説明

コンバインの過負荷防止装置

【課題】チェーン伝動機構の下流側に接続された回転部の破損を防止することができ、回転部のメンテナンス作業の作業性を向上させることができるコンバインの過負荷防止装置を低コストで実現する。
【解決手段】第1スプロケット38と、第2スプロケット37と、第1スプロケット38と第2スプロケット37との間又は第2スプロケット37の第1スプロケット38側とは逆側に配設された第3スプロケット80と、伝動チェーン39とを備えてチェーン伝動機構70を構成し、第3スプロケット80の位置を変更することにより、第2スプロケット37における伝動チェーン39の巻き掛け長さを変更可能に構成して、コンバインの過負荷防止装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力を、チェーン伝動機構を介して回転部に連動連結してあるコンバインの伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、エンジンからの動力を刈取り部(特許文献1の図5の7)に分岐し、刈取り部を構成するオーガ(特許文献1の図5の13)や掻き込みリール(特許文献1の図5の15)等を回転駆動できるように構成されたコンバインが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−211043号公報(図4及び図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンバインでは、エンジンから分岐された動力がカウンター軸(特許文献1の図5の36)に伝達され、このカウンター軸に連動連結された駆動スプロケット(特許文献1の図4の44)と、オーガ軸(特許文献1の図4の42)に連動連結された入力スプロケット(特許文献1の図4の43)とに亘ってチェーン(特許文献1の図4の45)を巻回することでカウンター軸からの動力がオーガ軸に伝達されて、オーガが回転駆動するように構成されている。
【0005】
特許文献1のコンバインのように、カウンター軸からの動力をチェーンを介してオーガに伝達するように構成すると、例えば前方から供給された穀稈がオーガに詰まってオーガの回転が規制されたような場合においても、カウンター軸からの動力がチェーン及び入力スプロケットを介してオーガ軸に伝達され、このカウンター軸からの動力によってオーガに過負荷が生じていた。その結果、オーガ(例えばオーガを構成する掻き込み爪、スクリュ、オーガ本体等)に無理な力が作用して破損するおそれがあった。
【0006】
また、オーガが過負荷により破損した場合に、オーガを修理し又はオーガを構成する部品を交換しようとすると、右側の分草フレーム(特許文献1の図4の11)の側部に配設されたベルト(特許文献1の図4の41)やチェーン(特許文献1の図4の45)等の着脱に加えて、左右の分草フレームの間に配設されたオーガの分解等が必要であった。その結果、オーガの分解等に手間が掛かって、オーガの修理やオーガを構成する部品の交換が困難なものであった。
【0007】
そこで、例えばオーガを回転駆動する伝動経路に過負荷を防止するトルクリミッター等を装着することが考えられる。しかし、オーガを回転駆動する伝動経路に過負荷を防止するトルクリミッター等を装着しようとすると、過負荷を防止するトルクリミッター等の装着に伴ってコンバインの製造コストが高騰するといった問題がある。
本発明は、チェーン伝動機構の下流側に接続された回転部の破損を防止することができ、回転部のメンテナンス作業の作業性を向上させることができるコンバインの過負荷防止装置を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、コンバインの過負荷防止装置を、次のように構成することにある。
エンジンからの動力を、チェーン伝動機構を介して回転部に連動連結し、
前記チェーン伝動機構を、エンジン側に連動連結された第1スプロケットと、前記回転部に連動連結された第2スプロケットと、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットとの間又は前記第2スプロケットの前記第1スプロケット側とは逆側に配設された第3スプロケットと、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットと前記第3スプロケットとに亘って巻き掛けられた伝動チェーンとを備えて構成し、
前記第3スプロケットの位置を変更することにより、前記第2スプロケットにおける前記伝動チェーンの巻き掛け長さを変更可能に構成する。
【0009】
(作用)
