説明

コンバイン

【課題】最高速付近での馬力損失を低減すると共に、定速駆動の切換によって作業者が感じるショックを緩和させ、取扱い性を向上させる。
【解決手段】最高速手前以下の速度で、油圧変速機構40の油圧ポンプ38の変速出力により、走行部2及び作業部7を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構40の入力側と出力側を直結させる車速定速機構76と、作業部7を定速駆動させる作業定速機構121を設ける作業車において、作業最高速の手前で作業部7を車速同調から定速駆動に移行させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば左右一対の走行クローラを装設して移動するコンバインまたはトラクタまたは建設車輌などの作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1の公報に示す如く、左右走行クローラを装設したコンバインなどにおいて、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部(走行クローラ)及び作業部(刈取部)を駆動するものが知られている。
【特許文献1】特開昭62−163826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、左右走行クローラを装設したコンバインなどにおいて、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部(走行クローラ)及び作業部(刈取部)を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を車速定速機構により直結させたり、作業部を定速駆動させる場合、定速機構により直結される前と後の回転差(速度差)によってショックが発生し易い等の不具合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
然るに、本発明は、請求項1の如く、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部及び作業部を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を直結させる車速定速機構と、作業部を定速駆動させる作業定速機構を設ける作業車において、作業最高速の手前で作業部を車速同調から定速駆動に移行させることとした。
【0005】
また、請求項2の如く、作業部を車速同調から定速駆動に移行させたとき、車速を上げた後、走行部を油圧変速駆動から定速駆動に移行させることとした。
【0006】
また、請求項3の如く、最高速付近からの車速の減速により、走行部を定速駆動から油圧変速駆動に切換えたとき、車速がさらに減速した後、作業部を定速駆動から車速同調に切換えることとした。
【0007】
また、請求項4の如く、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を直結させる車速定速機構を設ける作業車において、車速が最高速の付近で走行部を油圧変速から定速駆動に移行させた後、油圧変速機構の油圧モータの出力調整をフリーにすることとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、請求項1の如く、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部及び作業部を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を直結させる車速定速機構と、作業部を定速駆動させる作業定速機構を設ける作業車において、作業最高速の手前で作業部を車速同調から定速駆動に移行させるもので、車速に同調した作業速度でスムーズに作業を行うことができる構造で、最高速付近での馬力損失を低減し得ると共に、作業部を車速同調から定速駆動に切換えるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ得、取扱い性を向上させ得る。
【0009】
また、請求項2の如く、作業部を車速同調から定速駆動に移行させたとき、車速を上げた後、走行部を油圧変速駆動から定速駆動に移行させるもので、作業部を車速同調から定速駆動に移行させた後、最高速付近に車速を上げた後、走行部を定速駆動させるから、最高速付近での馬力損失を低減し得ると共に、油圧変速機構の入力側と出力側を直結させるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ得、取扱い性を向上させ得る。
【0010】
また、請求項3の如く、最高速付近からの車速の減速により、走行部を定速駆動から油圧変速駆動に切換えたとき、車速がさらに減速した後、作業部を定速駆動から車速同調に切換えるもので、作業部を定速駆動から車速同調に切換えるときのショック、または油圧変速機構の入力側と出力側の直結を解除させるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ得、取扱い性を向上させ得る。
