ガラス封着体
【課題】パネルと封着ガラスとの濡れ角を小さくして、パネルと排気管との封着強度を高める。
【解決手段】ガラス封着体10は、平面表示装置の背面パネル40の外表面43と排気管60の先端面63とにより狭持された状態で軟化させて、背面パネル40に形成された排気孔42と排気管60の管内部61とが連通するように背面パネル40の外表面43に排気管60を封着する。ガラス封着体10は、本体部11および突出部21を有する。本体部11は、中央に貫通孔12が形成され、板厚方向に拡径して外周にテーパー面15が形成された円板状体である。突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。
【解決手段】ガラス封着体10は、平面表示装置の背面パネル40の外表面43と排気管60の先端面63とにより狭持された状態で軟化させて、背面パネル40に形成された排気孔42と排気管60の管内部61とが連通するように背面パネル40の外表面43に排気管60を封着する。ガラス封着体10は、本体部11および突出部21を有する。本体部11は、中央に貫通孔12が形成され、板厚方向に拡径して外周にテーパー面15が形成された円板状体である。突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置のパネルに排気管を封着するためのガラス封着体に関する。
【背景技術】
【0002】
平面表示装置の背面パネルに排気管を封着するための従来のガラス封着体について、図9ないし図11を用いて説明する。図9(a)は、従来のガラス封着体を示した上面図であり、図9(b)は、図9(a)IX‐IX矢視断面図である。図10は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。図11は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネルなどの平面表示装置は、ガラス基板からなる前面パネル130および背面パネル140を有し、前面パネル130および背面パネル140の一方の面131,141には、それぞれ電極や蛍光面(図示しない)が形成されている。前面パネル130と背面パネル140とは、電極が形成された面131,141同士を対向させて、間隔を空けて配置されている。この間隔は、放電空間150と呼ばれ、ネオン(Ne)やキセノン(Xe)などの放電ガスが充填されている。
【0004】
ここで、平面表示装置の放電空間150の形成過程について、図10および図11を用いて説明する。
【0005】
まず、固定治具(図示しない)により、前面パネル130が上側、背面パネル140が下側に配置されように、前面パネル130および背面パネル140を水平に固定する。背面パネル140には、排気および放電ガスの充填のための排気孔142が形成されている。
【0006】
次に、背面パネル140の排気孔142と排気管160の管内部161とが連通するように、貫通孔112が形成されたガラス封着体110を介して、背面パネル140の下面143に排気管160を下方から押し当てる。
【0007】
次に、背面パネル140に排気管160を押し当てた状態で、フリットガラスからなるガラス封着体110を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル140に排気管160を封着する。
【0008】
その後、排気管160の下端側に排気装置(図示しない)を取り付けて、排気管160を介して、放電空間150の排気および放電ガスの充填を行い、排気管160を封じ切る。
【0009】
ここで、従来のガラス封着体110について、図9を用いて説明する。
【0010】
ガラス封着体110は、本体部111と突出部121とが一体に成型されてなる。本体部111は、その中央に貫通孔112が形成された円板状体である。また、突出部121は、本体部111の一方の面113から突出し、その内径が貫通孔112の径より大きい環状体である。
【0011】
ガラス封着体110を介して背面パネル140に排気管160を下方から押し当てた状態では、本体部111の突出部121と反対側の面114が、背面パネル40の下面143に接触している。また、突出部121の環内部122には、排気管160の先端部162が挿入され、本体部111の突出部121側の面113が、排気管160の先端面163に接触している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−234283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
背面パネル140に封着された排気管160に荷重が掛かると、封着ガラス110が背面パネル140から剥がれ、排気管160が背面パネル140から外れてしまう。特に、図11に示すように、背面パネル140とガラス封着体110との濡れ角θが大きい程、ガラス封着体110が背面パネル140から剥がれやすい。
【0014】
一方、この濡れ角θが小さい程、ガラス封着体110が背面パネル140から剥がれにくく、背面パネル140と排気管160との封着強度を高めることができる。理想的には、ガラス封着体110が背面パネル140の下面143に向かって裾が広がるような形状(濡れ角θが90°以下)となるのが好ましい。