本発明の第1特徴によると、第3スプロケットの位置を変更することにより、第2スプロケットにおける伝動チェーンの巻き掛け長さを回転部に作用する負荷に応じて変更することができ、この伝動チェーンの巻き掛け長さを回転部に作用する負荷に応じて変更した状態で回転部の回転が規制されると、エンジンから伝動チェーンに伝達された動力により伝動チェーンの第2スプロケットへの係合が外れて、エンジンから回転部への動力の伝達が遮断される。その結果、チェーン伝動機構を回転部の過負荷を防止するトルクリミッターとして機能させることができ、回転部に無理な力が作用し難くなって、回転部が破損し難くなる。
【0010】
本発明の第1特徴によると、例えばチェーン伝動機構が回転部の過負荷を防止するトルクリミッターとして機能して伝動チェーン又は第2スプロケットが破損した場合には、伝動チェーン又は第2スプロケットを修理又は交換してチェーン伝動機構を修理することで、チェーン伝動機構がトルクリミッターとして機能する前の状態を復元できる。その結果、例えば回転部が過負荷により破損して回転部を分解し、回転部を修理し又は回転部を構成する部品を交換する場合に比べ、回転部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第1特徴によると、エンジンから回転部への伝動経路の一部を構成する第2スプロケット及び伝動チェーンを有効に活用して、チェーン伝動機構をトルクリミッターとして機能させることができる。その結果、回転部の過負荷を簡素な構造で防止することができ、コンバインの過負荷防止装置の構造を簡素化することができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、チェーン伝動機構の下流側に接続された回転部の破損を防止することができる。
【0013】
本発明の第1特徴によると、回転部のメンテナンス作業の作業性を向上させることができ、コンバインのメンテナンス作業の作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第1特徴によると、コンバインの過負荷防止装置の製造コストを削減することができ、回転部の過負荷を防止しながらコンバインの製造コストを低く抑えることができる。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインの過負荷防止装置において、次のように構成することにある。
前記回転部を刈取り部に装備されたオーガで構成すると共に、前記第2スプロケットを前記オーガのオーガ軸に連動連結する。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、第2スプロケットにおける伝動チェーンの巻き掛け長さをオーガに作用する負荷に応じて変更することにより、例えば前方から供給された穀稈等がオーガに詰まってオーガの回転が規制されると、エンジンから伝動チェーンに伝達された動力により伝動チェーンの第2スプロケットへの係合が外れて、エンジンからオーガへの動力の伝達が遮断される。その結果、前方から供給される穀稈により過負荷が生じ易い適切な伝動経路にトルクリミッターとして機能するチェーン伝動機構を配設することができ、オーガに無理な力が作用し難くなって、オーガ(例えばオーガを構成する掻き込み爪、スクリュ、オーガ本体等)が破損し難くなる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、オーガの破損を防止することができ、オーガのメンテナンス作業の作業性を向上させることができるコンバインの過負荷防止装置を低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔普通型コンバインの全体構成〕
図1〜図3に基づいて、普通型コンバインの全体構成について説明する。図1〜図3は、コンバインの全体左側面図、全体右側面図及び全体平面図をそれぞれ示す。図1〜図3に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の上部に、軸流型の脱穀装置3及び穀粒回収部4が左右に並列して配備されており、穀粒回収部4の前方に運転部5が配備されている。
【0019】
脱穀装置3の前部には支点X周りに上下揺動自在に刈取り穀稈搬送用のフィーダ6が連結され、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取り部7が連結されている。
【0020】
刈取り部7は、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13とを備えて構成されており、刈取装置12により刈り取った穀稈をオーガ13によって左右中央部に横送りしてフィーダ6に供給できるように構成されている。オーガ13は、オーガ軸36に固定されたドラム状のオーガ本体13aの外周部に、掻き込み爪13bとスクリュ13cとを備えて構成されている。
