キク科植物の葉緑体の形質転換方法
【課 題】 本発明の課題は、有害な二次代謝物を生産することなく、キク科植物葉緑体に医療用タンパク質などの有用タンパク質を効率よく発現させることができる形質転換方法を提供するものである。
【解決手段】 キク科植物葉緑体ゲノム由来のリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子の間に、キク科植物葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターおよびpsbA遺伝子のターミネーターを有し、さらに前記プロモーターおよびターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有するベクターをキク科植物の葉緑体に導入する。
【解決手段】 キク科植物葉緑体ゲノム由来のリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子の間に、キク科植物葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターおよびpsbA遺伝子のターミネーターを有し、さらに前記プロモーターおよびターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有するベクターをキク科植物の葉緑体に導入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キク科植物の葉緑体の形質転換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、タンパク質の工業的な生産方法については、既に、医薬として有用なタンパク質などを発現する遺伝子を大腸菌や植物の核染色体へ導入し、該遺伝子を発現させることによって医療用タンパク質などを製造する研究が各国で進んでいる。しかし、大腸菌など細菌を使った場合、最終製品への毒素の混入を防ぎきれない。また、植物の核ゲノムに遺伝子導入した形質転換植物によるタンパク質の生産方法が開発されてきたが、タンパク質の生産量が低いなど課題点が残されていた。また、植物の核への遺伝子導入の場合、花粉の飛散による自然界への遺伝子の伝播が問題視されている。そのような中、植物葉緑体ゲノムへの形質転換法がMaligaらによってタバコで実用化された。葉緑体形質転換はこれまで行われてきた植物の核ゲノムへの形質転換と比較して葉緑体が大量のタンパク質を生産、蓄積する能力を有することが大きな特徴となっている。葉緑体形質転換のその他の特徴として葉緑体の遺伝情報が一般に母性遺伝で、花粉を介した導入遺伝子の水平伝播の可能性が低いことや、葉緑体のポリシストロニックな制御を活かした多重遺伝子発現などの利点が挙げられる。このような利点から、形質転換した葉緑体はタンパク質などの物質生産を行うのに有用な系として注目され始めている。例えば、目的タンパク質をタバコ葉緑体において高度に発現させることができるベクターが知られている。このベクターは、psbAプロモーターと、タンパク質をコードする遺伝子の翻訳開始点の上流にリボゾーム結合部位を有することを特徴としている(特許文献1参照。)。本方法は、薬理活性を有するタンパク質、医薬品工業用材料などとして有用なタンパク質を、微生物による製造にかえて、タバコを使用して製造することを目的としたものである。しかし、この方法は、形質転換される植物がタバコであるため、タバコの二次代謝産物として体に有害な物質も生産することから医療用などの高度な精製が要求されるタンパク質生産には不向きであると言える。
【0003】
キク科植物の形質転換としては、例えば、レタスビッグベインウイルスタンパク質の産生や機能を抑制するDNAをレタス細胞に導入することによって得られるレタスビッグベインウイルス抵抗性レタス(特許文献1参照。)や、レタス感染性黄化ウイルス蛋白質の遺伝子または遺伝子の一部分を含む植物形質転換ベクターを用いて形質転換したレタス(特許文献2)などが知られている。しかし、これらいずれの形質転換レタスの場合も、遺伝子を用いて構築されたプラスミドをアグロバクテリウムに導入し、葉ディスクに感染させることによって、各遺伝子を葉の核ゲノムに導入されるものであり、葉緑体に直接遺伝子が導入されるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−272476号公報
【特許文献2】国際公開第01/090362号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/02056号パンフレット
【非特許文献1】ゾラ・スバブ(Zora Svab)他2名、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステート・オブ・アメリカ(Proc.Natl Acad.Sci.USA)、1990年、第87巻、p.8526−8530
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、有害な二次代謝物を生産することなく、キク科植物葉緑体に医療用タンパク質などの有用タンパク質を効率よく発現させることができる形質転換方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、生育が早く、有害な二次代謝物を生産する可能性の低い植物としてキク科植物のレタスに注目した。またレタスは水耕栽培を利用した植物工場での栽培も可能であることから、レタスを用いて天候や病虫害に左右されない安定したタンパク質の生産システムを構築することを試みた。このようなことから、本発明者らは、レタス葉緑体でのタンパク質の生産方法につき鋭意研究をおこなった。まずレタス葉緑体由来の塩基配列の取得および外来遺伝子を導入する位置の検討を行うためにレタス葉緑体の全塩基配列を決定した。決定したレタス葉緑体の塩基配列からレタス葉緑体ゲノムと効率的な相同組み換えを可能にする相同配列(リブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子)と、レタス葉緑体において確実に導入遺伝子を発現させるためのレタス葉緑体ゲノム由来発現調節配列(rRNAオペロンのプロモーターとpsbA遺伝子のターミネーター)を有するベクターを構築した。本発明者らは、さらに構築したベクターを使用して、レタス葉緑体ゲノムへの遺伝子導入法についても検討を重ねた。また、本発明者らは、レタス葉緑体ゲノムへ遺伝子が導入されたレタスの葉細胞が植物個体へと再生するステップの重要性にも注目し、レタス葉緑体ゲノムへ遺伝子を導入したレタスの葉切片の再分化条件についても研究を進め、さらにこのようにして得られた植物固体の栽培方法についても検討し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを含有することを特徴とするキク科植物の葉緑体形質転換用ベクター、
(2) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAが、レタス葉緑体由来のDNAであることを特徴とする前記(1)に記載のベクター、
(3) キク科植物が、レタスであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のベクター、
(4) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを複数含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のベクター、
(5) レタス葉緑体ゲノム由来のDNAが、リブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子およびアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子であることを特徴とする前記(4)に記載のベクター、
(6) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAの間に少なくとも1種の制限酵素切断部位を有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のベクター、
(7) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNA配列の間に葉緑体で機能するプロモーター、ターミネーターを有し、さらに前記プロモーターとターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のベクター、
(8) プロモーターが、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターであることを特徴とする前記(7)に記載のベクター、
(9) レタス葉緑体ゲノム由来のリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子の間に、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターおよびpsbA遺伝子のターミネーターを有し、さらに前記プロモーターおよびターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有するベクター、
(10) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたキク科植物、
(11) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたレタス、
(12) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入することを特徴とするキク科植物葉緑体の形質転換方法、
(13) ベクターの導入が、パーティクルガンを用いることを特徴とする前記(12)に記載の形質転換方法、
(14) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入し、前記キク科植物の葉細胞を植物培養用培地で培養することを特徴とする形質転換植物体の製造方法、
(15) 植物培養用培地が、ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L0.01〜1mg/L並びにカイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/Lを含有することを特徴とする前記(14)に記載の形質転換植物体の製造方法、
(16) オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする前記(15)に記載の形質転換植物体の製造方法、
(17) 植物培養用培地が、さらにポリビニルピロリドンを100〜1000ppm含有することを特徴とする前記(15)または(16)に記載の形質転換植物体の製造方法、
(18) ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L、カイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/L、およびポリビニルピロリドン100〜1000ppmを含有することを特徴とする形質転換キク科植物の葉培養用培地、
(19) オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする前記(18)に記載の培地、および
(20) キク科植物がレタスであることを特徴とする前記(18)または(19)に記載の培地、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のベクターは、確実にキク科植物の葉緑体へ、発現タンパク質をコードする遺伝子を導入できる。
キク科植物の葉緑体のうち特にレタス葉緑体の形質転換技術は、有害な二次代謝産物の含有量が少ないことなどからこれまでに作出されてきたタバコなどの葉緑体形質転換植物と比較して、これまでよりも安全に有用なタンパク質を生産できるシステムの構築が可能となる。また、レタスは水耕栽培法が確立されていることから、本発明により形質転換されるレタスは、植物工場を利用して工業的に大量生産ができるので、安全かつ安価にタンパク質を生産でき、かつ天候や病虫害に左右されないので、安定したタンパク質の生産システムを構築できる。
