説明

ガス栓

【課題】床や壁に形成された貫通孔内に配置される埋設型ガス栓、特にヒューズ付きの埋設型ガス栓において、貫通孔の内径を小さなもので済むようにする。
【解決手段】流入孔7を上流側の第1孔部4と下流側の第2孔部5とに区分する。第1孔部4は、ガス流出孔9と平行に配置する。第2孔部5は、第1孔部4及びガス流出孔9と直交するように配置する。第1孔部5内には、ヒューズ機構20を設ける。第2孔部5内には、ヒューズ機構20のヒューズ弁23を閉位置から開位置側へ押圧移動させるリセット部材25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁や床等に形成された貫通孔に挿入した状態で用いられる埋設型のガス栓、特にヒューズ機構を有するガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒューズ機構付きの埋設型ガス栓は、下記特許文献1に記載されているように、ガス流入孔及びガス流出孔が形成された栓本体を有している。ガス流入孔及びガス流出孔は互いに直交する方向に延びており、ガス流入孔の下流側の端部がガス流出孔の内周面の上流側の端部に開口させられている。これによって、ガス流入孔とガス流出孔とが互いに連通させられている。
【0003】
ガス流入孔の上流側の端部には、一次側ガス管が接続され、この一次側ガス管からガス流入孔にガスが供給される。一方、ガス流出孔の下流側の端部が開口する栓本体の外面には、プラグ部が形成されている。このプラグ部には、二次側ガス管がソケットを介して接続される。したがって、一次側ガス管から供給されるガスは、ガス流入孔からガス流出孔に流入し、さらにソケット及び二次側ガス管を介してガス機器に供給される。
【0004】
ガス流出孔の内部には、弁体が設けられている。弁体は、閉位置と開位置との間を移動可能である。弁体が閉位置に位置しているときには、ガス流入孔の下流側の開口部、つまりガス流出孔の内周面におけるガス流入孔の開口部が弁体によって閉じられ、ガス流入孔とガス流出孔との間が弁体によって遮断される。これにより、ガス栓が閉状態になる。一方、弁体が閉位置から開位置に移動すると、弁体は、ガス流入孔の下流側の開口部を開く。この結果、ガス流入孔とガス流出孔とが連通し、ガス栓が開状態になる。
【0005】
一方、ガス流入孔の内部には、ヒューズ機構が設けられている。ヒューズ機構は、ガスの流量が過剰になったときにガス流入孔を閉じるためのものであり、ヒューズ弁を有している。ヒューズ弁は、開位置と閉位置との間を移動可能であり、通常時には開位置に位置し、ガス流入孔を開いている。その一方、ガス流入孔内を流れるガスの流量が過剰になると、ヒューズ弁がガスによって開位置から閉位置まで移動させられる。ヒューズ弁が閉位置に移動すると、ガス流入孔が閉じられ、ガスの流通が遮断される。これによって、ガスの流れが止められる。
【0006】
ヒューズ弁は、ガスの過剰流量状態が収まると、通常はばね等によって閉位置から開位置まで移動させられる。ところが、ヒューズ弁は、ガスの過剰流量状態が収まっても閉位置に留まってしまうことがある。ヒューズ弁が閉位置に留まると、ガス栓が使用不能になってしまう。
【0007】
そこで、ガス流入孔の内部には、リセット部材が設けられている。リセット部材は、ヒューズ機構より下流側に配置されており、許容位置と阻止位置との間を移動可能になっている。リセット部材は、弁体が開位置に位置しているときには許容位置に位置している。その一方、弁体が開位置から閉位置まで移動するときには、弁体によって許容位置から阻止位置まで移動させられる。
【0008】
いま、ヒューズ弁が閉位置に留まっているものとする。このときには、弁体が開位置に位置し、かつリセット部材が許容位置に位置している。したがって、弁体を開位置から閉位置まで移動させると、リセット部材が許容位置から阻止位置まで移動させられる。リセット部材は、許容位置から阻止位置への移動途中にヒューズ弁を閉位置から開位置側へ移動させる。ヒューズ弁は、一旦閉位置から開位置側へ移動すると、ばね等によって開位置まで移動させられる。これにより、ガス栓が元の状態に戻る。
【0009】