【0021】
フィーダ6には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、フィーダ6から供給された穀稈をフィーダ6の底面に沿って搬送して、脱穀装置3に供給できるように構成されている。
【0022】
走行機体2における主デッキ8の前部とフィーダ6の下部とに亘って油圧シリンダ15が配設されており、この油圧シリンダ15を伸縮することにより、刈取り部7及びフィーダ6を支点X周りに上下揺動駆動できる。
【0023】
刈取り部7の前部上方に、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16が装備されている。左右の分草フレーム11の後端部に、支点Y周りに上下揺動自在な左右の支持アーム17が枢支連結されており、この支持アーム17の前部に掻き込みリール16が支持ブラケット18を介して枢支連結されている。
【0024】
分草フレーム11と支持アーム17とに亘って油圧シリンダ19が配設されており、この油圧シリンダ19によって支持アーム17を上下揺動することで掻き込みリール16の掻き込み作用高さを変更することができるとともに、支持ブラケット18を支持アーム17に沿ってスライド調節して掻き込み作用位置を前後に調節することができるように構成されている。
【0025】
〔コンバインの作業系の伝動構造〕
図4に基づいて、コンバインの作業系の伝動構造について説明する。図4は、脱穀装置3、フィーダ6、刈取り部7、及び掻き込みリール16等の作業系の伝動構造の概略図を示す。
【0026】
図4に示すように、エンジン9からの動力が、ベルトテンション式の脱穀クラッチ31を介して脱穀装置3に伝達されており、脱穀装置3から分岐された動力がベルトテンション式の刈取クラッチ32を介してフィーダ基端軸33に伝達されている。フィーダ基端軸33は、フィーダ6内の掻き揚げコンベア14に連動連結されており、フィーダ基端軸33が回動駆動させると、掻き揚げコンベア14が回動駆動するように構成されている。
【0027】
フィーダ基端軸33からフィーダ6の右側面に沿って配備されたチェーン34を介して刈取り部7の背面に沿って横架されたカウンター軸35に動力が分岐されており、このカウンター軸35から分岐された動力で、刈取装置12、オーガ13及び掻き込みリール16が回転駆動されるように構成されている。
【0028】
左右の分草フレーム11,11に亘ってオーガ軸36が横架されており、このオーガ軸36の右外端に固定された第2スプロケット37とカウンター軸35に固定された第1スプロケット38とに亘って伝動チェーン39が巻回張設されて、カウンター軸35からの動力が分岐されてオーガ13が回転駆動するように構成されている。
【0029】
右側の分草フレーム11の上部に回動自在に中間軸41が支持されており、この中間軸41に固定された駆動スプロケット42と、オーガ軸36の右外端に固定された駆動スプロケット40とに亘ってチェーン43が巻回張設されている。
【0030】
中間軸41の右外端には、伝動プーリ44が固定されており、この伝動プーリ44と掻き込みリール16の回転支軸22に固定された入力プーリ45とに亘って伝動ベルト46が巻回張設されて、カウンター軸35からの動力がオーガ軸36及び中間軸41を介して分岐されて掻き込みリール16が回転駆動するように構成されている。
【0031】
カウンター軸35の右端には、カウンター軸35の横向きの軸心周りの回転を前後向きの軸心周りの往復回動に変換する回転変換機構47が装備されており、カウンター軸35の回転が回転変換機構47により伝動軸48の所定角度での往復回動に変換されて、伝動軸48の先端部に連動連結された刈取装置12を左右に往復駆動できるように構成されている。
【0032】
〔オーガ駆動部の詳細構造〕
図5及び図6に基づいて、オーガ13駆動部の詳細構造について説明する。図5及び図6は、オーガ13駆動部付近の右側面図及びオーガ13の支持構造を説明するための横断平面図をそれぞれ示す。図5及び図6に示すように、オーガ軸36の右側端部には、連結部材50が外嵌されており、この連結部材50にオーガ13のオーガ本体13aの右側端部が連動連結されている。オーガ軸36の右側端部は、ベアリング51及び軸受部材52を介して支持ブラケット53に締め付け固定されており、この支持ブラケット53が右側の分草フレーム11の側板11Aに上下方向に位置調節可能に締め付け固定されている。
【0033】
支持ブラケット53は、側面視で縦長の長方形状に成形されており、後端部に外方側に折り曲げられた折り曲げ部53Aが成形され、前端部に上下に長いアングル形状のフレーム53Bが固着されている。支持ブラケット53の中央部には、第1開口部53Cが形成されており、この第1開口部53Cに軸受部材52が内嵌されて締め付け固定されている。
