説明

コントローラ

【課題】人の指などの物体を光センサに近づけることにより、精度よく制御信号を出力することができるコントローラを提供する。
【解決手段】光センサ1a〜1c及び光検知手段2からの検知信号が、照度比較回路5に送信される。照度比較回路5は、光検知手段2からの信号の出力値が表1のいずれの出力値領域に含まれるかを特定し、特定された出力値領域に割り当てられた閾値を選択する。照度比較回路5は、光検知手段2の信号と光センサ1a〜1cの信号との出力差を算出し、これら3つの出力差のいずれかが閾値以上であるかどうかを確認する。1つの出力差のみが該閾値以上であるときは、送信回路6に対して該光センサに対応する制御信号を出力する。2つ以上の出力差が該閾値以上であるときは、送信回路6に対して最大の出力差の光センサに対応する制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリモートコントローラ(リモコン)などのコントローラに係り、特に人の指などの物体を光学的に検知して制御信号を出力するよう構成されたコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
人の指などの物体を光学的に検知して制御信号を出力するよう構成されたコントローラは公知である。
【0003】
例えば、特開2000−17700号公報には、水栓に設置した複数の太陽電池間の相対的な出力変化に基づいて電磁弁を制御する自動給水装置が記載されている(請求項1)。同号では、水栓の上部に2つの太陽電池A,Bを横方向に並べて設置する(第0019段落)。この水栓の上部で手を左から右へ移動させる操作を行うと、これら太陽電池A,B上に手の影が移動し、太陽電池の出力の変化として検知される(第0029段落)。この影の移動による太陽電池A,B間の相対的な出力変化に基づいて吐水及び止水の制御を行う。これにより、室内照明の変化などによる誤作動が防止される(第0036段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−17700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、室内照明の変化や窓から差し込む日光の変化などによる水栓の誤作動が防止される。しかしながら、水栓の吐水及び止水操作として、手を太陽電池に近づけるだけではなく、さらに複数の太陽電池に順次に手の影を移動させる操作をする必要があり、操作が繁雑である。
【0006】
本発明は、人の指などの物体を光センサに近づけることにより、精度よく制御信号を出力することができるコントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)のコントローラは、物体を検知する検知手段と、該検知手段の信号に基づいて制御信号を出力する信号出力手段とを有するコントローラにおいて、該検知手段は光センサであり、コントローラの外部の照度を検知する光検知手段と、該光センサ及び該光検知手段からの信号を受信し、該光センサの信号と該光検知手段の信号との出力差が設定された閾値以上であるときに、前記信号出力手段に対して前記制御信号を出力するよう制御する制御信号出力手段と、該光検知手段からの信号の出力値に応じて該閾値を変更する閾値変更手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のコントローラは、請求項1において、該閾値変更手段は、該光検知手段からの信号の出力値が小さい程、小さい閾値に変更するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のコントローラは、請求項2において、該閾値変更手段は、複数の出力値領域と該出力値領域毎に割り当てられた閾値とからなるデータを記憶しており、該光検知手段からの信号を受信すると、この信号の出力値が含まれている出力値領域に割り当てられた閾値に変更するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のコントローラは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該コントローラに太陽電池が設けられており、該太陽電池が該光検知手段を兼ねることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5のコントローラは、請求項1ないし4のいずれか1項において、該光センサが複数個設けられており、該制御信号出力手段は、前記出力差が最大となる光センサを特定し、この特定された光センサに対応する制御信号を出力するよう該信号出力手段を制御するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明(請求項1)のコントローラによると、コントローラの外部の照度に応じて適切な閾値を設定することにより、精度よく制御信号を出力することができる。
【0013】
請求項2のコントローラによると、光検知手段からの信号の出力値が小さい程、閾値変更手段が閾値を小さい値に変更する。このため、コントローラの外部が暗いために物体検知時における光センサと光検知手段との出力差が小さい場合にあっても、この出力差よりも小さい閾値に変更されるため、精度よく制御信号を出力することができる。また、コントローラの外部が明るい場合には、大きい閾値に変更されるため、誤作動なく制御信号を出力することができる。
【0014】