【0015】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、パネルと封着ガラスとの濡れ角を小さくして、パネルと排気管との封着強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明に係るガラス封着体は、平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と前記排気管の環内部とが連通するように前記パネルの外表面に前記排気管を封着するガラス封着体であって、中央に貫通孔が形成され、板厚方向に拡径して外周にテーパー面が形成された円板状の本体部と、前記本体部の拡径側の面から突出し、内径が前記貫通孔の径より大きい環状の突出部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パネルと封着ガラスとの濡れ角が小さくなり、パネルと排気管との封着強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のI−I矢視断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の製造過程を示したフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体(実施例1ないし3)および比較例1に係るガラス封着体の組成、形状および評価を示した表である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のVII−VII矢視断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】従来のガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のIX−IX矢視断面図である。
【図10】従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図11】従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図12】従来のガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明のガラス封着体の第1の実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係るガラス封着体10が適用される平面表示装置について、図2および図3を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【0021】
ガラス封着体10が適用される平面表示装置として、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマアドレスリキッドクリスタルディスプレイ(PALC)、あるいは、蛍光表示管(VFD)が挙げられる。以下、PDPを例にして説明する。
【0022】
PDPは、ガラス基板からなる前面パネル30および背面パネル40を有する。図示しないが、前面パネル30の一方の面(電極形成面)31上には、表示電極が形成され、背面パネル40の一方の面(電極形成面)41上には、アドレス電極や蛍光面が形成されている。前面パネル30と背面パネル40とは、互いの電極形成面31,41同士を対向させて、間隔を空けて配置されている。この間隔は、放電空間50と呼ばれ、ネオン(Ne)やキセノン(Xe)などの放電ガスが充填されている。
【0023】
ここで、平面表示装置の放電空間50の形成過程について、図2および図3を用いて説明する。
【0024】
まず、固定治具(図示しない)により、前面パネル30が上側、背面パネル40が下側に配置されように、前面パネル30および背面パネル40を水平に固定する。背面パネル40には、排気および放電ガスの充填のための排気孔42が形成されている。
【0025】
次に、背面パネル40の排気孔42の軸中心、ガラス封着体10の軸中心、および、排気管60の軸中心が一致するように、ガラス封着体10を介して、背面パネル40の下面(背面パネル40の外表面)43に排気管60を下方から垂直に押し当てる。このとき、ガラス封着体10は、背面パネル40と排気管60とにより狭持されている。ガラス封着体10には、貫通孔12が形成されているため、背面パネル40の排気孔42と排気管60の管内部61とが連通している。
【0026】
次に、背面パネル40に排気管60を押し当てた状態で、フリットガラスからなるガラス封着体10を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル40に排気管60を封着する。
【0027】
その後、排気管60の下端側に排気装置(図示しない)を取り付けて、排気管60の管内部61を介して、放電空間50の排気および放電ガスの充填を行い、排気管60を封じ切る。
【0028】
次に、本実施形態に係るガラス封着体10の構造について、図1ないし図3を用いて説明する。図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図1(b)は、図1(a)のI‐I矢視断面図である。
【0029】
ガラス封着体10は、本体部11と突出部21とが一体に成型されてなる。図1において、説明の都合上、本体部11と突出部21との境界を点線で描いた。
【0030】
本体部11は、その中央に貫通孔12が形成された円板状体である。本体部11は、その板厚方向(軸方向)に拡径して、その外周にテーパー面15が形成されている。また、突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、その内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。突出部21の外周面は、本体部11のテーパー面15と連続している。
【0031】
ガラス封着体10を介して背面パネル40に排気管60を押し当てた状態では、本体部11の拡径側の面13と反対側の面(本体部11の縮径側の面)14が、背面パネル40の外表面(背面パネル40の下面)43に接触している。また、突出部21の環内部22には、排気管60の先端部62が挿入され、本体部11の拡径側の面13が、排気管60の先端面63に接触している。
【0032】
なお、排気管60の先端部62が突出部21の環内部22に挿入できるように、突出部21の内径は、排気管60の先端面63の外径より僅かに大きい。また、本体部11の貫通孔12の径は、排気管60の先端面63の内径より小さい。
【0033】
ガラス封着体10は、フリットガラスを含む。このフリットガラスは、鉛ホウ酸系ガラスでも良いが、環境上の観点から、ビスマス系ガラスが好ましい。背面パネル40および排気管60を構成するガラスの軟化点は、700〜850℃程度であるが、ガラス封着体10を構成するフリットガラスの軟化点は、それに比べて低く、例えば、400〜500℃程度である。
