コンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法
【課題】コンクリート(モルタル)を打設する前に活性化剤を後添加し、コンクリート(モルタル)の凝結時間をコントロールし、施工品質を向上させるコンクリートの凝結時間制御方法を提供する。
【解決手段】コンクリート(モルタル)材料に凝結遅延剤を添加する(ステップ1)。凝結遅延剤を添加した該コンクリート(モルタル)を撹拌装置等で混練する(ステップ2)。次に、混練されたコンクリート(モルタル)を現地まで運搬する(ステップ3、ステップ4)。そして、これを静置・待機した後に活性化剤を後添加する(ステップ5、ステップ6)。SP剤等を添加し、コンクリート(モルタル)の流動性を調整する(ステップ7)。最後にコンクリート(モルタル)を打設し、コンクリート構造物の築造又は補修を行なう(ステップ8)コンクリートの凝結時間制御方法及びコンクリート構造物の築造・補強工法である。
【解決手段】コンクリート(モルタル)材料に凝結遅延剤を添加する(ステップ1)。凝結遅延剤を添加した該コンクリート(モルタル)を撹拌装置等で混練する(ステップ2)。次に、混練されたコンクリート(モルタル)を現地まで運搬する(ステップ3、ステップ4)。そして、これを静置・待機した後に活性化剤を後添加する(ステップ5、ステップ6)。SP剤等を添加し、コンクリート(モルタル)の流動性を調整する(ステップ7)。最後にコンクリート(モルタル)を打設し、コンクリート構造物の築造又は補修を行なう(ステップ8)コンクリートの凝結時間制御方法及びコンクリート構造物の築造・補強工法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝結遅延剤を配合して長時間に渉り凝結しないようにしたコンクリート(モルタル)に、使用直前又はコンクリート打設前に活性化剤を後添加することにより、当該コンクリート(モルタル)の凝結時間を制御しかつこの凝結時間を制御された当該コンクリート(モルタル)を使用してトンネル覆工や鉄道橋脚若しくは高架橋等のコンクリート構造物を構築し又は補強する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、従来技術の一つの例として例えば、コンクリート構造物であるトンネルを築造する工法として、シールドを地中に推進させて土砂の崩壊を防止しながらその内部で安全に掘削作業や覆工作業を行ない当該トンネルを構築するシールド工法がある。このシールド工法はいわゆるECL(Extruded Concrete Lining)工法であって、覆工セグメントを使用せず、シールドのテール部でフレッシュコンクリートを打設し、切羽で覆工を直接構築する工法である。
該ECL工法は、例えば、図11に示すようにサイクル打設であって鉄筋1を用いるときは、図11(a)に示すように鉄筋、内型枠2の組立段取りを行ない、次に、図11(b)に示すように鉄筋内型枠組立を行なう、そして、図11(c)に示すようにコンクリート3の打設をする。さらに、図11(d)に示すようにプレスジャッキ4によりコンクリート3を加圧し、シールドジャッキ5により掘進を行ない築造されたコンクリート構造物の全体構造としては例えば、図12に示す構成例が完了する。
尚、コンクリート構造物を補強する工法としては、既設コンクリートの表面にポリビニールアルコール繊維をマット状に成形した高靭性マットを取り付け、マット表面にポリビニールアルコール繊維で補強したボードを埋め込み型枠としてアンカーで固定し、マット部分にモルタルやグラウトを注入する事で、靭性に優れたセメント系繊維補強モルタル版を形成する工法(REDEEM工法)がある。
【0003】
また、従来の技術の他の例としては、特開平6−263498号に開示された凝結遅延剤及びそれを用いた速硬性コンクリートの施工方法がある。これについて説明すれば、消石灰含有物質と有機酸類とを有効成分とする急結材を含有しないコンクリートの凝結遅延剤を使用し、コンクリートに該凝結遅延剤を配合し、該コンクリートの使用直前に急結材を混入して施工する速硬性コンクリートの施工方法である。そこで、前記消石灰含有物質は、例えば消石灰やカルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際、生成するカーバイド滓であって、急結材を含有しないコンクリートが長時間凝結硬化しないように有機酸等を多量に使用したとき、予定した硬化時間よりも短い時間でも、急結材を併用することにより急結し硬化できる機能を有する。また、有機酸類は、クエン酸、グルコン酸、酒石酸及びりんご酸等の各種水溶性カルボン酸等であって、その使用量と正比例して凝結時間が長くなるように制御する。そして、吹き付け施工時、前記凝結遅延剤を混合したコンクリートに前記急結材を混合する。
【特許文献1】特開平6−263498号の公開特許公報
【特許文献2】特開平4−214058号の公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に於ける一つの例は、ECL工法には一般的な高流動コンクリートが使用されてきたが、岩強度が高く掘削に時間を要する場合などオープンタイムが増大すると、コンクリートのフレッシュ性状が悪化しコンクリート打設口の閉塞を誘発してしまう等の施工トラブルが発生していた。その結果、コンクリートの充填不良や、コンクリートジョイント等のコンクリートの欠陥やそれに伴う漏水などの弊害が発生するという問題があった。
また、山岳トンネルの施工では既に構築した坑内をアジテータが走行・運搬できるケースが多いが、都市トンネルでは山岳トンネルと異なりアジテータが走行・運搬できないケースも多く、ECL工法により都市トンネルを施工するにはコンクリートを配管により長距離圧送する事を要する。この場合、配管長さは数キロに及ぶ場合も想定され、圧送中のコンクリートの流動性が悪化することにより配管が閉塞するという課題があった。
