説明

キャップ

【課題】 カバーキャップを閉めたときの使用者の側への液剤の飛散を確実に防止し、併せて天板部材の部品搬送性、組付性を向上すること。
【解決手段】 キャップ12であって、天板部材30におけるヒンジ42の回動軸Rに直交する直径上の両側の外縁に、キャップ本体20の筒状壁部21の上端面に載り、かつカバーキャップ40のシール44が天板部材30の注出口34を封止する状態で該カバーキャップ40の蓋部41の下端面が衝接する鍔状ストッパ部35を備え、天板部材30におけるヒンジ42の回動軸Rに平行な直径上の両側の外縁に、カバーキャップ40のシール44が天板部材30の注出口34を封止する状態で該カバーキャップ40の蓋部41の下端面がキャップ本体20の筒状壁部21の上端面に対して間隙をなす欠損部36を備えるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液剤を収容する容器のためのキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容器のためのキャップとして、図6に示す如く、容器本体(不図示)の開口部に被着されるキャップ本体1と、キャップ本体1の筒状壁部1Aの上端部に組付けられ、注出口2Aを備える天板部材2と、キャップ本体1にヒンジ(不図示)を介して回動自在に連結していて、キャップ本体1に設けられる天板部材2の注出口2Aを開閉するカバーキャップ3とを有するものがある。カバーキャップ3は、天板部材2の注出口2Aを開閉自由に封止するシール3Aと、このシール3Aが天板部材2の注出口2Aを封止する状態で注出口2Aの周囲を覆う蓋部3Bとを有する。
【0003】
この従来のキャップが設けられた容器では、容器から液剤を注出した後に容器を正立させると、注出口2Aの外側に回り込んだ液剤が天板部材2の上面に垂れ落ちる場合がある。この状態で、カバーキャップ3をヒンジまわりに回動して閉めると、カバーキャップ3の蓋部3Bの下端面が天板部材2の上面に溜まっている液剤をたたき、たたかれた液剤(図6のL)がキャップ本体1の側傍に飛散して周辺を汚す。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のキャップでは、カバーキャップ3のシール3Aが天板部材2(特許文献1では、天板部材2をキャップ本体1の筒状壁部1Aに一体成形したものとしている)の注出口2Aを封止する状態で、カバーキャップ3の回動先端となる蓋部3Bの下端面と天板部材2の上面との間に間隙を形成することとしている。カバーキャップ3を回動して閉めたときに、カバーキャップ3の蓋部3Bの下端面が天板部材2の上面に衝突せず、従って注出口2Aから垂れ落ちた液剤が天板部材2の上面に溜まっていても、これを飛散させることがないというものである。
【特許文献1】特開2000-302152
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のキャップには以下の問題点がある。
(1)使用者が容器内部の液剤を注出する操作では、片手で容器本体をつかみ、キャップ本体1からの液剤の注出方向(換言すれば、カバーキャップ3の回動先端となる側)を前方に向けて液剤を注出し、続けてカバーキャップ3を閉める一連の動作中、使用者は液剤の注出方向に概ね直交する方向に目を置き易い。ところが、カバーキャップ3を閉めたときに生じる前述の液剤飛散を防ぐために、カバーキャップ3の蓋部3Bの下端面と天板部材2の上面との間に形成する間隙を、カバーキャップ3の回動先端となる側(換言すれば、キャップ本体1からの液剤の注出方向)に設けてあり、液剤の注出方向に概ね直交する方向(使用者の目が置かれている側)には設けていない。このため、使用者の目が置かれている側への液剤の飛散を確実に防止することができない。
【0006】
(2)キャップ本体1と天板部材2とを一体成形するものであり、天板部材2をキャップ本体1と別体にするときの天板部材2の部品搬送性、組立性についての考慮が全くない。
【0007】
本発明の課題は、カバーキャップを閉めたときの使用者の側への液剤の飛散を確実に防止し、併せて天板部材の部品搬送性、組付性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、容器本体の開口部に被着されるキャップ本体と、キャップ本体の筒状壁部の上端部に組付けられ、注出口を備える天板部材と、キャップ本体にヒンジを介して回動自在に連結していて、キャップ本体に設けられる天板部材の注出口を開閉するカバーキャップとを有し、カバーキャップが天板部材の注出口を開閉自由に封止するシールと、このシールが天板部材の注出口を封止する状態で注出口の周囲を覆う蓋部とを有してなるキャップであって、天板部材におけるヒンジの回動軸に直交する直径上の両側の外縁に、キャップ本体の筒状壁部の上端面に載り、かつカバーキャップのシールが天板部材の注出口を封止する状態で該カバーキャップの蓋部の下端面が衝接する鍔状ストッパ部を備え、天板部材におけるヒンジの回動軸に平行な直径上の両側の外縁に、カバーキャップのシールが天板部材の注出口を封止する状態で該カバーキャップの蓋部の下端面がキャップ本体の筒状壁部の上端面に対して間隙をなす欠損部を備えるようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1、図2に示す容器10は、スクイズ性を有する容器本体11に洗剤等の液剤を収容し、容器本体11の開口部11Aに計量キャップ12を被着している。