説明

コンバインの脱穀装置

【課題】脱穀装置の揺動棚の構成を工夫して穀粒選別負荷を軽減することで、穀粒穀選別処理精度および処理効率を向上させる。
【解決手段】扱室66下方の選別室50に揺動棚51を設けたコンバインの脱穀装置において、揺動棚51を、シーブ53aの間隔を固定した第1チャフシーブ53と、シーブ54aの間隔を変更可能にした第2チャフシーブ54と、シーブ55aの間隔を固定した第三チャフシーブ55を前から後方へかけて配設して構成する。また、第3チャフシーブ55のシーブ間隔を第1チャフシーブ53のシーブ間隔よりも広く設定する。また、第1チャフシーブ53の各シーブ間に付着する藁屑を掻き落とす前側スクレーパ34を設けると共に、第3チャフシーブ55の各シーブ間に付着する藁屑を掻き落とす後側スクレーパ56を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、脱穀室下方の選別室に設ける揺動棚を、前から後方へかけてシーブ間隔を固定した第一チャフシーブとシーブ間隔を可変にした第2チャフシーブとストローラックで構成したコンバインの脱穀装置は公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、揺動棚から穀粒を落下させて藁屑等から穀粒を選別するが、ストローラックから藁屑等が下方の二番回収部に多く落下し、この藁屑等を二番処理室で撹拌処理するため、穀粒選別処理負荷が増大するという課題がある。
【0005】
本発明は、脱穀装置の揺動棚の構成を工夫して穀粒選別負荷を軽減することで、穀粒穀選別処理精度および処理効率を向上させるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、扱室(66)下方の選別室(50)に揺動棚(51)を設けたコンバインの脱穀装置において、前記揺動棚(51)に、シーブの間隔を固定した第1チャフシーブ(53)と、シーブの間隔を変更可能にした第2チャフシーブ(54)と、シーブの間隔を固定した第3チャフシーブ(55)とを前部から後部にかけてこの順に配置したことを特徴とするコンバインの脱穀装置とする。
【0007】
この構成で、扱室(66)から選別室(50)の揺動棚(51)へ落下する穀粒や藁屑等の脱穀物が第1チャフシーブ(53)と第2チャフシーブ(54)と第3チャフシーブ(55)で穀粒と藁屑等に分離されて、穀粒が下方へ落下し藁屑等が各チャフシーブ(53,54,55)上を搬送されて後方へ送られる。特に、揺動棚(51)の終端部にシーブの間隔を固定した第3チャフシーブ(55)を配置した構成で、藁屑等の落下が少なくなって二番処理室での穀粒選別処理負荷が少なくなる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記第3チャフシーブ(55)のシーブ間隔を第1チャフシーブ(53)のシーブ間隔よりも広く設定したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの脱穀装置とした。
【0009】
この構成で、第3チャフシーブ(55)で脱穀物に含まれる穀粒が下方へ落下し易くなり、揺動棚(51)の終端部から機外へ排出される穀粒が少なくなる。
請求項3に記載の発明は、前記第1チャフシーブ(53)の各シーブ間に付着する藁屑を掻き落とす前側スクレーパ(34)を設けると共に、第3チャフシーブ(55)の各シーブ間に付着する藁屑を掻き落とす後側スクレーパ(56)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの脱穀装置とした。
【0010】
この構成で、揺動棚(51)の終端側に設ける第3チャフシーブ(55)に後側スクレーパ(56)を設けることで、各シーブ間に付着する藁屑等を除去して穀粒の選別を長時間良好に維持する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記前側スクレーパ(34)の掻き落とし動作頻度を後側スクレーパ(56)の掻き落とし動作頻度よりも多くしたことを特徴とする請求項3に記載のコンバインの脱穀装置とした。
【0012】
この構成で、藁屑等の付着が多い第1チャフシーブ(53)と藁屑等の付着が少ない第3チャフシーブ(55)を均等に掻き落とし動作して選別を良好に維持する。
請求項5に記載の発明は、第3チャフシーブ(55)の下方に選別風を吹き上げる第2ファン(47)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のコンバインの脱穀装置とした。
【0013】
この構成で、第3チャフシーブ(55)の藁屑の多い被脱穀物に第2ファン(47)の強い選別風を当てて混入した穀粒の分離落下を良くする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、特に揺動棚(51)の終端部で藁屑の落下を少なくして、穀粒の分離選別を長時間良好に維持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施例のコンバインの右側面図である。
【図2】同コンバインの平面図である。
【図3】同コンバインの脱穀装置の側面断面図である。
【図4】別実施例の脱穀装置の拡大側面図である。
【図5】同コンバインの選別室の拡大平断面図である。
【図6】同コンバインの拡大平断面図である。
【図7】同コンバインの正断面図である。
【図8】一部の拡大平断面図である。
【図9】一部の拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施例を3照しながら説明する。
なお、本実施例ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
【0017】
図1と図2にコンバイン1の全体図を示しているが、走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行出来る構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンと脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0018】
