説明

ガラスパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、電波時計、及びガラスパッケージの製造方法

【課題】ガラス組成物の焼成後に生じるベース基板との段差を平坦化して、キャビティの内部と外部の導通性を確保することができるガラスパッケージの製造方法、ガラスパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供する。
【解決手段】貫通孔21,22と金属芯材31との間に充填された結晶性ガラス体32は、酸化物換算の質量%表示でBi2360〜80%、SiO25〜20%、Al230.5〜8%、B230.5〜13%、及びZnO0〜12%を含有するビスマス系ガラス組成物を焼成により焼結してなるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、電波時計、及びガラスパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続している(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1では、まずベース基板に貫通孔を形成し、ベース基板を熱軟化させた状態で貫通孔内に金属ピンを打ち込む方法が記載されている。しかしながら、この方法では、金属ピンと貫通孔との間隙を完全に塞ぐのが困難であり、キャビティ内の気密性を確保できないという問題がある。また、ベース基板上の全ての貫通孔に位置決めして金属ピンを打ち込むのは煩雑である。
【0004】
そこで、近年では、貫通孔と金属ピンとの間隙にガラス組成物を充填し、このガラス組成物を焼成することで、ベース基板と金属ピンとを一体化させる技術が開発されている。
この場合、図15(a)に示すように、まず平板状の土台部201と、土台部201の表面から法線方向に沿って立設される金属芯材202と、を有する鋲体型の金属ピン203の金属芯材202を、ベース基板204の貫通孔205内に挿入する。続いて、図15(b)に示すように、貫通孔205と芯材部202との間隙にペースト状にしたガラス組成物206を充填した後、充填したガラス組成物206を焼成する。これにより、図15(c)に示すように、ガラス組成物206が焼成されてなる結晶性ガラス体207と、ベース基板204(貫通孔205)及び金属ピン203とが一体化する。その後、ベース基板204を破線部Hまで研磨して土台部201を除去することで、貫通電極210を形成できる。ガラス組成物206を焼成することによりガラス粒子が軟化し、ガラス粒子間の隙間が閉塞されるので、強固に密着した状態で貫通孔を塞ぐことができる。よって、貫通孔205を塞ぐとともに、圧電振動片と外部電極との安定した導電性を確保することができると考えられる。
【0005】
このようにガラス材料からなるベース基板及びリッド基板から構成されるガラスパッケージにおいて、基板の貫通孔と金属ピンとの間を固着し、気密性を高度に保つためにはガラス組成物を用いることが有効である。しかし、ガラス組成物は、単に貫通孔を塞げばよいだけではなく、さらに焼成温度条件、熱膨張係数、アルカリ溶液耐性等の条件を満たすことが求められる。
まず焼成温度条件であるが、ガラス組成物は、ベース基板及びリッド基板が焼成する温度よりも低い温度であって、かつベース基板(又はリッド基板)に形成される外部電極の焼成温度よりも高い温度で結晶が析出しなければならない。例えばベース基板、リッド基板がソーダライムによって構成されている場合は、焼成工程における焼成温度は最高で610℃に設定される。また、外部電極が形成される場合は、外部電極を焼成する再加熱工程が必要になる。この場合、外部電極の再加熱工程を行う際に流動化して金属ピンが所定の位置から移動したり抜け落ちたりしないような焼成温度条件も求められる。その焼成温度条件は、基板に形成される外部電極の焼成すなわち再加熱工程の焼成温度は500℃〜530℃であるため、焼成工程における焼成温度は550度以上に設定される。よって、ガラス組成物には、他材料の焼成温度に鑑みて、550℃以上610℃以下の温度条件で好適に結晶が析出し、貫通孔を封止できるといった性質が求められる。
【0006】
また、ガラス組成物と被接着物を気密性良く封着させるためには、両者の熱膨張係数の差を小さくする必要がある。例えば、被接着物である基板にソーダライム基板、金属ピンに42アロイと呼ばれる42%Ni−58%Fe組成のニッケル−鉄合金を用いる場合、ガラス組成物に必要とされる熱膨張係数は70〜90×10-7 / ℃である。
【0007】
さらに、本パッケージ構造体を形成するプロセスにおいては、貫通孔に金属ピンを挿入した後でソーダライム基板を所定の厚さと表面粗さにするために鏡面研磨する工程が必要である。そして、鏡面研磨後には、工程において発生した研磨屑や油脂等の汚れを洗浄する必要があり、アルカリ溶液として、例えばKOHを使うことがある。その場合には、ガラス組成物にはアルカリ溶液耐性があることが好ましい。
【0008】
ところで一般に電子部品の封着に用いられるガラス組成物としては、ビスマス(Bi)を含有するビスマス系ガラスが多く用いられている。特許文献2、3に、Bi23−B23系ガラスを用いた封着材料が開示されている。より具体的には、特許文献2には、モル%でBi23 30〜50%、B23 5〜25%、ZnO+CuO 31.2〜50%、ZnO 15〜40%、CuO 0.1〜25%、Fe23 0〜5%、SiO2+Al23 0〜7%、BaO+SrO+MgO+CaO 0〜6%、Sb23 0〜5%、WO3 0〜5%、In23+Ga23 0〜5%を含有するビスマス系ガラス組成物が開示されている。特許文献3には、モル%で、Bi23 25〜50%、B23 15〜50%、ZnO 10〜50%、CuO 0〜20%、Fe23 0〜5%、SiO2+Al23 0〜7%、BaO+SrO+MgO+CaO 0〜6%、Sb23 0〜5%、WO3 0〜5%、In23+Ga23 0〜5%含有するビスマス系ガラス組成物が開示されている。
【0009】
特許文献2に開示のガラス組成物によると、結晶性ビスマス系ガラス組成物にCuOを含有させ、封着工程でBi23・CuO結晶を析出させることにより、熱膨張係数の高い12Bi23・B23結晶の析出を抑制し、そのため結晶化後の熱膨張係数の上昇を抑制し、気密性を維持することができる。特許文献3に開示のガラス組成物によると、ガラス組成としてBi23、B23およびZnOを含む結晶性ビスマス系ガラス組成物を450〜550℃で焼成させた際に、熱膨張係数が100×10-7/℃以下の結晶を析出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【特許文献2】特開2008−120647号公報