【0011】
また、請求項4の如く、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を直結させる車速定速機構を設ける作業車において、車速が最高速の付近で走行部を油圧変速から定速駆動に移行させた後、油圧変速機構の油圧モータの出力調整をフリーにするもので、スムーズに走行を行うことができる構造で、最高速付近での馬力損失を低減し得ると共に、走行部を油圧変速から定速駆動に切換えるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ得、取扱い性を向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの全体の斜視図、図2は同右側面図、図3は平面説明図であり、図中1は左右一対の走行クローラ2を装設する左右一対のトラックフレーム、3は前記の左右トラックフレーム1に架設する機台、4はフィードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴を内蔵している脱穀機である脱穀部、7は引起機構8及び刈刃9及び穀稈搬送機構10などを備える刈取部、11は刈取フレーム12を介して刈取部7を昇降させる油圧昇降シリンダ、13は排藁チェン14終端を臨ませる排藁処理部、15は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒を介して搬入する穀物タンク、16・17は前記タンク15の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、18は運転操作ハンドル19及び運転席20を備える運転キャビン、21は運転キャビン18下方に設けるエンジンであり、連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成している。
【0013】
さらに、図4乃至図8に示す如く、機台3前側で左右の走行クローラ2の間にミッションケース22を配設させ、ミッションケース22とエンジン21を略直列に前後に設け、ミッションケース22を介して走行クローラ2にエンジン21の駆動力を伝えると共に、脱穀部4前側の機台3上面に左右の支持台23・24を立設させ、支持台23・24に刈取フレーム12を介して刈取部7を昇降自在及び横移動可能に設ける。また、支持台23・24後側の機台3上面にカウンタケース25を設け、脱穀部4及び刈取部7にカウンタケース25を介してエンジン21の駆動力を伝える。
【0014】
さらに、ミッションケース22側方の機台3にキャビン前フレーム26を立設させ、キャビン18のステップフレーム27前部を前フレーム26上部に回動支点軸28を介して設け、支点軸28回りにキャビン18を前方に回動自在に支持させると共に、右の支持台24に左のキャビン後フレーム29を立設させ、機台3に立設させる右のキャビン後フレーム30との間の機台3上面にエンジン21を設け、エンジン21をエンジンルームカバー31で覆う。また、前記カバー31の上方で左右の後フレーム29・30上部をキャビン横フレーム32によって連結させ、キャビン横フレーム32にフックレバー33を設け、キャビン18のステップフレーム27後部を横フレーム32に上載させてフックレバー33により係脱自在に固定させると共に、右の支持台24と前フレーム26の間に水平連結フレーム34を固定させ、水平連結フレーム34中間と横フレーム32中間に傾斜連結フレーム35を固定させ、連結フレーム34・35によってフレーム剛性を確保する。また、左の後フレーム29にオーガ支柱36を連結させて上側にオーガレスト37を設け、昇降及び旋回自在に設ける排出オーガ17をオーガレスト37の本機収納位置に支持させる。
【0015】
さらに、図9乃至図14に示す如く、前記走行クローラ2を駆動するミッションケース22は、1対の油圧走行ポンプ38及び油圧走行モータ39を設けて走行主変速用の油圧式無段変速機構を形成する走行変速部材40と、1対の油圧旋回ポンプ41及び油圧旋回モータ42を設けて旋回用の油圧式無段変速機構を形成する旋回部材43とを備え、前記エンジン21の出力軸44にミッションケース22の入力軸45を介して連結させて前記各ポンプ38・41を駆動するように構成している。
【0016】
また、前記走行モータ39のモータ軸46に、副変速機構47及び差動機構48を介して左右走行クローラ2の各駆動輪49を連動連結させるもので、前記差動機構48は左右対称の1対の遊星ギヤ機構50を有し、各遊星ギヤ機構50は1つのサンギヤ51と、該サンギヤ51の外周で噛合う3つのプラネタリギヤ52と、これらプラネタリギヤ52に噛合うリングギヤ53などで形成している。
【0017】
前記プラネタリギヤ52は、サンギヤ51の遊転軸54と同軸線上の車軸55のキャリヤ56にそれぞれ回転自在に軸支させ、左右のサンギヤ51を挾んで左右のキャリヤ56を対向配置させると共に、前記リングギヤ53は各プラネタリギヤ52に噛み合う内歯を有して車軸55に回転自在に軸支させ、車軸55を延設して駆動輪49を軸支させている。