刈取装置6は、刈取昇降シリンダ(図示せず)の伸縮作用により刈取装置6の全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に後傾斜状にした穀稈引起し装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などの搬送装置9を順次穀稈の受継搬送と脱穀装置15への扱深さ調節とができるように配置している。
【0019】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバー類をコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を駆動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。
【0020】
圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7による分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元に刈刃が達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0021】
供給搬送装置の穀稈は、扱深さが調節され、フィードチェン14の始端部に受け継がれ、脱穀装置15に穂先側が供給される。
脱穀装置15の扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、エンジンからの駆動機構(図示せず)により、図3の矢印B方向に回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14により図3の矢印A方向に移送されながら、矢印B方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0022】
揺動棚51上の被処理物は後方へ移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒は第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54から選別網63を通過する。
【0023】
扱網74は通常網で構成するが、目抜き鉄板としても良く、その後部に設ける目抜き孔の径を大きくしてその大径目抜き孔の下方で穀粒が多く落下する位置に第1チャフシーブ53を位置するようにしても良い。
【0024】
揺動棚51は、扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚52とその後方に配置した第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54と最後端部に配置した第3チャフシーブ55及び第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54の下方に配置する選別網63から構成されている。
【0025】
第1チャフシーブ53は各シーブ53aの間隔が固定で、底面側に後述する前側スクレーパ34を設けていて、第2チャフシーブ54は、各シーブ54aの間隔を変更可能で、第3チャフシーブ55は、第1チャフシーブ53と同様に各シーブ55aの間隔が固定にしている。
【0026】
第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54と第3チャフシーブ55は、揺動しながら各シーブ53a,54a,55a間から被処理物を漏下させ、唐箕79からの送風により風力選別する点で共通しているが、被処理物の搬送方向前方側の第1チャフシーブ53の方が後方側にある第2チャフシーブ54や第3チャフシーブ55に比べて各シーブ53aの大きさが小さく、第1チャフシーブ53のシーブ間隔A(図3)が第3チャフシーブ55のシーブ間隔Bの約半分程度に狭い構成である。
【0027】
被処理物の搬送方向前側の第1チャフシーブ53では被処理物中における単粒の含有率が高いので、藁屑の漏下を抑えながら単粒だけを漏下させ、搬送方向後側の第3チャフシーブ55では被処理物中における単粒の含有率が低いので、唐箕79からの送風を良くして 藁屑をより後方へ移送するためにこのような構成としている。
【0028】
また、移送棚52と第1チャフシーブ53の上方に、移送棚52の右前側へ供給される二番処理物を移送棚52と第1チャフシーブ53上で横に拡散させる拡散ガイド88を設けている。
【0029】
そして、第1チャフシーブ53の前方に配置されている移送棚52は扱胴69の下方に配置して扱網74から落下する被処理物と共に二番処理胴70から排出する二番処理物を受け止め得る構成になっている。
【0030】
また、移送棚52の上方に拡散ガイド88の板面と直交する方向にセンサ支軸25を設け、このセンサ支軸25に前側を円弧状に膨らませた接触子44aを斜め後方へ向かって下り傾斜に吊り下げて固着している。接触子44aは、ピンで後方へ向かって約30°下り傾斜した姿勢から上方の支点越え位置まで回動するようにして、このセンサ支軸25の回動を層厚センサ43で検出して移送棚52上の被処理物の厚みを検出する。
【0031】
第1チャフシーブ53は、板状のシーブ53aを後方に向かって登り傾斜に配列したもので、各シーブ53aの裏側に当接する前側スクレーパ34をスクレーパ支持アーム36に設けている。各スクレーパ支持アーム36はシーブ53aの下側に横方向4列で、シーブ53aの底面側に設ける連結杆37で一体に連結している。スクレーパ支持アーム36の一つを前後方向に設ける揺動アーム31に枢支軸32で連結し、揺動アーム31の前端を縦支軸33に枢支し、揺動アーム31の前端で左右に張り出す駆動アーム38の両端部にワイヤ39,40を連結し、該ワイヤ39,40を駆動モータ(図示せず)に連結して、駆動モータで揺動アーム31を左右に揺動して前側スクレーパ34がシーブ35に付着する藁屑等を掻き落とすようにしている。
【0032】
第3チャフシーブ55は、板状のシーブ55aを後方に向かって登り傾斜に配列したもので、各シーブ55aの裏側に当接する後側スクレーパ56をスクレーパ支持アーム57に設けている。各スクレーパ支持アーム57はシーブ55aの下側に横方向4列で、シーブ55aの底面側に設ける連結杆58で一体に連結している。スクレーパ支持アーム57の一つを前後方向に設ける揺動アーム59に枢支軸60で連結し、揺動アーム59の前端を縦支軸49に枢支し、揺動アーム59の前端で左右に張り出す駆動アーム48の両端部にワイヤ61,62を連結し、該ワイヤ61,62を駆動モータ(図示せず)に連結して、駆動モータで揺動アーム59を左右に揺動して後側スクレーパ56がシーブ55aに付着する藁屑等を掻き落とすようにしている。
