説明

カーボンナノコイル製造用触媒、その製造方法、カーボンナノコイル製造方法及びカーボンナノコイル

カーボンナノコイルの先端に付着した触媒核の構造を決定することによって真のカーボンナノコイル製造用触媒を特定して高効率にカーボンナノコイルを製造する方法を実現する。 本発明に係るカーボンナノコイル製造用触媒は、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒であり、特に遷移金属元素としてFe、Co、Niが好適である。また、この炭化物触媒以外に(Fe、Al、Sn)、(Fe、Cr、Sn)の金属触媒も有効である。この中でも、FeInC0.5、FeInC0.5Sn、FeSnCなどの触媒が更に好適である。これらの触媒を多孔性担体に担持させた触媒は線径、コイル径を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は化学的気相成長法によりカーボンナノコイルを製造するための触媒に関し、更に詳細には、カーボンナノコイルを効率的に製造できるカーボンナノコイル製造用触媒、その製造方法、カーボンナノコイル製造方法及び最終的に得られるカーボンナノコイルに関する。
【背景技術】
外直径が1000nm以下のコイル状に巻回されたカーボンナノコイルが製造されている。カーボンナノコイルは、カーボンナノチューブと同様の特性を有すると共に、電磁誘導性が顕著であり、ハードディスク用ヘッドの材料、電磁波の吸収材としても有用である。また、2倍の長さに伸ばしても元に戻るバネ弾性を有しているので、マイクロマシンのスプリングやアクチュエータの材料、更には樹脂強化材料としても注目を集めている。
カーボンナノコイルは、1994年にアメリンクス等(Amelinckx,X.B.Zhang,D.Bernaerts,X.F.Zhang,V.Ivanov and J.B.Nagy,SCIENCE,265(1994)635)によって化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition、以下CVD法と称す)を使用して初めて合成された。以前から製造されていたカーボンマイクロコイルがアモルファス構造であるのに対し、カーボンナノコイルがグラファイト構造であることも解明された。
彼らの製造方法はCo、Fe、Niのような単一金属触媒を微小粉に成形し、この触媒近傍を600〜700℃に加熱し、この触媒に接触するようにアセチレンやベンゼンのような有機ガスを流通させ、これらの有機分子を分解させる方法である。しかし、生成されたカーボンナノコイルの形状は様々であり、その収率も低くて偶然的に生成されたに過ぎないものであった。つまり、工業的に利用できるものではなく、より効率的な製造方法が求められた。
1999年にリー等(W.Li,S.Xie,W.Liu,R.Zhao,Y.Zhang,W.Zhou and G.Wang,J.Material Sci.,34(1999)2745)が、新たにカーボンナノコイルの生成に成功した。彼らの製造方法は、グラファイトシートの外周に鉄粒子を被覆した触媒を中央に置き、この触媒近傍をニクロム線で700℃に加熱し、この触媒に接触するように体積で10%のアセチレンと90%の窒素ガスの混合ガスを反応させる方法である。しかし、この製造方法もコイル収率が小さく、工業的量産法としては不十分なものであった。
CVD法によるカーボンナノコイルの収率を増大させる鍵は適切な触媒の開発にある。この観点から、本発明者等の一部は、Fe・In・Sn系触媒を開発して90%以上の収率を得る事に成功し、その成果を特開2001−192204(特許文献1)として公開した。この触媒は、In酸化物とSn酸化物の混合薄膜を形成したITO基板の上に鉄薄膜を蒸着形成したものである。ITOとはIndium−Tin−Oxideの略称である。
また、本発明者等の一部は、Fe・In・Sn系触媒を別の方法で形成して、カーボンナノコイルを大量に製造することに成功し、その成果を特開2001−310130(特許文献2)として公開した。この触媒は、In有機化合物とSn有機化合物を有機溶媒に混合して有機液を形成し、この有機液を基板に塗布して有機膜を形成し、この有機膜を焼成してIn・Sn酸化物膜を形成し、このIn・Sn酸化物膜の上に鉄薄膜を形成して構成される。In・Sn酸化物膜は前述したITO膜(混合薄膜)に相当する。
他方、化合物触媒を特定のキャリア(担体)に担持して触媒の高効率化を狙った研究も行われている。この方面の研究はカーボンナノチューブの分野で行われており、特開2002−255519号(特許文献3)及び特開2003−313017号(特許文献4)が公開されている。
これらの特許文献3及び特許文献4は単層カーボンナノチューブの製造方法に関したものである。両方の公知技術とも、カーボンナノチューブ製造用触媒をゼオライトに吸着させて、カーボンナノチューブを生成する技術に関係している。生成されるカーボンナノチューブは、線径が比較的に均一であることが報告されている。即ち、触媒がゼオライトの微小孔に吸着され、微小孔の径を有した比較的均一なカーボンナノチューブを製造することを目的とした技術である。
【特許文献1】特開2001−192204号公報
【特許文献2】特開2001−310130号公報
【特許文献3】特開2002−255519号公報
【特許文献4】特開2003−313017号公報
特許文献1及び特許文献2により開発されたFe・In・Sn系触媒を用いてカーボンナノコイルをCVD法により製造する研究を精力的に行う中で、本発明者等は興味深い事実に気づくようになった。電子顕微鏡写真に撮影されたカーボンナノコイルの先端に、粒子状の物質が付着している事実である。本発明者等はこの粒子状物質を触媒核と称する。
本発明者等は、カーボンナノコイルの先端に付着した触媒核こそが真の触媒物質であると考えるようになった。即ち、この触媒核が周囲に存在する炭素化合物ガスを分解し、炭素原子を取り込みながらカーボンナノコイルを成長させるという推論である。カーボンナノコイル自体が極小の炭素物質であるから、その先端に付着した触媒状物質はナノサイズの超微粒子である。
一つのカーボンナノコイルを試料とし、その先端に付着した一個の極小の触媒核を直接的に分析することは極めて困難な作業である。触媒核は極めて小さく脱落し易いから、物理的又は化学的手法によりその組成や構造を決定することは困難を極める。また、その触媒核の高分解能透過型電子顕微鏡像を得ることも困難な仕事である。
しかし、この触媒核が真の触媒であるとすれば、その構造を決定することは極めて重要なことである。つまり、この触媒核がFe・In・Sn系触媒の単なる微細片であるのか、それとも他の物質であるのかを決定することは本発明者等にとって極めて重要な課題となってきた。この触媒核の構造を決定することにより、カーボンナノコイルを製造するためにより効果的な触媒を提供できる可能性があるからである。
また、特許文献3に開示された公知技術はゼオライトに触媒微粒子としてFe微粒子やNi微粒子を吸着させるものである。Fe微粒子やNi微粒子は、溶解する化合物分子と比べてはるかに大きいので、ゼオライトの細孔径が小さい場合には触媒微粒子を細孔内に吸着できない欠点がある。また、触媒微粒子が細孔内に吸着されたとしても、細孔径自体がある範囲で分布するため、その分布に応じた線径のバラッキを有する。更に、単分散する金属微粒子の粒径は、現在の技術水準では約10nmである。10nm以下になると相互に金属微粒子が結合して団子状になり、団子化した2次粒子の粒径は数10nm以上に達するため、このゼオライト表面に付着すると、線径が極めて大きなカーボンナノチューブが成長するという欠点があった。
特許文献4は、水溶液中で硝酸鉄分子をゼオライトに吸着させる技術を開示している。つまり、ゼオライトの細孔中に硝酸鉄分子が吸着され、前述した触媒微粒子よりも細孔への触媒充填率が高くなることが分かった。しかしながら、ゼオライトに吸着させる触媒を1種類の金属元素ないしはその金属含有物としており、複数種の金属元素ないしはその金属含有物ではない。カーボンナノチューブの触媒は、単一のFe微粒子やNi微粒子であるから、ゼオライトの細孔に均一に注入することは可能である。ところが、Fe・In・Sn触媒にみられるように、カーボンナノコイル製造用触媒は複数種類の金属から構成されるから、同一の細孔に複数種の金属を同時的に充填する必要がある。同一の細孔に複数種の金属を同時注入することは、単純に考えても困難である。従って、複数カーボンナノコイル製造用触媒をゼオライトに吸着できるかどうかは全く未知の領域であり、実験されたことはなかった。
従って、本発明は、カーボンナノコイルの先端に付着した触媒核の構造を間接的に決定することによって真のカーボンナノコイル製造用触媒を特定し、この触媒の製造方法を確立して短時間に高密度且つ高効率にカーボンナノコイルを製造することを目的とする。また、Fe・In・Sn触媒以外の新規なカーボンナノコイル製造用触媒を開発することを目的とする。また、これらの新規な触媒物質を多孔性担体に担持させた新規なカーボンナノコイル製造用触媒を提供することを目的とする。更に、これらの新規なカーボンナノコイル製造用触媒を用いてカーボンナノコイルを製造する方法を確立し、均一で安価なカーボンナノコイルを市場に提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、本発明の第1の形態は、外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを化学的気相成長法により製造する触媒であり、この触媒は一種以上の遷移金属元素を少なくとも含む金属炭化物から構成されるカーボンナノコイル製造用触媒である。遷移金属元素は、周期表に示される遷移元素を意味しており、具体的には、第4周期のSc〜Cu、第5周期のY〜Ag、第6周期のLa〜Auなどであり、カーボンナノチューブの製造用触媒として知られている。本発明者等は、Fe・In・Sn触媒にみられるように、この遷移金属元素と他の元素が共存することでカーボンナノコイルが生成され、しかもこの触媒が炭化物となることで、カーボンナノコイルを効率的に成長させることを発見して、本発明を完成させたものである。前述した触媒核は本発明の金属炭化物である。
本発明の第2形態は、外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを化学的気相成長法により製造する触媒であり、この触媒は少なくとも一種以上の遷移金属元素、In、Cを含有した炭化物触媒であるカーボンナノコイル製造用触媒である。遷移金属元素は上述したとおりであり、この遷移金属元素とInとCが結合して形成された炭化物触媒が有効なカーボンナノコイル製造用触媒となる。
本発明の第3形態は、前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選ばれた一種以上の元素Aであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともAInで表されるカーボンナノコイル製造用触媒である。Fe、Co、Niはカーボンナノチューブの触媒としてよく知られているが、AInが存在することによってカーボンナノコイル触媒となることは、本発明者等によって初めて発見されたものでる。Inの役割は現在のところ明快ではないが、Fe、Co、Niはカーボンナノチューブを成長させ、Cはカーボンナノコイルを形成するための原料となり、Inはそのカーボンナノチューブを巻回させると考えることもできる。しかし、そのミクロメカニズムは現在のところ不明である。この炭化物触媒においてAとInとCの組成比がx、y、zで示され、これらの組成比x、y、zを所望値に設計できる炭化物触媒が提案される。
本発明の第4形態は、前記元素AがFeであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeInC0.5で表されるカーボンナノコイル製造用触媒である。本発明者等は、Fe・In触媒薄膜を形成した基板に炭素化合物ガスを接触させてカーボンナノコイルを製造する中で、まずFe・In触媒薄膜が微粒子化し、この微粒子が触媒核となってカーボンナノコイルを成長させる事実を確認した。この基板上に形成された触媒微粒子を粉末X線解析したところ、Fe、In、Cを含有した炭化物触媒であることが確認された。その回折パターンから、この炭化物触媒の組成式は、FeInC0.5で与えられることが判明した。従って、この組成式を有した炭化物触媒を使用することによってカーボンナノコイルを高効率に製造することができる。この炭化物触媒は本発明者等によって初めて発見された組成式が特定されたカーボンナノコイル製造用触媒であり、カーボンナノコイルを成長させる真の触媒である。
本発明の第5形態は、第2形態の炭化物触媒に他の元素を一種以上添加したカーボンナノコイル製造用触媒である。他の元素とは、触媒を構成する遷移金属元素、In、C以外の元素であればよく、カーボンナノコイルの成長を促進させる元素が有効である。例えば、前記遷移金属元素以外の遷移元素でも、典型元素でもよい。例えば、前記遷移金属元素がFeの場合に、他の元素は例えばCoやNi等でもよい。より具体的には、他の元素として、例えば、炭素族のSi、Ge、Snや、ホウ素族のB、Al、Ga、Tlや窒素族のP、As、Sb、Bi、その他の金属元素、非金属元素などが選択される。
本発明の第6形態は、第5形態の他の元素がSnであるカーボンナノコイル製造用触媒である。この場合、本発明のカーボンナノコイル製造用触媒として、Fe・In・Sn系炭化物触媒がある。従来のFe・In・Sn系触媒を用いてカーボンナノコイルを製造した場合には、カーボンナノコイルを一定度まで成長させるのに長時間を要していたため、反応装置の稼動効率が低くなるという弱点を有していた。しかし、本発明形態のFe・In・Sn系炭化物触媒を用いると、触媒効率が高く、カーボンナノコイルを短時間に成長できるため、反応装置の稼動効率が高くできる利点がある。また、この炭化物触媒を微粒子として構成すれば、炭化物触媒の微粒子径を制御することによりカーボンナノコイル径を制御でき、任意径のコイルの製造が可能になる。
本発明の第7形態は、前記第6形態において、炭化物触媒の組成式が少なくともFeInSnで表されるカーボンナノコイル製造用触媒である。この炭化物触媒においてFeとInとCとSnの組成比がx、y、z、wで示され、これらの組成比x、y、z、wを所望値に設計できる炭化物触媒が提案される。
本発明の第8形態は、炭化物触媒の組成式が少なくともFeIn1−v0.5Sn(1>v≧0、w≧0)の組成式で表されるカーボンナノコイル製造用炭化物触媒である。本形態触媒はFeInC0.5を中心とする炭化物触媒で、この中心組成からInを組成比v(1>v≧0)だけ除去し、Snを組成比w(≧0)だけ添加することによって生成される。組成比v、wがゼロの場合には、FeInC0.5の組成となり、除去量vと添加量wはゼロ以上の範囲で所望値に設定される。組成比v、wを最適調整することによって効率的にカーボンナノコイルを製造できる炭化物触媒を提供できる。Snの添加組成比wはw>0の範囲に自在に設定でき、Snの微量添加から大量添加までが可能になる。Snの添加量により生成効率を調整できる利点がある。
本発明の第9形態は、第3形態の触媒において、前記元素AとしてFeが選択され、この触媒に対し粉末X線回折を行ったとき回折角を2θで計測すると、約40°近傍に第1強度ピークを有し、約46.3°近傍に第2強度ピークを有する回折強度分布を示すカーボンナノコイル製造用触媒である。前記約40°近傍、正確には39.6°近傍に第1強度ピークを有し、46.3°近傍に第2強度ピークを有する炭化物触媒は本発明者等により初めて発見されたもので、この炭化物触媒がカーボンナノコイル製造用触媒として提案される。
本発明の第10形態は、外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを化学的気相成長法により製造する触媒であり、この触媒は少なくとも一種以上の遷移金属元素、Sn、Cを含有した炭化物触媒であるカーボンナノコイル製造用触媒である。前述した第2形態の触媒のInをSnに置き換えた炭化物触媒である。(遷移金属元素、Sn、C)炭化物触媒は、(遷移金属元素、In、C)炭化物触媒と共に、本発明者等によって初めて発見されたカーボンナノコイル製造用触媒である。遷移金属元素は上述した通りであり、この遷移金属元素とSnとCが結合して形成された炭化物触媒が有効なカーボンナノコイル製造用触媒となる。遷移金属の具体的選択は、製造効率や合成条件などを勘案して適宜自在に行われる
本発明の第11形態は、第10形態の触媒において、前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選ばれた一種以上の元素Aであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともASnで表されるカーボンナノコイル製造用触媒である。Fe、Co、Niはカーボンナノチューブの触媒としてよく知られているが、ASnが存在することによってカーボンナノコイル触媒となることは、本発明者等によって初めて発見されたものである。Snの役割は現在のところ明快ではないが、Fe、Co、Niはカーボンナノチューブを成長させ、Cはカーボンナノコイルを形成するための原料となり、Snはそのカーボンナノチューブを巻回させると考えることもできる。しかし、そのミクロメカニズムは現在のところ不明である。この炭化物触媒においてAとSnとCの組成比がx、y、zで示され、これらの組成比x、y、zを所望値に設計できる炭化物触媒が提案される。
