説明

コンバイン

【課題】 穀粒や藁屑などの脱穀処理物が濡れている場合であっても、穀粒貯留装置や脱穀装置における流下を促進して、穀粒排出作業や脱穀選別作業などのコンバインの作業能率を高める。
【解決手段】 第1の手段として、機体1に搭載するエンジンEの排気によって穀粒貯留装置4の底面31を加熱して該穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の螺旋搬送装置28側への流下を促進できるように構成する。第2の手段として、機体1に搭載するエンジンEの排気によって脱穀装置3における唐箕22の風胴45部を加熱して該風胴45部から吐出する選別風の温度を上昇させられるように構成する。第3の手段として、機体1に搭載するエンジンEの排気によって一番流穀板54を加熱して該一番流穀板54上の処理物の一番移送樋52側への流下を促進できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインは、走行装置の上方に脱穀装置と穀粒貯留装置とを並設し、脱穀装置の前側に刈取装置を設けて機体を構成しており、穀粒貯留装置の底面は、該穀粒貯留装置の下部に配置した螺旋搬送装置に向けて傾斜させて設けられている。
【0003】
そして、コンバイン作業においては、刈取脱穀作業中に、収穫した穀粒を機体に搭載する穀粒貯留装置に一時貯留し、この穀粒貯留装置が満杯になると、穀粒貯留装置に設けた穀粒排出装置を駆動して運搬車に穀粒を排出する。
【0004】
尚、穀粒貯留装置内の貯留穀粒の乾燥を促進する技術として、穀粒貯留装置の底部外側に送風機を設け、送風によって穀粒を乾燥させて流下を促進しようとするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、穀粒貯留装置の内部に送風パイプを配置し、この送風パイプからエンジン冷却後の温風を吹き出して、貯留穀粒を乾燥させようとするものがある。(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、コンバインの脱穀装置には唐箕が設けられており、揺動棚による揺動選別に加えて、この唐箕の風胴部から吐出する選別風によって脱穀後の処理物を風選別するように構成されている。
【0007】
そして、コンバイン作業においては、刈取装置によって刈り取った穀稈を脱穀装置へ供給し、扱胴の作用によって脱粒した処理物を扱網を通して下方へ漏下させて揺動棚による揺動選別と唐箕からの選別風による風選別とを行う。
【0008】
また、コンバインの脱穀装置には、揺動棚の下方において、前側から、唐箕と一番移送樋と二番移送樋とを配置し、前記一番移送樋と二番移送樋との間において一番移送樋側に向けて一番流穀板を設けている。
【0009】
そして、コンバイン作業においては、刈取装置によって刈り取った穀稈を脱穀装置へ供給し、扱胴の作用によって脱粒した処理物を扱網を通して下方へ漏下させて揺動棚による揺動選別と唐箕からの選別風による風選別とを行い、揺動棚の前部から漏下した穀粒の多い処理物は、一番流穀板上を流下して一番移送樋に取り込まれて移送され、穀粒貯留装置へ一時貯留される。また、揺動棚の後部から漏下した穀粒の少ない処理物は、二番移送樋に取り込まれて移送され、脱穀室または処理室に還元されて再処理を受ける。
【特許文献1】実開平4−28042号公報(実用新案登録請求の範囲の項、第1図,第2図)
【特許文献2】実開昭62−169941号(第7図,第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、刈取穀稈が濡れており、収穫した穀粒も濡れている場合には、この濡れた穀粒を穀粒貯留装置から排出する際に、穀粒貯留装置の底面に穀粒が付着して下部の螺旋搬送装置に流下しにくく、穀粒の排出が中断したり、穀粒の排出速度が低下したりして、穀粒排出作業を円滑に行うことができず、コンバインの作業能率が低下する問題がある。
【0011】
また、前述のように、刈取穀稈が濡れており、脱穀した処理物も濡れている場合には、この処理物が揺動棚のシ−ブ等に付着して漏下が妨げられ、揺動棚上の処理物が過大な量となって穀粒が機外へ排出されてしまったり、揺動棚上で処理物の詰まりを起こして脱穀作業が続行不能となる事態が生じ得るなど、コンバインの作業能率が低下する問題がある。
【0012】
