説明

コンバインのカッタユニット

【課題】脱穀後の排わらの切断片を左右方向に効率よく分散させて排出することができるコンバインのカッタユニットを提供する。
【解決手段】脱穀後の排わらを切断する切断部の下方に設けられ、切断部による切断後の排わら切断片を左右方向に拡散させて排出する拡散ラセン36に排わら切断片を上方から供給するように案内する上部ガイド板41と、拡散ラセン36の外周側下部に供給するように案内する下部ガイド板43とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀後の排わらを切断処理するコンバインのカッタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に脱穀部による脱穀後の排わらを切断処理するカッタユニットを備えたコンバインが知られている。上記カッタユニットとして、上記排わらを切断する切断部と、切断部による切断後の排わら切断片を左右方向に拡散させて排出する拡散ラセンとを備え、上記切断部の下方に拡散ラセンを配置し、上方から供給される排わらを切断部によって切断し、切断された排わら切断片を拡散ラセンによって拡散させて下方に排出するものが公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−56865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記カッタユニットには、切断後の排わらの切断片(排わら切断片)のうち拡散ラセンによる拡散搬送から漏れるものを拡散ラセンの外周に向かって案内するガイド(カバー体)が設けられている。しかしガイドにより案内される多くの排わら切断片がガイドと拡散ラセンの外周によって拡散搬送されるため、拡散搬送が円滑に行われない場合があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明のコンバインのカッタユニットは、脱穀後の排わらを切断する切断部と、切断部による切断後の排わら切断片を左右方向に拡散させて排出する拡散ラセン36とを備え、上記切断部の下方に拡散ラセン36を配置し、上方から供給される排わらを切断部によって切断し、切断された排わら切断片を拡散ラセン36によって拡散させて下方に排出するコンバインのカッタユニットにおいて、排わら切断片を拡散ラセン36の上方から供給するように案内する上部ガイド板41と、落下する排わら切断片を受け止め、拡散ラセン36の外周側下部に供給するように案内する下部ガイド板43とを設けたことを第1の特徴としている。
【0005】
第2に下部ガイド板43の外側端に切欠部44を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の構造によると、切断部により切断された排わら切断片は上部ガイド板によって効率よく拡散ラセンに供給され、拡散ラセンへの供給漏れを減少させることができる。一方拡散ラセンに供給される排わら切断片のうち、拡散ラセンよる左右方向への拡散搬送から漏れるものは、下部ガイド板によって受け止められ、下部ガイド板に受け止められながら拡散ラセンの外周によって拡散搬送される。これらにより排わら切断片を効率よくカッタユニットの左右に振り分けて排出することができる。
【0007】
上記のように拡散ラセンにより拡散搬送する排わら切断片が増加するため、下部ガイド板の外側端に切欠部を設けることによって、拡散ラセンのラセン軸端での排わら切断片の詰まりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1はコンバインの平面図である。該コンバインは、走行機体1の前方に前処理部2が設けられている。前処理部2の右後方にはシート3を備えた運転席4が設けられている。運転席4の後方には、脱穀後の穀粒を貯粒する穀粒タンク6が設けられている。穀粒タンク6の左側方には脱穀部7が設けられている。
【0009】
脱穀部7の側方にはフィードチェン8が設けられている。脱穀部7の後方には、穀粒タンク6の後方に至るカッタユニット9が設けられている。脱穀部7の後方からカッタユニット9の上方に至り排わらを搬送する排わらチェン11が設けられている。
【0010】
本コンバインは、従来同様、前処理部2によって穀稈を刈り取り、刈り取った刈取穀稈を後方に搬送してフィードチェン8に受け継がせ、刈取穀稈をフィードチェン8によって脱穀部7に供給して脱穀し、脱穀後の穀稈を排わらとしてフィードチェン8から排わらチェン11に受け継がせ、排わらチェン11によってカッタユニット9に供給して切断処理又はカッタ9に供給することなく排出処理する。
【0011】
図2は上記脱穀部7の側面概略断面図である。脱穀部7には、上方側の扱室12と、下方側の選別室13とが選別網14によって区切られて設けられている。扱室12内には扱胴16が回転駆動自在に設けられている。選別室13には、選別網14を通過して導入される扱降物を揺動選別する揺動選別体17と、選別風を送風する唐箕ファン18と、排塵を機外に排出する排塵ファン19とが設けられている。
