説明

コンバインの二番還元縦コンベア

【課題】作物が濡れた状態で刈取作業を行う場合等には、二番還元縦コンベアおよび二番処理装置の内部に、二番物が頻繁に詰まる可能性があり、二番還元縦コンベアや二番処理装置の構造としては、内部点検・清掃や部品の交換作業等が容易に可能な構造とすることが望まれてため、二番還元縦コンベアおよび二番処理装置の内部点検や清掃等のメンテナンス作業を容易に可能とする、二番還元縦コンベアおよび二番処理装置の構造に関する技術を提供することを課題する。
【解決手段】選別後の二番物を揺動選別装置42の前部に還元するためのコンバイン60の二番還元縦コンベア48において、二番還元縦コンベア48を、二番コンベア47の端部を中心として回動可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの二番還元縦コンベアの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来コンバインにおいて、選別部で選別した後の二番物を、二番コンベア、二番還元縦コンベアを介して二番処理装置に送り、該二番処理装置により枝梗等を除去した後に、再び選別部へ戻す二番還元サイクルが採用されている。この二番還元サイクルは、二番物に付着した枝梗を適切に除去し、再度選別することにより、品質のよい籾を回収することを目的とするものである。
このような二番還元サイクルにおいては、二番物の滞留を防止する技術として、二番処理装置の処理胴の回転数または制御弁の角度を制御することにより、二番物の移送速度を二番物の量に応じて適切に制御するようにして、二番物の滞留防止および回収する籾の品質改善を可能とする技術が公開され、公知となっている(特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2003−92919号公報
【特許文献2】特開2003−250329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、作物が濡れた状態で刈取作業を行う場合等には、二番還元縦コンベアおよび二番処理装置の内部に、二番物が頻繁に詰まる可能性があり、二番還元縦コンベアや二番処理装置の構造としては、内部点検・清掃や部品の交換作業等が容易に可能な構造とすることが望まれている。
そこで本発明では、このような現状を鑑み、二番還元縦コンベアおよび二番処理装置の内部点検や清掃等のメンテナンス作業を容易に可能とする、二番還元縦コンベアおよび二番処理装置の構造に関する技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、選別後の二番物を揺動選別装置の前部に還元するためのコンバインの二番還元縦コンベアにおいて、該二番還元縦コンベアを、二番コンベアの端部を中心として回動可能に構成したこと、を特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、前記二番還元縦コンベアの先端を、二番処理装置の入口部と連結し、該二番還元縦コンベアの先端と、前記二番処理装置の入口部を上下方向に分離可能に構成したこと、を特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記二番還元縦コンベアの先端に、前記二番処理装置の上部ケースを一体的に構成したこと、を特徴としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記二番コンベアと前記二番還元縦コンベアの受継部の二番受継ケースを、前記二番コンベアのコンベア軸を軸心として回動可能に構成したこと、を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、二番還元縦コンベアのメンテナンスを容易にできる。また、二番還元コンベアの交換が容易にできる。
【0011】
請求項2においては、二番処理装置の上方が開放できるようになり、メンテナンスが容易にできる。
【0012】
請求項3においては、二番処理装置のメンテナンスが容易にできる。部品点数を削減して、組立が容易にできる。
【0013】
請求項4においては、受継ケースの固定ボルトを外すことにより、二番還元縦コンベアの回動が容易にでき、二番コンベアのコンベア軸を二番還元縦コンベアの回動軸と駆動軸とに兼用でき、部品点数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明を適用するコンバイン60の全体構成を、図1または図2を用いて説明をする。
尚、説明の便宜上、図1に示す矢印A(機体の前進側)の方向を前方とし、前進方向に向かって右側を右方としている。
