説明

コンバインのエンジン吸気構造

【課題】遠心式粗選フィルタについて、粉塵負荷の軽減のための高位置稼動および格納設備の適合性拡大のための低位置収納を確保しつつ、メンテナンス負荷の軽減および異物分離機能の確保による濾過式エアクリーナの異常目詰まりの防止を可能とするコンバインのエンジン吸気構造を提供する。
【解決手段】コンバインのエンジン吸気構造は、濾過式エアクリーナ(A)を備えたエンジン吸気管(9)の吸気端を起立部(11)として機体上部に起立配置し、その頂部に渦流によって異物を遠心分離する遠心式粗選フィルタ(9a)を取付け、上記エンジン吸気管(9)の起立部(11)には、遠心式粗選フィルタ(9a)を正立姿勢のままその高さを変更可能に支持する伸縮管(12)を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインのエンジン吸気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、エンジン吸気管のプレクリーナとして遠心式粗選フィルタを高さ切換可能に取付けたコンバインが知られている。このエンジン吸気管は、濾過式エアクリーナを介設するとともに吸気端部を機体上部に起立配置し、その頂部に遠心式粗選フィルタを取付け、この遠心式粗選フィルタを含む起立部を可倒式に構成したものである(例えば、同文献の図23)。
【0003】
上記遠心式粗選フィルタは、外気中に混入する異物を遠心分離した上で濾過式エアクリーナによって微細異物を分離することにより、収穫作物および圃場面の粉塵環境の下におけるコンバインの圃場作業においてエンジン稼動をサポートする。また、上記可倒構造により、直立位置では最大限の地上高によって異物負荷が低減され、濾過式フィルタを含むメンテナンス作業を軽減することができ、一方、倒伏位置では機体の地上高が抑えられて低位置収納ができるので、コンバインの格納の際に屋根の低い納屋等の簡易な格納設備にも適合することができる。
【特許文献1】特開平11−113349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記格納設備にコンバインを格納する際は、遠心式粗選フィルタを横倒しにする前に、その都度、内部の分離異物の排出作業が必要となるので、煩に絶えないという問題があった。すなわち、遠心式粗選フィルタは、その部分縦断面を伴う詳細な側面図の一例を図7に示すように、平面視で円形の本体部の下方から流入する外気Fを円周方向に案内するガイドGによって内部に渦流を起こし、その遠心力によって外気Fから分離された異物Pが上蓋Tに沿って案内され、この上蓋Tに続く外周部Rに受けて混入異物Pを貯留するように構成されている。
【0005】
したがって、外周部Rに受けた分離異物Pをそのままにして遠心式粗選フィルタを横倒しにするとその分離異物Pが機器内部に拡散され、この内部拡散異物はその後に吸気端部を直立した際に吸気管C内を落下して濾過式エアクリーナの目詰まりの原因となることから、遠心式粗選フィルタの正規の使用条件を満たすためには、コンバインを格納する都度、事前に上蓋Tと外周部Rを外して分離異物Pを排出するメンテナンス作業を強いられることとなる。
【0006】
また、遠心式粗選フィルタは、所定の直立姿勢で重力方向と対応して異物の遠心分離動作をするように設計されており、横倒し姿勢の場合は重力方向との関係で充分な異物分離作用が得られないことから、吸気端部の直立操作の失念により、または、故障により、圃場作業の際に遠心式粗選フィルタを倒伏したままエンジンを稼動すると濾過式エアクリーナの異常目詰まりを招き、エンジン出力の低下によってコンバインによる収穫作業計画に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0007】
解決しようとする問題点は、エンジン吸気管の遠心式粗選フィルタについて、粉塵負荷の軽減のための高位置稼動および格納設備の適合性拡大のための低位置収納を確保しつつ、メンテナンス負荷の軽減および異物分離機能の確保による濾過式エアクリーナの異常目詰まりの防止を可能とするコンバインのエンジン吸気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、濾過式エアクリーナ(A)を介設したエンジン吸気管(9)の吸気端を起立部(11)として機体上部に起立配置し、その頂部に渦流によって異物を遠心分離する遠心式粗選フィルタ(9a)を取付け、上記エンジン吸気管(9)の起立部(11)には、遠心式粗選フィルタ(9a)を正立姿勢のままその高さ位置を変更可能に支持する伸縮管(12)を備えてなることを特徴とする。