【特許文献3】特開2008−230943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし上記従来のガラス組成物を用いたガラスパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、電波時計、及びガラスパッケージの製造方法には以下の課題がある。特許文献2、3に開示のガラス組成物では、パッケージ用途には焼成温度が低いために軟化点が低く、結晶化温度も低いので、510℃以上の熱処理で結晶粒が粗大化しやすく、鏡面研磨や洗浄後にガラス表面が荒れ、白濁するなどの不具合が生じるおそれがある。また、特許文献2に開示のガラス組成物では、さらにCuOの含有により白金坩堝の侵食を生じさせやすい。
【0012】
そこで、本発明は熱膨張係数が70〜90×10-7 / ℃で、500℃以上610℃以下で結晶を析出させ封着させることができるビスマス系ガラス組成物を用いたガラスパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、電波時計、及びガラスパッケージの製造方法を得ることを技術的課題とする。
【0013】
即ち、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、圧電振動子等の用途において結晶を適度に析出させることができ、且つ、焼成後の安定性に優れる結晶性ガラス体を用いたガラスパッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器、電波時計、及びガラスパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の組成を有するビスマス系ガラス組成物、具体的には、Bi23−SiO2−B23系のガラス組成物が、圧電振動子等の用途において結晶を適度に析出させることができることを新規に見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明のパッケージは、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージであって、前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を有し、前記貫通電極は、前記第1基板を貫通する貫通孔内に配置された金属芯材と、前記貫通孔と前記金属芯材との間に充填された結晶性ガラス体と、を有し、前記結晶性ガラス体は、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 5〜20%、Al23 0.5〜8%、B23 0.5〜13%、及びZnO 0〜12%を含有することを特徴とする。
【0016】
また、前記結晶性ガラス体は、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 7〜15%、Al23 0.5〜4%、B23 3〜7%、ZnO 0.5〜4%、及び、少なくとも1種以上のRO(R=Mg、Ca、Ba又はSr) 0〜4%を含有することが好ましい。
また、前記第1基板がソーダ石灰ガラスからなり、前記金属芯材が42アロイからなることが好ましい。
また、前記結晶性ガラス体が、セラミックスフィラーを含有しないことが好ましい。
【0017】
本発明の圧電振動子は、前記パッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする。
本発明の発振器は、前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板の第1面に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部内に金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、前記凹部と前記金属ピンとの間にビスマス系ガラス組成物を充填する充填工程と、前記凹部内に充填された前記ビスマス系ガラス組成物を焼成して結晶性ガラス体とする焼成工程と、前記第1基板の少なくとも第2面を研磨して前記金属ピンの芯材部を前記第2面に露出させる研磨工程と、を有し、前記結晶性ガラス体は、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 5〜20%、Al23 0.5〜8%、B23 0.5〜13%、及びZnO 0〜12%を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、特定の組成を有するビスマス系ガラスを結晶性ガラス体に用いることにより、結晶性ガラス体が結晶を適度に析出させることができ、且つ、焼成後の安定性に優れるものとなるため、キャビティの内部と外部との導通性に優れたパッケージを提供することができる
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計によれば、振動特性に優れ、かつキャビティの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子を備えているので、特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】ベース基板用ウエハの断面図であって、貫通孔形成工程及び金属ピン配置工程を説明するための工程図である。
【図8】金属ピンの斜視図である。
【図9】ベース基板用ウエハの断面図であって、充填工程を説明するための工程図である。
【図10】ベース基板用ウエハの断面図であって、仮乾燥工程以降の工程を説明するための工程図である。
【図11】ベース基板用ウエハの断面図であって、研磨工程を説明するための工程図である。
【図12】本発明の一実施形態を示す図であって、発振器の構成図である。
【図13】本発明の一実施形態を示す図であって、電子機器の構成図である。
【図14】本発明の一実施形態を示す図であって、電波時計の構成図である。
【図15】ベース基板の断面図であって、一般的な貫通電極の形成方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のパッケージは、特定の組成を有する結晶性ガラス体で封止することを一番の特徴としている。
本発明における結晶性ガラス体は、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 5〜20%、Al23 0.5〜8%、B23 0.5〜13%、及びZnO 0〜12%を含有する。
【0022】
本実施形態で用いるビスマス系ガラス組成物38(以下、単に「ガラス組成物38」という)は、焼成することにより上記組成を有する結晶性ガラス体とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、上述した結晶性ガラス体32と同様の組成を有する粉末状のガラス組成物(ガラス粉末)及びバインダを溶剤に分散してなるペースト状のものが好ましい。