容器本体11は横断面を概ね楕円状とすることができる。計量キャップ12は、キャップ本体20と天板部材30とカバーキャップ40とを有する。
【0010】
キャップ本体20は、筒状壁部21の内周下端部を容器本体11の開口部11Aの外周に螺着し、筒状壁部21の内周中間部から延在されて筒状壁部21の内方を筒状壁部21の下端部より下方にまで延びる有底内筒部22を容器本体11内に配置している。キャップ本体20は、筒状壁部21の内周上端部及び内筒部22の内周により計量室23を形成し、容器本体11の内部に連通していて計量室23の底部から立上るノズル24を備える。ノズル24は計量室23内の上部にまで立上り、その上端に吐出口24Aを備える。尚、キャップ本体20において、ノズル24の下端部にはディップチューブ13の上端部が接続され、このディップチューブ13の下端部は容器本体11の底部に達している。
【0011】
天板部材30は、有天筒状をなす筒部31と、天板部32とからなり、筒部31の外周をキャップ本体20の筒状壁部21の内周上端部に嵌合されて組付けられ、計量室23の天井部を区画する。天板部材30は、天板部32の一部を上方に突き出るラッパ部33とし、ラッパ部33の内周部分を計量室23からの液剤の注出口34としている。
【0012】
カバーキャップ40は、蓋部41の外縁の背面側に設けたヒンジ42(メインヒンジ42Aとサブヒンジ42B)を介してキャップ本体20の筒状壁部21の外面に一体に連結され、キャップ本体20に対してメインヒンジ42Aを回動軸Rとして回動自在にされ、キャップ本体20に設けられる天板部材30の注出口34を開閉する。カバーキャップ40は、蓋部41の外縁の正面側(蓋部41の中心部を挟んでヒンジ42と反対側)に庇状に張り出る取手部Kを備え、この取手部Kを開封時の蓋部41の押し上げ操作部とする。カバーキャップ40は、蓋部41の天井内面にインナシール43、アウタシール44を有しており、該カバーキャップ40の閉じ状態で、インナシール43をノズル24の吐出口24Aまわりに嵌着して計量室23を容器本体11の内部と液密に封止し、アウタシール44を天板部材30のラッパ部33の注出口34に液密に嵌合して計量室23を外部空間と液密に封止する。蓋部41は、アウタチューブ44が天板部材30の注出口34を封止する状態で、注出口34の周囲を外部空間に対して覆う。
【0013】
尚、キャップ10は、使用者がカバーキャップ40を注出口34が開封するまで上方に押し上げると、その後はヒンジ42の弾発作用によってカバーキャップ40が自動的に回動して開く。使用者がカバーキャップ40を開き位置から閉じ側にある程度まで回動すると、ヒンジ42の弾発作用によってカバーキャップ40が自動的に回動して閉じ、注出口34が封止される。
【0014】
しかるに、容器10は、カバーキャップ40を閉めたときの使用者の側への液剤の飛散を確実に防止し、併せて天板部材30の部品搬送性、組付性を向上するため、以下の構成を具備する。
【0015】
容器10は、図2、図3に示す如く、天板部材30におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に直交する直径Dx上の両側の外縁に、キャップ本体20の筒状壁部21の上端面21A(図4)に載り、かつカバーキャップ40のアウタシール44が天板部材30の注出口34を封止する状態で該カバーキャップ40の蓋部41の下端面41A(図4)が衝接する鍔状ストッパ部35を備える(図4(A))。また、天板部材30におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に平行な直径Dy上の両側の外縁に、カバーキャップ40のアウタチューブ44が天板部材30の注出口34を封止する状態で該カバーキャップ40の蓋部41の下端面41Aがキャップ本体20の筒状壁部21の上端面21Aに対して間隙Gをなす欠損部36(図2の斜線部)を備える(図4(B))。
【0016】
尚、容器10にあっては、天板部材30における上述の直径Dx上に鍔状ストッパ部35を設け、上述の直径Dy上に欠損部36を設けたこととの関係において、下記(1)〜(3)を具備する。