上記構成のガス栓は、床又は壁に設けられた貫通孔内に挿入状態で配置される。この場合、ガス栓は、ガス流出孔の軸線が貫通孔の軸線と平行になるように配置される。したがって、ガス流入孔は、その長手方向を貫通孔の軸線と直交する方向に向けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平1−65491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来のガス栓においては、ガス流入孔の内部にヒューズ機構及びリセット部材が設けられている。このため、ガス流入孔の長さが長くなり、これに対応してガス流入孔の長手方向における栓本体の寸法が大きくなる。ここで、ガス栓は、上記のように、ガス流入孔の長手方向が貫通孔の軸線と直交する方向、つまり径方向に向くように配置されている。このため、ガス流入孔の長手方向における栓本体の寸法が大きくなると、それに対応して床や壁に形成する貫通孔の直径を大きくしなければならないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、内部にガス流入孔及びガス流出孔が形成され、上記ガス流入孔の下流側の端部が上記ガス流出孔の内周面に開口する栓本体と、上記ガス流入孔内に設けられヒューズ機構と、このヒューズ機構より下流側の上記ガス流入孔内に設けられリセット部材と、上記ガス流出孔に閉位置と開位置との間を移動可能に設けられ、上記閉位置に位置しているときには、上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を閉じ、上記開位置に位置しているときには、上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を開く弁体とを備え、上記ヒューズ機構が、上記ガス流入孔を開いた開位置と、上記ガス流入孔を閉じた閉位置との間を移動可能であるヒューズ弁を有し、上記閉位置が上記開位置より上記ガス流入孔の下流側に設定され、上記リセット部材が、上記ヒューズ弁が上記閉位置に移動することを許容する許容位置と、上記ヒューズ弁が上記閉位置に移動することを阻止する阻止位置との間を移動可能とされ、上記弁体の上記開位置から閉位置への移動によって上記リセット部材が上記許容位置から上記阻止位置まで移動させられ、上記リセット部材の上記許容位置から上記阻止位置への移動に伴って上記ヒューズ弁が上記閉位置から開位置側へ移動させられるガス栓において、上記ガス流入孔が、上記ヒューズ機構が設けられた上流側部分と、上記リセット部材が設けられた下流側部分とに区分され、上記上流側部分が上記ガス流出孔とほぼ平行に配置され、上記下流側部分が上記上流側部分及び上記ガス流出孔と交差するように配置されていることを特徴としている。
この場合、上記上流側部分の下流側の端部には、上記リセット部材の許容位置から阻止位置側への移動によって弾性的に変位させられる変位部材が設けられ、この変位部材には、上記変位に伴って上記ヒューズ弁に突き当たり、上記ヒューズ弁を上記閉位置から上記開位置側へのみ押す押圧部が設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有するこの発明によれば、ガス流入孔がガス流出孔と平行な上流側部分と、ガス流出孔と交差する方向に延びる下流側部分とに区分し、上流側部分にはヒューズ機構を配置し、下流側部分にはリセット部材だけを配置しているから、貫通孔の径方向におけるガス流入孔の長さを上流側部分の長さの分だけ短くすることができる。したがって、貫通孔の内径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明の第1実施の形態を、弁体が閉位置に位置している状態で示す断面図である。
【図2】図2は、図1の要部の拡大断面図である。
【図3】図3は、同実施の形態を、弁体が開位置に位置している状態で示す断面図である。
【図4】図4は、図3の要部の拡大断面図である。
【図5】図5は、同実施の形態を、弁体が開位置に位置し、かつヒューズ弁が閉位置に位置している状態で示す断面図である。
【図6】図6は、図5の要部を示す拡大断面図である。
【図7】図7は、この発明の第2実施の形態を、弁体が閉位置に位置している状態で示す断面図である。
【図8】図8は、同実施の形態を、弁体が開位置に位置している状態で示す断面図である。
【図9】図9は、同実施の形態を、弁体が開位置に位置し、かつヒューズ弁が閉位置に位置している状態で示す断面図である。
【図10】図10は、同実施の形態において用いられている力伝達部材を示す図であって、図10(A)はその平面図、図10(B)はその側面図、図10(C)は図10(A)のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図6は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態のガス栓1は、埋設型のガス栓にこの発明を適用したものであり、床Fに形成された断面円形の貫通孔Fa内に配置される。勿論、この発明は、壁に形成される貫通孔内に配置される埋設型ガス栓にも適用可能である。