図1または図2に示す如く、本実施例におけるコンバイン60では、機体フレーム1を支持したトラックフレーム2にクローラ式走行装置3を装設し、該機体フレーム1上方に脱穀装置20を配設している。該脱穀装置20では、フィードチェーン7を機体進行方向左側に張架し、扱胴24及び送塵口処理胴25を内蔵している。そして、機体前部に油圧シリンダ19によって刈取フレーム12を介して昇降できるように構成された刈取装置10では、前端に分草板11を突出して穀稈を分草し、その後部に引起しケース13を立設して該引起しケース13より突出したタイン14の回転により穀稈を引き起こして、分草板11後部に配設した刈刃15にて株元を刈り取り、刈り取られた穀稈を、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置16等の穀稈搬送機構17にて後部へ搬送し、フィードチェーン7に受け継ぐようにしている。前記脱穀装置20後方に位置する排藁処理部18には、上部に排藁チェン31が、下部に排藁カッター装置32が配置される。また、選別後の精粒は後述する一番コンベア46より揚穀コンベア44を介してグレンタンク4に搬送し、排出オーガ5によって前記グレンタンク4内の穀粒を機外に排出できるようにしている。そして、グレンタンク4の前方には運転部6を設けている。
以上が、コンバイン60の全体構成についての説明である。
【0015】
次に、脱穀装置20および選別装置30について、図2を用いて説明をする。
図2に示す如く、脱穀装置20に形成された扱室21に機体の前後方向に軸架する扱胴24を内設させ、扱口23より扱室21に穀稈を挿入するように構成している。前記扱室21下方にはクリンプ網22を張架し、また、該クリンプ網22の下方には、揺動選別装置42をその前端を臨ませて前後方向揺動自在に機枠26に支持させている。前記クリンプ網22の下方に揺動選別装置42の前・後フィード板35・36を上下二段に配設し、フルイ線33を前フィード板35の後端側に配している。また、チャフシーブ38を後フィード板36後端後方に連設し、該チャフシーブ38の下方にグレンシーブ37を配設している。また、チャフシーブ38後部と揺動本体41後部との間には、固定チャフ部39が配設されている。また、後面視において、扱胴24の右側には、送塵口処理胴25を並設し、側面視において、その前部を扱胴24の後部にラップさせ、扱胴24で処理しきれなかった穂切粒・枝梗付着等を処理し、送塵口処理胴25の下方に配するクリンプ網25aより脱粒された穀粒を固定チャフ部39上に落下させるようにしている。また、揺動本体41後部下面は、クランク軸等の揺動駆動機構34によって揺動駆動可能に連結されている。
【0016】
また、両フィード板35・36の上下間に選別風を送給するプレファンである送塵ファン43と、チャフシーブ38とグレンシーブ37間及びグレンシーブ37下方に選別風を送給するメインの送風装置である唐箕ファン45からの送風により、クリンプ網22・25aを漏下した穀粒の拡散を行うように構成している。そして、「穀粒」と「穀粒藁」とが比重選別と風選別により「一番物」「二番物」「藁屑」等に選別される。
【0017】
前記グレンシーブ37下方に横設される一番コンベア46は、揚穀コンベア44に連通して前記グレンタンク4に穀粒を搬送し貯溜する構成としている。また、一番コンベア46の後方には、二番コンベア47が横設され、該二番コンベア47に回収される二番物を、二番還元縦コンベア48に搬送する。そして、該二番還元縦コンベア48により、二番物は、該二番還元縦コンベア48の前方側端部に連結した二番処理装置49まで搬送され、該二番処理装置49内の二番処理胴により枝梗を除去された後、揺動本体41の選別前部に再投入される。
【0018】
また、前記揺動選別装置42の後端上方には、吸引ファン40が配設され、該吸引ファン40により、藁屑を吸引し、機体後部より排出するようにしている。
【0019】
このような構成において、前記フィードチェーン7により挟持された穀稈は、後方へ搬送されながら前記脱穀装置20の扱室21に備えられた扱胴24の回転によって脱粒され、排藁等は後方の排藁カッター装置32に送られて切断後に後方より圃場に放出される。一方、クリンプ網22を漏下した穀粒・藁屑等は、揺動選別装置42上に落ち、そこで揺動選別されながら後方へ送られる。そして、この穀粒・藁屑等は、前記チャフシーブ38やグレンシーブ37等を通過して流穀板等にガイドされながら一番樋上に落下し、その落下途中において、送塵ファン43及び唐箕ファン45から供給された選別風によって風選別が施される。
【0020】
つまり、グレンシーブ37上に漏下した穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑等のうち、穀粒、未熟穀粒、細かい藁屑等はグレンシーブ37を通過して下方に落下する。このとき、重量が大きい穀粒(一番物)は一番回収部46a(前フィード板35の後方に設けられた選別装置30底面の窪みであり、一番コンベア46が収容されている)に回収され、一番コンベア46から揚穀コンベア44を経て、グレンタンク4に搬送される。