本発明の第12形態は、第11形態の触媒において、前記元素AがFeであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeSnCで表されるカーボンナノコイル製造用触媒である。本発明者等は、Fe・Sn触媒薄膜を形成した基板に炭素化合物ガスを接触させてカーボンナノコイルを製造する中で、Fe・Sn触媒薄膜が微粒子化し、この微粒子が触媒核となってカーボンナノコイルを成長させる事実を確認した。この基板上に形成された触媒微粒子を粉末X線解析したところ、Fe、Sn、Cを含有した炭化物触媒であることが確認された。その回折パターンから、この炭化物触媒の組成式は、FeSnCで与えられることが判明した。従って、この組成式を有した炭化物触媒を使用することによってカーボンナノコイルを高効率に製造することができる。この炭化物触媒は本発明者等によって発見された組成式が特定されたカーボンナノコイル製造用触媒であり、カーボンナノコイルを成長させる触媒である。
本発明の第13形態は、第10形態の触媒において、前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加したカーボンナノコイル製造用触媒である。他の元素とは、触媒を構成する遷移金属元素、Sn、C以外の元素であればよく、カーボンナノコイルの成長を促進させる元素が有効である。例えば、前記遷移金属元素以外の遷移元素でも、典型元素でもよい。例えば、前記遷移金属元素がFeの場合に、他の元素は例えばCoやNi等でもよい。より具体的には、他の元素として、例えば、炭素族のSi、Ge、Snや、ホウ素族のB、Al、Ga、Tlや窒素族のP、As、Sb、Bi、その他の金属元素、非金属元素などが選択され、目的に応じて自在に適量だけ添加される。
本発明の第14形態は、第11形態の触媒において、前記元素AがFeであり、前記触媒に対し粉末X線回折を行ったとき回折角を2θで計測すると、約40°近傍に第1強度ピークを有する回折強度分布を示すカーボンナノコイル製造用触媒である。前記約40°近傍に第1強度ピークを有する炭化物触媒は本発明者等により発見されたもので、この炭化物触媒がカーボンナノコイル製造用触媒として提案される。
本発明の第15形態は、一種以上の遷移金属元素、Al及びSnの元素を少なくとも含むカーボンナノコイル製造用触媒である。この触媒は本発明者等が発見した新規な金属触媒で、炭化物触媒ではない。遷移金属元素は既に前述した通りであり、目的に応じて適切な遷移金属元素を利用できる。この触媒を用いれば、CVD法等による合成に適用してカーボンナノコイルを効率的に製造することができ、カーボンナノコイルの工業的量産化に寄与する。
本発明の第16形態は、前記遷移金属元素、Al及びSnが酸化物として存在するカーボンナノコイル製造用触媒である。第15形態の触媒を酸素雰囲気中で焼成して生成すれば、酸化物触媒が得られる。鉄、アルミニウム又はスズを酸化鉄、酸化アルミニウム又は酸化スズの形態で使用してカーボンナノコイル製造用触媒を構成するので、これらを空気中で使用してもそれ以上酸化せず、安定な触媒を提供できる。
本発明の第17形態は、第15形態又は第16形態の触媒において、前記遷移金属元素がFeであり、組成(Fex−Aly−Snz)の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦1、z≦3であるカーボンナノコイル製造用触媒である。この組成で試用すれば、高い生成効率でカーボンナノコイルを製造することができる。本形態の触媒(Fex−Aly−Snz)は例えば、x=3、y=1、z=0.1といった組成比で構成される。
本発明の第18形態は、一種以上の遷移金属元素、Cr及びSnの元素を少なくとも含むカーボンナノコイル製造用触媒である。この触媒は本発明者等が発見した別の新規な金属触媒で、炭化物触媒ではない。遷移金属元素は既に前述した通りであり、目的に応じて多種多様な遷移金属元素を利用できる。この触媒を用いれば、CVD法等による合成に適用してカーボンナノコイルを効率的に製造することができ、カーボンナノコイルの工業的量産化に寄与する。
本発明の第19形態は、第18形態の触媒において、前記遷移金属元素、Cr及びSnが酸化物として存在するカーボンナノコイル製造用触媒である。第18形態の触媒を酸素雰囲気中で焼成して生成すれば、酸化物触媒が得られる。遷移金属元素、クロム又はスズを遷移金属酸化物、酸化アルミニウム又は酸化スズの形態で使用してカーボンナノコイル製造用触媒を構成するので、これらを空気中で使用してもそれ以上酸化せず、安定な触媒を提供できる。
本発明の第20形態は、第18形態又は第19形態の触媒において、前記遷移金属元素がFeであり、組成(Fex−Cry−Snz)の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦1、z≦3であるカーボンナノコイル製造用触媒である。この触媒を用いれば、高い生成効率でカーボンナノコイルを製造することができる。本形態の触媒(Fex−Cry−Snz)は例えば、x=3、y=0.3、z=0.1といった組成比で構成される。
本発明の第21形態は、Fe、In及びSnの元素からなる組成(Fex−Iny−Snz)を少なくとも含み、且つ各元素の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦9、z≦3であるカーボンナノコイル製造用触媒である。本発明者等は、既にFe・In・Sn触媒を公開しているが、本形態では、各構成元素の組成を特定範囲に限定することにより、より効率的にカーボンナノコイルを製造することに成功したものである。本形態の触媒(Fex−Iny−Snz)は例えば、x=3、y=0.3、z=0.1といった組成比で構成される。
本発明の第22形態は、第21形態の触媒において、Fe、In又はSnが酸化物として存在するカーボンナノコイル製造用触媒である。鉄、インジウム又はスズを酸化鉄、酸化インジウム又は酸化スズの形態で使用してカーボンナノコイル製造用触媒を構成するので、これらを空気中で使用してもそれ以上酸化せず、安定な触媒を提供できる。
本発明の第23形態は、第1形態〜第22形態のいずれかの形態において、前記触媒が微粒子として得られるカーボンナノコイル製造用触媒である。本発明者等は、成長したカーボンナノコイルの先端に触媒核が存在し、この触媒核が炭素化合物ガスを分解して炭素原子をカーボンナノコイルに取り込みながら成長することを発見した。この知見に基づき、炭化物触媒を微粒子として提供すれば、この微粒子自体が触媒核として機能し、カーボンナノコイルを効率的に製造することが可能になる。微粒子の粒径を調整することによって、カーボンナノコイルのコイル線径及びコイル外直径を所望の値に均一に制御できる利点がある。
本発明の第24形態は、第2形態又は第10形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、基板に少なくとも(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)を含有した薄膜を形成し、加熱状態下で前記基板の薄膜表面を炭素化合物ガスで炭化して、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒を形成するカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。基板に形成した薄膜触媒を炭化するだけで少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒を量産することが可能になる。遷移金属元素は前述した通りに多種多様であり、任意の遷移金属元素を含有した炭化物触媒を安価に量産することができる。
本発明の第25形態は、第2形態又は第10形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、少なくとも(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)を含有した微粒子を形成し、加熱状態下でこの微粒子を炭素化合物ガスと反応させて、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒を形成するカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。各種方法を活用して(遷移金属元素、In、C)炭化物触媒又は(遷移金属元素、Sn、C)炭化物触媒を量産することが可能になり、触媒価格の低減に貢献できる。前記微粒子の形成方法には、蒸着・スパッタリング・イオンプレーティング・プラズマ・モレキュラービーム等の物理的蒸着法(PVD)や気相分解法・噴霧熱分解法などの化学的蒸着法(CVD)などが利用できる。
本発明の第26形態は、第2形態又は第10形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、少なくとも(遷移金属化合物とIn化合物)又は(遷移金属化合物とSn化合物)を溶媒に添加した溶液又は分散液を形成し、この溶液又は分散液から固形分を分離し、加熱状態下で前記固形分を炭素化合物ガスと接触させて炭化し、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒の微粒子を形成するカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。遷移金属化合物やIn化合物やSn化合物としては、例えば遷移金属酸化物やIn酸化物やSn酸化物があり、これらを溶液中で均一に混合して固形分を分離する。この固形分を炭素化合物ガスで炭化処理すれば、簡単に(遷移金属元素、In、C)炭化物触媒微粒子又は(遷移金属元素、Sn、C)炭化物触媒微粒子を大量合成することができる。炭化できる材料として、酸化物以外の各種化合物を利用することも可能である。
本発明の第27形態は、第2形態又は第10形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、少なくとも(遷移金属化合物とIn化合物)又は(遷移金属化合物とSn化合物)を溶媒に添加した溶液又は分散液を形成し、この溶液又は分散液から固形分を分離し、分離された固形分を焼成して少なくとも(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)の微粒子を生成し、加熱状態下でこの微粒子を炭素化合物ガスと接触させて炭化し、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒の微粒子を形成するカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。遷移金属化合物、In化合物、Sn化合物としては、例えば遷移金属有機化合物、In有機化合物、Sn有機化合物があり、これらを溶液中で均一に混合して固形分を分離し、この固形分を焼成して有機物を焼成して(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)の物粒子を簡単に作ることができる。酸素雰囲気下での焼成であれば酸化物微粒子や水酸化物微粒子などが生成され、また他の雰囲気下での焼成であればこれら以外の微粒子が生成される。目的とする炭化物微粒子に転化する任意の微粒子が利用できる。この物粒子を炭化水素ガスで炭化処理すれば、簡単に(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒微粒子を大量合成することができる。
本発明の第28形態は、第2形態又は第10形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、加熱状態下にある反応槽の中で、少なくとも(遷移金属化合物ガスとIn化合物ガス)又は(遷移金属化合物ガスとSn化合物ガス)を炭素化合物ガスと接触反応させ、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒の微粒子を形成するカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。この形態では、触媒原料成分のガスを利用して気体化学反応により目的とする炭化物触媒の微粒子を大量生産することが可能になり、触媒価格の低減化に貢献できる。
本発明の第29形態は、第24形態〜第28形態のいずれかにおいて、前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選ばれた一種以上の元素Aであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともAIn又はASnで表されるカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。Fe、Co、Niはカーボンナノチューブの触媒としてよく知られているが、In・C又はSn・Cと結合することによってカーボンナノコイル触媒となることは、本発明者等によって発見されたものでる。この炭化物触媒においては、組成比がx、y、zで示され、これらの組成比x、y、zを所望値に設計できる炭化物触媒が提供される。
本発明の第30形態は、第29形態において、前記元素AがFeであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeInC0.5又はFeSnCで表されるカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。本形態では、Fe・Co・Niの中でも、特にFeが選択される。Feの場合には、炭化物が簡単に生成される利点がある。FeInC0.5又はFeSnCからなる炭化物は、カーボンナノコイル製造用触媒として、本発明者等が世界に先駆けて発見した物質である。
本発明の第31形態は、第24形態〜第30形態のいずれかにおいて、前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加したカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。他の元素とは、触媒を構成する(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)以外の元素であればよく、カーボンナノコイルの成長を促進させる元素が有効である。例えば、前記遷移金属元素以外の遷移元素でも、典型元素でもよい。例えば、前記遷移金属元素がFeの場合に、他の元素は例えばCoやNi等でもよい。より具体的には、他の元素として、例えば、炭素族のSi、Ge、Snや、ホウ素族のB、Al、Ga、Tlや窒素族のP、As、Sb、Bi、その他の金属元素、非金属元素などが選択される。
本発明の第32形態は、カーボンナノコイル製造用の炭化物触媒又は/及び酸化物触媒を多孔性担体に担持させたカーボンナノコイル製造用触媒である。本形態に使用される触媒は、炭化物触媒又は/及び酸化物触媒であり、カーボンナノコイルを高効率で製造できる。また、これらの触媒を多孔性担体に担持させるから、多孔性担体が有する均一な細孔にカーボンナノコイル製造用触媒を充填できる。多孔性担体が有する細孔の大きさは、Y型ゼオライトを例にとれば、約0.5〜2nmであり、ゼオライトでは細孔の最小口径は0.74nmである。このように、均一な断面積を有した細孔にカーボンナノコイル製造用触媒を吸着すると、細孔への触媒担持量(充填量)の均一化が達成できる。つまり、多孔性担体の細孔断面積による触媒面積の均一化とその細孔の有する容積による触媒分量の均一化の両方を達成できる。従って、細孔径に相当した線径のカーボンナノコイルが成長するから、線径の均一化が得られる。本発明者等の研究によって、カーボンナノコイルの外直径とカーボンナノコイルの線径との相関関係は極めて高く、線径の均一化によって、コイル外直径の均一化を実現できるようになった。再記すれば、カーボンナノコイルの線径を規定する要因である触媒面積と触媒分量を均一化することにより、カーボンナノコイルの線径を均一化でき、その結果、コイル外直径を均一化できるカーボンナノコイルの量産用触媒を実現することに成功した。また、多孔性担体には多数の細孔を有するものがあり、その細孔数に比例した数のカーボンナノコイルを形成できる。従って、高効率にカーボンナノコイルを量産できる利点を有している。更に、多孔性担体の形状はブロック状、シート状、板状、粒状、微粒子状、超微粒子状など各種存在する。
本発明の第33形態は、第32形態において、第1形態〜第14形態のいずれかの炭化物触媒を担持させたカーボンナノコイル製造用触媒である。第1形態〜第14形態の炭化物触媒は、本発明者等が発見した触媒であり、カーボンナノコイルを高効率に製造できる利点がある。
本発明の第34形態は、第15形態〜第22形態のいずれかに記載の触媒を多孔性担体に担持させたカーボンナノコイル製造用触媒である。第15形態〜第22形態の触媒は、本発明者等が発見した触媒で、炭化物触媒ではないが、炭化物触媒と同様にカーボンナノコイルを高効率に製造できる利点がある。
