説明

キャビン付き収穫機の原動部構造

【課題】 ラジエータを備えた水冷式のエンジンを横向きに収容した箱型のボンネットの上部に運転座席を設置し、防塵構造の外気取り入れ口を備えた吸気ダクトをラジエータに連通接続されるようボンネットの横外側に設け、ボンネットおよび運転座席をキャビンで覆うよう構成したキャビン付き収穫機の原動部構造において、原動部の通常のメンテナンス作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】 吸気ダクト17の横外端に防塵カバー22を縦向き支点周りに揺動開閉可能に枢支連結して、吸気ダクト17を横外方に向けて開放可能に構成するとともに、この防塵カバー22とキャビン4の横側に配備したドア31とを、観音開き状態に配備してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビン付きコンバインなどのキャビン付き収穫機に利用する原動部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビン付きコンバインとしては、ラジエータを備えた水冷式のエンジンを横向きに収容した箱型のボンネットの上部に運転座席を設置し、防塵構造の外気取り入れ口を備えた吸気ダクトをラジエータに連通接続されるようボンネットの横外側に設け、前記ボンネットおよび運転座席をキャビンで覆うよう構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−117422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにボンネットを回動開放可能に構成した原動部は、エンジン回りを大きく開放することができるのでエンジンの整備を行いやすいものとなっているが、通常のメンテナンスの作業性の面で改良の余地があった。つまり、原動部における通常のメンテナンス作業は、ラジエータの前面に付着したゴミの除去や冷却水の補給、などが主であり、このようなメンテナンス作業のためにボンネットを横外方に回倒して原動部を横外方に開放することになる。
【0004】
しかし、このようにして開放された原動部にはラジエータ前面が大きく露出されることにはなるが、回動された大きいボンネットがラジエータの横外側に位置するので、作業者がラジエータの前面に立つことはできず、作業者は、回倒されたボンネットの前側や後側に立って、あるいは、キャビン内の運転ステップに乗り込み、窮屈な姿勢で手を伸ばしてラジエータ前面の除塵操作やラジエータ上部からの冷却水補給を行わねばならなかった。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、キャビン付き収穫機における原動部の通常のメンテナンス作業を容易に行うことができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ラジエータを備えた水冷式のエンジンを横向きに収容した箱型のボンネットの上部に運転座席を設置し、防塵構造の外気取り入れ口を備えた吸気ダクトをラジエータに連通接続されるようボンネットの横外側に設け、前記ボンネットおよび運転座席をキャビンで覆うよう構成したキャビン付き収穫機の原動部構造であって、
前記吸気ダクトの横外端に防塵カバーを縦向き支点周りに揺動開閉可能に枢支連結して、吸気ダクトを横外方に向けて開放可能に構成するとともに、この防塵カバーと前記キャビンの横側に配備したドアとを、観音開き状態に配備してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、防塵カバーを開放して原動部を横外方に開放すると、ラジエータ前面が大きく露出され、ラジエータ前面の清掃などのメンテナンス作業を行うことができる。この場合、揺動開放された防塵カバーは外方後方に移動するのでラジエータの前面には邪魔するものがなく、作業者はラジエータの前面に充分近づくことができる。
【0008】
また、この場合、キャビンのドアが開放されていても、ドアはラジエータから離れた前方外方に移動しているのでメンテナンス作業には何らの支障もない。むしろ、開放されたキャビンの運転ステップにメンテナンスに用いる道具類を置くことができ、地面に置いた道具類を屈みこんで取り上げたりする煩わしさがなくなる。
【0009】
従って、第1の発明によると、キャビン付き収穫機における原動部の通常のメンテナンス作業を容易に行うことができるようになった。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記防塵カバーの遊端部の上下複数箇所を前記吸気ダクトに連結するロック機構を備えるとともに、これら複数のロック機構を同時にロック解除操作する単一のロック解除操作具を備えてあるものである。
【0011】
上記構成によると、閉じた防塵カバーの遊端部を上下複数のロック機構でしっかりと吸気ダクトに接続することができ、吸気もれのない外気取り入れが行われる。また、単一のロック解除操作具を操作するだけで複数箇所のロックを解除して、速やかに防塵カバーを開放することができ、取扱い性に優れたものとなっている。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記ロック機構およびロック解除操作具を防塵カバーに装備してあるものである。
【0013】
上記構成によると、ロック解除操作具をロック解除操作した後、引続き外方に力を加えることで防塵カバーを開放することができ、操作性にも優れたものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、キャビン付き収穫機の一例であるキャビン付きコンバインを右側から見た全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2の右側前部に、運転部を覆うキャビン4と、水冷式のエンジン5を収容した原動部6が搭載され、さらに、走行機体2上に脱穀装置7とアンローダ8付きの穀粒回収タンク9が左右に並んで搭載された構造となっている。
【0015】
図2〜4に示すように、前記原動部6は、エンジン5およびその横外側に位置させたラジエータ10を、箱型に形成されたボンネット11で覆った構造となっており、このボンネット11の前半部上面に運転座席12が装着されるとともに、ボンネット11の後半部上方に、エアークリーナ13を収容した上部ダクト14が連設されている。また、ボンネット11の横外側には、防塵網15を張った外気取り入れ口16を備えた中空縦壁状の吸気ダクト17が設けられ、この吸気ダクト17の内側壁面に形成された矩形の開口18がラジエータ10の前面に連通接続されている。また、吸気ダクト17の内部には、キャビン内を温度調節する空調装置のコンデンサ19や冷媒のレシーバ20が収容されている。
