コンバインの掻込みリール
【課題】タインの変形や破損を回避することが可能でありながら、刈取対象となる作物を良好に掻き込むことが可能となるコンバインの掻込みリールを提供する。
【解決手段】左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材61にその長手方向に間隔をあけて並列装着されるタイン62が、ネジ部材73によってタイン支持部材61に取り付けられる被取付部62aと、下方に向けて垂下する垂下棒状部62cと、被取付部62aと垂下棒状部62cとの間に位置して垂下棒状部62cの曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部62bとを備えて構成され、左右両端側のタイン62の夫々が、リールフレームに近い側に垂下棒状部62cが位置し、リールフレームから遠い側に被取付部62aが位置する形態で設けられている。
【解決手段】左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材61にその長手方向に間隔をあけて並列装着されるタイン62が、ネジ部材73によってタイン支持部材61に取り付けられる被取付部62aと、下方に向けて垂下する垂下棒状部62cと、被取付部62aと垂下棒状部62cとの間に位置して垂下棒状部62cの曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部62bとを備えて構成され、左右両端側のタイン62の夫々が、リールフレームに近い側に垂下棒状部62cが位置し、リールフレームから遠い側に被取付部62aが位置する形態で設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン本体の前方に位置する状態で設けられ、且つ、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているコンバインの掻込みリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバインの掻込みリールとしては、次のように構成されたものがあった。すなわち、タインが、タイン支持部材に対する被取付部と、例えば、稲、麦、大豆等の刈取対象となる作物を掻き込むために下方に向けて垂下する垂下棒状部とが一体的に形成され、そのタインの被取付部を、タイン支持部材にネジ部材によって固定するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−211010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のコンバインの掻込みリールによれば、掻込みリールの回転駆動に伴う掻込み反力によってタイン先端側の垂下棒状部に変位が発生すると、基端側に大きな曲げモーメントが作用して、そのときの曲げ応力は、垂下棒状部とが一体的に形成された被取付部に集中することになり、そのような曲げ応力が繰り返し加わることによってタインが変形したり破損するおそれがあった。
【0005】
そこで、このような曲げ応力が繰り返し加わることによって早期に変形したり破損することを回避するための改良構成として、掻込みリールの回転駆動に伴う掻込み反力によってタイン先端側の垂下棒状部に変位が発生しても、その変位を弾性変形によって許容する横軸芯周りに螺旋形状のコイルばね部を被取付部に隣接させて設ける構成が考えられた。
このように構成するものでは、垂下棒状部の変位を弾性変形によって許容するので、被取付部に曲げ応力が繰り返し加わることがなく、タインが早期に変形したり破損するおそれを回避することが可能なものとなる。
【0006】
しかし、このように螺旋形状のコイルばね部を被取付部に隣接させて設ける改良構成を採用した場合では、左右方向すなわちタイン支持部材の長手方向において、垂下棒状部がコイルばね部を介して被取付部とは反対側に位置する状態で設けられることになり、被取付部に対して垂下棒状部がタイン支持部材の長手方向に沿って位置がずれることになる。
【0007】
その結果、左右のリールフレームが存在する掻込みリールの左右端部のうちの少なくともいずれか一方において、最端側の垂下棒状部とリールフレームとの間に広い隙間ができて、掻込みリールの左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込むことができないものとなるおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、タインが早期に変形したり破損するおそれを回避することが可能なものでありながら、左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込めるようにすることが可能となるコンバインの掻込みリールを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンバインの掻込みリールは、コンバイン本体の前方に位置する状態で設けられ、且つ、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているものであって、その第1特徴構成は、
前記タインが、ネジ部材によって前記タイン支持部材に取り付けられる被取付部と、下方に向けて垂下する垂下棒状部と、前記被取付部と前記垂下棒状部との間に位置して前記垂下棒状部の曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部とを備えて構成され、
前記左右のリールフレームに隣接する左右両端側のタインの夫々が、前記リールフレームに近い側に前記垂下棒状部が位置し、前記リールフレームから遠い側に前記被取付部が位置する形態で設けられている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、タインが、ネジ部材によってタイン支持部材に取り付けられる被取付部と、下方に向けて垂下する垂下棒状部と、被取付部と垂下棒状部との間に位置して垂下棒状部の曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部を備えて構成されるから、掻込みリールの回転駆動に伴う掻込み反力によってタイン先端側の垂下棒状部に変位が発生すると、その変位を螺旋形状のコイルばね部によって弾性変形にて吸収することができるから、曲げ応力が繰り返し加わることに起因して早期にタインが変形したり破損する不利を回避できる。
【0011】
そして、左右のリールフレームに隣接する左右両端側のタインの夫々が、リールフレームに近い側に垂下棒状部が位置し、リールフレームから遠い側に被取付部が位置する形態で設けられているから、掻込みリールの左右端部において、最端側の垂下棒状部とリールフレームとの間の隙間を狭いものにして、掻込みリールの左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込むことが可能となる。
【0012】
従って、タインが早期に変形したり破損する不利を回避できるものでありながら、左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込めるようにすることが可能となるコンバインの掻込みリールを提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記複数のタインとして、前記長手方向一方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向他方側に前記被取付部が位置する形態を備えた第1のタインと、前記長手方向他方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向一方側に前記被取付部が位置するとともに前記コイルばね部が前記第1のタインとは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインとが備えられ、
前記長手方向一方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第1のタインにて構成され、前記長手方向他方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第2のタインにて構成されている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、長手方向一方側に位置するリールフレームに隣接するタインは、第1のタインにて構成されることになり、しかも、この第1のタインは、長手方向一方側に垂下棒状部が位置し且つ長手方向他方側に被取付部が位置するので、長手方向一方側に位置するリールフレームと、垂下棒状部とが近接する状態で配備されることになる。
【0015】
又、長手方向他方側に位置するリールフレームに隣接するタインは、第2のタインにて構成されることになり、しかも、この第2のタインは、長手方向他方側に垂下棒状部が位置し且つ長手方向一方側に被取付部が位置するので、長手方向他方側に位置するリールフレームと、垂下棒状部とが近接する状態で配備されることになる。