【0017】
(1)キャップ本体20に組付けられた天板部材30の注出口34が、キャップ本体20におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に直交する直径Dx上で、キャップ本体20の中心部Pより反ヒンジ42側に偏心配置される(図2)。
【0018】
(2)キャップ本体20がヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に直交する直径Dx方向を、容器本体11の楕円状横断面の長径方向に合致させている(図2)。
【0019】
(3)キャップ本体20におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に平行な直径Dy上の両側の筒状壁部21の計量室23を形成している部分の側面に計量目盛23A(不図示)を設ける。
【0020】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(請求項1)
(a)天板部材40におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に平行な直径Dy上の両側(換言すれば、キャップ本体20からの液剤の注出方向(図2のX方向)に概ね直交する方向(図2のY方向)の外縁に、カバーキャップ40の蓋部41の下端面41Aがキャップ本体20の筒状壁部21の上端面21Aに対して間隙Gをなす欠損部36を備えた。従って、カバーキャップ40を閉めたとき、キャップ本体20からの液剤の注出方向に概ね直交する方向では、カバーキャップ40の蓋部41の下端面41Aがキャップ本体20の筒状壁部21の上端面21Aに衝突せず、従って注出口34から垂れ落ちた液剤が天板部材30の上面に溜まっていても、これをたたいて飛散させることがない。使用者は、片手で容器本体11をつかみ、キャップ本体20からの液剤の注出方向を前方に向けて液剤を注出し、続いてカバーキャップ40を閉める一連の動作中、液剤の注出方向に概ね直交する方向に目を置き易く、この使用者の目の側への液剤の飛散を確実に防止するものになる。
【0021】
(b)天板部材30におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に直交する直径Dx上の両側(換言すれば、キャップ本体20からの液剤の注出方向に沿う方向(X))の外縁に鍔状ストッパ部35を備え、天板部材30におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に平行な直径Dy上の両側(換言すれば、キャップ本体20からの液剤の注出方向に概ね直交する方向(Y))の外縁に欠損部36を備えた。従って、天板部材30の部品搬送方向、組付方向を、それらの鍔状ストッパ部35と欠損部36の有無により簡易確実に規制できる。例えば、天板部材30をキャップ本体20との組付位置に搬送するとき、図5に示す如く、天板部材30の両側外縁の鍔状ストッパ部35は載り、他の両側外縁の欠損部36は載らないレール巾の左右の搬送レール100を用意することにより、この搬送レール100に載せて搬送される天板部材30は両側の欠損部36を搬送レール100の延在方向に沿う前後に位置させる搬送姿勢を付与される。天板部材30はこの搬送姿勢をキャップ本体20に対する供給姿勢とされ、ひいてはキャップ本体20に対する特定の組付方向を天板部材30に付与できる。
【0022】
(c)天板部材30の外縁に設けられる鍔状ストッパ部35は、キャップ本体20の筒状壁部21の上端面21Aに載ることにより、天板部材30をその筒状壁部21の内周に嵌合するときの位置決めになる。また、鍔状ストッパ部35は、カバーキャップ40を閉めたときに蓋部41の下端面41Aが衝接し、カバーキャップ40の閉じ位置を規制し、前述(a)の欠損部36による間隙Gの形成を安定化する。
【0023】
(請求項2)
(d)キャップ本体20に組付けられた天板部材30の注出口34が、キャップ本体20におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に直交する直径Dx上(換言すれば、キャップ本体20からの液剤の注出方向に沿う方向(X))で、キャップ本体20の中心部Pより反ヒンジ42側に偏心配置される。天板部材30をキャップ本体20に対してこの特定の組付方向で組付けることにより、注出口34を液剤の注出方向に沿う方向で、注出先側により近付けるものになり、注出操作性を向上できる。このとき、天板部材30は、前述(b)により、キャップ本体20に対するこの特定の組付方向を付与されてキャップ本体20に供給される。
【0024】
(請求項3)