【0034】
支持ブラケット53の中央部には、第2開口部53Dが形成されており、この第2開口部53Dの下部に外方側に折り曲げ成形された連結部53Eが形成されている。支持ブラケット53の連結部53Eと分草フレーム11の側板11Aに固着されたアングル状のブラケット54とに亘って調節ボルト55が装着されており、この調節ボルト55を調節することで、分草フレーム11に対する支持ブラケット53の位置を変更調節できる。
【0035】
支持ブラケット53の四隅には、上下に長い長穴53Fが形成されており、この長穴53Fに固定ボルト56を連通させることで、分草フレーム11の側板11Aと支持ブラケット53を固定できる。支持ブラケット53に固定されたオーガ軸36の右側の高さを変更調節する場合には、支持ブラケット53の四隅の固定ボルト56を少し緩め、調節ボルト55を調節すればよく、作業者が支持ブラケット53(オーガ軸36の右側)を下方側から支持しなくてもオーガ軸36の右側の高さを容易に変更調節することができ、メンテナンス作業の作業性を向上できる。
【0036】
オーガ軸36の右側端部には、第2スプロケット37及び駆動スプロケット40が固着された筒軸57が外嵌されて、円板状のプレート58によって外方側からオーガ軸36と一体回動可能に装着されている。
【0037】
分草フレーム11の上部には、中間軸41が軸受部材59を介して回動自在に支持されており、この中間軸41の右側端部に駆動スプロケット42及び伝動プーリ44が一体回動可能に連結されている。駆動スプロケット42と駆動スプロケット40とに亘ってチェーン43が巻回されており、このチェーン43の上下中間位置の緩み側に第1テンショナー61が装着されている。
【0038】
第1テンショナー61は、分草フレーム11の後部に固定されたブラケット60に左右方向の軸心周りで揺動自在に支持されており、第1テンショナー61の先端部に左右方向の軸心周りに回動自在に支持された樹脂製のローラーを、ブラケット60と第1テンショナー61とに亘って設けられたスプリングの付勢力によってチェーン43に押し付けることで、チェーン43のテンションを維持できるように構成されている。
【0039】
掻き込みレール16の回転支軸22の右側端部に、入力プーリ45が一体回動可能に連結されており、この入力プーリ45と伝動プーリ44とに亘って伝動ベルト46が巻回されている。
【0040】
伝動ベルト46の緩み側には、ベルトテンショナー62が装着されている。ベルトテンショナー62は、支持アーム17の上部に回動自在に支持されており、ベルトテンショナー62の上部及び下部に左右方向の軸心周りに回動自在に支持された樹脂製のローラーの位置を、ベルトテンショナー62を回動させて調節することで、伝動ベルト46のテンションを調節できるように構成されている。
【0041】
刈取り部7の背面に沿って横架されたカウンター軸35の右側端部には、第1スプロケット38が一体回動可能に連結されており、この第1スプロケット38と、第2スプロケット37と、後述するスプロケット74及び第3スプロケット80とに亘って伝動チェーン39が巻き掛けることで、チェーン伝動機構70が構成されている。
【0042】
伝動チェーン39の緩み側には、第2テンショナー63が装着されている。第2テンショナー63は、分草フレーム11の側板11Aに固定されたブラケット60に左右方向の軸心周りで揺動可能に支持されたアーム64と、このアーム64の先端部に左右方向の軸心周りに回動自在に支持された樹脂製のローラー65と、アーム64に固定されたプレート66と分草フレーム11の側板11Aに固定されたブラケット69とに亘って設けられたスプリング67及びロッド68とを備えて構成されており、ローラー65をスプリング67の付勢力によって伝動チェーン39に押し付けることで、伝動チェーン39のテンションを維持できるように構成されている。
【0043】
カウンター軸35の右端には、カウンター軸35の横向きの軸心周りの回転を前後向きの軸心周りの往復回動に変換する回転変換機構47が装備されており、この回転変換機構47に伝動軸48が連動連結されている。伝動軸48の先端部は、分草フレーム11に回動自在に支持されており、この伝動軸48の先端に刈取装置12に連係された揺動アーム12Aが固定されて、カウンター軸35の回転により伝動軸48が所定角度で往復回動すると、揺動アーム12Aを介して刈取装置12が左右に往復駆動するように構成されている。
【0044】
〔チェーン伝動機構の詳細構造〕