通常、生コンプラントは午後6時頃出荷が止まり、明朝まで出荷は出来ないプラントが多いのが現状である。ECL工法はシールドの掘進と同時にコンクリートを打設することによりコンクリートの常時打設を可能とする点に特徴を有するが、夜間施工でコンクリートを打設する場合には生コンプラントが夜間に稼動しないため、現場プラントを作る場合には経済的に不利であるなどの課題がある。さらに、都市トンネルでは現場プラントの設置が困難な状況も多く、施工現場が必要とする時間まで流動性の保持が可能なコンクリートが要望されていた。
従来は、1回の注入箇所に対してモルタルやグラウト(以下、「モルタル等」という)を注入した後、注入用ホース内部に残ったモルタル等の廃棄、注入用ホース内部の清掃をする必要があり、作業手間の煩雑さや経済的に不利という課題があった。
生コンクリートを使用する場合、現場近くに生コンクリートを製造する設備があることが絶対条件であり、現場近くにレディーミクストコンクリート工場がない場合は、現場にプラントを設置する必要があった。少量のコンクリート、あるいは特殊コンクリートを使用する場合、現場プラントでは経済的に不利、あるいは安定した品質を得るのが難しいという課題があった。
【0005】
従来の技術に於ける他の例は、凝結遅延剤や急結材を使用した速硬性コンクリートの施工方法の技術であるが、コンクリート打設前に活性化剤を後添加する技術ではなくコンクリートの凝結時間をコントロールすることができず、施工品質の安定性に欠けるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法は、活性化剤を含有しないコンクリート(モルタル)に凝結遅延剤を配合し、当該コンクリートの使用前に該活性化剤を後添加することで凝結時間を制御したコンクリート(モルタル)で、コンクリート構造物の築造・補強する工法であって、次の構成、手段から成立する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
すなわち、コンクリートに凝結遅延剤を配合することでコンクリートの練り混ぜ後24時間以上も良好なフレッシュ性状を保持することが可能である。さらに、コンクリートの打設直前に活性化剤を後添加することで、コンクリート打設後は凝結が促進されることにより良好な強度発現性を確保することが可能となる効果がある。また、トンネルの覆工コンクリートをECL工法により打設する場合に、当該コンクリートを使用することにより、掘進作業に長時間を要した場合にも良好なフレッシュ性状を有するコンクリートを打設することが可能であり、コンクリート打設口を閉塞しコンクリートの充填不良や、コールドジョイント等のコンクリートの欠陥やそれに伴う漏水などの発生を防止することが可能である効果がある。
また、コンクリートの練り混ぜた後24時間以上も良好なフレッシュ性状を保持するために配管により長距離圧送する事が可能であり、ECL工法の都市トンネルへの適用が可能となる効果がある。
さらに、REDEEM工法に使用するモルタルやグラウト(以下、「モルタル等」という)の注入方法に凝結時間のコントロールを利用することで、REDEEM工法の課題を解決し、モルタル等に凝結遅延剤を配合することで練り混ぜた後24時間以上も良好なフレッシュ性状を保持することが可能なため、1回の注入作業が終了後、注入用ホース内部に残ったモルタル等を廃棄せずに静置して、次回の注入時に使用することが可能である。従って、注入箇所を移動する度に必要だった注入用ホース内部のモルタル等の廃棄、注入用ホース内部の清掃作業が不要となり、経済的にも有利であるという効果がある。
また、モルタル等の注入直前に活性化剤を後添加することで、注入後は凝結が促進されることにより良好な強度発現性の確保を可能とし、夜間時の施工や大規模災害時および離島においてコンクリート(モルタル等)を打設する際、近隣の工場が使用できない場合には、遠方の生コンプラントからの長距離運搬が可能であり、現場プラントの設置が不要なため経済的、品質的に有利である等種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法の実施の形態について図1ないし図10に基づき詳細に説明する。
【0009】
本発明に使用する凝結遅延剤、活性化剤は特に限定されるものではなく、生コンクリート工場のコンクリート製造に伴って発生する残コンクリートや戻りコンクリートを有効利用するために開発された凝結遅延剤及び活性化剤や、吹き付けコンクリート工法用に汎用されている凝結調整剤が使用可能である。
ここで凝結遅延剤は例えば消石灰含有物質と有機酸類とを有効成分とするコンクリート(モルタル)の凝結遅延剤であり、コンクリート(モルタル)に添加する材料である。そして、前記消石灰含有物質とは、コンクリート(モルタル)が長時間凝結硬化しないように有機酸等を多量に使用した際、予定した硬化時間より短い時間でも急結し硬化できる機能を有する。具体的には、消石灰や、カルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際副生するカーバイド滓などが挙げられる。また、有効成分としてアルキルアミノホスホン酸を使用する。そのうち、急結材と混合した後の強度発現性が最も良く、しかも、副生品のため安価で経済的である面から、カーバイド滓の使用がより好ましい。消石灰含有物質の粒子径は、特に限定されるものではないが、100μないし60μ以下が好ましい。前記有機酸類は、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、及びリンゴ酸等の各種水溶性カルボン酸又はその塩の一種又は二種以上の使用が可能である。そのうち、使用量と正比例して凝結時間が長くなりコントロールがしやすい面からクエン酸の使用がより好ましい。
【0010】
凝結遅延剤によりコンクリート(モルタル)の凝結時間を遅延させ、その後、活性化剤によって凝結停止状態から活性化させる方法により凝結時間の制御が可能か否か、実験的に検証した。凝結遅延コンクリートについては、凝結制御可能な時間の目標値を24時間に設定した。24時間が経過した後、所要のフレッシュ性状が得られるように活性化剤、高性能AE減水剤および空気量調整剤を添加し、コンクリートの性状を確認した。