また、前述のように、刈取穀稈が濡れており、揺動棚の前部から漏下する処理物も濡れている場合には、この処理物が一番流穀板に付着して流下が妨げられ、一番移送樋に円滑に取り込まれなくなって詰まりを起こして脱穀作業が続行不能となる事態が生じ得るなど、コンバインの作業能率が低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講ずるものである。
すなわち、請求項1記載の発明においては、走行装置2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて機体1を構成したコンバインにおいて、前記穀粒貯留装置4の底面31を該穀粒貯留装置4の下部に配置した螺旋搬送装置28に向けて傾斜させて設けると共に、前記機体1に搭載するエンジンEの排気によって前記穀粒貯留装置4の底面31を加熱して該穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の前記螺旋搬送装置28側への流下を促進できるように構成したことを特徴とするコンバインとしている。
【0014】
請求項1記載の発明によると、圃場におけるコンバイン作業は、走行装置2を駆動して前進しながら刈取装置5によって植立穀稈を刈り取り、刈取穀稈を脱穀装置3に供給して脱穀処理し、収穫された穀粒を穀粒貯留装置4に一時貯留する。そして、穀粒貯留装置4が満杯になった場合などに、穀粒貯留装置4内の穀粒を外部へ排出する。この際、機体1に搭載するエンジンEの排気によって穀粒貯留装置4の底面31が加熱されてその温度が上昇し、該傾斜した底面31上の穀粒の少なくとも表面がこの熱によって乾燥しながら(底面31に付着しにくくなって)下部の螺旋搬送装置28へ向けて円滑に流下し、該螺旋搬送装置28に続く穀粒排出装置によって外部へ排出される。
【0015】
請求項2記載の発明においては、走行装置2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて機体1を構成したコンバインにおいて、前記機体1に搭載するエンジンEの排気によって脱穀装置3における唐箕22の風胴45部を加熱して該風胴45部から吐出する選別風の温度を上昇させられるように構成したことを特徴とするコンバインとしている。
【0016】
請求項2記載の発明によると、圃場におけるコンバイン作業は、走行装置2を駆動して前進しながら刈取装置5によって植立穀稈を刈り取り、刈取穀稈を脱穀装置3に供給して脱穀処理し、収穫された穀粒を穀粒貯留装置4に一時貯留する。この脱穀装置3による脱穀作業において、機体1に搭載するエンジンEの排気によって脱穀装置3における唐箕22の風胴45部が加熱され、この風胴45部から吐出される選別風の温度が上昇し、揺動棚上または揺動棚から漏下する脱穀選別物の少なくとも表面がこの選別風によって乾燥されながら(揺動棚のシ−ブ等に付着しにくくなって)良好に選別される。
【0017】
請求項3記載の発明においては、走行装置2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて機体1を構成したコンバインにおいて、一番流穀板54を前記脱穀装置3における一番移送樋52と二番移送樋53との間において一番移送樋52側に向けて傾斜させて設けると共に、前記機体1に搭載するエンジンEの排気によって前記一番流穀板54を加熱して該一番流穀板54上の処理物の一番移送樋52側への流下を促進できるように構成したことを特徴とするコンバインとしている。
【0018】
請求項3記載の発明によると、圃場におけるコンバイン作業は、走行装置2を駆動して前進しながら刈取装置5によって植立穀稈を刈り取り、刈取穀稈を脱穀装置3に供給して脱穀処理し、収穫された穀粒を穀粒貯留装置4に一時貯留する。この脱穀装置3による脱穀作業において、機体1に搭載するエンジンEの排気によって一番流穀板54が加熱されてその温度が上昇し、該一番流穀板54上に落下した脱穀選別物(そのほとんどが穀粒)の少なくとも表面がこの熱によって乾燥しながら(一番流穀板54面に付着しにくくなって)下部の一番移送樋52に円滑に取り込まれ、該一番移送樋52内の移送螺旋によって穀粒貯留装置4へ移送される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明においては、機体1に搭載するエンジンEの排気によって穀粒貯留装置4の底面31の温度を上昇させることにより、貯留穀粒が濡れている場合でも、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。