【0018】
また、走行変速部材40は、走行ポンプ38の斜板角度の変更により走行モータ39の正逆回転と回転数の制御を行うもので、走行モータ39の回転を、モータ軸46と副変速機構47の低速及び高速ギヤ57・58とブレーキ軸59と分岐軸60を介して、左右のリングギヤ53に伝達して左右のキャリヤ56を回転させるように構成している。また前記ブレーキ軸59に駐車ブレーキ61を設けると共に、刈取部7に回転力を伝達する刈取駆動プーリ62を前記モータ軸46に設け、刈取部7を車速同調速度で駆動させる。
【0019】
上記のように、前記分岐軸60を介しリングギヤ53に伝達された走行モータ39の駆動力を、左右の遊星ギヤ機構50を介して左右キャリヤ56に伝達させると共に、左右キャリヤ56に伝達された回転を左右の駆動輪49にそれぞれ伝え、左右走行クローラ2を同一方向に同一速度で駆動するように構成している。
【0020】
さらに、旋回用の油圧式無段変速機構で形成する旋回部材43は、旋回ポンプ41の斜板角度の変更により旋回モータ42の正逆回転と回転数の制御を行うもので、操向出力ブレーキ63を設けるモータ軸64と、操向出力クラッチ65を設けるクラッチ軸66と、前記の左右サンギヤ51に常時噛合させる左右入力ギヤ67・68を設け、旋回モータ42の出力用の前記モータ軸64及び操向出力クラッチ65を介してクラッチ軸66を連結させ、クラッチ軸66に正転ギヤ69及び逆転ギヤ70を介して左右の入力ギヤ67・68を連結させる。そして、右側のサンギヤ51に正転ギヤ69を介してモータ42回転力を伝え、また左側のサンギヤ51に逆転ギヤ70を介してモータ42回転を伝え、旋回モータ42を正転(逆転)時、左右同一回転数で、左サンギヤ51を逆転(正転)させ、かつ右サンギヤ51を正転(逆転)させ、左右走行クローラ2を逆方向に同一速度で駆動するように構成している。
【0021】
而して、旋回モータ42を停止させて左右サンギヤ51を静止固定させた状態で、走行モータ39を駆動すると、走行モータ39の回転は左右のリングギヤ53に同一回転数で伝達され、左右遊星ギヤ機構50のキャリヤ56を介して左右の走行クローラ2が左右同一回転方向で同一回転数によって駆動され、機体の前後方向直進走行が行われる。一方、走行モータ39を停止させて左右のリングギヤ53を静止固定させた状態で、旋回モータ42を正逆回転駆動すると、左側の遊星ギヤ機構50が正或いは逆回転、また右側の遊星ギヤ機構50が逆或いは正回転し、左右走行クローラ2を逆方向に駆動し、機体を左或いは右に旋回させる。また、走行モータ39を駆動させながら、旋回モータ42を駆動することにより、機体が左右に旋回して進路が修正されるもので、機体の旋回半径は旋回モータ42の出力回転数によって決定される。
【0022】
また、前記入力軸45にファン軸71を連結させ、ファン軸71によってエンジン21水冷用のラジエータの冷却ファン72を駆動させると共に、前記の走行及び旋回ポンプ38・41の各ポンプ軸73・74にギヤ群75を介して前記ファン軸71を連結させ、各ポンプ38・41に入力軸45を連結させると共に、走行ポンプ38のポンプ軸73と、走行モータ39のモータ軸46を、定速クラッチ76を介して連結させる定速軸77を設け、定速クラッチ76を入にしたとき、定速軸77を介してポンプ軸73とモータ軸46をギヤ連結させ、走行変速部材40を介することなく、入力軸45の回転を副変速機構47に伝え、エンジン21の定速回転によって左右の走行クローラ2を駆動させ、略一定の車速で走行して収穫作業などを行わせる。なお、旋回ポンプ軸74上にチャージポンプ78を設けて駆動する。
【0023】
さらに、図15に示す如く、走行ポンプ38の斜板79角度を変更して出力調整する主変速シリンダ80と、主変速レバー81及び操向ハンドル19に連結させて切換える変速バルブ82と、走行ポンプ38出力を一定量減速するバルブ83を設け、前記チャージポンプ78を各バルブ82・83を介して主変速シリンダ80に油圧接続させるもので、主変速レバー81によって変速バルブ82を切換え、主変速シリンダ80を作動させて走行ポンプ38の斜板79角度を変更させ、走行モータ39のモータ軸46の回転数を無段階に変化させたり、逆転させる走行変速動作を行わせ、また前記斜板79の角度調節動作によって変速バルブ82が中立復帰するフィードバック動作を行わせ、主変速レバー81の操作量に比例させて前記斜板79角度を変化させ、走行モータ39の回転数を変化させて車速を変更させる。
【0024】
また、走行モータ39の斜板84角度を変更して出力調整する副変速シリンダ85を設け、前記チャージポンプ78に電磁副変速バルブ86を介して副変速シリンダ85を油圧接続させ、副変速バルブ86が中立のときに副変速シリンダ85を油タンクであるミッションケース22に短絡させ、走行モータ39の斜板84角度を主回路油圧によって変化させると共に、副変速バルブ86の切換によって斜板84角度を強制的に変化させ、走行モータ39の出力を高速または低速に変更させる。
