説明

ゲート電極の形成方法、AlGaN/GaN−HEMTの製造方法及びAlGaN/GaN−HEMT

【課題】リソグラフィ限界以下のゲート長を有するゲート電極の形成方法、及び高周波特性のよいAlGaN/GaN-HEMTの製造方法及びAlGaN/GaN-HEMTを提供する。
【解決手段】基板1表面に第1SiN表面保護層2を成膜する工程と、第1SiN表面保護層表面のレジスト3にリソグラフィ限界のレジスト開口部3aを形成し第1SiN表面保護層をエッチング開口する工程と、第1SiN表面保護層の開口部2a及び第1SiN表面保護層の表面に第2SiN表面保護層4を成膜する工程と、第2SiN表面保護層の表面のレジスト5にリソグラフィ限界のレジスト開口部5aを形成し異方性RIEにて第2SiN表面保護層をエッチングして第2SiN表面保護層の開口部4aと第2SiN表面保護層のサイドウォール4bとを形成する工程と、サイドウォールの内側の基板表面とサイドウォールと第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極6を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート電極の形成方法、AlGaN/GaN−HEMTの製造方法及びAlGaN/GaN−HEMTに関し、特にリソグラフィ限界以下の微細ゲート長を有するAlGaN/GaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor)の短ゲート化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AlGaN/GaN−HEMTにおいて、短ゲート化技術は、トランジスタの高周波特性を向上させる技術として、例えば、非特許文献1に開示されていた。
【0003】
AlGaN/GaN−HEMTは、SiC、Si、サファイア等の基板上に、有機金属化学気相成長(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法や分子線エピタキシ (Molecular Beam Epitaxy:MBE) 法で成長された多層構成のエピタキシャル層を有するエピタキシャル基板を用いて作製される。
【0004】
例えば、AlGaN/GaN−HEMTは、基板側から順次成長された、バッファ層、Un-Intentionally Doped(UID)−GaN電子走行層(以後、UID−GaN層と称す。)、UID−AlGaN電子供給層(以後、UID−AlGaN層と称す。)を備えて構成されるエピタキシャル基板を用いて、デバイス作製が行われる。
【0005】
そして、HEMTは、UID−AlGaN層とUID−GaN層との界面のUID−GaN層側に生じる2次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas:2DEG(以後、2DEGと称す。)層を走行する電子をソース電極、ゲート電極及びドレイン電極によって制御することで動作する。
【0006】
デバイスの作製プロセスは、前記のエピタキシャル層を積層したエピタキシャル基板上に、まず、SiN表面保護膜をプラズマ励起化学気相成長 (Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition:PE−CVD(以後、PE−CVD称す。)) 法によって形成させ、イオン注入法によりデバイス領域を特定する素子分離を行い、ソース電極及びドレイン電
極を形成する。
【0007】
次に、フォトリソグラフィによってレジストによるゲート開口パターンを形成し、このレジストパターンをマスクに、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング (Inductive Coupled Plasma Reactive Ion Etching:ICP-RIE(以後、ICP−RIEと称す。)) 法等のドライエッチングによって、ゲート電極形成箇所のSiN表面保護膜を開口し、その開口部にゲート電極を真空蒸着法により形成することで、AlGaN/GaN−HEMTが作製される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】西原 他、信学技報IEICE Technical Report ED2007-211,pp.29-31.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、背景技術によるゲート電極形成方法では、短ゲート長を決定するのは、フォトリソグラフィによるゲート開口パターンサイズに制限されるため、そのサイズ以下のゲート長を得ることができないという問題点を有していた。
【0010】