【0016】
そして、第2のタインのコイルばね部が、第1のタインとは逆向きの螺旋形状にて形成されるものであるから、第1のタインの被取付部と第2のタインの被取付部とをタイン支持部材に対して同じ方向からネジ部材で取り付けるようにしても、リールフレームと垂下棒状部とを近接する状態で配備することができる。このように、全てのタインをタイン支持部材に対して同じ方向からネジ部材で取り付けることができ、タインの取り付け作業が行い易いものとなる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、コンバイン本体の前部における前記長手方向一方側に片寄った位置に搭乗運転部が備えられ、前記複数のタインのうち、前記長手方向一方側端部に位置する1個又は数個のタインが前記第1のタインにて構成され、それ以外の他のタインが前記第2のタインにて構成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、 コンバイン本体の前部における長手方向一方側に片寄った位置に搭乗運転部が備えられるので、複数のタインのうち、長手方向一方側端部に位置するタインは、搭乗運転部にいる運転者から目視し易いものとなる。そして、このように運転者から目視し易い位置にあるタインは、極力、大きな反力がかからないように運転操作が行われる結果、変形したり破損するおそれが他のタインに比べて少ないものとなる。
【0019】
そこで、長手方向一方側端部に位置する1個又は数個のタインを第1のタインにて構成し、それ以外の他のタインを第2のタインにて構成することで、少ない個数の第1のタインが、変形したり破損するおそれが少なく、修理交換の手間の少ないものになる。
【0020】
その結果、個数が多い第2のタインについては修理用の予備のタインを多めに用意する必要はあるが、個数の少ない第1のタインについては、変形したり破損するおそれが少なく、修理交換の手間の少ないものとなるから、修理用の予備のタインを多く用意する必要がない。つまり、第1及び第2のタインの夫々について多くの予備のタインを用意する必要がなく、それだけ無駄な費用を抑制でき、コストの低減を図ることができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、前記タインが、前記被取付部、前記コイルばね部、及び、前記垂下棒状部の夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成して構成されている点にある。
【0022】
第4特徴構成によれば、被取付部、コイルばね部、及び、垂下棒状部の夫々が金属バネ材にて一連に連なる状態で形成されるので、タインの構造が簡素なものとなって、コスト低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】刈取搬送装置の一部縦断側面図である。
【図4】排塵装置の縦断正面図である。
【図5】吸引フード部の斜視図である。
【図6】側部カバーの縦断後面図である。
【図7】下部前寄り側部カバーの斜視図である。
【図8】下部後寄り側部カバーの斜視図である。
【図9】刈取処理部の側面図である。
【図10】伝動部カバーの連結状態を示す横断平面図である。
【図11】伝動部カバーの連結状態を示す分解斜視図である。
【図12】掻込みリールの正面図である。
【図13】タイン取り付け部の縦断側面図である。
【図14】タイン取り付け部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るコンバインの掻込みリールの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、本発明に係るコンバインは、稲、麦などの作物の収穫作業を行なうものであって、コンバイン本体Aの前部に油圧シリンダCYにより駆動昇降自在に刈取搬送装置Bを連結して構成されている。
【0025】
コンバイン本体Aは、左右一対のクローラ走行装置1,1によって走行自在に構成され、且つ、機体フレーム2によって支持される状態で、運転者が搭乗して操縦操作するための搭乗運転部3、動力を発生する原動部4、刈取った作物の脱穀処理を行う脱穀装置5、脱穀処理により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク6の夫々を備えて構成されている。
【0026】
図2に示すように、搭乗運転部3は、コンバイン本体Aの前部に進行方向視で機体右側(後述するタイン支持部材61の長手方向一方側に相当)に片寄った位置に備えられている。そして、図1に示すように、搭乗運転部3の下方に位置する状態で原動部4が備えられている。又、コンバイン本体Aの後部における進行方向視で機体左側に脱穀装置5が備えられ、機体後部の脱穀装置5の右側には穀粒タンク6が備えられ、この穀粒タンク6には、貯留している穀粒を機体外部に排出させるための穀粒排出用オーガ7が備えられている。
【0027】
図1に示すように、脱穀装置5の左側面には、その上部後方側に板金製の開閉扉8が後部の縦軸心Y周りで開閉自在に設けられ、脱穀装置5内の受網等を保守点検できるように構成されている。開閉扉8には、開閉扉8を弾性係合作用により閉じ状態でロック自在で且つ引き操作によりロック解除操作自在な弾性係合式の開閉具9が備えられている。
【0028】
開閉扉8の前側には樹脂製の脱穀部前横側部カバー10が着脱自在に備えられ、下部には、樹脂製の下部前寄り側部カバー11と、樹脂製の下部後寄り側部カバー12とが着脱自在に備えられている。下部前寄り側部カバー11と下部後寄り側部カバー12とは、各カバー11,12と脱穀装置5の横側壁13とにわたって設けた脱着手段を介して脱穀装置5の横側壁13に支持されている。
【0029】
つまり、図6、図7及び図8に示すように、各カバー11,12の脱着手段は、コ字状の丸棒で形成した被係合部材14とこれに係合するフック状の係合部材15とからなる係合手段16と、コ字状の丸棒で形成した被係合部材17とこれに掛止する弾性係合式の開閉具18からなるロック手段19とで構成されている。
図6に示すように、装着状態にあるカバー11,12は、開閉具18の操作部の下部背面を手前に引くと離脱側に揺動してロック手段19のロックが解除され、その状態でカバー11,12を上方に引上げると、下側の被係合部材14に対する係合部材15の係合が外れて、各カバー11,12を横側壁13から外すことができる。
【0030】
このように脱穀装置5の左側面におけるカバー11,12を合成樹脂にて構成するようにしたから、畦等の外物との接触による破損を未然に回避するために、下部後寄り側部カバー12の下方側の機体後端部箇所には機体フレーム2から延設される状態で保護部材20が備えられている。
【0031】
刈取搬送装置Bは、所定の刈幅で作物を刈り取り且つ刈り取った作物を機体横幅方向中間部に横送り合流する刈取処理部21と、その刈取処理部21にて合流された作物をコンバイン本体Aに備えられた脱穀装置5に向けて後方搬送する角筒状のフィーダ22とを備えて構成されている。
【0032】
そして、図2に示すように、刈取処理部21が搭乗運転部3の前方側に位置し、且つ、フィーダ22が搭乗運転部3の進行方向視で機体左側に位置する状態で配備されている。
【0033】
図1、図3及び図4に示すように、フィーダ22は、角筒状に形成された搬送ケース23の内部に掻上げコンベア24を装備して構成されている。掻上げコンベア24は、縦回し巻回された左右一対のチェーン25に亘って搬送バー26を横架連結して構成されており、刈取処理部21にて横送りされた作物が搬送ケース23の底面に沿って掻き上げ搬送されて脱穀装置5に投入すべく搬送するように構成されている。
【0034】
図1、図2及び図3に示すように、刈取処理部21は、角パイプやL形材を連結してなる刈取部フレーム27に、後部側の背面部28、搬送デッキ29、左右一対の側板30,30を取付け固定した枠組み構造となっている。そして、左右側板30,30の前部に作物を刈取り対象と非刈取り対象とに分草するデバイダ31が備えられ、搬送デッキ29の前端に沿って作物の株元を切断するバリカン型の刈取り装置32が配備されるとともに、刈り取った作物を刈幅方向中間部に横送りするオーガ33が左右の側板30,30に亘って架設されている。又、刈取部フレーム27の基端側の上部から前方向きに延出している左右一対の支持アーム34,34に駆動回転自在に支持され、フィーダ22の前方に位置する刈取対象となる作物を掻き込む掻込みリール35が備えられている。
【0035】
図1に示すように、この掻込みリール35は、その機体前部側端部位置がデバイダ31の機体前部側端部位置よりも機体前方側に突出する状態で設けられ、刈取対象となる作物を良好に掻き込むことができるようになっている。
【0036】
図9に示すように、刈取処理部21の機体右側箇所には、原動部4からの動力をオーガ33や刈取り装置32に伝達するためのベルト式の伝動機構(図示せず)の横側外方を覆う樹脂製の伝動部カバー36が備えられている。この伝動部カバー36は、周囲の複数箇所が右側の側板30にボルトで締め付け固定される構成となっている。