【0025】
さらに、旋回ポンプ41の斜板87角度を変更して出力調整する旋回シリンダ88を設け、操向ハンドル19及び主変速レバー81に連結させて切換える旋回バルブ89並びに電磁自動操向バルブ90を介してチャージポンプ78を旋回シリンダ88に油圧接続させ、操向ハンドル19によって旋回バルブ89を切換え、旋回シリンダ88を作動させて旋回ポンプ41の斜板87角度を変更させ、旋回モータ42のモータ軸64の回転数を無段階に変化させたり、逆転させる左右旋回動作を行わせ、また前記斜板87の角度調節動作によって旋回バルブ89が中立復帰するフィードバック動作を行わせ、操向ハンドル19の操作量に比例させて前記斜板87角度を変化させ、旋回モータ42の回転数を変化させて左右旋回角度を変更させる。
【0026】
また、主変速レバー81が中立以外の位置に操作され、操向ハンドル19が直進以外に操作されることにより、主変速レバー81の操作方向と操作量に比例させて走行ポンプ38の油圧出力を増減させ、油圧モータ39を正逆転または増減速させて前後進速度(車速)を変更させると共に、主変速レバー81の操作量に比例させて旋回ポンプ41出力を変化させるもので、高速側走行変速によって旋回半径を自動的に小さくし、かつ低速側走行変速によって旋回半径を自動的に大きくし、操向ハンドル19の一定操作によって走行速度に関係なく左右走行クローラ2の旋回半径を略一定に維持させ、作業走行速度の変更並びに未刈り穀稈列などに機体を沿わせる進路修正などを行わせる。一方、操向ハンドル19の操作量に比例させて各バルブ82・89の制御により旋回ポンプ41出力と走行ポンプ38出力を変化させ、旋回半径(操舵角)を小さく(大きく)したとき、走行速度(車速)を比例させて減速させ乍ら、左右の走行クローラ2の速度差を大きくし、左右に旋回させるもので、左右走行クローラ2の駆動速度を変更して条合せ進路修正並びに圃場枕地でのスピンターンによる方向転換を行い、連続的に穀稈を刈取って脱穀する収穫作業を行う。なお、主変速レバー81が中立のとき、操向ハンドル19の操作に関係なく、旋回バルブ89が中立維持され、旋回ポンプ41の油圧出力が略零に保たれ、旋回モータ42を停止させる。
【0027】
さらに、図14乃至図22に示す如く、前記エンジン21の出力軸44を前側及び後側に突設させ、出力軸44の前側に前記入力軸45を連結させ、出力軸44の後側に作業出力プーリ91を設けると共に、エンジン21の左側で脱穀部4前側の機台3上面にカウンタケース25を設け、入力プーリ92、車速同調プーリ93、脱穀プーリ94、刈取プーリ95、選別プーリ96をカウンタケース25に軸支させ、ケース25後側の入力プーリ92を作業出力プーリ91にテンション脱穀クラッチ97を介してベルト98連結させ、エンジン21の駆動力をカウンタケース25に伝える。また、右支持台24前側のアイドルプーリ99を介してミッションケース22の刈取駆動プーリ62に前記カウンタケース25右側の車速同調プーリ93をベルト100連結させると共に、機台3の前側上面に立設させる支持台23・24に刈取入力ケース101を回転自在に軸支させ、前記ケース101に刈取フレーム12を連結させてケース101回りに刈取部7を回転させて昇降させるもので、前記ケース101左側に刈取入力軸102を介して刈取入力プーリ103を軸支させ、前記カウンタケース25左側の刈取プーリ95を刈取入力プーリ103にベルト104連結させ、刈取部7の各部に駆動力を伝える。
【0028】
また、前記扱胴6の駆動入力プーリ105にカウンタケース25前側の脱穀プーリ94をベルト106連結させ、扱胴6下側の選別唐箕及び揺動選別機構に選別プーリ96から駆動力を伝え、脱穀部6の各部を駆動すると共に、前記カウンタケース25の左側面にフィードチェン入力軸107を設け、外側に移動可能な前記フィードチェン5の駆動スプロケット108に入力軸107から動力を伝える。また、前記穀物タンク15の前側に排出駆動プーリ109を設け、該プーリ109を前記作業出力プーリ91に排出クラッチ110を介してベルト連結させ、排出オーガ17にエンジン21出力を伝えてタンク15の穀粒を排出させる。
【0029】
さらに、前記カウンタケース25に扱胴入力軸111を軸支させ、該軸111を前後方向に延設させ、カウンタケース25前面外側の前記軸111前側に脱穀プーリ94を設け、カウンタケース25の後面外側の前記軸111後側に入力プーリ92を設け、扱胴入力軸111にエンジン21の一定回転動力を入力させて定速回転させる。また、前記カウンタケース25の右側に同調入力軸112を軸支させ、カウンタケース25の右側外側の前記軸112右側に車速同調プーリ93を設け、アイドルプーリ99を介してプーリ62・93間にベルト100を緊張させ、ミッションケース22からカウンタケース25に車速同調動力を入力させる。
【0030】