【0009】
上記エンジン吸気管(9)は、機体上部配置の起立部(11)の頂部において遠心式粗選フィルタ(9a)によって外気の異物を粗選別し、次いで濾過式エアクリーナ(A)によって微細異物を分離することによりエンジン吸気中の混入異物が排除され、この時、遠心式粗選フィルタ(9a)は、伸縮管(12)を伸ばすと最大限の地上高で正立姿勢で支持され、一方、伸縮管(12)を縮めることによって機体高さが抑えられるとともに、遠心式粗選フィルタ(9a)の正立姿勢が維持されて貯留異物が安定的に保持されるとともに、エンジン稼働によっても異物分離機能の維持により濾過式エアクリーナ(A)の異常目詰まりが防止される。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記遠心式粗選フィルタ(9a)の高さを調節するべく、伸縮管(12)に連結して伸縮調節するための操作レバー(13)を備えることを特徴とする。
上記操作レバー(13)によって伸縮管(12)を伸縮調節することにより、遠心式粗選フィルタ(9a)が正立姿勢を維持しつつ高さ位置が上下に調節される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、エンジン吸気管の起立部(11)に介設した伸縮管(12)により、最小限の異物負荷環境におけるエンジン稼動によるコンバインの圃場作業効率および機体格納設備の適合性を確保した上で、機体格納の際の遠心式粗選フィルタ(9a)について異物排出のメンテナンス負荷が軽減されるとともに、エンジン稼動の際に伸縮管(12)の伸張操作の失念や故障により遠心式粗選フィルタ(9a)が低位置収納状態であっても濾過式エアクリーナ(A)の異常目詰まりが防止されることから安定した収穫作業を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明は、操作レバー(13)により遠心式粗選フィルタ(9a)の正立姿勢を維持しつつ高さ位置が上下に調節されることから、遠心式粗選フィルタ(9a)の高さ位置の切換えがレバー(13)によって簡易に操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係るコンバイン1は、機体側面図および平面図を図1、図2にそれぞれ示すように、機体フレーム2を走行可能に支持する左右のクローラ3,3と、機体の前部で圃場から穀稈を刈取る刈取部4と、この刈取部4を監視するとともに機体機器を操縦するための操縦席5と、刈取部4から受けた刈取り穀稈を脱穀する脱穀部6と、脱穀部6の側方で脱穀穀粒を貯留しつつ袋詰めするホッパー7と、その下部に配置した袋詰め作業用のキャリア8等を備えて構成される。操縦席5の下方には図示せぬエンジンEを備えた原動部を搭載し、この原動部からエンジン吸気管9を機体上部に起立配置し、その頂部にプレクリーナとしての遠心式粗選フィルタ9aを備える。
【0014】
この遠心式粗選フィルタ9aは、吸気の際の渦流により外気中の混入異物を遠心分離しつつ内部に貯留する。すなわち、遠心式粗選フィルタ9aは、前述の図7に示すように、本体部が平面視円形でこの本体部の下方から流入する外気Fを円周方向に案内するガイドGによって内部に渦流を起こし、その遠心力によって外気Fから分離された異物Pが上蓋Tに沿って案内され、この上蓋Tに続く外周部Rに受けて混入異物Pを貯留する。
【0015】
エンジン吸気管9は、基部側に図示せぬ濾過式エアクリーナAを介設して操縦席5の背面位置を立ち上がり、コンバイン1の正面図を図3に示すように、吸気端を平面視の機体中央位置に直立して起立部11を形成し、この起立部11に遠心式粗選フィルタ9aを正立姿勢のままその高さ位置を変更可能に支持する伸縮管12を介設し、その伸縮調節用の操作レバー13を操縦席5の近傍に配置する。伸縮管12は蛇腹機構等により伸縮可能に構成し、遠心式粗選フィルタ9aを正立姿勢のままその高さ位置を変更可能に支持しうるダクト状の伸縮支持手段である。
【0016】
操作レバー13は、部分側面図を伴う要部拡大図を図4に示すように、エンジン吸気管9の起立部11の近傍に支持台21を設けて軸支し、その先端を上下動作可能に伸縮管12の上部に連結する。また、操作レバー13の後端部に操作用のグリップ22を形成し、その近傍にラック状の掛止溝を形成することにより操作レバー13の位置を変更して固定可能な掛止手段23を設ける。この掛止手段23は、少なくとも、伸縮管12の最伸張位置と最短縮位置を選択可能に掛止固定が可能に構成する。