本発明の第35形態は、カーボンナノコイル製造用の遷移金属元素・In・Sn系触媒、遷移金属元素・Al・Sn系触媒、遷移金属元素・Cr・Sn系触媒、遷移金属元素・In系触媒又は遷移金属元素・Sn系触媒を多孔性担体に担持させたカーボンナノコイル製造用触媒である。これらの触媒を多孔性担体の細孔に担持させると均一線径・均一コイル径のカーボンナノコイルを量産することができる。これらの触媒は2元素系、3元素系であり、本発明により細孔内に多元素を同時担持することが可能となった。触媒の種類によりカーボンナノコイルの生成効率も様々である。従って、触媒の組み合わせを適宜調整することにより、カーボンナノコイルの生成効率を自在に調整することが可能になる。
本発明の第36形態は、第35形態の触媒において、前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選択された一種以上の元素であるカーボンナノコイル製造用触媒である。遷移金属元素の中でも、カーボンナノコイルを効率的に製造できるFe、Co、Niが使用される。その結果、本形態の触媒により、カーボンナノコイルの大量生産が可能になり、価格低減に寄与できる。
本発明の第37形態は、第32形態〜第36形態の触媒において、前記多孔性担体がゼオライト、アルミノ燐酸塩、シリカアルミノ燐酸塩、メソ多孔体、多孔性セラミックス、モレキュラーシーブス、金属酸化物系多孔体、シリカ多孔体又は炭素系多孔体から選択されるカーボンナノコイル製造用触媒である。ゼオライトはSiOとAlOの四面体が酸素を共有して交互に結合した構造を持つ多孔体の総称である。天然物、合成物併せて100種類以上の骨格構造があり、Si原子とAl原子との比率(Si/Al比)によりその性質が異なる。また、Si原子の一部がAl原子により置換されていることから負の電荷をもっているので、イオン交換法により容易にカーボンナノコイル製造用触媒を担持できる。ALPO(アルミノ燐酸塩)は、AlOとPOの四面体が酸素を共有して交互に結合した骨格構造を持っている。ALPOの細孔構造はゼオライトと同様であるが、中性であるためイオン交換能を持たない。ALPOのP原子の一部をSi原子に置換することにより、ゼオライトと同様のイオン交換能を持たせたのがSAPO(シリカアルミノ燐酸塩)である。従って、SAPOはイオン交換法により容易にカーボンナノコイル製造用触媒を担持できる。樹脂吸着剤、多孔性セラミックス、金属酸化物系多孔体及びシリカ多孔体もゼオライトと同様な細孔構造を有しているので、カーボンナノコイル製造用触媒を担持できる。ゼオライト、ALPO、SAPOの細孔径は0.5〜2nmであり、シリカ多孔体には1.5〜10nmの大きな細孔を有するものがある。更に、活性炭、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ構造物などの炭素系多孔体も利用できる。従って、これらの多孔性担体の細孔に担持された触媒によりカーボンナノコイルを製造すると、これらの細孔径に依存した線径を有し、しかもコイル外直径が均一なカーボンナノコイルを量産できる利点を有している。
本発明の第38形態は、第32形態〜第37形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、前記カーボンナノコイル製造用の触媒微粒子を溶媒中に分散し、この溶媒中に多孔性担体を浸漬し、多孔性担体の表面又は/及び細孔中に前記触媒微粒子を担持させるカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。触媒微粒子を溶媒中に分散すると、この溶媒中に触媒微粒子が均一に分散する。この溶媒中に多孔性担体を浸漬すると、多孔性担体の同一細孔内にカーボンナノコイル製造用触媒を均一に吸着する。吸着を効率よく行うため、溶媒中に多孔性担体を浸漬させた後、溶媒を攪拌したり、超音波処理を行ったりホモジナイザーやアトマイザーで処理する等、任意の処理を追加してもよい。
本発明の第39形態は、第32形態〜第37形態のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、前記カーボンナノコイル製造用のを空間に充填又は流通させ、この空間に多孔性担体を配置し、多孔性担体の表面又は/及び細孔中に前記触媒微粒子を担持させるカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。触媒微粒子を空間に充填又は流通させるので、この空間中に多孔性担体を配置するだけで、多孔性担体の表面又は/及び細孔中に前記触媒微粒子を容易に吸着できる。多孔性担体は処理室内に静置してもよいし、噴霧しても攪拌してもよく、気相からの吸着効率を上昇させる公知の手段を採用できる。また、処理室内の物理的条件は任意に調整できる。例えば、多孔性担体を加圧下に置くことも、真空下に置くことも、また加熱・冷却も可能である。この方法で多孔性担体にカーボンナノコイル製造用触媒微粒子を吸着させれば、カーボンナノコイルを効率よく安価に製造できる。
本発明の第40形態は、第38形態又は第39形態において、触媒微粒子を担持させた多孔性担体を焼成するカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。焼成することにより、触媒微粒子が多孔性担体の細孔内に固着され、担持強度を向上させることができる。
本発明の第41形態は、第1〜22形態及び第32〜37形態のいずれかカーボンナノコイル製造用触媒を反応器内部に配置し、この触媒近傍を原料として使用する炭素化合物ガスが触媒作用により分解する温度以上に加熱し、前記触媒に接触するように前記炭素化合物ガスを流通させて、前記炭素化合物ガスを前記触媒近傍で分解しながら前記触媒表面に外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル製造方法である。本発明に係る炭化物触媒、金属触媒、その酸化物触媒又は多孔性担体触媒を用いることによって、炭化水素等の炭素化合物ガスを効率的に分解しながら、該触媒表面にカーボンナノコイルを高効率に生成することができ、カーボンナノコイルの工業的量産化を実現できる。
本発明の第42形態は、少なくとも遷移金属元素、Inを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくとも遷移金属元素、In、Cを有する炭化物触媒を形成し、連続して加熱状態下で前記炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル製造方法である。遷移金属元素、Inを含有した触媒前駆物質を炭化物触媒に変化させ、更に連続してカーボンナノコイルを大量生産する2段階連続製造方法を提供する。遷移金属元素、In以外に、有効な1種以上の他の元素を添加した触媒前駆物質を使用すれば、カーボンナノコイルの製造効率を更に高めることができる。
本発明の第43形態は、少なくとも遷移金属元素、Snを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくとも遷移金属元素、Sn、Cを有する炭化物触媒を形成し、連続して加熱状態下で前記炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル製造方法である。遷移金属元素、Snを含有した触媒前駆物質を炭化物触媒に変化させ、更に連続してカーボンナノコイルを大量生産する2段階連続製造方法を提供する。遷移金属元素、Sn以外に、有効な1種以上の他の元素を添加した触媒前駆物質を使用すれば、カーボンナノコイルの製造効率を更に高めることができる。
本発明の第44形態は、少なくとも遷移金属元素、In、Snを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくとも遷移金属元素、In、Sn、Cを含有する炭化物触媒を形成し、連続して加熱状態下で前記炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル製造方法である。遷移金属元素、In、Snを含有した触媒前駆物質を炭化物触媒に変化させ、更に連続してカーボンナノコイルを大量生産する2段階連続製造方法を提供する。遷移金属元素、In、Sn以外に、有効な1種以上の他の元素を添加した触媒前駆物質を使用すれば、カーボンナノコイルの製造効率を更に高めることができる。
本発明の第45形態は、第41形態〜第44形態において、前記カーボンナノコイル製造用触媒の膜又は微粒子膜を基板上に形成し、この触媒により炭素化合物ガスを分解して基板上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル製造方法である。触媒膜を用いると、触媒膜上にカーボンナノコイルを高密度に生成することができる。また、触媒の微粒子膜を用いると、触媒微粒子を触媒核としてカーボンナノコイルを基板上に大量生産できる。触媒微粒子の粒径を小さくすればサイズの小さなカーボンナノコイルを製造することができ、逆に触媒微粒子の粒径を大きくすればサイズの大きなカーボンナノコイルを製造することができる。このように、触媒微粒子の粒径を制御することによってカーボンナノコイルを自在に大量生産できる利点を有する。
本発明の第46形態は、第41形態〜第44形態において、前記カーボンナノコイル製造用触媒の微粒子を反応槽の中に浮遊させ、この触媒微粒子により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを浮遊状態で成長させるカーボンナノコイル製造方法である。触媒微粒子が流通する反応領域を制限することにより、カーボンナノコイルの成長時間を比較的簡単に制御でき、カーボンナノコイルのサイズ制御が容易にできる。
本発明の第47形態は、第41形態〜第44形態において、前記カーボンナノコイル製造用触媒の微粒子を反応槽に堆積させ、この堆積した触媒微粒子を攪拌しながら炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを攪拌状態下で成長させるカーボンナノコイル製造方法である。例えば、触媒微粒子の粉末をロータリーキルンの中に堆積させておき、炭素化合物ガスを流通させながらロータリーキルンを回転させると、触媒粉末が攪拌状態となり、触媒微粒子を触媒核としてカーボンナノコイルを大量生産することができる。攪拌方法としては、回転方法、振動方法、その他の公知の方法が採用できる。
本発明の第48形態は、第41形態〜第44形態のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造方法により製造されるカーボンナノコイルである。従って、カーボンナノコイルを大量合成できるので、安価なカーボンナノコイルを提供できる。また、多孔性担体に担持された触媒により製造すると、線径とコイル外直径の揃ったカーボンナノコイルを提供できる。従って、この線径と外直径の揃ったカーボンナノコイルを使用すれば、高品質なナノ物質、例えばナノスプリング、ナノマシン、電磁波吸収体、電子エミッタ、ナノ電子デバイス、水素吸蔵体等を製造でき、各分野の要請に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
図1はカーボンナノコイル1の概略斜視図である。
図2はカーボンナノコイル製造装置2の概略構成図である。
図3は触媒薄膜14によりカーボンナノコイル1が成長する過程を示した模式図である。
図4は炭化物触媒を製造する第1方法の工程図である。
図5は炭化物触媒を製造する第2方法の工程図である。
図6は溶液法を用いて炭化物の触媒微粒子18を製造する本発明の第3方法の工程図である。
図7は炭化物触媒微粒子18を用いたカーボンナノコイルの第1製法の工程図である。
図8はFe・In・Sn系触媒薄膜14から出発するカーボンナノコイルの第2製法の工程図である。
図9は炭化物触媒微粒子18を浮遊させてカーボンナノコイル1を製造する第3方法(流動製造法)の概略説明図である。
図10は噴霧された酸化物微粒子26から触媒微粒子18を形成してカーボンナノコイル1を製造する第4方法(流動製造法)の概略説明図である。
図11は5万倍で撮影されたFe・In・Sn酸化物薄膜の走査型電子顕微鏡像である。
図12は10秒後の触媒微粒子の粉末X線回折強度図である。
図13は2θが約40°にある回折強度の第1ピークの時間経過図である。
図14は650℃における炭化物触媒微粒子と成長したカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡像である。
図15は700℃における炭化物触媒微粒子と成長したカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡像である。
図16はFe−Sn−C触媒によるカーボンナノコイルの電子顕微鏡像及び触媒のX線回折パターン図である。
図17は他の条件によるFe−Sn−C触媒によるカーボンナノコイルの電子顕微鏡像及び触媒のX線回折パターン図である。
図18は本発明の実施形態に使用する製造装置1の要部概略構成図である。
図19は触媒の組成比、Fe:In:Sn、Fe:Al:Sn及びFe:Cr:Snを3:0.3:0.1としたときの製造装置1による生成物の電子顕微鏡像である。
図20はInとAlをFeに対して1/3の比率で混合した触媒組成のときの製造装置1による生成物の電子顕微鏡像である。
図21は鉄とスズだけの混合触媒Fe−Sn−Oにおいて種々の組成比でCNC生成実験を試みた、製造装置1による生成物の電子顕微鏡像である。
図22はFex−Iny−Snz−O触媒の各種組成のCNC生成実験における生成物の電子顕微鏡像である。
図23はFex−Iny−Snz−O触媒において、図5とは異なる組成比による生成物の電子顕微鏡像である。
図24はFex−Aly−Snz−O触媒の各種組成のCNC生成実験における生成物の電子顕微鏡像である。
図25はFex−Cry−Snz−O触媒の各種組成のCNC生成実験における生成物の電子顕微鏡像である。
図26は、図25とは別組成比の、Fex−Cry−Snz−O触媒のCNC生成実験における生成物の電子顕微鏡像である。
図27はY型ゼオライトの結晶構造図である。
図28は650℃で焼成された触媒担持体(ゼオライト)により形成されたカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡像である。
図29は使用されたゼオライトの細孔分布図である。
図30は700℃で焼成された触媒担持体(ゼオライト)により形成されたカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡像である。
図31は図4の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施形態の詳細な説明は、次の4部から構成される。従って、本発明の実施形態はこの順番に図面を参照しながら説明される。
[1](遷移金属元素、In、C)の炭化物触媒の説明
[2](遷移金属元素、Sn、C)の炭化物触媒の説明
[3]金属触媒の説明
[4]触媒を担持した多孔性担体触媒の説明
[1](遷移金属元素、In、C)の炭化物触媒の説明
この第1節では、遷移金属元素の代表例としてFeを取り上げ、(遷移金属元素、In、C)炭化物触媒の一例として(Fe、In、C)炭化物触媒を説明する。Feの替わりに、CoやNiなどの遷移金属元素を用いても同様の結果が得られる。
本発明者等はカーボンナノコイルを大量生産するために鋭意研究した結果、出発触媒として用いたFe、In、Sn系触媒が反応槽の中で原料ガスである炭素化合物ガスによって炭化されていることを発見した。この炭化物を分析したところ、少なくともFe、In、Cを構成元素とする炭化物であり、この炭化物触媒がカーボンナノコイルを成長させている事実を発見して本発明を完成させたものである。
この発見の過程を次に述べる。CVD法によりカーボンナノコイルを成長させると、その電子顕微鏡像からカーボンナノコイルのチューブル先端に触媒核が付着しているのが見られる。本発明者等はこの触媒核がカーボンナノコイルを成長させる直接的触媒物質であると考えている。
本発明者等は、この触媒核が炭素化合物ガスを分解して炭素原子を生成し、この炭素原子をチューブル先端に堆積する過程でチューブルが卷回しながら伸長してカーボンナノコイルが成長すると考えている。
図1はカーボンナノコイル1の概略斜視図である。このカーボンナノコイル1はチューブル3が卷回して形成されており、コイル外直径D、コイル長L及びコイルピッチPを有している。チューブルとはカーボンファイバーを意味している。重要なことは、チューブル先端3aに触媒核5が付着している事実である。
この触媒核5の直径をgとする。この触媒核5が核となり、炭素化合物ガスが分解されて炭素原子が堆積され、断面直径がdのチューブル3が伸長すると考えられる。チューブル3はカーボンナノチューブであることが観察されている。
触媒核5の形状には球型、角型、栓型など様々であるが、その代表的な部分の直径をgとする。チューブル直径dと触媒核直径gは等しいとは限らないが、両者の大きさには相関関係があると考えられる。
本発明者等の観察によれば、触媒核直径gが小さいとチューブル直径dは小さくなり、触媒核直径gが大きいとチューブル直径dも大きくなることが分かった。この事実から、触媒核直径gが小さくなるほど、チューブル直径dが小さなカーボンナノコイル1を形成することができるはずである。