【0012】
該脱穀部7は、従来同様フィードチェン8によって扱胴16に供給される穀稈を扱胴16によって脱穀し、選別室13において一番物と二番物とを選別し、一番物を穀粒タンク6に排出する。
【0013】
穀粒タンク6の後方には、カッタ支持フレーム21が、機体フレーム1aに固定されて配置されている。カッタ支持フレーム21の左側方には、走行機体1の後方をカバーする後部カバー22が、機体フレーム1aに固定されて設けられている。
【0014】
一方上記カッタユニット9は、カッタケース23を備えている。カッタケース23の後部はカッタ後部板23Aによって塞がれている。カッタケース23の右端部にはアーム24が突設されている。図1,3に示されるように、アーム24はカッタ支持フレーム21に支点軸26を介して回動自在に取付けられている。これによりカッタユニット9は支点軸26を軸心としてカッタ支持フレーム21に回動自在に支持されている。
【0015】
カッタケース23の上面は、後方が下がるような後方傾斜状態をなす。カッタケース23の上面は、カッタケース23内に排わらを落下させることができるように一部が開口している。カッタケース23の上面には、起伏揺動自在に切換板29が設けられている。該切換板29は後端側を支点として、前端側が上下に揺動する。
【0016】
切換板29は倒伏状態Xにおいてカッタケース23の上面に沿って開口部分を閉じて塞ぐ。切換板29は起立状態Yにおいてカッタケース23の上面の開口部分を開き、開口状態とする。切換板29を起伏状態Yとすることによって、排わらチェン11からカッタケース23の上方に搬送された排わらをカッタケース23内に導入し、後述するように切断処理することができる。
【0017】
切換板29を倒伏状態Xとすることによって、排わらチェン11からカッタケース23の上方に搬送された排わらは、切換板29の上面を滑り、カッタケース23内に導入されることなくカッタ9の後方に落下処理される。
【0018】
図2,図3に示されるように、カッタケース23内には、上方位置に回転駆動自在に切断軸31が軸支されている。該切断軸31の前方には、切断軸31に対して平行に掻込軸32が回転駆動自在に軸支されている。該掻込軸32には、左右方向に複数のディスク状の掻込刃33が所定間隔を介して一体回転するように取付けられている。
【0019】
切断軸31には掻込刃33それぞれと対応して近接し合う複数のディスク状の切断刃34が一体回転するように左右方向に複数取付けられている。排わらは、カッタユニット9に沿って搬送され、カッタユニット9内に導入されると、切断刃34と掻込刃33の回転駆動によって、切断刃34と掻込刃33との間に掻き込まれて切断される。
【0020】
上記切断刃34,掻込刃33等によって脱穀後の排わらを切断する切断部が構成されている。該切断部はカッタユニット9の上方側に配置されている。切断後の排わらの切断片(排わら切断片)は、図4に示されるように、切断刃34及び掻込刃33の下方に落下する。
【0021】
カッタケース23内には、切断軸31の下方位置に、上記排わら切断片を左右方向に拡散させて排出する拡散ラセン36が設けられている。拡散ラセン36は、ラセン軸37と、該ラセン軸37の外周に設けられたラセン板38とからなる。ラセン板38は、未刈地側に配置された小径な小径ラセン板38Aと、既刈地側に配置された大径な大径ラセン板38Bとから構成されている。
【0022】
両ラセン板38A,38Bは、互いに逆方向にラセン軸37に巻き付けられている。拡散ラセン36は、切断部(切断刃34と掻込刃33)による切断後に落下する排わら切断片を受け、左右方向に拡散搬送してカッタユニット9の下方に排出する。小径ラセン板38Aが排わら切断片を未刈地側に、大径ラセン板38Bが排わら切断片を既刈地側に各々拡散搬送する。これにより排わら切断片は一部に集中することなく分散して落下する。
【0023】
以上により脱穀作業完了後には圃場に排わら切断片を概ね均一に分散させることができ、ガスの発生等を防止することができる。
【0024】
ただし拡散ラセン36は、未刈地側のラセン板38Aが既刈地側のラセン板38Bに比較して小径であるため、排わら切断片は未刈地側より既刈地側に寄った状態で分散して排出される。これにより次工程での未刈地側の刈取作業時に、未刈地側への排わら切断片の排出による悪影響が出ることを防止している。
【0025】
なお拡散ラセン36は、既刈地側に切断部より長く形成されている。このため排わら切断片は、より既刈地側に寄った状態で分散排出される。またカッタケース23の既刈地側の下方には、開閉自在にサイドカバー39が設けられている。該サイドカバー39を開くことによって、既刈地側への排わら切断片の排出範囲をさらに拡大することができる。
