説明

コンクリート二次製品の製造方法及びそのコンクリート二次製品

【課題】セメントを含まないコンクリート組成物を用いて、コンクリート二次製品を提供する。
【解決手段】細骨材、粗骨材、水、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含み、セメントを含まない材料からなるコンクリート二次製品は、材料の計量工程S10、練り混ぜ工程S20、打ち込み工程S30、締め固め工程S40、蒸気養生工程S50、及び脱型工程S60を実施することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート二次製品の製造方法及びそのコンクリート二次製品に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートとは、結合材、水、骨材及び必要に応じて加える混和材料を材料とし、これらを練混ぜその他の方法によって混合したもの、または硬化させたものをいう。ここで、混和材料とは、結合材、水、骨材以外の材料で、コンクリートなどに特別の性質を与えるために、打込みを行う前までに必要に応じて加える材料である。また、結合材とは、水と反応し、コンクリートの強度発現に寄与する物質を生成する材料で、例えば、セメント、高炉スラグ微粉末及びフライアッシュなどが含まれる。なお、セメントとは、水と反応して硬化する鉱物質の微粉末である。また、高炉スラグ微粉末とは、溶鉱炉で銑鉄と同時に生成する溶融状態の高炉スラグを水によって急冷し、これを乾燥・粉砕したものをいうが、これにせっこうを添加してもよい。フライアッシュとは、微粉炭燃焼ボイラの燃焼ガスから集じん器で捕集されるアッシュである。
【0003】
製鋼所において製鋼工程で排出される高炉スラグ微粉末及び石炭火力発電所から排出されるフライアッシュ等は、廃棄物の有効利用を促進する観点から、結合材として積極的に使用が試みられてきた。しかし、これら高炉スラグ微粉末またはフライアッシュをセメントと併用する形で使用したコンクリートは開発されたものの、結合材としてセメントを全く含まないコンクリート組成物は開発されていない。なぜなら、高炉スラグ微粉末やフライアッシュはそれ自体では水硬性がない。しかし、フライアッシュはセメントと併用することでセメント水和物と徐々に反応し、硬化体を形成する(ポゾラン作用)。また,高炉スラグ微粉末はセメントのアルカリ成分を刺激剤として、水硬性を示す性質を持つ(潜在水硬性)。
【0004】
一方で、加圧流動床式複合発電(Pressurized Fluidized Bed Combusion,PFBC)方式の石炭火力発電所から排出されるPFBC灰を、セメントと共に結合材として利用するコンクリート組成物が開発された。PFBC灰は一般的なフライアッシュと異なり自硬性を有するが、結合材として単体で用いた場合の硬化体の強度は小さいため、これまでに開発されたPFBC灰を用いるコンクリート組成物においても、結合材としてセメントを全く含まない物は存在しない。
【特許文献1】特開平11−147747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、本出願人は、セメントを含まないコンクリート組成物について出願している(特願2007−06948)。
本発明は、かかるセメントを含まないコンクリート組成物を用いて、コンクリート二次製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、コンクリート二次製品の製造方法であって、
細骨材、粗骨材、水、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含み、セメントを含まない材料からなるコンクリートを、前記コンクリート二次製品の成形用の型枠に打設し、
前記打設されたコンクリートを蒸気養生し、
前記蒸気養生したコンクリートを、前記型枠から取り外す、ことを特徴とする(第1の発明)。
【0007】
本発明のセメントを含まないコンクリート二次製品の製造方法によれば、コンクリートの養生に蒸気養生を採用することにより、通常行われる水中養生と比べて、コンクリートに早期に圧縮強度を発現させることができることから早期に脱型することができるので、製造効率の向上を図ることができる。
【0008】
また、このような特徴を有することにより、材料がコンシステンシー(流動性)の良好な流し込み配合で配合されたコンクリート二次製品を製造する場合においては、特にその効果を顕著に享受することができる。
【0009】
また、蒸気養生を採用して製造された二次製品は、その後所定の材齢期間を経過しても、水中養生により製造された二次製品と同程度の圧縮強度を発現するので、通常の養生で製造された二次製品と遜色なく使用することができる。
【0010】
本発明において、前記PFBC灰と前記高炉スラグ微粉末との質量比を、25:75〜75:25とすることとしてもよい。
【0011】
本発明において、前記PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含む結合材に占める前記高炉スラグ微粉末の含有率を、50質量%以下とすることとしてもよい。
【0012】