【0016】
ガス栓1は、取付部材2を有している。取付部材2は、上部(以下、上下左右は図面上における上下左右を意味するものとする。勿論、この発明はそれらの方向に限定されるものではない。)が開口した容器状をなしており、上端部にはフランジ部2aが形成されている。このフランジ部2aは、貫通孔Faに隣接する床Fの上面に押し付けられている。そして、その状態で取付部材2が床Fに固定されている。取付部材2の開口部及びフランジ部2aは、化粧蓋Lによって閉じられている。取付部材2の底部の左端部には、当該底部を上下に貫通する挿通孔2bが形成されている。
【0017】
取付部材2には、ガス栓1の栓本体3が着脱可能に取り付けられている。栓本体3は、互いに別体である本体部3Aと接続部3Bとによって構成されている。本体部3Aと接続部3Bとは一体に形成してもよい。つまり、栓本体3を複数の部分に分けることなく、栓本体3全体を一体に形成してもよい。
【0018】
本体部3Aは、第1部分3C、第2部分3D及び第3部分3Eを有している。第1部分3Cは、その長手方向を上下方向に向けて配置されており、挿通孔2bに挿通されている。第2部分3Dは、その長手方向を左右方向に向けて配置されており、その長手方向の中央部が第1部分3Aの上端部に一体に設けられている。第3部分3Eは、その長手方向を上下方向に向けて配置されており、その下端部が第2部分3Dの右端部に一体に設けられている。
【0019】
接続部3Bは、その長手方向を上下方向に向けて配置されている。接続部3Bの上端部は、本体部3Aの第1部分3Cの下端部に取り付けられている。
【0020】
本体部3Aの第1部分3C及び接続部3Bには、第1孔部(ガス流入孔の上流側部分)4が形成されている。第1孔部4は、接続部3Bの長手方向(上下方向)に沿ってその下端面から第1部分3Cの上端部まで延びている。
【0021】
本体部3Aの第2部分3Dには、第2孔部(ガス流入孔の下流側部分)5が形成されている。この第2孔部5は、第2部分3Dの長手方向(左右方向)に沿ってその左端面から右端部まで延びている。第2孔部5の左端開口部は、蓋体6によって閉じられている。第2孔部5の右端部には、小径部5aが形成されている。
【0022】
第2孔部5の内周面には、第1孔部4の上端部が開口させられている。したがって、第1孔部4と第2孔部5とは、互いに連通しており、第1孔部4及び第2孔部5によってガス流入孔7が構成されている。換言すれば、ガス流入孔7は、上下方向、つまり貫通孔Faの軸線と平行な方向に延びる第1孔部4と、左右方向、つまり第1孔部3C及び貫通孔Faの軸線と直交する方向に延びる第2孔部5とに区分されているのである。
【0023】
第1孔部4の下端部(ガス流入孔7の上流側の端部)には、フレキシブルガス管用の接続装置8が設けられている。この接続装置8によりフレキシブルガス管からなる一次側ガス管(図示せず)がガス流入孔7に接続されている。そして、一次側ガス管からガス流入孔7にガスが供給される。接続装置8は、周知のものであるので、その構造の詳細な説明は省略する。ガス流入孔7には、鉄製のガス管等の剛性を有するガス管を接続してもよい。その場合には、接続装置8に代えて他の接続手段、例えば螺合等の接続手段が採用される。
【0024】
本体部3Aの第3部分3Eには、ガス流出孔9が形成されている。このガス流出孔9は、上下方向(第3部分3Eの長手方向)に沿ってその下端面から上端面まで延びている。ガス流出孔9の下端開口部は、蓋体10によって閉じられている。ガス流出孔9の下端部(上流側の端部)の内周面には、第2孔部5の小径部5a(ガス流出孔7の下流側の端部)が開口させられている。したがって、ガス流出孔9は、ガス流入孔7と連通しており、一次側ガス管から供給されるガスがガス流入孔7を通ってガス流出孔9の下端部に流入する。
【0025】
第3部分3Eには、球体11がその一部をガス流出孔9の内部に突出させた状態で埋設されている。この球体11は、第2孔部5と対向するように、つまり第2孔部5の延長上に位置するように配置されている。球体11は、必ずしもそのように配置する必要がなく、第2孔部5の開口部からガス流出孔9の周方向へ離間した箇所であれば、他の箇所に配置してもよい。
【0026】
ガス流出孔9の上端部(下流側の端部)には、上方へ向かって縮径するテーパ状の弁座9aが形成されている。また、ガス流出孔9の上端部が開口する第3部分3Eの上部には、プラグ部12がその軸線をガス流出孔9の軸線と一致させた状態で形成されている。このプラグ部12は、日本工業規格JIS S 2120によって規定された形状、寸法を有している。
【0027】