本発明は、前記問題点を解決するために創案されたものであり、リソグラフィ限界以下のゲート長を有するゲート電極の形成方法、AlGaN/GaN−HEMTの製造方法及びAlGaN/GaN−HEMTを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のゲート電極の形成方法は、基板表面に第1SiN表面保護層を成膜する第1の工程と、前記第1SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストにリソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして前記第1SiN表面保護層をエッチング開口する第2の工程と、前記エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部及び前記第1SiN表面保護層の表面に第2SiN表面保護層を成膜する第3の工程と、前記第1SiN表面保護層の開口部上の前記第2SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに、前記リソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして異方性RIEにて前記第2SiN表面保護層をエッチングすることにより、前記第2SiN表面保護層の開口部と前記第1SiN表面保護層の開口部側壁に前記第2SiN表面保護層のサイドウォールとを形成する第4の工程と、前記サイドウォールの内側の前記基板表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極を形成する第5の工程とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0012】
このゲート電極の形成方法によれば、リソグラフィ限界以下、すなわち、紫外線、遠紫外線さらに極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いた光露光技術のみではなく、電子ビーム(Electron Beam :EB)を用いたEB露光技術によるリソグラフィ限界値以下の微細ゲート長を有するゲート電極を形成することができる。また、2層構成のSiN表面保護層を用いてサイドウォールを形成することで、膜厚及びステップカバレッジの均一性と制御性とを持つことから、ゲート電極の形状制御を容易に行うことができる。特に、第2SiN表面保護層の厚みを制御することで、形成されるゲート電極のゲート長を決定することができる。
【0013】
前記目的を達成するために、本発明のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法は、基板表面に、バッファ層、UID−GaN電子走行層及びUID−AlGaN電子供給層を順次積層してエピタキシャル基板とする第1の工程と、前記エピタキシャル基板のUID−AlGaN電子供給層の表面に、第1SiN表面保護層とソース電極及びドレイン電極とを形成する第2の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間の前記第1SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストにリソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして前記第1SiN表面保護層をエッチング開口する第3の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の表面、前記エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部及び前記第1SiN表面保護層表面に第2SiN表面保護層を成膜する第4の工程と、前記第1SiN表面保護層の開口部上の前記第2SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに、前記リソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして異方性RIEにて前記第2SiN表面保護層をエッチングすることにより、前記第2SiN表面保護層の開口部と前記第1SiN表面保護層の開口部側壁に前記第2SiN表面保護層のサイドウォールとを形成する第5の工程と、前記サイドウォールの内側の前記UID−AlGaN電子供給層表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極を形成する第6の工程とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0014】
前記第1の工程乃至第6の工程によるAlGaN/GaN−HEMTの製造方法によれば、所望のゲート長サイズを、リソグラフィ限界の開口サイズ、第1及び第2SiN表面保護層の厚みを組み合わせてプロセス設計して形成することができる。そして、形成されるゲート電極の形状と厚み、特にゲートコンタクト部であるゲート長サイズ、及び、ゲート電極表面に至る所望のゲート電極の側壁形状を得ることができる。
【0015】