【0011】
図1はコンクリート(モルタル)の凝結時間の制御フローを示すものである。
これについて説明すれば、先づ、コンクリート(モルタル)材料に例えば消石灰やカルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際、副生するカーバイド滓でなる消石灰含有物質と、クエン酸、グルコン酸等の有機酸類とを有効成分とした凝結遅延剤を添加する(ステップ1)。また、有効成分としてアルキルアミノホスホン酸を使用する。そして、かかる凝結遅延剤を添加した該コンクリート(モルタル)を撹拌装置等で混練する(ステップ2)。次に、混練されたコンクリート(モルタル)を特殊車両に搭載して築造又は補修するコンクリートの構造物の現地まで運搬する(ステップ3、ステップ4)。そして、これを静置・待機した後に前述した活性化剤を後添加する(ステップ5、ステップ6)。さらに、流動化剤等を添加し、コンクリート(モルタル)の流動性を調整する(ステップ7)。最後にコンクリート(モルタル)を打設し、コンクリート構造物の築造又は補修を行なう(ステップ8)。
【0012】
一般的な高流動性コンクリートは練り混ぜ2時間後にはスランプフローが図2及び図3に示すように15cm程度の低下しているが、静置時間の目標値を24時間に設定した凝結遅延コンクリートは練り混ぜから24時間静置した後もスランプフローは、図2に示すように10cm程度しか低下せず、凝結遅延剤の作用により凝結の抑制が可能である。図2に目標静置時間が経過して活性化剤を添加した後のスランプフローの経時変化を示す。凝結遅延コンクリートに関しては活性化剤添加後も良好なフレッシュ性状を保持可能であり、活性化剤添加後2時間が経過してもスランプフローは10cm程度しか低下しない。図4は材齢7日および28日のコンクリートの圧縮強度特性を示す。後述するステップ7に示す特に図5の特性図で示すようにコンクリートの流動性調整も可能である。
【0013】
次に、実験結果に基づき作成した図6及び図7に示すスランプフローの経時変化特性図を説明する。
図6に示すように、一般的な高流動コンクリートは練り混ぜ2時間後にスランプフローが15cm程度低下しているが、凝結制御可能な時間の目標値を24時間に設定した凝結遅延コンクリートは練り混ぜから24時間静置した後もスランプフローは10cm程度しか低下せず、凝結遅延剤の作用により凝結の制御が可能である。
【0014】
図7は、目標静置時間が経過して活性化剤、高性能AE減水剤を添加した後のスランプフローの経時変化を示す。凝結遅延コンクリートは、活性化剤添加後も良好なフレッシュ性状を保持可能であり、活性化剤添加後2時間が経過してもスランプフローは10cm程度しか低下しない。
【0015】
図8は、材齢7日および28日のコンクリートの圧縮強度試験結果を示す。一般的な高流動コンクリートと凝結遅延コンクリートを比較した結果、コンクリートの圧縮強度に大きな差異は発生せず、凝結遅延剤および活性化剤によりコンクリートの凝結時間を制御しても、強度発現性に影響は及ぼさないことが判明した。
【0016】
上記の実験により得られた知見により、凝結遅延剤によりコンクリート(モルタル)の凝結時間を遅延させ、その後、活性化剤の添加により凝結停止状態からコンクリート(モルタル)を活性化させる方法により凝結時間の制御が可能である。
【0017】
ところで従来の技術に於ける一般的な高流動性コンクリートを使用した場合、上記ステップ2で示す練り混ぜ後から2〜3時間後にはスランプフローは、図6に示すように約17cm程度低下している。
尚、図2に於いても従来の技術に於けるその状態を縮少して明示している。
【0018】
ここで図6の特性図を導くための前記コンクリート9のスランプフロー試験方法を説明する。
図9(a)、(b)に示すように試験器具は次の部材及びその条件で設計仕様を行なう。すなわち、スランプコーン7はJIS A 1101に規定するものとする。突き棒はJIS A 1101に規定するものとする。平板8は、十分な水密性及び剛性をもつ鋼製のものとし、大きさが0.8m×0.8m以上で、表面が平滑なものとする。取っ手をつける場合には、スランプフローの測定の障害にならない位置につける。ノギス又はメジャーは、1mmまで読み取れるものとする。測定用補助器具6は、図6(a)、(b)に示すようにスランプフローの測定に用いるものとする。受け容器は、容量12L程度のバケツ等とし、必要に応じて用意する。ストップウォッチは、0.1秒まで計測できるものとする。
【0019】
そして、試験方法としては、
a.スランプコーン7及び平板8の設置に関しては、スランプコーン7及び平板8は、内面及び表面を湿布などで払く。スランプコーン7は、水平に設置した平板8上に置く。
b.試料は、材料の分離を生じないように注意して詰めるものとし、スランプコーン7に詰め始めてから、詰め終わるまでの時間は2分以内とする。水中不分離性コンクリート9の場合、3層に分けて詰め、各層25回突き棒で一様に突くのがよい。
c.スランプフローの測定は、スランプコーン7に詰めたコンクリート9の上面をスランプコーン7の上端に合わせてならした後、直ちにスランプコーン7を鉛直方向に連続して引き上げ、コンクリート9の動きが止まった後に、広がりが最大と思われる直径と、その直交する方向の直径を測る。なお、測定回数は1回とする。
d.50cmフロー到達時間を求める場合には、スランプコーン7の引上げ開始時から広がりが平板8に描いた直径50cmの円に最初に達した時までの時間を、ストップウォッチで0.1秒単位で測る。
e.フローの流動停止時間を求める場合には、スランプコーン7の引上げ開始時から、目視によって停止が確認されるまでの時間を、ストップウォッチで0.1秒単位で測る。その結果スランプフローは、両直径の平均値を0.5cm単位に丸めて表示する。
【0020】
また、図8の特性図を導くための前記コンクリートの圧縮強度試験方法を説明する。
この試験方法は、
a.供試体は、JIS A 1132によって作製する。
