説明

コンデンサおよびこのコンデンサを用いたケースモールド型コンデンサ

【課題】信頼性の高いコンデンサおよびケースモールド型コンデンサを提供する。
【解決手段】本発明のコンデンサ1は、一対の平坦部3ならびに一対の湾曲部4からなる扁平状の形状を有するとともに、これら一対の平坦部3が夫々同一平面上に位置するように一列に並設配置された複数の素子2と、これら複数の素子2を外部と電気的に接続するための電極接続部7a、8aと外部接続部7c、8cとを有する一対のN極バスバー7、P極バスバー8とを備え、これら一対のバスバーのうち、少なくとも一方のバスバーの外部接続部は、素子2の湾曲部4上方に配置した構成となっている。これにより、発熱量の高い外部接続部と素子2を離間させることができ、バスバーの熱が素子2に伝播することを抑制することができる。この結果、コンデンサ1およびこのコンデンサを用いたケースモールド型コンデンサの信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用に最適なコンデンサおよびこのコンデンサを用いたケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、この電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
ところで、この金属化フィルムコンデンサをHEVに搭載するにあたっては、その設置スペースの制限から、いかにコンデンサ容量を落とさずに薄型化できるかということが重要となってくる。
【0005】
そこで、このコンデンサ容量の維持と薄型化という相反する要求に応える構成の一つとして、扁平化し厚み方向の薄型化を図った複数の素子を並列接続し、そしてこれら複数の素子をケース内に横置きの状態で収納するという構成が挙げられる。
【0006】
この構成の具体例として、特許文献1に記載のケースモールド型コンデンサ100について図4(a)、図4(b)を用いて説明する。ここで、図4(a)はケースモールド型コンデンサ100のケース104を除いた斜視図、図4(b)はケースモールド型コンデンサ100の斜視図である。
【0007】
図4(a)に示すように、特許文献1に記載のケースモールド型コンデンサ100は、扁平型の2個の素子101からなり、これらをバスバー102、バスバー103で電気的に並列に接続した後、図4(b)で示すように樹脂にて形成された上面開放型のケース104に収容することで構成される。ここで、これら2個の扁平素子101は薄型化を図るため、ともに寝かせた状態、すなわち横置きの状態でケース104に収容されている。なお、実際にはケース101内はモールド樹脂にてモールドされているが、図4(b)ではケースモールド型コンデンサ100の構成を明確に示すためにこのモールド樹脂の図示を省略している。
【0008】
ところで、これら2個の素子101の両端面からバスバー102、バスバー103にて電極を外部に引き出す際に、P極とN極の外部への電極引き出し箇所を近接させようとすれば必然的に一方のバスバー(図4の場合はバスバー103)は素子101の上部、すなわち素子101の周面を覆うような形状となる。したがって、このような形状を採用した場合にはバスバー103が外部環境から受ける熱(貰い熱)が素子101に直接伝播してしまい、素子101の温度が異常に上昇し、素子101の特性劣化をまねいたり、あるいはコンデンサとしての寿命を縮めてしまったりする可能性がある。
【0009】
そこで、特許文献1に記載のケースモールド型コンデンサ100では、さらにバスバー103に凸部105を設け、この凸部105のみが素子101の周面と接触し、凸部105以外は素子101と接触しないようにしている。
【0010】
この結果、特許文献1に記載のケースモールド型コンデンサは、バスバー103の熱の素子101への伝播を低減することができ、素子101の温度の上昇を抑制することを可能としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−42920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
確かに上記構成によると、素子101の温度の上昇をある程度抑制することは可能であった。
【0013】
しかしながら、凸部105により素子101とバスバー103の間に隙間を設けたとはいえ、バスバー103と素子101の間に介在するモールド樹脂の層の厚みは非常に薄いものであり、十分にバスバー103からの素子101への熱の伝播を抑制することができず、結局は素子101の温度上昇を招いてしまうことがあった。