【0021】
一方、重量が小さい未熟穀粒や細かい藁屑の一部や穂切り粒や穀粒等が混じった未処理粒(二番物等)は、唐箕ファン45からの選別風により後方に吹き飛ばされ、二番回収部47a(一番回収部46aの後方に設けられた選別装置30底面の窪みであり、二番コンベア47が収容されている)に回収され、二番コンベア47から二番還元縦コンベア48を経て、二番処理装置49に搬送され、該二番処理装置49により枝梗が除去された後、前フィード板35上に還元される。
以上が、脱穀装置20および選別装置30についての説明である。
【0022】
次に、本発明の要旨である、二番還元装置50について、図2または図3を用いて詳細に説明をする。
図2に示す如く、二番還元装置50は、二番コンベア47、二番還元縦コンベア48および二番処理装置49等により構成されている。
前述した通り、脱穀後の二番物は二番還元装置50により前フィード板35上に還元される。つまり、該二番還元装置50は二番コンベア47の終端に二番還元縦コンベア48を連通し、該二番還元縦コンベア48の終端に二番処理装置49の始端を連通し、該二番処理装置49の終端より揺動選別装置42へ還元する構成としている。
【0023】
さらに詳述すると、図2に示す如く、前記クリンプ網22から漏下する穀粒や藁屑等のうち二番物は、二番コンベア47上に集められる。二番還元縦コンベア48は搬送手段をスクリューコンベアで構成し、その始端部が前記二番コンベア47の左右一側に連通され、二番還元縦コンベア48の終端は前上方へ延設されて、二番処理装置49に接続される。該二番処理装置49は揺動選別装置42の前上部、つまり、前フィード板35の上部に配設され、始端部で二番還元縦コンベア48の終端(前端上部)と連通され、二番処理装置49の左端部が扱室21の右側面前下部に開口した投入口と連通して二番物を還元するようにしている。
以上が、二番還元装置50についての説明である。
【0024】
次に、二番還元装置50のメンテナンス等における回動時の態様について、図3乃至図5を用いて説明をする。
図3に示す如く、二番還元縦コンベア48は、本体ケース48a、スクリュー48b、受継ケース48c、排出部48d等で構成され、受継ケース48c部が機枠26に固定され、また排出部48dが、後述する二番処理装置49の上部ケース49aと固定して支持するように構成している。また、スクリュー48bの最下部(もしくは最頂部)に回転が伝達されることにより、べベルギア(図示せず)等を介してスクリューコンベアで構成されるスクリュー48bに回転が伝達され、二番物を斜め前上方に搬送するように構成している。
【0025】
また、図3乃至図5に示す如く、二番還元縦コンベア48は、二番コンベア47のコンベア軸47bの端部により軸支される構成としており、これにより、二番還元縦コンベア48は、コンベア軸47bを軸心として上下回動可能に構成している。
つまり、機枠26と受継ケース48cの外周縁部に設ける固定部のボルト51a・51b・51c、および、排出部48dの下部に固定した二番処理装置49の上部ケース49aと下部ケース49bとの固定部のボルト52a・52bを外すことにより、コンベア軸47bを軸心として、二番還元縦コンベア48を容易に回動可能な状態にすることができる。
つまり、受継ケース48cの外周縁部には複数のボルト孔がコンベア軸47bと平行な方向に貫通するように開口され、機枠26側に設けたネジ孔にボルト51a・51b・51cを螺装固定できるようにしている。
但し、前記受継ケース48cの外周縁部に設けるボルト孔をコンベア軸47bを中心とした長孔に構成することにより、固定部のボルト51a・51b・51cを外すことなく、緩めるだけで二番還元縦コンベア48を上方に回動することが可能となり、二番還元縦コンベア48が側方へ抜けることなく、ボルトを紛失することも防止できる。
この時、図5に示す如く、全てのボルト孔(本実施例では3箇所)を長孔に構成してもよいし、また、ボルト孔の内1箇所を長穴とする構成であってもよい。
また、長孔により上昇回動時に他の部材と干渉しない範囲で回動できるように角度を制限することもでき、ボルトを締め付けることで、上昇回動位置に二番還元縦コンベア48を固定することもできる。
尚、前記固定部におけるボルト・ナットの数は限定するものではなく、また、ボルト・ナット以外のワンタッチ金具等を用いて、取り外し作業をさらに容易にする構成とすることも可能である。
【0026】
また、図3乃至図4に示す如く、二番処理装置49は上部ケース49aや下部ケース49bや二番処理胴(図示せず)等で構成され、筒状の二番処理装置49のケースを軸心(コンベア軸47bと二番処理胴の軸)と平行な平面で、略上下に二分割可能な構造としている。そして、上部ケース49aは二番還元縦コンベア48の排出部48dの下部に固設し、下部ケース49bは、機枠26に固設している。