本発明において、前記コンクリートに混和剤をさらに配合することとしてもよい。
【0013】
本発明において、前記混和剤として、AE剤または高性能減水剤を用いることとしてもよい。
【0014】
本発明において、前記水と前記結合材の水結合材比を、40質量%以下とすることとしてもよい。
【0015】
本発明において、前記型枠に打設されたコンクリートを、前記蒸気養生前に、少なくとも4時間の前養生を行うこととしてもよい。本構成によれば、製造されるコンクリート二次製品を、所定の設計基準強度以上に発現させることができる。
【0016】
本発明は、コンクリート二次製品であって、コンクリート二次製品であって、細骨材、粗骨材、水、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含み、セメントを含まないコンクリートを成形してなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セメントを含まないコンクリート組成物を用いて、コンクリート二次製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る、セメント含まないコンクリート二次製品の製造工程を示す工程図である。ここでいうコンクリート二次製品とは、工場の製造設備により製造される部材・製品を意味し、例えば、土木・建築関連などに幅広く利用される構造部材である杭基礎(既成杭)用のコンクリートパイル、下水道等に使われる土木用ヒューム管、ボックスカルバート、U字側溝等が挙げられる。
【0019】
図1に示すように、コンクリート二次製品は、材料の計量工程S10、練り混ぜ工程S20、打ち込み工程S30、締め固め工程S40、蒸気養生工程S50、及び脱型工程S60を実施することにより製造される。
【0020】
材料の計量工程S10では、コンクリート二次製品の種類や形状・寸法により、以下に述べるような材料を適宜調合する。
【0021】
すなわち、本発明に係るコンクリート二次製品の原材料として、細骨材、粗骨材、水および結合材を含み、結合材として、セメントを含まず、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を用いる。
【0022】
ここで、PFBC灰とは、加圧流動床式複合発電(Pressurized Fluidized Bed Combusion,PFBC)方式の石炭火力発電所から排出される灰をいう。また、高炉スラグ微粉末とは、溶鉱炉で銑鉄と同時に生成する溶融状態の高炉スラグを水によって急冷し、これを乾燥・粉砕したものをいう。
【0023】
PFBC灰と高炉スラグ微粉末との質量比は、25:75〜75:25であることが好ましく、また、結合材に占める前記高炉スラグ微粉末の含有率が50質量%以下であることが好ましい。
【0024】
また、粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材をいうが、砕石、人工骨材など、特に限定されない。また、細骨材とは、10mm網ふるいを全部通り、5mm網ふるいを質量で85%以上通る骨材をいうが、川砂、砕砂など、特に限定されない。また、混和剤を含んでもよく、混和剤は特に限定されないが、AE剤または高性能減水剤であることが好ましい。
【0025】
AE剤(Air−entraining admixture)とは、例えば、樹脂酸系、アルキルベンゼンスルホン酸塩系及び高級アルコール硫酸エステル塩系の界面活性剤を主成分とする混和剤であり、コンクリートの中に多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ、ワーカビリティー及び耐凍害性を向上させるために用いる。また、高性能減水剤とは、例えば、ポリカルボン酸系、ナフタリン系、メラミン系及びアミノスルホン酸系の界面活性剤を主成分とする混和剤であり、高い減水性能及び良好なスランプ保持性能をコンクリートに与えるために用いる。
【0026】
なお、水と結合材との水結合材比は、40質量%以下であることが好ましい。ただし、前記水結合材比は、フレッシュコンクリート組成物中の比である。
【0027】
練り混ぜ工程S20では、調合された材料を良質なコンクリートを得るために均一に混練する。混練には、例えば上記のような富配合の硬練りコンクリートの練り混ぜに適した強制練りミキサを用いる。
【0028】
打ち込み工程S30では、練り混ぜ工程S20で混練されたコンクリートを型枠へ打設する。
【0029】
型枠には、製造中に振動、圧力及び熱等が繰り返し作用しても、堅固で、形状及び寸法に狂いの生じない材質からなるものが望まれ、例えば、鋼製型枠を用いる。型枠へのコンクリートの打ち込みは、例えば、ホッパー、コンクリートポンプ、又は自動給材機などを用いて行う。
【0030】
締め固め工程S40は、型枠に打ち込まれたコンクリートを、型枠内の隅々まで充填し、かつコンクリートが密実になるようするための処理であり、例えば、振動機、加圧成形機、遠心成形機、又は突固め機等を用いて行う。
【0031】
蒸気養生工程S50では、型枠に打ち込まれ締め固められたコンクリートを、蒸気により加熱することにより硬化を促進させる。具体的には、締め固め工程S40で締め固められたコンクリートが打ち込まれた型枠を、ボイラで発生させた蒸気が供給される養生室に設置し、コンクリートを養生させる。