【0023】
Bi23はガラス組成物の軟化点を調整するのに必須の成分であって、結晶性ガラス体中に60〜80質量%含有され、なかでも65〜80質量%であることが好ましい。
Bi23を80質量%以上とすると熱膨張係数が大きくなり、ソーダ石灰ガラスからなる第1基板を用いた場合に、その熱膨張係数が基板の熱膨張係数よりも大きくなるため、上述した理由から特に好ましくない。
また、60質量%未満では軟化点が高くなり、610℃以下で封止できない。
【0024】
SiO2はガラスの安定化に寄与するガラスフォーマーであって、結晶性ガラス体中に5〜20質量%含有され、なかでも7〜15質量%含有されることが好ましい。
SiO2を5質量%未満とすると、結晶性ガラス体の結晶を適度に析出させることができない。一方、20質量%を越えるとバランスが崩れてガラス組成物が失透する。
【0025】
Al23は、少量の添加でガラス組成物の安定化に寄与するとともに結晶性ガラス体の耐アルカリ性に寄与する成分であって、結晶性ガラス体中に0.5〜8質量%含有され、なかでも0.5〜4質量%含有されることが好ましい。
Al23を0.5質量%未満とするとガラス安定化及び耐アルカリ性の効果を十分に発揮することができず、8質量%を超えるとガラス組成物が失透する。
【0026】
23は、ガラスフォーマーであって、ガラス組成物の安定化に寄与するとともに、金属ピンを固定する工程で良好なフロー性を確保するための成分である。B23は結晶性ガラス体中に0.5〜13質量%含有され、なかでも3〜7質量%含有されることが好ましい。
23が7質量%を超えて入ると、結晶性ガラス体の耐アルカリ性が弱まり洗浄工程においてガラス表面が荒れる、白濁するなどの不具合がおこる。
また、0.5質量%未満ではガラス組成物が失透する。
【0027】
ZnOはガラス組成物の安定化に寄与する成分であって、結晶性ガラス体中に0〜12質量%含有される。なかでも、0.1〜8質量%が好ましく、0.5〜4質量%が特に好ましい。
ZnOが12質量%を超えると、バランスが崩れてガラス組成物が失透しやすくなる。また、12質量%以上では耐アルカリ性が悪くなる。
【0028】
また、本発明の結晶性ガラス体は、本発明の結晶性ガラス体の特性を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分を含有していてもよい。他の成分として具体的には、BaO、CaO、MgO、SrOなどのアルカリ土類金属の酸化物、CeO2、CuO、Li2O、Na2O、K2O、V25、MnO2、ZrO2等が挙げられる。
BaO、CaO、MgO、SrO等のアルカリ土類金属の酸化物を含有する場合、その含有量は合量で4質量%以下であることが好ましい。4質量%以下とすることにより、ガラス組成物の安定性に寄与し、且つ、十分なフロー性を得ることができる。
CeO2、CuOを含有する場合、その含有量は合量で1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。1質量%以下とすることにより、ガラス組成物の安定性に寄与することができ、且つ、焼成時にCeO2、CuOから発生するガスの影響による気密性の低下を防ぐことができる。
Li2O、Na2O、K2O、V25、MnO2、ZrO2を含有する場合、その配合量は、他の成分とのバランスを取ることができる合量で5質量%以下であることが好ましい。
なお、酸化鉛や酸化アンチモン等の成分は、環境負荷軽減の必要性から実質的に含有しないことが望ましい。
また、セラミックスフィラー等の無機フィラーを含むこともできるが、焼成後の研磨工程において、結晶性ガラス体から脱粒し、パッケージや装置の汚染源となるおそれがあるため、含有しないことが好ましい。
【0029】
上記のような組成を有するガラス組成物は、550〜610℃の温度において結晶を析出させ、貫通電極内を封着することができる。該結晶析出温度から鑑みて、ガラスの軟化点は490〜540℃が望ましい。
また、上記ガラス組成物は、結晶化前の50〜350℃における熱膨張係数が70〜90×10-7/℃とすることができる。そのため、例えば、基板にソーダライム基板、金属芯材に42アロイと呼ばれる42%Ni−58%Fe組成のニッケル−鉄合金を用いた場合に、熱膨張係数が“第1基板≧結晶性ガラス体>金属芯材”となり、貫通電極部の気密性が向上し、且つ、基板と結晶性ガラス体との界面に応力が発生し難くなり、マイクロクラックの発生を防止することができるため好ましい。
以上、本発明の結晶性ガラス体について説明したが、以下では、該結晶性ガラス体を用いる本発明のパッケージについて、図面の実施形態に基づいて説明する。
【0030】
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
【0031】
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5と、ベース基板2の裏面2a(図3中下面:第1面)に設置された外部電極6,7と、がベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0032】
ベース基板2は、絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔(凹部)21,22が形成されている。貫通孔21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面;第2面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
ベース基板2(後述するベース基板用ウエハ40)の材料としては特に限定されるものではないが、透明な材料からなるものであることが好ましく、ガラス材料からなるものであることがさらに好ましく、ソーダ石灰ガラスからなるものであることが最も好ましい。
【0033】
リッド基板3は、ベース基板2と同様の材料からなる透明の絶縁基板であることが好ましく、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0034】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。なお、引き回し電極27、28にはCr−Auが用いられている。
【0035】
外部電極6,7は、AgまたはAuなどの導電性ガラスペーストを印刷し、500〜530℃焼成することで形成する。或いは、下地Crと表面Auのスパッタ法や、Agフィラー等を含む導電性樹脂を印刷し、200℃前後で焼成することにより形成する。更に、導電樹脂上にスパッタ膜を形成しても良い。また、外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
