説明

カルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法

【課題】工業的に有利にカルボン酸第三級ブチルエステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】式(1)、(2)




(式中、Yは炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)で表される化合物とイソブテンとの反応を、酸触媒の存在下で、芳香族炭化水素を含む混合溶媒を用いて常圧で行うことを特徴とするカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法に関し、より詳しくは、特定の化合物と溶媒を用いたカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性高分子を製造する際のモノマー成分として、tert−ブチル基をエステル部位に有するカルボン酸第三級ブチルエステルが注目されている。
【0003】
カルボン酸第三級ブチルエステルを工業的に製造する方法として、オートクレーブを用い、酸触媒の存在下、特定の含酸素溶媒を用いて、対応するカルボン酸とイソブテンを反応させる方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
ところが、この方法は、気体のイソブテンを用いるため、反応装置としてオートクレーブを使用する必要があるため、工業的に生産するためには、大型のオートクレーブが必要となるため、生産量は装置の規模により制約を受ける。
【0005】
また、カルボン酸メチルエステルまたはエチルエステルと、tert−ブチルアルコールの反応を行う際に、モレキュラーシーブスを設置した反応装置を用い、メチルアルコールまたはエチルアルコールを共沸させることで、対応するカルボン酸第三級エステルを製造する方法が開示されている(特許文献2)。
【0006】
ところが、この方法では、高選択率、高転化率でカルボン酸第三級エステルを得るためには、長時間の反応が必要である上、用いる原料や溶媒の水分量を1,000ppm以下に抑える必要があるため、工業的に製造する際に、原料、溶媒の水分管理に相当の工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−240754号公報
【特許文献2】特開平8−40982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、工業的に有利にカルボン酸第三級ブチルエステルを製造する方法を提供することにある。特に、特定の化合物と溶媒を用いることで、常圧でカルボン酸第三級ブチルエステルを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討の結果、特定の溶媒を用いることで、工業的に有利な方法で、カルボン酸第三級エステルを製造可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、特定の化合物とイソブテンとの反応を、酸触媒の存在下で、芳香族炭化水素を含む混合溶媒を用いて常圧で行うことを特徴とするカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法である。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、下記一般式(1)、(2)または(3)
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示し、Yは炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
【0015】
【化4】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
で表される化合物とイソブテンとの反応を、酸触媒の存在下、芳香族炭化水素を含む混合溶媒を用いて常圧で行うことを特徴とするカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法である。
【0016】
本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物は、1つの分子中に2つのカルボン酸を有するジカルボン酸化合物であり、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、これらの化合物に置換基を有するもの等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0017】
本発明で用いられる一般式(2)で表される化合物は、ジカルボン酸化合物の1つのカルボン酸がエステル化された化合物であり、例えば、マロン酸モノ(メチル)エステル、マロン酸モノ(エチル)エステル、マロン酸モノ(プロピル)エステル、マロン酸モノ(ブチル)エステル、マロン酸モノ(イソプロピル)エステル、マロン酸モノ(フェニル)エステル、コハク酸モノ(メチル)エステル、コハク酸モノ(エチル)エステル、コハク酸モノ(プロピル)エステル、コハク酸モノ(ブチル)エステル、コハク酸モノ(イソプロピル)エステル、コハク酸モノ(フェニル)エステル、グルタル酸モノ(メチル)エステル、グルタル酸モノ(エチル)エステル、グルタル酸モノ(プロピル)エステル、グルタル酸モノ(ブチル)エステル、グルタル酸モノ(イソプロピル)エステル、グルタル酸モノ(フェニル)エステル、フタル酸モノ(メチル)エステル、フタル酸モノ(エチル)エステル、フタル酸モノ(プロピル)エステル、フタル酸モノ(ブチル)エステル、フタル酸モノ(イソプロピル)エステル、フタル酸モノ(フェニル)エステル、マレイン酸モノ(メチル)エステル、マレイン酸モノ(エチル)エステル、マレイン酸モノ(プロピル)エステル、マレイン酸モノ(ブチル)エステル、マレイン酸モノ(イソプロピル)エステル、マレイン酸モノ(フェニル)エステル、フマル酸モノ(メチル)エステル、フマル酸モノ(エチル)エステル、フマル酸モノ(プロピル)エステル、フマル酸モノ(ブチル)エステル、フマル酸モノ(イソプロピル)エステル、フマル酸モノ(フェニル)エステル、これらの化合物に置換基を有するもの等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0018】
本発明で用いられる一般式(3)で表される化合物は、1つの分子中に2つのカルボン酸を有するジカルボン酸の脱水反応により生じるカルボン酸無水物であり、例えば、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、これらの化合物に置換基を有するもの等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0019】