【0032】
図2は、蒸気養生の熱履歴を示すグラフである。
図2に示すように、蒸気養生は、前養生期間、温度上昇期間、等温養生期間、徐冷期間のサイクルで行われる。
【0033】
なお、蒸気養生については、急激に加熱したり、最高温度を高くとりすぎたり、急冷したりすることにより、ひび割れの発生や発現強度の低下などまねくことがあるため、コンクリート標準示方書[施工編]により、(1)型枠のまま養生室に入れ温度を均等に上昇させる、(2)練り混ぜ後2〜3時間以上前養生期間を置きその後加熱する、(3)温度上昇期間では温度上昇速度は20℃/hとする、(4)等温養生期間では最高温度を65℃とする、(5)徐冷期間では徐々に温度を下げ室温と大差がなくなって製品を取り出す、等が記載されている。
【0034】
最後に、脱型工程S60において、養生室から蒸気養生後の型枠に入れられたコンクリートを取り出し、型枠を取り外すことにより、セメントを含まないコンクリート二次製品が製造される。なお、型枠を取り外した後、必要に応じて後養生してもよい。
【0035】
次に、セメントを含まないコンクリート二次製品として、上記製造法に従ってU字側溝を実際に製造し、その製造効率及び製品性能について検討したので、以下にその詳細を説明する。
【0036】
図3は、U字側溝の材料の仕様を示す表である。
図3に示すように、U字側溝の材料として、水(water,W)、PFBC灰(PFBC coal ash,P)、高炉スラグ微粉末(ground granulated blast−furnace slag,BF)、細骨材(sand,S)、粗骨材(gravel,G)、及び混和剤を用いた。
【0037】
また、図4は、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末の化学組成比を示す表である。
【0038】
図5は、U字側溝の材料の配合条件を示す表である。
図5に示すように、結合材(binder,B)、即ち、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末の総量、に対する水(water,W)の質量比である水結合材比(W/B)を30%、結合材に占める高炉スラグ微粉末の含有率(BF/B)を30%、コンクリート1mを作るときに用いる水の使用量を表す単位水量を175kg/m、全骨材量に対する細骨材量の絶対容積比を表す細骨材率(sand/aggregate,s/a)を45%、また結合材に対する混和剤の添加量の比率を1.8%とした。
【0039】
このように配合した材料を練り混ぜ後に、スランプフロー及び空気量の測定を行った。
スランプフローとは、フレッシュコンクリートの流動性を示す指標の一つで、上端内径100mm、下端内径200mm及び高さ300mmのスランプコーンコーンに、コンクリート材料を詰めた後、静かに鉛直に引き上げた時の、コンクリート材料の直径の広がりで表すものである(JIS A 1150)。本検討で配合された材料のスランプフローは、72.5cmとなった。
また、空気量は、JIS A 1128の測定方法に従って測定し、4.5%となった。
【0040】
以上配合からなるコンクリートを、鋼製のU字側溝用型枠に打ち込むとともに締め固め、その後U字側溝用型枠に打設されたコンクリートを、型枠のまま養生室に設置し、蒸気養生をおこなった。
【0041】
図6は、本検討で用いた蒸気養生の温度履歴を示すグラフである。
図6に示すように、20℃で前養生期間を2時間とり(経過時間:0〜2時間)、その後温度上昇速度を20℃/hで40℃まで室温を上昇させ(経過時間:2〜3時間)、その後その室温で6時間保持し(経過時間:3〜9時間)、その後さらに12.5℃/hとして65℃まで室温を上昇させた(経過時間:9〜11時間)。そして、65℃の等温養生期間を10時間とり(経過時間:11〜21時間)、その後22.5/hの冷却速度で20℃まで徐冷した(経過時間:21〜23時間)。以上のようにして蒸気養生を行い、その後養生室から型枠に入れられたコンクリートを取り出し、脱型することにより、U字側溝を製造した。一方、比較用として同様の材料で20℃の標準水中養生を行ったU字側溝も製造した。
これらのU字側溝に対し、所定材齢時において圧縮強度を測定した(JIS A 1108)。
【0042】
図7は、蒸気養生又は水中養生によって製造したU字側溝の材齢と圧縮強度との関係の結果を示し、同図(a)はその結果をまとめた表、同図(b)はグラフである。
【0043】
図7に示すように、水中養生によって製造されたU字側溝は、材齢1日の圧縮強度が0.56N/mmと小さいのに対し、蒸気養生によって製造されたU字側溝は、材齢23時間で17.80N/mmの圧縮強度を発現している。通常、脱型には圧縮強度が10N/mm程度必要であることから、上記試験により蒸気養生によって製造されたU字側溝は、ほぼ1日で脱型が可能であることがわかる。
一方、材齢7日では、蒸気養生及び水中養生で製造された両者のU字側溝とも、ほぼ同等の圧縮強度を保持する結果となった。
【0044】