b.直径及び高さを、それぞれ0.1mm及び1mmまで測定する。直径は、供試体高さの中央で、互いに直交する2方向について測定する。
c.損傷又は欠陥があり、試験結果に影響すると考えられるときは、試験を行わないか、又はその内容を記録する。
d.質量を、質量の0.25%以下の目量をもつはかりで測定する。質量は、供試体の余剰水をすべて払き取った後に測定する。
e.供試体は、所定の養生が終わった直後の状態で試験が行えるようにする。
【0021】
コンクリートの圧縮強度試験を行なう装置は、次のとおりである。
圧縮試験機は、JIS B 7733の6.(試験機の等級)に規定する1等以上のものとする。また、試験時の最大荷重がひょう量の1/5からひょう量までの範囲で使用する。同一試験機でひょう量をかえることができる場合は、それぞれのひょう量を別個のひょう量とみなし、上下の加圧板の大きさは、供試体の直径以上とし、厚さは25mm以上とする。加圧板の圧縮面は、磨き仕上げとし、その平面度は100mm当たり0.02mm以内で、かつ、そのショア硬さは、70HS以上とする。
【0022】
そして、コンクリートの圧縮強度試験の試験方法は、次のとおりとする。
供試体の上下端面及び上下の加圧板の圧縮面を清掃し、該供試体を、供試体直径の1%以内の誤差で、その中心軸が加圧板の中心と一致するように置く。また、試験機の加圧板と供試体の端面とは、直接密着させ、その間にクッション材を入れてはならない。ただし、アンボンドキャッピングによる場合を除く。さらに、供試体に衝撃を与えないように一様な速度で荷重を加え、該荷重を加える速度は、圧縮応力度の増加が毎秒0.6±0.4N/mm2になるようにする。そして、供試体が急激な変形を始めた後は、荷重を加える速度の調整を中止して、荷重を加え続け、該供試体が破壊するまでに試験機が示す最大荷重を有効数字3けたまで読むものとする。
【0023】
尚、本発明はモルタル等の注入直前に活性化剤を後添加することで、注入後は凝結が促進されることにより良好な強度発現性の確保を可能とし、夜間時の施工や大規模災害時および離島においてコンクリート(モルタル等)を打設する際、近隣の工場が使用できない場合には、図10に示すように遠方工場Pの生コンプラントからの特殊車両10により長距離運搬が可能であり、現場プラントRの設置が不要なため経済的、品質的に有利であるという特徴を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の凝結時間の制御フローである。
【図2】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の練り混ぜ後からのスランプフローの経時変化を示す一般的な高流動性コンクリートと凝結遅延コンクリートの特性図である。
【図3】従来技術に於ける一般的な高流動性コンクリートの練り混ぜ後からのスランプフローの経時変化を示す特性図である。
【図4】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於ける凝結遅延コンクリートの圧縮強度発現を示す特性図である。
【図5】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於ける凝結遅延コンクリートのスランプフローの経時変化(流動調整を含む)を示す特性図である。
【図6】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の練り混ぜ後からのスランプフローの経時変化を示す特性図(実験結果)である。
【図7】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の流動調整後のスランプフローの経時変化(実験結果)を示す特性図である。
【図8】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の圧縮強度発現(実験結果)を示す特性図である。
【図9】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリートのスランプフロー試験方法を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視A−A線方向からの視た側面図である。
【図10】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於いて、コンクリート(モルタル)を長時間搬送するための概念図である。
【図11】従来技術に於けるコンクリートのサイクル打設方法を示す構成図であって、(a)は鉄筋内型枠の組立段取りを示す、(b)は鉄筋内型枠組立を示す、(c)はコンクリートの打設を示す、(d)はコンクリートを加圧し、掘進を行なうための各図である。
【図12】従来技術に於けるコンクリート構造物の全体構造を示すものであって、その断面図である。
【符号の説明】
【0025】
6 測定用補助器具
7 スランプコーン
8 平板
9 コンクリート
10 特殊車両
P 遠方工場
R 現場プラント
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝結遅延剤を配合して長時間に渉り凝結しないようにしたコンクリート(モルタル)に、使用直前又はコンクリート打設前に活性化剤を後添加することにより、当該コンクリート(モルタル)の凝結時間を制御しかつこの凝結時間を制御された当該コンクリート(モルタル)を使用してトンネル覆工や鉄道橋脚若しくは高架橋等のコンクリート構造物を構築し又は補強する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、従来技術の一つの例として例えば、コンクリート構造物であるトンネルを築造する工法として、シールドを地中に推進させて土砂の崩壊を防止しながらその内部で安全に掘削作業や覆工作業を行ない当該トンネルを構築するシールド工法がある。このシールド工法はいわゆるECL(Extruded Concrete Lining)工法であって、覆工セグメントを使用せず、シールドのテール部でフレッシュコンクリートを打設し、切羽で覆工を直接構築する工法である。