【0016】
このように構成された原動部6では、冷却ファン21によって外気が外気取り入れ口16を経て吸気ダクト17に吸入されてラジエータ10に導かれ、ラジエータ10を通過した冷却排風がエンジン5を周囲から冷却しながら機体内方に流出してゆく。また、吸気ダクト17に収容されたコンデンサ19がラジエータ冷却風を利用して冷却される。
【0017】
前記吸気ダクト17の外側壁は、前記外気取り入れ口16を備えた別体の防塵カバー22で構成されている。この防塵カバー22は上方にまで延出されて上部ダクト14の外端開口部が塞がれるとともに、防塵網23を張った上部外気取り入れ口24が形成され、防塵網23で除塵されて上部ダクト14に導入された外気がエアークリーナ13で更に浄化されてエンジン5に供給されるようになっている。
【0018】
そして、前記防塵カバー22は、吸気ダクト17および上部ダクト14の後端にヒンジ25を介して縦向き支点pを介して揺動開閉自在に枢支連結され、防塵カバー22を外方後方に揺動開放することで、ラジエータ10の前面やコンデンサ19に付着したゴミの除去、空調用冷媒の補充、エアークリーナ13のエレメント交換、などのメンテナンス作業を行うことができるようになっている。
【0019】
また、閉じ状態の防塵カバー22は、その遊端部の上下2箇所に配備されたロック機構26によって固定されるようになっている。前記ロック機構26は、吸気ダクト17における前部の上下2箇所に横外方に向けて突設したループ状の掛け金具27を把持するよう構成されたものであり、防塵カバー22を閉じ位置まで揺動させると掛け金具27が自動的にロック機構26に係止把持されてロックされ、この閉じロック状態では、図3に示すように、防塵カバー22の内面に付設した環状のシール部材28が吸気ダクト17の外側面に密着されて、その接合箇所からの吸気のもれが防止されるとともに、上部ダクト14の開口端に備えたシール部材29に防塵ケース22の上部内面が圧接されるようになっている。
【0020】
各ロック機構26は、防塵カバー22の前端辺に沿って上下動可能に装着されたロック解除操作具としての1本の操作ロッド30によって解除操作可能となっており、防塵カバー22の下方に突出された操作部30aを持って操作ロッド30を引き下げることで、各ロック機構26がロック付勢力に抗してロック解除操作され、ロック解除操作の後、引続き操作ロッド30を外方に引くことで防塵カバー22を開放することができるのである。
【0021】
また、前記キャビン4の右側面にはドア31がその前端のヒンジ32を介して縦向き支点q周りに揺動開閉自在に枢支連結されており、このドア31と上記防塵カバー22とが観音開き状に開閉されるようになっている。この構成によると、防塵カバー22を開放してラジエータ前面でのメンテナンスを行う場合、キャビン4のドア31を開放して、キャビン4内の運転ステップにメンテナンスに用いる道具を置くことで、道具類を屈みこんで取り上げたりする煩わしさがなくなる。
【0022】
〔他の実施例〕
【0023】
(1)防塵カバー22の閉じロック手段は上記構造に限られるものではなく、例えば、掛け金具27を防塵カバー22側に設けるとともに、ロック機構26および操作ロッド30を吸気ダクト17側に装着する形態で実施することもできる。また、簡易には、防塵カバー22の遊端側の上下複数箇所をノブ付きボルトで吸気ダクト17締め込み固定する構造を利用することもできる。
【0024】
(2)図5に示すように、上記原動部6をキャビン4を備えない仕様の機種に装備する場合には、図6に示すように、吸気ダクト17を備えた上記構成のボンネット11を、その外端下部の支点xを中心に横外方に回倒可能にして実施することもできる。これによると、ラジエータ10の清掃やエアークリーナ13のエレメント交換、などの通常のメンテナンスは防塵カバー22を開放して行い、エンジン5や周辺機器の整備などの大掛かりなメンテナンス作業はボンネット11を回倒して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】キャビン付きコンバインの全体側面図
【図2】防塵カバーおよびドアを開放した状態のキャビン周辺を示す側面図
【図3】原動部の一部を示す縦断正面図
【図4】原動部の一部を示す横断平面図
【図5】キャビンなし仕様に適用したコンバインの全体側面図
【図6】キャビンなし仕様における原動部の正面図
【符号の説明】
【0026】
4 キャビン
5 エンジン
6 原動部
10 ラジエータ
11 ボンネット
12 運転座席
16 外気取入れ口
17 吸気ダクト
22 防塵カバー
26 ロック機構
30 ロック解除操作具
31 ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータを備えた水冷式のエンジンを横向きに収容した箱型のボンネットの上部に運転座席を設置し、防塵構造の外気取り入れ口を備えた吸気ダクトをラジエータに連通接続されるようボンネットの横外側に設け、前記ボンネットおよび運転座席をキャビンで覆うよう構成したキャビン付き収穫機の原動部構造であって、
前記吸気ダクトの横外端に防塵カバーを縦向き支点周りに揺動開閉可能に枢支連結して、吸気ダクトを横外方に向けて開放可能に構成するとともに、この防塵カバーと前記キャビンの横側に配備したドアとを、観音開き状態に配備してあることを特徴とするキャビン付き収穫機の原動部構造。
【請求項2】
前記防塵カバーの遊端部の上下複数箇所を前記吸気ダクトに連結するロック機構を備えるとともに、これら複数のロック機構を同時にロック解除操作する単一のロック解除操作具を備えてある請求項1記載のキャビン付き収穫機の原動部構造。
【請求項3】
前記ロック機構およびロック解除操作具を防塵カバーに装備してある請求項2記載のキャビン付き収穫機の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−121937(P2006−121937A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312406(P2004−312406)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】