説明

ガス遮断弁

【課題】弁体部1と弁駆動部2とを有し、弁駆動部2の弁駆動用モータ5の駆動により回転力伝達機構6を介してボールバルブ4を開閉するガス遮断弁において、フォトセンサ9A,9Bに異常があっても、確実に全閉状態、全開状態で停止する。
【解決手段】回転力伝達機構6の大歯車62に切欠き部622を形成する。上ケース部2Bの内壁に、切欠き部622内に位置するボス部21を形成する。大歯車62の段部621A,621Bをフォトセンサ9A,9Bで検出すると弁駆動用モータ5を停止して、全開位置、全閉位置で停止する。フォトセンサ9A,9Bの検出信号によって停止しなかった場合、切欠き部622の当接面622Aまたは622Bがボス部21に当接して、強制停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断弁に係り、具体的には、ガス漏れなどの異常が発生した場合にガスの供給を遮断するガス遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス遮断弁として、ガス配管に接続されてガスの供給及び遮断を行うボールバルブ等の遮断弁を内蔵した弁体部と、この弁体部の遮断弁を回転駆動する駆動機構を内蔵した弁駆動部とを備えたものがある。図6は従来のガス遮断弁の駆動部の一例を示す図であり、この駆動機構は弁駆動用モータ10の主軸10aに小歯車20を固定し、この小歯車20に歯合する大歯車30を駆動軸40に固定したものである。この駆動軸40は図示いない連結手段等を介して弁体部の遮断弁に連結されている。そして、弁駆動用モータ10の駆動により、遮断弁が略90度の範囲で回転され、弁が全開状態となる全開位置と全閉状態となる全閉位置とに切り換えられる。
【0003】
また、駆動部内には大歯車30に近接する第1,第2のフォトセンサ50A,50Bが配設されており、大歯車30にはその周囲に段部30A,30Bが形成されている。そして、第1のフォトセンサ50Aは一方の段部30Aを検出することで遮断弁が全閉位置となったことを検出し、第2のフォトセンサ50Bは他方の段部30Bを検出することで遮断弁が全開位置となったことを検出する。これらの検出信号は図示しないマイコン等に入力され、それぞれ弁駆動用モータを停止する。なお、フォトセンサは位置検出素子であり、この位置検出素子としてリミットスイッチを用いたものもある。
【0004】
なお、本発明に関連する文献公知発明のうち、出願人が当該特許出願時に知っているものがないので、開示すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のガス遮断弁では、位置検出素子および制御部により遮断弁の全開位置、全閉位置を検出して弁駆動用モータの停止制御を行っているが、位置検出素子に異常が発生したりマイコン制御に異常が発生すると、遮断弁を確実に全開状態あるいは全閉状態にすることができなくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、ガス遮断弁において、遮断弁の全開位置及び全閉位置を検出する位置検出素子の異常、あるいは制御の異常が発生しても、全開状態あるいは全閉状態を確実に保持できるフェイルセーフ機能を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のガス遮断弁は、ガス配管に接続されてガスの供給及び遮断を行う遮断弁を内蔵した弁体部と、該弁体部の遮断弁を回転駆動して弁を開閉する弁駆動部とを備えるとともに、前記弁駆動部は、弁駆動用モータと、該弁駆動用モータの回転力を前記遮断弁に伝達する回転力伝達機構と、前記遮断弁の回転範囲における全開位置と全閉位置を検出する位置検出手段とを備え、前記弁駆動用モータを正逆回転することにより前記遮断弁の全開位置と全閉位置とを切り換えるとともに、前記位置検出手段の位置検出信号に基づいて該全開位置及び全閉位置で前記弁駆動用モータの駆動停止制御を行うガス遮断弁であって、前記遮断弁の全開位置と全閉位置との間の正常回転範囲の範囲外で、かつ全開位置と全閉位置とにそれぞれ隣接する回転位置にて、前記回転力伝達機構の回転を強制停止するストッパ機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2のガス遮断弁は、請求項1に記載のガス遮断弁であって、前記回転力伝達機構が