【0020】
請求項2記載の発明においては、機体1に搭載するエンジンEの排気によって唐箕22の風胴45部を加熱することにより、脱穀選別物が濡れている場合でも、この脱穀選別物を乾燥させながら揺動棚のシ−ブ等に付着しにくくして良好に選別することができ、脱穀作業を円滑に行うことができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、穀粒の乾燥も促進されるため、後行程の穀粒乾燥行程においてもその穀粒乾燥に要する時間を短縮することができる。 請求項3記載の発明においては、機体1に搭載するエンジンEの排気によって一番流穀板54を加熱することにより、揺動棚の前部から漏下する脱穀選別物(そのほとんどが穀粒)が濡れている場合でも、この脱穀選別物を乾燥させながら一番流穀板54面に付着しにくくして下部の一番移送樋52に円滑に取り込ませて穀粒貯留装置4へ移送することができ、脱穀作業を円滑に行うことができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、穀粒の乾燥も促進されるため、後行程の穀粒乾燥行程においてもその穀粒乾燥に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
収穫した穀粒が濡れている場合でも円滑に排出および選別することのできるコンバインを実現した。
【実施例1】
【0022】
図1〜図4に基づいて説明するに、コンバインの機体1は、クロ−ラ式の左右の走行装置2,2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて構成する。
【0023】
前記走行装置2,2は、ミッションケ−スから駆動される駆動スプロケット6と、転輪フレ−ムに軸支した多数の転輪8とにわたってクロ−ラ9を巻き掛けて構成する。また、機体1の前部一側に設けた操縦部10には、座席11と、操向レバ−12及びア−ムレストと、走行変速レバ−13と、刈取クラッチレバ−及び脱穀クラッチレバ−と、穀粒排出オ−ガ旋回操作レバ−と、穀粒排出オ−ガ伸縮操作スイッチとを設ける。また、前記座席11は、エンジンEを内装するエンジンカバ−14の上面に取り付ける。
【0024】
前記刈取装置5は、前端部の分草体15と、該分草体15後側の引起し装置16と、該引起し装置16後側の刈刃17と、株元搬送装置及び穂先搬送装置とから構成する。また、前記刈取装置5から脱穀装置3へ刈取穀稈を引継ぎ搬送する縦搬送装置の上側には、防塵カバ−を設ける。
【0025】
前記脱穀装置3は、扱胴19を内装した扱室および処理胴20を内装した処理室と、揺動棚21、唐箕22、一番螺旋23、二番螺旋24等を内装した下側の選別室とから構成し、前記脱穀クラッチレバ−の入り操作によって、エンジンの動力により駆動されるように構成する。尚、25は排塵処理胴、26はフィ−ドチェン、27は穀粒貯留装置4へ収穫穀粒を投入する一番揚穀筒である。
【0026】
前記脱穀装置3の後側には、該脱穀装置3によって脱穀処理された後の排藁を細断して放出する排藁カッタ−(排藁処理装置)を設ける。該排藁カッタ−は、前記脱穀装置3側から駆動力の供給を受ける入力軸側のディスクカッタ−と、該該入力軸に連動する従動軸側のディスクカッタ−とによって排藁を細断して圃場に放出するものである。
【0027】
しかして、前記穀粒貯留装置4は、箱型に構成し、底部に螺旋搬送装置28を内装し、上部に前記脱穀装置3の一番螺旋23に連通した一番揚穀筒27を接続する。また、前記螺旋搬送装置28に続く縦軸回動自在の揚穀部29と、該揚穀部29に続く横軸起伏回動自在の穀粒排出オ−ガとを設ける。前記穀粒排出オ−ガは、前記穀粒排出オ−ガ伸縮スイッチの操作によって作動する伸縮駆動機構により、伸縮調節自在に構成する。
【0028】
また、前記穀粒貯留装置4の底面31は、該穀粒貯留装置4の下部に配置した螺旋搬送装置28に向けて傾斜させて設け、該底面31の外側下方に配置して該底面31の下側面に対して接続、離脱自在の昇温室32を設ける。
【0029】
該昇温室32は、上面のみ開放した5面の外壁33を有する箱型に形成し、前側の外壁33から後側の外壁33を貫通するように排気管34を挿通する。また、前記排気管34の中央部には消音器35を設ける。
【0030】
