説明

コンバインのドロッパ装置

【課題】排藁を受止めて落下排出させる受け体における排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換制御を正確に行うこと可能で、排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換時間を短くすることが容易なコンバインのドロッパ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、受け体13を上下揺動可能に支持し、受け体13を上方位置に揺動させて落下してくる排藁を受止める受止め姿勢への姿勢切換を行うとともに受け体13を下方位置に揺動させて受止めた排藁を落下排出させる排出姿勢への姿勢切換を行う作用アーム26を揺動可能に設け、作用アーム26を揺動駆動させることにより受け体13を上方揺動させて排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換を強制的に行う駆動機構17を設けたコンバインのドロッパ装置において、駆動機構17がカム体24を備え、カム体24を回転駆動させることにより、該カム体24が作用アーム26側に当接して受け体13が上方揺動され、受け体13の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が強制的に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインのドロッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受け体を上下揺動可能に支持し、受け体を上方位置に揺動させて落下してくる排藁を受止める受止め姿勢への姿勢切換を行うとともに受け体を下方位置に揺動させて受止めた排藁を落下排出させる排出姿勢への姿勢切換を行う作用アームを揺動可能に設け、所定量に集束された排藁を所定間隔で圃場等に落下排出させるコンバインのドロッパ装置が従来公知である。
【0003】
そして、上記コンバインのドロッパ装置を改良したものとして、作用アームを揺動駆動させることにより受け体を上方揺動させて排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換を強制的に行う駆動機構を設け、排藁の落下排出を所定状態に制御する特許文献1,2に示すコンバインのドロッパ装置が公知になっている。
【特許文献1】特開平10−295161号公報
【特許文献2】特開2003−250328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のコンバインのドロッパ装置は、駆動機構であるクランク機構によって受け体を上下揺動させるため、受け体の受止め姿勢から排出姿勢への姿勢切換時間に対して、排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換時間を極端に短くすることが難しい。このため、例えば6条刈りコンバインを高速走行させる等、多量の排藁が連続して受け体側に供給される場合には、受け体の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換中、排藁が十分に集束されないまま乱れた状態で落下排出されることがあり、課題が残る。
【0005】
また、特許文献2のコンバインのドロッパ装置は、駆動機構であるカムによって受け体の受止め姿勢から排出姿勢への姿勢切換が行われる一方で、排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換はバネ等の弾性部材によって行われるため、排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換制御を正確に行うことが困難であるという課題がある。
本発明は上記課題を解決し、排藁を受止めて落下排出させる受け体における排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換制御を正確に行うこと可能で、排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換時間を短くすることが容易なコンバインのドロッパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明のコンバインのドロッパ装置は、第1に、受け体13を上下揺動可能に支持し、受け体13を上方位置に揺動させて落下してくる排藁を受止める受止め姿勢への姿勢切換を行うとともに受け体13を下方位置に揺動させて受止めた排藁を落下排出させる排出姿勢への姿勢切換を行う作用アーム26を揺動可能に設け、作用アーム26を揺動駆動させることにより受け体13を上方揺動させて排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換を強制的に行う駆動機構17を設けたコンバインのドロッパ装置において、駆動機構17がカム体24を備え、カム体24を回転駆動させることにより、該カム体24が作用アーム26側に当接して受け体13が上方揺動され、受け体13の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が強制的に行われることを特徴としている。
