説明

コンバインの刈取装置

【課題】注油ポンプを一旦駆動すると注油ノズルから吐出する潤滑油の吐出圧が一定であるため、潤滑油が刈刃装置の一部分のみに集中することになり、刈刃装置全体に潤滑油が行きわたりにくいと共に、注油時間が長くなることで、潤滑油が集中する部分においては刈刃装置の下に余剰な潤滑油が垂れ落ちる結果になっていた。
【解決手段】注油装置(40)を制御する制御部(61)を設け、制御部(61)は注油装置(40)への注油指令により注油ノズル(49)から吐出する潤滑油の吐出圧を自動的に強弱制御することで、刈刃装置(32)全体に満遍なく注油できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注油装置を備えたコンバインの刈取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンバインの刈取装置としては、刈刃装置を刈幅方向にスライド駆動させて構成し、刈刃装置に潤滑油を供給するための注油装置を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−5710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される注油装置は、注油ポンプを一旦駆動すると注油ノズルから吐出する潤滑油の吐出圧が一定であるため、潤滑油が刈刃装置の一部分のみに集中することになり、刈刃装置全体に潤滑油が行きわたりにくいと共に、注油時間が長くなることで、潤滑油が集中する部分においては刈刃装置の下に余剰な潤滑油が垂れ落ちる結果になっていた。また、刈刃装置全体に潤滑油を吐出するために、注油ノズルの吐出口を小さくして潤滑油を霧状にすることも考えられるが、注油ノズルの配置位置の関係上、吐出口が詰まりやすくなる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、圃場に植立する茎稈を切断する刈刃装置32を刈幅方向にスライド駆動させて構成する刈取装置13を設け、刈刃装置32に潤滑油を供給するための注油装置40を注油タンク45、注油ポンプ46及び注油ノズル49で構成し、注油ポンプ46の駆動により刈取装置13の刈幅方向へ潤滑油を吐出するように注油ノズル49を配置したコンバインの刈取装置において、注油装置40を制御する制御部61を設け、制御部61は注油装置40への注油指令により注油ノズル49から吐出する潤滑油の吐出圧を自動的に強弱制御することで、刈刃装置32全体に満遍なく注油できるように構成したことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、制御部61は、注油ポンプ46の駆動をインチング制御することにより、注油ノズル49から吐出する潤滑油の吐出圧を強弱制御することを特徴とする。
【0006】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によると、注油装置への注油指令により注油ノズルから吐出する潤滑油の吐出圧を自動的に強弱制御することで、無駄な潤滑油を使うことなく確実に刈刃装置全体に満遍なく注油でき、注油時間の短縮に繋がる。
また、請求項2に係る発明によると、既存の注油装置を使用して安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】前処理部の左側面図。
【図3】刈取装置の正面図。
【図4】刈取装置の平面図。
【図5】注油装置の注油経路図。
【図6】注油操作部の平面図。
【図7】制御部の制御ブロック図。
【図8】注油時の制御を説明するタイミングチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて本発明の実施形態に係るコンバインについて説明をする。なお、説明中の方向は作業者が機体に着座した状態を基準として考えるものとする。
【0010】
[コンバインの概要]
図1はコンバインの右側面図であり、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2に支持された機体3を有していると共に、機体3の前方には前処理部5が昇降自在に設けられている。前処理部5の側方には作業者が運転操作を行う運転部6が設けられている。運転部6の後方には穀粒を収容するグレンタンク8を備え、グレンタンク8の左側方には前処理部5から搬送されてきた穀稈を脱穀および選別する脱穀部を備えている。
【0011】
[前処理部の概要]