図5、図7及び図8に基づいて、チェーン伝動機構70の詳細構造について説明する。図7及び図8は、チェーン伝動機構70付近の右側面図並びにスプロケット74及び第3スプロケット80の支持構造を説明する横断平面図をそれぞれ示す。図5、図7及び図8に示すように、チェーン伝動機構70は、第1スプロケット38と、第2スプロケット37と、ブラケット71に回動自在されたスプロケット74と、ブラケット76に回動自在に支持された第3スプロケット80とに亘って伝動チェーン39を巻き掛けて構成されている。
【0045】
ブラケット71は、支持ブラケット53の折り曲げ部53Aに沿って、この折り曲げ部53Aに前方から接当するように装着されており、外方側に開口したコ字状に成形されたブラケット71の上部に、左右向きの支軸72が固着されて、この支軸72にベアリング73を介してスプロケット74が支軸72の左右方向の軸心周りで回動自在に支持されている。ブラケット71の上部及び下部には、ブラケット71の長手方向に沿って複数の調節穴71Aが形成されており、この調節穴71Aを分草フレーム11の側板11Aの内面側に固着された固定ボルト75に連通させてナットを締め付け固定することで、ブラケット71を固定できるように構成されている。
【0046】
ナットを緩めてブラケット71を取り外し、異なる調節穴71Aに固定ボルト75を連通させてナットを締め付け固定することで、ブラケット71及びブラケット71に回動自在に支持されたスプロケット74の第1及び第2スプロケット38,37に対する位置を変更調節できるように構成されている。
【0047】
ブラケット76は、支持ブラケット53のフレーム53Bに沿って、このフレーム53Bに前方から接当するように装着されており、外方側に開口したコ字状に成形されたブラケット76の上部に、左右向きの穴加工が施されたボス部77が固着されて、このボス部77に左右のベアリング78を介して回転軸79が左右方向の軸心周りで回動自在に支持されている。回転軸79の左右中央部には、第3スプロケット80が固着されており、回転軸79の右端部には、側面視での形状が正方形状の先端部79Aが形成されている。
【0048】
ブラケット76の上部及び下部には、ブラケット76の長手方向に沿って複数の調節穴76Aが形成されており、この調節穴76Aを分草フレーム11の内面側に固着された固定ボルト81に連通させてナットを締め付け固定することで、ブラケット76を固定できるように構成されている。
【0049】
回転軸79の先端部79Aをモンキーレンチ等(図示せず)で保持し、ナットを緩めてブラケット76を取り外し、異なる調節穴76Aに固定ボルト81を連通させてナットを締め付け固定することで、ブラケット76及びブラケット76に回動自在に支持された第3スプロケット80の第2スプロケット37に対する位置を変更調節できるように構成されている。
【0050】
図7(イ)に示すように、ブラケット76の最も上側に位置する調節穴76Aに固定ボルト81を連通させてブラケット76を分草フレーム11の側板11Aに固定すると、第1スプロケット38と、第2スプロケット37と、第3スプロケット80とに亘って伝動チェーン39が所定の巻き掛け長さ(図7(イ)の巻き掛け角度αの位置に巻き掛けられる伝動チェーン39の長さ)で巻き掛けられる。
【0051】
図7(ロ)に示すように、ブラケット76の最も下側に位置する調節穴76Aに固定ボルト81を連通させて、ブラケット76を固定すると、第1スプロケット38と、第2スプロケット37と、第3スプロケット80とに亘って伝動チェーン39が所定の巻き掛け長さ(図7(ロ)の巻き掛け角度βの位置に巻き掛けられる伝動チェーン39の長さ)で巻き掛けられる。
【0052】
図7(イ)及び(ロ)に示すように、第3スプロケット80を支持ブラケット53のフレーム53Bに沿って移動させて第2スプロケット37に対する第3スプロケット80の位置を変更調節することにより、伝動チェーン39の第2スプロケット37への巻き掛け長さを長く又は短く(巻き掛け角度を大きく又は小さく)変更調節することができる。
【0053】
例えば、前方から供給された穀稈がオーガ13に詰まって、オーガ軸36がロックし第2スプロケット37が回転しない状態で、伝動チェーン39にカウンター軸35からの動力が伝達されて第2スプロケット37を回転させようとすると、伝動チェーン39の引っ張り側に大きな張力が作用し、第2スプロケット37の歯37Aのチェーンリンク39Aへの係合が外れて、チェーン伝動機構70をトルクリミッターとして機能させることができる。
【0054】
伝動チェーン39の第2スプロケット37への巻き掛け長さ(巻き掛け角度)を変更調節することにより、伝動チェーン39に係合する第2スプロケット37の歯37Aの歯数を異なる歯数に多く又は少なく変更することができ、オーガ13に作用する最大負荷(トルクリミッターとしての最大トルク)を大きく又は小さく変更調節できる。その結果、例えばコンバインにより刈取処理する穀稈の種類等に応じて巻き掛け長さ(巻き掛け角度)を変更調節することで、オーガ13が更に破損し難くなって、コンバインのメンテナンス作業の作業性を更に向上できる。