一般式(1)、(2)または(3)中、Qが示す一般式(4)〜(8)において、ハロゲン原子は、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができ、炭素数1〜20の炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニレニル基等を挙げることができ、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等を挙げることができ、炭素数1〜20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基等を挙げることができ、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基は、例えば、トリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を挙げることができる。
【0020】
反応に使用する一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物の量に、特に制限は無い。ミリグラム〜グラム量の化合物を使用するラボスケールから、キロ〜トン量の化合物を使用するプラントスケールまで、制限無く使用することが可能である。
【0021】
反応に使用するイソブテン量には、特に制限は無いが、原料である化合物の残留を防止するため、イソブテンと一般式(1)、(2)または(3)のモル比が、[イソブテン]/[一般式(1)、(2)または(3)]=0.1〜1,000の間であることが好ましく、1〜100の間であることがさらに好ましく、2〜100の間であることが特に好ましい。用いるイソブテン量は、用いられる一般式(1)、(2)または(3)に対して、2倍量以上用いることで、収率よくカルボン酸第三級ブチルエステルを製造することが可能である。
【0022】
本発明では、一般式(1)、(2)または(3)で表される化合物とイソブテンとの反応を行う際に、酸触媒の存在下で、芳香族炭化水素、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒、または水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を含む溶媒を用いることを特徴とする。
【0023】
本発明で用いられる酸触媒としては、一般にエステル化反応に使用する酸触媒であれば特に制限はなく、例えば、硫酸、塩酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸、有機スルホン酸の水和物、スルホン酸基含有イオン交換樹脂等を挙げることができる。酸触媒は、単独で使用してもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
本発明で溶媒として用いられる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、メトキシトルエン、エトキシトルエンなどのアルコキシトルエン、ジメチルアミノトルエン、ジエトキシアミノトルエンなどのジアルキルアミノトルエンキシレン、メシチレン等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0025】
芳香族炭化水素中に含まれる水分量は、本発明の反応に影響はなく、通常のルートで入手した芳香族炭化水素をそのまま使用することが可能である。用いられる芳香族炭化水素は、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
溶媒として芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を含む混合溶媒を使用することも可能である。エーテル系溶媒として、特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、イソブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテルなどのジアルキルエーテル、フェニルメチルエーテル、フェニルエチルエーテルなどの芳香族置換基を有するエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モルホリンなどの環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン等が挙げることができる。
【0027】
エーテル系溶媒中に含まれる水分量は、本発明の反応に影響はなく、通常のルートで入手したエーテル系溶媒をそのまま使用することも可能である。用いられるエーテル系溶媒は、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を用いる際、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒の比に特に制限はないが、tert−ブチル化反応の副生成物であるイソブテンオリゴマーの生成量を抑制し、反応の促進を図り、反応を完結させるために必要なイソブテン量を抑制するため、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒の比は、[芳香族炭化水素]/[エーテル系溶媒]=1:0〜1:10,000の間であることが好ましく、1:0〜1:1,000の間であることがさらに好ましい。
【0029】
溶媒として水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を含む混合溶媒を用いることも可能である。特に、一般式(3)で表されるカルボン酸無水物とイソブテンとの反応により、カルボン酸第三級ブチルエステルを製造する際は、水と芳香族炭化水素を含む混合溶媒、水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を含む混合溶媒を用いることで、効率よく反応を進行させることが可能である。
【0030】
水と芳香族炭化水素を用いる際、水と芳香族炭化水素の比に特に制限はないが、反応の促進を図り、反応が完結するためのイソブテンの使用量を抑制するため、水と芳香族炭化水素の容量比が、[水]/[芳香族炭化水素]=0.001:1〜1:100,000の間であることが好ましく、0.01:1〜1:10,000の間であることがさらに好ましい。
【0031】
水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を用いる際、水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒の比に制限はないが、反応の促進を図り、反応が完結するためのイソブテンの使用量を抑制するため、水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒の容量比が、[水]/[芳香族炭化水素]/[エーテル系溶媒]=1:10000:0.0001〜1:0.0001:10000の間であることが好ましく、1:1000:0.001〜1:0.001:1000の間であることがさらに好ましい。
【0032】