【0026】
カッタケース23内には、掻込刃33の前方下方位置から、両ラセン板38A,38Bに前方側から近接する位置に至るプレート状の上部ガイド板41が取付けられている。上部ガイド板41は、カッタケース23側に固定されており、後方下がりに傾斜している。上部ガイド板41の小径ラセン板に対応する部分には、小径ラセン板38Aに近接するように延長する延長ガイド板42が一体固定されて設けられている。
【0027】
カッタケース23内には、大径ラセン板38Bにおけるラセン軸37の外側端側部分に相対する位置に、ラセン軸37より上方位置から大径ラセン板38Bの下方前方側に至るプレート状の下部ガイド板43が配置されている。下部ガイド板43は、前述の後部カバー22に固定されており、後方下がりに傾斜している。下部ガイド板43と後部カバー22との間にはステー45が介設されている。
【0028】
図4に示されるように、切断部から落下する排わら切断片は、上部ガイド板41(延長ガイド板42を含む)に案内されて両ラセン板38A,38Bに前方上方から供給される。これにより両ラセン板38A,38Bへの供給から漏れる排わら切断片の量が減少し、より多くの排わら切断片が拡散ラセン36による拡散処理に回る。
【0029】
一方両ラセン板38A,38Bと上部ガイド板41との間の隙間から拡散ラセン36による拡散処理に回らずに漏れる排わら切断片も発生する。特に前述のように拡散ラセン36に供給された排わら切断片は大径ラセン38B側により多くの量が拡散移動させられ、大径ラセン板38Bの外側端側において、上記漏れ排わら切断片の発生が増加する。
【0030】
これに対して、上記大径ラセン板38Bによる拡散搬送から漏れる排わら切断片は、大径ラセン板38Bの前方下方位置において下部ガイド板43によって受け止められる。下部ガイド板43によって受け止められた排わら切断片は、下部ガイド板43に受け止められながら拡散ラセン36(大径ラセン板38B)の外周によって拡散搬送される。
【0031】
上記のように拡散ラセン36による拡散処理に回る排わら切断片が増加し、且つ大径ラセン板38Bによる拡散搬送から漏れる排わら切断片が減少するため、より多くの排わら切断片を拡散処理することができ、拡散処理の効率が向上し、且つ排わら切断片の分散性が向上する。
【0032】
前述のように排わら切断片の漏れが少ないため、大径ラセン板38Bにより拡散搬送される排わら切断片が増大し、大径ラセン板38B側のラセン軸37の端部に送られる排わら切断片が増大する。これに対して上記下部ガイド板43におけるラセン軸37の端部側の外側端は、大径ラセン板38Bの傾斜角方向に沿うように切り取られ、切欠部44が設けられている。
【0033】
ラセン軸37の端部に送られる排わら切断片は、下部ガイド板38Bの外側端に形成された切欠部44を介して落下し、ラセン軸37の端部への排わら切断片の詰まりや巻き付き等の不都合が防止される。なお上部ガイド板41におけるラセン軸37の端部側の外側端にも切欠部46が形成されている。該切欠部46によっても上記同様にラセン軸37の端部に排わら切断片が詰まる等の不都合が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの平面図である。
【図2】脱穀部の側面概略断面図である。
【図3】カッタ後部板を外した状態のコンバインの要部背断面図である。
【図4】排わらの切断状態を示すカッタユニットの側面概略イメージ図である。
【符号の説明】
【0035】
36 拡散ラセン
41 上部ガイド板
43 下部ガイド板
44 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀後の排わらを切断する切断部と、切断部による切断後の排わら切断片を左右方向に拡散させて排出する拡散ラセン(36)とを備え、上記切断部の下方に拡散ラセン(36)を配置し、上方から供給される排わらを切断部によって切断し、切断された排わら切断片を拡散ラセン(36)によって拡散させて下方に排出するコンバインのカッタユニットにおいて、排わら切断片を拡散ラセン(36)の上方から供給するように案内する上部ガイド板(41)と、落下する排わら切断片を受け止め、拡散ラセン(36)の外周側下部に供給するように案内する下部ガイド板(43)とを設けたコンバインのカッタユニット。
【請求項2】
下部ガイド板(43)の外側端に切欠部(44)を設けた請求項1のコンバインのカッタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−289025(P2007−289025A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118183(P2006−118183)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】