【0033】
第1チャフシーブ53の前側スクレーパ34は、第3チャフシーブ55の後側スクレーパ56よりも速く往復動作することで処理量が多くて付着する藁屑等を均等に掻き落とすようにしている。
【0034】
第1チャフシーブ53と第3チャフシーブ55の駆動モータは、前記層厚センサ43が移送棚52上の被処理物の厚みが一定以上を検出することで、駆動するようにすることで、第1チャフシーブ53と第3チャフシーブ55の詰まりを無くして選別機能の低下を防ぐ。
【0035】
また、第1チャフシーブ53と第3チャフシーブ55の駆動モータは、前記層厚センサ43が移送棚52上の被処理物の厚みが一定以上を検出することで、駆動するようにすることで、第1チャフシーブ53と第3チャフシーブ55の詰まりを無くして選別機能の低下を防ぐ。第1チャフシーブ53側の駆動モータが作動する被処理物の厚みと第3チャフシーブ55の駆動モータが作動する被処理物の厚みを異ならせても良い。
【0036】
なお、一番揚穀筒に穀粒の水分率を検出する穀粒水分センサを設け、水分率が高い場合は、層厚センサ43の出力を見ることなく短時間で第1チャフシーブ53と第3チャフシーブ55の駆動モータを駆動して、藁屑等を掻き落とすようにしても良い。
【0037】
また、唐箕79の吹き出し口に設けるツインフラッパ79が動き始める際に第1チャフシーブ53の駆動モータを駆動するようにし、ツインフラッパ79が止まる際に第3チャフシーブ55の駆動モータを駆動するようにして処理量の増加に対応するようにしても良い。
【0038】
また、可動の第2チャフシーブ54がシーブ間隔を開くタイミングで第1チャフシーブ53と第3チャフシーブ55の駆動モータを駆動するようにしたりシーブ間隔の開き具合によって駆動速度を変更したりしても良い。
【0039】
図4には、第3チャフシーブ55に選別風を送る第2ファン47と風向板46を設ける構成を示し、第3チャフシーブ55に送る選別風を特に強くして藁屑等の付着を少なくしている。風向板46は脱穀量によって第3チャフシーブ55に送る選別風の強さを変更する。
【0040】
また、揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図4)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒28(図5)を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、縦オーガ18と横オーガ19(図2)を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0041】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて揺動棚51から第1チャフシーブ53から第2チャフシーブ54に向けて矢印D方向に移動し、第3チャフシーブ55の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒(図示省略)へ搬送される。
【0042】
二番穀粒は、正常な穀粒、枝梗粒、藁屑および藁屑の中に正常な穀粒が刺さっているササリ粒などの混合物であり、二番揚穀筒の中を二番揚穀筒螺旋により揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67の上方へ放出される。
【0043】
二番処理室67の下部に軸架する二番処理胴70はエンジンからの動力を伝動する駆動機構で図4の矢印J方向に回転する。二番穀粒は二番処理胴70に植設してある多数の処理歯70aに衝突しながら矢印I方向に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は二番処理胴70の下方に設けられた受網(図示せず)を通り抜けて選別室50へ直接漏下する。二番処理室67に供給された被処理物の大部分は二番処理胴70の前端部まで送られて移送棚52へ排出されて、再び第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54方向に送られ、穀粒は第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54と選別網63を通り、一番螺旋65に集められる。
【0044】
このように二番物を回収して移送棚52上に再び送り、第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54による再処理をすることにより、穀粒と藁屑との分離が良好になる。
なお、二番処理胴70の下方に第1チャフシーブ53が位置する場合は、被処理物の落下が集中する位置に前側スクレーパ34が作用することで詰まりを無くすることが出来る。
【0045】
フィードチェン14に挟持された穀稈は、扱室66を図6の矢印A方向に進行して脱穀されて扱室66の終端に到達した後に、図6に示す矢印A1方向に搬送され、排藁処理室82に投入される。
【0046】
また、扱室66の扱胴69終端部側に到達した被処理物の中で、藁屑など短尺のものは、扱室66の扱胴69による被処理物の搬送方向終端部と排塵処理室68の排塵処理胴71による被処理物の搬送方向始端部とを連通する連通口101にある排塵処理室入口68aから矢印A2(図4)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする螺旋71bの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の処理歯71aにより矢印K方向(図4)に搬送されながら処理される。なお、排塵処理胴71の上手側に螺旋71bが設けられ、排塵処理胴71の下手側に処理歯71aが設けられている。排塵処理胴71の扱室66側には格子状の排塵処理胴枠72(図7)が排塵処理胴71の下側及び扱室66側の外周に沿って設けられ、排塵処理室68の濾過体を構成している。
【0047】