また、原料となる一般式(3)で表される化合物の残留を防止するため、一般式(3)で表される化合物と水とのモル比は、[一般式(3)で表される化合物]/[水]=0.01:1〜1:1,000の間であることが好ましく、0.1:1〜1:100の間であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明では、反応は常圧で行うことも特徴としており、特に常圧でイソブテンを反応溶媒中にバブリングすることにより行うことが好ましい。
【0034】
なお、常圧での反応とは、反応器を密閉状態に保って加圧下で反応を行うオートクレーブなどの反応器を用いることなく、反応器を密閉していない状態で反応を行うことを示すが、必ずしも、周囲の圧力と反応器内の圧力が等圧であることを示すものではない。
【0035】
イソブテンは常圧で気体であるため、気体状態で反応系に供給する。供給する方法に関して、特に制限はなく、連続的に反応溶媒中にバブリングを行う方法、間欠的に反応溶媒中にバブリングを行う方法、また反応基をイソブテン雰囲気とする方法等を挙げることができる。
【0036】
イソブテンのバブリングとは、必要量のイソブテンを反応開始時にまとめて供給するのではなく、反応の進行と共にイソブテンを連続的に反応器内に供給することを示す。
【0037】
バブリングにより溶媒から放出されたイソブテンは、反応器外に放出、または反応器内に留めておいても良い。反応器内に留めておく場合、反応器はイソブテンで加圧された状態となる。
【0038】
本発明では、反応温度、反応時間、反応濃度などの反応条件に制限はなく、反応温度は、−100〜120℃が好ましく、生産性を考慮すると0〜120℃がさらに好ましく、20〜80℃の範囲で行うことが特に好ましい。反応時間は1秒〜100時間の範囲が好ましい。
【0039】
反応はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、反応条件により、2段階以上に分けて行うことも可能である。また、生成するカルボン酸第三級エステルは、反応終了後、従来既知の方法により反応器から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0040】
本発明で製造されるカルボン酸第三級ブチルエステルは、用いられる一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物により、例えば、以下のものが例示できる。
【0041】
一般式(1)で表される化合物とイソブテンの反応により得られるカルボン酸第三級ブチルエステルは、下記一般式(1’)または(1’’)で表され、一般式(1)中のカルボン酸部位が第三級ブチル化された構造を示す。
【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示す。)
【0044】
【化7】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
一般式(1’)は、一般式(1)中の2つのカルボン酸のうち、1つのみが第三級ブチルエステル化された化合物を示し、一般式(1’’)は、一般式(1)中の2つのカルボン酸が第三級ブチルエステル化された化合物を示す。
【0045】
一般式(1’)で表される化合物としては、例えば、マロン酸モノ(tert−ブチル)エステル、コハク酸モノ(tert−ブチル)エステル、グルタル酸モノ(tert−ブチル)エステル、フタル酸モノ(tert−ブチル)エステル、マレイン酸モノ(tert−ブチル)エステル、フマル酸モノ(tert−ブチル)エステル等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0046】
一般式(1’’)で表される化合物としては、例えば、マロン酸ジ(tert−ブチル)エステル、コハク酸ジ(tert−ブチル)エステル、グルタル酸ジ(tert−ブチル)エステル、フタル酸ジ(tert−ブチル)エステル、マレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル、フマル酸ジ(tert−ブチル)エステル等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0047】
さらに、反応終了後、一般的に知られているエステル化方法、例えば、酸性条件、又はアルカリ性条件下で、アルコールと反応させる方法等で、残留するカルボン酸をエステル化することができる。この際、得られる化合物は、下記一般式(1’’’)の構造を示す。
【0048】
【化8】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示し、Yは炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
【0049】
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
一般式(1’’’)で表される化合物としては、例えば、マロン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0050】
一般式(2)で表される化合物とイソブテンの反応により得られるカルボン酸第三級ブチルエステルは、下記一般式(2’)で表され、一般式(2)中のカルボン酸部位が第三級ブチル化された構造を示す。
【0051】
【化10】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示し、Yは炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
【0052】
【化11】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
一般式(2’)で表される化合物としては、例えば、マロン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、これらの化合物に置換基を有するもの等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0053】
一般式(3)で表される化合物とイソブテンの反応により得られるカルボン酸第三級ブチルエステルは、下記一般式(3’)または(3’’)で表される構造を示す。
【0054】
【化12】

【0055】
【化13】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示す。)
【0056】
【化14】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
一般式(3’)は、1つの第三級ブチルエステル基を有する化合物であり、一般式(3’’)は、2つの第三級ブチルエステル基を有する化合物を示す。
【0057】
