによって、YGABPAはt−BuDNAから成る層に分散されたよう
な状態となる。この第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能す
る層である。なお、YGABPAは発光物質として機能する。
【0205】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0206】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0207】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0208】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0209】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0210】
測定結果を図26、27に示す。図26は電圧−輝度特性について、図27は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図26において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図27において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0211】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図28に示す。図28において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図28より、本実施例の発光素子
は475nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.18,0.27)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例7】
【0212】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光
素子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ
異なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為
、本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0213】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、第1の電極は、2mm×2mmの大きさを有する
正方形の形状となるように形成した。
【0214】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0215】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、第1の電極3
02上に、NPBとモリブデン酸化物とを含む第1の層303を共蒸着法によって形成し
た。第1の層303の厚さは50nmとなるようにし、NPBとモリブデン酸化物との質
量比は4:2=NPB:モリブデン酸化物となるようにした。なお、蒸着材料としては、
特に三酸化モリブデンを用いた。この第1の層303は、発光素子を動作させたときに正
孔発生層として機能する層である。
【0216】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0217】
次に、第2の層304の上に、t−BuDNAとYGABPAとを含む第3の層305
を共蒸着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、t−B
uDNAとYGABPAとの質量比は1:0.1=t−BuDNA:YGABPAとなる
ようにした。これによって、YGABPAはt−BuDNAから成る層に分散されたよう
な状態となる。この第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能す
る層である。なお、YGABPAは発光物質として機能する。
【0218】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0219】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0220】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0221】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0222】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0223】
測定結果を図29、30に示す。図29は電圧−輝度特性について、図30は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図29において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図30において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0224】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図31に示す。図31において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図31より、本実施例の発光素子
は465nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.18,0.22)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例8】
【0225】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光
素子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ
異なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為
、本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0226】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形
の形状となるように形成した。
【0227】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0228】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、銅フタロシアニンからなる第1の層303を形成した。第1の
層303の厚さは20nmとなるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作さ
せたときに正孔注入層として機能する層である。
【0229】
次に、第1の層303の上に、BSPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成
した。第2の層304の厚さは40nmとなるようにした。この第2の層304は、発光
素子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0230】
次に、第2の層304の上に、t−BuDNAとYGABPAとを含む第3の層305
を共蒸着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、t−B
uDNAとYGABPAとの質量比は1:0.1=t−BuDNA:YGABPAとなる
ようにした。これによって、YGABPAはt−BuDNAから成る層に分散されたよう
な状態となる。この第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能す
る層である。なお、YGABPAは発光物質として機能する。
【0231】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0232】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0233】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0234】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0235】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0236】
測定結果を図32、33に示す。図32は電圧−輝度特性について、図33は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図32において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図33において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0237】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図34に示す。図34において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図34より、本実施例の発光素子
は459nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.15,0.15)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例9】
【0238】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光
素子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ
異なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為
、本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0239】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形
の形状となるように形成した。
【0240】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0241】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、DNTPDからなる第1の層303を形成した。第1の層30
3の厚さは50nmとなるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作させたと
きに正孔注入層として機能する層である。
【0242】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0243】
次に、第2の層304の上に、CzPAとYGABPAとを含む第3の層305を共蒸
着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、CzPAとY
GABPAとの質量比は1:0.1=CzPA:YGABPAとなるようにした。これに
よって、YGABPAはCzPAから成る層に分散されたような状態となる。この第3の