ガス流出孔9の内部には、主弁体(弁体)13及び副弁体14がガス流出孔9の長手方向へ摺動可能に設けられている。主弁体13は、ガス流出孔9の下流側に配置されている。副弁体14は、主弁体13よりガス流出孔9の上流側に配置されている。主弁体13は、第1ばね15Aによって常時上方へ付勢されており、主弁体13の上端面が副弁体14の下端面に押し付けられている。これにより、主弁体13と副弁体14とが、通常時は一緒に上下方向へ移動するようになっている。
【0028】
主弁体13及び副弁体14が第1ばね15Aによって上方へ移動させられると、図1に示すように、副弁体14の上端部に形成された弁部14aが弁座9aに着座する。すると、主弁体13及び副弁体14がそれ以上上方へ移動することができなくなって停止する。このときの主弁体13及び副弁体14の位置が閉位置である。主弁体13が閉位置に位置すると、主弁体13の外周面がガス流出孔9の内周面における小径部5aの開口部(ガス流入孔7の開口部)を覆う。これにより、ガス流入孔7とガス流出孔9との間が主弁体13によって遮断され、ガス栓1が閉状態になる。
【0029】
主弁体13には、スリット13aが形成されている。このスリット13aには、ガス流出孔9の内周面から突出した球体11の一部が上下方向へは相対移動可能に、主弁体13の周方向へは移動不能に係合している。したがって、主弁体13は、上下方向へは移動可能であるが、周方向へは回動不能である。これにより、主弁体13の周方向の位置が一定に維持され、主弁体13が閉位置に移動したときには、主弁体13の外周面がガス流入孔7の開口部を確実に覆うように構成されている。
【0030】
また、副弁体14が閉位置に位置しているときには、上記のように、副弁体14の弁部14aが弁座9aに着座する。これによって、ガス流出孔9が閉じられ、ガス栓1の閉状態がより高度に保たれる。
【0031】
図3及び図5に示すように、プラグ部12にソケットSが外挿されると、ソケットSの内部に設けられた押しロッドSaが副弁体14の弁部14aを下方へ押し、副弁体14及び主弁体13を第1ばね15Aの付勢力に抗して閉位置から下方へ移動させる。ソケットSが所定の接続位置、つまりプラグ部12に接続固定される位置まで外挿されると、ソケットSが停止し、それに伴って主弁体13及び副弁体14が停止する。このときの主弁体13及び副弁体14の位置が開位置である。主弁体13が開位置に位置すると、ガス流出孔9の内周面におけるガス流入孔7(小径部5a)の開口部が開かれる。この結果、ガス流入孔7とガス流出孔9とが連通し、ガス流入孔7からガス流出孔9にガスが流入する。しかも、副弁体14が開位置に位置しているときには、その弁部14aが弁座9aから下方へ離間してガス流出孔9を開いている。したがって、ガス流出孔9に流入したガスは、ソケットS及びそれに接続された二次側ガス管(図示せず)を介してガス器具に供給される。
【0032】
主弁体13が閉位置から開位置側へ向かって所定距離だけ移動した後は、主弁体13が第1ばね15Aに加えてもう一つの第1ばね15Bによっても開位置側から閉位置側へ向かって付勢される。これは、ソケットSをプラグ部12から取り外したときに、主弁体13を開位置から閉位置側へ確実に移動させるためのものである。第1ばね15Aだけで主弁体13を閉位置から開位置側へ十分に移動させることができるときには、第1ばね15Bは不要である。なお、ソケットSは、化粧蓋Lに設けられた操作片Laを下方へ押すことによってプラグ部12から取り外すことができる。この構造は、周知であるのみならず、この発明との関連もないのでその詳細な説明を省略する。
【0033】
二つの第1ばね15A,15Bを設けているにも関わらず、ソケットSをプラグ部12から取り外したときに、何らかの事故によって主弁体13が閉位置に留まったり、開位置への移動途中に止まってしまうことがある。そのような場合でもガスがガス流出孔9から流出することを防止するために、主弁体13と副弁体14との間には第2ばね16が設けられている。第2ばね16は、副弁体14を常時閉位置側へ付勢している。したがって、主弁体13が閉位置において又は開位置に達する以前に止まってしまったとしても、副弁体14が第2ばね16によって弁座9aに着座させられる。よって、ガスがガス流出孔9から漏れることを確実に防止することができる。なお、第2のばね16の付勢力は、主弁体13及び副弁体14が閉位置と開位置との間のいずれの位置に位置しているときにおいても、第1のばね15Aの付勢力より弱くなっているように設定されている。したがって、主弁体13が第2のばね16によって閉位置側から開位置側へ移動させられることはない。
【0034】
