説明

ゲル状食品およびその製造方法とゲル状食品の素

【課題】牛乳を主原料とする、栄養に富み、凝固剤を用いることのないデザート用のゲル状食品を提供する。
【解決手段】凝乳酵素を用い、低温殺菌牛乳をゲル状とし、簡便な製造方法により、風味、食感、栄養価も優れた美味なデザート用食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、牛乳または牛乳を主とする液体から造るゲル状食品、その製造方法、そのゲル状食品を簡便に製造するためのゲル状食品の素に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳を用いた食品、なかでも、デザートに適する食品としては、ヨーグルトや牛乳寒天、プリン等が製造販売されてきた。これらは、多くがゲル状の食品であり、特にそのpHが中性付近にある食品の場合、安定したゲル状に保つため、ゼラチンや寒天、カラギーナンなどの凝固剤を使用することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年は、消費者の健康志向、自然食志向、安全安心への志向性が高まり、こうした凝固剤をできるだけ用いることのない食品が好まれる傾向が強くなり、牛乳を用いた栄養価の高い食べ易い新しいデザート用の食品が求められている。この発明はこうした課題に対応するものである
【発明が解決しようとする手段】
【0004】
この発明は、凝乳酵素を用いて、牛乳、特に、低温殺菌牛乳をゲル化させることにより、新しいデザート用の食品を容易に提供し得るようにするものである。
【0005】
従来、レンネット等の凝乳酵素により、チーズを製造するために、牛乳を凝固させ、いわゆるカードを生成することはなされてきたが、そのカードは、あくまでチーズを製造するための途中の生成物であって、これを最終的な食品として扱うことはなかった。
【0006】
チーズを製造にあたっては、凝乳酵素などによって20分から30分程度で牛乳よりカードを生成させ、その後、速やかにこれを凝縮して、乳清を分離し水分を除き、フレッシュチーズを得る。フレッシュチーズやこれを熟成したナチュラルチーズやさらに加工されたプロセスチーズが製造されてきたが、カードを食品として提供されたり考えられたことは従来なく、チーズの製造においては、カードが生成されると直ちに、これをゆるく攪拌するなどして凝縮する工程に移る。その理由は、カードは、ナイフなどで切るとその切り口からはすぐに乳清が離水してくるため、カードが保水性のよい安定なゲルとは考えられず、また、カードが生成する時のpHは中性付近であり腐敗し易いことなどカードそのものは食品とするには適していないと考えられていたためだと思われる。
【0007】
しかし、凝乳酵素の使用目的をチーズの製造でなく、カードの製造であると考え方を転換、すなわち、カードはデザート用のゲル状食品に成り得ないかと考ることにより、新たな展開が可能となった。
【0008】
通常のチーズの製造のように、100リットル程度またはそれ以上の大量の牛乳からカードを生成させる場合、前述の理由から、これを食品とすることは適当でないと考えるのは妥当でないとはいえない。また、この工程においては食品衛生上問題はなくとも、多くは無菌操作的なレベルでの清潔な操作はなされず、また、その必要もなかった。しかし、通常のプリンやゼリーなどのように、数百ml以下の容量を単位として、清潔な容器中でカードを生成させたものは、軟らかく、ほのかな甘味を呈するデザートに好適なものである。また、この工程において、無菌的またはこれに準ずる厳密な操作で原料や容器、製造ラインを扱いカードを生成させた場合、このカードは5日間程度は冷蔵保存が可能であり、この間、離水もなく、食感の変化も殆ど感じられない。
【0009】
また、このカードを容器ごと90℃、10分間以上の加熱殺菌をしても、離水は殆どなく、加熱前よりやや堅く感じられるものの、風味などは良好でデザートとして食するには好適なものであり、2週間程度の冷蔵保存が可能である。
【0010】
チーズの製造では、副生する乳清の処理が大きな問題となっている。乳清を乳糖原料として、これから乳糖を得ることは従来よりなされてきたが、すべてのチーズ工場などで、行なわれ得るものではなく、また、乳糖を取り出したとしてもそのあとの廃液の処理の問題は依然として残る。乳清を食品原料や飲料の原料として利用することも試みられてきたが、現状では、まだ、満足なものには程遠い。
【0011】
それにも増して、乳清は栄養的には、大変価値の高いものであり、可能な限り分離せずに摂取することが望ましいと考えられる。
これらの観点からも、この発明によるゲル状の食品は価値の高いものと考えられる。
【0012】