さらに、前記扱胴入力軸111に右側をベベルギヤ113連結させるカウンタ軸または選別入力軸である定速軸114と、該軸114の前側に略平行に設ける車速同調軸115とを、カウンタケース25に軸支させると共に、刈取変速機構116を形成する低速ギヤ117及び高速ギヤ118を前記各軸114・115の間に設け、低速及び中立及び高速の各刈取変速を行う刈取変速スライダ119によって前記各ギヤ117・118を車速同調軸115に択一的に係合させ、刈取変速を行う。また、前記各ギヤ117・118に同調入力軸112の車速同調回転力を伝える一方向クラッチ120を同調入力軸112上に設け、車速同調プーリ93からの動力を一方向クラッチ120によって伝える前記ギヤ117・118を介して車速同調軸115を回転させるように構成する。
【0031】
さらに、刈取定速機構121を形成する流し込みギヤ122と高速カットギヤ123を前記各軸114・115の間に設け、刈取部7を流し込み駆動または高速カット駆動させる切換スライダ124によって前記各軸114・115に前記各ギヤ122・123を択一的に係合させ、刈取部7を流し込み駆動して走行状態に関係なく刈取部7の穀稈をフィードチェン5側に搬送させる一方、刈取部7を高速カット駆動して車速同調の最高速よりも早い一定回転速度で刈取部7を駆動して倒伏穀稈を刈取る。
【0032】
また、前記カウンタケース25の左側で下部後側に定速軸114の左側端を突出させ、該軸114左側端部に選別プーリ96を軸支させる。さらに、カウンタケース25の左側で下部前側に刈取伝動軸125を軸支させ、該軸125右側を車速同調軸115にトルクリミッタ126を介して連結させ、カウンタケース25左側に突出させる前記軸125の左側端部に刈取プーリ95を軸支させると共に、前記刈取入力軸102に刈取駆動軸127をギヤ128連結させ、刈取駆動軸127に刈取入力プーリ103を軸支させるもので、前記の左の支持台23に支点軸129を介してギヤ128のケースを縦軸回りに回転自在に設け、刈取入力ケース101の左側をギヤ128のケースに固定させ、各ケース101に前記ギヤ128を内設させ、刈取入力軸102の左端側から刈取り動力を入力させ、前記ケース101右端側の刈取フレーム12に内挿させる刈取伝動軸130を介して刈取部7の駆動を行わせる一方、支点軸129回りに機体左側に略水平に刈取部7を回転移動させ、機体内側の各ケース22・25付近のメンテナンス等を行う。
【0033】
さらに、前記カウンタケース25の左側上部に前記フィードチェン入力軸107を軸支させ、フィードチェンクラッチ131を設けるフィードチェン駆動軸132に前記入力軸107をチェン133連結させると共に、定速軸114の回転を車速同調軸115の回転数変化によって変速して伝えるフィードチェン変速機構134を設け、サンギヤ135とプラネタリギヤ136とリングギヤ137を備える遊星ギヤ機構138によって無段変速可能に前記機構134を形成するもので、定速軸114にサンギヤ135を係合軸支させ、定速軸114に遊転支持させるリングギヤ137を車速同調軸115にギヤ139連結させると共に、プラネタリギヤ136を遊転支持させる軸受体140を定速軸114に遊転支持させ、前記フィードチェンクラッチ131を介して前記フィードチェン駆動軸132に軸受体140をギヤ141連結させ、穀稈の搬送に必要な最低回転を確保し乍ら、低い一定回転から高回転にフィードチェン5速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
【0034】
また、刈取変速スライダ119を作動させる油圧刈取変速シリンダ142と、切換スライダ124を作動させる油圧刈取定速シリンダ143と、脱穀クラッチ97を入にする油圧脱穀シリンダ144を、前記カウンタケース25の上面蓋である油路ベース145に固定させると共に、前記定速クラッチ76を入にする車速定速シリンダ146を作動させる車速定速バルブ147と、刈取変速シリンダ142を作動させる刈取変速バルブ148と、刈取定速シリンダ143を作動させる刈取定速バルブ149と、脱穀シリンダ144を作動させる脱穀バルブ150とを、前記チャージポンプ78に並列に油圧接続させる。
【0035】
さらに、図15、図23乃至図28に示す如く、前記脱穀クラッチ97をテンションアーム151に軸支させ、カウンタケース25の支軸152にテンションアーム151を回転自在に軸支させ、折曲自在な2本のリンク153・154を介して脱穀シリンダ144のピストンロッド155をテンションアーム151に連結させ、ピストンロッド155の押し(進出)動作により、脱穀クラッチ97を入動作させてベルト98を緊張させる一方、ピストンロッド155の引き(退入)動作により、脱穀クラッチ97を切動作させてベルト98を弛める。また、脱穀クラッチ97を切り側に弾圧させるバネ156をリンク154に連結させると共に、複動型の脱穀シリンダ144のピストンロッド155進出側の油路の戻り側に絞り弁157を設け、ピストンロッド155を遅い速度で進出させて脱穀クラッチ97を入にする一方、ピストンロッド155を速い速度で退入させて脱穀クラッチ97を切にする。
【0036】