貫通電極8,9は、焼成によって貫通孔21,22に対して一体的に固定された結晶性ガラス体32及び金属芯材31によって形成されたものであり、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0036】
結晶性ガラス体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みに形成されるとともに、貫通孔21,22の形状に合わせて、結晶性ガラス体32の外形が円錐台状(断面テーパ状)となるように形成されている。
結晶性ガラス体32は上述した組成を有するものであって、貫通孔21,22に対して強固に固着されている。具体的に、結晶性ガラス体32は、ベース基板2の厚さ方向において、ほぼ全域に亘って貫通孔21,22を埋めるように形成されている。この場合、結晶性ガラス体32における厚さ方向の一端側の端面が、ベース基板2の表面2bと面一に形成されて、金属芯材31とともにキャビティC内に露出している。また、結晶性ガラス体32における厚さ方向の他端側の端面は、ベース基板2の裏面2aと面一に形成されて、金属芯材31とともにキャビティ外の外部電極6,7に接触している。
【0037】
上述した金属芯材31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、結晶性ガラス体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9が完成品として形成された場合には、上述したように金属芯材31は、円柱状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、後述する図8に示すように、金属芯材31の一方の端部に連結された平板状の土台部36とともに鋲体型の金属ピン37を形成している。
金属芯材31は、42アロイ(具体的には、42%Ni−58%Fe組成のニッケル−鉄合金)からなることが好ましい。
【0038】
リッド基板3の内面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を形成することも可能である。そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0039】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0040】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
図5に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S50以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0041】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0042】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。
具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の第1面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の第1面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、第1面50aを鏡面加工する。
【0043】
次に、リッド基板用ウエハ50の第1面50a全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材23を形成する接合材形成工程(S24)を行う。このように、接合材23をリッド基板用ウエハ50の第1面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材23の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材23の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0044】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0045】
(貫通電極形成工程)
次いで、ベース基板用ウエハ40を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極8,9(図3参照)を形成する貫通電極形成工程(S32)を行う。以下に、貫通電極形成工程(S32)について詳細を説明する。図7はベース基板用ウエハの断面図であって、貫通孔形成工程及び金属ピン配置工程を説明するための工程図である。
貫通電極形成工程(S32)では、まず図7に示すように、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対の貫通孔21,22を複数形成する貫通孔形成工程(S33:凹部形成工程)を行う。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の第1面40aから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の第2面40b側から破線部T1まで研磨することで、凹部を貫通させ、貫通孔21,22を形成することができる。これにより、ベース基板用ウエハ40(ベース基板2)の第2面40b側から第1面40a側に向かって漸次内径が大きくなるように貫通孔21,22を形成することができる。
【0046】
続いて、貫通孔形成工程(S33)で形成された複数の貫通孔21,22内に、金属ピンの金属芯材31を配置する金属ピン配置工程を行う(S34)。図8は金属ピンの斜視図である。
図8に示すように、金属ピン37は、平板状の土台部36と、土台部36上から土台部36の表面に略直交する方向に沿って形成されるとともに、先端が平坦に形成された金属芯材31と、を有している。
【0047】
そして、図7(b)に示すように、貫通孔21,22の小径側(ベース基板用ウエハ40の第2面40b側)から金属ピン37の金属芯材31を挿入する。この時、上述した金属ピン37の土台部36の表面がベース基板用ウエハ40の第2面40bに接触するまで、金属芯材31を挿入する。ここで、金属芯材31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とを略一致するように金属ピン37を配置する必要がある。しかしながら、土台部36上に金属芯材31が形成された金属ピン37を利用するため、土台部36をベース基板用ウエハ40に接触させるまで押し込むだけの簡単な作業で、金属芯材31の軸方向と貫通孔21,22の軸方向とを略一致させることができる。したがって、金属ピン配置工程(S34)時における作業性を向上することができる。
【0048】
(充填工程)
図9はベース基板用ウエハの断面図であって、充填工程を説明するための工程図である。