【0037】
図9、図10及び図11に示すように、伝動部カバー36の前端側がデバイダ31を支持する側板30から延設された取付板37の内側に接当した状態で外側からボルト38で締め付け固定する構成となっており、取り付け箇所には、伝動部カバー36にナット39が埋め込み状態で装着されている。又、取付板37には、組み付け誤差に起因した取り付け位置の変化を吸収するために挿通孔40が前後方向に沿う長孔に形成されている。
【0038】
このように取り付け用の挿通孔40が長孔になっているために、この挿通孔40だけに挿通させてボルト38を締め付けると、埋め込みナット39が挿通孔40の内部に入り込むおそれがあるので、ナット39を位置保持するために、円形のボルト挿通孔41が形成されたU字状の中継用板材42を取付板37を跨ぐ状態で備えさせて、ボルト38を挿通させて締め付ける構成としている。
尚、図示はしないが、他のボルト装着箇所は、側板に設けられた溶接ナット(図示せず)を用いて締め付け固定するように構成されている。
【0039】
図1、図2及び図3に示すように、フィーダ22の搬送始端部には排塵装置43が備えられ、この排塵装置43は、搬送ケース23に刈取り作物と共に入り込んだ土埃などの塵埃やフィーダ22の前方で発生した塵埃を搬送ケース23を介して吸引して搭乗運転部3から離れた箇所に排出するように構成されている。
【0040】
排塵装置43は、搬送ケース23の外側に設けた排塵フード44と、排塵フード44の内部に設けた軸流形の回転ファン45とを備えて構成してある。排塵フード44は、搬送ケース23の天板部23Aの外面側に位置する吸引フード部46と、この吸引フード部46の横側部と搬送ケース23の横外面側とに亘って位置する排出フード部47とを備えて構成されている。
【0041】
図4に示すように、吸引フード部46は、その下端部に設けた取付けフランジ48により、搬送ケース23の天板部23Aに連結されている。そして、吸引フード部46に設けた吸塵口49から排出フード部47の下端部に形成された排出口50に至る塵埃流動路を形成している。吸引フード部46及び排出フード部47は、所定の形状に成形された合成樹脂材によって構成され、吸引フード部46の横端部に一体成形された連結フランジ46fと排出フード部47の上端側の横端部に一体成形された連結フランジ47fとがネジ連結されている。
【0042】
図5に示すように、吸引フード部46における回転ファン45の周囲46aは回転ファン45の外周に沿った円弧形状に形成され、回転ファン45のファンシュラウドとして機能するように構成されている。又、斜め姿勢の傾斜面部51に、回転ファン45の駆動用モータ52の脱着に使用する円筒状の作業開口53が形成され、作業開口53の内奥部の周縁部が駆動用モータ52を支持する支持部として構成されている。そして、吸引フード部46は、吸引作用を阻害しない位置である傾斜面部51に上下方向に沿う凹入溝からなる複数の補強用リブ54,55を形成して剛性を高めるようにしている。
【0043】
又、この排塵装置43は、刈取クラッチが入り操作されて作物を刈り取って脱穀装置5に向けて搬送する刈取作業時においてのみ、回転ファン45が作動して塵埃排出作動を実行するように構成されている。
【0044】
伝動系について詳述はしないが、原動部4の動力がベルトテンション式の刈取クラッチ(図示せず)を介して断続可能に刈取搬送装置Bに伝達されるように構成され、図4に示すように、刈取クラッチを入り切り操作する刈取クラッチレバー57が、クラッチ切り位置とクラッチ入り位置とに亘って横軸芯P1周りで回動操作自在に設けられている。
又、このコンバインでは、刈取搬送装置Bにおける穀稈詰まりを解消するために、刈取搬送装置Bを一時的に逆回転方向に回転させるための逆転駆動機構(図示せず)が備えられ、この逆転駆動機構は、刈取作業用の刈取クラッチを切り状態に切り換えた状態で、専用の逆転用操作具の操作により逆回転方向に回転させることができるようになっている。
【0045】
そして、図4に示すように、刈取クラッチレバー57がクラッチ切り位置にあればオフとなり、且つ、刈取クラッチレバー57がクラッチ入り位置にあればオンとなるレバー位置検出スイッチ58が、刈取クラッチレバー57の近傍に備えられ、このレバー位置検出スイッチ58がオフであれば排塵装置43の駆動用モータ52が非作動となり、レバー位置検出スイッチ58がオンであれば排塵装置43の駆動用モータ52が作動状態に切り換わるように、レバー位置検出スイッチ58と排塵装置43の駆動用モータ52とが電気的に接続されている。
【0046】
このように構成することで、刈取作業中には刈取作業に伴ってフィーダ22内で発生する塵埃を外部に排出させることができ、しかも、逆転駆動機構を操作させるときや非刈取作業時には、排塵装置43が作動することがなく、例えば、刈取搬送装置Bが逆転操作されるときに、詰まり解除された多量の作物が排塵装置43から外部に排出される等の不利を回避できる。
【0047】
次に、掻込みリール35について説明する。
図1及び図2に示すように、掻込みリール35は、一対の支持アーム34,34の先端部に回転自在に支持された駆動軸59の左右端部に一体回転自在に側面視で五角形の左右一対のリールフレーム60が備えられている。そして、図12に示すように、これらの左右一対のリールフレーム60,60に亘って架設される状態で且つ五つの頂部に一本ずつ位置する配置でタイン支持部材61が設けられ、各タイン支持部材61には、その長手方向に沿って並べる状態で複数のタイン62が取り付けられている。
【0048】
各リールフレーム60は、リールフレーム本体60aに備えた板金製の五本のアーム60bと、各アーム60bの先端部に設けた樹脂製のブロック体60cと、前記五つのブロック体60cにわたって巻回されてブロック体60cとの共締めボルトでアーム60bに連結された環状の帯板60dとを備えて構成してある。各ブロック体60cは、タイン支持部材61を回転自在に取り付ける取り付け部を構成している。環状の帯板60dは、各アーム60bの部位で分割された分割帯板材によって構成してある。
【0049】
そして、各タイン支持部材61に取り付けられるタイン62が掻込みリール35の回転にかかわらずタイン支持部材61から下方向きに延出した姿勢を保持するように、その姿勢を保持するための周知構成の姿勢保持機構63が備えられている。
この姿勢保持機構63について簡単に説明すると、この姿勢保持機構63は、掻込みリール35の一方の横外側に設けた機体側面視で五角形の補助回転体64を備え、掻込みリール35の回転に伴い、補助回転体64を掻込みリール35からリンク65を介して伝達される駆動力によってリール回転軸芯P2とは異なる軸芯P3まわりに回転させ、各タイン支持部材61をリンク65によって回転操作して各タイン支持部材61をリールフレーム60に対して回転操作し、各タイン支持部材61のタイン62を、掻込みリール35の回転にかかわらずタイン支持部材61から下方向きに延出した姿勢を保持するよう構成されている。
【0050】
掻込みリール35は、図1に示すように、一対の支持アーム34,34夫々と刈取部フレーム27とに連結した油圧シリンダ66によって一対の支持アーム34,34が連結軸67の軸芯P4まわりに刈取部フレーム27に対して上下に揺動操作されることにより、下降作業状態と上昇非作業状態とに昇降する自在に構成されている。
【0051】
左右一対の支持アーム34,34が下降操作されて掻込みリール35の下端側が地面Gの近くに位置すると、掻込みリール35が低位置側の下降作業状態になる。すると、駆動軸59の回転によって掻込みリール35がリール回転軸芯P2まわりに回転し、各タイン支持部材61のタイン62をリール回転軸芯P2まわりに回転させる。
各タイン62は、前記姿勢保持機構63の作用によってタイン支持部材61から下方向きに延出した姿勢を保持した状態で回転し、作物に係止しながら刈取り装置32に向けて掻き込み供給する。
【0052】
前記タイン支持部材61は、図13及び図14に示すように、金属パイプ製のタイン支持バー本体61Aの下面に、溝開口をコンバイン前方に向けた状態に沿わせたチャンネル部材61Bを一体に固定して構成されている。
チャンネル部材61Bは、上部水平面部70、縦面部71、下部水平面部72とを備えて構成してあり、上部水平面部70をタイン支持バー本体61Aに沿わせて溶接することで、タイン支持バー本体61Aと一体的に連結されている。
又、縦面部71には、長手方向に間隔をあけてタイン取付用の複数の挿通孔71aが形成され、下部水平面部72には、後述するタイン62の垂下棒状部62cを挿通させてタイン62の横ぶれを防止するスリット72aが、各タイン取付位置に対応させて形成されている。
【0053】