【0014】
すなわち、未だ素子101の特性劣化が生じる可能性は残されており、この素子101の温度上昇に関しては依然として対策を講じる必要がある。
【0015】
そこで、本発明は素子の温度が異常に上昇する可能性をさらに低減させ、素子の特性劣化を防ぐことで、信頼性に優れたコンデンサおよびこれを利用したケースモールド型コンデンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題を解決するために本発明のコンデンサは、一対の平坦部ならびに一対の湾曲部からなる扁平状の形状を有するとともに両端に一対の端面電極を有し、これら一対の平坦部が夫々同一平面上に位置するように一列に並設配置された複数の素子と、前記複数の素子の各端面電極に接続される電極接続部と、前記複数の素子を外部と電気的に接続するための外部接続部とを有するとともに、前記複数の素子の配列方向に沿って配置された一対のバスバーとを備え、前記一対のバスバーのうち、少なくとも一方の前記バスバーの前記外部接続部は、前記素子の前記湾曲部上方に配置された構成となっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によると、素子の温度が異常に上昇する可能性を低減することができ、コンデンサおよびこのコンデンサを用いたケースモールド型コンデンサの信頼性を高めることができる。
【0018】
これは、バスバーの外部接続部を素子の湾曲部上方に配置したことによる。
【0019】
一般に、バスバーからの発熱量は、バスバーと他の部材との接触部分周辺が比較的高く、例えばバスバーと外部接続端子の接触部分(外部接続部)がこれにあたる。
【0020】
また、当然外部環境から受ける貰い熱は、外部との接触部分に近いほど大きいものである。
【0021】
したがって、この外部接続部を素子からできる限り離間させることで効率的に素子の温度の上昇を防ぐことができる。
【0022】
そこで、本発明は素子が扁平状であることを利用し、素子の湾曲部上方にバスバーの外部接続部を配置したものである。
【0023】
この結果、素子とバスバーとを比較的離間させて配置させることとなり、バスバーから素子へ熱が伝播してしまうことを効果的に抑制することができ、コンデンサおよびこのコンデンサを利用したケースモールド型コンデンサの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1のコンデンサの構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)とは異なる方向からの斜視図
【図2】比較例であるコンデンサの斜視図
【図3】実施例2のケースモールド型コンデンサの構成を示した図であり、(a)はケースを装着する前の斜視図、(b)は斜視図
【図4】従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した図であり、(a)はケースを除いた斜視図、(b)は斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1)
以下、図1(a)、図1(b)を用いて、本実施例のコンデンサ1の構成について説明する。ここで、図1(a)は本実施例のコンデンサ1の構成を示す斜視図、図1(b)は図1(a)とは異なる方向からの斜視図である。
【0026】
図1(a)、図1(b)に示すように、本実施例のコンデンサ1は素子2を2個有している。この素子2は、ポリプロピレンの誘電体フィルムの片面または両面にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを一対として重ね、複数ターン巻回し円筒状とした後、プレス機で押圧して扁平状に成形することで形成される。このように、素子2は押圧して扁平状に成形されるため、図1(a)に示すようにその押圧面にあたる素子2の上部および下部は平面状の平坦部3となる。一方、素子2の左部および右部は、プレス機による押圧時に湾曲し、湾曲部4となる。なお、本実施例においては誘電体フィルムとしてポリプロピレンを用いたが、ポリプロピレン以外にもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド、ポリスチレンなどを用いてもよい。また、蒸着させる金属もアルミニウムに限られることなく、亜鉛やこれらの金属を複数用いた合金を用いてもよい。
【0027】