【0055】
〔掻き込みリールの詳細構造〕
図5、図9〜図12に基づいて、掻き込みリール16の詳細構造について説明する。図9は、掻き込みリール16の右側面図を示し、図10及び図11は、掻き込みリール16の右側部分及び左側部分の縦断正面図をそれぞれ示す。また、図12は、掻き込みリール16におけるタイン25取付部の縦断側面図を示す。
【0056】
図5、図9〜図11に示すように、掻き込みリール16は、左右の支持ブラケット18に水平に支架された回転支軸22と、この回転支軸22の左側に連結固定された正五角形状のリールフレーム23と、左右のリールフレーム23の頂部5箇所に回動自在に水平支架された5本のタイン取付軸24と、各タイン取付軸24に一定ピッチで並列装備された複数のタイン25と、リールフレーム23のリール軸心Pに対して設定距離後方に偏心した軸心Qを中心に回動自在に支持された正五角形状のリールフレーム23と同一の形状に成形された補助リールフレーム26とを備えて構成されている。
【0057】
支持ブラケット18の機体内側には円板状の支持板27が固定されており、この支持板27の外周近くの内側面には軸心Qに対して等距離の位置に3個のガイドローラ28が装着されている。補助リールフレーム26の中心ハブ26aには3個のガイドローラ28に外接する円形孔29がプレス成形されており、この円形孔29が3個のガイドローラ28に案内されることで補助リールフレーム26が軸心Qを中心にして回動可能に支持されている。
【0058】
各タイン取付軸24の一端から後ろ向きに回動規制アーム30が一体突設され、この回動規制アーム30の遊端が補助リールフレーム26の各頂部に枢支連結されている。リールフレーム23がリール軸心P周りに回転されると、これに追随して補助リールフレーム26が偏心軸心Q周りに回転することでタイン取付軸24がリール軸心P周りに公転しながら軸心R周りに逆方向に同調自転され、タイン取付軸24が常に一定の回動姿勢に維持されるようになっている。
【0059】
タイン25はバネ線材を下向きU字形に屈曲して2本が対となるように構成されており、タイン取付軸24に上下に貫通して形成された取付孔24aに上方から差込み装着される。タイン25の上部横杆部25aは、横側方から見てタイン取付軸24に巻き付く形状(正面視で左右中央部が下方へV字状に突出した形状)に湾曲及び屈曲されており、この上部横杆部25aをタイン取付軸24に強く押しつけて弾性拡開変形させながら外嵌止着するよう構成されている。なお、上部横杆部25aを押し広げながらタイン25を強く上方へ引き抜くことで、タイン25の取り外しを行うことができる。
【0060】
図10〜図12に示すように、タイン取付軸25の外方側における長手方向の複数箇所に、ネジ部材91が固着されており、この複数のネジ部材91にカバー90が外方側からボルトで締め付け固定されている。カバー90は、板金製で、断面形状が丸く湾曲した形状に成形されており、左右に並べて配設されたタイン25取付部の外周部をタイン取付軸24の全長に亘ってカバー90で覆うことができるように構成されている。その結果、タイン25の上部横杆部25aとタイン取付軸24との間等に穀稈等が挟まって、掻き込みリール16の掻き込み性能が低下することを防止できると共に、タイン25の破損を防止できる。
【0061】
図12に示すように、タイン25の先端部25bの側面視での形状は、タイン取付軸24への取付部から所定の曲率Rで大きく湾曲させた形状に成形されている。図12に示した2点鎖線は、従来のタイン93の形状を参考のために示したものであり、従来のタイン93に比べ、タイン25のタイン取付軸24への垂線に対する取付角度θは、従来のタイン93のタイン取付軸24への垂線に対する取付角度θ1より大きく適正な角度に設定されており、タイン25の先端部25bの形状は、掻き込みリール16の回転支軸22に対する径方向で外方側に突出する形状に成形され、湾曲させる曲率Rも大きく設定されている。
【0062】
このようにタイン25の取付角度及び形状を設定することにより、前方から供給された穀稈をタイン25によって掻き込む際のタイン25後方のふろころを広く確保することができ、前方から供給された穀稈を後方のオーガ13へ効率よく導くことができる。
【0063】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、回転部としてのオーガ13への伝動経路に、第3スプロケット80を備えたチェーン伝動機構70を設けた例を示したが、コンバインの伝動経路の異なる回転部に第3スプロケット80を備えたチェーン伝動機構70を設けてもよく、例えばフィーダ基端軸33とカウンター軸35とに亘って設けられたチェーン伝動機構や、カウンター軸35と中間軸41とに亘って設けられたチェーン伝動機構がトルクリミッターとて機能するように構成してもよい。