また、前記第1の工程乃至第6の工程によるAlGaN/GaN−HEMTの製造方法において、前記第2の工程において、前記UID−AlGaN電子供給層と前記第1SiN表面保護層との間にゲート絶縁膜をさらに形成し、前記第3の工程において、前記ゲート絶縁膜上の前記第1SiN表面保護層のみがエッチング開口され、前記第5の工程において、前記異方性RIEにて前記ゲート絶縁膜上の前記第2SiN表面保護層のみエッチングし、そして、前記第6の工程において、前記サイドウォールの内側の前記ゲート絶縁膜の表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極を形成する製造方法により、MIS型のゲート構造を有するAlGaN/GaN−HEMTの製造方法とすることもできる。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明のAlGaN/GaN−HEMTは、基板表面に、バッファ層、UID−GaN電子走行層及びUID−AlGaN電子供給層が順次積層されたエピタキシャル基板と、前記エピタキシャル基板のUID−AlGaN電子供給層の表面に形成された第1SiN表面保護層とソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間の前記第1SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに形成されたリソグラフィ限界のレジスト開口部と該レジストをマスクとしてエッチング開口された前記第1SiN表面保護層と、前記ソース電極及びドレイン電極の表面、前記エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部及び前記第1SiN表面保護層の表面に成膜された第2SiN表面保護層と、前記第1SiN表面保護層の開口部上の前記第2SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに、前記リソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして異方性RIEにて前記第2SiN表面保護層をエッチングすることにより形成された、前記第2SiN表面保護層の開口部と前記第1SiN表面保護層の開口部側壁に形成された前記第2SiN表面保護層のサイドウォールと、前記サイドウォールの内側の前記UID−AlGaN電子供給層の表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆して形成されたゲート電極とを少なくとも備える。
【0017】
このような構成のAlGaN/GaN−HEMTは、所望のゲート長サイズが、リソグラフィ限界の開口サイズ、第1及び第2SiN表面保護層の厚みを組み合わせてプロセス設計することができる。そして、形成されるゲート電極の形状と厚み、特にゲートコンタクト部であるゲート長サイズ、及び、ゲート電極表面に至る所望のゲート電極の側壁形状を有し、ゲート容量が低減化され、遮断周波数(f)及び最大発振周波数(fmax)等の高周波特性が向上したAlGaN/GaN−HEMTを得ることができる。
【0018】
また、前記の構成のAlGaN/GaN−HEMTにおいて、ゲート絶縁膜が、前記UID−AlGaN電子供給層と前記第1SiN表面保護層との間に形成され、前記ゲート電極が、前記サイドウォールの内側の前記ゲート絶縁膜の表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆する構成とすることで、ゲートリーク電流の抑制と高耐圧化が図られたMIS型のゲート構造を有するAlGaN/GaN−HEMTを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リソグラフィ限界以下のゲート長を有するゲート電極の形成方法、及び高周波特性のよいAlGaN/GaN−HEMTの製造方法及びAlGaN/GaN−HEMTを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態のゲート電極の形成方法を説明するための工程断面図(その1)である。
【図2】図1に続く第1の実施形態のゲート電極の形成方法を説明するための工程断面図(その2)である。
【図3】本発明の第2の実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法を説明するための工程断面図(その1)である。
【図4】図3に続く第2の実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法を説明するための工程断面図(その2)である。
【図5】図4に続く第2の実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法を説明するための工程断面図(その3)である。
【図6】第2の実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法の製造工程を示す概略フローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態のMIS型のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。各図は、本発明の特徴が明確になるように記載されており、寸法関係等は、必ずしも実際のものに忠実に描いていないため、本発明を何ら制約するものではない。なお、各図において同じ構成要素には同一の符号を付してある。以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態のゲート電極の形成方法について、図1(a)乃至図1(d)及び図2を参照して説明する。