以上、本実施形態に係るセメント含まないコンクリート二次製品の製造方法によれば、コンクリートの養生に蒸気養生を採用することにより、ほぼ材齢1日で脱型に必要な圧縮強度を得られることから、水中養生と比べて早期に脱型できるので、製造効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る製造方法で製造されたコンクリート二次製品は、蒸気養生を採用して製造しても、材齢7日において水中養生で製造された二次製品と同程度の圧縮強度を発現するので、水中養生で製造された二次製品と遜色なく使用することができる。
【0046】
また、本製造方法はこのような特徴と有することにより、コンシステンシー(流動性)の良好な流し込み配合のコンクリートからなる二次製品を製造する場合においては、特にその効果を顕著に享受することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るコンクリート二次製品の製造方法では、練り混ぜ後2〜3時間以上前養生期間を置くとしたが、これに限らず、前養生期間を4時間以上置いてもよい。養生条件の違いによるコンクリート二次製品の強度発現効果を検討する試験を行ったので、以下にその詳細について説明する。
【0048】
図8は、養生条件に係る試験で用いたコンクリート二次製品の試験体の構成材料及びその配合を示す表である。
【0049】
図8に示すように、養生条件に係る試験では、コンクリート二次製品の試験体の構成材料として、PFBC灰、高炉スラグ微粉末、細骨材、粗骨材、及び混和剤を使用し、これらの材料を、水結合材比(W/B)を30%、全骨材量に対する細骨材量の絶対容積比を表す細骨材率(s/a)を45%、結合材(B)に占める高炉スラグ微粉末(BF)の含有率(BF/B)を30%、コンクリート1mを作るときに用いる水の使用量を表す単位水量(W)を175kg/mで配合した。
【0050】
なお、結合材(B)には、PFBC灰(P)及び高炉スラグ微粉末(BF)のみを使用し、そのPFBC灰と高炉スラグ微粉末との質量比は70:30とした。また、スランプフロー(JIS A 1150)が65±5cmとなるように調整するために、混和剤として高性能減水剤を使用し、結合材(B)に対して1.35重量%添加した。
【0051】
そして、試験体のコンクリートを作製するにあたり、構成材料のうち骨材及び結合材を30秒間空練りしたものに、予め高性能減水剤を加えた水を投入してさらに4分間練り混ぜを行ってフレッシュコンクリートを作製し、その後そのフレッシュコンクリートをモールド(φ100mm×200mm)に打ち込み、棒形振動機で締め固めをおこなった。
【0052】
そして、このようにモールドに打ち込まれたコンクリートの試験体を複数作製し、各試験体について、モールドを取り付けたまま、温度プログラムを設定した蒸気養生装置に置いて養生を行った。
【0053】
図9は、各試験体の蒸気養生の温度履歴を示すグラフである。
図9に示すように、本試験では各試験体に対し、養生条件No.1〜3の養生を行った。
【0054】
養生条件No.1では、20℃で前養生期間を2時間とり(経過時間:0〜2時間)、その後温度上昇速度を22.5℃/hで65℃まで室温を上昇させ(経過時間:2〜4時間)、その後65℃の等温養生期間を17時間とり(経過時間:4〜21時間)、その後自然放冷させた。すなわち、養生条件No.1では、前養生を2時間、蒸気養生を19時間行っている。
【0055】
また、条件No.2では、20℃で前養生期間を4時間とり(経過時間:0〜4時間)、その後温度上昇速度を15℃/hで50℃まで室温を上昇させ(経過時間:4〜6時間)、その後その室温で4時間保持させ(経過時間:6〜10時間)、その後さらに15℃/hとして65℃まで室温を上昇させた(経過時間:10〜11時間)。そして、65℃の等温養生期間を17時間とり(経過時間:11〜28時間)、その後自然放冷させた。すなわち、養生条件No.2では、前養生を4時間、蒸気養生を24時間行っている。
【0056】
また、養生条件No.3では、20℃で前養生期間を24時間とり(経過時間:0〜24時間)、その後温度上昇速度を15℃/hで50℃まで室温を上昇させ(経過時間:24〜26時間)、その後その室温で4時間保持し(経過時間:26〜30時間)、その後さらに15℃/hとして65℃まで室温を上昇させた(経過時間:30〜31時間)。そして、65℃の等温養生期間を17時間とり(経過時間:31〜48時間)、その後自然放冷させた。すなわち、養生条件No.3では、前養生を24時間、蒸気養生を24時間行っている。
【0057】
そして、このような養生条件で養生を行った後、各試験体をモールドから脱型し、気中暴露状態での所定材齢時における圧縮強度(JIS A 1108)を測定した。
【0058】
図10は、各試験体の所定材齢時における圧縮強度の結果を示し、同図(a)はその結果をまとめた表、同図(b)はグラフである。なお、各試験体の圧縮強度は、脱型直後、材齢7日、及び材齢28日の時点で測定した。
【0059】
図10に示すように、各試験体の圧縮強度は、脱型直後からその違いが明瞭に現れ、養生条件No.1〜3の順に大きくなっていることがわかる。これは、前養生期間を長くとるほど、結合材の70%を占めるPFBC灰に含まれるCaO及びSOの水和反応が進行し、Ca(OH)やエトリンガイト等が生成されることにより自硬性が発揮されるとともに、生成されたCa(OH)が刺激剤となって高炉スラグの水和反応を促進させ、さらに硬化を助長する(潜在水硬性)ためであると考えられる。