一方、小規模のレストランなどの店舗や家庭では、また、乳業の製造業者でも特に小規模の場合、できるだけ手間をかけずに、デザート用の食品を作ることが要求される。そこで、でき得るならば、数十分から1時間程度で、長くとも数時間内に数リットル程度またはそれ以下の少量の牛乳を凝固し得る凝乳酵素が予め計り取られていて、これを、いつでも利用できるならば、大変に便利である。凝乳酵素を乾燥させ、粉末とし、一定量を計量して密閉包装した衛生的なものがあれば、使い易く、保存性もよく、この目的を達成することができる。しかし、いままで上述のようなことが想定されたことはなく、こうした形態の凝乳酵素は従来なかった。
【0013】
また、健康志向の高い現在、凝乳酵素とともに、乾燥乳酸菌粉末、乾燥ビフィズス菌末、乾燥酪酸菌末、乾燥納豆菌末、食物繊維末、乾燥酵母末、乾燥酵母エキス末、乾燥野菜または野菜エキス粉末、乾燥藻類または藻類エキス粉末、乾燥キノコまたはキノコエキス粉末、粉末カロチノイド、ビタミン粉末、粉末不飽和脂肪酸末、コラーゲン末など健康に役立つと考えられている成分が、いっしょに包装されていれば、こうした成分を含むデザート食品を容易に作ることができる。
【0014】
凝乳酵素は仔牛の胃由来の酵素レンネット(キモシン)を用いる事が多いが、これに限らず、微生物あるいは植物由来の凝乳酵素を用いることもできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、ゼラチンや寒天などの凝固剤を用いることなく、牛乳を主原料とする栄養価値の高い、ゲル状のデザート用食品を容易につくることができ、工場廃液を減少させるのにも役立つという効果も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【実施例1】
【0016】
仔牛由来の液体レンネット(株式会社野沢組(千代田区丸の内3−4−1 新国際ビル4F)より購入) 300mlをろ過除菌し、殺菌したセルロースチューブにいれ、水を外液として透析し塩分を除去し、殺菌したセルロース末30gを加え、凍結乾燥して粉砕し、粉末レンネットを得た。この15gを2kgの殺菌グルコース末によく混合して、1gずつアルミニウムラミネート包材で包装した。
【0017】
この1包分を43℃に温めた300mlの低温殺菌牛乳に加え混ぜ、殺菌した100mlのガラス容器に75mlずつ分け、蓋をして、保温した。30分で凝固し、その後冷蔵し、デザート食品とした。食感、風味良好であった。4℃において冷蔵5日後も変化なかった。
【実施例2】
【0018】
前述のように、凝固させたものを、容器ごと93℃から95℃の湯中につけ、12分間加熱後、冷却した。加熱前のものより、食感はやや堅くなったが、風味は良好であった。
【実施例3】
【0019】
前述で得た粉末レンネット10gと、ビフィズス菌末10g(株式会社協和ウェルネス(東京都中央区日本橋)より購入)(生菌数1011)、殺菌酵母末10g、乳酸菌末(フェーカリス菌末(天野製薬株式会社(愛知県名古屋市中区)より購入))10g(生菌数1011)、殺菌クロレラエキス末1g、殺菌グルコース末1kgを混合し、1gずつアルミニウムラミネート包材で包装した。この1包分を43℃に温めた低温殺菌牛乳500mlに加え、混ぜ、60分保温、凝固後、1夜冷蔵した。離水なく、食感、風味良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛乳または牛乳を主成分とする液体を凝乳酵素により、500ml以下、最適には50から200mlの小型容器内で凝固させることを特徴とするゲル状食品の製造方法。
【請求項2】
前項の製造方法によって得られるゲル状食品。
【請求項3】
第1項記載のゲル状食品の製造のために使用する凝乳酵素が、1000mlの低温殺菌牛乳を35℃〜45℃の温度範囲において3時間以内に凝乳させる活性を有し、かつ、乾燥粉末または顆粒の形状で、密閉包装されていることを特徴とする凝乳酵素剤。
【請求項4】
前項記載の凝乳酵素剤において、凝乳酵素とともに、乾燥乳酸菌粉末、乾燥ビフィズス菌末、乾燥酪酸菌末、乾燥納豆菌末、食物繊維末、乾燥酵母末、乾燥酵母エキス末、乾燥野菜または野菜エキス粉末、乾燥藻類または藻類エキス粉末、乾燥キノコまたはキノコエキス粉末、粉末カロチノイド、ビタミン粉末、粉末不飽和脂肪酸末、コラーゲン末のうち一つ以上が、密閉包装されていることをさらに特徴とする凝乳酵素剤。

【公開番号】特開2012−65637(P2012−65637A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229049(P2010−229049)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(507417329)アイディマー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】