つまり、二番処理装置49のケースは機枠26を左右方向に貫通して配設され、機枠26外側に位置する二番還元物を投入する入口部分となるケースを上部ケース49aとして下部ケース49bより上下に分離可能に構成している。よって、下部ケース49bを機枠26側に残したまま、上部ケース49aのみを取り外すことが可能である。
このように構成することで、通常作業時においては、各ケース49a・49bは互いにボルト52a・52bで結合され一体化しているが、メンテナンス時においては、この結合用のボルト52a・52bを取り外すことにより、下部ケース49bを機枠26側に残したままで、上部ケース49aと二番還元縦コンベア48を上方に回動し、上部ケース49a側の二番処理装置49上部を開放することができるように構成している。このとき、二番処理装置49の上面側内部が、略全長に渉って露出されるようになり、二番処理装置49内部のメンテナンス作業が容易にできるように改善される。
【0027】
また、さらに二番還元縦コンベア48を鉛直状態となるように回動することもできるため、スクリュー48bを引き抜くことが容易となり、スクリュー48bの交換作業を容易に行うことができる。
以上が、二番還元装置50回動時の態様についての説明である。
【0028】
以上の説明に示す如く、選別後の二番物を揺動選別装置42の前部に還元するためのコンバイン60の二番還元縦コンベア48において、二番還元縦コンベア48を、二番コンベア47の端部を中心として回動可能に構成している。
これにより、二番還元縦コンベア48のメンテナンスを容易にできるのである。また、二番還元コンベアの交換が容易にできるのである。
【0029】
また、二番還元縦コンベア48の先端を、二番処理装置49の入口部(上部ケース49a)と連結し、二番還元縦コンベア48の先端(即ち、上部ケース49a)と、下部ケース49bを上下方向に分離可能に構成している。
これにより、二番処理装置49の上方が開放できるようになり、メンテナンスが容易にできるのである。
【0030】
また、二番還元縦コンベア48の先端に、二番処理装置49の上部ケース49aを一体的に構成している。
これにより、二番処理装置49のメンテナンスが容易にできるのである。また、部品点数を削減して、組立が容易にできるのである。
【0031】
また、二番コンベア47と二番還元縦コンベア48の受継部の受継ケース48cを、二番コンベア47のコンベア軸47bを軸心として回動可能に構成している。
これにより、受継ケース48cの固定ボルトを外すことにより、二番還元縦コンベア48の回動が容易にでき、二番コンベア47のコンベア軸47bを二番還元縦コンベア48の回動軸と駆動軸とに兼用でき、部品点数を削減できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した右側面図。
【図2】脱穀装置および選別装置の詳細を示した右側面図。
【図3】二番還元装置回動時の全体的な態様をしめす側面図。
【図4】二番還元装置回動時の二番処理装置部分の詳細な態様を示す側面図。
【図5】同じく受継ケース部分の詳細な態様を示す側面図。
【符号の説明】
【0033】
42 揺動選別装置
47 二番コンベア
48 二番還元縦コンベア
60 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別後の二番物を揺動選別装置の前部に還元するためのコンバインの二番還元縦コンベアにおいて、
該二番還元縦コンベアを、
二番コンベアの端部を中心として回動可能に構成したこと、
を特徴とするコンバインの二番還元縦コンベア。
【請求項2】
前記二番還元縦コンベアの先端を、
二番処理装置の入口部と連結し、
該二番還元縦コンベアの先端と、
前記二番処理装置の入口部を上下方向に分離可能に構成したこと、
を特徴とする請求項1記載のコンバインの二番還元縦コンベア。
【請求項3】
前記二番還元縦コンベアの先端に、
前記二番処理装置の上部ケースを一体的に構成したこと、
を特徴とする請求項2記載のコンバインの二番還元縦コンベア。
【請求項4】
前記二番コンベアと前記二番還元縦コンベアの受継部の二番受継ケースを、
前記二番コンベアのコンベア軸を軸心として回動可能に構成したこと、
を特徴とする請求項1記載のコンバインの二番還元縦コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−244234(P2007−244234A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69155(P2006−69155)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】