また、本発明の形質転換技術により、葉緑体にメタロチオネイン遺伝子(例.merA遺伝子など)を導入し形質転換されたキク科植物は、土壌などの環境中の有害重金属や水銀などを無害化または無毒化し得るので、ファイトレメディエーション(Phyto Remediation;植物を利用した環境浄化技術)に利用できる。また、本発明の形質転換技術により、葉緑体に病中害耐性遺伝子や除草剤耐性遺伝子などを導入することにより、害虫抵抗性や除草剤耐性のキク科植物を製造することができる。さらに、本発明の形質転換技術により、葉緑体に抗酸化作用を有するカロテノイドやビタミンEなどの生合成に関る遺伝子を導入することにより、キク科植物の例えばヒマワリや紅花などにおいて、該ヒマワリや紅花などが生成する油脂類中のカロテノイドやビタミンEなどの有用成分の含有量を上げることが可能となる。また、本発明のベクターを用いて光合成に関与する例えばフルクトース1,6−ビスホスファターゼ遺伝子やセドヘプツロース1,7−ビスホスファターゼ遺伝子を導入することにより、該遺伝子が導入されたキク科植物は、野生株に比べて、背丈が大きく、また葉の面積も大きく、早く生育し、かつ糖やデンプンの合成能力が増大し得る。
本発明によって形質転換されるキク科植物は、発現タンパク質をコードする遺伝子が核ゲノムではなく、葉緑体ゲノムに直接導入されるため、導入された遺伝子の花粉による拡散の予防が可能である。すなわち、例えば核に遺伝子が導入された植物のように、花粉が風や昆虫により広範囲に撒き散らされ、動植物界への悪影響を与えるなどの環境汚染を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられるキク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAとしては、例えばリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子(以下、rbcL遺伝子と略記する。)またはアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子(以下、accD遺伝子と略記する。)などが挙げられる。
rbcL遺伝子は、葉緑体ゲノムにコードされているRubiscoの遺伝子である。Rubiscoは、光合成CO2固定反応回路(カルビンサイクル)において,初発段階であるCO2固定反応(カルボキシラーゼ反応)を触媒し、前記回路における代謝回転の律速となる鍵酵素である。また、該酵素は酸素(O2)を固定する反応(オキシゲナーゼ反応)も触媒する。rbcL遺伝子は、とりわけレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子が好ましい。
レタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子は、例えばレタス葉緑体全ゲノム塩基配列から、既に明らかになっているタバコ葉緑体ゲノムのrbcLの塩基配列との相同性から決定される。このようにして決定されたレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子とその近傍の塩基配列は、配列表の配列番号1(1640bp)で示される。前記配列番号1の塩基配列中の1個または複数個の塩基、例えば、1〜150個の塩基が欠失されるか、または別の塩基に置換されるか、または1〜150個の別の塩基を付加されるかして改変されたDNAがrbcL遺伝子と相同的組換えし得る配列であれば好ましく用いることができる。
【0009】
accD遺伝子は、葉緑体ゲノムにコードされているアセチルCoAカルボキシラーゼの遺伝子である。アセチルCoAカルボキシラーゼは、植物において脂肪酸合成に関与している酵素である。accD遺伝子としては、レタス葉緑体ゲノム由来のaccD遺伝子が好ましい。
レタス葉緑体ゲノム由来のaccD遺伝子は、例えばレタス葉緑体全ゲノム塩基配列から、すでに明らかになっているタバコ葉緑体ゲノムのaccDの塩基配列との相同性から決定される。このようにして決定されたレタス葉緑体ゲノム由来のaccD遺伝子とその近傍の塩基配列は、配列表の配列番号2(1057bp)で示される。前記配列番号2の塩基配列中の1個または複数個の塩基、例えば、1〜100個の塩基が欠失されるか、または別の塩基に置換されるか、または1〜100個の別の塩基を付加されるかして改変されたDNAがaccD遺伝子と相同的組換えし得る配列であれば好ましく用いることができる。
【0010】
本発明において、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子とaccD遺伝子とを用いることにより、ベクターに導入される発現タンパク質をコードする遺伝子が、相同組換えによりレタス葉緑体ゲノムに組み込まれやすくなり、さらにレタス葉緑体での発現タンパク質の発現量が多くなるという利点がある。
また、本発明において、葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子とaccD遺伝子はそれらの全長を使う必要はない。例えばrbcL遺伝子とaccD遺伝子との間の非コード領域の、被導入遺伝子の導入位置からrbcL遺伝子側またはaccD遺伝子側にそれぞれ約1000〜1500程度の塩基対の長さを有し、rbcL遺伝子またはaccD遺伝子とそれぞれ相同的組換えし得る配列であればよい。
【0011】
上記rbcL遺伝子とaccD遺伝子の間には、少なくとも1種、好ましくは2種以上の制限酵素切断部位(以下、制限酵素サイトとも言う。)を有することが好ましい。制限酵素サイトは、制限酵素で認識され切断される部位を含む配列であればいずれの配列も好ましく用いることができる。制限酵素サイトとしては、例えばPstIサイト、NotIサイト、SalIサイト、またはEco47IIIサイトなどが好ましく挙げられる。これら制限酵素サイトは、各々制限酵素PstI、NotI、SalI、またはEco47IIIで切断され得る。
【0012】
また、上記rbcL遺伝子とaccD遺伝子の間には、キク科植物(好ましくはレタス)葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーター(以下、Prrnと略記する。)およびpsbA遺伝子のターミネーター(以下、TpsbAと略記する。)を有する。
上記したキク科植物(好ましくはレタス)のPrrnおよびTpsbAは、例えばレタス葉緑体全ゲノム塩基配列から、すでに明らかになっているタバコ葉緑体ゲノムのPrrnおよびTpsbAの塩基配列との相同性から決定される。このようにして決定された例えばレタス葉緑体ゲノム由来のPrrnは配列表の配列番号3(113bp)で示され、レタス葉緑体ゲノム由来のTpsbAは、配列表の配列番号4(339bp)で示される。前記配列番号3または4の塩基配列のうち、1個または複数個の塩基、例えば、1〜10個の塩基が欠失されるか、または別の塩基に置換されるか、または1〜10個の別の塩基を付加されるかして改変されたDNAであって、それぞれ発現タンパク質をコードする遺伝子の転写開始および転写終結を認識できる配列であればいずれも好ましく用いることができる。
【0013】
また、上記プロモーターおよびターミネーターは、発現タンパク質をコードする遺伝子の転写開始および転写終結を認識できるものであれば、上記プロモーターおよびターミネーターに限定されず、他のプロモーターおよびターミネーターであってもよい。このようなプロモーターとしては、例えばpsbAプロモーター、rbcLプロモーター、psbDプロモーターまたはatpBプロモーター等が挙げられる。これらプロモーターも、葉緑体ゲノム由来のプロモーターが好ましく、レタス葉緑体ゲノム由来のプロモーターがより好ましい。また該ターミネーターとしては、例えばrps16ターミネーターが挙げられる。
【0014】
本発明において発現タンパク質とは、本発明に係る発現系を用いて発現させたいタンパク質であり、本発現系を用いて発現できるタンパク質であればその種類は特に限定されず、キク科植物固有のタンパク質でも、また外来遺伝子由来のタンパク質でもよい。このような発現タンパク質としては、例えば薬理活性を有する医療用タンパク質(例.インスリン、インターフェロン、エリスロポエチン、インターロイキン、ヒトソマトスタチン、ティッシュプラスミノーゲンアクチベーターなど)または工業用材料などとして有用なタンパク質を製造するのに必要な酵素(例.セルラーゼ、ニトリルヒドラターゼなど)等が挙げられる。
また上記発現タンパク質としては、植物自体が有する酵素、例えば光合成に関与する酵素(例.フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、トランスケトラーゼなど)や植物体で生産される有用成分の生合成に関わる酵素(例.カロテノイド生合成酵素など)、あるいは病虫害耐性タンパク質(例.バチルス・チューリンゲス毒素など)や除草剤耐性タンパク質(例.5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素など)等も挙げられる。
また、上記発現タンパク質としては、ファイトレメディエーションのための例えば有害重金属イオンと結合するメタロチオネインなども挙げることができる。
【0015】
本発明におけるベクターは、特開2002−272476号公報に記載のpLD6(配列番号17;4591bp)プラスミドおよびpLD200(配列番号18;5581bp)プラスミドを利用することにより構築できる。すなわち、pLD6プラスミドおよびpLD200プラスミドに導入されているタバコ葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子およびaccD遺伝子をキク科植物(好ましくはレタス)葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子およびaccD遺伝子に置き換えることにより作成することができる。遺伝子の置き換えは制限酵素でタバコ葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子またはaccD遺伝子を切り出し、その代わりにキク科植物(好ましくはレタス)葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子またはaccD遺伝子を導入することにより行われる。
【0016】
まず、pLD6のNotIおよびEco47IIIサイトが制限酵素NotIおよびEco47IIIを用いて切断される。次いで前記制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号17に記載された配列のヌクレオチド2220〜2345の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のPrrnを含む領域)が例えばレタス葉緑体ゲノム由来のPrrn(配列番号3;113bp)に置き換えられる。
また、pLD6のPstIおよびSalIサイトは制限酵素PstIおよびSalIを用いて切断され、該制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号17に記載された配列のヌクレオチド3174〜3913の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のTpsbAを含む領域)が、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のTpsbA(配列番号4;339bp)に置き換えられる。このようにしてpLD6のタバコ葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbA配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbAの塩基配列に置き換えられたプラスミドを作成することができる。発現タンパク質をコードする塩基配列は上記レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbAの間に配される。
【0017】
一方、pLD200のEcoRIおよびNotIサイトは制限酵素EcoRIおよびNotIで切断され、該制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号18に記載された配列のヌクレオチド396〜2126の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のrbcLを含む領域)が、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL(配列番号1;1640bp)に置き換えられる。また、pLD200のSalIおよびHindIIIサイトは制限酵素SalIおよびHindIIIで切断され、該制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号18に記載された配列のヌクレオチド2141〜3342の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のaccDを含む領域)が、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のaccD(配列番号2;1057bp)に置き換えられる。このようにしてpLD200のタバコ葉緑体ゲノム由来のrbcLおよびaccD配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbAの塩基配列に置き換えたプラスミドを作成することができる。