層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。なお、YGA
BPAは発光物質として機能する。また、CzPAは、下記構造式(10)で表される物
質である。
【0244】
【化33】

【0245】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0246】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0247】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0248】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0249】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0250】
測定結果を図35、36に示す。図35は電圧−輝度特性について、図36は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図35において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図36において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0251】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図37に示す。図37において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図37より、本実施例の発光素子
は474nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.15,0.24)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例10】
【0252】
本実施例では、実施例2において合成されたYGABPAを発光物質として用いた発光
素子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光
素子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ
異なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為
、本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0253】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形
の形状となるように形成した。
【0254】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0255】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、NPBとモリブデン酸化物とを含む第1の層303を共蒸着法
によって形成した。第1の層303の厚さは50nmとなるようにし、NPBとモリブデ
ン酸化物との質量比は4:2=NPB:モリブデン酸化物となるようにした。なお、蒸着
材料としては、特に三酸化モリブデンを用いた。この第1の層303は、発光素子を動作
させたときに正孔発生層として機能する層である。
【0256】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0257】
次に、第2の層304の上に、CzPAとYGABPAとを含む第3の層305を共蒸
着法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、CzPAとY
GABPAとの質量比は1:0.1=CzPA:YGABPAとなるようにした。これに
よって、YGABPAはt−BuDNAから成る層に分散されたような状態となる。この
第3の層305は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。なお、
YGABPAは発光物質として機能する。
【0258】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは20nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0259】
次に、第4の層306上に、フッ化カルシウムから成る第5の層307を蒸着法によっ
て形成した。第5の層307の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層307は、
発光素子を動作させたときに、電子注入層として機能する層である。
【0260】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0261】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GABPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0262】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0263】
測定結果を図38、39に示す。図38は電圧−輝度特性について、図39は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図38において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図39において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0264】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図40に示す。図40において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図40より、本実施例の発光素子
は466nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.21)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例11】
【0265】
本実施例では、実施例3において合成されたYGAPAを発光物質として用いた発光素
子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光素
子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ異
なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為、
本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0266】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形
の形状となるように形成した。
【0267】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0268】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、DNTPDからなる第1の層303を形成した。第1の層30
3の厚さは50nmとなるようにした。この第1の層303は、発光素子を動作させたと
きに正孔注入層として機能する層である。
【0269】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0270】
次に、第2の層304の上に、CzPAとYGAPAとを含む第3の層305を共蒸着
法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、CzPAとYG
APAとの質量比は1:0.04=CzPA:YGAPAとなるようにした。これによっ
て、YGAPAはCzPAから成る層に分散されたような状態となる。この第3の層30
5は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。なお、YGAPAは
発光物質として機能する。
【0271】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは10nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0272】
次に、第4の層306上に、Alqとリチウム(Li)とを含む第5の層307を共
蒸着法によって形成した。第5の層307の厚さは10nmとなるようにし、Alq
Liとの質量比は1:0.01=Alq:Liとなるようにした。この第5の層307
は、発光素子を動作させたときに電子発生層として機能する層である。
【0273】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0274】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GAPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0275】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0276】
測定結果を図41、42に示す。図41は電圧−輝度特性について、図42は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図41において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図42において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0277】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図43に示す。図43において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図43より、本実施例の発光素子
は456nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.17)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例12】
【0278】
本実施例では、実施例2において合成されたYGAPAを発光物質として用いた発光素
子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光素
子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ異
なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為、
本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0279】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形
の形状となるように形成した。
【0280】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0281】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、蒸着法によっ