また、素子2は両端面に一対の端面電極を有しており、図1(a)における手前側がN極5、奥側がP極6となっている。これらN極5、P極6は素子2の巻回端面に亜鉛を溶射することで形成されたメタリコン電極である。なお、N極5はコンデンサ1を外部電源に接続した際に、外部電源の電圧の低い方に電気的に接続される電極であり、P極6は電圧の高い方の端子に電気的に接続される電極である。
【0028】
そして、本実施例のコンデンサ1は、これら2個の素子2を横置きの状態で一列に並べている。すなわち、図1(a)、図1(b)に示すように、これら2個の素子2は、互いの湾曲部4が対向するように隣接させて一列に並設配置され、上側の平坦部3どうし、並びに下側の平坦部どうしが同一平面状に位置した状態となっている。また、端面電極どうしも同一平面状に位置している。なお、本実施例は2個の素子2を並設配置したものであるが、これに限らず3個以上の素子2を並設配置した構成としても構わない。3個以上の素子2を用いた場合も上記と同様に、互いの湾曲部4が対向するように一列に並設配置する。
【0029】
なお、本明細書においては図1(a)ならびに図1(b)の上下方向を素子2の上下方向として表現しているが、実使用においてはこれに限られるものではない。すなわち、その設置場所によっては、図1(a)ならびに図1(b)の状態からコンデンサ1を上下反転させて用いてもよいし、あるいは端面電極が鉛直方向と垂直になるように配置し、いわゆる横向きの状態で用いてもよい。
【0030】
そして、これら2個の素子2の配列方向に沿って一対のバスバーであるN極バスバー7、P極バスバー8が配設されている。N極バスバー7は2個の素子2のN極5どうしを、P極バスバー8はP極6どうしを接続しており、すなわち本実施例において2個の素子2どうしは電気的に並列に接続されている。また、N極バスバー7、P極バスバー8は素子2を外部接続機器(図示せず)に電気的に接続するものであり、板状の銅板基材を打ち抜いて平板状に加工した後、所定の箇所を折り曲げることで形成される。
【0031】
まず、N極バスバー7は、図1(a)に示すように一体に形成された電極接続部7a、素子対向部7b、外部接続部7cにて構成される。
【0032】
N極バスバー7の電極接続部7aは、素子2のN極5に直接接続され、電極を引き出す部分である。電極接続部7aには舌片7dが複数設けられており、これらの舌片7dを半田付けすることにより電極接続部7aをN極5に接続している。
【0033】
素子対向部7bは電極接続部7aから90度素子2側に折り曲げられた状態となっており、素子2の上側の平坦部3に沿うように設けられている。したがって、素子対向部7bは素子2の平坦部3の一部と対向した状態となっている。この素子対向部7bは電極接続部7aとは逆側の端部に一部突出した箇所があり、これを素子対向部7bに垂直な方向にさらに折り曲げることによって外部接続部7cは形成されている。
【0034】
この外部接続部7cは外部接続機器と直接接触させる部分である。外部接続部7cの端部には貫通孔7eが設けられており、ボルトやナットを用いてこの貫通孔7eに外部接続機器を固定できるようになっている。また、N極バスバー7の外部接続部7cは図1(a)に示すように、素子2の平坦部3の上方に配置されている。
【0035】
一方、P極バスバー8もN極バスバー7と同様に、図1(b)に示すように一体に形成された電極接続部8a、素子対向部8b、外部接続部8cにて構成され、さらに舌片8d、貫通孔8eを有している。これら電極接続部8a、素子対向部8b、外部接続部8cの機能も基本的にはN極バスバー7と同様であるが、以下の点で異なる。
【0036】
まず、P極バスバー8の素子対向部8bはN極バスバー7の素子対向部7bに比べて面積が小さく、素子2の平坦部3と対向している範囲が小さくなるように設計されている。
【0037】
さらに、N極バスバー7の外部接続部7cが素子2の平坦部3の上方に設けられていたことに対して、P極バスバー8の外部接続部8cは、素子2の湾曲部4の上方に設けられている。このように外部接続部8cを素子2の湾曲部4の上方に設けたことによって、素子2と外部接続部8cの間には隙間9(図1(a)に示す)が形成されることになり、素子2と外部接続部8cの間の距離は、外部接続部8cを平坦部3の上方に設けた構成よりも物理的に長くなる。また、このP極バスバー8の外部接続部8cはN極バスバー7の外部接続部7cと僅かな隙間を空けて並設配置されており、これら外部接続部8cと外部接続部7cは図1(a)、図1(b)に示すように、素子2の端面電極と平行な同一平面上に位置するように設けられている。
【0038】
次に、本実施例のコンデンサ1の構成による効果について説明する。
【0039】
まず、本実施例のコンデンサ1の構成によると素子2の温度が異常に上昇する可能性を低減することができる。