【0018】
次いで、レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnとTpsbA配列に置き換えられたpLD6から制限酵素NotI、SalIを用いて発現タンパク質の発現に必要な塩基配列(配列番号17に記載された配列ではヌクレオチド2220〜3913に相当する領域)を切り出し、レタス葉緑体ゲノム由来のrbcLおよびaccD遺伝子に置き換えられたpLD200のNotI、SalIサイトに制限酵素NotI、SalIを用いて導入される。該導入される領域は、配列番号18に記載された配列ではヌクレオチド2127〜2141に相当する領域である。このようにして発現タンパク質の発現とレタス葉緑体ゲノムのrbcLとaccD遺伝子の領域での相同組み換えを生じさせるベクターを作成できる。
【0019】
また、上記ベクターには、遺伝子組換え体を識別するための遺伝子を有することが好ましい。遺伝子組換え体を識別するための遺伝子としては、特に限定されず、自体公知のものを用いてよい。例えば、各種薬剤耐性遺伝子があげられる。より具体的には、カナマイシン耐性遺伝子(NPT)、スペクチノマイシン耐性遺伝子(aadA)、ベタインアルデヒド脱水素酵素遺伝子(BADH)等が挙げられる。また、該遺伝子の上流、下流には、それぞれ該遺伝子を発現制御するためのプロモーターおよびターミネーター配列を配することが好ましい。例えば、aadA遺伝子を葉緑体で発現させるためには、上記した植物由来のプロモーター及びターミネーターを好ましく使用できるが、rrnプロモーターおよびpsbAターミネーターが特に好適である。
【0020】
このようにして作製されたベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を作製する。このとき、宿主細胞としては、キク科植物細胞が好ましく、キク科植物葉細胞がより好ましく、キク科植物の葉緑体がさらに好ましく、レタス葉緑体が特に好ましい。本発明のベクターを宿主細胞、特に葉緑体へ導入して形質転換する方法としては、公知の方法、例えばパーティクルガン法(Svab,Z.,Hajdukiewicz,P.,and Maliga,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990年,第87巻,p.8526−8530)やPEG法(Golds,T.,Maliga,P.,and Koop,H.−U.,Bio/Technol.,1993年,第11巻,p.95−97)等を好ましく用いることができる。例えば、パーティクルガン法は、ベクターを金またはタングステンの極めて細かい粒子にまぶし、この該ベクターの付着した粒子を火薬または高圧ガスで宿主細胞に打ち込むことにより、ベクターを宿主細胞に導入することができる。
【0021】
ベクターが導入されたキク科植物の葉細胞、例えばレタス葉細胞は、植物培養用培地で培養し植物体とすることができる。植物培養用培地は、ガンボルグ(Gamborg)B5、ムラシゲ・スクーグ(Murashige−Skoog;MS)、ニッチ・ニッチ(Nitch&Nitch)などのような無機塩、ビタミン類を含有する基礎培地に、植物ホルモンを加えたものが好ましい。基礎培地としては特にMS培地が好ましい。植物ホルモンとしては、オーキシンおよびサイトカイニンを組み合わせるのがよい。オーキシンとしては、ナフタレン酢酸(以下、NAAと略記する。)、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸または2,4−ジクロロフェノキシ酢酸などが挙げられ、NAAが特に好ましい。サイトカイニンとしては、カイネチン,ゼアチンまたはベンジルアデニン(以下、BAと略記する。)、イソペンテニルアデニンなどが挙げられ、BAが特に好ましい。基礎培地に添加するオーキシンおよびサイトカイニンの濃度は、使用するオーキシンおよびサイトカイニンにより異なるが、オーキシンは約0.01〜1.0mg/L、好ましくは約0.05〜0.2mg/L、さらに好ましくは約0.1mg/L、サイトカイニンは約0.01〜1.0mg/L、好ましくは約0.05〜0.2mg/L、さらに好ましくは約0.1mg/Lとなるよう添加される。オーキシンに対するサイトカイニンの割合(重量比)は、約1:0.8〜1.2が好ましい。培地にはさらに、ポリビニルピロリドン(PVP)を約100〜1000ppm、好ましくは約300〜700mg/L、さらに好ましくは約400〜600ppmを添加するのがよい。培地にオーキシンやサイトカイニンを加えることにより、形質転換されたキク科植物、とりわけレタスの再分化を促進するようになり、またPVPの添加によって培養時の褐変による枯死が防止できる。
【0022】
また、上記培地には、炭素源としての糖類や、ビタミン類、培地を固めるための支持体などを添加するのがよい。糖類としては、例えばショ糖などが挙げられる。糖類の添加量は、約1〜10重量%、好ましくは約2〜5重量%程度である。ビタミン類としては、例えば塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸またはイノシトールなどが挙げられる。支持体としては、例えば寒天、ゲランガムまたはペーパーブリッジなどが挙げられる。支持体の濃度は、培地のpHなどにより異なるが、例えばゲランガムの場合、約0.2〜0.3重量%程度が好ましい。
また、上記培地には、アミノ酸(例.グリシンなど)、アデニンおよび/またはココナツウォーターなどを添加してもよい。
培地は、通常水酸化カリウムなどでpH約4〜8、好ましくはpH約5〜7に調整される。
【0023】
本発明により形質転換されるキク科植物はいずれの種類であってもよく、例えばレタス(Lactuca sativa)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ベニバナ(Carthamus tinctoris)、アーティチョーク(Cynara scolymus)、ゴボウ(Arctium lappa)、キク(Chrysanthemum morifolium)、コスモス(Cosmos bipinnatus)、キバナノコギリソウ(Achilla filpendulina)、キンセンカ(Calendula arvensis)、デージー(Rudbeckia hirta)、ヒャクニチソウ(Zinnia elegans Jacq.)などが挙げられる。
形質転換されたキク科植物、中でもレタスは自体公知の条件の下、路地または水耕栽培で生育させることができる。このようにして作製された形質転換されたキク科植物、特にレタスは、ベクターに導入された遺伝子がコードするタンパク質を高度に発現させることができる。また、本発明の形質転換体は導入した遺伝子の花粉を介した環境への飛散を防ぐことができるなどの利点がある。
【0024】
なお、上記の遺伝子工学または生物工学の操作については、市販の実験書、例えば、1982年発行のモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1989年発行のモレキュラー・クローニング第2版(Molecular Cloning,2nd ed.)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)などに記載された方法に従って容易に行うことができる。
【0025】
以下に具体的実施例を挙げ、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに特に限定されることはない。
【実施例1】
【0026】
レタス葉緑体ゲノム塩基配列の決定と解析
レタス生葉から常法に従いpercol密度勾配遠心によりレタス葉緑体を単離する。単離した葉緑体からCTABを用いたDNA精製法によりレタス葉緑体のゲノムDNAを精製する。精製DNAから約2kbの葉緑体DNA由来のDNA断片を持つレタス葉緑体ゲノムライブラリーを作成する。ゲノムライブラリーのクローン5,428個の塩基配列を解読してレタス葉緑体全ゲノム塩基配列(152,765bp)を決定した。すでに明らかになっているタバコ葉緑体ゲノム塩基配列との相同性からレタス葉緑体ゲノムのrbcL(配列表の配列番号1)とaccD(配列表の配列番号2)の塩基配列およびPrrn(配列表の配列番号3)、TpsbA(配列表の配列番号4)の塩基配列情報を取得した。
【実施例2】
【0027】
レタス葉緑体形質転換用プラスミドベクターの構築
(1)レタス葉緑体ゲノムPrrn、TpsbAの単離
レタス葉緑体ゲノムのPrrnはforwardプライマー:
5’−CCGCGGCCGCGATATTTTGATTTGCTACCC−3’ (配列表の配列番号5)、
とreverseプライマー:
5’−CCAGCGCTATTCGCCCGGAGTTCGCTCC−3’(配列表の配列番号6)
を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にNotIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にEco47IIIサイトを含む。増幅断片はpLD6(配列表の配列番号17)のNotI、Eco47IIIサイトに制限酵素NotIおよびEco47IIIを用いて導入した。本操作により、pLD6の配列番号17に記載された配列のヌクレオチド2220〜2345の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のPrrn(配列表の配列番号3;113bp)に置き換えられた。
レタス葉緑体ゲノムのpsbAのターミネーターTpsbAはforwardプライマー:
5’−GGCTGCAGGACTTTGGTCTTATTGTAAT−3’(配列表の配列番号7)
とreverseプライマー:
5’−CCGTCGACGAGCATATTATTTCTTTCTT−3’(配列表の配列番号8)
を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にPstIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にSalIサイトを含む。増幅断片はpLD6のPstI、SalIサイトに制限酵素PstIおよびSalIを用いて導入した。本操作により、pLD6の配列番号17に記載された配列のヌクレオチド3174〜3913の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のTpsbA(配列表の配列番号4;339bp)に置き換えられた。
このようにしてpLD6のタバコ由来のプロモーター、ターミネーター配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来の塩基配列に置き換えたプラスミドpRL6を作成した。
発現タンパク質としては、当初pLD6に導入されていたスペクチノマイシン耐性遺伝子(以下、aadAと略記する:配列表の配列番号19)をそのまま残すことにより、本発明における発現タンパク質とした。
【0028】
(2)rbcL遺伝子、accD遺伝子の単離
レタス葉緑体ゲノムのrbcL遺伝子を含む1640bpの領域はforwardプライマー:
5’−CCGAATTCAATTCATGAGTTGTAGGGAG−3’(配列表の配列番号9)
とreverseプライマー:
5’−CCGCGGCCGCGATCCAACCAACACAAAAAT−3’(配列表の配列番号10)
を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にEcoRIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にNotIサイトを含む。増幅断片はpLD200(配列表の配列番号18)のEcoRI、NotIサイトに制限酵素EcoRIおよびNotIを用いて導入した。本操作により、pLD200の配列番号18に記載された配列のヌクレオチド396〜2126の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL(配列表の配列番号1;1640bp)に置き換えられた。
レタス葉緑体ゲノムのaccD遺伝子を含む1057bpの領域はforwardプライマー:
5’−CCGTCGACGATCCTTAGGATTGGGATAT−3’(配列表の配列番号11)とreverseプライマー:
5’−GGAAGCTTCCCATATGAGTAGAACTTTC−3’(配列表の配列番号12)を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にSalIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にHindIIIサイトを含む。増幅断片はpLD200のSalI、HindIIIサイトに制限酵素SalIおよびHindIIIを用いて導入した。本操作により、pLD200の配列番号18に記載された配列のヌクレオチド2141〜3342の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のaccD(配列表の配列番号2;1057bp)に置き換えられた。
このようにしてpLD200のタバコ由来のrbcL、accDをコードする配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来のrbcL、accDをコードする塩基配列に置き換えたプラスミドpRL200を作成した。
【0029】
(3)レタス葉緑体形質転換用ベクターの作成
レタス葉緑体ゲノム由来のプロモーターとターミネーター配列を導入した上記(1)のプラスミドから制限酵素NotIおよびSalIを用いてaadA遺伝子発現に必要なDNA断片(配列番号17に記載された配列のヌクレオチド2220〜3913に相当する領域)を切り出した。切り出したDNA断片は、レタス葉緑体ゲノム由来のrbcL、accD遺伝子を導入した上記(2)のプラスミドのNotI、SalIサイトに制限酵素NotIおよびSalIを用いて導入した。該DNA断片が導入される領域は、配列番号18に記載された配列のヌクレオチド2127〜2141に相当する領域である。
このようにしてaadA遺伝子の発現とレタス葉緑体ゲノムのrbcLとaccD遺伝子の領域での相同組み換えを生じさせるレタス葉緑体形質転換用ベクターpRL1000を作成した(図1)。
【実施例3】
【0030】
レタス葉緑体の形質転換と再分化
MS培地に播種後、約3〜4週間の無菌栽培したレタスの生葉を遺伝子導入に用いる。MS培地は、MS塩、イノシトール(100mg/L)、塩酸チアミン(0.1mg/L)、塩酸ピリドキシン(0.5mg/L)、ニコチン酸(0.5mg/L)、グリシン(2mg/L)、ショ糖(30g/L)、ゲランガム(2g/L)から構成され、KOHでpH5.8に調整した。レタスの生葉6〜7枚をRMOP培地に置床したプレートを5枚作成し、培地上で1日間前培養する。RMOP培地の組成は、MS培地にBA(0.1mg/L),NAA(0.1mg/L)を添加したものである。直径0.6ミクロンの金粒子2.3mg、レタス葉緑体形質転換用ベクター25μg、2.5M塩化カルシウム、0.1Mスペルミジンとを混ぜ、4℃で10分間、1分毎に懸濁する。エタノールで2回洗浄後、60μLのエタノールに懸濁する。これは10回分の打ち込み実験に使用できる量に相当する。前培養したレタス葉に対してパーティクルガン(型式PDS−1000/He BIO−RAD社製)を用いてレタスの葉細胞に金粒子を打ち込む。1回の実験当たり5回の打ち込みを行う。打ち込み圧力は900psiで行う。打ち込みをして2日後、ベクターを打ち込んだ生葉を4mm四方の切片にメスで刻み、スペクチノマイシン(50mg/L)とポリビニルピロリドン(500mg/L)を含むRMOP培地に置床する。約3〜4週間で白色化した葉切片から緑色のカルスが生じ、その後再分化して植物個体を再生した。
【実施例4】
【0031】
PCRによるレタス葉緑体形質転換体の解析
実施例3で再生したレタス植物体の葉組織を約50mg採取し、液体窒素下で破砕する。破砕したサンプルにDNA抽出バッファー(0.3M塩化ナトリウム、0.05Mトリス−塩酸、pH7.5、20mM EDTA、0.5%SDS、5M尿素、5%フェノール)を加えて混合した。フェノール/クロロホルム〔1/1(V/V)〕で抽出し、エタノールで沈澱させた後、風乾した。100μLのTE溶液〔10mMトリス塩酸(pH8.0)、1mM EDTA〕に抽出DNAを溶かした。
aadA配列の有無を確認するPCRではレタス植物体から抽出したDNA溶液を鋳型にforwardプライマー:
5’−ATGGCTCGTGAAGCGGTTAT−3’(配列表の配列番号13)
とreverseプライマー:
5’−TTATTTGCCAACTACCTTAG−3’(配列表の配列番号14)
を用いてPCR反応を行い、アガロースゲル電気泳動により確認した。対照として、実施例2で作成したpRL1000ベクターおよび野生株のレタスの葉組織を同様に処理した。その結果を図2に示した。pRL1000ベクターおよび形質転換されたレタスにおいてaadA遺伝子の存在を示す0.8kbのバンドが認められた。
また、形質転換レタスの組織中における遺伝子導入された葉緑体ゲノムと遺伝子導入されずに野生型のままで残っている葉緑体ゲノムのの存在比率の検討には各サンプルからの抽出DNA溶液を鋳型にforwardプライマー:
5’−AGGATTGAGCCGAATCCAAC−3’(配列表の配列番号15)
とreverseプライマー:
5’−AGGATTTGTTCTCTCCTACG−3’(配列表の配列番号16)
を使用してPCRを行った。対照として、実施例2で作成したpRL200ベクターおよび野生株のレタスの葉組織から抽出したゲノムDNAを同様に処理した。その結果を図3に示した。pRL1000ベクター(レーンA)および形質転換レタスより抽出したゲノムDNA(レーンC)を鋳型にPCRした産物を電気泳動したレーンにおいて、1.6kbの葉緑体ゲノムへの遺伝子の導入を示すバンドが確認できた。また僅かではあるが、野生型葉緑体ゲノムの存在を示す0.3kbのバンドがレーンCにおてい認めらたことから、形質転換レタスにおいてPCRで検出できる程度の微量の野生型葉緑体ゲノムDNAも含まれていることが認められた(図3)。
【実施例5】
【0032】
形質転換されたレタスのスペクチノマイシン耐性の評価
実施例4によりaadA遺伝子の導入が確認されたレタス植物体においてaadA遺伝子が発現して機能しているかどうかを調べるために形質転換されたレタス(図4)より4mm四方の葉切片を切り出し、スペクチノマイシン50mg/Lを含むRMOP培地に置床した。同様に野生株レタスの葉切片も置床し25℃、長日条件下(16時間明期、8時間暗期)において再分化の様子を4週間観察した(図5)。A,B,Cは野生株レタスの葉切片を、スペクチノマイシンを含むRMOP培地上で培養したものである。Aは置床直後、Bは置床して2週間後、Cは置床して4週間後の葉切片の様子を示すが、いずれも葉および根の分化は観察されなかった。同様に形質転換されたレタスの葉切片の培養を示したのがD,E,Fである。EおよびFでは、葉切片からの葉および根の分化が確認された。これは、aadA遺伝子がレタスの葉緑体ゲノムに導入され、葉で発現したaadA産物が、スペクチノマイシンに対する耐性を示したものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
医療用などの高付加価値タンパク質を、キク科植物、特にレタスの葉緑体で安全かつ安価に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1はベクターの模式図を示す図である。
【図2】図2は実施例4におけるaadA遺伝子が導入されたことを確認するPCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。図中AはpRL1000ベクターから抽出したDNAを、Bは野生株レタスの葉から抽出したDNAを、Cは形質転換されたレタスの葉から抽出したDNAをそれぞれ鋳型に用いてPCRしたものを電気泳動した結果を示す。
【図3】図3は実施例4におけるレタス葉緑体ゲノムへの導入遺伝子の組み換え率の検討を行ったPCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。図中AはpRL1000ベクターから抽出したDNAを、Bは野生株レタスの葉から抽出したDNAを、Cは形質転換されたレタスの葉から抽出したDNAををそれぞれ鋳型に用いてPCRしたものを電気泳動した結果を示す。
【図4】図4は形質転換されたレタスの葉である。
【図5】図5は、実施例5の結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キク科植物の葉緑体の形質転換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、タンパク質の工業的な生産方法については、既に、医薬として有用なタンパク質などを発現する遺伝子を大腸菌や植物の核染色体へ導入し、該遺伝子を発現させることによって医療用タンパク質などを製造する研究が各国で進んでいる。しかし、大腸菌など細菌を使った場合、最終製品への毒素の混入を防ぎきれない。また、植物の核ゲノムに遺伝子導入した形質転換植物によるタンパク質の生産方法が開発されてきたが、タンパク質の生産量が低いなど課題点が残されていた。また、植物の核への遺伝子導入の場合、花粉の飛散による自然界への遺伝子の伝播が問題視されている。そのような中、植物葉緑体ゲノムへの形質転換法がMaligaらによってタバコで実用化された。葉緑体形質転換はこれまで行われてきた植物の核ゲノムへの形質転換と比較して葉緑体が大量のタンパク質を生産、蓄積する能力を有することが大きな特徴となっている。葉緑体形質転換のその他の特徴として葉緑体の遺伝情報が一般に母性遺伝で、花粉を介した導入遺伝子の水平伝播の可能性が低いことや、葉緑体のポリシストロニックな制御を活かした多重遺伝子発現などの利点が挙げられる。このような利点から、形質転換した葉緑体はタンパク質などの物質生産を行うのに有用な系として注目され始めている。例えば、目的タンパク質をタバコ葉緑体において高度に発現させることができるベクターが知られている。このベクターは、psbAプロモーターと、タンパク質をコードする遺伝子の翻訳開始点の上流にリボゾーム結合部位を有することを特徴としている(特許文献1参照。)。本方法は、薬理活性を有するタンパク質、医薬品工業用材料などとして有用なタンパク質を、微生物による製造にかえて、タバコを使用して製造することを目的としたものである。しかし、この方法は、形質転換される植物がタバコであるため、タバコの二次代謝産物として体に有害な物質も生産することから医療用などの高度な精製が要求されるタンパク質生産には不向きであると言える。
【0003】
キク科植物の形質転換としては、例えば、レタスビッグベインウイルスタンパク質の産生や機能を抑制するDNAをレタス細胞に導入することによって得られるレタスビッグベインウイルス抵抗性レタス(特許文献1参照。)や、レタス感染性黄化ウイルス蛋白質の遺伝子または遺伝子の一部分を含む植物形質転換ベクターを用いて形質転換したレタス(特許文献2)などが知られている。しかし、これらいずれの形質転換レタスの場合も、遺伝子を用いて構築されたプラスミドをアグロバクテリウムに導入し、葉ディスクに感染させることによって、各遺伝子を葉の核ゲノムに導入されるものであり、葉緑体に直接遺伝子が導入されるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−272476号公報
【特許文献2】国際公開第01/090362号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/02056号パンフレット
【非特許文献1】ゾラ・スバブ(Zora Svab)他2名、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステート・オブ・アメリカ(Proc.Natl Acad.Sci.USA)、1990年、第87巻、p.8526−8530
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、有害な二次代謝物を生産することなく、キク科植物葉緑体に医療用タンパク質などの有用タンパク質を効率よく発現させることができる形質転換方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、生育が早く、有害な二次代謝物を生産する可能性の低い植物としてキク科植物のレタスに注目した。またレタスは水耕栽培を利用した植物工場での栽培も可能であることから、レタスを用いて天候や病虫害に左右されない安定したタンパク質の生産システムを構築することを試みた。このようなことから、本発明者らは、レタス葉緑体でのタンパク質の生産方法につき鋭意研究をおこなった。まずレタス葉緑体由来の塩基配列の取得および外来遺伝子を導入する位置の検討を行うためにレタス葉緑体の全塩基配列を決定した。決定したレタス葉緑体の塩基配列からレタス葉緑体ゲノムと効率的な相同組み換えを可能にする相同配列(リブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子)と、レタス葉緑体において確実に導入遺伝子を発現させるためのレタス葉緑体ゲノム由来発現調節配列(rRNAオペロンのプロモーターとpsbA遺伝子のターミネーター)を有するベクターを構築した。本発明者らは、さらに構築したベクターを使用して、レタス葉緑体ゲノムへの遺伝子導入法についても検討を重ねた。また、本発明者らは、レタス葉緑体ゲノムへ遺伝子が導入されたレタスの葉細胞が植物個体へと再生するステップの重要性にも注目し、レタス葉緑体ゲノムへ遺伝子を導入したレタスの葉切片の再分化条件についても研究を進め、さらにこのようにして得られた植物固体の栽培方法についても検討し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを含有することを特徴とするキク科植物の葉緑体形質転換用ベクター、