タイン62は、金属バネ材で構成してあり、ネジ部材73によってチャンネル部材61Bの縦面部71に取り付けられる被取付部62aを上端部に設けると共に、横軸芯周りに螺旋形状のコイルばね部62bを被取付部62aに連設する状態で設けてあり、このコイルばね部62bに連なる状態で垂下棒状部62cを連設して構成されている。被取付部62aは、リング形状に成形してあり、リング中空部に平ワッシャ73aを備えたネジ部材73を挿通させて縦面部71に固定できるように構成されている。
また、コイルばね部62bは、二条の螺旋形状に成形してあり、掻込みリール35の回転駆動に伴う作物や地面G等からの掻込み反力による垂下棒状部62cの曲げ変位を、縮径方向(又は拡径方向)の弾性変形によって許容するように構成されている。
【0054】
つまり、タイン62は、被取付部62a、コイルばね部62b、及び、垂下棒状部62cの夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成して構成されている。
【0055】
被取付部62aの上端部から、コイルばね部62bの螺旋最低部までのタイン頭部高さ寸法hは、チャンネル部材61Bの上部水平面部70と下部水平面部72との間隔寸法と略同じ値に設定してあり、タイン62の上部をチャンネル部材61Bの溝内に余分なスペースをつくることなく収めることができる。
【0056】
又、上記したような取り付け構造とすることで、タイン62下方からの突き上げ力が作用した場合、ネジ部材73による固定力と、被取付部62aが当接する上部水平面部70の支持力とが共に作用してタイン62の取付状態を安定維持できる。
【0057】
また、タイン62は、コイルばね部62bの螺旋の一部が、チャンネル部材61Bの上部水平面部70及び下部水平面部72の外縁部どうしを結ぶ直線より外方に突出する状態に構成してあり(図13参照)、この突出部は、例えば、タイン62のメンテナンス作業(点検や修理等)におけるチャンネル部材61Bに対するタイン62の着脱時に、指で摘んで操作することができ、メンテナンス作業を効率よく行える。
【0058】
そして、図12に示すように、左右のリールフレーム60,60に隣接する左右両端側のタイン62の夫々が、リールフレーム60,60に近い側に垂下棒状部62cが位置し、リールフレーム60から遠い側に被取付部62aが位置する形態で設けられている。
【0059】
又、複数のタイン62として、タイン支持部材61の長手方向一方側に垂下棒状部62cが位置し且つ前記長手方向他方側に被取付部62aが位置する形態を備えた第1のタインT1と、前記長手方向他方側に垂下棒状部62cが位置し且つ前記長手方向一方側に被取付部62aが位置するとともにコイルばね部62bが前記第1のタインT1とは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインT2とが備えられ、前記長手方向一方側に位置するリールフレーム60に隣接するタイン62が前記第1のタインT1にて構成され、前記長手方向他方側に位置する前記リールフレーム60に隣接するタイン62が前記第2のタインT2にて構成されている。
【0060】
図12は掻込みリール35の正面図であり、機体進行方向とは反対方向視にて掻込みリール35を見た図であるが、この図12を参照しながら説明を加えると、長手方向一方側としての進行方向視で機体右側(図12では左側)の端部に位置する2個のタイン62が、第1のタインT1であり、それ以外の他のタイン62は第2のタインT2にて構成されている。
【0061】
すなわち、第1のタインT1は、機体右側(図12では左側)に垂下棒状部62cが位置し且つ機体左側(図12では右側)に被取付部62aが位置する形態となっており、第2のタインT2は、機体左側(図12では右側)に垂下棒状部62cが位置し且つ機体右側(図12では左側)に被取付部62aが位置する形態となっている。そして、図14に示すように、第2のタインT2は、コイルばね部62bが第1のタインT1とは逆向きの螺旋形状にて形成される形態となっている。
【0062】
このように構成することで、掻込みリール35の左右端部において、最端側のタイン62の垂下棒状部62cとリールフレーム60との間の隙間を狭いものにして、掻込みリール35の左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込むことが可能となる。
【0063】
又、上述したように搭乗運転部3はコンバイン本体Aの前部に進行方向視で機体右側に片寄った位置に備えられているから、機体右側の端部に位置する状態で備えられる第1のタインT1は、搭乗運転部3にいる運転者から目視し易いものとなっている。
【0064】
さらに、上記構成のタイン取付け構造によれば、タイン62の先端部に作用する変位をコイルばね部62bの弾性変形によって許容することができ、タイン62の塑性変形や疲労破壊を生じ難くして、タイン62の耐久性の向上を図ることが可能であり、各タイン62の交換を個別に行えるから、タイン62の交換手間の軽減を図ることができる。又、しかも、タイン62の形状も、金属バネ材を屈曲形成するだけの簡単な形状であることから、タイン62のコストを低減することができる。
【0065】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、複数のタイン62のうち、長手方向一方側端部に位置する2個のタイン62が前記第1のタインT1にて構成され、それ以外の他のタイン62が前記第2のタインT2にて構成されるものを示したが、第1のタインT1の個数が2個に限定されるものではなく、1個でもよく、又、3個以上設けるものでもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、複数のタイン62として、第1のタインT1と、コイルばね部62bが第1のタインT1とは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインT2とを備えて構成されるものを示したが、このような構成に代えて、例えば、第1のタインT1あるいは第2のタインT2のいずれかのみを用いる構成とし、タイン支持部材61に対する取り付け位置を機体正面側から取り付ける状態と機体裏面から取り付ける状態とに切り換える構成としてもよい。
このように構成することによって、前記左右のリールフレーム60に隣接する左右両端側のタイン62の夫々が前記リールフレーム60に近い側に前記垂下棒状部62cが位置し、前記リールフレーム60から遠い側に前記被取付部62aが位置する形態で設けることができる。
【0067】
(3)上記実施形態では、前記タイン62が、前記被取付部62a、前記コイルばね部62b、及び、前記垂下棒状部62cの夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成するものを示したが、前記被取付部62a、前記コイルばね部62b、及び、前記垂下棒状部62cの夫々を別体で構成してそれらを連結する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているコンバインの掻込みリールに適用できる。
【符号の説明】
【0069】
3 搭乗運転部
60,60 リールフレーム
61 タイン支持部材
62 タイン
62a 被取付部
62b コイルばね部
62c 垂下棒状部
73 ネジ部材
A コンバイン本体
T1 第1のタイン
T2 第2のタイン
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン本体の前方に位置する状態で設けられ、且つ、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているコンバインの掻込みリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバインの掻込みリールとしては、次のように構成されたものがあった。すなわち、タインが、タイン支持部材に対する被取付部と、例えば、稲、麦、大豆等の刈取対象となる作物を掻き込むために下方に向けて垂下する垂下棒状部とが一体的に形成され、そのタインの被取付部を、タイン支持部材にネジ部材によって固定するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−211010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のコンバインの掻込みリールによれば、掻込みリールの回転駆動に伴う掻込み反力によってタイン先端側の垂下棒状部に変位が発生すると、基端側に大きな曲げモーメントが作用して、そのときの曲げ応力は、垂下棒状部とが一体的に形成された被取付部に集中することになり、そのような曲げ応力が繰り返し加わることによってタインが変形したり破損するおそれがあった。
【0005】
そこで、このような曲げ応力が繰り返し加わることによって早期に変形したり破損することを回避するための改良構成として、掻込みリールの回転駆動に伴う掻込み反力によってタイン先端側の垂下棒状部に変位が発生しても、その変位を弾性変形によって許容する横軸芯周りに螺旋形状のコイルばね部を被取付部に隣接させて設ける構成が考えられた。