【0007】
第2に、カム体24の半周期以内に排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が行われるようにカム体24を成形したことを特徴としている。
【0008】
第3に、受け体13を受止め姿勢で保持させるために作用アーム26側と当接する当接縁部24aをカム体24に形成し、該当接縁部24aの長さを変更調節する調節機構をカム体24に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成される本発明のコンバインのドロッパ装置によれば、カム体を用いて受け体の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換を行うため、クランク機構を用いて受け体を強制的に下方揺動させるものと比較して、受け体の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換時間を、カム体の作用アームとの当接形状を変更することにより、容易に短くすることが可能になるという効果がある他、弾性部材の付勢力により排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換を行う場合と比較して、上記姿勢切換精度が向上するという効果がある。
【0010】
また、カム体の半周期以内に排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が行われるようにカム体を成形することにより、受け体の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換がより迅速に行われるという効果がある。
【0011】
さらに、受け体を受止め姿勢で保持させるために作用アームと当接する当接縁部をカム体に形成し、該当接縁部の長さを変更調節する調節機構をカム体に設けることにより、カム体の回転周期における受け体の下方揺動タイミングが調整可能になり、利便性や汎用性が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用したコンバインの後部の構成を示す要部側面図である。本コンバインの脱穀装置1の後方には、排藁処理装置2が設置されている。脱穀装置1で脱穀処理された穀稈は排藁になる。この排藁は、脱穀装置1の排藁搬送体3によって排藁処理装置2まで後方搬送される。
【0013】
図2乃至5は、排藁処理装置2の斜視図、背面図、左側面図及び右側面図である。排藁処理装置2は、全体の外形を形成するとともに各部を支持する枠体4と、排藁を切断処理するカッタ部6と、枠体4後面側に設置されて排藁を集束させて落下排出させるドロッパ装置7とを備えている。
【0014】
カッタ部6は、後端部を支点に上下揺動自在に支持された切換板(切換体)8を備えている。切換板8を上方位置に揺動させた排藁導入姿勢に切換えることにより、カッタ部6内の上方が開放され、搬送されてくる排藁がカッタ部6内に導入される状態になる。カッタ部6内に導入された排藁は、カッタ部6内に回転駆動可能に支持された複数の円盤状のカッタによって、切断処理される。
【0015】
一方、切換板8を下方位置に揺動させた排藁排出姿勢に切換えることにより、カッタ部6上方が閉塞され且つ切換板8上面に後方に向かって下降傾斜する傾斜面に形成され、排藁が上記傾斜面上を滑り落ちて、枠体4に形成される排出孔4aから後方に排出される。ちなみに、切換板8上面を滑り落ちる排藁は、横方向を向いた姿勢で排出孔4aから排出される。
【0016】
ドロッパ装置7は、枠体4上面から下方に向かって吊下げ支持される左右一対のガイド杆9,9と、背面視枠体4後面の排出孔4a下方箇所に固設されて枠体4後面から後方に延設されるプレート状の左右一対のドロッパフレーム(ブラケット)11L,11Rと、左右のドロッパフレーム11L,11R間に前後回動自在に支持される左右方向のドロッパ軸(駆動軸)12と、ドロッパ軸12に取付固定されドロッパ軸12周面から外方に直線状に突出する受け杆(受け体)13と、ドロッパ軸12の左右方向中央付部を補強支持する補助ブラケット14と、左右のドロッパフレーム11L,11Rの一方(図示する例では右側のドロッパフレーム11R)側に配置される付勢機構16と、左右のドロッパフレーム11L,11Rの他方(図示する例では左側のドロッパフレーム11L)側に配置されてドロッパ軸12を前後回動駆動させる駆動機構17とを備えている。
【0017】
上記ガイド杆9は、前後方向の基端部に対して中途部及び先端部が下方に屈曲形成され、基端部が取付ブラケット18を介して枠体4の上面にボルト固定され、先端部が受け杆13の先端部に至る位置まで延設されている。左右のガイド杆9,9は、枠体4の右側半部に配置され、排出孔4aから排出される排藁(排藁の株元側半部)を受け杆13側に案内するように構成されている。
【0018】