(2) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAが、レタス葉緑体由来のDNAであることを特徴とする前記(1)に記載のベクター、
(3) キク科植物が、レタスであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のベクター、
(4) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを複数含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のベクター、
(5) レタス葉緑体ゲノム由来のDNAが、リブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子およびアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子であることを特徴とする前記(4)に記載のベクター、
(6) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAの間に少なくとも1種の制限酵素切断部位を有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のベクター、
(7) キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNA配列の間に葉緑体で機能するプロモーター、ターミネーターを有し、さらに前記プロモーターとターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のベクター、
(8) プロモーターが、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターであることを特徴とする前記(7)に記載のベクター、
(9) レタス葉緑体ゲノム由来のリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子の間に、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターおよびpsbA遺伝子のターミネーターを有し、さらに前記プロモーターおよびターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有するベクター、
(10) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたキク科植物、
(11) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたレタス、
(12) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入することを特徴とするキク科植物葉緑体の形質転換方法、
(13) ベクターの導入が、パーティクルガンを用いることを特徴とする前記(12)に記載の形質転換方法、
(14) 前記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入し、前記キク科植物の葉細胞を植物培養用培地で培養することを特徴とする形質転換植物体の製造方法、
(15) 植物培養用培地が、ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L0.01〜1mg/L並びにカイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/Lを含有することを特徴とする前記(14)に記載の形質転換植物体の製造方法、
(16) オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする前記(15)に記載の形質転換植物体の製造方法、
(17) 植物培養用培地が、さらにポリビニルピロリドンを100〜1000ppm含有することを特徴とする前記(15)または(16)に記載の形質転換植物体の製造方法、
(18) ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L、カイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/L、およびポリビニルピロリドン100〜1000ppmを含有することを特徴とする形質転換キク科植物の葉培養用培地、
(19) オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする前記(18)に記載の培地、および
(20) キク科植物がレタスであることを特徴とする前記(18)または(19)に記載の培地、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のベクターは、確実にキク科植物の葉緑体へ、発現タンパク質をコードする遺伝子を導入できる。
キク科植物の葉緑体のうち特にレタス葉緑体の形質転換技術は、有害な二次代謝産物の含有量が少ないことなどからこれまでに作出されてきたタバコなどの葉緑体形質転換植物と比較して、これまでよりも安全に有用なタンパク質を生産できるシステムの構築が可能となる。また、レタスは水耕栽培法が確立されていることから、本発明により形質転換されるレタスは、植物工場を利用して工業的に大量生産ができるので、安全かつ安価にタンパク質を生産でき、かつ天候や病虫害に左右されないので、安定したタンパク質の生産システムを構築できる。
また、本発明の形質転換技術により、葉緑体にメタロチオネイン遺伝子(例.merA遺伝子など)を導入し形質転換されたキク科植物は、土壌などの環境中の有害重金属や水銀などを無害化または無毒化し得るので、ファイトレメディエーション(Phyto Remediation;植物を利用した環境浄化技術)に利用できる。また、本発明の形質転換技術により、葉緑体に病中害耐性遺伝子や除草剤耐性遺伝子などを導入することにより、害虫抵抗性や除草剤耐性のキク科植物を製造することができる。さらに、本発明の形質転換技術により、葉緑体に抗酸化作用を有するカロテノイドやビタミンEなどの生合成に関る遺伝子を導入することにより、キク科植物の例えばヒマワリや紅花などにおいて、該ヒマワリや紅花などが生成する油脂類中のカロテノイドやビタミンEなどの有用成分の含有量を上げることが可能となる。また、本発明のベクターを用いて光合成に関与する例えばフルクトース1,6−ビスホスファターゼ遺伝子やセドヘプツロース1,7−ビスホスファターゼ遺伝子を導入することにより、該遺伝子が導入されたキク科植物は、野生株に比べて、背丈が大きく、また葉の面積も大きく、早く生育し、かつ糖やデンプンの合成能力が増大し得る。
本発明によって形質転換されるキク科植物は、発現タンパク質をコードする遺伝子が核ゲノムではなく、葉緑体ゲノムに直接導入されるため、導入された遺伝子の花粉による拡散の予防が可能である。すなわち、例えば核に遺伝子が導入された植物のように、花粉が風や昆虫により広範囲に撒き散らされ、動植物界への悪影響を与えるなどの環境汚染を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられるキク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAとしては、例えばリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子(以下、rbcL遺伝子と略記する。)またはアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子(以下、accD遺伝子と略記する。)などが挙げられる。
rbcL遺伝子は、葉緑体ゲノムにコードされているRubiscoの遺伝子である。Rubiscoは、光合成CO2固定反応回路(カルビンサイクル)において,初発段階であるCO2固定反応(カルボキシラーゼ反応)を触媒し、前記回路における代謝回転の律速となる鍵酵素である。また、該酵素は酸素(O2)を固定する反応(オキシゲナーゼ反応)も触媒する。rbcL遺伝子は、とりわけレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子が好ましい。
レタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子は、例えばレタス葉緑体全ゲノム塩基配列から、既に明らかになっているタバコ葉緑体ゲノムのrbcLの塩基配列との相同性から決定される。このようにして決定されたレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子とその近傍の塩基配列は、配列表の配列番号1(1640bp)で示される。前記配列番号1の塩基配列中の1個または複数個の塩基、例えば、1〜150個の塩基が欠失されるか、または別の塩基に置換されるか、または1〜150個の別の塩基を付加されるかして改変されたDNAがrbcL遺伝子と相同的組換えし得る配列であれば好ましく用いることができる。
【0009】
accD遺伝子は、葉緑体ゲノムにコードされているアセチルCoAカルボキシラーゼの遺伝子である。アセチルCoAカルボキシラーゼは、植物において脂肪酸合成に関与している酵素である。accD遺伝子としては、レタス葉緑体ゲノム由来のaccD遺伝子が好ましい。
レタス葉緑体ゲノム由来のaccD遺伝子は、例えばレタス葉緑体全ゲノム塩基配列から、すでに明らかになっているタバコ葉緑体ゲノムのaccDの塩基配列との相同性から決定される。このようにして決定されたレタス葉緑体ゲノム由来のaccD遺伝子とその近傍の塩基配列は、配列表の配列番号2(1057bp)で示される。前記配列番号2の塩基配列中の1個または複数個の塩基、例えば、1〜100個の塩基が欠失されるか、または別の塩基に置換されるか、または1〜100個の別の塩基を付加されるかして改変されたDNAがaccD遺伝子と相同的組換えし得る配列であれば好ましく用いることができる。
【0010】
本発明において、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子とaccD遺伝子とを用いることにより、ベクターに導入される発現タンパク質をコードする遺伝子が、相同組換えによりレタス葉緑体ゲノムに組み込まれやすくなり、さらにレタス葉緑体での発現タンパク質の発現量が多くなるという利点がある。
また、本発明において、葉緑体ゲノム由来のrbcL遺伝子とaccD遺伝子はそれらの全長を使う必要はない。例えばrbcL遺伝子とaccD遺伝子との間の非コード領域の、被導入遺伝子の導入位置からrbcL遺伝子側またはaccD遺伝子側にそれぞれ約1000〜1500程度の塩基対の長さを有し、rbcL遺伝子またはaccD遺伝子とそれぞれ相同的組換えし得る配列であればよい。
【0011】
上記rbcL遺伝子とaccD遺伝子の間には、少なくとも1種、好ましくは2種以上の制限酵素切断部位(以下、制限酵素サイトとも言う。)を有することが好ましい。制限酵素サイトは、制限酵素で認識され切断される部位を含む配列であればいずれの配列も好ましく用いることができる。制限酵素サイトとしては、例えばPstIサイト、NotIサイト、SalIサイト、またはEco47IIIサイトなどが好ましく挙げられる。これら制限酵素サイトは、各々制限酵素PstI、NotI、SalI、またはEco47IIIで切断され得る。
【0012】
また、上記rbcL遺伝子とaccD遺伝子の間には、キク科植物(好ましくはレタス)葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーター(以下、Prrnと略記する。)およびpsbA遺伝子のターミネーター(以下、TpsbAと略記する。)を有する。
上記したキク科植物(好ましくはレタス)のPrrnおよびTpsbAは、例えばレタス葉緑体全ゲノム塩基配列から、すでに明らかになっているタバコ葉緑体ゲノムのPrrnおよびTpsbAの塩基配列との相同性から決定される。このようにして決定された例えばレタス葉緑体ゲノム由来のPrrnは配列表の配列番号3(113bp)で示され、レタス葉緑体ゲノム由来のTpsbAは、配列表の配列番号4(339bp)で示される。前記配列番号3または4の塩基配列のうち、1個または複数個の塩基、例えば、1〜10個の塩基が欠失されるか、または別の塩基に置換されるか、または1〜10個の別の塩基を付加されるかして改変されたDNAであって、それぞれ発現タンパク質をコードする遺伝子の転写開始および転写終結を認識できる配列であればいずれも好ましく用いることができる。