このように構成するものでは、垂下棒状部の変位を弾性変形によって許容するので、被取付部に曲げ応力が繰り返し加わることがなく、タインが早期に変形したり破損するおそれを回避することが可能なものとなる。
【0006】
しかし、このように螺旋形状のコイルばね部を被取付部に隣接させて設ける改良構成を採用した場合では、左右方向すなわちタイン支持部材の長手方向において、垂下棒状部がコイルばね部を介して被取付部とは反対側に位置する状態で設けられることになり、被取付部に対して垂下棒状部がタイン支持部材の長手方向に沿って位置がずれることになる。
【0007】
その結果、左右のリールフレームが存在する掻込みリールの左右端部のうちの少なくともいずれか一方において、最端側の垂下棒状部とリールフレームとの間に広い隙間ができて、掻込みリールの左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込むことができないものとなるおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、タインが早期に変形したり破損するおそれを回避することが可能なものでありながら、左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込めるようにすることが可能となるコンバインの掻込みリールを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンバインの掻込みリールは、コンバイン本体の前方に位置する状態で設けられ、且つ、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているものであって、その第1特徴構成は、
前記タインが、ネジ部材によって前記タイン支持部材に取り付けられる被取付部と、下方に向けて垂下する垂下棒状部と、前記被取付部と前記垂下棒状部との間に位置して前記垂下棒状部の曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部とを備えて構成され、
前記左右のリールフレームに隣接する左右両端側のタインの夫々が、前記リールフレームに近い側に前記垂下棒状部が位置し、前記リールフレームから遠い側に前記被取付部が位置する形態で設けられている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、タインが、ネジ部材によってタイン支持部材に取り付けられる被取付部と、下方に向けて垂下する垂下棒状部と、被取付部と垂下棒状部との間に位置して垂下棒状部の曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部を備えて構成されるから、掻込みリールの回転駆動に伴う掻込み反力によってタイン先端側の垂下棒状部に変位が発生すると、その変位を螺旋形状のコイルばね部によって弾性変形にて吸収することができるから、曲げ応力が繰り返し加わることに起因して早期にタインが変形したり破損する不利を回避できる。
【0011】
そして、左右のリールフレームに隣接する左右両端側のタインの夫々が、リールフレームに近い側に垂下棒状部が位置し、リールフレームから遠い側に被取付部が位置する形態で設けられているから、掻込みリールの左右端部において、最端側の垂下棒状部とリールフレームとの間の隙間を狭いものにして、掻込みリールの左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込むことが可能となる。
【0012】
従って、タインが早期に変形したり破損する不利を回避できるものでありながら、左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込めるようにすることが可能となるコンバインの掻込みリールを提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記複数のタインとして、前記長手方向一方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向他方側に前記被取付部が位置する形態を備えた第1のタインと、前記長手方向他方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向一方側に前記被取付部が位置するとともに前記コイルばね部が前記第1のタインとは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインとが備えられ、
前記長手方向一方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第1のタインにて構成され、前記長手方向他方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第2のタインにて構成されている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、長手方向一方側に位置するリールフレームに隣接するタインは、第1のタインにて構成されることになり、しかも、この第1のタインは、長手方向一方側に垂下棒状部が位置し且つ長手方向他方側に被取付部が位置するので、長手方向一方側に位置するリールフレームと、垂下棒状部とが近接する状態で配備されることになる。
【0015】
又、長手方向他方側に位置するリールフレームに隣接するタインは、第2のタインにて構成されることになり、しかも、この第2のタインは、長手方向他方側に垂下棒状部が位置し且つ長手方向一方側に被取付部が位置するので、長手方向他方側に位置するリールフレームと、垂下棒状部とが近接する状態で配備されることになる。
【0016】
そして、第2のタインのコイルばね部が、第1のタインとは逆向きの螺旋形状にて形成されるものであるから、第1のタインの被取付部と第2のタインの被取付部とをタイン支持部材に対して同じ方向からネジ部材で取り付けるようにしても、リールフレームと垂下棒状部とを近接する状態で配備することができる。このように、全てのタインをタイン支持部材に対して同じ方向からネジ部材で取り付けることができ、タインの取り付け作業が行い易いものとなる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、コンバイン本体の前部における前記長手方向一方側に片寄った位置に搭乗運転部が備えられ、前記複数のタインのうち、前記長手方向一方側端部に位置する1個又は数個のタインが前記第1のタインにて構成され、それ以外の他のタインが前記第2のタインにて構成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、 コンバイン本体の前部における長手方向一方側に片寄った位置に搭乗運転部が備えられるので、複数のタインのうち、長手方向一方側端部に位置するタインは、搭乗運転部にいる運転者から目視し易いものとなる。そして、このように運転者から目視し易い位置にあるタインは、極力、大きな反力がかからないように運転操作が行われる結果、変形したり破損するおそれが他のタインに比べて少ないものとなる。
【0019】
そこで、長手方向一方側端部に位置する1個又は数個のタインを第1のタインにて構成し、それ以外の他のタインを第2のタインにて構成することで、少ない個数の第1のタインが、変形したり破損するおそれが少なく、修理交換の手間の少ないものになる。
【0020】
その結果、個数が多い第2のタインについては修理用の予備のタインを多めに用意する必要はあるが、個数の少ない第1のタインについては、変形したり破損するおそれが少なく、修理交換の手間の少ないものとなるから、修理用の予備のタインを多く用意する必要がない。つまり、第1及び第2のタインの夫々について多くの予備のタインを用意する必要がなく、それだけ無駄な費用を抑制でき、コストの低減を図ることができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、前記タインが、前記被取付部、前記コイルばね部、及び、前記垂下棒状部の夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成して構成されている点にある。
【0022】
第4特徴構成によれば、被取付部、コイルばね部、及び、垂下棒状部の夫々が金属バネ材にて一連に連なる状態で形成されるので、タインの構造が簡素なものとなって、コスト低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】刈取搬送装置の一部縦断側面図である。
【図4】排塵装置の縦断正面図である。
【図5】吸引フード部の斜視図である。
【図6】側部カバーの縦断後面図である。
【図7】下部前寄り側部カバーの斜視図である。
【図8】下部後寄り側部カバーの斜視図である。
【図9】刈取処理部の側面図である。
【図10】伝動部カバーの連結状態を示す横断平面図である。
【図11】伝動部カバーの連結状態を示す分解斜視図である。
【図12】掻込みリールの正面図である。
【図13】タイン取り付け部の縦断側面図である。