、前記弁駆動用モータの主軸に固定された小歯車と、前記遮断弁に連結された駆動軸に固定されるとともに該小歯車に歯合される大歯車とで構成され、前記ストッパ機構は、前記大歯車の周縁に形成された切欠き部と、該切欠き部内に突出して該切欠き部の回転円周方向の端部の当接面に当接するボス部とで構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3のガス遮断弁は、請求項2に記載のガス遮断弁であって、前記ボス部を、前記弁駆動部のケース部内部に該ケースと一体に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のガス遮断弁によれば、位置検出素子の異常や制御の異常が発生しても、ストッパ機構により、遮断弁の全開状態あるいは全閉状態を確実に保持することができる。
【0011】
請求項2のガス遮断弁によれば、請求項1の効果に加えて、回転力伝達機構の大歯車の周縁に形成した切欠き部の当接面にボス部が当接して駆動軸を停止するので、ボス部に当接するときの力が小さくなり、確実に停止することができる。
【0012】
請求項3のガス遮断弁によれば、請求項1または2の効果に加えて、ボス部を弁駆動部のケースの形成時に同時に形成することができ、また、大歯車の加工のみでよいので、低コストとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態のガス遮断弁の一部破断正面図、図2は図1におけるA−A断面図であり、同図は遮断弁の全開状態を示している。この実施形態のガス遮断弁は、弁体部1と弁駆動部2とで構成されている。
【0014】
弁体部1は、管状の弁ハウジング3を有している。この弁ハウジング3には、図示しないガス管がネジ接続されるテーパーネジからなる第1ポート31と第2ポート32が形成されており、この第1ポート31と第2ポート32との間には、弁室33と管路34が形成されている。弁室33の第1ポート31側及び管路34側には弁座35,35が配設されており、この弁室33内には、「遮断弁」としてのボールバルブ4が弁座35,35に密接するように配設されている。そして、ボールバルブ4の従動軸41が、弁ハウジングに設けられた図示しない軸受けにより軸支され、この従動軸41の端部が弁ハウジング3の外側に露出されている。なお、弁ハウジング3には、弁駆動部2を取り付けるための取付座3Aが形成されている。
【0015】
ボールバルブ4は球体の中心に導通路4aを有しており、従動軸41を回転軸として弁室33内で略90度回転することにより、全開状態と全閉状態とが切り換わる。すなわち、導通路4aの中心軸を弁ハウジング3の中心軸と平行にした状態では、導通路4aを介して第1ポート31と管路34とが導通し、弁の全開状態となる。また、導通路4aの中心軸を弁ハウジング3の中心軸と交差(略直交)するようにした状態では、ボールバルブ4自体により第1ポート31と管路34とが閉塞され、弁の全閉状態となる。
【0016】
弁駆動部2は、弁駆動用モータ5を内蔵した下ケース部2Aと、回転力伝達機構6と図示しないマイコン等の制御回路を内蔵した上ケース部2Bとを有している。弁駆動用モータ5は下ケース部2A内でその主軸51を上ケース部2B内に突出させている。上ケース部2A内の回転力伝達機構6は互いに歯合する小歯車61と大歯車62とで構成されており、小歯車61は弁駆動用モータ5の主軸51に取り付けられ、大歯車62は軸受け22で軸支された駆動軸7に取り付けられている。そして、この駆動軸7は、上ケース部2Bから弁体部1側に露出され、この駆動軸7は連結ピン8によってボールバルブ4の従動軸41に連結されている。
【0017】
なお、弁駆動部2の修理や交換等を行うときは、この弁駆動部2を取り外す。このときは、連結ピン8を引き抜いて、弁駆動部2側の駆動軸7と弁ハウジング3側の従動軸41の連結を解除し、ボルトを緩めて駆動部2を取付座3Aから取り外す。また、連結ピン8は遮断弁4を手動で開閉操作するときも引き抜く。すなわち、従動軸41にはスパナによって手動で遮断弁4を開閉するためのスパナ掛け部41aが形成されており、連結ピン8を引き抜いた状態では従動軸41は駆動軸7に対して自由に回転できる構造となっているので、スパナ掛け部41aにスパナを掛けて従動軸41を回転させて遮断弁4の手動による開閉操作が可能となる。また、従動軸41の周囲には軸方向に摺動自在な筒状のカバー42が取り付けられており、このカバー42は連結ピン8を抜いて上にスライドさせない限り、スパナ掛け部41aが露出しないので、不用意に手動操作ができないようになっている。さらに、このカバー42は弁ハウジング側の軸受け及びシール部の部分への埃等の進入を防止する役目もする。