この点を追求する中で、チューブル直径dとコイル外直径Dとの間にも一定の相関関係があることが本発明者等によって発見された。つまり、チューブル直径dが小さいとコイル外直径Dも小さくなり、チューブル直径dが大きくなるとコイル外直径Dも大きくなる傾向がある。
これら二つの相関関係の発見により、次のような結論が得られる。触媒核直径gが小さいほど、チューブル直径d及びコイル外直径Dが小さくなり、逆に触媒核直径gが大きいほど、チューブル直径d及びコイル外直径Dが大きなカーボンナノコイル1が得られる傾向がある。換言すれば、直径gが小さな触媒核5を用いれば、より小さなサイズのカーボンナノコイル1を製造でき、また直径gが均一な触媒核5を用いれば均一なサイズのカーボンナノコイル1を製造することができる。
次に、本発明者等は、カーボンナノコイル1のチューブル先端3aに付着している触媒核5がどこから来ているのかについて検討した。発明者等の推測は、触媒薄膜を基板に形成した基板法では、次の通りである。まず、基板上の触媒薄膜に炭素化合物ガスを流通させる過程で、触媒薄膜が粒子化して触媒微粒子膜に変化する。この触媒微粒子が炭素化合物ガスを分解しながら炭素原子をその下方に堆積し、カーボンナノコイル1が上方に成長する。その結果、触媒微粒子が押し上げられてチューブル先端3aに付着すると考えられる。このことを確認するために、カーボンナノコイル1の成長実験を行った。
図2はカーボンナノコイル製造装置2の概略構成図である。このカーボンナノコイル製造装置2では、反応槽4の外周に加熱装置6が配置され、反応槽4の中に等温領域となる反応室8が形成される。
反応室8の所要位置に、触媒薄膜14を形成した基板12が配置されている。この触媒薄膜14はカーボンナノコイル製造用触媒で、本発明者の一部が既に発見しているFe・In・Sn系触媒薄膜である。FeとInとSnの配合比率は自在に調整できるが、例えばFeはInに対し10〜99.99モル%、SnはInに対して0〜30モル%の範囲に調整されることが望ましい。
反応室に矢印a方向にキャリアガスと炭素化合物ガス(原料ガス)が供給される。炭素化合物ガスはカーボンナノコイルを成長させる炭素源ガスで、炭化水素のみならず、窒素含有有機ガス、硫黄含有有機ガス、リン含有有機ガス等の有機ガスが広く利用される。この中でも、余分な物質を生成しない意味で炭化水素が好適である。
炭化水素としては、メタン、エタンなどのアルカン化合物、エチレン、ブタジエンなどのアルケン化合物、アセチレンなどのアルキン化合物、ベンゼン、トルエン、スチレンなどのアリール炭化水素、ナフタリン、フェナントレンなどの芳香族炭化水素、シクロプロパン、シクロヘキサンなどのシクロパラフィン化合物などが利用できる。また、2種以上の混合炭化水素ガスでもよく、特に、望ましくは、低分子炭化水素、例えばアセチレン、アリレン、エチレン、ベンゼン、トルエンなどが好適である。
キャリアガスとしては、He、Ne、Ar、N、Hなどのガスが利用され、この実施形態ではHeガスが使用されている。キャリアガスは炭素化合物ガスを搬送するガスで、炭素化合物ガスが反応により消費されるのに対して、キャリアガスは全く無反応で消耗しないガスが使用される。
反応室8の中は所定温度に加熱される。加熱温度は炭素化合物ガスが触媒により分解される最低温度以上に調製されればよい。従って、触媒の種類と炭素化合物ガスの種類によって加熱温度は可変調整されるが、例えば600℃以上に設定されることが望ましい。
炭素化合物ガスとキャリアガスは混合ガスとして矢印a方向に供給され、この炭素化合物ガスが触媒の表面に接触するように基板12が配置されている。炭素化合物ガスは触媒薄膜14との接触過程で分解され、分解生成された炭素原子が触媒表面に堆積してカーボンナノコイル1が形成されて行く。
触媒薄膜14の表面にはカーボンナノコイル1が無数に生成されている。上述したように、触媒薄膜14はFe・In・Sn系触媒薄膜であり、この触媒を用いると、炭素化合物ガスの炭素量とカーボンナノコイルの生成量から、収率が約90%と判断される。
図3は触媒薄膜14によりカーボンナノコイル1が成長する過程を示した模式図である。この実施形態では、炭素化合物ガスとして60sccmのCガス、キャリアガスとして200sccmのHeガスが使用され、アセチレンを分解するために、加熱温度は700℃に設定された。
触媒薄膜14は、Fe酸化物とIn酸化物とSn酸化物の混合酸化物触媒薄膜で形成されている。酸化物触媒の組成式は、各構成酸化物の配合比率によって異なり、例えば組成式がFeInSn0.1、FeInSn0.1、FeInSn0.1などで表される混合酸化物の触媒薄膜が使用される。この実施形態では、組成式がFeInSn0.1の混合酸化物触媒薄膜が用いられている。触媒の膜厚tは200nmに設定されている。
(3A)において、矢印b方向に流通するCガスは触媒薄膜14と接触しながら反応して分解される。この反応過程を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと称す)で観察すると、カーボンナノコイル1が成長する前に、触媒薄膜14が粒子化されることが観察された。
(3B)では触媒薄膜14が粒子化された状態が示されている。触媒薄膜14は触媒微粒子18からなる触媒微粒子膜16へと変化する。Cガスを連続的に流通させると、触媒薄膜14は次第に区画に分割されて各区画が触媒微粒子18へと形状変化する。触媒微粒子18の直径(粒径)sは時間経過に従って大から小へと次第に小さくなることが確認された。
(3C)では、この触媒微粒子膜16に対しCガスを連続的に流通させると、カーボンナノコイル1が成長することが観察された。カーボンナノコイル1の先端には触媒核5が付着していることがSEMにより確認された。触媒微粒子18が極小化した段階でカーボンナノコイル1が成長を始めていることも確認された。
触媒微粒子18がSEMでも見えなくなるほど極小化した段階でカーボンナノコイル1が成長を始めていることから、本発明者等はこの極小化した触媒微粒子18が触媒核5となり、カーボンナノコイル1を成長させることは間違いないと判断している。従って、(3C)では触媒核5を触媒核5(18)と記している。
本発明者等は、(3B)に示される触媒微粒子18の物質構造を解析するため、触媒面に対しX線を照射し、回折線の強度をディフラクトメータで計測して粉末X線解析を行った。そのX線強度分布は、回折角を2θで計測したとき、2θが約39.6°近傍に第1強度ピークを有し、約46.3°近傍に第2強度ピークを有することが確認された。この強度分布を既知の物質強度データと比較したところ、触媒微粒子18の構造はFeInC0.5であることが強く推定された。従って、この触媒は組成式がFeInC0.5であると判断する。
FeInC0.5はFe・Inの炭化物であり、Fe・In・Sn系触媒から形成されている触媒薄膜がCと化学反応して炭化されていることが確実となった。SnはFeInC0.5の物質内に不純物原子として存在することも分かった。
このように、本発明に係る炭化物触媒は少なくともFe、In、Cからなる炭化物触媒であり、組成式では少なくともFeInで表される炭化物触媒である。特に、限定された形では、組成式が少なくともFeInC0.5で表される炭化物触媒である。
また添加元素としてSnを考慮すると、本発明に係る炭化物触媒は少なくともFe、In、C、Snからなる炭化物触媒であり、組成式では少なくともFeInSnで表される炭化物触媒である。特に、限定された形では、組成式が少なくともFeInC0.5Sn(w>0)で表される炭化物触媒である。Snの添加率が調整できるため、w>0の条件が付されている。
更に、詳しく述べると、炭化される前の触媒薄膜14の組成式はFeInSn0.1であり、Snの含有率はFeの1/30であり、同時にInの1/10である。従って、量的にもSnは初めから不純物量程度だけ添加されており、炭化物になっても不純物としてFeInC0.5の中に存在すると考えられる。この観点から、この炭化物は、Snを含有する場合には、FeInC0.5Sn(w>0)と表記される。組成比wはゼロより大きければよく、所望の割合で添加される。
以上の事実から、カーボンナノコイル1を成長させる真の触媒はFe・In・Sn系触媒が炭素化合物ガスによって炭化されて生じた炭化物、即ちFeInC0.5又はFeInC0.5Sn(w>0)であることが解明された。従って、これらの炭化物を本発明では炭化物触媒と称して、Fe・In・Sn系触媒と区別する。
この炭化物触媒の構成元素はIn、C、Snのようなホウ素族元素(3族)や炭素族元素(4族)が多く、炭素族元素に属するSnはカーボンナノコイルの成長用元素として触媒中に添加されている。また、Snが添加されると、カーボンナノコイルが高密度に成長することが確認されており、Snを成長促進用元素と言ってもよい。
この観点から、成長促進用元素は、Sn以外にSi、Geなどの炭素族元素、B、Al、Ga、Tlなどのホウ素族元素、N、P、As、Sb、Biなどの窒素族元素が利用できる。また、ホウ素族元素と窒素族元素の組み合わせでもよいし、2族のアルカリ土類元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)と6族の酸素族元素(S、Se、Te、Po)の組み合わせも利用できる。更に、その他の成長促進活性を有した金属元素、非金属元素なども利用できることは言うまでもない。
図4は炭化物触媒を製造する第1方法の工程図である。(4A)では、基板12の表面にFe・In・Sn系触媒からなる触媒薄膜14が形成されている。このFe・In・Sn系触媒は、少なくともFe、In、Snの3元素が含まれている薄膜であればよい。例えば、酸化物の場合には、Fe酸化物、In酸化物、Sn酸化物の混合酸化物から構成され、組成式では例えば、FeInSn0.1,FeInSn0.1等の酸化物がある。勿論、これ以外の化合物でもよいし、Fe・In・Snの合金であってもよい。
この触媒薄膜14の膜厚tは10nm〜数μmの範囲が適当であるが、この数値に限定されるものではない。膜厚tが小さいほど後述する触媒微粒子18の直径sは小さくできる。この触媒薄膜14の表面に接触するように炭素化合物ガスを矢印b方向に流通させると、この炭素化合物ガスによって触媒薄膜14が炭化され始める。
(4B)では、触媒薄膜14が炭化されて炭化物の触媒微粒子18からなる触媒微粒子膜16が生成される。触媒微粒子18の直径sは炭化の過程が進行するに従って小さくなる。従って、適当な時点で炭素化合物ガスの流通を遮断すれば、触媒微粒子18の直径sはその時点での大きさで決まる。
触媒微粒子18の直径sが変化する理由は次のように考えられる。触媒薄膜14が酸化物触媒の場合、触媒薄膜14がC原子を吸収する過程で膨張し、O原子を放出する過程で収縮して粒子化する。続いて触媒微粒子18がC原子を吸収する過程で膨張し、O原子を放出する過程で収縮し、O原子の大量放出によって粒子直径sが次第に小さくなってゆく。任意の時点で加熱を停止したり、炭素化合物ガスの供給を停止すれば、触媒微粒子18の膨張収縮過程が終了して直径sが決まることになる。
図5は炭化物触媒を製造する第2方法の工程図である。(5A)では、基板12の表面にFe・In・Sn系触媒からなる触媒薄膜14が形成されている。この触媒薄膜14はIn・Sn系触媒薄膜14aの上にFe薄膜14bを形成した2層触媒薄膜である。In・Sn系触媒薄膜14aには、例えばIn酸化物とSn酸化物の混合酸化物薄膜、即ちITO薄膜がある。この触媒薄膜14の表面に炭素化合物ガスを矢印b方向に流通させる。
(5B)では、炭化物の触媒微粒子18からなる触媒微粒子膜16が生成される。2層式触媒薄膜であっても、炭素化合物ガスによる炭化過程は(4B)と同様に進行する。その結果、触媒薄膜14は炭化されて炭化物触媒微粒子18へと変化する。触媒微粒子18の直径sは炭化の過程が進行するに従って小さくなり、適当な時点で炭素化合物ガスの流通を遮断すれば、触媒微粒子18の直径sはその時点での大きさで決まる。
触媒微粒子18の直径sが変化する理由は図4と全く同様に考えられるからその詳細は省略する。従って、任意の時点で加熱を停止したり、炭素化合物ガスの供給を停止すれば、触媒徽粒子18の膨張収縮過程が終了して直径sが決まることになる。
図4及び図5におけるFe・In・Sn系触媒薄膜14の他の作製方法には、気相法、液相法、固相法がある。気相法には、物理的蒸着法(PVD法、Physical Vapor Deposition)と化学的気相蒸着法(CVD法、Chemical Vapor Deposition)が利用できる。CVD法は化学的気相成長法とも呼ばれる。
PVD法としては、真空蒸着、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーション、分子線エピタキシ(MBE、Molecular Beam Epitaxy)、反応性蒸着、イオンプレーティング、クラスタイオンビーム、グロー放電スパッタリング、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリングなどがある。MBE法でも、有機金属原料(MO、Metal Organic)を用いたMOMBEや、化学線エピタキシ(CBE、Chemical Beam Epitaxy)、ガスソースエピタキシ(GSE、Gas Source Epitaxy)が利用できる。
CVD法としては、熱CVD、有機金属CVD(MOCVD)、RFプラズマCVD、ECRプラズマCVD、光CVD、レーザーCVD、水銀増感法などがある。
液相法には、液相エピタキシ、電気メッキ、無電解メッキ、塗布法がある。また、固相法には、固相エピタキシ、再結晶法、グラフォエピタキシ、レーザービーム法、ゾルゲル法などがある。
図6は溶液法を用いて炭化物の触媒微粒子18を製造する第3方法の工程図である。この溶液法は、基板法よりも大量に触媒微粒子18の粉体を製造できる点に特徴を有している。
(6A)では、容器20の中に溶媒22が貯留され、この溶媒22の中にFe化合物とIn化合物とSn化合物が添加される。溶液を混合攪拌すると、これらの3種の化合物が均一に混ざり合ってコロイド化し、無数のコロイド粒子24が溶液中に形成される。
コロイド化過程では、前記3種の化合物が物理反応又は化学反応により中間体を形成し、この中間体がコロイド粒子24を形成する。化合物の添加濃度を調整することにより、コロイド粒子24の粒径は自在に制御される。過剰なコロイド粒子24が容器20の底に沈殿する場合もある。
(6B)では、溶媒22からコロイド粒子24が分離され、固形分27として加熱容器に投入される。この固形分27を加熱装置28により酸素雰囲気中で焼成すると、Fe・In・Snの酸化物微粒子26が生成される。コロイド粒子24の粒径を制御することによって酸化物微粒子26の直径を制御することが可能である。コロイド粒子24の粒径制御は、例えば濃度や温度を調節することによって実現できる。
(6C)では、酸化物微粒子26から炭化物触媒微粒子18が生成される。焼成炉29は加熱装置36により適当な焼成温度に加熱される。ノズル管30から矢印c方向に酸化物微粒子26が投入される。ガス供給管32から炭素化合物ガスとキャリアガスの混合ガスが矢印e方向に導入される。
焼成炉29の中では、酸化物微粒子26が炭素化合物ガスによって炭化される。焼成温度は300〜1200℃が好ましく、炭化時間は数秒から数10分に調整される。炭化時間は炭素化合物ガスの濃度によっても調整できる。キャリアガスと炭素化合物ガスは前述したガス種から選択される。
焼成により生成された炭化物触媒微粒子18は落下して、焼成炉29の底に堆積される。反応後のガスは吐出管34から矢印f方向に排出される。このようにして、(6D)に示されるように、FeInC0.5やFeInC0.5Sn(x>0)などの炭化物触媒微粒子18が製造される。
この炭化物触媒微粒子18の直径sは、コロイド粒子24の粒径に依存し、1nm〜100μmの範囲に調整される。直径sが小さいほど、カーボンナノコイル1のチューブル直径dも小さくなり、小さなサイズのカーボンナノコイル1が製造できる。
この方法で使用されるFe化合物、In化合物、Sn化合物としては、公知の無機化合物・有機化合物が利用される。例えば、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、臭化鉄、鉄カルボニル、塩化インジウム、硫酸インジウム、硝酸インジウム、カルボン酸インジウム、インジウムアセチルアセトナート、塩化スズ、硫酸スズ、硝酸スズ、カルボン酸スズなどがある。これら以外の公知の各種化合物も用いられる。特に、有機化合物を用いると、焼成によって有機物が燃焼により完全に除去され、純粋なFe・In・Sn炭化物触媒を製造できる。
Fe化合物とIn化合物の混合溶液、又はFe化合物とIn化合物とSn化合物の混合溶液とすることもできるし、他の成長促進用元素の化合物を添加してもよい。溶液中における総金属イオンの濃度は特に制限されず、反応が円滑に進行する濃度であればよい。通常、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%とすればよい。