本実施形態のゲート電極の形成方法は、本発明の要件の一つであるリソグラフィ限界値以下の微細ゲート長を有するゲート電極を形成する方法について、単純化した基板1上にゲート電極6を形成する工程を中心に説明する。
【0023】
先ず、図1(a)に示すように、製造者は、基板1の表面にPE−CVD法により第1SiN表面保護層2を成膜する。この第1SiN表面保護層2の厚みは、後記するサイドウォールの高さを決定するものである。SiNを使用する理由は、基板1との密着性と成膜プロセスの容易性とステップカバレッジ効果、さらに、プラズマエッチングによる加工性等を考慮している。
【0024】
次に、図1(b)に示すように、製造者は、第1SiN表面保護層2上にレジスト3を塗布し、リソグラフィ工程の限界のレジスト開口部3aを形成する。そして、このレジストパターンをマスクに、第1SiN表面保護層2をICP−RIE法によりSFガス中でドライエッチングして開口部2aを形成する。このSFガス中でのドライエッチングによれば、例えば、基板1がSi、SiC、サファイア、GaAs、GaN、AlGaN、AlN等の基板の場合には、これら基板1の表面をエッチングすることはなく、所望の第1SiN表面保護層のみをエッチングすることができる。
【0025】
次に、図1(c)に示すように、エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部2a及び第1SiN表面保護層2の表面に第2SiN表面保護層4を成膜する。この第2SiN表面保護層4は、後記する蒲鉾形状のサイドウォール4b(図1(d))となるものである。そして、この第2SiN表面保護層4の厚みは、ゲート電極6のゲート長を決定する。したがって、前記した第1SiN表面保護層2を採用した理由と同様にSiNを材料とした第2SiN表面保護層4とした。
【0026】
ついで、図1(d)に示すように、第1SiN表面保護層の開口部2a上の第2SiN表面保護層4表面にレジスト5を塗布し、リソグラフィ工程の限界のレジスト開口部5aを形成し、該レジスト5をマスクとしてICP−RIE法による異方性RIEにて第2SiN表面保護層4を異方性エッチングする.この異方性ICP−RIEは、サイドウォール4bを形成する条件であり、例えば、SFガス中において、ICP出力50W、RIE出力10W、圧力7.5mTorrの条件とする。このようにすることで、第2SiN表面保護層4の開口部4aと第1SiN表面保護層2の開口部2aの側壁に第2SiN表面保護層4のサイドウォール4bとが形成される。
【0027】
そして、最後に、図2に示すように、サイドウォール4bの内側の基板1の表面とサイドウォール4bと第2SiN表面保護層4の開口部4aとを被覆するゲート電極6を形成することで短ゲート長を有するゲート電極が形成される。すなわち、リソグラフィ工程の限界の開口幅を有する開口部4aによって決まる上部ゲート長(Lg2)の電極幅と、基板1と接する(ゲートコンタクトとなる)リソグラフィ限界値より両側のサイドウォール4bの幅が短縮された短ゲート長(Lg1)を有するゲート電極6を形成することができる。なお、図2に示すように、フォトリソ工程によりゲート電極6の最表面のゲート長(Lg3)を通常のリソグラフィサイズとすることができる。
【0028】
本実施形態のゲート電極の形成方法によれば、リソグラフィ限界以下、すなわち、紫外線、遠紫外線さらに極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いた光露光技術のみではなく、電子ビーム(Electron Beam :EB)を用いたEB露光技術によるリソグラフィ限界値以下の微細ゲート長を有するゲート電極を形成することができる。また、2層構成のSiN表面保護層を用いてサイドウォールを形成することで、膜厚及びステップカバレッジの均一性と制御性とを持つことから、ゲート電極の形状制御を容易に行うことができる。特に、第2SiN表面保護層の厚みを制御することで、形成されるゲート電極のゲート長を決定することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法について、図3乃至図6を参照して説明する。本実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法は、前記説明したゲート電極の形成方法を、AlGaN/GaN−HEMTのデバイス作製に適用したものである。
【0030】
まず、図3(a)に示すように、製造者は、基板10の表面に、バッファ層11、UID−GaN層12、及び、UID−AlGaN層13を順次積層してエピタキシャル基板100とする。本実施形態では、基板10は、SiC、Si、サファイア等の基板とすることができる。そして、製造者がMOCVD法によりバッファ層11、UID−GaN層12、及び、UID−AlGaN層13を順次結晶成長することで、積層層を有するエピタキシャル基板100を形成する。
【0031】
次に、図3(b)に示すように、製造者は、エピタキシャル基板100のUID−AlGaN層13表面にPE−CVD法により第1SiN表面保護層15を成膜する。次いで、イオン注入法を用いてArイオン等をイオン注入してHEMT素子領域を限定する素子分離のためのアイソレーション領域16を形成する。さらに、第1SiN表面保護層15を開口し、オーミック電極17であるソース電極17−1及びドレイン電極17−2を形成する。この、第1SiN表面保護層15の要件は、第1の実施形態の第1SiN表面保護層2と同様である。