そして、前記エンジンEの排気口と前記排気管34の前端部と可撓性の接続管36によって接続し、エンジンEから排出される高温の排気ガスが、接続管36から排気管34および消音器35を通過して、排気管34の後端から機外へ排出されるように構成する。
【0031】
尚、前記穀粒貯留装置4は、該穀粒貯留装置4の後側に配置した縦軸Pを中心として、機体内側へ回動した作業位置から、機体外側へ回動したメンテナンス位置まで回動自在に構成する。これにより、該穀粒貯留装置4をメンテナンス位置に回動させる際には、該穀粒貯留装置4の底面31の下側面が、昇温室32の上面から分離される。
【0032】
以上の構成により、圃場におけるコンバイン作業は、走行装置2を駆動して前進しながら刈取装置5によって植立穀稈を刈り取り、刈取穀稈を脱穀装置3に供給して脱穀処理し、収穫された穀粒を穀粒貯留装置4に一時貯留すると共に、脱穀後の排藁を排藁処理装置に投入して細断して圃場面上へ放出する。
【0033】
このような刈取脱穀作業中に、エンジンEから排出される高温の排気ガスが、排気管34および消音器35を通って排気管34の後端から外部へ排気される間に、これら排気管34および消音器35の外表面が高音になることによって、これらを収蔵する昇温室32内の雰囲気温度が高まり、これによって穀粒貯留装置4の底面31が加熱される。これによって、穀粒貯留装置4の底面31の温度が上昇し、該傾斜した底面31上の穀粒の少なくとも表面がこの熱によって乾燥しながら下部の螺旋搬送装置28へ向けて円滑に流下し、該螺旋搬送装置28に続く揚穀部29および穀粒排出オ−ガによって外部へ排出される。
【0034】
このように、機体1に搭載するエンジンEの排気ガスによって穀粒貯留装置4の底面31の温度を上昇させることにより、貯留穀粒が濡れている場合でも、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。
【0035】
また、前述のように、排気管34および消音器35が昇温室32を形成する外壁33によって被覆されるために、これら高音の排気管34ないし消音器35に藁屑が接触して発火し火災となる危険性を少なくすることができる。
【実施例2】
【0036】
また、図5〜図7に示すように、上記実施例1と同様のコンバインにおいて、昇温室32の前側の外壁33に、前端部を漏斗形状に拡開した形状の入口側排気管37を挿通して溶接固定し、一方、昇温室32の後側の外壁33に、機体1後方へ延出する出口側排気管38を挿通して溶接固定する。
【0037】
また、これら入口側排気管37と出口側排気管38とに平行するように、脱穀装置3と穀粒貯留装置4との間の低い位置に第二排気管39を設置する。該第二排気管39は、その前端部を漏斗形状に拡開した形状としたストレ−ト形状であり、その後端は脱穀装置3および穀粒貯留装置4の後端部にまで延出する。
【0038】
そして、エンジンEの排気口に二叉状の排気分岐管40を接続し、該排気分岐管40の一方の出口を前記入口側排気管37前端部の拡開部に隙間を有して侵入させて配置する。また、前記排気分岐管40の他方の出口を前記第二排気管39前端部の拡開部に隙間を有して侵入させて配置する。
【0039】
更に、前記排気分岐管40の分岐部に排気方向切換弁41を設け、該排気方向切換弁41を切換回動させることによって、エンジンEから排出される排気ガスを、前記入口側排気管37側へ送る状態と、前記第二排気管39側へ送る状態とに択一的に切り換えることができるように構成する。そして、前記排気方向切換弁41の切換回動を、前記操縦部10の側部操作パネル部に設けた排気方向切換操作レバ−42の回動操作によって、連繋ワイヤ−43を介して遠隔操作できるように構成する。
【0040】
この構成により、操縦部10の座席11に着座した操縦者が、排気方向切換操作レバ−42を操作して排気方向切換弁41を回動操作することにより、エンジンEから排出される排気ガスが、入口側排気管37へ流入する状態と、第二排気管39へ流入する状態とに切り換えられる。これにより、操縦者が排気方向切換レバ−42を操作して、排気方向切換弁41を、排気ガスが入口側排気管37へ流入する状態に切り換えると(図6に示す状態)、エンジンEから排出される高温の排気ガスが、入口側排気管37から昇温室32内に入り、出口側排気管38の後端から外部へ排気される間に、この昇温室32内の高音の排気ガスによって穀粒貯留装置4の底面31が加熱される。これによって、穀粒貯留装置4の底面31の温度が上昇し、該傾斜した底面31上の穀粒の少なくとも表面がこの熱によって乾燥しながら下部の螺旋搬送装置28へ向けて円滑に流下し、該螺旋搬送装置28に続く揚穀部29および穀粒排出オ−ガによって外部へ排出される。このように、機体1に搭載するエンジンEの排気ガスによって穀粒貯留装置4の底面31の温度を上昇させることにより、貯留穀粒が濡れている場合でも、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。