図9(a)に示すように、金属ピン37がセットされたベース基板用ウエハ40を真空印刷装置内に搬送し、貫通孔21,22内にビスマス系ガラス組成物38を充填する充填工程(S35)を行う。本実施形態の充填工程(S35)では、真空印刷装置の図示しないチャンバー内において、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに沿ってスキージ(第1スキージ45及び第2スキージ46)を走査することにより、貫通孔21,22の大径側(ベース基板用ウエハ40の第1面40a側)からビスマス系ガラス組成物38を充填する。本実施形態の真空印刷装置は、ベース基板用ウエハ40を保持する図示しない治具と、図示しない移動機構により、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに沿って互いに逆方向に走査可能に保持された第1スキージ45(図9(a)参照)及び第2スキージ46(図9(c)参照)とを備えている。
【0049】
ペースト状のガラス組成物38に用いる粉末状のガラス組成物としては、上記結晶性ガラス体32と同様の組成を有するものが挙げられる。
このようなガラス組成物は、要求される組成に応じたガラス原料を出発原料とし、それらを溶融した後、粉砕することにより得ることができる。ガラス原料としては例えば、結晶性ガラス体32にB23を含有させるためには、H3BO3、B23等の原料を用いることができる。他の成分についても、原料として各種酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の通常に用いられるガラス原料を用いることができる。
ガラス組成物の製造方法としてより具体的には、1)原料化合物を混合することにより混合物を得る第1工程、2)得られた混合物を溶融することにより溶融物を得る第2工程、及び3)溶融物を粉砕してガラス粉末を得る第3工程、を含む製造方法が挙げられる。
上記第1工程では、原料化合物を混合することにより混合物を得る。この場合、所望の組成・比率となるように各原料化合物を秤量し、混合することにより混合物を調製すればよい。各成分の原料の混合順序等は特に制限されず、同時に配合してもよく、所定の化合物から順番に配合してもよい。また、原料化合物は、通常は粉末形態で供給すればよい。各成分を含む原料化合物を公知の方法で粉砕、混合等を実施することにより混合物(出発原料)を得ることができる。
上記第2工程では、混合物を溶融することにより溶融物を得る。溶融に際しては、原料組成等に応じてガラス溶融温度を設定すればよいが、通常は900〜1200℃程度で実施することができる。
上記第3工程では、溶融物を粉砕してガラス粉末を得る。粉砕方法は特に限定されるものではなく、水や溶剤を用いた湿式粉砕、水や溶剤を用いない乾式粉砕であってもよい。粉砕には公知の装置を用いることができる。また、粉砕後に分級処理を行い、粉末の粒径を一定の範囲に揃えてもよい。粉末状とする場合の平均粒径(D50)は特に限定されるものではないが、通常は20μm以下とされる。
また、ガラス組成物38に用いるガラス組成物は、表面処理剤を含まないことが望ましい。多くの表面処理剤は600℃以下の焼成温度で完全に昇華しきれずに結晶性ガラス体32中に残留することが多く、焼成後に気孔発生の原因となる。
【0050】
ガラス組成物38に用いるバインダとしては、特に限定されるものではないが、質量平均分子量が10万以上(より好ましくは15万以上)の樹脂が好ましい。10万以上とすることにより、ガラス組成物中の樹脂量を過度に増やさずにバインダとしての効果を奏することができ、焼成後(後述する脱バイ後)の結晶性ガラス体32中の気孔の発生を抑制することができる。
このようなバインダとしては、後述する脱バインダ工程(S37)で除去されるバインダであることが好ましく、450℃以下の熱分解温度を有するバインダが特に好ましい。具体的には、セルロース樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。バインダとしてセルロース樹脂を使用することにより、ガラス組成物中38中の固形分濃度を非常に高く調整した場合にも、その粘度を20〜数百Pa・sまで調整が可能なため、スクリーン印刷やシリンジ射出など幅広いプロセスに適合させることができる。バインダとして熱分解性が良好なアクリル樹脂を使用することにより、気孔の発生を特に効果的に抑制することができる。なかでもバインダとしては、少量で上記効果が得られ、少量であれば気孔の発生も低減されることから、セルロース樹脂が好ましい。
ガラス組成物38中のバインダの含有量は、ガラス組成物とバインダとの合計の質量を100とした場合、0.052〜0.25質量%が好ましく、0.099〜0.22質量%がより好ましい。0.052質量%以上とすることにより、ガラス組成物を組成物中に良好に分散することができ、0.25質量%以下とすることにより、焼成後の気孔の発生を低減することができる。
【0051】
ガラス組成物38に用いる溶剤としては特に限定されるものではないが、具体的には、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等挙げられる。なお、これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の使用量は特に限定されるものではなく、調整しようとするガラス組成物38の粘度や、用いるバインダの種類等に応じて適宜決定することができる。なお、ガラスペーストの粘度は、20Pa・s以上であることが好ましく、55〜70Pa・sであることがより好ましい。また、ガラス組成物38をスクリーン印刷法に用いる場合は、20〜70Pa・sが好ましく、ガラス組成物38をディスペンサーで塗布する場合は、55〜90Pa・sが好ましい。
【0052】
ペースト状のガラス組成物38は、ガラス組成物、バインダ、溶剤以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤として具体的には、カルボン酸基、ポリカルボン酸基、脂肪酸基、ポリエステル酸基、リン酸基等を有する分散剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
ガラス組成物38に添加剤を用いる場合、添加剤の含有量は、ガラス組成物38を100とした場合、外配合で0〜0.1質量%が好ましい。0.1質量%以下とすることにより、気孔の発生を低減することができる。
【0053】
上記のようなガラス組成物38は、上述したベース基板2等に用いられる材料の耐熱限界以下の温度で焼成した際に結晶を適度に析出させることができ、且つ、後述する仮乾燥工程(S36)や脱バインダ工程(S37)において含有する溶剤やバインダを除去することができる。
【0054】