溶液形成から焼成までの具体的工程は次のようである。例えば、鉄塩、インジウム塩、スズ塩のアルカリ性混合水溶液を調製した後、固形物を分離し、この固形物を乾燥し、必要に応じて粉砕し、最終的に焼成により炭化して炭化物微粒子18が製造される。また、鉄、インジウム、スズの有機化合物を溶媒に分散し、加水分解反応などの化学反応によりFe・In・Sn系化合物の前駆体を形成する。この前駆体を分離し、乾燥し、必要に応じて粉砕し、最終的に焼成炭化して炭化物微粒子が製造される。
溶液からの固形分の分離は公知の分離方法の全てが利用できる。乾燥は、通常、室温〜300℃、好ましくは50〜200℃の範囲で行われ、粉砕は公知の無機物質粉砕方法が採用できる。
溶液法により得られる酸化物微粒子26は、鉄/インジウムの組成比(モル%)が通常10〜99.99(モル%)、好ましくは20〜99(モル%)である。スズ/インジウムの組成比は0〜30(モル%)であり、好ましくは0.1〜10(モル%)である。最終的に生成される炭化物触媒微粒子18の直径sは1nm〜100μmであり、コロイド粒子径などの溶液パラメータに依存する。
炭化物触媒の他の製造方法として、スパッタリング法が利用される。少なくともFe、Inを含有したターゲットをイオンによりスパッタリングしてターゲット微粒子を飛び出させる。このターゲット微粒子を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触反応させて炭化し、少なくともFe、In、Cの元素を含有した炭化物触媒が製造される。他の元素としてSnをターゲットに添加することによって、少なくともFe、In、C、Snの元素を含有した炭化物触媒が製造される。
炭化物触媒の更に他の製造方法として、気相反応法が利用される。加熱状態下にある反応槽の中で少なくともFe化合物ガスとIn化合物ガスを炭素化合物ガスと接触反応させて炭化し、少なくともFe、In、Cの元素を含有した炭化物触媒の微粒子を製造する。気相反応法では、公知の気相反応技術が利用できる。他の元素ガスとしてSn化合物ガスを添加すれば、、少なくともFe、In、C、Snの元素を含有した炭化物触媒が製造される。
次に、本発明の炭化物触媒を使用したカーボンナノコイルの製造方法について説明する。このカーボンナノコイル製造方法の第1の基本原理は、少なくともFe、In、Cを含有する炭化物触媒に炭素化合物ガスを接触させ、加熱状態下でこの炭化物触媒により前記炭素化合物ガスを分解しながらカーボンナノコイルを成長させることである。炭化物触媒に炭素化合物ガスを加熱下で接触させるだけで、カーボンナノコイルを大量生産できる利点がある。炭化物触媒の微粒子を用いれば、カーボンナノコイルのサイズ制御を行える。
第2の基本原理は2段階製造方法である。第1工程で、少なくともFe、Inを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくともFe、In、Cを有する炭化物触媒を形成する。この第1工程に連続して、第2工程で炭化物触媒により加熱状態下で炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させる。第1工程と第2工程が連続して行われ、触媒前駆物質は炭化物触媒に変化し、続いてカーボンナノコイルが成長を始める。出発物質が触媒前駆物質である点で、前述した第1基本原理と異なるだけである。以下に、具体的なカーボンナノコイル製造方法を説明する。
第1基本原理において、Fe、In、C以外に他の元素としてSnを添加した炭化物触媒を使用すると、カーボンナノコイルの高効率成長が可能になる。また、第2基本原理においても、触媒前駆物質に他の元素としてSnを添加すると、同様にカーボンナノコイルの高効率成長が可能になることは云うまでもない。
図7は炭化物触媒微粒子18を用いたカーボンナノコイルの第1製法の工程図である。(7A)では、基板12に炭化物触媒微粒子18を塗着して触媒微粒子膜16が形成される。この基板12を適温に加熱しながら炭素化合物ガスをキャリアガスと共に矢印b方向に流通させる。
(7B)では、炭化物触媒微粒子18が触媒核5になって無数のカーボンナノコイル1が基板12上に成長する。カーボンナノコイル1を成長させた後、基板12からカーボンナノコイル1をスクレーパなどで掻き落としてカーボンナノコイル1を回収する。
図8はFe・In・Sn系触媒薄膜14から出発するカーボンナノコイルの第2製法の工程図である。(8A)では、基板12にFe・In・Sn系触媒薄膜14を形成する。この基板12を適温に加熱しながら炭素化合物ガスをキャリアガスと共に矢印b方向に流通させる。
(8B)では、炭素化合物ガスによりFe・In・Sn系触媒薄膜14が炭化されて、炭化物の触媒微粒子18が形成され、基板12に触媒微粒子膜18が形成される。Fe・In・Sn系触媒薄膜14から触媒微粒子膜18への炭化過程は数秒から数10分の間に生起する。この炭化時間は炭素化合物ガスの流量や濃度、及び加熱温度に依存する。
(8C)では、触媒微粒子膜16の形成に連続して、炭素化合物ガスを矢印b方向に流通させると、触媒微粒子膜18により無数のカーボンナノコイル1が基板12上に成長する。触媒微粒子18がカーボンナノコイル1の触媒核5になっていることが図示されている。
図9は炭化物触媒微粒子18を浮遊させてカーボンナノコイル1を製造する第3方法(流動製造法)の概略説明図である。このカーボンナノコイル製造装置2は、反応槽4の外周に加熱装置6を配置して、反応室8が画成されている。反応槽4の左端には噴霧ノズル40が配置されている。
炭素化合物ガスがキャリアガスと共に矢印a方向に流通している。この炭素化合物ガスの中に噴霧ノズル40から炭化物触媒微粒子18からなる粉体を矢印h方向に噴霧する。空間中に拡散した触媒微粒子18が触媒核5となってカーボンナノコイル1が成長する。キャリアガスの流れに乗って触媒微粒子18が流動し、この流動過程でカーボンナノコイル1が成長し、図示しない回収装置でカーボンナノコイル1は回収される。
図10は噴霧された酸化物微粒子26から触媒微粒子18を形成してカーボンナノコイル1を製造する第4方法(流動製造法)の概略説明図である。このカーボンナノコイル製造装置2は図9と同様であるから相違点だけを説明する。反応室8は触媒微粒子形成領域Xとカーボンナノコイル形成領域Yから構成され、両領域を加熱するため加熱装置6は図9よりも長く配置されている。
炭素化合物ガスがキャリアガスと共に矢印a方向に流通される。この炭素化合物ガスの中に噴霧ノズル40から酸化物微粒子26が噴霧される。この酸化物微粒子26は触媒微粒子形成領域Xで炭素化合物ガスにより炭化され、炭化物触媒微粒子18が形成される。
この炭化物触媒微粒子18はカーボンナノコイル形成領域Yに浮遊状態で移動する。この領域Yで炭化物触媒微粒子18が触媒核5となってカーボンナノコイル1が成長する。キャリアガスの流れに乗って触媒微粒子18が流動し、この流動過程でカーボンナノコイル1が成長し、図示しない回収装置でカーボンナノコイル1は回収される。
前述した基板法や流動法の他に、攪拌法がカーボンナノコイル製造方法として利用される。この方法では、炭化物触媒の微粒子を反応槽に堆積させ、この堆積した触媒微粒子を攪拌しながら炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを攪拌状態下で成長させることができる。
更に具体的に説明すると、例えば炭化物触媒微粒子の粉末をロータリーキルンの中に堆積させておき、炭素化合物ガスを流通させながらロータリーキルンを回転させると、触媒粉末が攪拌状態となり、触媒微粒子を触媒核としてカーボンナノコイルを大量生産することができる。攪拌方法としては、回転方法、振動方法、その他の公知の方法が採用できる。
[実施例1:Fe・In・Sn酸化物薄膜からのカーボンナノコイルの製造]
Si基板の(001)面に膜厚が200nmのFe・In・Sn酸化物薄膜を形成した。図2に示されるカーボンナノコイル製造装置により、この酸化物薄膜を出発触媒として約700℃でカーボンナノコイルを製造した。原料ガスである炭素化合物ガスとして60sccmのCガスを使用し、キャリアガスとして200sccmのHeガスを用いた。
ガスを流通させて、1秒後、5秒後、10秒後、1分後、5分後及び30分後に基板を取り出し、基板表面の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。各基板表面の状態から、Fe・In・Sn酸化物薄膜の変化やカーボンナノコイルの成長度が確認された。
図11は5万倍で撮影されたFe・In・Sn酸化物薄膜のSEM像である。1秒後でFe・In・Sn酸化物薄膜の粒子化が始まり、5秒後及び10秒後ではほぼ粒子化が完成されていることが分かる。この粒子がFe・In・Sn酸化物薄膜が炭化されて形成された炭化物触媒微粒子である。粒子形状は球状、菱形状などの各種形状が混在している。
1秒後の触媒微粒子が、5秒後及び10秒後の触媒微粒子よりサイズが大きくなっているのは、次のような理由であると考えられる。1秒間のCVD成長で、Cから分解されたCが触媒中に吸収され、この吸収によって触媒微粒子の体積が膨張する。その後、Oを放出して収縮し、触媒微粒子の体積が小さくなる。この過程を繰り返しながら、触媒微粒子のサイズは炭化が完了するまで縮小し、一定サイズで縮小化が停止すると考えられる。
約1分後には、前記炭化物触媒微粒子を触媒核としてカーボンナノコイルが成長を始める。1分後ではサイズの小さなカーボンナノコイルが成長し、5分後になるとサイズの大きなカーボンナノコイルが成長していることが観察される。更に、30分後になると、コイル長の長いカーボンナノコイルが成長していることが確認された。
図12は10秒後の触媒微粒子の粉末X線回折強度図である。触媒微粒子が炭化物であるかどうかは粉末X線解析によって決定された。最上位の強度分布が実測された回折強度のラインプロファイルである。回折角を2θで示すと、2θが39.6°近傍に第1強度ピーク、46.3°近傍に第2強度ピークが存在する。39,6°近傍を約40°近傍と称している。また、強度比は、第1強度ピーク:第2強度ピーク=7.0:2.7である。
前記ラインプロファイルの下に、既知物質の強度図が描かれている。7種の既知物質は、FeC、C(グラファイト)、Fe、In、Fe、FeC及びFeInC0.5である。ラインプロファイルと最も一致するのは、最下段のFeInC0.5であることが分かる。つまり、ラインプロファイルの第1ピークと第2ピークを説明できるのはFeInC0.5だけである。また、FeInC0.5の強度比は、第1強度ピーク:第2強度ピーク=7.0:3.0である。強度測定の誤差を考えると、触媒微粒子は組成式がFeInC0.5で与えられる物質あることと判断される。
[実施例2:1sccmのCによる炭化物触媒微粒子の形成]
実施例1では、原料ガスであるCガスを60sccmで供給していたため、炭化物触媒微粒子の成長速度が速すぎた。そこで、Cガスを1sccmで供給して、FeInC0.5による回折強度の第1強度ピークがどのように時間経過に従って増大してゆくかを検討した。
ガスは1sccm、Heは50sccm、加熱温度は700℃に設定された。図12と全く同様のFe・In・Sn酸化物薄膜を形成した基板が反応室に配置された。この基板に対しX線を照射し続けて、第1ピークが得られる2θ=39.62°(約40°近傍)の回折強度が時間経過に従って計測された。
図13は2θが39.62°(約40°近傍)にある回折強度の第1強度ピークの時間経過図である。この第1ピークの挙動はFeInC0.5が成長してゆく過程を示している。言い換えれば、第1ピークの時間経過により、触媒微粒子の成長速度が観察されるのである。
図13から分かるように、Cガスを流通させてから125秒後に第1ピークは急激に立ち上がり、135秒後にほぼ最大に達した。この段階でCガスの供給を停止して、第1ピークの増大を停止させた。約10秒間で一気にFeInC0.5からなる炭化物触媒微粒子が形成されることが分かった。
[実施例3:FeInC0.5の触媒微粒子の粒径制御]
FeInC0.5の触媒微粒子の粒径(直径s)を制御するには、成長条件を変化させればよい。この実施例3では成長温度、即ち基板の加熱温度(反応室の温度)を650℃と700℃に変化させて、炭化物触媒微粒子を形成し、この炭化物触媒微粒子を用いてカーボンナノコイルを成長させた。
ガスは1sccm、Heは50sccm、加熱温度は650℃及び700℃に設定された。図12と全く同様に、Fe・In・Sn酸化物薄膜を出発触媒とする基板が反応室に配置された。この基板にFeInC0.5の触媒微粒子を成長させ、この基板を用いてカーボンナノコイルを成長させた。
図14は650℃における炭化物触媒微粒子と成長したカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡像である。また、図15は700℃における炭化物触媒微粒子と成長したカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡像である。
図14と図15の比較から分かるように、650℃で形成された炭化物触媒微粒子の直径sは700℃よりも小さくなる。つまり、より低温で形成された炭化物触媒微粒子の直径は小さくなることが確認された。従って、反応室の温度を可変することにより、炭化物触媒微粒子の直径sを自在に可変制御することが可能になった。
また、炭化物触媒微粒子の直径sが小さい方が、サイズの小さなカーボンナノコイルを製造できるはずである。図14及び図15を比較すると、650℃の触媒の方が、サイズの小さなカーボンナノコイルを成長させることが分かる。このことから、炭化物触媒微粒子の直径sが小さい方が、サイズの小さなカーボンナノコイルを製造できることが実証された。
[2](遷移金属元素、Sn、C)の炭化物触媒の説明
この第2節では、遷移金属元素の代表例としてFeを取り上げ、(遷移金属元素、Sn、C)炭化物触媒の一例として(Fe、Sn、C)炭化物触媒を説明する。Feの替わりに、CoやNiなどの遷移金属元素を用いても同様の結果が得られる。
[実施例4:Fe−Sn−Cの炭化物触媒微粒子によるCNC成長]
まず、(Fe、Sn、C)炭化物触媒を作製した。炭化物触媒の詳細は第1節で説明したから、ここでは重複を避け、異なる部分だけを説明する。まず、0.1mol/lの濃度の塩化鉄及び塩化スズの水溶液を3:0.1の割合で混合する。この混合水溶液に、0.3mol/lの濃度の炭酸アンモニウム水溶液を適量滴下し、中和反応により鉄及びスズの水酸化物の混合沈殿物を調製する。この混合沈殿物を400℃で2時間焼成することにより、(Fe、Sn、O)の酸化物触媒が合成される。
この粉体触媒を用いて、成長温度:700℃、ヘリウム250sccm、アセチレン10sccm、成長時間30分の条件でCVDを行った。その結果、触媒上にカーボンナノコイルが成長した。図(16A)はカーボンナノコイルが成長した触媒の電子顕微鏡像である。従って、(Fe、Sn、O)の酸化物触媒からカーボンナノコイルが成長することが分かる。
成長段階で、(Fe、Sn、O)酸化物触媒が他の触媒に変化しているかどうかを確認するために、CVDを行いながら、(Fe、Sn、O)触媒のX線回折パターンを測定した。このときのCVD条件は、成長温度:700℃、ヘリウム50sccm、アセチレン1sccmである。
図(16B)は、アセチレンガスを反応炉に導入して3分経過した時の(Fe、Sn、O)触媒のX線回折パターン図である。炭化鉄FeC、酸化鉄FeOに加えて、2θ=40°近傍に第1ピーク(最大ピーク)を有するFeSnCのピークがみられた。このピークは、カーボンナノチューブが鉄触媒により成長する過程では見られないピークである。このことから、(Fe、Sn、O)酸化物触媒が成長過程でFeSnCの炭化物触媒に変化していると考えられる。
更に、塩化鉄0.03mol/l、塩化スズ0.01mol/lの濃度の金属塩化物水溶液200mlに酸化マグネシウム粉末4gを反応させ、FeとSnの複合水酸化物を共沈させた。この沈殿物をろ過・洗浄・乾燥し、FeとSnとMgの複合水酸化物、或いは酸化物粉末を得た。この粉末触媒2gを回転CVD反応炉を用いて炭化させた。
炭化の条件は、成長温度675℃、ヘリウム400sccm、アセチレン60sccm、炉回転数1rpm、炭化時間10分である。この後、濃度17.5%の塩酸でスズ等の金属を取り除き、洗浄・ろ過して炭化物触媒とした。図(17A)は、生成した炭化物のX線回折パターン図である。2θ=約40°の位置に第1ピークが現れており、FeSnCであることが確認された。
また、この粉末触媒0.1gを5mlのアセトンに分散させた後、Si基板上に展開し、小型横型炉で700℃、アセチレン60sccm、ヘリウム200sccmで10分間CVDを行った。生成物をSEMで観察し、その結果は図(17B)に示されている。カーボンナノコイルが成長していることが分かる。このように、図16及び図17から(Fe、Sn、C)の炭化物触媒は有効なカーボンナノコイル製造用触媒であることが実証された。
[3]金属触媒の説明
この第3節では、(遷移金属元素、Al、Sn)触媒、(遷移金属元素、Cr、Sn)触媒及び(Fe、In、Sn)触媒について説明される。これらの触媒は金属触媒であり、炭化物触媒ではない。遷移金属元素は前述した通りであり、目的に応じて適切な遷移金属元素が選択される。以下では、遷移金属元素の代表例としてFeを取り上げ、その詳細を説明する。