【0032】
次に、図3(c)に示すように、ソース電極17−1及びドレイン電極17−2の間の第1SiN表面保護層15表面のレジスト18にリソグラフィ限界のレジスト開口部18aを形成し、製造者は、レジスト18をマスクとして第1SiN表面保護層15をエッチング開口し開口部15aを形成する。第1SiN表面保護層15をエッチング開口する方法は、第1の実施形態の第1SiN表面保護層2の開口方法と同様に、SFガス中でのICP−RIE法とする。
【0033】
次いで、図4(a)に示すように、製造者は、ソース電極17−1及びドレイン電極17−2の表面、エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部15a及び第1SiN表面保護層15表面に第2SiN表面保護層19を成膜する。この第2SiN表面保護層19の要件は、第1の実施形態の第2SiN表面保護層4と同様である。
【0034】
そして、図4(b)に示すように、製造者は、第1SiN表面保護層15の開口部15a上の第2SiN表面保護層19表面のレジスト20に、リソグラフィ限界のレジスト開口部19aを形成し、レジスト19をマスクとして異方性RIEにて第2SiN表面保護層19を異方性エッチングすることにより、第2SiN表面保護層19の開口部19aと第1SiN表面保護層15の開口部15a側壁に第2SiN表面保護層19のサイドウォール19bとを形成する。
【0035】
この異方性ICP−RIEは、例えば、SFガス中において、ICP出力50W、RIE出力10W、圧力7.5mTorrを、サイドウォール19bを形成する条件とする。このようにすることで、第2SiN表面保護層19の開口部19aと第1SiN表面保護層15の開口部15aの側壁に第2SiN表面保護層19のサイドウォール19bとが形成される。
【0036】
そして、最後に、図5に示すように、サイドウォール19bの内側のUID−AlGaN13の表面とサイドウォール19bと第2SiN表面保護層19の開口部19aとを被覆するゲート電極21を形成することで短ゲート長を有するAlGaN/GaN−HEMTが作製される。
【0037】
ここで、本実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの主な製造工程を示すフローチャートを、図6を参照して説明する。主な工程は、基板上にUID−GaN層及びUID−AlGaN層を含むエピタキシャル基板を作製する(ステップS1)、第1SIN表面保護層を成膜し、アイソレーション領域、オーミック電極を形成する(ステップS2)、ゲート形成予定部にリソグラフィ限界値のゲート長のレジスト開口を行い、第1SiN表面保護層に開口部をエッチング形成する(ステップS3)、第2SiN表面保護層を成膜し、ステップS3と同様のレジスト開口を行い、異方性RIEにて第2SiN表面保護層をエッチングして、サイドウォール及びゲート開口部を形成する(ステップS4)、そして、ゲート電極を形成する(ステップS5)である。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法によれば、第1の実施形態のゲート電極の形成方法による効果に加え、AlGaN/GaN−HEMTにおいて、所望の短縮したゲート長サイズを、リソグラフィ限界の開口サイズ、第1及び第2SiN表面保護層の厚みを組み合わせてプロセス設計して形成することができる。そして、形成されるゲート電極の形状と厚み、特にゲートコンタクト部であるゲート長サイズ、及び、ゲート電極表面に至る所望のゲート電極の側壁形状を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態のAlGaN/GaN−HEMTは、所望の短縮したゲート長サイズが、リソグラフィ限界の開口サイズ、第1及び第2SiN表面保護層の厚みを組み合わせてプロセス設計することができる。そして、形成されるゲート電極の形状と厚み、特にゲートコンタクト部であるゲート長サイズ、及び、ゲート電極表面に至る所望のゲート電極の側壁形状を有し、ゲート容量が低減化され、f及びfmax等の高周波特性を向上させたAlGaN/GaN−HEMTを得ることができる。
【0040】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態のMIS型のAlGaN/GaN−HEMTについて、図7を参照して説明する。本実施形態のMIS型のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法は、前記説明した第2の実施形態をMIS型のAlGaN/GaN−HEMTのデバイス作製に適用したものである。
【0041】
本実施形態のMIS型のAlGaN/GaN−HEMTと第2の実施形態のAlGaN/GaN−HEMTとの差異は、図7に示すように、金属(Metal)としてのゲート電極(M)21と半導体(Semiconductor)としてのUID−AlGaN層(S)13との間に、第1SiN表面保護層15及び第2SiN表面保護層19のエッチングレート値よりも小さいエッチングレート値を有する絶縁体(Insulator)としてのゲート絶縁膜(I)30を設けた構造としたことである。