【図14】タイン取り付け部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るコンバインの掻込みリールの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、本発明に係るコンバインは、稲、麦などの作物の収穫作業を行なうものであって、コンバイン本体Aの前部に油圧シリンダCYにより駆動昇降自在に刈取搬送装置Bを連結して構成されている。
【0025】
コンバイン本体Aは、左右一対のクローラ走行装置1,1によって走行自在に構成され、且つ、機体フレーム2によって支持される状態で、運転者が搭乗して操縦操作するための搭乗運転部3、動力を発生する原動部4、刈取った作物の脱穀処理を行う脱穀装置5、脱穀処理により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク6の夫々を備えて構成されている。
【0026】
図2に示すように、搭乗運転部3は、コンバイン本体Aの前部に進行方向視で機体右側(後述するタイン支持部材61の長手方向一方側に相当)に片寄った位置に備えられている。そして、図1に示すように、搭乗運転部3の下方に位置する状態で原動部4が備えられている。又、コンバイン本体Aの後部における進行方向視で機体左側に脱穀装置5が備えられ、機体後部の脱穀装置5の右側には穀粒タンク6が備えられ、この穀粒タンク6には、貯留している穀粒を機体外部に排出させるための穀粒排出用オーガ7が備えられている。
【0027】
図1に示すように、脱穀装置5の左側面には、その上部後方側に板金製の開閉扉8が後部の縦軸心Y周りで開閉自在に設けられ、脱穀装置5内の受網等を保守点検できるように構成されている。開閉扉8には、開閉扉8を弾性係合作用により閉じ状態でロック自在で且つ引き操作によりロック解除操作自在な弾性係合式の開閉具9が備えられている。
【0028】
開閉扉8の前側には樹脂製の脱穀部前横側部カバー10が着脱自在に備えられ、下部には、樹脂製の下部前寄り側部カバー11と、樹脂製の下部後寄り側部カバー12とが着脱自在に備えられている。下部前寄り側部カバー11と下部後寄り側部カバー12とは、各カバー11,12と脱穀装置5の横側壁13とにわたって設けた脱着手段を介して脱穀装置5の横側壁13に支持されている。
【0029】
つまり、図6、図7及び図8に示すように、各カバー11,12の脱着手段は、コ字状の丸棒で形成した被係合部材14とこれに係合するフック状の係合部材15とからなる係合手段16と、コ字状の丸棒で形成した被係合部材17とこれに掛止する弾性係合式の開閉具18からなるロック手段19とで構成されている。
図6に示すように、装着状態にあるカバー11,12は、開閉具18の操作部の下部背面を手前に引くと離脱側に揺動してロック手段19のロックが解除され、その状態でカバー11,12を上方に引上げると、下側の被係合部材14に対する係合部材15の係合が外れて、各カバー11,12を横側壁13から外すことができる。
【0030】
このように脱穀装置5の左側面におけるカバー11,12を合成樹脂にて構成するようにしたから、畦等の外物との接触による破損を未然に回避するために、下部後寄り側部カバー12の下方側の機体後端部箇所には機体フレーム2から延設される状態で保護部材20が備えられている。
【0031】
刈取搬送装置Bは、所定の刈幅で作物を刈り取り且つ刈り取った作物を機体横幅方向中間部に横送り合流する刈取処理部21と、その刈取処理部21にて合流された作物をコンバイン本体Aに備えられた脱穀装置5に向けて後方搬送する角筒状のフィーダ22とを備えて構成されている。
【0032】
そして、図2に示すように、刈取処理部21が搭乗運転部3の前方側に位置し、且つ、フィーダ22が搭乗運転部3の進行方向視で機体左側に位置する状態で配備されている。
【0033】
図1、図3及び図4に示すように、フィーダ22は、角筒状に形成された搬送ケース23の内部に掻上げコンベア24を装備して構成されている。掻上げコンベア24は、縦回し巻回された左右一対のチェーン25に亘って搬送バー26を横架連結して構成されており、刈取処理部21にて横送りされた作物が搬送ケース23の底面に沿って掻き上げ搬送されて脱穀装置5に投入すべく搬送するように構成されている。
【0034】
図1、図2及び図3に示すように、刈取処理部21は、角パイプやL形材を連結してなる刈取部フレーム27に、後部側の背面部28、搬送デッキ29、左右一対の側板30,30を取付け固定した枠組み構造となっている。そして、左右側板30,30の前部に作物を刈取り対象と非刈取り対象とに分草するデバイダ31が備えられ、搬送デッキ29の前端に沿って作物の株元を切断するバリカン型の刈取り装置32が配備されるとともに、刈り取った作物を刈幅方向中間部に横送りするオーガ33が左右の側板30,30に亘って架設されている。又、刈取部フレーム27の基端側の上部から前方向きに延出している左右一対の支持アーム34,34に駆動回転自在に支持され、フィーダ22の前方に位置する刈取対象となる作物を掻き込む掻込みリール35が備えられている。
【0035】
図1に示すように、この掻込みリール35は、その機体前部側端部位置がデバイダ31の機体前部側端部位置よりも機体前方側に突出する状態で設けられ、刈取対象となる作物を良好に掻き込むことができるようになっている。
【0036】
図9に示すように、刈取処理部21の機体右側箇所には、原動部4からの動力をオーガ33や刈取り装置32に伝達するためのベルト式の伝動機構(図示せず)の横側外方を覆う樹脂製の伝動部カバー36が備えられている。この伝動部カバー36は、周囲の複数箇所が右側の側板30にボルトで締め付け固定される構成となっている。
【0037】
図9、図10及び図11に示すように、伝動部カバー36の前端側がデバイダ31を支持する側板30から延設された取付板37の内側に接当した状態で外側からボルト38で締め付け固定する構成となっており、取り付け箇所には、伝動部カバー36にナット39が埋め込み状態で装着されている。又、取付板37には、組み付け誤差に起因した取り付け位置の変化を吸収するために挿通孔40が前後方向に沿う長孔に形成されている。
【0038】
このように取り付け用の挿通孔40が長孔になっているために、この挿通孔40だけに挿通させてボルト38を締め付けると、埋め込みナット39が挿通孔40の内部に入り込むおそれがあるので、ナット39を位置保持するために、円形のボルト挿通孔41が形成されたU字状の中継用板材42を取付板37を跨ぐ状態で備えさせて、ボルト38を挿通させて締め付ける構成としている。
尚、図示はしないが、他のボルト装着箇所は、側板に設けられた溶接ナット(図示せず)を用いて締め付け固定するように構成されている。
【0039】
図1、図2及び図3に示すように、フィーダ22の搬送始端部には排塵装置43が備えられ、この排塵装置43は、搬送ケース23に刈取り作物と共に入り込んだ土埃などの塵埃やフィーダ22の前方で発生した塵埃を搬送ケース23を介して吸引して搭乗運転部3から離れた箇所に排出するように構成されている。
【0040】
排塵装置43は、搬送ケース23の外側に設けた排塵フード44と、排塵フード44の内部に設けた軸流形の回転ファン45とを備えて構成してある。排塵フード44は、搬送ケース23の天板部23Aの外面側に位置する吸引フード部46と、この吸引フード部46の横側部と搬送ケース23の横外面側とに亘って位置する排出フード部47とを備えて構成されている。
【0041】
図4に示すように、吸引フード部46は、その下端部に設けた取付けフランジ48により、搬送ケース23の天板部23Aに連結されている。そして、吸引フード部46に設けた吸塵口49から排出フード部47の下端部に形成された排出口50に至る塵埃流動路を形成している。吸引フード部46及び排出フード部47は、所定の形状に成形された合成樹脂材によって構成され、吸引フード部46の横端部に一体成形された連結フランジ46fと排出フード部47の上端側の横端部に一体成形された連結フランジ47fとがネジ連結されている。
【0042】
図5に示すように、吸引フード部46における回転ファン45の周囲46aは回転ファン45の外周に沿った円弧形状に形成され、回転ファン45のファンシュラウドとして機能するように構成されている。又、斜め姿勢の傾斜面部51に、回転ファン45の駆動用モータ52の脱着に使用する円筒状の作業開口53が形成され、作業開口53の内奥部の周縁部が駆動用モータ52を支持する支持部として構成されている。そして、吸引フード部46は、吸引作用を阻害しない位置である傾斜面部51に上下方向に沿う凹入溝からなる複数の補強用リブ54,55を形成して剛性を高めるようにしている。
【0043】
又、この排塵装置43は、刈取クラッチが入り操作されて作物を刈り取って脱穀装置5に向けて搬送する刈取作業時においてのみ、回転ファン45が作動して塵埃排出作動を実行するように構成されている。
【0044】