【0034】
次に、図5に示した実施例1ないし3に係るガラス封着体10の製造方法について、図4および図5を用いて説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の製造過程を示したフローチャートである。図5は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体(実施例1ないし3)および比較例1に係るガラス封着体の組成、形状および評価を示した表である。
【0035】
まず、図5に示したガラス組成となるように、各酸化物(Bi2O3,B2O3,ZnO,Al2O3,SiO2,CeO2,Fe2O3,CuO)を調合したガラスバッチを用意する(S1)。このガラスバッチを熔解し、フレーク状に成形(S2)した後、粉砕して、ガラス粉末を得る(S3)。
【0036】
次に、ガラス粉末にコージェライト、ジルコン、および、有機バインダを加えて混練し(S4)、スプレードライヤにより造粒する(S5)。その後、この造粒物を金型に入れて、図5に示した形状にプレス成型する(S6)。この成型物を焼成して(S7)、フリットガラスからなる実施例1〜3に係るガラス封着体10を得る。
【0037】
なお、実施例1〜3に係るガラス封着体10は、互いに、本体部11の拡径側の面13の径(突出部21の外径)R1と本体部11の縮径側の面14の径R2との比R2/R1が異なる。
【0038】
図5に示した比較例1に係るガラス封着体110についても、同様に製造されたものである。
【0039】
次に、本実施形態に係るガラス封着体10の作用について、図3、図5および図11を用いて説明する。
【0040】
背面パネル40に排気管60を下方から押し当てた状態で、ガラス封着体10を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル40に排気管60が封着される。背面パネル40に排気管60を封着した状態では、背面パネル40の外表面43と排気管60の先端面63とは、主に本体部11を構成するフリットガラスにより接着している。また、排気管60の側面64は、主に突出部21を構成するフリットガラスにより覆われている。放電空間50と排気管60の管内部61とは、背面パネル40の排気孔42とガラス封着体10の貫通孔12を介して連通している。
【0041】
上述したとおり、背面パネル40に封着された排気管60に荷重が掛かった場合に、背面パネル40の外表面43とガラス封着体10との濡れ角(以下、単に「濡れ角」という)θが大きい程、ガラス封着体10の背面パネル40との接触部分に応力が集中しやすく、ガラス封着体10が背面パネル40から剥がれやすくなる。そのため、背面パネル40と排気管60との封着強度が低下する。一方、この濡れ角θが小さい程、ガラス封着体10の背面パネル40との接触部分に掛かる応力が分散され、ガラス封着体10が背面パネル40から剥がれにくくなる。そのため、背面パネル40と排気管60との封着強度を向上できる。
【0042】
図5に示したとおり、比較例1に係る従来のガラス封着体110を用いて背面パネル40に排気管60を封着した場合には、濡れ角は、118°となった。一方、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いて背面パネル40に排気管60を封着した場合には、濡れ角θは、それぞれ89°、89°、90°となり、比較例1に比べて小さくなった。
【0043】
ここで、比較例1に係るガラス封着体110は、その本体部111が板厚方向に拡径していないのに対し、実施例1ないし3に係るガラス封着体10は、その本体部11が板厚方向に拡径し、外周にテーパー面15が形成されている。この構造の相違により、実施例1ないし3に係るガラス封着体10は、比較例1に係るガラス封着体110に比べて、濡れ角θを小さくすることができる。
【0044】
この主な理由について、図6および図12を用いて説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。図12は、従来のガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。
【0045】
まず、従来のガラス封着体110の軟化時のフリットガラスの動きを説明する。図12(a)は、ガラス封着体110の軟化直後の状態を示している。ガラス封着体110を軟化させると、本体部111の外周面付近を構成するフリットガラスP2は、重力により、下向き(Y2)に流動し、突出部121部分に流れ込む。そうすると、表面張力により、図12(b)に示したように、突出部121部分が膨らんで、突出部121部分の厚みD2が厚くなる。その結果、背面パネル140とガラス封着体110との濡れ角θが鈍角となってしまうと考えられる。
【0046】
一方、本実施形態に係るガラス封着体10の軟化時の動きを説明する。図6(a)は、ガラス封着体10の軟化直後の状態を示している。ガラス封着体10を軟化させると、本体部11のテーパー面15付近を構成するフリットガラスP1は、前述と同様に、下向き(Y1)に流動する。すなわち、テーパー面15が背面パネル40の外表面43に対して起立する方向に移動する。また、従来のガラス封着体110を用いた場合に、突出部121部分の厚みD2を厚くする原因となっていた本体部111の外周面付近を構成するフリットガラス(図12(a)におけるP2とその周辺のフリットガラス)を、本実施形態に係るガラス封着体10では、切り落としている。そのため、突出部21部分に流れ込む本体部11を構成するフリットガラスの量が少ないため、図6(b)に示したように、突出部21部分の厚みD2が、従来のガラス封着体110を用いた場合に比べて薄くなる。その結果、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θが、従来のガラス封着体110を用いた場合に比べて小さくなると考えられる。
【0047】