【0040】
これは、P極バスバー8の外部接続部8cが素子2の湾曲部4の上方に設けられていることによる。
【0041】
すなわち、本実施例の素子2は上述したように扁平状の形状を有したものであるが、本実施例のコンデンサ1ではこのように素子2が扁平状の形状を有していることを利用し、素子2の湾曲部4の上方に外部接続部8cを配設し、外部接続部8cと素子2を離間させることでP極バスバー8の熱の素子2への伝播を抑制している。特に、P極バスバー8からの発熱量は、P極バスバー8と他の部材との接触部分である外部接続部8cが比較的高く、またP極バスバー8が外部環境から受ける貰い熱も当然外部接続機器との接触部分である外部接続部8cが大きいものであるので、この外部接続部8cを素子2から離間させた態様である本実施例のコンデンサ1は効率的に素子2への熱の伝播を抑制している。また、外部接続部8cの下端である素子対向部8bからの折り曲げ箇所は、外部形状に依存するため幅が狭く、電流密度が高くなってしまい、局部的に発熱量が大きくなってしまう可能性があるが、本実施例の外部接続部8cの下端は上述のとおり素子2から比較的離間した状態となっており、外部接続部8cの下端の折り曲げ箇所からの熱も素子2へ伝播しにくい構成となっている。この結果、素子2の異常な温度上昇の可能性を低減することができ、コンデンサ1を優れた信頼性を有するものとすることができる。
【0042】
また、本実施例のコンデンサ1ではN極バスバー7の素子対向部7b並びにP極バスバー8の素子対向部8bは素子2の平坦部3の一部と対向した状態となっている。このように、素子対向部7b並びに素子対向部8bを素子2の平坦部3と対向させることで、P極バスバー8、N極バスバー7内を流れる電流の向きと素子2内を流れる電流の向きが逆向きとなり、これらの間のインダクタンスを小さくすることができる。
【0043】
ここで、本実施例のコンデンサ1の効果について検証した結果を(表1)を用いて説明する。
【0044】
まず、本実施例のコンデンサ1と比較例として用いたコンデンサ200の構成の違いについて説明する。
【0045】
図2に比較例であるコンデンサ200を示す。図2はコンデンサ200の構成を示す斜視図である。
【0046】
コンデンサ200もコンデンサ1と同様に2個の素子202からなり、これら素子202にはコンデンサ1の素子2と同じものを用いている。また、これら素子202どうしを電気的に接続し、コンデンサ素子202を外部と電気的に接続するためのP極バスバー208並びにN極バスバー207も夫々コンデンサ1のP極バスバー8並びにN極バスバー7と同じものを用いている。
【0047】
ただし、これらP極バスバー208、N極バスバー207と素子202との接続の態様はコンデンサ1と異なるものであり、この点がコンデンサ200とコンデンサ1の異なる点である。
【0048】
すなわち、上述のようにコンデンサ1では、P極バスバーの外部接続部8cは素子2の湾曲部4の上方に位置しているが、コンデンサ200においては、P極バスバー208の外部接続部208cは素子202の平坦部203の上方に位置している。
【0049】
このような相違点を有するコンデンサ1、コンデンサ200の特性を比較するため、実効電流35Armsを180分間通電し、素子2および素子202表面の温度、インダクタンスを測定した。温度測定を行った素子2および素子202は、隣接して並べられた2つの素子のうち、外部接続部8cおよび外部接続部208c側の素子である。この測定結果を以下の(表1)に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
(表1)に示されるように、インダクタンスに関しては、コンデンサ200がコンデンサ1に比べ僅かに低いという結果が得られた。これは、コンデンサ1のN極バスバー7、P極バスバー8が素子2と対向する面積よりも、コンデンサ200のN極バスバー207、P極バスバー208が素子202と対向している面積の方が大きいことに起因する。
【0052】
しかしながら、温度上昇値に関しては、コンデンサ1の方がコンデンサ200よりも低い値となった。この結果より、本実施例のコンデンサ1は比較例であるコンデンサ200に比べ、インダクタンスに関しては僅かに劣るものの、素子2の温度上昇の抑制に関しては優れており、本実施例の構成によりP極バスバー8の熱の素子2への伝播を抑制できることが確認できた。
【0053】