【0018】
図2に示すように、上ケース部2B内の回転力伝達機構6において、小歯車61はその全周に歯61aが形成された歯車である。大歯車62は扇形の形状であり、その周囲一部に歯62aが形成されている。また、大歯車62には略180度離間した2箇所の位置に段部621A,621Bが形成され、この段部621A,621Bの間で歯62aと反対側の周縁には径を小さくした扇形の切欠き部622が形成されている。この切欠き部622の回転円周方向の端部は当接面622A,622Bとなっている。また、大歯車62の周縁下部(下ケース部2A側)には、位置検出手段としての第1のフォトセンサ9Aと第2のフォトセンサ9Bが配設されている。さらに、上ケース部2Bの内側にはこの上ケース部2Bと一体にしたボス部21が形成されている。
【0019】
以上の構成により、弁駆動用モータ5が正逆回転駆動され、この回転力が小歯車61を介して大歯車62に伝達されて大歯車62が図2の矢印のように回転する。これにより、前記のようにボールバルブ4の全開状態と全閉状態が切り換わる。すなわち、大歯車62が正回転して一方の段部621Aがフォトセンサ9Aの位置に来ると、フォトセンサ9Aは位置検出信号を出力し、図示しないマイコンによりボール弁4が全閉位置になったことが検出され、弁駆動用モータ5が停止される。また、他方の段部621Bがフォトセンサ9Bの位置に来ると、フォトセンサ9Bは位置検出信号を出力し、制御部によりボール弁4が全開位置になったことが検出され、弁駆動用モータ5が停止される。
【0020】
図3は大歯車6の回転位置とフォトセンサ9A,9B及びボス部21の位置関係を示す図であり、段部621Aがフォトセンサ9Aの位置にあるとき、すなわち大歯車62が全開位置にあるとき、当接面622Aはボス部21に当接していない。また、段部621Bがフォトセンサ9Bの位置にあるとき、すなわち大歯車62が全閉位置にあるとき、当接面622Bはボス部21に当接していない。この両状態での大歯車62を含む当接面622Aから当接面622Bまでの範囲が「正常回転範囲」である。そして、ボス部21は「正常回転範囲の範囲外」に配置されている。
【0021】
図4はフォトセンサ9A,9B及びマイコンによりボールバルブ4の全閉位置及び全開位置が切り換わる状態を示す概略図であり、図4(A) は回転力伝達機構6の状態を示し、図4(B) はボールバルブ4の状態を示している。なお、大歯車62及びボールバルブ4の実線は全閉状態を示し、二点鎖線は全開状態を示している。
【0022】
図4(A) の実線で示すように、大歯車62の段部621Aがフォトセンサ9Aの中心の位置になると、フォトセンサ9Aにより段部621Aが検出されて、弁駆動用モータ5が停止される。そして、このとき図4(B) の実線のようにボールバルブ4の導通路4aが第1ポート31と管路34の中心軸と交差する全閉状態となる。すなわち、遮断弁4が全閉位置で正常に停止した状態となる。また、図4(A) の二点鎖線で示すように大歯車62の段部621Bがフォトセンサ9Bの中心の位置になると、フォトセンサ9Bにより段部621Bが検出されて、弁駆動用モータ5が停止される。そして、このとき図4(B) の二点鎖線のようにボールバルブ4の導通路4aが第1ポート31と管路34の中心軸と平行になり全開状態となる。すなわち、遮断弁4が全閉位置で正常に停止した状態となる。
【0023】
図5はフォトセンサ9A,9Bあるいはマイコンによる制御に異常があった場合のボールバルブ4の全閉位置及び全開位置の状態を示す概略図であるり、図4同様に、大歯車62及びボールバルブ4の実線は全閉状態を示し、二点鎖線は全開状態を示している。
【0024】