該ECL工法は、例えば、図11に示すようにサイクル打設であって鉄筋1を用いるときは、図11(a)に示すように鉄筋、内型枠2の組立段取りを行ない、次に、図11(b)に示すように鉄筋内型枠組立を行なう、そして、図11(c)に示すようにコンクリート3の打設をする。さらに、図11(d)に示すようにプレスジャッキ4によりコンクリート3を加圧し、シールドジャッキ5により掘進を行ない築造されたコンクリート構造物の全体構造としては例えば、図12に示す構成例が完了する。
尚、コンクリート構造物を補強する工法としては、既設コンクリートの表面にポリビニールアルコール繊維をマット状に成形した高靭性マットを取り付け、マット表面にポリビニールアルコール繊維で補強したボードを埋め込み型枠としてアンカーで固定し、マット部分にモルタルやグラウトを注入する事で、靭性に優れたセメント系繊維補強モルタル版を形成する工法(REDEEM工法)がある。
【0003】
また、従来の技術の他の例としては、特開平6−263498号に開示された凝結遅延剤及びそれを用いた速硬性コンクリートの施工方法がある。これについて説明すれば、消石灰含有物質と有機酸類とを有効成分とする急結材を含有しないコンクリートの凝結遅延剤を使用し、コンクリートに該凝結遅延剤を配合し、該コンクリートの使用直前に急結材を混入して施工する速硬性コンクリートの施工方法である。そこで、前記消石灰含有物質は、例えば消石灰やカルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際、生成するカーバイド滓であって、急結材を含有しないコンクリートが長時間凝結硬化しないように有機酸等を多量に使用したとき、予定した硬化時間よりも短い時間でも、急結材を併用することにより急結し硬化できる機能を有する。また、有機酸類は、クエン酸、グルコン酸、酒石酸及びりんご酸等の各種水溶性カルボン酸等であって、その使用量と正比例して凝結時間が長くなるように制御する。そして、吹き付け施工時、前記凝結遅延剤を混合したコンクリートに前記急結材を混合する。
【特許文献1】特開平6−263498号の公開特許公報
【特許文献2】特開平4−214058号の公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に於ける一つの例は、ECL工法には一般的な高流動コンクリートが使用されてきたが、岩強度が高く掘削に時間を要する場合などオープンタイムが増大すると、コンクリートのフレッシュ性状が悪化しコンクリート打設口の閉塞を誘発してしまう等の施工トラブルが発生していた。その結果、コンクリートの充填不良や、コンクリートジョイント等のコンクリートの欠陥やそれに伴う漏水などの弊害が発生するという問題があった。
また、山岳トンネルの施工では既に構築した坑内をアジテータが走行・運搬できるケースが多いが、都市トンネルでは山岳トンネルと異なりアジテータが走行・運搬できないケースも多く、ECL工法により都市トンネルを施工するにはコンクリートを配管により長距離圧送する事を要する。この場合、配管長さは数キロに及ぶ場合も想定され、圧送中のコンクリートの流動性が悪化することにより配管が閉塞するという課題があった。
通常、生コンプラントは午後6時頃出荷が止まり、明朝まで出荷は出来ないプラントが多いのが現状である。ECL工法はシールドの掘進と同時にコンクリートを打設することによりコンクリートの常時打設を可能とする点に特徴を有するが、夜間施工でコンクリートを打設する場合には生コンプラントが夜間に稼動しないため、現場プラントを作る場合には経済的に不利であるなどの課題がある。さらに、都市トンネルでは現場プラントの設置が困難な状況も多く、施工現場が必要とする時間まで流動性の保持が可能なコンクリートが要望されていた。
従来は、1回の注入箇所に対してモルタルやグラウト(以下、「モルタル等」という)を注入した後、注入用ホース内部に残ったモルタル等の廃棄、注入用ホース内部の清掃をする必要があり、作業手間の煩雑さや経済的に不利という課題があった。
生コンクリートを使用する場合、現場近くに生コンクリートを製造する設備があることが絶対条件であり、現場近くにレディーミクストコンクリート工場がない場合は、現場にプラントを設置する必要があった。少量のコンクリート、あるいは特殊コンクリートを使用する場合、現場プラントでは経済的に不利、あるいは安定した品質を得るのが難しいという課題があった。
【0005】
従来の技術に於ける他の例は、凝結遅延剤や急結材を使用した速硬性コンクリートの施工方法の技術であるが、コンクリート打設前に活性化剤を後添加する技術ではなくコンクリートの凝結時間をコントロールすることができず、施工品質の安定性に欠けるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法は、活性化剤を含有しないコンクリート(モルタル)に凝結遅延剤を配合し、当該コンクリートの使用前に該活性化剤を後添加することで凝結時間を制御したコンクリート(モルタル)で、コンクリート構造物の築造・補強する工法であって、次の構成、手段から成立する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
すなわち、コンクリートに凝結遅延剤を配合することでコンクリートの練り混ぜ後24時間以上も良好なフレッシュ性状を保持することが可能である。さらに、コンクリートの打設直前に活性化剤を後添加することで、コンクリート打設後は凝結が促進されることにより良好な強度発現性を確保することが可能となる効果がある。また、トンネルの覆工コンクリートをECL工法により打設する場合に、当該コンクリートを使用することにより、掘進作業に長時間を要した場合にも良好なフレッシュ性状を有するコンクリートを打設することが可能であり、コンクリート打設口を閉塞しコンクリートの充填不良や、コールドジョイント等のコンクリートの欠陥やそれに伴う漏水などの発生を防止することが可能である効果がある。