一般式(3’)で表される化合物としては、例えば、マロン酸モノ(tert−ブチル)エステル、コハク酸モノ(tert−ブチル)エステル、グルタル酸モノ(tert−ブチル)エステル、フタル酸モノ(tert−ブチル)エステル、マレイン酸モノ(tert−ブチル)エステル、フマル酸モノ(tert−ブチル)エステル、を挙げることができるがこれらに限定するものではない。また、本発明で得られる一般式(3’’)で表される化合物の具体例として、マロン酸ジ(tert−ブチル)エステル、コハク酸ジ(tert−ブチル)エステル、グルタル酸ジ(tert−ブチル)エステル、フタル酸ジ(tert−ブチル)エステル、マレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル、フマル酸ジ(tert−ブチル)エステル等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0058】
さらに、反応終了後、一般的に知られているエステル化方法、例えば、酸性条件、又はアルカリ性条件下で、アルコールと反応させる方法等で、残留するカルボン酸をエステル化することができる。この際、得られる化合物は、下記一般式(3’’’)の構造を示す。
【0059】
【化15】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示し、Yは炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
【0060】
【化16】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
一般式(3’’’)で表される化合物としては、例えば、マロン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マロン酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、コハク酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、グルタル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フタル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、マレイン酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(エチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(プロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(ブチル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(イソプロピル)(tert−ブチル)ジエステル、フマル酸(フェニル)(tert−ブチル)ジエステル等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、常圧で反応を行っても収率よくカルボン酸第三級ブチルエステルを製造できるため、高価で特殊な設備となる加圧型反応器を用いることなく、通常の設備で対応可能な常圧型の反応器で反応を行うことができる点で、工業的に有利な方法でカルボン酸第三級ブチルエステルを製造することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0063】
実施例1
200mLの4つ口フラスコに、マレイン酸(16.3g,140mmol)、トルエン(10mL)、ジイソプロピルエーテル(30mL)、硫酸(0.18mL)を加え、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(23.0g,100.8mmol,収率72%)を得た。
【0064】
実施例2
反応温度を30℃から20℃に変えた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(14.2g,62.2mmol,収率44%)を得た。
【0065】
実施例3
反応温度を30℃から40℃に変えた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(24.1g,105.6mmol,収率75%)を得た。
【0066】
実施例4
ジイソプロピルエーテル(30mL)の代わりにメチル−tert−ブチルエーテル(30mL)を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(23.3g,97.7mmol,収率70%)を得た。
【0067】
実施例5
イソブテンのバブリング時間を8時間に変えた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(22.8g,99.9mmol,収率71%)を得た。
【0068】
実施例6
200mLの4つ口フラスコに、マレイン酸(16.3g,140mmol)、トルエン(10mL)、ジイソプロピルエーテル(30mL)、水(2.78mL)、硫酸(0.18mL)を加え、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(22.4g,98.1mmol,収率70%)を得た。
【0069】
実施例7
200mLの4つ口フラスコに、マレイン酸(16.3g,140mmol)、トルエン(20mL)、ジイソプロピルエーテル(20mL)、硫酸(0.18mL)を加え、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(20.3g,88.9mmol,収率64%)を得た。
【0070】
実施例8
実施例1において、マレイン酸の代わりにマレイン酸モノ(メチル)エステル(18.2g,140mmol)を用いた以外は同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸(メチル)(tert−ブチル)ジエステル(17.2g,92.4mmol,収率66%)を得た。
【0071】
実施例9
マレイン酸の代わりにフマル酸(16.3g,140mmol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(15.2g,66.6mmol,収率48%)を得た。
【0072】
実施例10
マレイン酸の代わりにコハク酸(16.5g,140mmol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてコハク酸ジ(tert−ブチル)エステル(12.2g,53.0mmol,収率38%)を得た。
【0073】
実施例11
マレイン酸の代わりにフタル酸(23.3g,140mmol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてフタル酸ジ(tert−ブチル)エステル(15.2g,54.6mmol,収率39%)を得た。
【0074】
実施例12