上記から明らかなように、エンジン21からの動力を、走行部である走行クローラ2と作業部である脱穀部4及び刈取部7に分配する伝動ケースであるカウンタケース25を備える作業車において、カウンタケース25の一部を形成する油路ベース145に、作業クラッチである脱穀クラッチ97または作業変速用の複数の油圧シリンダ142・143・144を設けるもので、カウンタケース25の内部または外部の両方の切換用として油圧シリンダ142・143・144を利用することができ、油圧切換え構造のコンパクト化並びにメンテナンス性の向上などを行うと共に、作業変速用の油圧シリンダ142・143のピストン160・161をカウンタケース25に内装させ、脱穀クラッチ97用の油圧シリンダ144のピストンロッド155をカウンタケース25に外装させるもので、カウンタケース25の内外に設ける変速またはクラッチ等の切換え構造を、カウンタケース25の一部である油路ベース145周りにコンパクトに配置することができ、切換え反力に対する油圧シリンダ142・143・144の支持剛性を油路ベース145の取付けにより容易に確保でき、組付け取外し性及びメンテナンス性の向上などを行うことができる。
【0037】
また、脱穀クラッチ97を形成するベルトクラッチのテンションアーム151に脱穀クラッチ97用油圧シリンダ144のピストンロッド155を連結させるもので、前記油圧シリンダ144の容量を大きくすることによってベルトクラッチに必要なテンション力を充分に得ることができ、コンパクト化及びメンテナンス性の向上などを行うと共に、脱穀クラッチ97用油圧シリンダ144を複動形にしてベルトクラッチの入と切の両方を油圧操作するもので、前記油圧シリンダ144の容量を大きくすることによってベルトクラッチに必要なテンション力を充分に得ることができ、コンパクト化及びメンテナンス性の向上などを行う。また、油圧チャージポンプ78を利用して脱穀クラッチ97用油圧シリンダ144を駆動するもので、チャージポンプ78の油圧力と、油圧シリンダ144のピストン155径と、テンションアーム151比によりテンション力を容易に決定することができ、テンション調整を不要にしてメンテナンス性の向上させると共に、ベルト98の最大伸び量よりも脱穀クラッチ97用油圧シリンダ144のピストンロッド155ロークを大きくするもので、前記ベルト98が伸びても、テンション調整をすることなく、適正なテンション力を容易に確保することができる。
【0038】
さらに、図15、図27乃至図32に示す如く、前記カウンタケース25の上面に油路ベース145を着脱自在にボルト158止め固定させ、カウンタケース25の上面開口159を閉塞すると共に、油路ベース145上面側に前記の各バルブ148・149・150を固定させ、油路ベース145の下面側に前記の各シリンダ142・143・144を固定させ、カウンタケース25の外側に脱穀シリンダ144を設け、刈取変速シリンダ142と刈取定速シリンダ143をカウンタケース25に内設させる。また、各シリンダ142・143対向する側面から各ピストンロッド160・161を互に反対の方向に突設させると共に、各シリンダ142・143の後側蓋を形成するアーム台162・163に変速アーム164及び定速アーム165一端側の各支点軸166・167を回転自在に下方側から差込んで軸支させ、各アーム164・165の他端側に各ピストンロッド160・161を連結させる。
【0039】
また、前記カウンタケース25内部で車速同調軸115と略平行にフォーク軸168を軸芯回りに回転自在に設け、刈取変速スライダ119を切換える変速フォーク169、並びに切換スライダ124を切換える定速フォーク170を、フォーク軸168に軸芯方向に摺動自在に設けると共に、前記各アーム164・165の中間に設ける各ピン171・172を各フォーク169・170に係合させ、各アーム164・165を各フォーク169・170に連結させ、前記各バルブ148・149制御により各シリンダ142・143のピストンロッド160・161を進出または退入させ、前記各アーム164・165を支点軸166・167回りに揺動させ、変速フォーク169を中立から高速または標準(低速)出力側に移動させる一方、定速フォーク170を中立から高速カットまたは流し込み回転出力側に移動させるように構成している。
【0040】
また、図14、図29、図30に示す如く、前記ピストンロッド160・161にピストンヘッド173を介して背圧ロッド174を固定させ、背圧ロッド174の外周にリング形退入ピストン175を設け、ピストンロッド160・161よりも大径でピストンヘッド173よりも小径に背圧ロッド174を形成し、退入ピストン175の外径をピストンヘッド173よりも大径に形成し、前記バルブ148・149が中立のとき、チャージポンプ78のAポート176圧油によって退入ピストン175をシリンダ142・143の段差177に当接させ、チャージポンプ78のBポート178圧油によってピストンヘッド173を退入ピストン175に当接させるもので、ピストンロッド160・161を油圧力によって中立位置に復動させて支持させる。