図2は前処理部の左側面図であり、前処理部5はデバイダフレーム10に支持した未刈穀稈を分草するデバイダ11と、穀稈を引き起こす引起装置12と、引起した穀稈の株元を刈り取る刈取装置13と、刈り取った穀稈を掻き込む掻込装置15と、それぞれ掻き込んだ4条の穀稈を合流搬送する株元搬送装置16と上下2段の穂先搬送装置18,19と、合流した穀稈の扱深を調整しながら脱穀部に搬送する扱深搬送部21で構成されている。22は前処理部5の未刈地側に設けて未刈穀稈を分草するナローガイド(分草杆)であり、運転部6に設けたナローガイド切換レバーの操作により、格納姿勢と分草作業姿勢とに切り換えられる。
【0012】
[刈取装置の概要]
図3は刈取装置の正面図、図4は刈取装置の平面図であり、刈取装置13は駆動装置31と刈刃装置32とから構成されていて、エンジンから伝動してきた駆動力を、駆動装置31を介して往復運動に変換して刈刃装置32に伝動することで左右スライド可能に構成している。実施例は4条刈コンバイン1であって、デバイダフレーム10は左右両端の左右デバイダフレーム10L,10Rと、中央の中デバイダフレーム10Cと、左デバイダフレーム10Lと中デバイダフレーム10Cとの間にある左中デバイダフレーム10CLと、右デバイダフレーム10Rと中デバイダフレーム10Cとの間にある右中デバイダフレーム10CRがある。
【0013】
[注油装置の概要]
図5は注油装置の注油経路図、図6は注油操作部の平面図である。注油装置40は、注油タンク45、電動式の注油ポンプ46及び注油ノズル49で構成され、注油操作部41に備えた注油セットダイヤル42により注油セット位置を選択して注油スイッチ43を操作すると、注油タンク45内の潤滑油を注油ポンプ46を介して選択した注油セット位置の注油ノズル49より注油対象へ注油するように構成している。
【0014】
注油セットダイヤル42による注油セット位置は、刈刃位置42a、引起し搬送チェン位置42b、排ワラフィードチェン位置42cがあり、それぞれ刈刃注油経路48a、引起し搬送チェン注油経路48b、排ワラフィードチェン注油経路48cに接続している。
【0015】
各注油経路48a,48b,48cの内、刈刃注油経路48aには刈刃装置32に潤滑油を吐出する注油ノズル49L,49R,49Cが、刈取装置13の上方で刈幅方向の一方側から他方側へ潤滑油を吐出するように設けられている。
【0016】
具体的には、左デバイダフレーム10Lの上方には、左デバイダフレーム10Lと中央左デバイダフレーム10CLとの間に位置する刈刃装置32に潤滑油を吐出する左注油ノズル49Lが設けられている。また、右デバイダフレーム10Rの上方には、右デバイダフレーム10Rと中央右デバイダフレーム10CRとの間に位置する刈刃装置32に潤滑油を吐出する右注油ノズル49Rが設けられている。また、中央デバイダフレーム10Cの上方には、中央デバイダフレーム10Cと中央左デバイダフレーム10CLとの間に位置する刈刃装置32と、中央デバイダフレーム10Cと中央右デバイダフレーム10CRとの間に位置する刈刃装置32に潤滑油を吐出する中央注油ノズル49Cが設けられている。つまり、左注油ノズル49Lはノズルの右側のみに吐出口が設けられ、右注油ノズル49Rはノズルの左側のみに吐出口が設けられ、中央注油ノズル49Cはノズルの左右両側に吐出口が設けられている。なお、各注油ノズル49L,49R,49Cから吐出される潤滑油は、注油ポンプ46の吐出圧が最大になった時に各注油ノズル49L,49R,49Cに隣接するデバイダフレーム10に近い位置に注油されるように設定されている。
【0017】
[制御部の概要]
図7は制御部の制御ブロック図であり、制御部を構成するマイコン61の入力側には、注油操作部41の注油セットダイヤル42が刈刃位置42aにセットされたことを検出する刈刃位置設定スイッチ62と注油スイッチ43が接続され、マイコン61の出力側には、注油ポンプ46が接続されている。
【0018】
[注油制御の作用]
図8は注油時の制御を説明するタイミングチャート図である。事前にトランスミッションの副変速装置をニュートラルに切り換え、刈取・脱穀クラッチを接続した状態にした上で、主変速レバーを前進位置に操作して前処理部5と脱穀部を駆動しておく。
【0019】