【0013】
また、上記プロモーターおよびターミネーターは、発現タンパク質をコードする遺伝子の転写開始および転写終結を認識できるものであれば、上記プロモーターおよびターミネーターに限定されず、他のプロモーターおよびターミネーターであってもよい。このようなプロモーターとしては、例えばpsbAプロモーター、rbcLプロモーター、psbDプロモーターまたはatpBプロモーター等が挙げられる。これらプロモーターも、葉緑体ゲノム由来のプロモーターが好ましく、レタス葉緑体ゲノム由来のプロモーターがより好ましい。また該ターミネーターとしては、例えばrps16ターミネーターが挙げられる。
【0014】
本発明において発現タンパク質とは、本発明に係る発現系を用いて発現させたいタンパク質であり、本発現系を用いて発現できるタンパク質であればその種類は特に限定されず、キク科植物固有のタンパク質でも、また外来遺伝子由来のタンパク質でもよい。このような発現タンパク質としては、例えば薬理活性を有する医療用タンパク質(例.インスリン、インターフェロン、エリスロポエチン、インターロイキン、ヒトソマトスタチン、ティッシュプラスミノーゲンアクチベーターなど)または工業用材料などとして有用なタンパク質を製造するのに必要な酵素(例.セルラーゼ、ニトリルヒドラターゼなど)等が挙げられる。
また上記発現タンパク質としては、植物自体が有する酵素、例えば光合成に関与する酵素(例.フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、トランスケトラーゼなど)や植物体で生産される有用成分の生合成に関わる酵素(例.カロテノイド生合成酵素など)、あるいは病虫害耐性タンパク質(例.バチルス・チューリンゲス毒素など)や除草剤耐性タンパク質(例.5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素など)等も挙げられる。
また、上記発現タンパク質としては、ファイトレメディエーションのための例えば有害重金属イオンと結合するメタロチオネインなども挙げることができる。
【0015】
本発明におけるベクターは、特開2002−272476号公報に記載のpLD6(配列番号17;4591bp)プラスミドおよびpLD200(配列番号18;5581bp)プラスミドを利用することにより構築できる。すなわち、pLD6プラスミドおよびpLD200プラスミドに導入されているタバコ葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子およびaccD遺伝子をキク科植物(好ましくはレタス)葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子およびaccD遺伝子に置き換えることにより作成することができる。遺伝子の置き換えは制限酵素でタバコ葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子またはaccD遺伝子を切り出し、その代わりにキク科植物(好ましくはレタス)葉緑体ゲノム由来のPrrn、TpsbA、rbcL遺伝子またはaccD遺伝子を導入することにより行われる。
【0016】
まず、pLD6のNotIおよびEco47IIIサイトが制限酵素NotIおよびEco47IIIを用いて切断される。次いで前記制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号17に記載された配列のヌクレオチド2220〜2345の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のPrrnを含む領域)が例えばレタス葉緑体ゲノム由来のPrrn(配列番号3;113bp)に置き換えられる。
また、pLD6のPstIおよびSalIサイトは制限酵素PstIおよびSalIを用いて切断され、該制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号17に記載された配列のヌクレオチド3174〜3913の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のTpsbAを含む領域)が、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のTpsbA(配列番号4;339bp)に置き換えられる。このようにしてpLD6のタバコ葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbA配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbAの塩基配列に置き換えられたプラスミドを作成することができる。発現タンパク質をコードする塩基配列は上記レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbAの間に配される。
【0017】
一方、pLD200のEcoRIおよびNotIサイトは制限酵素EcoRIおよびNotIで切断され、該制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号18に記載された配列のヌクレオチド396〜2126の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のrbcLを含む領域)が、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL(配列番号1;1640bp)に置き換えられる。また、pLD200のSalIおよびHindIIIサイトは制限酵素SalIおよびHindIIIで切断され、該制限酵素切断部位で挟まれている領域(配列番号18に記載された配列のヌクレオチド2141〜3342の領域;タバコ葉緑体ゲノム由来のaccDを含む領域)が、例えばレタス葉緑体ゲノム由来のaccD(配列番号2;1057bp)に置き換えられる。このようにしてpLD200のタバコ葉緑体ゲノム由来のrbcLおよびaccD配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnおよびTpsbAの塩基配列に置き換えたプラスミドを作成することができる。
【0018】
次いで、レタス葉緑体ゲノム由来のPrrnとTpsbA配列に置き換えられたpLD6から制限酵素NotI、SalIを用いて発現タンパク質の発現に必要な塩基配列(配列番号17に記載された配列ではヌクレオチド2220〜3913に相当する領域)を切り出し、レタス葉緑体ゲノム由来のrbcLおよびaccD遺伝子に置き換えられたpLD200のNotI、SalIサイトに制限酵素NotI、SalIを用いて導入される。該導入される領域は、配列番号18に記載された配列ではヌクレオチド2127〜2141に相当する領域である。このようにして発現タンパク質の発現とレタス葉緑体ゲノムのrbcLとaccD遺伝子の領域での相同組み換えを生じさせるベクターを作成できる。
【0019】
また、上記ベクターには、遺伝子組換え体を識別するための遺伝子を有することが好ましい。遺伝子組換え体を識別するための遺伝子としては、特に限定されず、自体公知のものを用いてよい。例えば、各種薬剤耐性遺伝子があげられる。より具体的には、カナマイシン耐性遺伝子(NPT)、スペクチノマイシン耐性遺伝子(aadA)、ベタインアルデヒド脱水素酵素遺伝子(BADH)等が挙げられる。また、該遺伝子の上流、下流には、それぞれ該遺伝子を発現制御するためのプロモーターおよびターミネーター配列を配することが好ましい。例えば、aadA遺伝子を葉緑体で発現させるためには、上記した植物由来のプロモーター及びターミネーターを好ましく使用できるが、rrnプロモーターおよびpsbAターミネーターが特に好適である。
【0020】
このようにして作製されたベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を作製する。このとき、宿主細胞としては、キク科植物細胞が好ましく、キク科植物葉細胞がより好ましく、キク科植物の葉緑体がさらに好ましく、レタス葉緑体が特に好ましい。本発明のベクターを宿主細胞、特に葉緑体へ導入して形質転換する方法としては、公知の方法、例えばパーティクルガン法(Svab,Z.,Hajdukiewicz,P.,and Maliga,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990年,第87巻,p.8526−8530)やPEG法(Golds,T.,Maliga,P.,and Koop,H.−U.,Bio/Technol.,1993年,第11巻,p.95−97)等を好ましく用いることができる。例えば、パーティクルガン法は、ベクターを金またはタングステンの極めて細かい粒子にまぶし、この該ベクターの付着した粒子を火薬または高圧ガスで宿主細胞に打ち込むことにより、ベクターを宿主細胞に導入することができる。
【0021】
ベクターが導入されたキク科植物の葉細胞、例えばレタス葉細胞は、植物培養用培地で培養し植物体とすることができる。植物培養用培地は、ガンボルグ(Gamborg)B5、ムラシゲ・スクーグ(Murashige−Skoog;MS)、ニッチ・ニッチ(Nitch&Nitch)などのような無機塩、ビタミン類を含有する基礎培地に、植物ホルモンを加えたものが好ましい。基礎培地としては特にMS培地が好ましい。植物ホルモンとしては、オーキシンおよびサイトカイニンを組み合わせるのがよい。オーキシンとしては、ナフタレン酢酸(以下、NAAと略記する。)、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸または2,4−ジクロロフェノキシ酢酸などが挙げられ、NAAが特に好ましい。サイトカイニンとしては、カイネチン,ゼアチンまたはベンジルアデニン(以下、BAと略記する。)、イソペンテニルアデニンなどが挙げられ、BAが特に好ましい。基礎培地に添加するオーキシンおよびサイトカイニンの濃度は、使用するオーキシンおよびサイトカイニンにより異なるが、オーキシンは約0.01〜1.0mg/L、好ましくは約0.05〜0.2mg/L、さらに好ましくは約0.1mg/L、サイトカイニンは約0.01〜1.0mg/L、好ましくは約0.05〜0.2mg/L、さらに好ましくは約0.1mg/Lとなるよう添加される。オーキシンに対するサイトカイニンの割合(重量比)は、約1:0.8〜1.2が好ましい。培地にはさらに、ポリビニルピロリドン(PVP)を約100〜1000ppm、好ましくは約300〜700mg/L、さらに好ましくは約400〜600ppmを添加するのがよい。培地にオーキシンやサイトカイニンを加えることにより、形質転換されたキク科植物、とりわけレタスの再分化を促進するようになり、またPVPの添加によって培養時の褐変による枯死が防止できる。
【0022】
また、上記培地には、炭素源としての糖類や、ビタミン類、培地を固めるための支持体などを添加するのがよい。糖類としては、例えばショ糖などが挙げられる。糖類の添加量は、約1〜10重量%、好ましくは約2〜5重量%程度である。ビタミン類としては、例えば塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸またはイノシトールなどが挙げられる。支持体としては、例えば寒天、ゲランガムまたはペーパーブリッジなどが挙げられる。支持体の濃度は、培地のpHなどにより異なるが、例えばゲランガムの場合、約0.2〜0.3重量%程度が好ましい。
また、上記培地には、アミノ酸(例.グリシンなど)、アデニンおよび/またはココナツウォーターなどを添加してもよい。
培地は、通常水酸化カリウムなどでpH約4〜8、好ましくはpH約5〜7に調整される。
【0023】
本発明により形質転換されるキク科植物はいずれの種類であってもよく、例えばレタス(Lactuca sativa)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ベニバナ(Carthamus tinctoris)、アーティチョーク(Cynara scolymus)、ゴボウ(Arctium lappa)、キク(Chrysanthemum morifolium)、コスモス(Cosmos bipinnatus)、キバナノコギリソウ(Achilla filpendulina)、キンセンカ(Calendula arvensis)、デージー(Rudbeckia hirta)、ヒャクニチソウ(Zinnia elegans Jacq.)などが挙げられる。