また、コンクリートの練り混ぜた後24時間以上も良好なフレッシュ性状を保持するために配管により長距離圧送する事が可能であり、ECL工法の都市トンネルへの適用が可能となる効果がある。
さらに、REDEEM工法に使用するモルタルやグラウト(以下、「モルタル等」という)の注入方法に凝結時間のコントロールを利用することで、REDEEM工法の課題を解決し、モルタル等に凝結遅延剤を配合することで練り混ぜた後24時間以上も良好なフレッシュ性状を保持することが可能なため、1回の注入作業が終了後、注入用ホース内部に残ったモルタル等を廃棄せずに静置して、次回の注入時に使用することが可能である。従って、注入箇所を移動する度に必要だった注入用ホース内部のモルタル等の廃棄、注入用ホース内部の清掃作業が不要となり、経済的にも有利であるという効果がある。
また、モルタル等の注入直前に活性化剤を後添加することで、注入後は凝結が促進されることにより良好な強度発現性の確保を可能とし、夜間時の施工や大規模災害時および離島においてコンクリート(モルタル等)を打設する際、近隣の工場が使用できない場合には、遠方の生コンプラントからの長距離運搬が可能であり、現場プラントの設置が不要なため経済的、品質的に有利である等種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法の実施の形態について図1ないし図10に基づき詳細に説明する。
【0009】
本発明に使用する凝結遅延剤、活性化剤は特に限定されるものではなく、生コンクリート工場のコンクリート製造に伴って発生する残コンクリートや戻りコンクリートを有効利用するために開発された凝結遅延剤及び活性化剤や、吹き付けコンクリート工法用に汎用されている凝結調整剤が使用可能である。
ここで凝結遅延剤は例えば消石灰含有物質と有機酸類とを有効成分とするコンクリート(モルタル)の凝結遅延剤であり、コンクリート(モルタル)に添加する材料である。そして、前記消石灰含有物質とは、コンクリート(モルタル)が長時間凝結硬化しないように有機酸等を多量に使用した際、予定した硬化時間より短い時間でも急結し硬化できる機能を有する。具体的には、消石灰や、カルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際副生するカーバイド滓などが挙げられる。また、有効成分としてアルキルアミノホスホン酸を使用する。そのうち、急結材と混合した後の強度発現性が最も良く、しかも、副生品のため安価で経済的である面から、カーバイド滓の使用がより好ましい。消石灰含有物質の粒子径は、特に限定されるものではないが、100μないし60μ以下が好ましい。前記有機酸類は、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、及びリンゴ酸等の各種水溶性カルボン酸又はその塩の一種又は二種以上の使用が可能である。そのうち、使用量と正比例して凝結時間が長くなりコントロールがしやすい面からクエン酸の使用がより好ましい。
【0010】
凝結遅延剤によりコンクリート(モルタル)の凝結時間を遅延させ、その後、活性化剤によって凝結停止状態から活性化させる方法により凝結時間の制御が可能か否か、実験的に検証した。凝結遅延コンクリートについては、凝結制御可能な時間の目標値を24時間に設定した。24時間が経過した後、所要のフレッシュ性状が得られるように活性化剤、高性能AE減水剤および空気量調整剤を添加し、コンクリートの性状を確認した。
【0011】
図1はコンクリート(モルタル)の凝結時間の制御フローを示すものである。
これについて説明すれば、先づ、コンクリート(モルタル)材料に例えば消石灰やカルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際、副生するカーバイド滓でなる消石灰含有物質と、クエン酸、グルコン酸等の有機酸類とを有効成分とした凝結遅延剤を添加する(ステップ1)。また、有効成分としてアルキルアミノホスホン酸を使用する。そして、かかる凝結遅延剤を添加した該コンクリート(モルタル)を撹拌装置等で混練する(ステップ2)。次に、混練されたコンクリート(モルタル)を特殊車両に搭載して築造又は補修するコンクリートの構造物の現地まで運搬する(ステップ3、ステップ4)。そして、これを静置・待機した後に前述した活性化剤を後添加する(ステップ5、ステップ6)。さらに、流動化剤等を添加し、コンクリート(モルタル)の流動性を調整する(ステップ7)。最後にコンクリート(モルタル)を打設し、コンクリート構造物の築造又は補修を行なう(ステップ8)。
【0012】
一般的な高流動性コンクリートは練り混ぜ2時間後にはスランプフローが図2及び図3に示すように15cm程度の低下しているが、静置時間の目標値を24時間に設定した凝結遅延コンクリートは練り混ぜから24時間静置した後もスランプフローは、図2に示すように10cm程度しか低下せず、凝結遅延剤の作用により凝結の抑制が可能である。図2に目標静置時間が経過して活性化剤を添加した後のスランプフローの経時変化を示す。凝結遅延コンクリートに関しては活性化剤添加後も良好なフレッシュ性状を保持可能であり、活性化剤添加後2時間が経過してもスランプフローは10cm程度しか低下しない。図4は材齢7日および28日のコンクリートの圧縮強度特性を示す。後述するステップ7に示す特に図5の特性図で示すようにコンクリートの流動性調整も可能である。
【0013】
次に、実験結果に基づき作成した図6及び図7に示すスランプフローの経時変化特性図を説明する。
図6に示すように、一般的な高流動コンクリートは練り混ぜ2時間後にスランプフローが15cm程度低下しているが、凝結制御可能な時間の目標値を24時間に設定した凝結遅延コンクリートは練り混ぜから24時間静置した後もスランプフローは10cm程度しか低下せず、凝結遅延剤の作用により凝結の制御が可能である。
【0014】
図7は、目標静置時間が経過して活性化剤、高性能AE減水剤を添加した後のスランプフローの経時変化を示す。凝結遅延コンクリートは、活性化剤添加後も良好なフレッシュ性状を保持可能であり、活性化剤添加後2時間が経過してもスランプフローは10cm程度しか低下しない。