本発明者等はカーボンナノコイルの大量合成につき鋭意検討した結果、既に開発した鉄・インジウム・スズ系の混合触媒を基に、鉄・スズのベース組成に何れかの要素を加えることによって新たな触媒材料を創生できるかを検討した。また、カーボンナノコイルの成長に最適な上記触媒中の3つの金属元素の組成比の検討も行った。
本実施形態においては、鉄・スズ系組成にインジウムIn、アルミニウムAl、クロムCrの3種類の元素を加えた3成分系のカーボンナノコイル製造用触媒の具体例を実験結果に基づいて以下に説明する。
[実施例5:Fe−In−Sn、Fe−Al−Sn及びFe−Cr−SnによるCNCの製造]
(混合触媒の精製)
鉄・インジウム・スズ系の混合触媒、鉄・アルミニウム・スズ系の混合触媒及び鉄・クロム・スズ系の混合触媒を共沈法によって精製する。例えば、鉄・インジウム・スズ系の混合触媒の場合、塩化鉄FeCl、塩化インジウムInCl、および塩化スズSnClを水に溶かし、Feイオン、Inイオン、Snイオンの濃度が同じ(たとえば、0.1mol/l)水溶液を作る。ついで、これらの水溶液を適当な比率で混合し、3つの金属イオンの混合水溶液を作る。この混合水溶液に、アルカリ溶液(例えば、炭酸アンモニウム(NHCOの水溶液)を入れ中和させると、溶解液中の金属成分が還元され、析出される。この還元作用によって、金属水酸化物、つまり、Fe(OH)、In(OH)及びSn(OH)が分離され、沈殿物として溶液容器底部に堆積する。この沈殿物は上記の金属水酸化物が凝集した混合物であり、溶液のろ過処理によって沈殿物を回収する。回収した沈殿物を400℃で焼成することによって酸化物触媒Fe−In−Sn−Oが得られる。同様に、鉄・アルミニウム・スズ系の混合触媒の場合、0.1mol/lの硝酸アルミニウムAl(NO、塩化鉄FeCl、塩化スズSnClの水溶液を作成して、これらの水溶液を適当な比で混合し混合水溶液を作成し、炭酸アンモニウム水溶液を用いて触媒成分を沈殿させ、それの回収、焼成を経て酸化物触媒Fe−Al−Sn−Oを得る。また、鉄・クロム・スズ系の混合触媒の場合では、0.1mol/lの硝酸クロムCr(NO、塩化鉄FeCl、塩化スズSnClの水溶液を作成して、これらの水溶液を適当な比で混合し混合水溶液を作成し、炭酸アンモニウム水溶液を用いて触媒成分を沈殿させ、それの回収、焼成を経て酸化物触媒Fe−Cr−Sn−Oを得る。なお、原料の各硝酸化合物や塩化化合物の混合比(モル比)を変えることによって、組成比が少しずつ異なる混合触媒をいくつか精製し、次のカーボンナノコイル生成実験に供した。
(CVD法によるカーボンナノコイルの生成)
上記3種類の混合触媒、Fe−In−Sn−O、Fe−Al−Sn−O、Fe−Cr−Sn−Oを用いたカーボンナノコイル(以下、カーボンナノコイルをCNCと称する。)の生成実験を説明する。
CNCの製造には、炭素含有化合物ガスのCVD法を用いる。本発明においては、炭素含有化合物としてメタンやエタンをはじめ、各種のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素等が利用でき、中でもアセチレン、アリレン、ベンゼン等が有効で、特にアセチレンは高効率である。また、加熱温度は炭素含有化合物が触媒の作用で分解する温度以上が効果的である。アセチレンの熱分解温度は約400度であるが、アセチレンを用いたCNCの合成温度は約600〜約800℃が適当である。しかしながら、合成温度はこの温度に限定されるものではなく、炭素含有化合物の触媒分解温度以上であれば、合成効率を勘案しながら自由に設定できるものである。
図18は本実施形態において使用するCNCの製造装置の要部概略構成図である。この製造装置101は大気圧下に置かれたフローリアクターであり、反応室102は直径30mm、長さ700mmのクォーツチューブ3で囲まれている。クォーツチューブ103の中央部の外周には長さ450mmのチューブ状ヒーター104が配置され、反応室2の中央には長さ約250mmに亘る等温領域105が設定されている。この等温領域105に共沈法により作成した触媒106を載置した基板(クォーツまたはシリコン)107が配置されている。
上記構成のカーボンナノコイル(CNC)の製造装置において、まず、クォーツチューブ103内にヘリウムガスを200sccmの流量で充填し、基板107上の触媒106を毎分20℃の昇温速度で700℃まで加熱した。このヘリウムガスは反応室内で金属が酸化されるのを防止するために導入された。700℃に到達した後、アセチレンCを60sccmの流量で供給し、ヘリウムとアセチレンの混合ガスの全流量が260sccmになるように調節した。反応時間は約30分に設定され、その後、アセチレンを遮断してヘリウムだけをフローさせ、このヘリウム雰囲気中で基板107上の触媒106は室温にまでゆっくりと冷却された。触媒106の上には多数のカーボンナノコイル108(CNCとも云う)が生成された。
反応後の触媒は走査型電子線微鏡(SEM S−4500 日立)とSEM附属のエネルギー分散X線解析装置(EDX)で分析された。本実施形態において以下に示すSEM像はすべて、10000倍以上の倍率で行われている。図19は、触媒の組成比、Fe:In:Sn、Fe:Al:Sn及びFe:Cr:Snを3:0.3:0.1としたときの生成物のSEM像である。図20は、InとAlをFeに対して1/3の比率で混合した触媒組成のときのSEM像である。(19a)と(20b)はFe−In−Sn−O触媒、(19b)と(20a)はFe−Al−Sn−O触媒、(19c)はFe−Cr−Sn−O触媒を使用したときのCNCの存在を示す。(19d)は比較のために、In、Al、Crを含有しない鉄とスズだけのFe−Sn−O触媒を使用した場合である。これらのSEM像から、炭素原子の堆積量とコイル生成量から判断してコイル生成率は95%と推定され、これらの触媒による製造装置101を用いた製法が高効率であることを示す。
図19と図20における種々の触媒の使用によるCNC生成の結果をまとめると次のようになる。CrをInの代わりに用いると、Inの場合と比較してあまりコイルの生成が見られず、コイル径やチューブ径も大きくなった。これは、Crは炭化鉄中に混合されていると、炭化鉄を安定させる働きがあるものと考えられる。このことと、CVDを行った後のSEM像を比較すると、CrをFe−Sn−O触媒に混合することにより、グラファイト(カーボン繊維物)の析出が効率よく起こらなかったために、他の触媒と比べてチューブ状及びコイル状の生成物ができないと推察される。一方、AlをInの代わりに用いる場合、Fe−Sn−O触媒を用いたときと比較すると、巻物状の生成物の数は増えていた。Fe−In−Sn−O触媒による生成物と比較すると、Fe−Al−Sn−O触媒では、Fe−In−Sn−O触媒で見られるようなコイル径が比較的大きくてコイルのピッチが狭いコイルが見られず、径の小さな二重螺旋状の生成物が多かった。この傾向は図20からわかるように、In及びAlの鉄に対する比率が大きい時(Fe:In又はAl:Sn=3:1:0.1)にはさらに顕著であった。
Fe−Al−Sn−O触媒を用いたときにコイル径が大きくピッチの狭いコイルが見られなかった原因としては、コイル生成の「種」となる触媒粒子の大きさが、Inを用いるときよりも小さくなるからだと推察される。従って、Inは触媒粒子を大きくする傾向があり、Alを用いた場合にはそれが抑えられていると考えられる。
(In、Al、Crの最適組成の解明実験)
図19及び図20に示したCNC生成実験結果から、Al及びCrがInに相当する有効な触媒要素になると確信し、これらの元素による最適な触媒組成を見出すべく種々の組成比による、製造装置101を用いたCNC生成実験を行った。
鉄とスズだけの混合触媒Fe−Sn−Oにおける有効組成比を調べるための実験を行った。Fex−Sny−Oの組成モル比に関し、(x、y)の比例配分下でx=3として、y値を変えた種々の組成についてCNC生成状態を調べた。図21は、このCNC生成実験結果の一部のSEM像である。(21a)はFe:Sn=3:0.05、(21c)はFe:Sn=3:0.1、(21e)はFe:Sn=3:1の組成比の場合であり、(21b)、(21d)、(21f)はそれぞれ(21a)、(21c)、(21e)の3万倍の拡大像である。また、Fex−Iny−Snz−Oの組成モル比に関し、Fe:In=3:1に固定してSnの組成比を種々変化させた実験も行った。図22は、このCNC生成実験結果のSEM像である。(22a)〜(22h)はFe:In=3:1に固定してSnの組成比を0、0.03、0.1、0.15、0.3、0.5、1、3とした場合である。この実験によれば、Fex−Sny−Oの組成モル比に関し、(x、y)の比例配分下でx=3とした場合、y≦3が必要であり、また生成効率の最もよいのは0<y≦0.15であるという結果が得られた。
上記の、鉄とスズだけの触媒における鉄とスズとの組成比に関する相対関係結果を踏まえ、In、Al、Crの最適組成の追求実験を行った。具体的には、上記のFex−Sny−Oの最適組成比の実験結果、Fe:Sn=3:0.1を組成固定情報として利用する。まず、Fex−Iny−Snz−O触媒組成における、鉄・スズに対する、インジウムの相対関係を調べるためのCNC生成実験を行った。すなわち、Fe:Sn=3:0.1に固定してInの組成比を種々変化させた実験である。図23はこれらのCNC生成実験結果の一部のSEM像である。(23a)〜(23g)はFe:Sn=3:0.1に固定してInの組成比を0、0.05、0.1、0.3、1、3、9とした場合である。この実験によれば、Inは、(x、y、z)の比例配分下でx=3、z=0.1とした場合、y=9が生成効率の限界となっており、最も効率のよい組成は、0.3≦y≦1である。これらのSEM像からは、コイル径が大きく、コイルピッチの狭い生成物が得られる。
次にFex−Aly−Snz−O触媒組成における、鉄・スズに対する、アルミニウムの相対関係を調べるためのCNC生成実験を行った。図24はこのCNC生成実験結果の一部のSEM像である。(24a)、(24c)、(24e)はFe:Sn=3:0.1に固定してAlの組成比を0.3、1、9とした場合である。(24b)、(24d)、(24e)はそれぞれ、(24a)、(24c)、(24e)の5万倍の拡大像である。この実験によれば、(x、y、z)の比例配分下でx=3、z=0.1とした場合、y=1を越えると生成効率が低下し、y=9ではコイル状生成物は見られない。これらのSEM像からは、Alは、Fex−Aly−Snz−Oにおいて、Al含有の場合、細かい巻物状のツイストコイルを生じているのがわかる。
また、Fex−Cry−Snz−O触媒組成における、鉄・スズに対する、クロムの相対関係を調べるためのCNC生成実験を行った。図25及び図26はこのCNC生成実験結果の一部のSEM像である。(25a)はFe:Sn=3:0.1に固定してCrの組成比を0.3、1とした場合である。(25b)は(25a)の拡大図である。図26は30000倍のSEM像である。この実験によれば、Crは、Fex−Cry−Snz−Oにおいて、(x、y、z)の比例配分下でx=3、z=0.1とした場合、y=1においては、触媒の一部分にコイルの成長が見られた。これらのSEM像からは、Cr含有の場合、y=0.3とすると太い巻物状のコイルができ、y=1とするとピッチの狭いコイルができていることがわかる。
[4]触媒を担持した多孔性担体触媒の説明
最後に、前述した炭化物触媒、金属触媒、酸化物触媒を用いて、より効率的にカーボンナノコイルを製造する方法を説明する。即ち、これらの触媒を、無数の細孔を有する多孔性担体に担持させ、この触媒を担持した多孔性担体をカーボンナノコイル製造用触媒とするのである。
本発明者達は、カーボンナノコイルを高収率に製造するには2種類以上の金属元素の働きが重要であるとの結論を得て、カーボンナノコイルを高収率に生成するだけでなく、その線径の大きさを揃えてカーボンナノコイルの外直径を均一にするため、カーボンナノコイルの製造方式を想到するに至った。即ち、金属化合物を多孔性担体に担持させた触媒担持体を用いて、カーボンナノコイルを製造する方法を提案する。
[実施例6:ゼオライト担持触媒によるCNC成長]
本発明に用いられる多孔性担体には、各種の多孔性物質が利用できる。例えば、ゼオライト、ALPO(アルミノ燐酸塩)、SAPO(シリカアルミノ燐酸塩)、樹脂吸着剤、多孔性セラミックス、モレキラーシーブス、金属酸化物系多孔体、シリカ多孔体及び炭素系多孔体などである。これら以外にも公知の多孔性物質などが用いられる。特に、高温での焼成にも安定した構造を有するゼオライトが本発明には最適である。本発明の実施例にはY型ゼオライトを使用した。
図27はY型ゼオライトの結晶構造図である。ゼオライトとは結晶性の多孔質アルミノケイ酸塩の総称であり、四面体構造を有する(SiO4−及び(AlO5−からなる基本単位が3次元的に結合している。組成比はSiO:99.6wt%、Al:0.4wt%、NaO<0.01wt%で、通常ゼオライトは多数の細孔を有し、その細孔径がほぼ均一な値を有しているので、分子の大きさを選別する分子ふるいなどに利用されている。
本発明に用いる触媒としては、Fe・In・Sn系触媒、Fe・Al・Sn系触媒、Fe・Cr・Sn系触媒、Fe・Sn系触媒、Co・Sn系触媒又はNi・Sn系触媒等の多元素系触媒が利用できる。Fe系触媒としては、Feを含有する金属化合物、即ち鉄酸化物、鉄有機化合物などである。例えば、鉄有機化合物として、カルボン酸鉄、鉄カルボニル、鉄カルボニル誘導体、鉄ニトロシル、鉄ニトロシル誘導体等がある。
In系触媒としては、インジウムを含有する金属化合物、即ちインジウム酸化物、インジウム有機化合物などである。例えば、インジウム有機化合物として、トリメチルインジウム、トリフェニルインジウム、オクチル酸インジウム、カルボン酸インジウム等があり、Sn系触媒として、スズ酸化物、スズ有機化合物、例えばトリエチルスズ、トリメチルスズ、テトラフェニルスズ、オクチル酸スズ、カルボン酸スズ等がある。Co及びNi系触媒としては、Co及びNiを含有する金属化合物、金属有機化合物がある。例えば、コバルト化合物、コバルトカルボニル、ニッケル化合物、ニッケルカルボニル及びそれらの錯体である。これらの金属有機化合物の中で、特に有機溶媒に可溶な金属有機化合物が有用である。AlやCr等の金属元素についても、上述と同様の金属化合物、金属有機化合物が利用できる。
ゼオライト等の多孔性担体に上記複数種の金属元素を含有する金属化合物を担持させる方法には、液相法と気相法などがある。液相法による場合は、複数種の金属化合物を溶媒中に溶解させて、この溶媒中に多孔性担体を浸漬して溶媒を吸着させる。吸着させる方法は、特に制限がなく、浸漬による単なる自然吸着などの様々な方法を用いることができる。例えば、イオン交換性の多孔性担体では、上記金属元素の無機塩や有機塩をイオン交換して、多孔性担体に吸着させることができる。また、非イオン交換性の多孔性担体では、自然吸着によることができる。吸着を効率よく行うため、溶液を攪拌したり、超音波処理を行ったりホモジナイザーやアトマイザーで処理してもよい。溶媒を吸着した多孔性担体は、自然乾燥後焼成されて複数種の金属元素からなる触媒担持体を形成する。焼成温度は400〜700℃で焼成時間は約1時間が適当である。酸化雰囲気中で焼成すると、有機物は燃焼散逸して金属化合物は金属酸化物に変化する。非酸化雰囲気中の焼成では、有機物が除去されて細孔中で金属へ変化する等、種々の金属物等が細孔中で生成される。
本発明に用いられる有機溶媒として、アセトン、トルエン、アルコール等がある。特に、Fe、In、Sn、Co、Ni、Al、Cr等の金属元素を含有する有機化合物を溶解させる有機溶媒が有用である。
気相法による場合は、上記複数種の金属元素を含有する金属化合物ガスを処理室内に導入して、処理室内に配置されたゼオライト等の多孔性担体に吸着させる。前記金属化合物ガスを吸着させた多孔性担体を自然乾燥後焼成して、複数種の金属元素からなる触媒担持体を形成する。金属化合物ガスとしては、上記金属元素を含有する無機物及び有機物からなる混合ガスがある。例えば、上記金属元素の無機塩、有機塩等のガスが利用できる。この混合ガスを気相法で吸着させるには、処理室内の物理条件を適当に調整して容易に吸着させれる。特に加圧、加熱等が有効である。
次ぎに、触媒を担持させたゼオライト等の触媒担持体を用いてカーボンナノコイルを生成する方法を説明する。まず、反応器に前記触媒担持体を配置して、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性なキャリアガスを流通させながら、反応器を所定の温度まで加熱する。所定の温度に達したら、上記キャリアガスと共に炭素含有ガスを流通させる。炭素含有ガス流量は触媒1gについて100〜1000cmが望ましいが、適宜調整することができる。炭素含有ガスの流通時間は使用されるガスにより異なるが、例えば5〜100分程度であり、この反応時間も自在に調整可能である。導入される炭素含有ガスとして、メタン、エタン、各種のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素等が利用でき、特にアセチレン、アリレン、ベンゼン等が有効である。中でも、アセチレンは高収率である。
上記炭素含有ガスを熱分解させる加熱温度は、炭素化合物ガスが触媒の作用で分解する温度以上に設定されている。アセチレンを用いたカーボンナノコイルの合成温度は、例えば約600〜800℃が選択されるがこの温度範囲に限定されるものでなく、炭素含有ガスの触媒分解温度以上であればよく、合成効率を勘案しながら自由に設定できる。