図2、図4及び図6に示すように、ガス流入孔7の上流側部分である第1孔部4の内部には、ヒューズ機構20が設けられている。ヒューズ機構20は、ガス流入孔7内のガスの流量が過剰になったときに、ガス流入孔7を緊急に閉じるためのものであり、ケーシング21を有している。ケーシング21は、筒状をなしており、その軸線を第1孔部4の軸線と一致させた状態で第1孔部4嵌合固定されている。ケーシング21の外周面と第1孔部4の内周面との間は、Oリング等のシール部材22によって閉じられている。したがって、ガス流入孔7のうちのケーシング21が設けられた部位においては、ガスがケーシング21内を流れる。
【0035】
ケーシング21の内部には、ヒューズ弁23が上下方向へ移動可能に設けられている。ヒューズ弁23は、軸部23a及び弁部23bを有している。軸部23aは、その軸線をケーシング21の軸線と一致させた状態で配置されている。軸部23aの上下の両端部は、ケーシング21の上下の両端部に設けられたガイド孔21a,21bに上下方向へ摺動可能に挿通されている。弁部23bは、軸部23aの中間部に一体に設けられている。弁部23bは、コイルばね等からなるヒューズばね24によって下方へ付勢されている。そして、図2及び図4に示すように、ケーシング21の下端部に設けられた受け部21cに突き当たって停止している。このときのヒューズ弁23の位置が開位置である。ヒューズ弁23が開位置に位置しているときには、ガスがガス流入孔7及びケーシング21内を所定の流量をもって流通可能である。
【0036】
ヒューズ弁23をヒューズばね24の付勢力に抗して開位置から所定の位置まで上方へ移動させると、図6に示すように、弁部23bがケーシング21の内周面に形成されたテーパ状の弁座21dに着座して停止する。このときのヒューズ弁23の位置が閉位置である。ヒューズ弁23が閉位置に位置しているときには、弁部23bが弁座21dに着座することによってガス流入孔7が閉じられる。したがって、弁部23bが弁座21dに着座すると、主弁体13及び副弁体14が開位置に位置していたとしても、ガスがガス流出孔9から外部に流出することがない。
【0037】
ヒューズ弁23が閉位置に位置しているときには、軸部23aの上端部が第1孔部4の上端部を通過して第2孔部5内に所定の距離だけ突出している。軸部23aの上端面は、軸部23aの軸線と直交する平面によって形成されているが、軸部23aの軸線上に曲率中心を有する球面又は円弧面その他の上方に向かって突出する凸曲面によって構成してもよい。
【0038】
ガス流入孔7内をガスが流れているときには、ヒューズ弁23より上側の圧力が下側の圧力より低くなっており、その差圧によってヒューズ弁23が上方へ押される。ガス流入孔7内を流れるガスの流量が所定の流量を越えて過流量状態になると、差圧に起因する上方への押圧力により、ヒューズ弁23がその自重及びヒューズばね24の付勢力に抗して上方へ移動させられて弁座21dに着座する。換言すれば、ヒューズばね24の付勢力は、ガス流入孔7内のガスの流量が所定の流量を越えたときのガスの押圧力とヒューズ弁23の自重との差に等しい大きさに設定されている。なお、過流量状態時の差圧による押圧力とヒューズ弁23の自重とを等しくする場合には、ヒューズばね24が不要である。ただし、ガス流入孔7の長手方向が水平方向を向くようにガス栓1が配置される場合には、ヒューズばね24が必須である。そのような場合には、ヒューズ弁23の自重が閉位置から開位置側へ移動させる力として作用しないからである。
【0039】
第2孔部5の内部には、リセット部材25が左右方向(第2孔部5の長手方向)へ摺動可能に設けられている。リセット部材25の右端部には、小径の軸状をなす当接部25aが一体に設けられている。この当接25aは、第2孔部5の小径部5aに摺動可能に挿入されている。ただし、小径孔部5aの内周面と当接部25aの外周面との間の周方向における1ないし複数個所には、隙間(図示せず)が形成されている。そして、この隙間を通ってガスが抵抗なく流れることができるようになっている。
【0040】
リセット部材25は、リセットばね26によって常時右方へ付勢されている。それにより、主弁体13が閉位置に位置しているときには、図2に示すように、軸部25aの先端部が主弁体13の外周面に突き当たり、リセット部材25が停止している。このときのリセット部材25の位置が阻止位置である。リセット部材25が阻止位置に位置しているときには、リセット部材25の左端面がヒューズ弁23の軸部23aより左側に位置している。したがって、ヒューズ弁23が上方へ移動すると、軸部23aの上端面がリセット部材25に突き当たる。しかも、軸部23aは、弁部23bが弁座21dに着座する前にリセット部材25に突き当たる。したがって、リセット部材25が阻止位置に位置しているときには、ヒューズ弁23が上方へ移動したとしても弁座21dに着座することがない。