左右のドロッパフレーム11L,11Rは、枠体4後面の左右の端部にそれぞれ強固に取付固定されており、ドロッパ軸12の両端部がドロッパフレーム11から外側方にそれぞれ突出した状態でドロッパ軸12を前後回動自在に支持している。
【0019】
上記受け杆13は複数が左右方向の並列配置され、ドロッパ軸12の前後回動に伴って全ての受け杆13が同一姿勢でドロッパ軸12と一体的に上下揺動作動する。この複数の受け杆13は、ドロッパ軸12における上記補助ブラケット14と右側ドロッパフレーム11Rとの間の部分に等間隔で設置されている。
【0020】
そして、受け杆13は、ドロッパ軸12の前後回動によって、最上方位置乃至上方位置に揺動されることにより先端に向かって若干上方傾斜した状態になってガイド杆9によって落下案内されてくる排藁を受止める受止め姿勢と、最下方位置乃至下方位置に揺動されることにより先端に向かって下方傾斜した状態になってガイド杆13によって落下案内されてくる排藁を下方に落下排出させる排出姿勢と、の姿勢切換が可能なように構成されている。
【0021】
上記付勢機構16は、枠体4に対して前後揺動自在に支持された調整アーム19と、ドロッパ軸12と一体回動するプレート状の作動体21と、調整アーム19の自由端部と作動体21とに架設されて受け杆13を受止め姿勢側に付勢するバネ(弾性部材)22と、を右側ドロッパフレーム11Rの外側面(右側面)側に備えている。
【0022】
調整アーム19は前後揺動位置を調整して枠体4に対して固定することが可能に構成されており、作動体21と調整アーム19との距離を変更することにより、受け杆13に掛かる受止め姿勢側へのバネ22の付勢力を適宜変更調整することが可能になる。
【0023】
図6は、駆動機構の構成を示す要部側面図である。
上記駆動機構17は、左側のドロッパフレーム11L内側面(右側面)側に取付固定されるモータ(動力発生装置)23と、外側面(左側面)側に前後回転自在に支持されてドロッパフレーム11Lに沿うカム部材(カム体,カム)24と、外側面側に配置されドロッパ軸12の前後回動に伴って一体的に上下揺動して上記カム部材24と当接可能な側面視方形状の作用アーム26と、モータ23の動力をカム部材24に変速伝動させてカム部材24を回転駆動させるギヤボックス(伝動機構)27と、を備えている。
【0024】
カム部材24は、略同一形状に成形された一対の扇状プレート28,28を中心が一致するように一部又は全部を重ね合わせることにより構成されており、扇状プレート28の中心を回動支点に回転自在にドロッパフレーム11L側に支持されている。くわえて、カム部材24は、上記2つの扇状プレート28,28の円弧部分同士が接続されることにより連続した単一の円弧状縁部(当接縁部)24aを形成しており、当接縁部24aの両端と、扇プレート28,28の対応する半径部分とはそれぞれカーブ縁部(下降縁部,上昇縁部)24b,24cによって滑らかに連接されている。
【0025】
そして、一方の扇状プレート28に対して他方の扇状プレート28を、扇状プレート28の中心を支点に回動操作させることにより、カム部材24の当接縁部24aの長さを調節することができる。ちなみに、一方の扇状プレート28には挿入孔(ボルト孔)28aが、他方の扇状プレート28には円弧状の長孔28bがそれぞれ穿設されており、一方の扇状プレート28に対して他方の扇状プレート28が回動する範囲内では常に長孔28bに挿入孔28aが臨んだ状態になるように挿入孔28a及び長孔28bの配置及び形状が調整されている。
【0026】
上記構成の挿入孔28a及び長孔28bにボルト29を挿通させてボルト締めすることにより、一対の扇状プレート28,28が締着固定されて上記当接縁部24aの長さが固定される状態になる。すなわち、カム部材24には、一対の扇状プレート28,28、挿入孔28a、ボルト孔28b及びボルト29等により、当接縁部24aの長さを変更調節する調節機構が構成されている。
【0027】
作用アーム26は、ドロッパフレーム11Lに沿って配置され、受け杆13の最上方位置への揺動に伴って最上昇位置に揺動して先端に向かって若干下降傾斜した状態になるとともに、受け杆13の最下方位置への揺動に伴って最下降位置に揺動して先端に向かって下方に急傾斜した状態になるように構成されている。
【0028】
なお、上記作用アーム26は、受け杆13がバネ22の付勢力によって最上昇位置に揺動されている際には、カム部材24の姿勢に関係なくカム部材24と当接しない状態になる一方で、バネ22の付勢力に抗して受け杆13及び作用アーム26が受止めた排藁の自重により下方揺動作動している際には、カム部材24の姿勢によってカム部材24と当接するように構成されている。
【0029】
図7(A)はカム部材により受け杆の受止め姿勢が保持されている状態を示す要部側面図であり、(B)はカム部材と作動アームとの当接が解除されて受け杆が排出姿勢に姿勢切換された状態を示す要部側面図であり、(C)カム部材により受け杆が排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が始められる状態を示す要部側面図である。
【0030】