【0042】
本実施形態では、ゲート絶縁膜30として、PE−CVD法により形成されたSiO膜、あるいは、AlNが使用される。これらの絶縁膜のSFガス中でのIPC−RIEによるエッチングレートは、SiO膜で6nm/min、AlN膜ではエッチングされずほぼエッチングレートは略ゼロなである。ちなみに、第1の実施形態及び第2の実施形態のSiN表面保護層のSFガス中でのIPC−RIEによるエッチングレートは、40nm/min〜50nm/minである。したがって、これらのゲート絶縁膜は、SiN表面保護層とのエッチングの選択比は十分である。
【0043】
したがって、本実施形態のゲート絶縁膜とすることで、図7に示す本実施形態のMIS型のAlGaN/GaN−HEMTにおける製造方法においては、製造者は、UID−AlGaN13と第1SiN表面保護層15との間にゲート絶縁膜30をさらに形成し、ゲート絶縁膜30上の第1SiN表面保護層15のみがエッチング開口され、異方性RIEにてゲート絶縁膜30上の第2SiN表面保護層19のみエッチングし、そして、サイドウォール19bの内側のゲート絶縁膜30の表面とサイドウォール19bと第2SiN表面保護層19の開口部19aとを被覆するゲート電極21を形成することができる。
【0044】
そして、ゲート絶縁膜30が、UID−AlGaN13と第1SiN表面保護層15との間に形成され、ゲート電極30が、サイドウォール19bの内側のゲート絶縁膜30の表面とサイドウォール19bと第2SiN表面保護層19の開口部19aとを被覆する構成とすることで、ゲートリーク電流の抑制と高耐圧化が図られたMIS型のゲート構造を有するAlGaN/GaN−HEMTを得ることができる。
【0045】
以上、説明したように本実施形態によれば、リソグラフィ限界以下のゲート長を有するゲート電極の形成方法、及び高周波特性のよいAlGaN/GaN−HEMTの製造方法及びAlGaN/GaN−HEMTを提供することができる。
【0046】
(変形例1)
本発明の実施形態では、オーミック電極およびゲート電極形成箇所のSiN表面保護層の開口エッチング工程において、ICP−RIEを用いたが、HF等によるウエットエッチングお及びその他のドライエッチング法を使用することも可能である。
【0047】
(変形例2)
また、本実施形態では、SiN表面保護膜の形成方法として、PE−CVD法を用いたがこれに限らず、熱CVD法やその他の成長法を用いることも可能である。
【0048】
(変形例3)
さらに、本実施形態は、GaAs等の他の半導体を用いた短ゲート電極の形成方法として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 第1SiN表面保護層
2a、3a、4a、5a 開口部
3、5 レジスト
4 第2SiN表面保護層
4b サイドウォール
6 ゲート電極
10 基板
11 バッファ層
12 UID−GaN層
13 UID−AlGaN層
14 2DEG層(2次元電子ガス層)
15 第1SiN表面保護層
15a、18a、19a、20a 開口部
16 アイソレーション領域
17 オーミック電極
17−1 ソース電極
17−2 ドレイン電極
18、20 レジスト
19 第2SiN表面保護層
19b サイドウォール
21 ゲート電極
30 ゲート絶縁膜
100 エピタキシャル基板
150、200 AlGaN/GaN−HEMT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に第1SiN表面保護層を成膜する第1の工程と、
前記第1SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストにリソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして前記第1SiN表面保護層をエッチング開口する第2の工程と、
前記エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部及び前記第1SiN表面保護層の表面に第2SiN表面保護層を成膜する第3の工程と、
前記第1SiN表面保護層の開口部上の前記第2SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに、前記リソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして異方性RIEにて前記第2SiN表面保護層をエッチングすることにより、前記第2SiN表面保護層の開口部と前記第1SiN表面保護層の開口部側壁に前記第2SiN表面保護層のサイドウォールとを形成する第4の工程と、
前記サイドウォールの内側の前記基板表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極を形成する第5の工程と
を少なくとも備えることを特徴とするゲート電極の形成方法。
【請求項2】
基板表面に、バッファ層、UID−GaN電子走行層及びUID−AlGaN電子供給層を順次積層してエピタキシャル基板とする第1の工程と、