伝動系について詳述はしないが、原動部4の動力がベルトテンション式の刈取クラッチ(図示せず)を介して断続可能に刈取搬送装置Bに伝達されるように構成され、図4に示すように、刈取クラッチを入り切り操作する刈取クラッチレバー57が、クラッチ切り位置とクラッチ入り位置とに亘って横軸芯P1周りで回動操作自在に設けられている。
又、このコンバインでは、刈取搬送装置Bにおける穀稈詰まりを解消するために、刈取搬送装置Bを一時的に逆回転方向に回転させるための逆転駆動機構(図示せず)が備えられ、この逆転駆動機構は、刈取作業用の刈取クラッチを切り状態に切り換えた状態で、専用の逆転用操作具の操作により逆回転方向に回転させることができるようになっている。
【0045】
そして、図4に示すように、刈取クラッチレバー57がクラッチ切り位置にあればオフとなり、且つ、刈取クラッチレバー57がクラッチ入り位置にあればオンとなるレバー位置検出スイッチ58が、刈取クラッチレバー57の近傍に備えられ、このレバー位置検出スイッチ58がオフであれば排塵装置43の駆動用モータ52が非作動となり、レバー位置検出スイッチ58がオンであれば排塵装置43の駆動用モータ52が作動状態に切り換わるように、レバー位置検出スイッチ58と排塵装置43の駆動用モータ52とが電気的に接続されている。
【0046】
このように構成することで、刈取作業中には刈取作業に伴ってフィーダ22内で発生する塵埃を外部に排出させることができ、しかも、逆転駆動機構を操作させるときや非刈取作業時には、排塵装置43が作動することがなく、例えば、刈取搬送装置Bが逆転操作されるときに、詰まり解除された多量の作物が排塵装置43から外部に排出される等の不利を回避できる。
【0047】
次に、掻込みリール35について説明する。
図1及び図2に示すように、掻込みリール35は、一対の支持アーム34,34の先端部に回転自在に支持された駆動軸59の左右端部に一体回転自在に側面視で五角形の左右一対のリールフレーム60が備えられている。そして、図12に示すように、これらの左右一対のリールフレーム60,60に亘って架設される状態で且つ五つの頂部に一本ずつ位置する配置でタイン支持部材61が設けられ、各タイン支持部材61には、その長手方向に沿って並べる状態で複数のタイン62が取り付けられている。
【0048】
各リールフレーム60は、リールフレーム本体60aに備えた板金製の五本のアーム60bと、各アーム60bの先端部に設けた樹脂製のブロック体60cと、前記五つのブロック体60cにわたって巻回されてブロック体60cとの共締めボルトでアーム60bに連結された環状の帯板60dとを備えて構成してある。各ブロック体60cは、タイン支持部材61を回転自在に取り付ける取り付け部を構成している。環状の帯板60dは、各アーム60bの部位で分割された分割帯板材によって構成してある。
【0049】
そして、各タイン支持部材61に取り付けられるタイン62が掻込みリール35の回転にかかわらずタイン支持部材61から下方向きに延出した姿勢を保持するように、その姿勢を保持するための周知構成の姿勢保持機構63が備えられている。
この姿勢保持機構63について簡単に説明すると、この姿勢保持機構63は、掻込みリール35の一方の横外側に設けた機体側面視で五角形の補助回転体64を備え、掻込みリール35の回転に伴い、補助回転体64を掻込みリール35からリンク65を介して伝達される駆動力によってリール回転軸芯P2とは異なる軸芯P3まわりに回転させ、各タイン支持部材61をリンク65によって回転操作して各タイン支持部材61をリールフレーム60に対して回転操作し、各タイン支持部材61のタイン62を、掻込みリール35の回転にかかわらずタイン支持部材61から下方向きに延出した姿勢を保持するよう構成されている。
【0050】
掻込みリール35は、図1に示すように、一対の支持アーム34,34夫々と刈取部フレーム27とに連結した油圧シリンダ66によって一対の支持アーム34,34が連結軸67の軸芯P4まわりに刈取部フレーム27に対して上下に揺動操作されることにより、下降作業状態と上昇非作業状態とに昇降する自在に構成されている。
【0051】
左右一対の支持アーム34,34が下降操作されて掻込みリール35の下端側が地面Gの近くに位置すると、掻込みリール35が低位置側の下降作業状態になる。すると、駆動軸59の回転によって掻込みリール35がリール回転軸芯P2まわりに回転し、各タイン支持部材61のタイン62をリール回転軸芯P2まわりに回転させる。
各タイン62は、前記姿勢保持機構63の作用によってタイン支持部材61から下方向きに延出した姿勢を保持した状態で回転し、作物に係止しながら刈取り装置32に向けて掻き込み供給する。
【0052】
前記タイン支持部材61は、図13及び図14に示すように、金属パイプ製のタイン支持バー本体61Aの下面に、溝開口をコンバイン前方に向けた状態に沿わせたチャンネル部材61Bを一体に固定して構成されている。
チャンネル部材61Bは、上部水平面部70、縦面部71、下部水平面部72とを備えて構成してあり、上部水平面部70をタイン支持バー本体61Aに沿わせて溶接することで、タイン支持バー本体61Aと一体的に連結されている。
又、縦面部71には、長手方向に間隔をあけてタイン取付用の複数の挿通孔71aが形成され、下部水平面部72には、後述するタイン62の垂下棒状部62cを挿通させてタイン62の横ぶれを防止するスリット72aが、各タイン取付位置に対応させて形成されている。
【0053】
タイン62は、金属バネ材で構成してあり、ネジ部材73によってチャンネル部材61Bの縦面部71に取り付けられる被取付部62aを上端部に設けると共に、横軸芯周りに螺旋形状のコイルばね部62bを被取付部62aに連設する状態で設けてあり、このコイルばね部62bに連なる状態で垂下棒状部62cを連設して構成されている。被取付部62aは、リング形状に成形してあり、リング中空部に平ワッシャ73aを備えたネジ部材73を挿通させて縦面部71に固定できるように構成されている。
また、コイルばね部62bは、二条の螺旋形状に成形してあり、掻込みリール35の回転駆動に伴う作物や地面G等からの掻込み反力による垂下棒状部62cの曲げ変位を、縮径方向(又は拡径方向)の弾性変形によって許容するように構成されている。
【0054】
つまり、タイン62は、被取付部62a、コイルばね部62b、及び、垂下棒状部62cの夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成して構成されている。
【0055】
被取付部62aの上端部から、コイルばね部62bの螺旋最低部までのタイン頭部高さ寸法hは、チャンネル部材61Bの上部水平面部70と下部水平面部72との間隔寸法と略同じ値に設定してあり、タイン62の上部をチャンネル部材61Bの溝内に余分なスペースをつくることなく収めることができる。
【0056】
又、上記したような取り付け構造とすることで、タイン62下方からの突き上げ力が作用した場合、ネジ部材73による固定力と、被取付部62aが当接する上部水平面部70の支持力とが共に作用してタイン62の取付状態を安定維持できる。
【0057】
また、タイン62は、コイルばね部62bの螺旋の一部が、チャンネル部材61Bの上部水平面部70及び下部水平面部72の外縁部どうしを結ぶ直線より外方に突出する状態に構成してあり(図13参照)、この突出部は、例えば、タイン62のメンテナンス作業(点検や修理等)におけるチャンネル部材61Bに対するタイン62の着脱時に、指で摘んで操作することができ、メンテナンス作業を効率よく行える。
【0058】
そして、図12に示すように、左右のリールフレーム60,60に隣接する左右両端側のタイン62の夫々が、リールフレーム60,60に近い側に垂下棒状部62cが位置し、リールフレーム60から遠い側に被取付部62aが位置する形態で設けられている。
【0059】
又、複数のタイン62として、タイン支持部材61の長手方向一方側に垂下棒状部62cが位置し且つ前記長手方向他方側に被取付部62aが位置する形態を備えた第1のタインT1と、前記長手方向他方側に垂下棒状部62cが位置し且つ前記長手方向一方側に被取付部62aが位置するとともにコイルばね部62bが前記第1のタインT1とは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインT2とが備えられ、前記長手方向一方側に位置するリールフレーム60に隣接するタイン62が前記第1のタインT1にて構成され、前記長手方向他方側に位置する前記リールフレーム60に隣接するタイン62が前記第2のタインT2にて構成されている。
【0060】
図12は掻込みリール35の正面図であり、機体進行方向とは反対方向視にて掻込みリール35を見た図であるが、この図12を参照しながら説明を加えると、長手方向一方側としての進行方向視で機体右側(図12では左側)の端部に位置する2個のタイン62が、第1のタインT1であり、それ以外の他のタイン62は第2のタインT2にて構成されている。
【0061】