そして、前記バルブ148・149を切換えたとき、Bポート178を前記バルブ148・149のタンク通路に開放することにより、Aポート176圧油によって背圧ロッド174とヘッド173とピストンロッド160・161が進出する一方、Aポート176を前記バルブ148・149のタンク通路に開放することにより、Bポート178圧油によってヘッド173と背圧ロッド174と退入ピストン175とピストンロッド160,・161が退入するもので、ピストンロッド160・161を介してアーム164・165が中立位置に加圧状態で復動して固定され、バネ等を設けることなくスライダ119・124を中立位置に復帰させて支持できる。また、前記シリンダ142・143の段差177に潤滑ポート179を開設させ、該ポート179をAポート176またはBポート178に連通させる。
【0041】
上記から明らかなように、複動形の油圧刈取変速及び刈取定速シリンダ142・143のピストンロッド160・161及び退入ピストン175を二重構造にして両側に圧力をかけることにより中立に支持されるもので、3位置切換バルブ148・149の中立操作によりピストンロッド160・161及び退入ピストン175を油圧によって中立位置に保持でき、シリンダ142・143本体の一方にピストンロッド160・161を突出させる複動形のシリンダ142・143によって3ポジション切換を適正に行わせることができ、コンパクトで確実な切換え機構を構成でき、刈取変速機構116または定速機構121の一方または両方の切換え構造の簡略化並びに操作性の向上などを図る。
【0042】
さらに、図32に示す如く、前記フォーク169・170をデテントボール180によって中立位置に支持させると共に、フォーク軸168の軸芯方向と直交する方向に頂角を位置させる四角孔形の変速カム181を変速フォーク169のボス部に設け、フォーク軸168と変速カム181にピン182を貫挿させると共に、フォーク軸168に対して斜交させる長孔形の定速カム183を定速フォーク170のボス部に設け、フォーク軸168と定速カム183にピン184を貫挿させる。そして、変速フォーク169を刈取標準(低速)または高速側に切換えることにより、フォーク軸168の軸芯方向の変速カム181の頂角部にピン182が当接し、フォーク軸168の軸芯回りの回転を阻止し、定速フォーク170を中立位置に支持させる。一方、定速フォーク170を高速カットまたは流込回転側に切換えることにより、定速カム180によってピン184を押してフォーク軸168を軸芯回りに回転させ、フォーク軸168の軸芯と直交する方向の変速カム181の頂角部にピン182を当接させ、変速フォーク169の軸芯方向の移動を阻止し、変速フォーク169を中立位置に支持させる。このように、1本のフォーク軸168上に変速フォーク169と定速フォーク170を設け、変速カム181と定速カム183によって各フォーク169・170の動作を相互に規制し、同時切換によるギヤ117・118・122・123噛みなどの発生を防止している。
【0043】
上記から明らかなように、刈取部7の駆動速度を変更する刈取変速機構116と、刈取部7を略定速で駆動する刈取定速機構121を備えるコンバインにおいて、刈取定速機構121が中立のときに刈取変速機構116の切換を可能にしたもので、前記の各機構116・121の異なる回転数の出力が同時に刈取部7に伝えられる不具合をなくすことができ、刈取定速機構121の定速出力を刈取変速機構116の出力に優先させて刈取部7に伝えることにより、刈取部7をスムーズに駆動でき、刈取部7の駆動トラブルの発生を低減させることができ、運転操作性を向上させると共に、刈取定速機構121の定回転操作具である定速フォーク170を中立以外に操作することにより、刈取変速機構116を中立にするもので、刈取定速機構121を中立以外の出力に切換えるとき、刈取変速機構116を中立に戻したり、中立であることを確認する等の手間を省くことができ、運転操作性を向上させる。
【0044】
また、刈取変速機構116を切換える変速操作具である変速フォーク169と、定速機構121を切換える定速フォーク170を、同一の操作軸であるフォーク軸168に設けると共に、前記の各フォーク169・170の切換動作を相互に牽制する規制機構である変速カム181と定速カム183を設けるもので、同一のフォーク軸168を共用して前記の各フォーク169・170を設けるから、各フォーク169・170の組立及び調整を容易に行うことができ、かつ各フォーク169・170をカム181・183により容易に連結させることができ、変速操作構造の簡略化及びコンパクト化並びに変速操作性の向上などを図ると共に、変速及び定回転フォーク169・170を設けるカム軸168を回転自在に設け、フォーク軸168のピン182・184をフォーク169・170の貫通穴に挿入させてカム181・183を形成するもので、前記フォーク軸168を有効に利用してカム181・183を設けることができ、前記ピン182・184と貫通穴によってカム181・183を簡単な構造であり乍ら高機能に構成でき、変速操作構造の簡略化及びコンパクト化並びに変速操作性の向上などを図る。