請求項3のコントローラのように、この閾値は、出力値の低下に従って段階的(不連続)に変更されてもよい。また、連続的に変更されてもよい。
【0015】
請求項4のコントローラによると、太陽電池が該光検知手段を兼ねるため、部品点数が少なくなる。
【0016】
請求項5のコントローラによると、複数個の光センサのうち出力差が最大となる特定の光センサ(すなわち、指等によって最も光が遮られた光センサ)に対応する制御信号を出力することにより、精度よく制御信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係るコントローラと機器本体の一例を示すブロック図である。
【図2】別の実施の形態に係るコントローラと機器本体の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。第1図は実施の形態に係るコントローラと機器本体の一例を示すブロック図である。
【0019】
(コントローラの構成)
このコントローラ10は、外部からの光(紫外線、可視光線及び赤外線の少なくとも1つ)を受光するための、光センサ1a〜1c、光検知手段2及び太陽電池3を有している。これら光センサ1a〜1cは、それぞれ操作スイッチとして機能する。光検知手段2は、コントローラ10の外部の照度を検知するためのものである。
【0020】
また、このコントローラ10の内部には、太陽電池3で発電された電力を充電するためのコンデンサ電源回路4と、光センサ1a〜1c及び光検知手段2からの信号を受信する照度比較回路5と、送信回路6とを有している。このコンデンサ電源回路4は、太陽電池3の他に、照度比較回路5及び送信回路6にも接続されており、これら回路5,6に電力を供給可能とされている。これら照度比較回路5及び送信回路6も互いに接続されており、この照度比較回路5からの信号を送信回路6に送信可能とされている。後述の通り、この照度比較回路5が制御信号出力手段及び閾値変更手段として機能し、この送信回路6が信号出力手段として機能する。
【0021】
この照度比較回路5には、表1に示す通り、複数個の出力値領域と、該出力値領域毎に割り当てられた閾値とからなるデータが記憶されている。本実施の形態では、出力値が100Lx以上の第1領域には閾値Δ50Lxが割り当てられ、出力値が80Lx以上100Lx未満の第2領域には閾値Δ20Lxが割り当てられ、出力値が50Lx以上80Lx未満の第3領域には閾値Δ10Lxが割り当てられ、出力値が10Lx以上50Lx未満の第4領域には閾値Δ5Lxが割り当てられている。なお、出力値が10Lx未満の第5領域には閾値が割り当てられていない。
【0022】
【表1】

【0023】
本実施の形態では、コントローラ10はリモートコントローラであり、このコントローラ10から離隔した位置に機器本体20が設置されている。上記送信回路6からの制御信号をこの機器本体20が受信し、該制御信号に対応する機能が作動ないし停止するように構成されている。また、この機器本体20は、機器本体20に近づいてきた人体を検知する人体検知手段(図示略)と、人体検知信号をコントローラ10の信号受信手段に送信するLED等の送信手段(図示略)とを有している。
【0024】
(コントローラ10の動作例)
このように構成されたコントローラ10において、コントローラ10の周辺に人体が居ない場合には、コントローラ10は待機モードになっている。この待機モードにおいては、光センサ1a〜1cが検知不能状態となっている。但し、光検知手段2、照度比較回路5、太陽電池3及びコンデンサ電源回路4は起動状態となっており、太陽電池3で発電されたエネルギーはコンデンサ電源回路4に蓄電される。
【0025】
この待機モードにおいて使用者がコントローラ10に近づくと、機器本体20が人体検知信号を発信し、コントローラ10の信号受信手段が受信して、コントローラ10がリモコン操作可能モードに切り換わる。このリモコン操作可能モードにおいては、上記待機モードにおいて、さらに光センサ1a〜1cが検知可能となる。なお、この信号受信手段としては、送受信回路6、太陽電池3又は光センサ1a〜1cが挙げられるが、これらとは別個に信号受信手段を設けてもよい。
【0026】
このリモコン操作可能モードにおいては、光センサ1a〜1c及び光検知手段2が照度を検知し、検知信号を照度比較回路5に送信する。この照度比較回路5は、閾値変更手段として機能し、光検知手段2からの信号の出力値に応じて閾値を変更する。具体的には、この光検知手段2からの信号の出力値が表1の第1領域〜第5領域のいずれの出力値領域に含まれるかを特定し、特定された出力値領域に割り当てられた閾値を選択する。なお、第5領域である場合には閾値は設定されず、コントローラ10は操作不能とされる。以下には、光検知手段2からの信号の出力値が第1〜第4領域のいずれかである場合について説明する。
【0027】
次いで、この照度比較回路5は、制御信号出力手段として機能する。具体的には、上記光検知手段2の信号と光センサ1aの信号との出力差、上記光検知手段2の信号と光センサ1bの信号との出力差、及び上記光検知手段2の信号と光センサ1cの信号との出力差を算出し、これら3つの出力差のいずれかが閾値以上であるかどうかを確認する。1つの出力差(例えば光検知手段2と光センサ1aとの出力差)のみが該閾値以上であるときは、使用者がその出力差に対応する光センサ(光センサ1a)を操作したと判定し、送信回路6に対して該光センサ(光センサ1a)に対応する制御信号を出力する。また、2つ以上の出力差が該閾値以上であるときは、最大の出力差に対応する光センサ(例えば、光センサ1a)を操作したと判定し、送信回路6に対して該光センサ(光センサ1a)に対応する制御信号を出力する。この照度比較回路5からの信号を送信回路6が受信すると、該光センサ(光センサ1a)に対応する制御信号を機器本体20に向けて出力する。これにより、機器本体20の該光センサ(光センサ1a)に対応する機能が作動又は停止する。なお、いずれの出力差も閾値未満であるときは、照度比較回路5は使用者による光センサ1a〜1cの操作がなかったものと判定し、送信回路6に信号を出力しない。