形質転換されたキク科植物、中でもレタスは自体公知の条件の下、路地または水耕栽培で生育させることができる。このようにして作製された形質転換されたキク科植物、特にレタスは、ベクターに導入された遺伝子がコードするタンパク質を高度に発現させることができる。また、本発明の形質転換体は導入した遺伝子の花粉を介した環境への飛散を防ぐことができるなどの利点がある。
【0024】
なお、上記の遺伝子工学または生物工学の操作については、市販の実験書、例えば、1982年発行のモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1989年発行のモレキュラー・クローニング第2版(Molecular Cloning,2nd ed.)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)などに記載された方法に従って容易に行うことができる。
【0025】
以下に具体的実施例を挙げ、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに特に限定されることはない。
【実施例1】
【0026】
レタス葉緑体ゲノム塩基配列の決定と解析
レタス生葉から常法に従いpercol密度勾配遠心によりレタス葉緑体を単離する。単離した葉緑体からCTABを用いたDNA精製法によりレタス葉緑体のゲノムDNAを精製する。精製DNAから約2kbの葉緑体DNA由来のDNA断片を持つレタス葉緑体ゲノムライブラリーを作成する。ゲノムライブラリーのクローン5,428個の塩基配列を解読してレタス葉緑体全ゲノム塩基配列(152,765bp)を決定した。すでに明らかになっているタバコ葉緑体ゲノム塩基配列との相同性からレタス葉緑体ゲノムのrbcL(配列表の配列番号1)とaccD(配列表の配列番号2)の塩基配列およびPrrn(配列表の配列番号3)、TpsbA(配列表の配列番号4)の塩基配列情報を取得した。
【実施例2】
【0027】
レタス葉緑体形質転換用プラスミドベクターの構築
(1)レタス葉緑体ゲノムPrrn、TpsbAの単離
レタス葉緑体ゲノムのPrrnはforwardプライマー:
5’−CCGCGGCCGCGATATTTTGATTTGCTACCC−3’ (配列表の配列番号5)、
とreverseプライマー:
5’−CCAGCGCTATTCGCCCGGAGTTCGCTCC−3’(配列表の配列番号6)
を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にNotIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にEco47IIIサイトを含む。増幅断片はpLD6(配列表の配列番号17)のNotI、Eco47IIIサイトに制限酵素NotIおよびEco47IIIを用いて導入した。本操作により、pLD6の配列番号17に記載された配列のヌクレオチド2220〜2345の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のPrrn(配列表の配列番号3;113bp)に置き換えられた。
レタス葉緑体ゲノムのpsbAのターミネーターTpsbAはforwardプライマー:
5’−GGCTGCAGGACTTTGGTCTTATTGTAAT−3’(配列表の配列番号7)
とreverseプライマー:
5’−CCGTCGACGAGCATATTATTTCTTTCTT−3’(配列表の配列番号8)
を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にPstIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にSalIサイトを含む。増幅断片はpLD6のPstI、SalIサイトに制限酵素PstIおよびSalIを用いて導入した。本操作により、pLD6の配列番号17に記載された配列のヌクレオチド3174〜3913の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のTpsbA(配列表の配列番号4;339bp)に置き換えられた。
このようにしてpLD6のタバコ由来のプロモーター、ターミネーター配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来の塩基配列に置き換えたプラスミドpRL6を作成した。
発現タンパク質としては、当初pLD6に導入されていたスペクチノマイシン耐性遺伝子(以下、aadAと略記する:配列表の配列番号19)をそのまま残すことにより、本発明における発現タンパク質とした。
【0028】
(2)rbcL遺伝子、accD遺伝子の単離
レタス葉緑体ゲノムのrbcL遺伝子を含む1640bpの領域はforwardプライマー:
5’−CCGAATTCAATTCATGAGTTGTAGGGAG−3’(配列表の配列番号9)
とreverseプライマー:
5’−CCGCGGCCGCGATCCAACCAACACAAAAAT−3’(配列表の配列番号10)
を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にEcoRIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にNotIサイトを含む。増幅断片はpLD200(配列表の配列番号18)のEcoRI、NotIサイトに制限酵素EcoRIおよびNotIを用いて導入した。本操作により、pLD200の配列番号18に記載された配列のヌクレオチド396〜2126の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のrbcL(配列表の配列番号1;1640bp)に置き換えられた。
レタス葉緑体ゲノムのaccD遺伝子を含む1057bpの領域はforwardプライマー:
5’−CCGTCGACGATCCTTAGGATTGGGATAT−3’(配列表の配列番号11)とreverseプライマー:
5’−GGAAGCTTCCCATATGAGTAGAACTTTC−3’(配列表の配列番号12)を用いて増幅した。
Forwardプライマーは5’端にSalIサイトを含み、reverseプライマーは5’端にHindIIIサイトを含む。増幅断片はpLD200のSalI、HindIIIサイトに制限酵素SalIおよびHindIIIを用いて導入した。本操作により、pLD200の配列番号18に記載された配列のヌクレオチド2141〜3342の領域がレタス葉緑体ゲノム由来のaccD(配列表の配列番号2;1057bp)に置き換えられた。
このようにしてpLD200のタバコ由来のrbcL、accDをコードする配列を除去し、レタス葉緑体ゲノム由来のrbcL、accDをコードする塩基配列に置き換えたプラスミドpRL200を作成した。
【0029】
(3)レタス葉緑体形質転換用ベクターの作成
レタス葉緑体ゲノム由来のプロモーターとターミネーター配列を導入した上記(1)のプラスミドから制限酵素NotIおよびSalIを用いてaadA遺伝子発現に必要なDNA断片(配列番号17に記載された配列のヌクレオチド2220〜3913に相当する領域)を切り出した。切り出したDNA断片は、レタス葉緑体ゲノム由来のrbcL、accD遺伝子を導入した上記(2)のプラスミドのNotI、SalIサイトに制限酵素NotIおよびSalIを用いて導入した。該DNA断片が導入される領域は、配列番号18に記載された配列のヌクレオチド2127〜2141に相当する領域である。
このようにしてaadA遺伝子の発現とレタス葉緑体ゲノムのrbcLとaccD遺伝子の領域での相同組み換えを生じさせるレタス葉緑体形質転換用ベクターpRL1000を作成した(図1)。
【実施例3】
【0030】
レタス葉緑体の形質転換と再分化
MS培地に播種後、約3〜4週間の無菌栽培したレタスの生葉を遺伝子導入に用いる。MS培地は、MS塩、イノシトール(100mg/L)、塩酸チアミン(0.1mg/L)、塩酸ピリドキシン(0.5mg/L)、ニコチン酸(0.5mg/L)、グリシン(2mg/L)、ショ糖(30g/L)、ゲランガム(2g/L)から構成され、KOHでpH5.8に調整した。レタスの生葉6〜7枚をRMOP培地に置床したプレートを5枚作成し、培地上で1日間前培養する。RMOP培地の組成は、MS培地にBA(0.1mg/L),NAA(0.1mg/L)を添加したものである。直径0.6ミクロンの金粒子2.3mg、レタス葉緑体形質転換用ベクター25μg、2.5M塩化カルシウム、0.1Mスペルミジンとを混ぜ、4℃で10分間、1分毎に懸濁する。エタノールで2回洗浄後、60μLのエタノールに懸濁する。これは10回分の打ち込み実験に使用できる量に相当する。前培養したレタス葉に対してパーティクルガン(型式PDS−1000/He BIO−RAD社製)を用いてレタスの葉細胞に金粒子を打ち込む。1回の実験当たり5回の打ち込みを行う。打ち込み圧力は900psiで行う。打ち込みをして2日後、ベクターを打ち込んだ生葉を4mm四方の切片にメスで刻み、スペクチノマイシン(50mg/L)とポリビニルピロリドン(500mg/L)を含むRMOP培地に置床する。約3〜4週間で白色化した葉切片から緑色のカルスが生じ、その後再分化して植物個体を再生した。
【実施例4】
【0031】
PCRによるレタス葉緑体形質転換体の解析
実施例3で再生したレタス植物体の葉組織を約50mg採取し、液体窒素下で破砕する。破砕したサンプルにDNA抽出バッファー(0.3M塩化ナトリウム、0.05Mトリス−塩酸、pH7.5、20mM EDTA、0.5%SDS、5M尿素、5%フェノール)を加えて混合した。フェノール/クロロホルム〔1/1(V/V)〕で抽出し、エタノールで沈澱させた後、風乾した。100μLのTE溶液〔10mMトリス塩酸(pH8.0)、1mM EDTA〕に抽出DNAを溶かした。
aadA配列の有無を確認するPCRではレタス植物体から抽出したDNA溶液を鋳型にforwardプライマー:
5’−ATGGCTCGTGAAGCGGTTAT−3’(配列表の配列番号13)
とreverseプライマー:
5’−TTATTTGCCAACTACCTTAG−3’(配列表の配列番号14)
を用いてPCR反応を行い、アガロースゲル電気泳動により確認した。対照として、実施例2で作成したpRL1000ベクターおよび野生株のレタスの葉組織を同様に処理した。その結果を図2に示した。pRL1000ベクターおよび形質転換されたレタスにおいてaadA遺伝子の存在を示す0.8kbのバンドが認められた。
また、形質転換レタスの組織中における遺伝子導入された葉緑体ゲノムと遺伝子導入されずに野生型のままで残っている葉緑体ゲノムのの存在比率の検討には各サンプルからの抽出DNA溶液を鋳型にforwardプライマー:
5’−AGGATTGAGCCGAATCCAAC−3’(配列表の配列番号15)
とreverseプライマー:
5’−AGGATTTGTTCTCTCCTACG−3’(配列表の配列番号16)
を使用してPCRを行った。対照として、実施例2で作成したpRL200ベクターおよび野生株のレタスの葉組織から抽出したゲノムDNAを同様に処理した。その結果を図3に示した。pRL1000ベクター(レーンA)および形質転換レタスより抽出したゲノムDNA(レーンC)を鋳型にPCRした産物を電気泳動したレーンにおいて、1.6kbの葉緑体ゲノムへの遺伝子の導入を示すバンドが確認できた。また僅かではあるが、野生型葉緑体ゲノムの存在を示す0.3kbのバンドがレーンCにおてい認めらたことから、形質転換レタスにおいてPCRで検出できる程度の微量の野生型葉緑体ゲノムDNAも含まれていることが認められた(図3)。
【実施例5】
【0032】
形質転換されたレタスのスペクチノマイシン耐性の評価
実施例4によりaadA遺伝子の導入が確認されたレタス植物体においてaadA遺伝子が発現して機能しているかどうかを調べるために形質転換されたレタス(図4)より4mm四方の葉切片を切り出し、スペクチノマイシン50mg/Lを含むRMOP培地に置床した。同様に野生株レタスの葉切片も置床し25℃、長日条件下(16時間明期、8時間暗期)において再分化の様子を4週間観察した(図5)。A,B,Cは野生株レタスの葉切片を、スペクチノマイシンを含むRMOP培地上で培養したものである。Aは置床直後、Bは置床して2週間後、Cは置床して4週間後の葉切片の様子を示すが、いずれも葉および根の分化は観察されなかった。同様に形質転換されたレタスの葉切片の培養を示したのがD,E,Fである。EおよびFでは、葉切片からの葉および根の分化が確認された。これは、aadA遺伝子がレタスの葉緑体ゲノムに導入され、葉で発現したaadA産物が、スペクチノマイシンに対する耐性を示したものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