200mLの4つ口フラスコに、無水マレイン酸(13.7g,140mmol)、トルエン(10mL)、ジイソプロピルエーテル(30mL)、水(2.78mL)、硫酸(0.10mL)を加え、30℃で2時間撹拌を行った後、硫酸(1.80mL)を加えた後、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(22.7g,99.3mmol,収率71%)を得た。
【0075】
実施例13
200mLの4つ口フラスコに、無水マレイン酸(13.7g,140mmol)、トルエン(10mL)、ジイソプロピルエーテル(30mL)、水(2.78mL)、p−トルエンスルホン酸一水和物(10.7g)を加え、30℃で2時間撹拌を行った後、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(23.4g,102.5mmol,収率73%)を得た。
【0076】
実施例14
200mLの4つ口フラスコに、無水マレイン酸(13.7g,140mmol)、トルエン(10mL)、ジイソプロピルエーテル(30mL)、水(2.78mL)、スルホン酸基含有イオン交換樹脂(商品名:アーバンリスト、オルガノ製)(7g)を加え、30℃で2時間撹拌を行った後、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(17.4g,76.2mmol,収率54%)を得た。
【0077】
実施例15
ジイソプロピルエーテルの代わりに、1,2−ジメトキシエタンを用いた以外は実施例12と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(20.6g,90.2mmol,収率64%)を得た。
【0078】
実施例16
ジイソプロピルエーテルの代わりに、メチル(tert−ブチル)エーテルを用いた以外は実施例12と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(19.8g,86.7mmol,収率62%)を得た。
【0079】
実施例17
無水マレイン酸の代わりに、無水コハク酸(14.1g,140mmol)を用いた以外は実施例12と同様の方法で反応を行ったところ、無色オイルとしてコハク酸tert−ブチルエステル(13.6g,59.1mmol,収率42%)を得た。
【0080】
実施例18
無水マレイン酸の代わりに、無水フタル酸(20.7g,140mmol)を用いた以外は実施例12と同様の方法で反応を行ったところ、無色オイルとしてフタル酸ジtert−ブチルエステル(18.2g,57.4mmol,収率41%)を得た。
【0081】
実施例19
溶媒にトルエン(40mL)、水(2.78mL)を用いた以外は実施例12と同様の方法で反応を行ったところ、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(20.4g,89.3mmol,収率64%)を得た。
【0082】
実施例20
200mLの4つ口フラスコに、マレイン酸(16.3g,140mmol、トルエン(40mL)、硫酸(0.18mL)を加え、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(22.0g,87.6mmol,収率63%)を得た。
【0083】
比較例1
200mLの4つ口フラスコに、マレイン酸(16.3g,140mmol、ジイソプロピルエーテル(40mL)、硫酸(0.18mL)を加え、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(8.71g,37.8mmol,収率27%)を得た。トルエンなどの炭化水素系溶媒を用いず、ジイソプロピルエーテルエーテルを溶媒として用い、常圧でイソブテンによるマレイン酸のtert−ブチル化を行ったが、低収率であった。
【0084】
比較例2
200mLの4つ口フラスコに、マレイン酸(16.3g,140mmol、ジイソプロピルエーテル(40mL)、水(2.78mL)硫酸(0.18mL)を加え、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(6.23g,22.4mmol,収率16%)を得た。トルエンなどの炭化水素系溶媒を用いず、水とジイソプロピルエーテルエーテルの混合溶媒を用い、常圧でイソブテンによるマレイン酸のtert−ブチル化を行ったが、低収率であった。
【0085】
比較例3
200mLの4つ口フラスコに、無水マレイン酸(13.7g,140mmol)、ジイソプロピルエーテル(40mL)、水(2.78mL)、硫酸(0.10mL)を加え、30℃で2時間撹拌を行った後、硫酸(1.80mL)を加えた後、反応懸濁液を30℃に保ちながら、イソブテンの常圧バブリングを4時間行った。過剰量のイソブテンは、パラフィンバブラーを通じてフラスコ外に放出した。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL×3回)、飽和食塩水(50mL)で洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で溶媒を留去することで、無色固体としてマレイン酸ジ(tert−ブチル)エステル(8.65g,37.9mmol,収率27%)を得た。トルエンなどの炭化水素系溶媒を用いず、水とジイソプロピルエーテルエーテルの混合溶媒を用い、常圧でイソブテンによるマレイン酸のtert−ブチル化を行ったが、低収率であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、(2)または(3)
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、Qは下記一般式(4)〜(8)を示し、Yは炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
【化4】

(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。)
で表される化合物とイソブテンとの反応を、酸触媒の存在下で、芳香族炭化水素を含む溶媒を用いて常圧で行うことを特徴とするカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法。
【請求項2】
溶媒が、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法。
【請求項3】
溶媒が、水と芳香族炭化水素を含むことを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法。
【請求項4】
溶媒が、水と芳香族炭化水素とエーテル系溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸第三級ブチルエステルの製造方法。

【公開番号】特開2012−136486(P2012−136486A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291326(P2010−291326)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】