前記排塵処理胴枠72の後端72aは、排塵処理室68の後端68b(図3)よりも所定距離だけ前方に配置され、この排塵処理胴枠72の後端72aと排塵処理室68の後端68bとの間に、排塵処理室68の後端部に達した被処理物を脱穀装置15の外部へ排出する第1排塵口102を、揺動棚51上に向かう斜め下方向および後方に向けて開口して設けている。
【0048】
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁屑を主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は受け網76(図3)から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられた第3チャフシーブ55に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒87を経由して二番処理室67に送られる。なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動は図示しないがエンジンからの駆動力がプーリを介して行われる。
【0049】
図3に示すように、脱穀装置15の後部に被処理物を吸引するための吸引ファン91を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁屑、枝梗および塵埃を含む空気を吸引ファン91の回転による吸引風で吸引し、第3排塵口92から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
【0050】
一方、吸引ファン91の回転による吸引風で吸引されない被処理物は揺動棚51の終端部である第3チャフシーブ55の後端に設けられ、脱穀装置15の後壁15aに形成された第2排塵口103からコンバイン1の外部に排出される。
【0051】
揺動棚51上を後方へ移送されてきた藁屑で第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54や第3チャフシーブ55の間隙から濾過しないものは、揺動棚51の揺動や第3チャフシーブ55の移送作用によって第2排塵口103から脱穀装置15の外部に排出されるが、この藁屑中には穀粒がわずかに含まれることがあり、このように藁屑とともにコンバイン1の外部に排出される穀粒を3番穀粒と言い、3番穀粒が脱穀装置15の外部に排出されることを3番ロス(3番損失)、3番穀粒の回収ロスなどと言う。
【0052】
また、排塵処理室68から揺動棚51の終端部に矢印M(図3)のように落ちた排塵(排塵物)のうち二番穀粒、3番穀粒など小径で比重の重いものは、揺動棚51の終端部の第3チャフシーブ55あるいは第2チャフシーブ54を矢印G方向へ通過して二番棚板85に漏下し、再び二番処理室67において処理される。
【0053】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達して脱穀された穀稈は、排藁チェーン80a(図6)および排藁穂先チェーン80bに挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室82に投入される。排藁処理室82内には排藁カッター刃81a、81bが設けられており、排藁カッター刃81a、81bにより切断された穀稈は、排藁カッター刃81a、81bの下方であって、排藁処理室82の前壁部に基部が支持され、後方下り傾斜に設けられた板状の切断藁ガイド96(図3)により案内されて圃場に放出される。
【0054】
排藁チェーン80aと排藁穂先チェーン80bは、扱胴軸69bから出力プーリ115とベルト117で中継ギヤケース118の入力プーリ116に動力が伝動され、中継ギヤケース118の出力軸119で駆動される。
【0055】
中継ギヤケース118と排藁穂先チェーン80bとの間で出力軸119に四番処理回転体120を固着して、穀稈の穂先に絡まっているササリ粒を第3チャフシーブ55上に落とすと共に、穀稈の穂先遅れを修正するようにしている。ササリ粒は、ゴムなどの弾性体でスターホイル状に形成している。
【符号の説明】
【0056】
47 第2ファン
50 選別室
51 揺動棚
53 第1チャフシーブ
53a シーブ
54 第2チャフシーブ
54a シーブ
55 第3チャフシーブ
55a シーブ
56 スクレーパ
66 扱室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(66)下方の選別室(50)に揺動棚(51)を設けたコンバインの脱穀装置において、前記揺動棚(51)に、シーブの間隔を固定した第1チャフシーブ(53)と、シーブの間隔を変更可能にした第2チャフシーブ(54)と、シーブの間隔を固定した第3チャフシーブ(55)とを前部から後部にかけてこの順に配置したことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
前記第3チャフシーブ(55)のシーブ間隔を第1チャフシーブ(53)のシーブ間隔よりも広く設定したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項3】
前記第1チャフシーブ(53)の各シーブ間に付着する藁屑を掻き落とす前側スクレーパ(34)を設けると共に、第3チャフシーブ(55)の各シーブ間に付着する藁屑を掻き落とす後側スクレーパ(56)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項4】
前記前側スクレーパ(34)の掻き落とし動作頻度を後側スクレーパ(56)の掻き落とし動作頻度よりも多くしたことを特徴とする請求項3に記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項5】
第3チャフシーブ(55)の下方に選別風を吹き上げる第2ファン(47)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−249539(P2012−249539A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122322(P2011−122322)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】