て第1の電極302上に、NPBとモリブデン酸化物とを含む第1の層303を共蒸着法
によって形成した。第1の層303の厚さは50nmとなるようにし、NPBとモリブデ
ン酸化物との質量比は4:2=NPB:モリブデン酸化物となるようにした。なお、蒸着
材料としては、特に三酸化モリブデンを用いた。この第1の層303は、発光素子を動作
させたときに正孔発生層として機能する層である。
【0282】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0283】
次に、第2の層304の上に、CzPAとYGAPAとを含む第3の層305を共蒸着
法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、CzPAとYG
APAとの質量比は1:0.04=CzPA:YGAPAとなるようにした。これによっ
て、YGAPAはCzPAから成る層に分散されたような状態となる。この第3の層30
5は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。なお、YGAPAは
発光物質として機能する。
【0284】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは10nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0285】
次に、第4の層306上に、Alqとリチウム(Li)とを含む第5の層307を共
蒸着法によって形成した。第5の層307の厚さは10nmとなるようにし、Alq
Liとの質量比は1:0.01=Alq:Liとなるようにした。この第5の層307
は、発光素子を動作させたときに電子発生層として機能する層である。
【0286】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0287】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GAPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0288】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0289】
測定結果を図44、45に示す。図44は電圧−輝度特性について、図45は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図44において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図45において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0290】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図46に示す。図46において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図46より、本実施例の発光素子
は452nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.14)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【実施例13】
【0291】
本実施例では、実施例2において合成されたYGAPAを発光物質として用いた発光素
子の作製方法およびその発光素子の動作特性について説明する。なお、本実施例の発光素
子は、第1の電極と第2の電極との間に、層を構成する物質および層の厚さがそれぞれ異
なる5層の層が積層した構造を有するという点で、実施例4の発光素子と同じである為、
本実施例についても実施例4の説明に用いた図19を参照して説明する。
【0292】
図19に表すように、ガラス基板301上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をス
パッタリング法によって成膜し、第1の電極302を形成した。第1の電極302の厚さ
は110nmとなるようにした。なお、電極は、2mm×2mmの大きさを有する正方形
の形状となるように形成した。
【0293】
次に、第1の電極302が形成された面が下方となるように、第1の電極302が形成
されたガラス基板301を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0294】
次に、真空蒸着装置内を排気し、10−4Paとなるように減圧した後、第1の電極3
02上に、DNTPDとモリブデン酸化物とを含む第1の層303を共蒸着法によって形
成した。第1の層303の厚さは50nmとなるようにし、DNTPDとモリブデン酸化
物との質量比は4:2=DNTPD:モリブデン酸化物となるようにした。なお、蒸着材
料としては、特に三酸化モリブデンを用いた。この第1の層303は、発光素子を動作さ
せたときに正孔発生層として機能する層である。
【0295】
次に、第1の層303の上に、NPBから成る第2の層304を蒸着法によって形成し
た。第2の層304の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層304は、発光素
子を動作させたときに正孔輸送層として機能する層である。
【0296】
次に、第2の層304の上に、CzPAとYGAPAとを含む第3の層305を共蒸着
法によって形成した。第3の層305の厚さは40nmとなるようにし、CzPAとYG
APAとの質量比は1:0.04=CzPA:YGAPAとなるようにした。これによっ
て、YGAPAはCzPAから成る層に分散されたような状態となる。この第3の層30
5は、発光素子を動作させたときに発光層として機能する層である。なお、YGAPAは
発光物質として機能する。
【0297】
次に、第3の層305上に、Alqから成る第4の層306を蒸着法によって形成し
た。第4の層306の厚さは10nmとなるようにした。この第4の層306は、発光素
子を動作させたときに、電子輸送層として機能する層である。
【0298】
次に、第4の層306上に、Alqとリチウム(Li)とを含む第5の層307を共
蒸着法によって形成した。第5の層307の厚さは10nmとなるようにし、Alq
Liとの質量比は1:0.01=Alq:Liとなるようにした。この第5の層307
は、発光素子を動作させたときに電子発生層として機能する層である。
【0299】
次に、第5の層307の上に、アルミニウムから成る第2の電極308を形成した。第
2の電極308の厚さは200nmとなるようにした。
【0300】
以上のようにして作製した発光素子は、第1の電極302の電位が第2の電極308の
電位よりも高くなるように電圧を印加したときに電流が流れ、発光層として機能する第3
の層305において電子と正孔とが再結合して励起エネルギーが生成され、励起されたY
GAPAが基底状態に戻るときに発光するものである。
【0301】
この発光素子を、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で、発光素子が大気に曝
されないように封止した後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(
25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0302】
測定結果を図47、48に示す。図47は電圧−輝度特性について、図48は、輝度−
電流効率特性について、それぞれ調べた結果である。図47において横軸は電圧(V)、
縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図48において横軸は輝度(cd/m)、縦
軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0303】
また、本実施例で作製した発光素子の発光スペクトルを図49に示す。図49において
横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。図49より、本実施例の発光素子
は453nmに発光スペクトルのピークを有し、青色の発光を呈することが分かった。さ
らに、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.16)であり、本
実施例の発光素子は色純度の良い青色を呈することが分かった。
【符号の説明】
【0304】
101 第1の電極
102 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
301 ガラス基板
302 第1の電極
303 第1の層
304 第2の層
305 第3の層
306 第4の層
307 第5の層
308 第2の電極
6500 基板
6503 FPC
6504 プリント配線基盤(PWB)
6511 画素部
6512 ソース信号線駆動回路
6513 書込用ゲート信号線駆動回路
6514 消去用ゲート信号線駆動回路
901 第1のトランジスタ
902 第2のトランジスタ
903 発光素子
911 ゲート信号線
912 ソース信号線
913 書込用ゲート信号線駆動回路
914 消去用ゲート信号線駆動回路
915 ソース信号線駆動回路
916 電源
917 電流供給線
918 スイッチ
919 スイッチ
920 スイッチ
1001 第1のトランジスタ
1002 第2のトランジスタ
1003 ゲート信号線
1004 ソース信号線
1005 電流供給線
1006 電極
501 サブフレーム
502 サブフレーム
503 サブフレーム
504 サブフレーム
501a 書き込み期間
501b 保持期間
502a 書き込み期間
502b 保持期間
503a 書き込み期間
503b 保持期間
504a 書き込み期間
504b 保持期間
504c 消去期間
504d 非発光期間
10 基板
11 トランジスタ
12 発光素子
13 第1の電極
14 第2の電極
15 発光層
16 第1層間絶縁膜
16a、16b、16c 第1層間絶縁膜
17 配線
18 隔壁層
19 第2層間絶縁膜
19a、19b 第2層間絶縁膜
5521 本体
5522 筐体
5523 表示部
5524 キーボード
5551 表示部
5552 本体
5553 アンテナ
5554 音声出力部
5555 音声入力部
5556 操作スイッチ
5531 表示部
5532 筐体
5533 スピーカー
5511 筐体
5512 液晶装置
5513 発光装置
5514 筐体
5515 外部入力端子
5516 外部入力端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 層
956 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示す構造を有するカルバゾール誘導体。


(式中、Rは、水素、および炭素数1以上4以下のアルキル基、および炭素数1以上12以下のアリール基の中から選ばれるいずれか一を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2013−18774(P2013−18774A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182260(P2012−182260)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2006−191127(P2006−191127)の分割
【原出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】