充填工程(S35)を開始するにあたって、まずベース基板用ウエハ40を、第1面40a(貫通孔21,22の大径側)を上方に向けた状態で真空印刷装置の図示しない治具にセットするとともに、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに図示しないメタルマスクを配置する。メタルマスクは、ベース基板用ウエハ40の第2面40bへのペースト状のガラス組成物38の回り込みを防止するためのものであり、ベース基板用ウエハ40の周縁部を覆うとともに、中央部には開口部が形成されている。次に、真空印刷装置のチャンバー内の真空引きを行ってチャンバー内を減圧雰囲気(例えば、0.5〜1torr程度)とする。
【0055】
そして、第1スキージ45の走査方向手前側のメタルマスク上にペースト状のビスマス系ガラス組成物38を供給する。続いて、第1スキージ45の先端をメタルマスク(ベース基板用ウエハ40の第1面40a)に当接させた状態で、第1スキージ45をベース基板用ウエハ40の第1面40aに沿って走査する(第1走査工程(S35A))。この際、ベース基板用ウエハ40の第1面40aと第1スキージ45の走査面とが平行となるように、例えばベース基板用ウエハ40の径方向一端側から他端側に向けて第1スキージ45を走査する(図9(a)矢印参照)。
【0056】
第1スキージ45を走査すると、第1スキージ45の先端により第1スキージ45の走査方向に沿って押し流されるようにペースト状のビスマス系ガラス組成物38が流動する。これにより、ベース基板用ウエハ40上に沿ってペースト状のビスマス系ガラス組成物38が均される。そして、貫通孔21,22の開口縁に沿って第1スキージ45を走査する際に、第1スキージ45の先端によって開口縁近傍のペースト状のビスマス系ガラス組成物38が、貫通孔21,22内に押し流されるように流動する。
その結果、貫通孔21,22内にペースト状のビスマス系ガラス組成物38が充填される(図9(b)参照)。
【0057】
この際、本実施形態の充填工程(S35)は真空印刷法を用いて行うことで、ペースト状のビスマス系ガラス組成物38が脱気され、ペースト状のビスマス系ガラス組成物38中に含まれる気泡(空気等)を除去できる。これにより、気泡の少ないペースト状のビスマス系ガラス組成物38を貫通孔21,22内に充填できる。
また、貫通孔21,22内から空気を抜いた状態でペースト状のビスマス系ガラス組成物38を充填できるので、大気圧雰囲気下にてペースト状のビスマス系ガラス組成物38を充填する場合に比べて、貫通孔21,22内にペースト状のビスマス系ガラス組成物38をスムーズに充填できる。その結果、貫通孔21,22内にペースト状のビスマス系ガラス組成物38を隙間なく充填できる。さらに、本実施形態では、貫通孔21,22の大径側からペースト状のビスマス系ガラス組成物38を充填することで、貫通孔21,22と金属ピン37との間隙に容易にペースト状のビスマス系ガラス組成物38を充填できる。
【0058】
第1走査工程(S35A)の終了後、ベース基板用ウエハ40の第1面40a上に残存している余分なペースト状のビスマス系ガラス組成物38を除去する第2走査工程(S35B)を行う。具体的には、図9(c)に示すように、第2スキージ46の先端をベース基板用ウエハ40の第1面40aに接触させた状態で、上述した第1スキージ45の走査条件と同様の条件によって第1スキージ45の走査方向とは逆方向(例えば、ベース基板用ウエハ40の径方向他端側から一端側)に沿って走査する(図9(c)中矢印参照)。これにより、図9(d)に示すように、貫通孔21,22の外部(ベース基板用ウエハ40の第1面40a上)に存在するペースト状のビスマス系ガラス組成物38を除去できる。
なお、本実施形態では金属ピン37の金属芯材31の長さをベース基板用ウエハ40の厚さよりも短くしたため、第2スキージ46が貫通孔21,22の上部を通過する際に、第2スキージ46の先端と金属芯材31の先端とが接触することがなく、金属芯材31が傾いてしまうことを抑制することができる。
【0059】
図10は、ベース基板用ウエハの断面図であって、仮乾燥工程以降を説明するための工程図である。
次に、図10(a)に示すように、充填工程(S35)で埋め込んだペースト状のビスマス系ガラス組成物38を仮乾燥させる(S36:仮乾燥工程)。具体的には、ペースト状のビスマス系ガラス組成物38が充填されたベース基板用ウエハ40を、乾燥炉内に搬送する。そして、乾燥炉内を例えば大気圧雰囲気下で80℃程度に保持し、ベース基板用ウエハ40を30分程度乾燥させる。
仮乾燥工程(S36)では、ガラス粒子間には間隙が存在している。そのため、有機溶剤が蒸発することにより発生したガスは、ガラス粒子間の間隙を流通してビスマス系ガラス組成物外へ放出されることになる(図10(a)中矢印参照)。よって、焼成工程(S38)前に有機溶剤を効果的に除去できるため、焼成工程(S38)時に有機溶剤が蒸発して発生するガスを抑制できる。
【0060】
次に、図10(b)に示すように、ペースト状のビスマス系ガラス組成物38内に含まれるバインダを除去する脱バインダ工程を行う(S37)。具体的には、仮乾燥工程(S36)を終えたベース基板用ウエハ40を加熱炉のチャンバー内に移し、加熱炉内を例えば大気雰囲気下で420℃程度に保持し、ベース基板用ウエハ40を1時間程度加熱する。このように、脱バインダ工程(S37)において、加熱炉内の温度をバインダの熱分解温度よりも高く、ガラス組成物のガラス転移点よりも低く設定することで、ガラス組成物を軟化させずにバインダを除去させることができる。これにより、バインダが気化して発生するガスが、ガラス組成物間の間隙を流通してビスマス系ガラス組成物38外へ効率的に放出される(図10(b)中矢印参照)。焼成工程時(S38)前にバインダを効果的に除去できるため、焼成工程(S38)時にバインダが気化して発生するガスを抑制できる。
【0061】
次に、貫通孔21,22に充填したビスマス系ガラス組成物38を焼成して硬化させる焼成工程(S38)を行う。例えば、ベース基板用ウエハ40を焼成炉のチャンバー内に搬送した後、550〜610℃程度(好ましくは580〜610℃、より好ましくは605〜610℃)の雰囲気下に30分程度保持することで、ビスマス系ガラス組成物38の焼成が完了する。焼成が完了した後、ベース基板用ウエハ40を常温雰囲気下で放置して冷却する。これにより、ビスマス系ガラス組成物38が良好に焼結し、図10(c)に示す結晶性ガラス体32を形成することができる。
焼成工程(S38)は、焼成炉内を減圧した状態でビスマス系ガラス組成物38を焼成する減圧焼成であってもよい。具体的には例えば、1〜10torr程度に保持することができる。すると、ビスマス系ガラス組成物38内に残存している気泡が脱気されながら、ビスマス系ガラス組成物38の焼成が行われる。ビスマス系ガラス組成物38を減圧焼成することで、焼成後における結晶性ガラス体32に空隙部が形成されるのを抑制できる。
【0062】