【0064】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第2スプロケット37の第1スプロケット38とは逆側(第2スプロケット37の前側)に第3スプロケット80を配設してチェーン伝動機構70がトルクリミッターとして機能するように構成した例を示したが、第1スプロケット38と第2スプロケット37の間に第3スプロケット80を配設してチェーン伝動機構70がトルクリミッターとして機能するように構成してもよい。
【0065】
また、チェーン伝動機構70を構成する第1〜第3スプロケット38,37,80の歯数や、スプロケット74の有無、第2テンショナー61の有無等については、異なる構成を採用してもよい。
【0066】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第3スプロケット80を支持ブラケット53のフレーム53Bに沿って移動させるように構成した例を示したが、第2スプロケット37における伝動チェーン39の巻き掛け長さ(巻き掛け角度)を変更可能であれば、第3スプロケット80を移動させる方向は異なる方向であってもよい。
【0067】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、ブラケット76に複数の調節穴76Aを設けて、第3スプロケット80の位置を変更できるように構成した例を示したが、第3スプロケット80の位置を変更する構成として異なる構成を採用してもよく、例えばブラケット76に支持ブラケット53のフレーム53Bに沿った方向に長い長穴(図示せず)を設けて、第3スプロケット80を任意の位置で固定できるように構成し、第2スプロケット37における伝動チェーン39の巻き掛け長さ(巻き掛け角度)を任意に変更可能に構成してもよい。
【0068】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、コンバインの一例として普通型コンバインに第3スプロケット80を備えたチェーン伝動機構70を採用した例を示したが、自脱型コンバインのチェーン(図示せず)により分岐伝動される回転部(図示せず)においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】コンバインの全体左側面図
【図2】コンバインの全体右側面図
【図3】コンバインの全体平面図
【図4】コンバインの作業系の伝動構造を示す概略図
【図5】オーガ駆動部の構造を示す右側面図
【図6】オーガの支持構造を示す横断平面図
【図7】チェーン伝動機構の構造を示す右側面図
【図8】スプロケット及び第3スプロケットの支持構造を示す横断平面図
【図9】掻き込みリールの右側面図
【図10】掻き込みリールの右側部分の縦断正面図
【図11】掻き込みリールの左側部分の縦断正面図
【図12】掻き込みリールにおけるタイン取付部の縦断側面図
【符号の説明】
【0070】
7 刈取り部
9 エンジン
13 オーガ(回転部)
36 オーガ軸
37 第2スプロケット
38 第1スプロケット
39 伝動チェーン
70 チェーン伝動機構
80 第3スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を、チェーン伝動機構を介して回転部に連動連結し、
前記チェーン伝動機構を、エンジン側に連動連結された第1スプロケットと、前記回転部に連動連結された第2スプロケットと、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットとの間又は前記第2スプロケットの前記第1スプロケット側とは逆側に配設された第3スプロケットと、前記第1スプロケットと前記第2スプロケットと前記第3スプロケットとに亘って巻き掛けられた伝動チェーンとを備えて構成し、
前記第3スプロケットの位置を変更することにより、前記第2スプロケットにおける前記伝動チェーンの巻き掛け長さを変更可能に構成してあるコンバインの過負荷防止装置。
【請求項2】
前記回転部を刈取り部に装備されたオーガで構成すると共に、前記第2スプロケットを前記オーガのオーガ軸に連動連結してある請求項1記載のコンバインの過負荷防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−263914(P2008−263914A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114284(P2007−114284)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】