モータ23の動力がギヤボックス27を介してカム部材24に伝動され、カム部材24が正転方向(図7における時計回り)に回転駆動されるとともに、作用アーム26が受止めた排藁によって前述したように下方揺動作動している場合、カム部材24の当接縁部24aに作用アーム26先端部が当接している間は、作用アーム26が上方位置に揺動された状態になり、受け杆13の受止め姿勢が保持される。
【0031】
この状態から、さらにカム部材24を正転させると、カム部材24の作用アーム26との当接箇所が上記2つのカーブ縁部の一方である下降縁部24bまで移動した状態になる(図7(A)参照)。この状態から、さらにカム部材24を正転させると、カム部材24と作用アーム26との当接が解除され、作用アーム26が下方位置(最下方位置)に揺動し、受け杆13が受止め姿勢から排出姿勢に切換えられる(同図(B)参照)。
【0032】
この状態から、さらにカム部材24を正転させると、カム部材24における上記2つのカーブ縁部の他方である上昇縁部24c始端が作用アーム26先端部に当接し、作用アーム26及び受け杆13の下方位置(最下方位置)からの上方揺動が開始される。そして、さらにカム部材24が正転側に回転駆動されると、作用アーム26とカム部材24との当接箇所が当接縁部24aに移動する短い時間の間に、受け杆13が下方位置から上方位置に揺動されて排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が完了する。
【0033】
作用アーム26とカム部材24との当接箇所が上昇縁部24b始端から当接縁部24aに移動する時間は、カム部材24の半周期よりも遥かに短い時間であり、受け杆13の排
出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換は、瞬時且つ強制的に行われる。このため、受け杆13の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換中、排藁を未集束のまま落下排出させるようなことが効率的に防止される。
【0034】
なお、作用アーム26が先端に回転自在な当接ローラ等を備え、この当接ローラとカム部材24とが当接するようにドロッパ装置7を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用したコンバインの後部の構成を示す要部側面図である。
【図2】排藁処理装置2の斜視図である。
【図3】排藁処理装置2の背面図である。
【図4】排藁処理装置2の左側面図である。
【図5】排藁処理装置2の右側面図である。
【図6】駆動機構の構成を示す要部側面図である。
【図7】(A)はカム部材により受け杆の受止め姿勢が保持されている状態を示す要部側面図であり、(B)はカム部材と作動アームとの当接が解除されて受け杆が排出姿勢に姿勢切換された状態を示す要部側面図であり、(C)カム部材により受け杆が排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が始められる状態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0036】
13 受け杆(受け体)
17 駆動機構
24 カム部材(カム体,カム)
24a 円弧状縁部(当接縁部)
26 作用アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け体(13)を上下揺動可能に支持し、受け体(13)を上方位置に揺動させて落下してくる排藁を受止める受止め姿勢への姿勢切換を行うとともに受け体(13)を下方位置に揺動させて受止めた排藁を落下排出させる排出姿勢への姿勢切換を行う作用アーム(26)を揺動可能に設け、作用アーム(26)を揺動駆動させることにより受け体(13)を上方揺動させて排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換を強制的に行う駆動機構(17)を設けたコンバインのドロッパ装置において、駆動機構(17)がカム体(24)を備え、カム体(24)を回転駆動させることにより、該カム体(24)が作用アーム(26)側に当接して受け体(13)が上方揺動され、受け体(13)の排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が強制的に行われるコンバインのドロッパ装置。
【請求項2】
カム体(24)の半周期以内に排出姿勢から受止め姿勢への姿勢切換が行われるようにカム体(24)を成形した請求項1のコンバインのドロッパ装置。
【請求項3】
受け体(13)を受止め姿勢で保持させるために作用アーム(26)側と当接する当接縁部(24a)をカム体(24)に形成し、該当接縁部(24a)の長さを変更調節する調節機構をカム体(24)に設けた請求項1又は2のコンバインのドロッパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22260(P2010−22260A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186495(P2008−186495)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】