【0015】
図8は、材齢7日および28日のコンクリートの圧縮強度試験結果を示す。一般的な高流動コンクリートと凝結遅延コンクリートを比較した結果、コンクリートの圧縮強度に大きな差異は発生せず、凝結遅延剤および活性化剤によりコンクリートの凝結時間を制御しても、強度発現性に影響は及ぼさないことが判明した。
【0016】
上記の実験により得られた知見により、凝結遅延剤によりコンクリート(モルタル)の凝結時間を遅延させ、その後、活性化剤の添加により凝結停止状態からコンクリート(モルタル)を活性化させる方法により凝結時間の制御が可能である。
【0017】
ところで従来の技術に於ける一般的な高流動性コンクリートを使用した場合、上記ステップ2で示す練り混ぜ後から2〜3時間後にはスランプフローは、図6に示すように約17cm程度低下している。
尚、図2に於いても従来の技術に於けるその状態を縮少して明示している。
【0018】
ここで図6の特性図を導くための前記コンクリート9のスランプフロー試験方法を説明する。
図9(a)、(b)に示すように試験器具は次の部材及びその条件で設計仕様を行なう。すなわち、スランプコーン7はJIS A 1101に規定するものとする。突き棒はJIS A 1101に規定するものとする。平板8は、十分な水密性及び剛性をもつ鋼製のものとし、大きさが0.8m×0.8m以上で、表面が平滑なものとする。取っ手をつける場合には、スランプフローの測定の障害にならない位置につける。ノギス又はメジャーは、1mmまで読み取れるものとする。測定用補助器具6は、図6(a)、(b)に示すようにスランプフローの測定に用いるものとする。受け容器は、容量12L程度のバケツ等とし、必要に応じて用意する。ストップウォッチは、0.1秒まで計測できるものとする。
【0019】
そして、試験方法としては、
a.スランプコーン7及び平板8の設置に関しては、スランプコーン7及び平板8は、内面及び表面を湿布などで払く。スランプコーン7は、水平に設置した平板8上に置く。
b.試料は、材料の分離を生じないように注意して詰めるものとし、スランプコーン7に詰め始めてから、詰め終わるまでの時間は2分以内とする。水中不分離性コンクリート9の場合、3層に分けて詰め、各層25回突き棒で一様に突くのがよい。
c.スランプフローの測定は、スランプコーン7に詰めたコンクリート9の上面をスランプコーン7の上端に合わせてならした後、直ちにスランプコーン7を鉛直方向に連続して引き上げ、コンクリート9の動きが止まった後に、広がりが最大と思われる直径と、その直交する方向の直径を測る。なお、測定回数は1回とする。
d.50cmフロー到達時間を求める場合には、スランプコーン7の引上げ開始時から広がりが平板8に描いた直径50cmの円に最初に達した時までの時間を、ストップウォッチで0.1秒単位で測る。
e.フローの流動停止時間を求める場合には、スランプコーン7の引上げ開始時から、目視によって停止が確認されるまでの時間を、ストップウォッチで0.1秒単位で測る。その結果スランプフローは、両直径の平均値を0.5cm単位に丸めて表示する。
【0020】
また、図8の特性図を導くための前記コンクリートの圧縮強度試験方法を説明する。
この試験方法は、
a.供試体は、JIS A 1132によって作製する。
b.直径及び高さを、それぞれ0.1mm及び1mmまで測定する。直径は、供試体高さの中央で、互いに直交する2方向について測定する。
c.損傷又は欠陥があり、試験結果に影響すると考えられるときは、試験を行わないか、又はその内容を記録する。
d.質量を、質量の0.25%以下の目量をもつはかりで測定する。質量は、供試体の余剰水をすべて払き取った後に測定する。
e.供試体は、所定の養生が終わった直後の状態で試験が行えるようにする。
【0021】
コンクリートの圧縮強度試験を行なう装置は、次のとおりである。
圧縮試験機は、JIS B 7733の6.(試験機の等級)に規定する1等以上のものとする。また、試験時の最大荷重がひょう量の1/5からひょう量までの範囲で使用する。同一試験機でひょう量をかえることができる場合は、それぞれのひょう量を別個のひょう量とみなし、上下の加圧板の大きさは、供試体の直径以上とし、厚さは25mm以上とする。加圧板の圧縮面は、磨き仕上げとし、その平面度は100mm当たり0.02mm以内で、かつ、そのショア硬さは、70HS以上とする。
【0022】
そして、コンクリートの圧縮強度試験の試験方法は、次のとおりとする。
供試体の上下端面及び上下の加圧板の圧縮面を清掃し、該供試体を、供試体直径の1%以内の誤差で、その中心軸が加圧板の中心と一致するように置く。また、試験機の加圧板と供試体の端面とは、直接密着させ、その間にクッション材を入れてはならない。ただし、アンボンドキャッピングによる場合を除く。さらに、供試体に衝撃を与えないように一様な速度で荷重を加え、該荷重を加える速度は、圧縮応力度の増加が毎秒0.6±0.4N/mm2になるようにする。そして、供試体が急激な変形を始めた後は、荷重を加える速度の調整を中止して、荷重を加え続け、該供試体が破壊するまでに試験機が示す最大荷重を有効数字3けたまで読むものとする。
【0023】
尚、本発明はモルタル等の注入直前に活性化剤を後添加することで、注入後は凝結が促進されることにより良好な強度発現性の確保を可能とし、夜間時の施工や大規模災害時および離島においてコンクリート(モルタル等)を打設する際、近隣の工場が使用できない場合には、図10に示すように遠方工場Pの生コンプラントからの特殊車両10により長距離運搬が可能であり、現場プラントRの設置が不要なため経済的、品質的に有利であるという特徴を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の凝結時間の制御フローである。
【図2】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の練り混ぜ後からのスランプフローの経時変化を示す一般的な高流動性コンクリートと凝結遅延コンクリートの特性図である。