反応終了後は、反応器に前記キャリアガスを流通させて室温まで冷却する。反応器から多孔性担体を取り出し、多孔性担体からカーボンナノコイルを分離する。分離する方法には種々あるが、例えばフッ化水素酸、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム水溶液などに触媒担持体を浸漬し、多孔性担体を溶解してカーボンナノコイルを取り出す等の方法がある。この様にして、多孔性担体に複数種の金属触媒や金属酸化物触媒などを担持させ、カーボンナノコイルを生成すると、線径が均一でコイル径の揃ったカーボンナノコイルを高収率に、しかも簡便に量産できる。
[実施例6−1:焼成温度650℃]
ゼオライトは、東ソー製のHSZ−390HUAのゼオライトを使用し、モル比(SiO/Al)は200以上、比表面積(BET)は660m/g、平均粒子径(D50)は6.5μm、細孔分布は0.2nm及び10nmにピークを有している。このゼオライト0.5gを秤量し、セラミックボードに広げるように入れ、100℃で30分間自然乾燥させる。Fe(NO・9HOが151.94g、In(NO)・3HOが 42.11g、SnCが1.30gをイオン交換水 600mlに溶解させた溶液を調製する。この溶液40ml中に前記ゼオライト0.5gを投入し、超音波で30分間攪拌する。これを24時間放置しゼオライトを沈殿させる。上澄み液を除去し、沈殿したゼオライトと溶液をスポイトで、セラミックボードに取り出し自然乾燥させる。自然乾燥させたゼオライトを再度100℃で、30分間空気中で乾燥させ、その後ヘリウムガス中で650℃、1時間焼成した。この焼成によりFeInSn酸化物触媒をゼオライトの表面及び細孔中に担持させた。
この焼成したゼオライトを乳鉢で粉砕し、粉砕物0.02gをエタノール3gに投入し、超音波で15分間分散させる。これをシリコン基板に滴下したものをクォーツチューブ内に配置し、ヘリウムガス200sccmを流通させ、昇温速度100℃/5分でシリコン基板近傍の温度を700℃まで上昇させた。700℃(キープタイム:10分間)に到達した後、アセチレンを60sccmの流量で10分間流通させた。その後、アセチレンを遮断してヘリウムだけを流通させ、室温まで冷却させた。
図28は、650℃で焼成された触媒担持体(ゼオライト)により形成されたカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡図(倍率10万倍)である。生成された繊維物の線径は、写真から20〜25nmであることが判明した。成長した多数のカーボンナノコイルの線径は同等サイズであり、コイル径もほぼ均一であることが確認された。
図29は、使用されたゼオライトの細孔分布図である。縦軸に1gあたりの表面積(sq/g)を示し、横軸は半径(Å)を示す。この図から考えると、細孔径が半径10nm付近の細孔に触媒が集中的に担持されて、カーボンナノコイルが形成されたものと考えられる。小さい方のピークに相当する細孔半径0.2nmの細孔には触媒の担持は確認できなかった。
[実施例6−2:焼成温度700℃]
実施例1と同様の組成・方法によりゼオライトに触媒を担持させた。また、実施例1と同様の方法で乾燥し、乾燥したゼオライトをヘリウムガス中において700℃の温度で1時間焼成した。この触媒担持体を用いて、実施例1と同様の方法でカーボンナノコイルを生成した。
図30は、700℃で焼成された触媒担持体(ゼオライト)により形成されたカーボンナノコイルの走査型電子顕微鏡図(倍率10万倍)である。実施例1と比較して、実施例2は、成長したカーボンナノコイルの数が相対的に多いことが分かる。カーボンナノコイルの線径は20〜25nmであり、実施例1と同様であることが分かった。
図31は、図30の拡大図である。図31から、カーボンナノコイルのコイル径(コイル外直径)は、50〜70nmであることが分かる。これらのカーボンナノコイルにおいて線径とコイル径(コイル外直径)の大きさを確認したところ、実施例2と同様の結果が得られた。即ち、形成されたカーボンナノコイルの線径は20〜25nmであり、コイル径(コイル外直径)は50〜70nmである。従って、本発明によりカーボンナノコイルの線径を均一に形成でき、しかもその結果、カーボンナノコイルのコイル径(コイル外直径)をほぼ均一に生成できることが証明された。
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものである。
【産業上の利用可能性】
本発明の第1の形態によれば、Fe・In・Sn触媒にみられるように、この遷移金属元素と他の元素が共存することでカーボンナノコイルが生成され、しかもこの触媒が炭化物となることで、カーボンナノコイルを効率的に成長させることを発見して、本発明を完成させたものである。前述した触媒核は本発明の金属炭化物である。
本発明の第2形態によれば、遷移金属元素とInとCが結合して形成された炭化物触媒が有効なカーボンナノコイル製造用触媒となる。
本発明の第3形態によれば、炭化物触媒において遷移金属元素AとInとCの組成比がx、y、zで示され、これらの組成比x、y、zを所望値に設計できる炭化物触媒が提案される。
本発明の第4形態によれば、FeInC0.5炭化物触媒を使用することによってカーボンナノコイルを高効率に製造することができる。この炭化物触媒は本発明者等によって初めて発見された組成式が特定されたカーボンナノコイル製造用触媒であり、カーボンナノコイルを成長させる真の触媒である。
本発明の第5形態によれば、炭化物触媒に他の元素を一種以上添加したカーボンナノコイル製造用触媒により、カーボンナノコイル(CNC)を効率的に製造することができる。
本発明の第6形態によれば、Fe・In・Sn系炭化物触媒を用いると、触媒効率が高く、カーボンナノコイルを短時間に成長できるため、反応装置の稼動効率が高くできる利点がある。また、この炭化物触媒を微粒子として構成すれば、炭化物触媒の微粒子径を制御することによりカーボンナノコイル径を制御でき、任意径のコイルの製造が可能になる。
本発明の第7形態によれば、炭化物触媒においてFeとInとCとSnの組成比がx、y、z、wで示され、これらの組成比x、y、z、wを所望値に設計できる炭化物触媒が提案される。
本発明の第8形態によれば、FeIn1−v0.5Sn(1>v≧0、w≧0)の組成式で表されるカーボンナノコイル製造用炭化物触媒において、組成比v、wを最適調整することによって効率的にカーボンナノコイルを製造できる炭化物触媒を提供できる。
本発明の第9形態によれば、39.6°近傍に第1強度ピークを有し、46.3°近傍に第2強度ピークを有する炭化物触媒がカーボンナノコイル製造用触媒として提案される。
本発明の第10形態によれば、遷移金属元素とSnとCが結合して形成された炭化物触媒が有効なカーボンナノコイル製造用触媒となる。遷移金属の具体的選択は、製造効率や合成条件などを勘案して適宜自在に行われる
本発明の第11形態によれば、遷移金属元素AとSnとCの組成比がx、y、zで示され、これらの組成比x、y、zを所望値に設計できる炭化物触媒が提案される。
本発明の第12形態によれば、FeSnC炭化物触媒を使用することによってカーボンナノコイルを高効率に製造することができる。この炭化物触媒は本発明者等によって発見された組成式が特定されたカーボンナノコイル製造用触媒であり、カーボンナノコイルを成長させる触媒である。
本発明の第13形態によれば、前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加したカーボンナノコイル製造用触媒が提案され、カーボンナノコイルを高効率に製造することができる。
本発明の第14形態によれば、前記元素AがFeの炭化物触媒であり、約40°近傍に第1強度ピークを有する回折強度分布を示すカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。
本発明の第15形態によれば、一種以上の遷移金属元素、Al及びSnの元素を少なくとも含む触媒を用いれば、CVD法等による合成に適用してカーボンナノコイルを効率的に製造することができ、カーボンナノコイルの工業的量産化に寄与する。
本発明の第16形態によれば、移金属元素、Al及びSnが酸化物として存在するカーボンナノコイル製造用触媒が提案され、空気中で使用してもそれ以上酸化せず、安定な触媒を提供できる。
本発明の第17形態によれば、(Fex−Aly−Snz)の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦1、z≦3であるカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。
本発明の第18形態によれば、一種以上の遷移金属元素、Cr及びSnの元素を少なくとも含む触媒を用いれば、CVD法等による合成に適用してカーボンナノコイルを効率的に製造することができ、カーボンナノコイルの工業的量産化に寄与する。
本発明の第19形態によれば、遷移金属元素、クロム又はスズを遷移金属酸化物、酸化アルミニウム又は酸化スズの形態で使用してカーボンナノコイル製造用触媒を構成するので、これらを空気中で使用してもそれ以上酸化せず、安定な触媒を提供できる。
本発明の第20形態によれば、(Fex−Cry−Snz)の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦1、z≦3であるカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。
本発明の第21形態によれば、(Fex−Iny−Snz)において(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦9、z≦3であるカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。
本発明の第22形態によれば、鉄、インジウム又はスズを酸化鉄、酸化インジウム又は酸化スズの形態で使用してカーボンナノコイル製造用触媒を構成するので、これらを空気中で使用してもそれ以上酸化せず、安定な触媒を提供できる。
本発明の第23形態によれば、触媒微粒子の粒径を調整することによって、カーボンナノコイルのコイル線径及びコイル外直径を所望の値に均一に制御できる利点がある。
本発明の第24形態によれば、(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)を含有した薄膜から(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒を量産することが可能になる。遷移金属元素は前述した通りに多種多様であり、任意の遷移金属元素を含有した炭化物触媒を安価に量産することができる。
本発明の第25形態によれば、(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)を含有した微粒子から、(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒が製造できる。
本発明の第26形態によれば、(遷移金属化合物とIn化合物)又は(遷移金属化合物とSn化合物)の溶液又は分散液から、(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の炭化物触媒の微粒子を製造できる。炭化できる材料として、酸化物以外の各種化合物を利用することも可能である。
本発明の第27形態によれば、溶液法により(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)の微粒子を生成し、この微粒子を炭化して(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の炭化物触媒の微粒子が製造される。炭化物触媒微粒子を大量合成できる利点がある。
本発明の第28形態によれば、触媒原料成分のガスを利用して気体化学反応により目的とする炭化物触媒の微粒子を大量生産することが可能になり、触媒価格の低減化に貢献できる。
本発明の第29形態によれば、遷移金属元素Aを含み、AIn又はASnで表されるカーボンナノコイル製造用触媒が製造できる。これらの組成比x、y、zを所望値に設計できる炭化物触媒が提供される。
本発明の第30形態によれば、炭化物触媒の組成式が少なくともFeInC,5又はFeSnCで表されるカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。FeInC0,5又はFeSnCからなる炭化物は、カーボンナノコイル製造用触媒として、本発明者等が世界に先駆けて発見した物質である。
本発明の第31形態によれば、前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加したカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法である。適当な元素を添加して、触媒の物性を調整できる。
本発明の第32形態によれば、カーボンナノコイル製造用の炭化物触媒又は/及び酸化物触媒を多孔性担体に担持させたカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。カーボンナノコイルの線径とコイル径の均一化を実現できる。多孔性担体の形状はブロック状、シート状、板状、粒状、微粒子状、超微粒子状など各種存在する。
本発明の第33形態によれば、本発明者等が発見した各種触媒を多孔性担体に担持した触媒が実現され、カーボンナノコイルを高効率に製造できる利点がある。
本発明の第34形態によれば、本発明者等が発見した金属触媒を多孔性担体に担持した触媒が実現でき、カーボンナノコイルを高効率に製造できる利点がある。
本発明の第35形態によれば、2元素系、3元素系の触媒を多孔性担体に担持させたカーボンナノコイル製造用触媒が提供され、生成効率を自在に調整することが可能になる。
本発明の第36形態によれば、遷移金属元素がFe、Co、Niから選択された一種以上の元素であるカーボンナノコイル製造用触媒であり、カーボンナノコイルの大量生産が可能になり、価格低減に寄与できる。
本発明の第37形態によれば、前記多孔性担体としてゼオライト、アルミノ燐酸塩、シリカアルミノ燐酸塩、メソ多孔体、多孔性セラミックス、モレキュラーシーブス、金属酸化物系多孔体、シリカ多孔体又は炭素系多孔体が選択される。
本発明の第38形態によれば、溶媒中に多孔性担体を浸漬して、多孔性担体の同一細孔内にカーボンナノコイル製造用触媒を均一に吸着した触媒を提供できる。
本発明の第39形態によれば、空間中で触媒微粒子を多孔性担体に担持させたカーボンナノコイル製造用触媒が提供される。この方法で多孔性担体にカーボンナノコイル製造用触媒微粒子を吸着させれば、カーボンナノコイルを効率よく安価に製造できる。
本発明の第40形態によれば、触媒微粒子を担持させた多孔性担体を焼成して耐久性のあるカーボンナノコイル製造用触媒を提供できる。
本発明の第41形態によれば、本発明の各種触媒を使用し、この触媒に接触するように前記炭素化合物ガスを流通させてカーボンナノコイルを製造できる。触媒表面にカーボンナノコイルを高効率に生成することができ、カーボンナノコイルの工業的量産化を実現できる。
本発明の第42形態によれば、非炭化物触媒を反応過程で炭化させ、連続して加熱状態下でこの炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解して、カーボンナノコイルを大量生産する2段階連続製造方法が提供される。
本発明の第43形態によれば、遷移金属元素、Snを含有した触媒前駆物質を炭化物触媒に変化させ、更に連続してカーボンナノコイルを大量生産する2段階連続製造方法が提供される。
本発明の第44形態によれば、遷移金属元素、In、Snを含有した触媒前駆物質を炭化物触媒に変化させ、更に連続してカーボンナノコイルを大量生産する2段階連続製造方法が提供される。
本発明の第45形態によれば、触媒膜上にカーボンナノコイルを高密度に生成することができる。触媒微粒子の粒径を制御することによってカーボンナノコイルを自在に大量生産できる利点を有する。
本発明の第46形態によれば、触媒微粒子により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを浮遊状態で成長させるカーボンナノコイル製造方法が提供される。カーボンナノコイルの成長時間を比較的簡単に制御でき、カーボンナノコイルのサイズ制御が容易にできる。
本発明の第47形態によれば、例えば、触媒微粒子の粉末をロータリーキルンの中に堆積させておき、炭素化合物ガスを流通させながらロータリーキルンを回転させると、触媒粉末が攪拌状態となり、触媒微粒子を触媒核としてカーボンナノコイルを大量生産することができる。
本発明の第48形態によれば、前記カーボンナノコイル製造方法により製造される安価なカーボンナノコイルが提供される。また、線径とコイル外直径の揃ったカーボンナノコイルを提供できる。この線径と外直径の揃ったカーボンナノコイルを使用すれば、高品質なナノ物質、例えばナノスプリング、ナノマシン、電磁波吸収体、電子エミッタ、ナノ電子デバイス、水素吸蔵体等を製造でき、各分野の要請に応えることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを化学的気相成長法により製造する触媒であり、この触媒は一種以上の遷移金属元素を少なくとも含む金属炭化物から構成されることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項2】