【0041】
一方、前記排気方向切換操作レバ−42を逆方向に操作して排気方向切換弁41を逆方向に回動操作することにより、エンジンEから排出される排気ガスが、第二排気管39へ流入する状態に切り換えると(図7に示す状態)、エンジンEから排出される高音の排気ガスが、第二排気管39へ流入し、該第二排気管39の後端から機外へ排出される。これにより、前記排気方向切換弁41を適宜に正逆方向に操作することによって、穀粒貯留装置4の底面31の温度を上昇させる排気ガス量を調節して、該穀粒貯留装置4の底面31の温度を調節でき、該穀粒貯留装置4の底面31の温度が過度に高温になって穀粒が劣化するのを防止することができる。
【実施例3】
【0042】
図8、図9に示すように、上述の実施例2と同様の穀粒貯留装置4の底面31を加熱する構造を備えたコンバインにおいて、前記排気分岐管40の他方の出口に、前記第二排気管39に換えて、唐箕風胴入口側排気管44前端の漏斗状の拡開部を隙間を有して被せ、該唐箕風胴入口側排気管44をL字形状に屈曲させて、その後端部を、脱穀装置3における唐箕22のケ−シングとなる風胴45のうちの唐箕風吹き出し風路46の下側壁47の下面に設置した唐箕風昇温室48の一側に接続する。該唐箕風昇温室48は、実施例1における昇温室32と同様に、外壁33によって5面を形成し上面を開放した箱型に形成する。また、該唐箕風昇温室48の一側に唐箕風胴出口側排気管49の前端部を接続し、該唐箕風胴出口側排気管49をL字形状に屈曲させてその後端部を脱穀装置3と穀粒貯留装置4との間において機体1後方へ延出させて配置する。尚、前記唐箕風昇温室48の下端部は、脱穀装置3のフレ−ムよりも下方に突出し、機体1の機体フレ−ム50の下面よりも上側に位置するように配置する。
【0043】
以上の構成により、操縦者が排気方向切換レバ−42を操作して、排気方向切換弁41を、排気ガスが入口側排気管37へ流入する状態に切り換えると、エンジンEから排出される高温の排気ガスが、入口側排気管37から昇温室32内に入り、出口側排気管38の後端から外部へ排気される間に、この昇温室32内の高音の排気ガスによって穀粒貯留装置4の底面31が加熱される。これによって、穀粒貯留装置4の底面31の温度が上昇し、該傾斜した底面31上の穀粒の少なくとも表面がこの熱によって乾燥しながら下部の螺旋搬送装置28へ向けて円滑に流下し、該螺旋搬送装置28に続く揚穀部29および穀粒排出オ−ガによって外部へ排出される。このように、機体1に搭載するエンジンEの排気ガスによって穀粒貯留装置4の底面31の温度を上昇させることにより、貯留穀粒が濡れている場合でも、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。
【0044】
一方、前記排気方向切換操作レバ−42を逆方向に操作して排気方向切換弁41を逆方向に回動操作することにより、エンジンEから排出される排気ガスが、唐箕風胴入口側排気管44へ流入する状態に切り換えると、エンジンEから排出される高音の排気ガスが、唐箕風胴入口側排気管44を通じて唐箕風昇温室48へ流入する。これにより、風胴45のうちの唐箕風吹き出し風路46の下側壁47の表面温度が上昇し、これによって、該唐箕風吹き出し風路46から吹き出される唐箕風が加熱されて温風となる。これにより、脱穀選別物が濡れている場合でも、この脱穀選別物を乾燥させながら揺動棚のシ−ブ等に付着しにくくして良好に選別することができ、脱穀作業を円滑に行うことができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、穀粒の乾燥も促進されるため、後行程の穀粒乾燥行程においてもその穀粒乾燥に要する時間を短縮することができる。また、唐箕風昇温室48の下端部が、脱穀装置3のフレ−ムよりも下方に突出し、機体1の機体フレ−ム50の下面よりも上側に位置することにより、唐箕風昇温室48が機体フレ−ム50によって防護され、走行装置2によって押し上げられた泥土によって唐箕風昇温室48の外壁33が変形するのを防止することができる。