また、自動車用等のインバータ電源では、P極側がN極側に比べて熱が発生しやすいことが経験的に知られている。そこで、本実施例の構成ではN極バスバー7ではなく、P極バスバー8の外部接続部8cを素子2の湾曲部4上方に配置し、このインバータ電源からのP極バスバーへの貰い熱がさらに素子2へ伝播することを抑制している。ただし、素子2の湾曲部4上方に配置する外部接続部はP極バスバー8の外部接続部8cに限られるものでなく、N極バスバー7の外部接続部7cとしてもよい。この構成であっても、P極バスバー8の外部接続部8cを素子2の湾曲部4上方に配置した構成と比べその効果は劣るものの、素子2の温度の上昇を防ぐことができる。
【0054】
さらに、本実施例のコンデンサ1ではN極バスバー7の素子対向部7bの面積を比較的大きくしている。ここで、素子対向部7b、素子対向部8bは、ともにインダクタンスを低減するために設けられているものであるが、上述したように、P極バスバー8はN極バスバー7に比べ外部からの貰い熱により温度が上昇しやすい。すなわち、P極バスバー8の素子対向部8bは、確かにインダクタンスを低減させることが可能であるが、同時に素子2に外部からの貰い熱の影響を与えてしまう可能性がある。そこで、本実施例のコンデンサ1では、素子対向部7bの面積を素子対向部8bよりも大きくなるように設計し、インダクタンスの低減はできるだけN極バスバー7の素子対向部7bにて行うようにしている。
【0055】
なお、各バスバーの外部接続部7c、外部接続部8cどうしは素子2の端面電極と平行な同一平面上に僅かな隙間を空け、かつ近接させて位置することが好ましい。これは、外部接続部7c内を流れる電流と外部接続部8c内を流れる電流は互いに逆向きの方向を流れており、外部接続部7cと外部接続部8cを近接させることで、これらの間のインダクタンスを小さくすることができるからである。
【0056】
また、本実施例においては、2個の素子2を一列に並列配置した構成を示したが、素子2の数は2個に限られることはなく、3個以上の素子2を並設配置しても構わない。この際、外部接続部8cは、一列に並設配置された複数個の素子2のうち、列の端部に配置された素子2の隣接する素子2がない方の湾曲部4上部に配置されることが望ましい。要するに外部接続部8cは素子2の列の端に配置させることが望ましいものである。このように、列の端に外部接続部8cを配置することで、発熱量の多い外部接続部8cからの熱の影響を受ける素子2の数を最小限とすることができる。
【0057】
(実施例2)
図3(a)、図3(b)を用いて本実施例のケースモールド型コンデンサ11について説明する。図3(a)はケースモールド型コンデンサ11のケース12を装着する前の斜視図、図3(b)はケースモールド型コンデンサ11の全体の構成を示す斜視図である。
【0058】
本実施例のケースモールド型コンデンサ11は、図3(a)の矢印にて示すように実施例1のコンデンサ1をケース12に収容することで形成される。
【0059】
図3(a)に示すように、ケース12は上面開放型の箱型形状を有しており、耐熱性、耐衝撃性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)により形成されている。なお、本実施例においてはケース材料としてポリフェニレンサルファイドを用いたが、ポリフェニレンサルファイド以外にもポリブチレンテレフタレートなどを用いてもよい。
【0060】
そして、コンデンサ1は、コンデンサ1の端面電極がケース12の長手方向の側壁内面と対向するようにケース12の開口部から挿入され、ケース12内に収容される。ここで、素子2の図3(a)における上下方向の幅はケース12の高さよりも低いため、素子2の上端部がケース12の開口部よりも上方に位置することはない。
【0061】
このようにコンデンサ1を収容したケース12にモールド樹脂13を充填し、さらに加熱してモールド樹脂13を硬化させると図3(b)に示すような状態となり、ケースモールド型コンデンサ11が完成する。ここで、モールド樹脂13は開口部付近までケース12に充填され、素子2はモールド樹脂13にて完全にモールドされる。ただし、N極バスバー7の外部接続部7c並びにP極バスバー8の外部接続部8cは図3(b)に示すように、下端部のみがモールドされ、その大半はモールド樹脂13から外部へ表出している。このモールド樹脂13から表出した外部接続部7cと外部接続部8cを外部接続機器(図示せず)に接続することでケースモールド型コンデンサ11が外部電源と電気的に接続される。なお、本実施例ではモールド樹脂13として熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を用いた。また、本実施例においてもケース12の開口部側を上方として図3(a)並びに図3(b)に図示したが、実使用に際しては必ずしも開口部を上向きとして使用する必要はなく、鉛直方向下向きとしてもよいし、あるいは横向きとしてもよい。