本実施形態に係るガラス封着体10によれば、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θを小さくでき、背面パネル40と排気管60との封着強度を高めることができる。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明のガラス封着体の第2の実施形態について、図7を用いて説明する。図7(a)は、本発明の第2の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVII‐VII矢視断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係るガラス封着体10は、本体部11および突出部21を有する。
【0050】
本体部11は、その中央に貫通孔12が形成された円板状体である。本体部11は、その板厚方向に拡径して、その外周に曲率を有するテーパー面15が形成されている。また、突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、その内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。突出部21の外周面は、本体部11のテーパー面15と連続している。
【0051】
本実施形態に係るガラス封着体10によっても、図5に示した比較例1に係るガラス封着体110を用いた場合に比べて、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θを小さくでき、背面パネル40と排気管60との封着強度を高めることができる。
【0052】
[第3の実施形態]
本発明のガラス封着体の第3の実施形態について、図8を用いて説明する。図8(a)は、本発明の第3の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIII‐VIII矢視断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複説明を省略する。
【0053】
本実施形態に係るガラス封着体10は、本体部11および突出部21を有する。
【0054】
本体部11は、その中央に貫通孔12が形成された円板状体である。本体部11は、その板厚方向に拡径して、その外周にテーパー面15が形成されている。また、突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、その内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。突出部21の本体部11側の一部は、その突出方向(軸方向)に拡径して、その外周にテーパー面23が形成されている。突出部21のテーパー面23は、本体部11のテーパー面15と連続している。
【0055】
本実施形態に係るガラス封着体10によっても、図5に示した比較例1に係るガラス封着体110を用いた場合に比べて、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θを小さくでき、背面パネル40と排気管60との封着強度を高めることができる。
【0056】
[他の実施形態]
第1ないし第3の実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
第1ないし第3の実施形態では、本発明に係るガラス封着体10は、本体部11と突出部21とが同一のフリットガラスにより構成されているが、本体部11と突出部21とが異なるフリットガラスにより構成されていても良い。
【0058】
ところで、放電空間50の排気は、排気効率を高めるため、高温雰囲気下で行われる。しかし、本体部11の軟化点以上の温度で排気すると、本体部11を構成するフリットガラスが軟化して、排気装置に吸い込まれてしまう。一方、ガラス封着体10の全体(本体部11および突出部21)を軟化点の高いフリットガラスで構成すると、濡れ性が低下して、背面パネル40と排気管60との封着強度が低下する。
【0059】
そこで、排気管60の管内部61に隣接する本体部11を、突出部21を構成するフリットガラスに比べて軟化点の高いフリットガラスを適用する。このようにガラス封着体10を構成すれば、より高温下で放電空間50を排気することができ、放電空間50の排気効率を向上できる。
【符号の説明】
【0060】
10…ガラス封着体、11…本体部、12…貫通孔、13…本体部の拡径側の面、14…本体部の縮径側の面、15…本体部のテーパー面、21…突出部、22…環内部、23…突出部のテーパー面、30…前面パネル、31…前面パネルの電極形成面、40…背面パネル、41…背面パネルの電極形成面、42…背面パネルの排気孔、43…背面パネルの外表面、50…放電空間、60…排気管、61…排気管の管内部、62…排気管の先端部、63…排気管の先端面、64…排気管の側面、110…ガラス封着体、130…前面パネル、140…背面パネル、150…放電空間、160…排気管
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置のパネルに排気管を封着するためのガラス封着体に関する。
【背景技術】
【0002】
平面表示装置の背面パネルに排気管を封着するための従来のガラス封着体について、図9ないし図11を用いて説明する。図9(a)は、従来のガラス封着体を示した上面図であり、図9(b)は、図9(a)IX‐IX矢視断面図である。図10は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。図11は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネルなどの平面表示装置は、ガラス基板からなる前面パネル130および背面パネル140を有し、前面パネル130および背面パネル140の一方の面131,141には、それぞれ電極や蛍光面(図示しない)が形成されている。前面パネル130と背面パネル140とは、電極が形成された面131,141同士を対向させて、間隔を空けて配置されている。この間隔は、放電空間150と呼ばれ、ネオン(Ne)やキセノン(Xe)などの放電ガスが充填されている。
【0004】
ここで、平面表示装置の放電空間150の形成過程について、図10および図11を用いて説明する。