【0028】
このコントローラ10によると、光検知手段2からの信号の出力値が小さい程、閾値が小さい値に変更される。このため、コントローラ10の外部が暗いために、指等を光センサ1a〜1cのいずれかに近づけてスイッチ操作を行ったときの該光センサ1a〜1cと光検知手段との出力差が小さい場合にあっても、この出力差よりも小さい閾値に変更されるため、精度よく該光センサ1a〜1cに対応する制御信号を送信回路6から出力することができる。また、コントローラ10の外部が明るい場合には、大きい閾値に変更されるため、誤作動なく制御信号を送信回路6から出力することができる。このように、コントローラ10の周囲の照度の強弱に影響されることなく、正確にスイッチ操作の有無を判定することができる。
【0029】
また、このコントローラ10によると、3個の光センサ1a〜1cのうち出力差が最大となる特定の光センサ(すなわち、指等によって最も光が遮られた光センサ)に対応する制御信号を送信回路6から出力することにより、誤作動なく制御信号を出力することができる。なお、コントローラ10によると、コントローラ10に直接に触れることなく操作を行うことができるため清潔である。
【0030】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、上記実施の形態では操作スイッチを3個としたが、1個、2個又は4個以上としてもよい。上記実施の形態ではコントローラとしてリモートコントローラ(例えば、トイレの温水洗浄装置のリモコン)を例示したが、機器本体に設置されたコントローラ(例えば、便座ボックスの袖部に設置された操作部)であってもよい。
【0032】
上記実施の形態では、表1のデータに基づいて閾値を変更したが、計算式に基づいて閾値を変更してもよい。例えば、出力値をXとすると、照度比較回路に下記の式(1)を記憶させておく。
Y=0.5X…(1)
そして、光検知手段2からの信号の出力値Xをこの式(1)に代入してYを算出し、閾値をこのYの値に変更するようにしてもよい。なお、計算式は上記(1)に限定されるものではなく、Y=aX+b(a、bは係数)としてもよく、Y=aX+bX+cX+…(a、b、cは係数)としてもよく、その他の式としてもよい。
【0033】
第2図のコントローラ10Aのように、光検知手段2を省略し、太陽電池3が光検知手段2を兼ねるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1a〜1c 光センサ
2 光検知手段
3 太陽電池
4 コンデンサ電源回路
5 照度比較回路
6 送信回路
10,10A コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検知する検知手段と、該検知手段の信号に基づいて制御信号を出力する信号出力手段とを有するコントローラにおいて、
該検知手段は光センサであり、
コントローラの外部の照度を検知する光検知手段と、
該光センサ及び該光検知手段からの信号を受信し、該光センサの信号と該光検知手段の信号との出力差が設定された閾値以上であるときに、前記信号出力手段に対して前記制御信号を出力するよう制御する制御信号出力手段と、
該光検知手段からの信号の出力値に応じて該閾値を変更する閾値変更手段と
を備えたことを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
請求項1において、該閾値変更手段は、該光検知手段からの信号の出力値が小さい程、小さい閾値に変更するよう構成されていることを特徴とするコントローラ。
【請求項3】
請求項2において、該閾値変更手段は、複数の出力値領域と該出力値領域毎に割り当てられた閾値とからなるデータを記憶しており、該光検知手段からの信号を受信すると、この信号の出力値が含まれている出力値領域に割り当てられた閾値に変更するよう構成されていることを特徴とするコントローラ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該コントローラに太陽電池が設けられており、該太陽電池が該光検知手段を兼ねることを特徴とするコントローラ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該光センサが複数個設けられており、
該制御信号出力手段は、前記出力差が最大となる光センサを特定し、この特定された光センサに対応する制御信号を出力するよう該信号出力手段を制御するものであることを特徴とするコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−182244(P2011−182244A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45557(P2010−45557)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】