【0060】
また、各試験体は、材齢日数が経過するに従って徐々に圧縮強度が増加しており、材齢28日においての圧縮強度が、養生条件No.1では19.0N/mm、養生条件No.2では27.1N/mm、養生条件No.3では29.1N/mmとなる。
【0061】
ここで、建築工事標準仕様書・同解説JASS5では、耐久設計で確保すべき所要のコンクリートの強度(耐久設計基準強度)を、供用限界期間が65年の標準的なものを24N/mmと定めている。これに対し、本試験結果によれば、コンクリート二次製品をNo.2及びNo.3の養生条件で製造した場合に、標準的な耐久設計基準強度を満足する。
【0062】
すなわち、本実施形態に係るコンクリート二次製品を製造するにあたり、前養生期間を4時間以上置くことにより、コンクリート二次製品に標準的な設計基準強度を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態に係る、セメント含まないコンクリート二次製品の製造工程を示す工程図である。
【図2】蒸気養生の熱履歴を示すグラフである。
【図3】U字側溝の材料の仕様を示す表である。
【図4】PFBC灰及び高炉スラグ微粉末の化学組成比を示す表である。
【図5】U字側溝の材料の配合条件を示す表である。
【図6】本検討で用いた蒸気養生の温度履歴を示すグラフである。
【図7】蒸気養生又は水中養生によって製造したU字側溝の材齢と圧縮強度との関係の結果を示し、同図(a)はその結果をまとめた表、同図(b)はグラフである。
【図8】養生条件に係る試験で用いたコンクリート二次製品の試験体の構成材料及びその配合を示す表である。
【図9】各試験体の蒸気養生の温度履歴を示すグラフである。
【図10】各試験体の所定材齢時における圧縮強度の結果を示し、同図(a)はその結果をまとめた表、同図(b)はグラフである。
【符号の説明】
【0064】
S10 材料の計量工程
S20 練り混ぜ工程
S30 打ち込み工程
S40 締め固め工程
S50 蒸気養生工程
S60 脱型工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート二次製品の製造方法であって、
細骨材、粗骨材、水、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含み、セメントを含まない材料からなるコンクリートを、前記コンクリート二次製品の成形用の型枠に打設し、
前記打設されたコンクリートを蒸気養生し、
前記蒸気養生したコンクリートを、前記型枠から取り外す、ことを特徴とするコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項2】
前記PFBC灰と前記高炉スラグ微粉末との質量比を、25:75〜75:25とすることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項3】
前記PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含む結合材に占める前記高炉スラグ微粉末の含有率を、50質量%以下とすることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項4】
前記コンクリートに混和剤をさらに配合することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項5】
前記混和剤として、AE剤または高性能減水剤を用いることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項6】
前記水と前記結合材の水結合材比を、40質量%以下とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項7】
前記型枠に打設されたコンクリートを、前記蒸気養生前に、少なくとも4時間の前養生を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のコンクリート二次製品の製造方法。
【請求項8】
コンクリート二次製品であって、
細骨材、粗骨材、水、PFBC灰及び高炉スラグ微粉末を含み、セメントを含まないコンクリートを成形してなるコンクリート二次製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−137826(P2009−137826A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187658(P2008−187658)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年5月20日 社団法人 セメント協会発行の「第61回セメント技術大会 講演要旨2007」に発表
【出願人】(508136146)
【出願人】(508136102)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】