【0005】
まず、固定治具(図示しない)により、前面パネル130が上側、背面パネル140が下側に配置されように、前面パネル130および背面パネル140を水平に固定する。背面パネル140には、排気および放電ガスの充填のための排気孔142が形成されている。
【0006】
次に、背面パネル140の排気孔142と排気管160の管内部161とが連通するように、貫通孔112が形成されたガラス封着体110を介して、背面パネル140の下面143に排気管160を下方から押し当てる。
【0007】
次に、背面パネル140に排気管160を押し当てた状態で、フリットガラスからなるガラス封着体110を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル140に排気管160を封着する。
【0008】
その後、排気管160の下端側に排気装置(図示しない)を取り付けて、排気管160を介して、放電空間150の排気および放電ガスの充填を行い、排気管160を封じ切る。
【0009】
ここで、従来のガラス封着体110について、図9を用いて説明する。
【0010】
ガラス封着体110は、本体部111と突出部121とが一体に成型されてなる。本体部111は、その中央に貫通孔112が形成された円板状体である。また、突出部121は、本体部111の一方の面113から突出し、その内径が貫通孔112の径より大きい環状体である。
【0011】
ガラス封着体110を介して背面パネル140に排気管160を下方から押し当てた状態では、本体部111の突出部121と反対側の面114が、背面パネル40の下面143に接触している。また、突出部121の環内部122には、排気管160の先端部162が挿入され、本体部111の突出部121側の面113が、排気管160の先端面163に接触している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−234283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
背面パネル140に封着された排気管160に荷重が掛かると、封着ガラス110が背面パネル140から剥がれ、排気管160が背面パネル140から外れてしまう。特に、図11に示すように、背面パネル140とガラス封着体110との濡れ角θが大きい程、ガラス封着体110が背面パネル140から剥がれやすい。
【0014】
一方、この濡れ角θが小さい程、ガラス封着体110が背面パネル140から剥がれにくく、背面パネル140と排気管160との封着強度を高めることができる。理想的には、ガラス封着体110が背面パネル140の下面143に向かって裾が広がるような形状(濡れ角θが90°以下)となるのが好ましい。
【0015】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、パネルと封着ガラスとの濡れ角を小さくして、パネルと排気管との封着強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明に係るガラス封着体は、平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と前記排気管の環内部とが連通するように前記パネルの外表面に前記排気管を封着するガラス封着体であって、中央に貫通孔が形成され、板厚方向に拡径して外周にテーパー面が形成された円板状の本体部と、前記本体部の拡径側の面から突出し、内径が前記貫通孔の径より大きい環状の突出部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パネルと封着ガラスとの濡れ角が小さくなり、パネルと排気管との封着強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のI−I矢視断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の製造過程を示したフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体(実施例1ないし3)および比較例1に係るガラス封着体の組成、形状および評価を示した表である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のVII−VII矢視断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】従来のガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のIX−IX矢視断面図である。
【図10】従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図11】従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図12】従来のガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明のガラス封着体の第1の実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係るガラス封着体10が適用される平面表示装置について、図2および図3を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【0021】
ガラス封着体10が適用される平面表示装置として、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマアドレスリキッドクリスタルディスプレイ(PALC)、あるいは、蛍光表示管(VFD)が挙げられる。以下、PDPを例にして説明する。
【0022】
PDPは、ガラス基板からなる前面パネル30および背面パネル40を有する。図示しないが、前面パネル30の一方の面(電極形成面)31上には、表示電極が形成され、背面パネル40の一方の面(電極形成面)41上には、アドレス電極や蛍光面が形成されている。前面パネル30と背面パネル40とは、互いの電極形成面31,41同士を対向させて、間隔を空けて配置されている。この間隔は、放電空間50と呼ばれ、ネオン(Ne)やキセノン(Xe)などの放電ガスが充填されている。