【実施例4】
【0045】
図10、図11に示すように、上述の実施例2と同様の穀粒貯留装置4の底面31を加熱する構造を備えたコンバインにおいて、前記排気分岐管40の他方の出口に、前記第二排気管39に換えて、一番流穀板入口側排気管51前端の漏斗状の拡開部を隙間を有して被せ、該一番流穀板入口側排気管51をL字形状に屈曲させて、その後端部を、脱穀装置3における一番螺旋23を収蔵した一番移送樋52と二番螺旋24を収蔵した二番移送樋53との間において一番移送樋52側が低くなるように傾斜して設けた一番流穀板54の下面に設置した一番流穀板昇温室55の一側に接続する。該一番流穀板昇温室55は、実施例1における昇温室32と同様に、外壁33によって5面を形成し上面を開放した箱型に形成する。また、該一番流穀板昇温室55の一側に一番流穀板出口側排気管56の前端部を接続し、該一番流穀板出口側排気管56をL字形状に屈曲させてその後端部を脱穀装置3と穀粒貯留装置4との間において機体1後方へ延出させて配置する。尚、前記一番流穀板昇温室55の下端部は、機体1の機体フレ−ム50の下面よりも上側に位置するように配置する。
【0046】
以上の構成により、排気方向切換弁41を、排気ガスが入口側排気管37へ流入する状態に切り換えた場合の、穀粒貯留装置4の底面31の加熱による効果は上述の実施例2、3と同様である。
【0047】
一方、前記排気方向切換操作レバ−42を逆方向に操作して排気方向切換弁41を逆方向に回動操作することにより、エンジンEから排出される排気ガスが、一番流穀板入口側排気管51へ流入する状態に切り換えると、エンジンEから排出される高音の排気ガスが、一番流穀板入口側排気管51を通じて一番流穀板昇温室55へ流入する。これにより、一番流穀板54の上側表面温度が上昇し、これによって、該一番流穀板54上へ落下した脱穀選別物が濡れている場合でも、この脱穀選別物を乾燥させながら一番流穀板54の表面に付着しにくくして一番移送樋52へ円滑に流下させて一番螺旋23に取り込ませることができ、脱穀作業を円滑に行うことができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、穀粒の乾燥も促進されるため、後行程の穀粒乾燥行程においてもその穀粒乾燥に要する時間を短縮することができる。また、一番流穀板昇温室55の下端部が、機体1の機体フレ−ム50の下面よりも上側に位置することにより、該一番流穀板昇温室55が機体フレ−ム50によって防護され、走行装置2によって押し上げられた泥土によって該一番流穀板昇温室55の外壁33が変形するのを防止することができる。
【実施例5】
【0048】
図12、図13、図14、図15に示すように、上述の実施例3と実施例4とを組み合わせて、唐箕風昇温室48と一番流穀板昇温室55とを直列に設置してもよい。この場合、前記唐箕風昇温室48と一番流穀板昇温室55とを中間連結管57で接続し、唐箕風昇温室48から流出した排気ガスが、一番流穀板昇温室55へ流入する。また、この構成による効果も、上述の実施例3による効果に実施例4による効果を組み合わせたものとなる。
【実施例6】
【0049】
図16、図17に示すように、上述の実施例5の構成を一部変更し、直列に接続していた唐箕風昇温室48と一番流穀板昇温室55とを、並列に接続する構成としてもよい。即ち、唐箕風胴入口側排気管44に換えて、後端部を二叉に分岐させた入口側分岐排気管58前端の漏斗状拡開部を前記排気分岐管40の他方に隙間を有して被せ、該入口側分岐排気管58の後端部の一方の出口を唐箕風昇温室48に接続する一方、他方の出口を一番流穀板昇温室55に接続する。また、前記唐箕風昇温室48の外側面と一番流穀板昇温室55の外側面とに、集合排気管59の二叉の入口管を接続する。該集合排気管59の後部は、脱穀装置3の外側面に沿って後方へ延出させて配置する。
【0050】
この構成による効果は、上述の実施例3による効果に実施例4による効果を組み合わせたものとなる。
【実施例7】
【0051】
図18に示すように、上述の実施例2の構成に加え、穀粒貯留装置4底部の螺旋搬送装置28と揚穀部29内の揚穀螺旋と穀粒排出オ−ガ内の排出螺旋とを連動して駆動するベルトテンション式の排出クラッチ60と、前記排気方向切換弁41を回動操作する排気方向切換操作レバ−42とを連動させてもよい。即ち、実施例2の構成に、前記排気方向切換操作レバ−42と排出クラッチ60のテンションロ−ラ支持ア−ム61とを第二連繋ワイヤ−62によって連繋する構成を付加したものである。