【0062】
次に、本実施例のケースモールド型コンデンサ11の効果について述べる。
【0063】
上述したように、本実施例においてはケース12内はモールド樹脂13にて充填されており、外部接続部8cと素子2との間の隙間9にもモールド樹脂13が充填されている。
【0064】
このように、外部接続部8cと素子2との間にモールド樹脂13が介在することで、外部接続部8cから素子2への熱の伝播はより一層抑制される。この結果、素子2の異常な温度上昇の可能性は抑制され、ケースモールド型コンデンサ11の信頼性を高いものとすることができる。
【0065】
以上説明したように、本発明によるコンデンサ1並びにこのコンデンサ1を用いたケースモールド型コンデンサ11は素子2の異常な温度上昇の可能性が低減された構成となっており、優れた信頼性を発揮できるものである。
【0066】
なお、この発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によるコンデンサおよびこのコンデンサを用いたケースモールド型コンデンサは、優れた信頼性を有しており、各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に用いられるコンデンサとして好適に採用でき、特に高耐熱性が求められる自動車用分野において有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 コンデンサ
2 素子
3 平坦部
4 湾曲部
5 N極
6 P極
7 N極バスバー
7a 電極接続部
7b 素子対向部
7c 外部接続部
7d 舌片
7e 貫通孔
8 P極バスバー
8a 電極接続部
8b 素子対向部
8c 外部接続部
8d 舌片
8e 貫通孔
9 隙間
11 ケースモールド型コンデンサ
12 ケース
13 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平坦部ならびに一対の湾曲部からなる扁平状の形状を有するとともに両端に一対の端面電極を有し、これら一対の平坦部が夫々同一平面上に位置するように一列に並設配置された複数の素子と、
前記複数の素子の各端面電極に接続される電極接続部と、前記複数の素子を外部と電気的に接続するための外部接続部とを有するとともに、前記複数の素子の配列方向に沿って配設された一対のバスバーとを備え、
前記一対のバスバーのうち、少なくとも一方の前記バスバーの前記外部接続部は、前記素子の前記湾曲部上方に配置されたコンデンサ。
【請求項2】
前記一対のバスバーは、前記電極接続部と前記外部接続部の間にこれら前記電極接続部と前記外部接続部と一体で形成されるとともに、前記複数の素子の前記平坦部と対向する素子対向部を有する請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記素子の一対の端面電極は、外部電源の電圧の高い極側に電気的に接続されるP極と、外部電源の電圧の低い極側に電気的に接続されるN極とからなり、
前記P極と接続される前記バスバーの前記外部接続部を、前記素子の前記湾曲部上方に配置した請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記複数の素子は、前記一対の端面電極が夫々同一平面上に位置するように並設配置され、
前記一対のバスバーの前記外部接続部どうしは、前記素子の前記端面電極と平行な同一平面上に位置する請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記バスバーの前記外部接続部が上方に配置される前記湾曲部を有する前記素子は、一列に並設配置された前記複数の素子のうち、端部に配置された素子である請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のコンデンサを収容する上面開口型のケースと、
前記ケースに充填され、前記素子をモールドするモールド樹脂とを備え、
前記バスバーの前記外部接続部を前記モールド樹脂から外部へ露出させたケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89653(P2013−89653A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226432(P2011−226432)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】