【0023】
ここで、平面表示装置の放電空間50の形成過程について、図2および図3を用いて説明する。
【0024】
まず、固定治具(図示しない)により、前面パネル30が上側、背面パネル40が下側に配置されように、前面パネル30および背面パネル40を水平に固定する。背面パネル40には、排気および放電ガスの充填のための排気孔42が形成されている。
【0025】
次に、背面パネル40の排気孔42の軸中心、ガラス封着体10の軸中心、および、排気管60の軸中心が一致するように、ガラス封着体10を介して、背面パネル40の下面(背面パネル40の外表面)43に排気管60を下方から垂直に押し当てる。このとき、ガラス封着体10は、背面パネル40と排気管60とにより狭持されている。ガラス封着体10には、貫通孔12が形成されているため、背面パネル40の排気孔42と排気管60の管内部61とが連通している。
【0026】
次に、背面パネル40に排気管60を押し当てた状態で、フリットガラスからなるガラス封着体10を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル40に排気管60を封着する。
【0027】
その後、排気管60の下端側に排気装置(図示しない)を取り付けて、排気管60の管内部61を介して、放電空間50の排気および放電ガスの充填を行い、排気管60を封じ切る。
【0028】
次に、本実施形態に係るガラス封着体10の構造について、図1ないし図3を用いて説明する。図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図1(b)は、図1(a)のI‐I矢視断面図である。
【0029】
ガラス封着体10は、本体部11と突出部21とが一体に成型されてなる。図1において、説明の都合上、本体部11と突出部21との境界を点線で描いた。
【0030】
本体部11は、その中央に貫通孔12が形成された円板状体である。本体部11は、その板厚方向(軸方向)に拡径して、その外周にテーパー面15が形成されている。また、突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、その内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。突出部21の外周面は、本体部11のテーパー面15と連続している。
【0031】
ガラス封着体10を介して背面パネル40に排気管60を押し当てた状態では、本体部11の拡径側の面13と反対側の面(本体部11の縮径側の面)14が、背面パネル40の外表面(背面パネル40の下面)43に接触している。また、突出部21の環内部22には、排気管60の先端部62が挿入され、本体部11の拡径側の面13が、排気管60の先端面63に接触している。
【0032】
なお、排気管60の先端部62が突出部21の環内部22に挿入できるように、突出部21の内径は、排気管60の先端面63の外径より僅かに大きい。また、本体部11の貫通孔12の径は、排気管60の先端面63の内径より小さい。
【0033】
ガラス封着体10は、フリットガラスを含む。このフリットガラスは、鉛ホウ酸系ガラスでも良いが、環境上の観点から、ビスマス系ガラスが好ましい。背面パネル40および排気管60を構成するガラスの軟化点は、700〜850℃程度であるが、ガラス封着体10を構成するフリットガラスの軟化点は、それに比べて低く、例えば、400〜500℃程度である。
【0034】
次に、図5に示した実施例1ないし3に係るガラス封着体10の製造方法について、図4および図5を用いて説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の製造過程を示したフローチャートである。図5は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体(実施例1ないし3)および比較例1に係るガラス封着体の組成、形状および評価を示した表である。
【0035】
まず、図5に示したガラス組成となるように、各酸化物(Bi2O3,B2O3,ZnO,Al2O3,SiO2,CeO2,Fe2O3,CuO)を調合したガラスバッチを用意する(S1)。このガラスバッチを熔解し、フレーク状に成形(S2)した後、粉砕して、ガラス粉末を得る(S3)。
【0036】
次に、ガラス粉末にコージェライト、ジルコン、および、有機バインダを加えて混練し(S4)、スプレードライヤにより造粒する(S5)。その後、この造粒物を金型に入れて、図5に示した形状にプレス成型する(S6)。この成型物を焼成して(S7)、フリットガラスからなる実施例1〜3に係るガラス封着体10を得る。
【0037】
なお、実施例1〜3に係るガラス封着体10は、互いに、本体部11の拡径側の面13の径(突出部21の外径)R1と本体部11の縮径側の面14の径R2との比R2/R1が異なる。
【0038】
図5に示した比較例1に係るガラス封着体110についても、同様に製造されたものである。
【0039】
次に、本実施形態に係るガラス封着体10の作用について、図3、図5および図11を用いて説明する。
【0040】
背面パネル40に排気管60を下方から押し当てた状態で、ガラス封着体10を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル40に排気管60が封着される。背面パネル40に排気管60を封着した状態では、背面パネル40の外表面43と排気管60の先端面63とは、主に本体部11を構成するフリットガラスにより接着している。また、排気管60の側面64は、主に突出部21を構成するフリットガラスにより覆われている。放電空間50と排気管60の管内部61とは、背面パネル40の排気孔42とガラス封着体10の貫通孔12を介して連通している。
【0041】