医療用などの高付加価値タンパク質を、キク科植物、特にレタスの葉緑体で安全かつ安価に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1はベクターの模式図を示す図である。
【図2】図2は実施例4におけるaadA遺伝子が導入されたことを確認するPCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。図中AはpRL1000ベクターから抽出したDNAを、Bは野生株レタスの葉から抽出したDNAを、Cは形質転換されたレタスの葉から抽出したDNAをそれぞれ鋳型に用いてPCRしたものを電気泳動した結果を示す。
【図3】図3は実施例4におけるレタス葉緑体ゲノムへの導入遺伝子の組み換え率の検討を行ったPCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。図中AはpRL1000ベクターから抽出したDNAを、Bは野生株レタスの葉から抽出したDNAを、Cは形質転換されたレタスの葉から抽出したDNAををそれぞれ鋳型に用いてPCRしたものを電気泳動した結果を示す。
【図4】図4は形質転換されたレタスの葉である。
【図5】図5は、実施例5の結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを含有することを特徴とするキク科植物の葉緑体形質転換用ベクター。
【請求項2】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAが、レタス葉緑体由来のDNAであることを特徴とする請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
キク科植物が、レタスであることを特徴とする請求項1または2に記載のベクター。
【請求項4】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを複数含有する請求項1〜3のいずれかに記載のベクター。
【請求項5】
レタス葉緑体ゲノム由来のDNAが、リブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子およびアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子であることを特徴とする請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAの間に少なくとも1種の制限酵素切断部位を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のベクター。
【請求項7】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNA配列の間に葉緑体で機能するプロモーター、ターミネーターを有し、さらに前記プロモーターとターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のベクター。
【請求項8】
プロモーターが、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターであることを特徴とする請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
レタス葉緑体ゲノム由来のリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子の間に、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターおよびpsbA遺伝子のターミネーターを有し、さらに前記プロモーターおよびターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有するベクター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたキク科植物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたレタス。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入することを特徴とするキク科植物葉緑体の形質転換方法。
【請求項13】
ベクターの導入が、パーティクルガンを用いることを特徴とする請求項12に記載の形質転換方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入し、前記キク科植物の葉細胞を植物培養用培地で培養することを特徴とする形質転換植物体の製造方法。
【請求項15】
植物培養用培地が、ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L0.01〜1mg/L並びにカイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/Lを含有することを特徴とする請求項14に記載の形質転換植物体の製造方法。
【請求項16】
オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする請求項15に記載の形質転換植物体の製造方法。
【請求項17】
植物培養用培地が、さらにポリビニルピロリドンを100〜1000ppm含有することを特徴とする請求項15または16に記載の形質転換植物体の製造方法。
【請求項18】
ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L、カイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/L、およびポリビニルピロリドン100〜1000ppmを含有することを特徴とする形質転換キク科植物の葉培養用培地。
【請求項19】
オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする請求項18に記載の培地。
【請求項20】
キク科植物がレタスであることを特徴とする請求項18または19に記載の培地。
【請求項1】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを含有することを特徴とするキク科植物の葉緑体形質転換用ベクター。
【請求項2】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAが、レタス葉緑体由来のDNAであることを特徴とする請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
キク科植物が、レタスであることを特徴とする請求項1または2に記載のベクター。
【請求項4】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAを複数含有する請求項1〜3のいずれかに記載のベクター。
【請求項5】
レタス葉緑体ゲノム由来のDNAが、リブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子およびアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子であることを特徴とする請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNAの間に少なくとも1種の制限酵素切断部位を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のベクター。
【請求項7】
キク科植物葉緑体ゲノム由来のDNA配列の間に葉緑体で機能するプロモーター、ターミネーターを有し、さらに前記プロモーターとターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のベクター。
【請求項8】
プロモーターが、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターであることを特徴とする請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
レタス葉緑体ゲノム由来のリブロース−1,5−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子とアセチルCoAカルボキシラーゼサブユニット遺伝子の間に、レタス葉緑体ゲノム由来のrRNAオペロンのプロモーターおよびpsbA遺伝子のターミネーターを有し、さらに前記プロモーターおよびターミネーターとの間に発現タンパク質をコードする塩基配列を有するベクター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたキク科植物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを用いて形質転換されたレタス。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入することを特徴とするキク科植物葉緑体の形質転換方法。
【請求項13】
ベクターの導入が、パーティクルガンを用いることを特徴とする請求項12に記載の形質転換方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載のベクターを、キク科植物の葉細胞に導入し、前記キク科植物の葉細胞を植物培養用培地で培養することを特徴とする形質転換植物体の製造方法。
【請求項15】
植物培養用培地が、ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L0.01〜1mg/L並びにカイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/Lを含有することを特徴とする請求項14に記載の形質転換植物体の製造方法。
【請求項16】
オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする請求項15に記載の形質転換植物体の製造方法。
【請求項17】
植物培養用培地が、さらにポリビニルピロリドンを100〜1000ppm含有することを特徴とする請求項15または16に記載の形質転換植物体の製造方法。
【請求項18】
ナフタレン酢酸、2−ナフトキシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸、インドール酪酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択されるオーキシン0.01〜1mg/L、カイネチン、ゼアチンまたはベンジルアデニンおよびイソペンテニルアデニンから選択されるサイトカイニン0.01〜1mg/L、およびポリビニルピロリドン100〜1000ppmを含有することを特徴とする形質転換キク科植物の葉培養用培地。
【請求項19】
オーキシンに対するサイトカイニンの重量比が1:0.8〜1.2であることを特徴とする請求項18に記載の培地。
【請求項20】
キク科植物がレタスであることを特徴とする請求項18または19に記載の培地。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−75078(P2006−75078A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262632(P2004−262632)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月15日 日本植物生理学会発行の「Plant Cell Physiology 2004年 Vol.45 supplement」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年8月8日 第22回日本植物細胞分子生物学会(秋田)大会準備委員会発行の「第22回 日本植物細胞分子生物学会秋田大会・シンポジウム講演要旨集」に発表
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(000225142)奈良県 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月15日 日本植物生理学会発行の「Plant Cell Physiology 2004年 Vol.45 supplement」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年8月8日 第22回日本植物細胞分子生物学会(秋田)大会準備委員会発行の「第22回 日本植物細胞分子生物学会秋田大会・シンポジウム講演要旨集」に発表
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(000225142)奈良県 (42)
【Fターム(参考)】
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