図11は、ベース基板用ウエハの断面図であって、研磨工程を説明するための工程図である。
次に、続いて、図11(a)に示すように、焼成後にベース基板用ウエハ40の第2面40b側を破線部T2まで研磨して金属ピン37の土台部36を除去する研磨工程を行う(S38)。これにより、結晶性ガラス体32及び金属芯材31を位置決めさせる役割を果たしていた土台部36を除去することができ、金属芯材31(芯材部)のみを結晶性ガラス体32の内部に取り残すことができる。
また、同時にベース基板用ウエハ40の第1面40a側を破線部T3まで研磨して金属芯材31の先端を露出させる。その結果、結晶性ガラス体32と金属芯材31とが一体的に固定された一対の貫通電極8,9を複数得ることができる。
【0063】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S39)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0064】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)で作製されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作製工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作製工程で作製されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0065】
重ね合わせ工程(S50)後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0066】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S90)を行う。
【0067】
そして、電気特性検査工程(S100)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0068】
このように、本実施形態では、充填工程(S35)において、焼成した後に、特定の組成を有する結晶性ガラス体32となるビスマス系ガラス組成物38を用いる構成とした。
この構成によれば、結晶性ガラス体32が良好な軟化点を有するため、後段の焼成工程(S38)においてビスマス系ガラス組成物38が良好に焼結する。また、結晶性ガラス体32がベース基板用ウエハ40、金属芯材31との関係において適度な熱膨張係数を有するため、焼成工程(S38)における応力を制御することができ、応力による破損(マイクロクラック等)の発生を防ぐことができる。加えて、該ビスマス系ガラス組成物を焼成して得られる結晶性ガラス体32は、結晶を適度に析出させることができる。
上記の効果により、貫通孔21,22と金属芯材31との間に緻密な結晶性ガラス体32を形成できる。したがって、貫通孔21,22及び金属芯材31と結晶性ガラス体32との密着性を向上させ、キャビティC内の気密性を維持できる。また、結晶性ガラス体32に凹み等が形成されるのを抑制し、貫通電極8,9を覆うように形成される電極膜(例えば、外部電極7,8や引き回し電極27,28)に段切れが発生するのを抑制し、キャビティCの内部と外部との導通性を確保できる。
また、貫通孔21,22及び金属芯材31と結晶性ガラス体32との密着性を向上できるので、貫通電極8,9の機械的強度を向上できる。その結果、圧電振動子1の機械的強度を確保できる。
【0069】
このように、気密性に優れたパッケージ10を備えているので、振動特性に優れた圧電振動子1を提供できる。また、キャビティCの内部と外部との導通性に優れた圧電振動子1を提供することができる。また、機械的強度が確保された圧電振動子1を提供することができる。
【0070】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図12に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片5が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0071】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0072】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0073】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図13を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0074】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図13に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0075】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0076】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0077】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0078】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0079】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0080】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0081】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0082】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図14を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図14に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0083】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0084】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0085】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0086】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0087】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子等に、本発明を適用しても構わない。