【0017】
上述のようにエンジン吸気管9を構成することにより、機体上部配置の起立部11の頂部において遠心式粗選フィルタ9aによって外気Fの混入異物が粗選別され、次いで濾過式エアクリーナAによって微細異物が分離されることによりエンジン吸気の異物が排除される。この時、遠心式粗選フィルタ9aは、伸縮管12を伸ばすと最大限の地上高で正立姿勢で支持され、一方、伸縮管12を縮めることによって機体高さが抑えられるとともに、遠心式粗選フィルタ9aの正立姿勢が維持されて同フィルタ内の分離異物Pが安定的に外周部Rに保持されるとともに、異物分離機能の維持により濾過式エアクリーナAの異常目詰まりが防止される。
【0018】
したがって、エンジン吸気管9の起立部11に介設した伸縮管12によって遠心式粗選フィルタ9aの正規の使用条件が満たされることとなり、最小限の異物負荷環境におけるエンジン稼動によるコンバインの圃場作業効率および機体格納設備の適合性を確保した上で、機体格納の際の遠心式粗選フィルタ9aについて正規の使用条件を満たすための分離異物排出のメンテナンス負荷が軽減されるとともに、伸縮管12の伸張操作の失念等によっても濾過式エアクリーナAの異常目詰まりが防止されることから安定した収穫作業を確保することができる。
【0019】
また、操作レバー13によって伸縮管12を伸縮調節することにより、遠心式粗選フィルタ9aが正立姿勢を維持しつつ高さ位置が上下に調節されることから、操縦席5からオペレータが手を伸ばしてレバー13を操作することにより、遠心式粗選フィルタ9aの高さ位置を簡易に切換えすることができる。
【0020】
(脱穀部)
次に、脱穀部6について説明する。
脱穀部6は、その側面図および平面図をそれぞれ図5、図6に示すように、扱胴31と処理胴32を上段に、その下方に揺動選別棚33を備え、この揺動選別棚33の扱胴排塵口Pに臨む位置に排塵ラック34を備えて構成される。この排塵ラック34は、株元側長さL1を小さく、穂先側長さL2を大きく形成する。なお、Qは排塵ラック34の上に所定の間隔をおいて設置したストローラックである。Rは唐箕、Sは一番螺旋、Tは二番螺旋である。
【0021】
上記構成の排塵ラック34は、長わらが多く排出される扱室穂先側と処理室の下側について面積を大きくするとともに株元側の面積を小さくすることにより、唐箕風の向きを阻害することなく、扱室および処理室から排出されて揺動選別棚33に落下する長わらなどを受け、稈切れの混入を防止することができる。また、上記排塵ラック34の向きを横断流ファン35のある機体左側に向けることにより、排塵口、処理室から排出された長わらが横断流ファン35に吸込み易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの機体側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】部分側面図を伴う要部拡大図
【図5】脱穀部の側面図
【図6】脱穀部の平面図
【図7】遠心式粗選フィルタの部分縦断面を伴う側面図
【符号の説明】
【0023】
9 エンジン吸気管
9a 遠心式粗選フィルタ
11 起立部
12 伸縮管
13 操作レバー
A 濾過式エアクリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過式エアクリーナ(A)を介設したエンジン吸気管(9)の吸気端を起立部(11)として機体上部に起立配置し、その頂部に渦流によって異物を遠心分離する遠心式粗選フィルタ(9a)を取付け、上記エンジン吸気管(9)の起立部(11)には、遠心式粗選フィルタ(9a)を正立姿勢のままその高さ位置を変更可能に支持する伸縮管(12)を備えてなることを特徴とするコンバインのエンジン吸気構造。
【請求項2】
前記遠心式粗選フィルタ(9a)の高さを調節するべく、伸縮管(12)に連結して伸縮調節するための操作レバー(13)を備えることを特徴とする請求項1記載のコンバインのエンジン吸気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−118801(P2009−118801A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297714(P2007−297714)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】