【0041】
図4及び図6に示すように、主弁体13が開位置に移動すると、小径部5aの開口部を覆っていた主弁体13の外周面が小径部5aから下方へ離間する。したがって、当接部25aが小径部5a内を右方へ移動可能になり、リセット部材25がリセットばね26によって右方へ移動させられる。リセット部材25の右端面が第2孔部5の内周面に形成された当接面5bに突き当たると、リセット部材25がそれ以上右方へ移動することができなくなって停止する。このときのリセット部材25の位置が許容位置である。リセット部材25が許容位置に位置しているときには、リセット部材25の左端面がヒューズ弁23の軸部23aより右側に位置している。したがって、ヒューズ弁23は、その弁部23bが弁座21dに着座するまで上方へ移動可能である。
【0042】
上記のように、リセット部材25が許容位置に位置しているときには、当接部25aの先端部が小径部5aからガス流出孔9内に突出している。ガス流出孔9内に突出した当接部25aの先端部には、第1カム面25bが形成されている。この第1カム面25bは、上方へ向かうにしたがって右方へ向かう右上がりの傾斜面として形成されている。しかも、主弁体13が開位置から閉位置側へ移動するときには、主弁体13が第1カム面25bに突き当たるように配置されている。したがって、主弁体13が開位置から閉位置側へ移動すると、主弁体13が第1カム面25bに突き当たることにより、リセット部材25がリセットばね26の付勢力に抗して許容位置から阻止位置まで移動させられる。
【0043】
上記のように、リセット部材25が阻止位置に位置しているときには、リセット部材25の後端部の下部がヒューズ弁23の軸部23aと上下に対向している。リセット部材25の軸部23aとの対向部分には、第2カム部25cが形成されている。この第2カム部25cは、左方へ向かうにしたがって上方へ向かう左上がりの傾斜面として形成されている。しかも、第2カム部25cは、ヒューズ弁23が閉位置に位置している状態において、リセット部材25が許容位置から阻止位置まで移動するときに軸部23aの上端面に突き当たるように配置されている。したがって、リセット部材25が許容位置から阻止位置側へ移動すると、第2カム部25cが軸部23aを下方へ向かって押し、ヒューズ弁23を閉位置から下方へ移動させる。よって、ヒューズ弁23の弁部23bが弁座21dに食い付いてヒューズ弁23が閉位置に留まっていたとしても、主弁体13が開位置から閉位置まで移動することによって、ヒューズ弁23を閉位置から下方へ移動させることができる。ヒューズ弁23が閉位置から下方へ移動すると、その後はヒューズばね24によって開位置まで戻される。
【0044】
上記構成のガス栓1においては、ガス流入孔7全体がガス流出孔9と直交する方向に延びることなく、ガス流出孔9と平行に延びる第1孔部4と、ガス流出孔9と直交する方向に延びる第2孔部5とに区分されている。そして、ガス流出孔9と直交する方向に延びる第2孔部5には、リセット部材25が配置されているだけであり、ヒューズ機構20はガス流出孔9と平行に延びる第1孔部4に配置されている。したがって、第2孔部5の長手方向における栓本体3の長さ、つまり貫通孔Fa径方向における栓本体3の長さを短くすることができ、その分だけ貫通孔Faの内径を小さくすることができる。
【0045】
特に、床Fの厚さが厚い場合には、従来のガス栓であるとガス流入孔の上流側の開口部が貫通孔の内周面と対向する。このため、ガス流入孔の開口部と貫通孔の内周面との間には、ガス管を接続するためのスペースが必要になり、その分だけ貫通孔の内径をさらに大きくしなければならなくなる。この点、ガス栓1においては、ガス流入孔7が貫通孔Faの軸線と平行に延びており、ガス流入孔7の上流側の開口部が貫通孔Faの内周面と対向することがない。したがって、貫通孔Faの内周面と栓本体3との間にガス管を接続するためのスペースが不要である。よって、貫通孔Faの内径を小さくすることができる。
【0046】
図7〜図10は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のガス栓1′においては、図7〜図9に示すように、リセット部材25とヒューズ弁23の軸部23aとの間に押圧補助部材27が設けられている。
【0047】