前記エピタキシャル基板のUID−AlGaN電子供給層の表面に、第1SiN表面保護層とソース電極及びドレイン電極とを形成する第2の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間の前記第1SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストにリソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして前記第1SiN表面保護層をエッチング開口する第3の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の表面、前記エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部及び前記第1SiN表面保護層表面に第2SiN表面保護層を成膜する第4の工程と、
前記第1SiN表面保護層の開口部上の前記第2SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに、前記リソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして異方性RIEにて前記第2SiN表面保護層をエッチングすることにより、前記第2SiN表面保護層の開口部と前記第1SiN表面保護層の開口部側壁に前記第2SiN表面保護層のサイドウォールとを形成する第5の工程と、
前記サイドウォールの内側の前記UID−AlGaN電子供給層表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極を形成する第6の工程と
を少なくとも備えることを特徴とするAlGaN/GaN−HEMTの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程は、前記UID−AlGaN電子供給層と前記第1SiN表面保護層との間にゲート絶縁膜をさらに形成し、
前記第3の工程は、前記ゲート絶縁膜上の前記第1SiN表面保護層のみがエッチング開口され、
前記第5の工程は、前記異方性RIEにて前記ゲート絶縁膜上の前記第2SiN表面保護層のみエッチングし、
前記第6の工程は、前記サイドウォールの内側の前記ゲート絶縁膜の表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆するゲート電極を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程で形成されるゲート絶縁膜は、前記第1SiN表面保護層及び前記第2SiN表面保護層のエッチングレート値よりも小さいエッチングレート値を有する絶縁膜である
ことを特徴とする請求項3に記載のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜は、AlN及びSiO2から選択される一つの絶縁膜であることを特徴とする請求項4に記載のAlGaN/GaN−HEMTの製造方法。
【請求項6】
基板表面に、バッファ層、UID−GaN電子走行層及びUID−AlGaN電子供給層が順次積層されたエピタキシャル基板と、
前記エピタキシャル基板のUID−AlGaN電子供給層の表面に形成された第1SiN表面保護層とソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間の前記第1SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに形成されたリソグラフィ限界のレジスト開口部と該レジストをマスクとしてエッチング開口された前記第1SiN表面保護層と、
前記ソース電極及びドレイン電極の表面、前記エッチング開口された第1SiN表面保護層の開口部及び前記第1SiN表面保護層の表面に成膜された第2SiN表面保護層と、
前記第1SiN表面保護層の開口部上の前記第2SiN表面保護層の表面に塗布されたレジストに、前記リソグラフィ限界のレジスト開口部を形成し、該レジストをマスクとして異方性RIEにて前記第2SiN表面保護層をエッチングすることにより形成された、前記第2SiN表面保護層の開口部と前記第1SiN表面保護層の開口部側壁に形成された前記第2SiN表面保護層のサイドウォールと、
前記サイドウォールの内側の前記UID−AlGaN電子供給層の表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆して形成されたゲート電極と
を少なくとも備えることを特徴とするAlGaN/GaN−HEMT。
【請求項7】
ゲート絶縁膜は、前記UID−AlGaN電子供給層と前記第1SiN表面保護層との間に形成され、
前記ゲート電極は、前記サイドウォールの内側の前記ゲート絶縁膜の表面と前記サイドウォールと前記第2SiN表面保護層の開口部とを被覆する
ことを特徴とする請求項6に記載のAlGaN/GaN−HEMT。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77123(P2011−77123A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224522(P2009−224522)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】