上述したとおり、背面パネル40に封着された排気管60に荷重が掛かった場合に、背面パネル40の外表面43とガラス封着体10との濡れ角(以下、単に「濡れ角」という)θが大きい程、ガラス封着体10の背面パネル40との接触部分に応力が集中しやすく、ガラス封着体10が背面パネル40から剥がれやすくなる。そのため、背面パネル40と排気管60との封着強度が低下する。一方、この濡れ角θが小さい程、ガラス封着体10の背面パネル40との接触部分に掛かる応力が分散され、ガラス封着体10が背面パネル40から剥がれにくくなる。そのため、背面パネル40と排気管60との封着強度を向上できる。
【0042】
図5に示したとおり、比較例1に係る従来のガラス封着体110を用いて背面パネル40に排気管60を封着した場合には、濡れ角は、118°となった。一方、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いて背面パネル40に排気管60を封着した場合には、濡れ角θは、それぞれ89°、89°、90°となり、比較例1に比べて小さくなった。
【0043】
ここで、比較例1に係るガラス封着体110は、その本体部111が板厚方向に拡径していないのに対し、実施例1ないし3に係るガラス封着体10は、その本体部11が板厚方向に拡径し、外周にテーパー面15が形成されている。この構造の相違により、実施例1ないし3に係るガラス封着体10は、比較例1に係るガラス封着体110に比べて、濡れ角θを小さくすることができる。
【0044】
この主な理由について、図6および図12を用いて説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。図12は、従来のガラス封着体の軟化時のフリットガラスの動きを説明するための一部断面図である。
【0045】
まず、従来のガラス封着体110の軟化時のフリットガラスの動きを説明する。図12(a)は、ガラス封着体110の軟化直後の状態を示している。ガラス封着体110を軟化させると、本体部111の外周面付近を構成するフリットガラスP2は、重力により、下向き(Y2)に流動し、突出部121部分に流れ込む。そうすると、表面張力により、図12(b)に示したように、突出部121部分が膨らんで、突出部121部分の厚みD2が厚くなる。その結果、背面パネル140とガラス封着体110との濡れ角θが鈍角となってしまうと考えられる。
【0046】
一方、本実施形態に係るガラス封着体10の軟化時の動きを説明する。図6(a)は、ガラス封着体10の軟化直後の状態を示している。ガラス封着体10を軟化させると、本体部11のテーパー面15付近を構成するフリットガラスP1は、前述と同様に、下向き(Y1)に流動する。すなわち、テーパー面15が背面パネル40の外表面43に対して起立する方向に移動する。また、従来のガラス封着体110を用いた場合に、突出部121部分の厚みD2を厚くする原因となっていた本体部111の外周面付近を構成するフリットガラス(図12(a)におけるP2とその周辺のフリットガラス)を、本実施形態に係るガラス封着体10では、切り落としている。そのため、突出部21部分に流れ込む本体部11を構成するフリットガラスの量が少ないため、図6(b)に示したように、突出部21部分の厚みD2が、従来のガラス封着体110を用いた場合に比べて薄くなる。その結果、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θが、従来のガラス封着体110を用いた場合に比べて小さくなると考えられる。
【0047】
本実施形態に係るガラス封着体10によれば、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θを小さくでき、背面パネル40と排気管60との封着強度を高めることができる。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明のガラス封着体の第2の実施形態について、図7を用いて説明する。図7(a)は、本発明の第2の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVII‐VII矢視断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係るガラス封着体10は、本体部11および突出部21を有する。
【0050】
本体部11は、その中央に貫通孔12が形成された円板状体である。本体部11は、その板厚方向に拡径して、その外周に曲率を有するテーパー面15が形成されている。また、突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、その内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。突出部21の外周面は、本体部11のテーパー面15と連続している。
【0051】
本実施形態に係るガラス封着体10によっても、図5に示した比較例1に係るガラス封着体110を用いた場合に比べて、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θを小さくでき、背面パネル40と排気管60との封着強度を高めることができる。
【0052】
[第3の実施形態]
本発明のガラス封着体の第3の実施形態について、図8を用いて説明する。図8(a)は、本発明の第3の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIII‐VIII矢視断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複説明を省略する。
【0053】
本実施形態に係るガラス封着体10は、本体部11および突出部21を有する。
【0054】
本体部11は、その中央に貫通孔12が形成された円板状体である。本体部11は、その板厚方向に拡径して、その外周にテーパー面15が形成されている。また、突出部21は、本体部11の拡径側の面13から突出し、その内径が貫通孔12の径より大きい環状体である。突出部21の本体部11側の一部は、その突出方向(軸方向)に拡径して、その外周にテーパー面23が形成されている。突出部21のテーパー面23は、本体部11のテーパー面15と連続している。