図10に示すように、押圧補助部材27は、筒部27aを有している。この筒部27aは、その軸線を第1孔部4の軸線と一致させた状態で第1孔部4の上端部(下流側の端部)に配置されている。筒部27aの上端面は、第1孔部4の上端縁と上下方向において同一位置か若干下側に位置させられている。筒部27aの下端部には、環状突出部27bが形成されている。この環状突出部27bは、第1孔部4の下流側の端部に形成された環状の挟持面4aとケーシング21の上端面とによって挟持されている。これにより、押圧補助部材27が第1孔部4の上端部に固定されている。
【0048】
筒部27aの上端面には、当該上端面から上方に起立する当接板部27cが一体に設けられている。この当接板部27cは、筒部27aの左側の端部に配置されており、第2孔部5の左端部を閉じる蓋体6の右端面に接触している。これにより、押圧補助部材27が左方へ移動することが阻止されている。
【0049】
筒部27aの上端面には、変位部(変位部材)27dが設けられている。変位部27dは、筒部27aの右端部に配置されており、左方へ向かうにしたがって上方へ向かうよう左上がりに傾斜させられている。変位部27dは、ほぼ水平になるまで反時計方向へ回動変位可能である。このような回動変位は、変位部27dの基端部が弾性変形することによって達成される。したがって、水平になった変位部27dを自由に挙動することができるようにすると、変位部27dはそれ自体の弾性によって元の傾斜状態に戻る。
【0050】
変位部27dは、第2孔部5内に突出している。しかも、変位部27dは、主弁体13が開位置に位置するとともに、リセット部材25が許容位置に位置しているときには、第2カム面25cにほぼ接触している。つまり、第2カム面25cに接触するか、僅かに左方へ離間している。したがって、主弁体13が開位置から閉位置側移動し、それに伴ってリセット部材25が許容位置から阻止位置側へ移動すると、変位部27dが第2カム面25cによって左方へ押され、水平な状態になるまで反時計方向へ回動させられる。勿論、主弁体13が開位置に移動するとともに、リセット部材25が許容位置に移動すると、変位部27dがそれ自体の弾性によって元の状態に戻る。
【0051】
変位部27dの先端部(上端部)には、押圧部27eが形成されている。押圧部27eは、変位部27dの上端部を円弧状に巻回することによって形成されている。しかも、押圧部27eは、ヒューズ弁23の軸部23aの上端面の上方に位置するように配置されており、押圧部27eを構成する円弧面の曲率中心は、軸部23aの軸線及び第2孔部5の軸線と直交する線、又はその線上と平行な線上に配置されている。さらに、押圧部27eは、ヒューズ弁23が閉位置に位置しているときには、押圧部27eの下部が軸部23aの上端面にほぼ接触するように配置されている。つまり、軸部23aの上端面に接触するか、僅かに上方に離間するように配置されている。したがって、ヒューズ弁23が閉位置に位置している状態において、変位部27dがリセット部材25によって反時計方向へ回動させられると、押圧部27eが軸部23aの上端面に突き当たり、ヒューズ弁23を閉位置から下方へ移動させる。なお、その他の構成は、上記実施の形態と同様であり、同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
この実施の形態のガス栓1′においては、軸部23aを下方へ押す押圧部27eが円弧状をなしているので、軸部23aを下方へ押すときに、軸部23aが折れ曲がることを防止することができる。すなわち、先の実施の形態のガス栓1においては、傾斜面からなる第2カム面25cが軸部23aの上端面に直接接触しているので、第2カム面25cは、軸部23aを下方へ押すと同時に左方へも押す。この左方への押圧力により、軸部23aの上端部が左側に折り曲げられるおそれがある。しかるに、この実施の形態のガス栓1′においては、軸部23aの上端面を下方へ押す押圧部27eが円弧状をなしており、その曲率中心が軸部23aの軸線と直交する線又はその線と平行な線上に配置されているので、押圧部27eは軸部23aを下方へ押すだけであり、左方へ押すことがない。したがって、軸部23aが左側に折れ曲がるような事態を確実に防止することができる。
【0053】
ここで、押圧部27eは、変位部23dが反時計方向へ回動するのに伴って軸部23aの上端面上を左方へ向かって摺動する。この結果、押圧部27eと軸部23aの上端面との間に摩擦抵抗が発生する。しかし、この摩擦抵抗は、第2カム面25cが軸部23aを直接左方へ押すときの押圧力より大幅に小さい。したがって、軸部23aが摩擦抵抗によって左側に折り曲げられることはない。