図5(A) の実線で示すように大歯車62の段部621Aはフォトセンサ9Aの中心からずれた場合、フォトセンサ9Aにより段部621Aが検出できなかったかマイコン制御に異常が発生した状態である。しかし、大歯車62の当接面622Aがボス部21に当接している。このとき、図5(B) の実線のように、ボールバルブ4は図4(B) の状態から僅かに回転しているが、全閉状態となる。また、図5(A) の二点鎖線で示すように大歯車62の段部621Bがフォトセンサ9Bの中心からずれた場合も、フォトセンサ9Bにより段部621Bが検出できなかったかマイコン制御に異常が発生した状態である。しかし、大歯車62の当接面622Bがボス部21に当接している。このとき、図5(B) の二点鎖線のように、ボールバルブ4は図4(B) の状態から僅かに回転しているが、全開状態となる。
【0025】
このように、ボス部21は、ボールバルブ4の全開位置と全閉位置との間の正常回転範囲の範囲外で、かつ全開位置と全閉位置とにそれぞれ隣接する回転位置に配置されている。そして、このボス部21と大歯車62の切欠き部622(当接面622A,622B)により、回転力伝達機構6の回転を強制停止するストッパ機構が構成されている。したがって、フォトセンサ9Aあるいはフォトセンサ9Bの異常時、マイコン制御の異常時にも、ボールバルブ4を、確実に全閉状態及び全開状態とすることができる。
ている。
【0026】
なお、実施形態では、ボス部21は上ケース部2Bと一体に形成されているので、製造工程が簡単になるが、このボス部21は上ケース部2Bとは別部品で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態のガス遮断弁の一部破断正面図である。
【図2】同ガス遮断弁の図1におけるA−A断面図である。
【図3】実施形態における大歯車の回転位置とフォトセンサ及びボス部の位置関係を示す図である。
【図4】実施形態のフォトセンサ及びマイコンの正常時における全閉位置及び全開位置が切り換わる状態を示す概略図である。
【図5】実施形態にフォトセンサあるいはマイコンの異常時における全閉位置及び全開位置が切り換わる状態を示す概略図である。
【図6】従来のガス遮断弁の駆動部の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 弁体部
2 弁駆動部
3 弁ハウジング
4 ボールバルブ(遮断弁)
5 弁駆動用モータ
6 回転力伝達機構
7 駆動軸
9A,9B フォトセンサ(位置検出手段)
21 ボス部(ストッパ機構)
41 従動軸
61 小歯車
62 大歯車
621A,621B 段部
622 切欠き部(ストッパ機構)
622A,622B 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス配管に接続されてガスの供給及び遮断を行う遮断弁を内蔵した弁体部と、該弁体部の遮断弁を回転駆動して弁を開閉する弁駆動部とを備えるとともに、前記弁駆動部は、弁駆動用モータと、該弁駆動用モータの回転力を前記遮断弁に伝達する回転力伝達機構と、前記遮断弁の回転範囲における全開位置と全閉位置を検出する位置検出手段とを備え、前記弁駆動用モータを正逆回転することにより前記遮断弁の全開位置と全閉位置とを切り換えるとともに、前記位置検出手段の位置検出信号に基づいて該全開位置及び全閉位置で前記弁駆動用モータの駆動停止制御を行うガス遮断弁であって、
前記遮断弁の全開位置と全閉位置との間の正常回転範囲の範囲外で、かつ全開位置と全閉位置とにそれぞれ隣接する回転位置にて、前記回転力伝達機構の回転を強制停止するストッパ機構を備えたことを特徴とするガス遮断弁。
【請求項2】
前記回転力伝達機構が、前記弁駆動用モータの主軸に固定された小歯車と、前記遮断弁に連結された駆動軸に固定されるとともに該小歯車に歯合される大歯車とで構成され、
前記ストッパ機構は、前記大歯車の周縁に形成された切欠き部と、該切欠き部内に突出して該切欠き部の回転円周方向の端部の当接面に当接するボス部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガス遮断弁。
【請求項3】
前記ボス部を、前記弁駆動部のケース部内部に該ケースと一体に形成したことを特徴とする請求項2に記載のガス遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−250313(P2009−250313A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97491(P2008−97491)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】