【0055】
本実施形態に係るガラス封着体10によっても、図5に示した比較例1に係るガラス封着体110を用いた場合に比べて、背面パネル40とガラス封着体10との濡れ角θを小さくでき、背面パネル40と排気管60との封着強度を高めることができる。
【0056】
[他の実施形態]
第1ないし第3の実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
第1ないし第3の実施形態では、本発明に係るガラス封着体10は、本体部11と突出部21とが同一のフリットガラスにより構成されているが、本体部11と突出部21とが異なるフリットガラスにより構成されていても良い。
【0058】
ところで、放電空間50の排気は、排気効率を高めるため、高温雰囲気下で行われる。しかし、本体部11の軟化点以上の温度で排気すると、本体部11を構成するフリットガラスが軟化して、排気装置に吸い込まれてしまう。一方、ガラス封着体10の全体(本体部11および突出部21)を軟化点の高いフリットガラスで構成すると、濡れ性が低下して、背面パネル40と排気管60との封着強度が低下する。
【0059】
そこで、排気管60の管内部61に隣接する本体部11を、突出部21を構成するフリットガラスに比べて軟化点の高いフリットガラスを適用する。このようにガラス封着体10を構成すれば、より高温下で放電空間50を排気することができ、放電空間50の排気効率を向上できる。
【符号の説明】
【0060】
10…ガラス封着体、11…本体部、12…貫通孔、13…本体部の拡径側の面、14…本体部の縮径側の面、15…本体部のテーパー面、21…突出部、22…環内部、23…突出部のテーパー面、30…前面パネル、31…前面パネルの電極形成面、40…背面パネル、41…背面パネルの電極形成面、42…背面パネルの排気孔、43…背面パネルの外表面、50…放電空間、60…排気管、61…排気管の管内部、62…排気管の先端部、63…排気管の先端面、64…排気管の側面、110…ガラス封着体、130…前面パネル、140…背面パネル、150…放電空間、160…排気管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と前記排気管の管内部とが連通するように前記パネルの外表面に前記排気管を封着するガラス封着体であって、
中央に貫通孔が形成され、板厚方向に拡径して外周にテーパー面が形成された円板状の本体部と、
前記本体部の拡径側の面から突出し、内径が前記貫通孔の径より大きい環状の突出部と、
を具備したことを特徴とするガラス封着体。
【請求項2】
前記本体部と前記突出部とが一体成型されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス封着体。
【請求項3】
ビスマス系フリットガラスを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス封着体。
【請求項4】
前記突出部の内径が前記排気管の先端面の外径より大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項5】
前記貫通孔の径が前記排気管の先端面の内径より小さいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項6】
上方を向いた前記本体部の縮径側の面が前記パネルの外表面に接触し、かつ、下方を向いた前記本体部の拡径側の面が前記突出部の内部を貫通した前記排気管の先端面に接触した状態で、パネルの外表面と排気管の先端面とにより狭持されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項7】
前記本体部の軟化点が前記突出部の軟化点より高いことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項1】
平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と前記排気管の管内部とが連通するように前記パネルの外表面に前記排気管を封着するガラス封着体であって、
中央に貫通孔が形成され、板厚方向に拡径して外周にテーパー面が形成された円板状の本体部と、
前記本体部の拡径側の面から突出し、内径が前記貫通孔の径より大きい環状の突出部と、
を具備したことを特徴とするガラス封着体。
【請求項2】
前記本体部と前記突出部とが一体成型されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス封着体。
【請求項3】
ビスマス系フリットガラスを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス封着体。
【請求項4】
前記突出部の内径が前記排気管の先端面の外径より大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項5】
前記貫通孔の径が前記排気管の先端面の内径より小さいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項6】
上方を向いた前記本体部の縮径側の面が前記パネルの外表面に接触し、かつ、下方を向いた前記本体部の拡径側の面が前記突出部の内部を貫通した前記排気管の先端面に接触した状態で、パネルの外表面と排気管の先端面とにより狭持されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項7】
前記本体部の軟化点が前記突出部の軟化点より高いことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−277874(P2010−277874A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130017(P2009−130017)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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