すなわち、第1のタインT1は、機体右側(図12では左側)に垂下棒状部62cが位置し且つ機体左側(図12では右側)に被取付部62aが位置する形態となっており、第2のタインT2は、機体左側(図12では右側)に垂下棒状部62cが位置し且つ機体右側(図12では左側)に被取付部62aが位置する形態となっている。そして、図14に示すように、第2のタインT2は、コイルばね部62bが第1のタインT1とは逆向きの螺旋形状にて形成される形態となっている。
【0062】
このように構成することで、掻込みリール35の左右端部において、最端側のタイン62の垂下棒状部62cとリールフレーム60との間の隙間を狭いものにして、掻込みリール35の左右端部において刈取対象となる作物を良好に掻き込むことが可能となる。
【0063】
又、上述したように搭乗運転部3はコンバイン本体Aの前部に進行方向視で機体右側に片寄った位置に備えられているから、機体右側の端部に位置する状態で備えられる第1のタインT1は、搭乗運転部3にいる運転者から目視し易いものとなっている。
【0064】
さらに、上記構成のタイン取付け構造によれば、タイン62の先端部に作用する変位をコイルばね部62bの弾性変形によって許容することができ、タイン62の塑性変形や疲労破壊を生じ難くして、タイン62の耐久性の向上を図ることが可能であり、各タイン62の交換を個別に行えるから、タイン62の交換手間の軽減を図ることができる。又、しかも、タイン62の形状も、金属バネ材を屈曲形成するだけの簡単な形状であることから、タイン62のコストを低減することができる。
【0065】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、複数のタイン62のうち、長手方向一方側端部に位置する2個のタイン62が前記第1のタインT1にて構成され、それ以外の他のタイン62が前記第2のタインT2にて構成されるものを示したが、第1のタインT1の個数が2個に限定されるものではなく、1個でもよく、又、3個以上設けるものでもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、複数のタイン62として、第1のタインT1と、コイルばね部62bが第1のタインT1とは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインT2とを備えて構成されるものを示したが、このような構成に代えて、例えば、第1のタインT1あるいは第2のタインT2のいずれかのみを用いる構成とし、タイン支持部材61に対する取り付け位置を機体正面側から取り付ける状態と機体裏面から取り付ける状態とに切り換える構成としてもよい。
このように構成することによって、前記左右のリールフレーム60に隣接する左右両端側のタイン62の夫々が前記リールフレーム60に近い側に前記垂下棒状部62cが位置し、前記リールフレーム60から遠い側に前記被取付部62aが位置する形態で設けることができる。
【0067】
(3)上記実施形態では、前記タイン62が、前記被取付部62a、前記コイルばね部62b、及び、前記垂下棒状部62cの夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成するものを示したが、前記被取付部62a、前記コイルばね部62b、及び、前記垂下棒状部62cの夫々を別体で構成してそれらを連結する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているコンバインの掻込みリールに適用できる。
【符号の説明】
【0069】
3 搭乗運転部
60,60 リールフレーム
61 タイン支持部材
62 タイン
62a 被取付部
62b コイルばね部
62c 垂下棒状部
73 ネジ部材
A コンバイン本体
T1 第1のタイン
T2 第2のタイン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバイン本体の前方に位置する状態で設けられ、且つ、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているコンバインの掻込みリールであって、
前記タインが、ネジ部材によって前記タイン支持部材に取り付けられる被取付部と、下方に向けて垂下する垂下棒状部と、前記被取付部と前記垂下棒状部との間に位置して前記垂下棒状部の曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部とを備えて構成され、
前記左右のリールフレームに隣接する左右両端側のタインの夫々が、前記リールフレームに近い側に前記垂下棒状部が位置し、前記リールフレームから遠い側に前記被取付部が位置する形態で設けられているコンバインの掻込みリール。
【請求項2】
前記複数のタインとして、前記長手方向一方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向他方側に前記被取付部が位置する形態を備えた第1のタインと、前記長手方向他方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向一方側に前記被取付部が位置するとともに前記コイルばね部が前記第1のタインとは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインとが備えられ、
前記長手方向一方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第1のタインにて構成され、前記長手方向他方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第2のタインにて構成されている請求項1記載のコンバインの掻込みリール。
【請求項3】
コンバイン本体の前部における前記長手方向一方側に片寄った位置に搭乗運転部が備えられ、
前記複数のタインのうち、前記長手方向一方側端部に位置する1個又は数個のタインが前記第1のタインにて構成され、それ以外の他のタインが前記第2のタインにて構成されている請求項2記載のコンバインの掻込みリール。
【請求項4】
前記タインが、前記被取付部、前記コイルばね部、及び、前記垂下棒状部の夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成して構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバインの掻込みリール。
【請求項1】
コンバイン本体の前方に位置する状態で設けられ、且つ、左右のリールフレームに亘って横架支承したタイン支持部材にその長手方向に間隔をあけて複数のタインを並列装着して構成されているコンバインの掻込みリールであって、
前記タインが、ネジ部材によって前記タイン支持部材に取り付けられる被取付部と、下方に向けて垂下する垂下棒状部と、前記被取付部と前記垂下棒状部との間に位置して前記垂下棒状部の曲げ変位を弾性変形によって吸収可能な横軸芯周りの螺旋形状のコイルばね部とを備えて構成され、
前記左右のリールフレームに隣接する左右両端側のタインの夫々が、前記リールフレームに近い側に前記垂下棒状部が位置し、前記リールフレームから遠い側に前記被取付部が位置する形態で設けられているコンバインの掻込みリール。
【請求項2】
前記複数のタインとして、前記長手方向一方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向他方側に前記被取付部が位置する形態を備えた第1のタインと、前記長手方向他方側に前記垂下棒状部が位置し且つ前記長手方向一方側に前記被取付部が位置するとともに前記コイルばね部が前記第1のタインとは逆向きの螺旋形状にて形成される形態を備えた第2のタインとが備えられ、
前記長手方向一方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第1のタインにて構成され、前記長手方向他方側に位置する前記リールフレームに隣接するタインが前記第2のタインにて構成されている請求項1記載のコンバインの掻込みリール。
【請求項3】
コンバイン本体の前部における前記長手方向一方側に片寄った位置に搭乗運転部が備えられ、
前記複数のタインのうち、前記長手方向一方側端部に位置する1個又は数個のタインが前記第1のタインにて構成され、それ以外の他のタインが前記第2のタインにて構成されている請求項2記載のコンバインの掻込みリール。
【請求項4】
前記タインが、前記被取付部、前記コイルばね部、及び、前記垂下棒状部の夫々を金属バネ材にて一連に連なる状態で形成して構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバインの掻込みリール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−27367(P2013−27367A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166724(P2011−166724)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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