【0052】
これにより、排出クラッチ60を入り側に操作して穀粒排出作業を開始すると、この排出クラッチ60の入り操作に連動して、排気方向切換弁41が穀粒貯留装置4の底面31の昇温室32へ排気ガスを送る状態に切り換わり、貯留穀粒が濡れている場合でも、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、排出クラッチ60を切り側に操作すると、これに連動して排気方向切換弁41が第二排気管39側へ排気ガスを送る状態に切り換わり、前記昇温室32へ排気ガスが送られなくなって、穀粒貯留装置4の底面31が過度に昇温されないようになる。これによって、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の劣化を防止することができる。
【実施例8】
【0053】
図19、図20に示すように、上述実施例2の構成の一部を変更し、排気方向切換弁41を電動モ−タ63等の電動式のアクチュエ−タによって切換作動させるように構成してもよい。
【0054】
そして、図21に示すブロック回路を構成し、コントロ−ラ64に対して、その入力側に、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の水分量ないし水分含有率を検出する水分検出センサ−65を接続し、一方、その出力側に、前記電動モ−タ63を接続する。尚、前記水分検出センサ−65は、穀粒貯留装置4の底面31の上面側(穀粒貯留装置4の内面側)に設置する。
【0055】
この構成により、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の水分量ないし水分含有率が予め設定した所定値を超えたことが水分検出センサ−65によって検出された場合に、コントロ−ラ64からの出力によって電動モ−タ63が作動して、排気方向切換弁41が穀粒貯留装置4の底面31の昇温室32へ排気ガスを送る姿勢に切り換わる。これによって、貯留穀粒が濡れている場合には、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、水分検出センサ−65による検出の結果、貯留穀粒の水分量ないし水分含有率が予め設定した所定値よりも低くなると、コントロ−ラ64からの出力によって電動モ−タ63が逆方向に作動して、排気方向切換弁41が第二排気管39側へ排気ガスを送る状態に切り換わり、前記昇温室32へ排気ガスが送られなくなって、穀粒貯留装置4の底面31が過度に昇温されないようになる。これによって、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の劣化を防止することができる。このようにして、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の濡れ具合を一定に制御することができ、穀粒排出能率を常に一定に保つことができると共に、穀粒の品質を安定させることができるものである。
【実施例9】
【0056】
図22に示すように、上記実施例8におけるブロック回路に換えて、コントロ−ラ66に対して、その入力側に、穀粒貯留装置4の底面31の温度を検出する温度検出センサ−67を接続する一方、その出力側に、前記電動モ−タ63を接続して構成してもよい。
【0057】
この構成により、穀粒貯留装置4の底面31の温度が予め設定した所定温度を下回ったことが温度検出センサ−67によって検出された場合に、コントロ−ラ66からの出力によって電動モ−タ63が作動して、排気方向切換弁41が穀粒貯留装置4の底面31の昇温室32へ排気ガスを送る姿勢に切り換わる。これによって、貯留穀粒が濡れている場合には、この穀粒を乾燥させながら底面31に付着しにくくして下部の螺旋搬送装置28に円滑に流下させることができ、穀粒排出作業を円滑に行え且つこの穀粒排出作業に要する時間を短縮することができることによって、コンバインの作業能率を高めることができる。