【0088】
また、上述した実施形態では、貫通孔21,22内に土台部36から立設された金属ピン37を配置し、その後、土台部36を研磨して除去することにより貫通電極7,8を形成する場合について説明したが、これに限られない。例えば、貫通孔21,22を有底の凹部とし、円柱状の金属ピンを凹部内に配置して貫通電極を形成しても構わない。但し、金属ピンが傾倒することなく、貫通孔内に配置できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0089】
また、上述した実施形態では、仮乾燥工程(S36)及び脱バインダ工程(S37)を大気圧雰囲気で行う構成について説明したが、これに限らず、仮乾燥工程(S36)及び脱バインダ工程(S37)を減圧雰囲気下で行っても構わない。
【実施例】
【0090】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
[実験例1〜9、比較実験例1〜4]
1)ガラス粉末の製造
表1〜3に示す組成となるよう原料を調合し、混合の後、約900〜1200℃の温度で1〜2時間溶融した。その後、ステンレス製の冷却ロールにて急冷し、ガラスフレークを作製した。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
1)ガラス転移点、軟化点
各実験例及び比較実験例のガラス試料を、理学電機(株)社製DTA(型名「TG−8120」)を用いて、大気雰囲気下において20℃/分の昇温速度で示差熱分析を行い接線法によって、ガラス転移点(DTA−Tg)及び軟化点(DTA−Ts)を求めた。試料は乳鉢で出来るだけ細かくすり潰し、約50mgの資料を用いて測定した。結果を表1〜3に併記する。
【0096】
2)熱膨張係数
各実験例及び比較実験例の試料を、リガク製TMA(型名「TMA8310」)を用いて、大気雰囲気下において10℃/分の昇温速度で行い、50℃−350℃の範囲の平均線熱膨張係数(α50-350(×10-7/℃))を算出した。結果を表1〜3に併記する。
【0097】
3)耐アルカリ性
各実験例及び比較実験例の試料を、エチルセルロースを主成分とするビヒクルに均一分散させてガラスペーストを作成した。該ガラスペーストをソーダライムガラス基板に塗布、焼成し、ガラス膜を形成した。50℃に温めた42wt%KOH溶液に10分間浸漬し、光沢の有無を肉眼で観察し判断した。光沢を保持しているものは○、光沢を失ったものは×とした。光沢を失うと、表面粗さが大きくなっているため、研磨の際に脱粒が起こり、汚染源となる可能性があるためである。結果を表1〜3に併記する。
【0098】
上記の結果から、実験例1〜9のガラス組成物は、封着用粉末ガラスとして好適に使用できることが確認できた。なお、実施例7、8はさらにKOHを用いた耐アルカリ性試験にも優れていた。一方、比較実験例1〜3のガラス組成物は、焼成及びガラス膜形成後にガラスが失透してしまった。また、比較実験例4のガラス組成物は、熱膨張係数が90×10−7/℃を超えて大きく、パッケージや圧電振動子用途に不向きであった。
【符号の説明】
【0099】
2…ベース基板(第1基板) 5…圧電振動片(電子部品) 8,9…貫通電極 21,22…貫通孔(凹部) 31…金属芯材 36…土台部 37…金属ピン 38…ビスマス系ガラス組成物 40a…第1面 40a…第2面 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数のガラス基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なガラスパッケージであって、
前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を有し、
前記貫通電極は、
前記第1基板を貫通する貫通孔内に配置された金属芯材と、
前記貫通孔と前記金属芯材との間に充填された結晶性ガラス体と、を有し、
前記結晶性ガラス体は、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 5〜20%、Al23 0.5〜8%、B23 0.5〜13%、及びZnO 0〜12%を含有することを特徴とするガラスパッケージ。
【請求項2】
前記結晶性ガラス体が、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 7〜15%、Al23 0.5〜4%、B23 3〜7%、ZnO 0.5〜4%、及び、少なくとも1種以上のRO(R=Mg、Ca、Ba又はSr) 0〜4%を含有することを特徴とする請求項1に記載のガラスパッケージ。
【請求項3】
前記第1基板がソーダ石灰ガラスからなり、前記金属芯材が42アロイからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスパッケージ。
【請求項4】
前記結晶性ガラス体が、セラミックスフィラーを含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスパッケージ。
【請求項5】
請求項1に記載のパッケージの前記キャビティ内に圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項9】
互いに接合された複数のガラス基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なガラスパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記第1基板の第1面に凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部内に金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、
前記凹部と前記金属ピンとの間にビスマス系ガラス組成物を充填する充填工程と、
前記凹部内に充填された前記ビスマス系ガラス組成物を焼成して結晶性ガラス体とする焼成工程と、
前記第1基板の少なくとも第2面を研磨して前記金属ピンの芯材部を前記第2面に露出させる研磨工程と、を有し、
前記結晶性ガラス体は、酸化物換算の質量%表示でBi23 60〜80%、SiO2 5〜20%、Al23 0.5〜8%、B23 0.5〜13%、及びZnO 0〜12%を含有することを特徴とするガラスパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−60318(P2013−60318A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198757(P2011−198757)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】