まず、注油操作部41の注油セットダイヤル42を刈刃位置42aにセットすると、刈刃位置設定スイッチ62がONする(タイミングa)。その後、オペレータが注油スイッチ43を押し続けることで、マイコン61が注油ポンプ46をインチング制御することにより、注油ポンプ46の吐出圧を周期的に増減させる(タイミングb〜c)。これにより、刈刃装置32用の各注油ノズル49L,49R,49Cから吐出した潤滑油は、注油ノズル49が設けられたデバイダフレーム10に近い位置と、隣接するデバイダフレーム10に近い位置とを往復するように注油される。例えば、左注油ノズル49Lから吐出した潤滑油は刈刃装置32の左デバイダフレーム10Lに近い位置L1から中間位置L2を経て、隣接する中央左デバイダフレーム10CLに近い位置L3を注油後、中間位置L2を経て左デバイダフレーム10Lに近い位置L1に戻る注油を、オペレータが注油スイッチ43を押している間繰り返す。
【0020】
次に、注油操作部41の注油セットダイヤル42を刈刃位置42a以外の位置にセットすると、刈刃位置設定スイッチ62がOFFする(タイミングd)。その後、オペレータが注油スイッチ43を押し続けることで、マイコン61が注油ポンプ46を連続でONすることにより、注油ポンプ46の吐出圧を最大に維持する(タイミングe〜f)。これにより、注油セットダイヤル42で選択された引起し搬送チェン注油経路48b又は排ワラフィードチェン注油経路48cの各注油ノズル49から吐出した潤滑油は、各チェンの決まった位置に注油されるので、各チェンが回転駆動することにより、各チェン全体に満遍なく注油される。
【0021】
本実施例では、圃場に植立する茎稈を切断する刈刃装置32を刈幅方向にスライド駆動させて構成する刈取装置13を設け、刈刃装置32に潤滑油を供給するための注油装置40を注油タンク45、注油ポンプ46及び注油ノズル49で構成し、注油ポンプ46の駆動により刈取装置13の上方で刈幅方向の一方側から他方側へ潤滑油を吐出するように注油ノズル49を配置したコンバインの刈取装置において、注油装置40を制御する制御部61を設け、制御部61は注油装置40への注油指令により注油ノズル49から吐出する潤滑油の吐出圧を自動的に強弱制御することで、刈刃装置32全体に満遍なく注油できるように構成したことにより、注油装置40への注油指令により注油ノズル49から吐出する潤滑油の吐出圧を自動的に強弱制御することで、無駄な潤滑油を使うことなく確実に刈刃装置32全体に満遍なく注油でき、注油時間の短縮に繋がるものである。
【0022】
また、制御部61は、注油ポンプ46の駆動をインチング制御することにより、注油ノズル49から吐出する潤滑油の吐出圧を強弱制御することにより、既存の注油装置40を使用して安価に構成できるものである。
【0023】
なお、本実施例では、オペレータが注油スイッチ43を押し続けている間だけ注油ポンプ46を駆動制御しているが、一度注油スイッチ43を押せば刈刃装置32全体に潤滑油が注油される時間だけ注油ポンプ46を駆動した後、自動的に注油ポンプ46を停止するように制御してもよい。また、注油ポンプ46の駆動をインチング制御に限らず吐出圧を強弱制御できればよいものであり、例えば、注油ポンプ46の電動モータをインバータにより回転制御してもよい。
【符号の説明】
【0024】
13 刈取装置
32 刈刃装置
40 注油装置
45 注油タンク
46 注油ポンプ
49 注油ノズル
61 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に植立する茎稈を切断する刈刃装置(32)を刈幅方向にスライド駆動させて構成する刈取装置(13)を設け、刈刃装置(32)に潤滑油を供給するための注油装置(40)を注油タンク(45)、注油ポンプ(46)及び注油ノズル(49)で構成し、注油ポンプ(46)の駆動により刈取装置(13)の刈幅方向へ潤滑油を吐出するように注油ノズル(49)を配置したコンバインの刈取装置において、
注油装置(40)を制御する制御部(61)を設け、制御部(61)は注油装置(40)への注油指令により注油ノズル(49)から吐出する潤滑油の吐出圧を自動的に強弱制御することで、刈刃装置(32)全体に満遍なく注油できるように構成したことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
制御部(61)は、注油ポンプ(46)の駆動をインチング制御することにより、注油ノズル(49)から吐出する潤滑油の吐出圧を強弱制御することを特徴とする請求項1に記載したコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−193853(P2011−193853A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67144(P2010−67144)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】