また、穀粒貯留装置4の底面31の温度が予め設定した所定温度よりも高くなったことが温度検出センサ−67によって検出された場合には、コントロ−ラ66からの出力によって電動モ−タ63が逆方向に作動して、排気方向切換弁41が第二排気管39側へ排気ガスを送る状態に切り換わり、前記昇温室32へ排気ガスが送られなくなって、穀粒貯留装置4の底面31が過度に昇温されないようになる。これによって、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の劣化を防止することができる。このようにして、穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の濡れ具合を一定に制御することができ、穀粒排出能率を常に一定に保つことができると共に、穀粒の品質を安定させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】コンバインの説明用平面図である。(実施例1)
【図2】コンバインの説明用平面図である。(実施例1)
【図3】コンバインの説明用正面図である。(実施例1)
【図4】コンバインの説明用側面図である。(実施例1)
【図5】コンバインの説明用平面図である。(実施例2)
【図6】要部の説明用平面図である。(実施例2)
【図7】要部の説明用平面図である。(実施例2)
【図8】コンバインの説明用正面図である。(実施例3)
【図9】コンバインの説明用正面図である。(実施例3)
【図10】コンバインの説明用平面図である。(実施例4)
【図11】コンバインの説明用側面図である。(実施例4)
【図12】コンバインの説明用平面図である。(実施例5)
【図13】コンバインの説明用側面図である。(実施例5)
【図14】コンバインの説明用正面図である。(実施例5)
【図15】一部の説明用平面図である。(実施例5)
【図16】コンバインの説明用平面図である。(実施例6)
【図17】コンバインの説明用側面図である。(実施例6)
【図18】コンバインの説明用平面図である。(実施例7)
【図19】コンバインの説明用平面図である。(実施例8)
【図20】コンバインの説明用正面図である。(実施例8)
【図21】ブロック回路図である。(実施例8)
【図22】ブロック回路図である。(実施例9)
【符号の説明】
【0059】
1 機体
2 走行装置
3 脱穀装置
4 穀粒貯留装置
5 刈取装置
22 唐箕
28 螺旋搬送装置
31 底面
45 風胴
52 一番移送樋
53 二番移送樋
54 一番流穀板
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて機体1を構成したコンバインにおいて、前記穀粒貯留装置4の底面31を該穀粒貯留装置4の下部に配置した螺旋搬送装置28に向けて傾斜させて設けると共に、前記機体1に搭載するエンジンEの排気によって前記穀粒貯留装置4の底面31を加熱して該穀粒貯留装置4内の貯留穀粒の前記螺旋搬送装置28側への流下を促進できるように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
走行装置2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて機体1を構成したコンバインにおいて、前記機体1に搭載するエンジンEの排気によって脱穀装置3における唐箕22の風胴45部を加熱して該風胴45部から吐出する選別風の温度を上昇させられるように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
走行装置2の上方に脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを並設し、前記脱穀装置3の前側に刈取装置5を設けて機体1を構成したコンバインにおいて、一番流穀板54を前記脱穀装置3における一番移送樋52と二番移送樋53との間において一番移送樋52側に向けて傾斜させて設けると共に、前記機体1に搭載するエンジンEの排気によって前記一番流穀板54を加熱して該一番流穀板54上の処理物の一番移送樋52側への流下を促進できるように構成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−34241(P2006−34241A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222347(P2004−222347)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】