外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを化学的気相成長法により製造する触媒であり、この触媒は少なくとも一種以上の遷移金属元素、In、Cを含有した炭化物触媒であることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項3】
前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選ばれた一種以上の元素Aであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともAInで表される請求項2に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項4】
前記元素AがFeであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeInC0.5で表される請求項3に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項5】
前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加した請求項2に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項6】
前記他の元素がSnである請求項5に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項7】
前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeInSnで表される請求項6に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項8】
前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeIn1−v0.5Sn(1>v≧0、w≧0)で表される請求項7に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項9】
前記元素AがFeであり、前記触媒に対し粉末X線回折を行ったとき回折角を2θで計測すると、約40°近傍に第1強度ピークを有し、約46.3°近傍に第2強度ピークを有する回折強度分布を示す請求項3に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項10】
外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを化学的気相成長法により製造する触媒であり、この触媒は少なくとも一種以上の遷移金属元素、Sn、Cを含有した炭化物触媒であることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項11】
前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選ばれた一種以上の元素Aであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともASnで表される請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項12】
前記元素AがFeであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeSnCで表される請求項11に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項13】
前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加した請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項14】
前記元素AがFeであり、前記触媒に対し粉末X線回折を行ったとき回折角を2θで計測すると、約40°近傍に第1強度ピークを有する回折強度分布を示す請求項11に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項15】
一種以上の遷移金属元素、Al及びSnの元素を少なくとも含むことを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項16】
前記遷移金属元素、Al及びSnが酸化物として存在する請求項15に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項17】
前記遷移金属元素がFeであり、組成(Fex−Aly−Snz)の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦1、z≦3である請求項15又は16に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項18】
一種以上の遷移金属元素、Cr及びSnの元素を少なくとも含むことを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項19】
前記遷移金属元素、Cr及びSnが酸化物として存在する請求項18に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項20】
前記遷移金属元素がFeであり、組成(Fex−Cry−Snz)の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦1、z≦3である請求項18又は19に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項21】
Fe、In及びSnの元素からなる組成(Fex−Iny−Snz)を少なくとも含み、且つ各元素の組成比(モル比)において、(x、y、z)の比例配分下でx=3としたときに、y≦9、z≦3であることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項22】
Fe、In又はSnが酸化物として存在する請求項21に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項23】
前記触媒が微粒子として得られる請求項1〜22のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項24】
請求項2又は請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、基板に少なくとも(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)を含有した薄膜を形成し、加熱状態下で前記基板の薄膜表面を炭素化合物ガスで炭化して、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒を形成することを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項25】
請求項2又は請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、少なくとも(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)を含有した微粒子を形成し、加熱状態下でこの微粒子を炭素化合物ガスと反応させて、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒を形成することを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項26】
請求項2又は請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、少なくとも(遷移金属化合物とIn化合物)又は(遷移金属化合物とSn化合物)を溶媒に添加した溶液又は分散液を形成し、この溶液又は分散液から固形分を分離し、加熱状態下で前記固形分を炭素化合物ガスと接触させて炭化し、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒の微粒子を形成することを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項27】
請求項2又は請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、少なくとも(遷移金属化合物とIn化合物)又は(遷移金属化合物とSn化合物)を溶媒に添加した溶液又は分散液を形成し、この溶液又は分散液から固形分を分離し、分離された固形分を焼成して少なくとも(遷移金属元素、In)又は(遷移金属元素、Sn)の微粒子を生成し、加熱状態下でこの微粒子を炭素化合物ガスと接触させて炭化し、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒の微粒子を形成することを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項28】
請求項2又は請求項10に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、加熱状態下にある反応槽の中で少なくとも(遷移金属化合物ガスとIn化合物ガス)又は(遷移金属化合物ガスとSn化合物ガス)を炭素化合物ガスと接触反応させ、少なくとも(遷移金属元素、In、C)又は(遷移金属元素、Sn、C)の元素を含有した炭化物触媒の微粒子を形成することを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項29】
前記遷移金属元素がFe、Co、Niから選ばれた一種以上の元素Aであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともAIn又はASnで表される請求項24〜28のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項30】
前記元素AがFeであり、前記炭化物触媒の組成式が少なくともFeInC0.5又はFeSnCで表される請求項29に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項31】
前記炭化物触媒に他の元素を一種以上添加した請求項24〜30のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項32】
カーボンナノコイル製造用の炭化物触媒又は/及び酸化物触媒を多孔性担体に担持させたことを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項33】
請求項1〜14のいずれかに記載の炭化物触媒を担持させた請求項32に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項34】
請求項15〜22のいずれかに記載の触媒を多孔性担体に担持させたことを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項35】
カーボンナノコイル製造用の遷移金属元素・In・Sn系触媒、遷移金属元素・Al・Sn系触媒、遷移金属元素・Cr・Sn系触媒、遷移金属元素・In系触媒又は遷移金属元素・Sn系触媒を多孔性担体に担持させたことを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項36】
前記遷移金属元素はFe、Co、Niから選択された一種以上の元素である請求項35に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項37】
前記多孔性担体がゼオライト、アルミノ燐酸塩、シリカアルミノ燐酸塩、メソ多孔体、多孔性セラミックス、モレキュラーシーブス、金属酸化物系多孔体、シリカ多孔体又は炭素系多孔体から選択される請求項32〜36のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項38】
請求項32〜37のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、前記カーボンナノコイル製造用の触媒微粒子を溶媒中に分散し、この溶媒中に多孔性担体を浸漬し、多孔性担体の表面又は/及び細孔中に前記触媒微粒子を担持させることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項39】
請求項32〜37のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であり、前記カーボンナノコイル製造用の触媒微粒子を空間に充填又は流通させ、この空間に多孔性担体を配置し、多孔性担体の表面又は/及び細孔中に前記触媒微粒子を担持させることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項40】
触媒微粒子を担持させた多孔性担体を焼成する請求項38又は39に記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項41】
請求項1〜22及び請求項32〜37のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒を反応器内部に配置し、この触媒近傍を原料として使用する炭素化合物ガスが触媒作用により分解する温度以上に加熱し、前記触媒に接触するように前記炭素化合物ガスを流通させて、前記炭素化合物ガスを前記触媒近傍で分解しながら前記触媒表面に外直径が1000nm以下のカーボンナノコイルを成長させることを特徴とするカーボンナノコイル製造方法。
【請求項42】
少なくとも遷移金属元素、Inを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくとも遷移金属元素、In、Cを有する炭化物触媒を形成し、連続して加熱状態下で前記炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させることを特徴とするカーボンナノコイル製造方法。
【請求項43】
少なくとも遷移金属元素、Snを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくとも遷移金属元素、Sn、Cを有する炭化物触媒を形成し、連続して加熱状態下で前記炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させることを特徴とするカーボンナノコイル製造方法。
【請求項44】
少なくとも遷移金属元素、In、Snを含有する触媒前駆物質を加熱状態下で炭素化合物ガスと接触させて少なくとも遷移金属元素、In、Sn、Cを含有する炭化物触媒を形成し、連続して加熱状態下で前記炭化物触媒により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを成長させることを特徴とするカーボンナノコイル製造方法。
【請求項45】
前記カーボンナノコイル製造用触媒の膜又は微粒子膜を基板上に形成し、この触媒により炭素化合物ガスを分解して基板上にカーボンナノコイルを成長させる請求項41〜44のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造方法。
【請求項46】
前記カーボンナノコイル製造用触媒の微粒子を反応槽の中に浮遊させ、この触媒微粒子により炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを浮遊状態で成長させる請求項41〜44のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造方法。
【請求項47】
前記カーボンナノコイル製造用触媒の微粒子を反応槽に堆積させ、この堆積した触媒微粒子を攪拌しながら炭素化合物ガスを分解してカーボンナノコイルを攪拌状態下で成長させる請求項41〜44のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造方法。
【請求項48】
請求項41〜47のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造方法により製造されることを特徴とするカーボンナノコイル。

【国際公開番号】WO2004/105940
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506584(P2005−506584)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007797
【国際出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】