【図3】従来技術に於ける一般的な高流動性コンクリートの練り混ぜ後からのスランプフローの経時変化を示す特性図である。
【図4】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於ける凝結遅延コンクリートの圧縮強度発現を示す特性図である。
【図5】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於ける凝結遅延コンクリートのスランプフローの経時変化(流動調整を含む)を示す特性図である。
【図6】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の練り混ぜ後からのスランプフローの経時変化を示す特性図(実験結果)である。
【図7】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の流動調整後のスランプフローの経時変化(実験結果)を示す特性図である。
【図8】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリート(モルタル)の圧縮強度発現(実験結果)を示す特性図である。
【図9】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於けるコンクリートのスランプフロー試験方法を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視A−A線方向からの視た側面図である。
【図10】本発明に係るコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法に於いて、コンクリート(モルタル)を長時間搬送するための概念図である。
【図11】従来技術に於けるコンクリートのサイクル打設方法を示す構成図であって、(a)は鉄筋内型枠の組立段取りを示す、(b)は鉄筋内型枠組立を示す、(c)はコンクリートの打設を示す、(d)はコンクリートを加圧し、掘進を行なうための各図である。
【図12】従来技術に於けるコンクリート構造物の全体構造を示すものであって、その断面図である。
【符号の説明】
【0025】
6 測定用補助器具
7 スランプコーン
8 平板
9 コンクリート
10 特殊車両
P 遠方工場
R 現場プラント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化剤を含有しないコンクリート又はモルタルに凝結遅延剤を添加しかつ練り混ぜ、当該コンクリート又はモルタルの打設直前に活性化剤を添加することでコンクリート又はモルタルの凝結時間をコントロールするコンクリートの凝結時間制御方法。
【請求項2】
コンクリート又はモルタルに凝結遅延剤を添加しかつ練り混ぜ、当該コンクリート又はモルタルの打設前に活性化剤を添加することでコンクリート又はモルタルの凝結時間を制御し、この制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法。
【請求項3】
コンクリート又はモルタル材料に凝結遅延剤を添加する第1ステップと、該第1ステップから前記コンクリート又はモルタルを撹拌装置等で混練する第2ステップと、該第2ステップから前記コンクリート又はモルタルを特殊車両に搭載して築造又は補修するコンクリートの構造物の現地まで運搬する第3、第4ステップと、第4ステップからの前記コンクリート又はモルタルを静置・待機した後活性化剤を後添加する第5、第6ステップと、第6ステップからの前記コンクリート又はモルタルにSP剤を添加し、かつ前記コンクリート又はモルタルの流動性を調整する第7ステップと、第7ステップからの前記コンクリート又はモルタルを打設しかつコンクリート構造物の築造又は補修を実施する最終ステップとで構成されたコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法。
【請求項1】
活性化剤を含有しないコンクリート又はモルタルに凝結遅延剤を添加しかつ練り混ぜ、当該コンクリート又はモルタルの打設直前に活性化剤を添加することでコンクリート又はモルタルの凝結時間をコントロールするコンクリートの凝結時間制御方法。
【請求項2】
コンクリート又はモルタルに凝結遅延剤を添加しかつ練り混ぜ、当該コンクリート又はモルタルの打設前に活性化剤を添加することでコンクリート又はモルタルの凝結時間を制御し、この制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法。
【請求項3】
コンクリート又はモルタル材料に凝結遅延剤を添加する第1ステップと、該第1ステップから前記コンクリート又はモルタルを撹拌装置等で混練する第2ステップと、該第2ステップから前記コンクリート又はモルタルを特殊車両に搭載して築造又は補修するコンクリートの構造物の現地まで運搬する第3、第4ステップと、第4ステップからの前記コンクリート又はモルタルを静置・待機した後活性化剤を後添加する第5、第6ステップと、第6ステップからの前記コンクリート又はモルタルにSP剤を添加し、かつ前記コンクリート又はモルタルの流動性を調整する第7ステップと、第7ステップからの前記コンクリート又はモルタルを打設しかつコンクリート構造物の築造又は補修を実施する最終ステップとで構成されたコンクリートの凝結時間制御方法及び該コンクリートの凝結時間制御方法を使用したコンクリート構造物の築造・補強工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−62263(P2007−62263A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253377(P2005−253377)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
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