【0054】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、種々の変形例を採用可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、第1孔部4内にケーシング21を設け、このケーシング21にヒューズ弁23を設けているが、ヒューズ弁23を第1孔部4に直接設けてもよい。その場合には、ヒューズ弁23の弁部23bが着座する弁座を第1孔部4の内周面に形成する。さらに、ヒューズ機構20に代えて他の周知のヒューズ機構を採用してもよい。
また、上記の実施の形態においては、変位部材としての変位部27dを押圧補助部材27の一部として設けているが、変位部27dだけ変位部材とし、その基端部を第1孔部4の上端部、つまり第1孔部4と第2孔部5との交差部、若しくはその近傍に固定し、先端部(上端部)を第2孔部5に突出させてもよい。
さらに、上記の実施の形態においては、変位部27dの先端部を円弧状に巻回することによって押圧部27eを形成しているが、押圧部27eを平板状に形成してもよい。その場合には、平板状をなす押圧部27eが閉位置に位置しているヒューズ弁23の軸部23aの上端面に面接触するように、変位部27dの先端部をほぼ水平になるように折り曲げることによって押圧部27eが形成される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明に係るガス栓は、床や壁に形成された貫通孔内に配置される埋設型ガス栓、それもヒューズ機構を有するガス栓として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ガス栓
1′ ガス栓
3 栓本体
4 第1孔部(ガス流入孔の上流側部分)
5 第2孔部(ガス流入孔の下流側部分)
7 ガス流入孔
9 ガス流出孔
13 主弁体(弁体)
20 ヒューズ機構
23 ヒューズ弁
25 リセット部材
27d 変位部(変位部材)
27e 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス流入孔及びガス流出孔が形成され、上記ガス流入孔の下流側の端部が上記ガス流出孔の内周面に開口する栓本体と、上記ガス流入孔内に設けられヒューズ機構と、このヒューズ機構より下流側の上記ガス流入孔内に設けられリセット部材と、上記ガス流出孔に閉位置と開位置との間を移動可能に設けられ、上記閉位置に位置しているときには、上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を閉じ、上記開位置に位置しているときには、上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を開く弁体とを備え、上記ヒューズ機構が、上記ガス流入孔を開いた開位置と、上記ガス流入孔を閉じた閉位置との間を移動可能であるヒューズ弁を有し、上記閉位置が上記開位置より上記ガス流入孔の下流側に設定され、上記リセット部材が、上記ヒューズ弁が上記閉位置に移動することを許容する許容位置と、上記ヒューズ弁が上記閉位置に移動することを阻止する阻止位置との間を移動可能とされ、上記弁体の上記開位置から閉位置への移動によって上記リセット部材が上記許容位置から上記阻止位置まで移動させられ、上記リセット部材の上記許容位置から上記阻止位置への移動に伴って上記ヒューズ弁が上記閉位置から開位置側へ移動させられるガス栓において、
上記ガス流入孔が、上記ヒューズ機構が設けられた上流側部分と、上記リセット部材が設けられた下流側部分とに区分され、上記上流側部分が上記ガス流出孔とほぼ平行に配置され、上記下流側部分が上記上流側部分及び上記ガス流出孔と交差するように配置されていることを特徴とするガス栓。
【請求項2】
上記上流側部分の下流側の端部には、上記リセット部材の許容位置から阻止位置側への移動によって弾性的に変位させられる変位部材が設けられ、この変位部材には、上記変位に伴って上記ヒューズ弁に突き当たり、上記ヒューズ弁を上記閉位置から上記開位置側へのみ押す押圧部が設けられていることを特徴とするガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−112502(P2012−112502A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264087(P2010−264087)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000167325)光陽産業株式会社 (69)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】