(e)キャップ本体20がヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に直交する直径Dx方向(換言すれば、キャップ本体20からの液剤の注出方向に沿う方向(X))を、容器本体11の横断面の長径方向に合致させる。使用者は、容器本体11の狭巾となる短径上の両側面を片手でつかんでキャップ本体20からの液剤の注出を行なう。これにより、片手でつかんだ容器本体11の前方に、キャップ本体20からの液剤の注出方向を向け易く、注出操作性を向上できる。
【0025】
(請求項4)
(f)キャップ本体20におけるヒンジ42の回動軸R(メインヒンジ42A)に平行な直径Dy上(換言すれば、キャップ本体20からの液剤の注出方向に概ね直交する方向(Y))の両側の筒状壁部21の側面に計量目盛23Aを設ける。使用者は、片手で容器本体11をつかみ、計量目盛23Aを見ながら容器内部の液剤を計量室23に投入して計量し、計量した液剤を注出口34から注出し、カバーキャップ40を閉める一連の動作中、キャップ本体20の計量目盛23Aが付されている側(液剤の注出方向に概ね直交する方向(Y))に目を置き易い。他方、カバーキャップ40を閉めたときの液剤の飛散を防止するための前述(a)の間隙Gは、キャップ本体20からの液剤の注出方向に概ね直交する方向(Y)に設けられており、上述の使用者の目の側への液剤の飛散を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は容器に設けられたキャップを示す側断面図である。
【図2】図2はキャップを開いた状態を示す平面図である。
【図3】図3は天板部材を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図である。
【図4】図4はキャップの要部を示し、(A)はカバーキャップを閉じたときの図2のA−A線に沿う断面図、(B)はカバーキャップを閉じたときの図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図5は天板部材と搬送レールを示す平面図である。
【図6】図6は従来例のキャップを示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 容器
11 容器本体
11A 開口部
12 キャップ
20 キャップ本体
21 筒状壁部
21A 上端面
23 計量室
23A 計量目盛
30 天板部材
34 注出口
35 鍔状ストッパ部
36 欠損部
40 カバーキャップ
41 蓋部
42 ヒンジ
44 アウタシール(シール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部に被着されるキャップ本体と、
キャップ本体の筒状壁部の上端部に組付けられ、注出口を備える天板部材と、
キャップ本体にヒンジを介して回動自在に連結していて、キャップ本体に設けられる天板部材の注出口を開閉するカバーキャップとを有し、
カバーキャップが天板部材の注出口を開閉自由に封止するシールと、このシールが天板部材の注出口を封止する状態で注出口の周囲を覆う蓋部とを有してなるキャップであって、
天板部材におけるヒンジの回動軸に直交する直径上の両側の外縁に、キャップ本体の筒状壁部の上端面に載り、かつカバーキャップのシールが天板部材の注出口を封止する状態で該カバーキャップの蓋部の下端面が衝接する鍔状ストッパ部を備え、
天板部材におけるヒンジの回動軸に平行な直径上の両側の外縁に、カバーキャップのシールが天板部材の注出口を封止する状態で該カバーキャップの蓋部の下端面がキャップ本体の筒状壁部の上端面に対して間隙をなす欠損部を備えるキャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体に組付けられた天板部材の注出口が、キャップ本体におけるヒンジの回動軸に直交する直径上で、キャップ本体の中心部より反ヒンジ側に偏心配置されてなる請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体がヒンジの回動軸に直交する直径方向を、容器本体の横断面の長径方向に合致させてなる請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記キャップ本体が容器内部に連通する計量室を備え、
キャップ本体におけるヒンジの回動軸に平行な直径上の両側の筒状壁部の側面に計量目盛を設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−13142(P2010−13142A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173948(P2008−173948)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】