【0045】
さらに、図17、図20乃至図22に示す如く、前記カウンタケース25に形成する締結座185を機台3にボルト186止め固定させると共に、カウンタケース25の機外側に分離ケース187を着脱自在にボルト188止め固定させ、カウンタケース25の一部を分離ケース187によって形成し、分離ケース187の脱着によってカウンタケース25の機外側面を開閉自在に形成するもので、カウンタケース25と分離ケース187とに、前記各軸107・114・115・125・132を軸支させ、カウンタケース25上面開口159に比べ、分離ケース187を外したときのケース25機外側面の開口面積を大きくし、各軸107・114・115・125・132の脱着及びギヤ交換などを行えるように構成している。
【0046】
上記から明らかなように、エンジン21からの動力を、走行部である走行クローラ2と作業部である脱穀部4及び刈取部7に分配するカウンタケース25を備える作業車において、カウンタケース25の上面に開閉自在な開口部159を設けるもので、前記開口部159を開放させることにより、開口部159を介してカウンタケース25内部のメンテナンスを行うことができ、取扱い性を向上させることができると共に、カウンタケース25の一部を形成する分離ケース187を、カウンタケース25の機外側部の蓋として取外し自在に設け、分離ケース187を取外したときのカウンタケース25の機外側部の開口面積を上面の開口部159よりも大きく形成したもので、前記分離ケース187を取外すことにより、カウンタケース25内部のギヤまたは軸などを交換したり損傷チェックを行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0047】
また、油圧シリンダ142・143・144及び油圧バルブ148・149・150を装備する油路ベース145によってカウンタケース25上面の開口部159を開閉自在に閉塞するもので、油圧構成部品をユニット化してカウンタケース25の蓋を兼用させるから、コンパクトに構成することができ、かつメンテナンス性を向上させることができると共に、刈取部7の支持部材23・24と分離ケース187を各別に構成すると共に、カウンタケース25を本機に固定させ、カウンタケース25に分離ケース187を固定させるもので、分離ケース187の取付けまたは取外し作業を容易に行うことができ、メンテナンス等の取扱い性を向上させることができる。
【0048】
さらに、図33に示す如く、作業レバー189の脱穀操作を検出する脱穀スイッチ190と、作業レバー189の刈取操作を検出する刈取スイッチ191と、刈取変速スライダ119の低速・高速の切換を行う刈取変速スイッチ192と、主変速レバー81の高速前進及び後進の切換を検出する高速運転スイッチ193及び後進スイッチ194と、作業者の流し込みペダル195の足踏み操作を検出する手動流し込みスイッチ196と、低速・高速の副変速切換を行う副変速スイッチ197とを、マイクロコンピュータで構成する作業コントローラ198に接続させる。
【0049】
また、エンジン21の一定回転出力によって刈取部7を駆動する動作に手動で切換える直接駆動スイッチ199と、該スイッチ199の手動入力を入切する自動スイッチ200と、左右の走行クローラ2の速度(車速)を検出する左及び右車速センサ201・202と、刈取部7の搬送穀稈の有無を検出する穀稈センサ203と、刈取部7に車速同調の駆動力を入力する同調入力軸112の入力回転数を低速ギヤ117を介して検出する刈取入力センサ204と、刈取変速シリンダ142を低速または高速に切換える刈取低速及び刈取高速ソレノイド205・206と、フィードチェンクラッチ131を切にするようにフィードチェンクラッチシリンダを作動させるフィードチェンソレノイド191と、一定回転シリンダ143により切換スライダ124を流し込みギヤ122に係合動作させる流し込みソレノイド208と、定速シリンダ143により切換スライダ124を高速カットギヤ123係合動作させる高速カットソレノイド209とを、作業コントローラ198に接続させ、図34のフローチャートのように、刈取部7を、流し込み速度、または高速カット速度、または車速同調速度で作動させる。
【0050】
また、前記の自動スイッチ200がオンの状態下で高速運転スイッチ193がオンになったときに定速クラッチ76を入にする高速運転ソレノイド211と、前記の副変速スイッチ197の切換によって副変速シリンダ85を作動させて走行モータ39を低速または高速出力にする副変速用低速及び高速ソレノイド212・213と、前記脱穀スイッチ190のオンによって脱穀クラッチ97を入にする脱穀クラッチソレノイド214とを、作業コントローラ198に接続させる。
【0051】
さらに、図34のフローチャートに示す如く、作業レバー189の操作により脱穀スイッチ190がオンになると、フィードチェンソレノイド207をオフにしてフィードチェンクラッチ131を入にし、フィードチェン5の駆動を開始し、かつ脱穀クラッチソレノイド214を作動させて脱穀クラッチ97を入にし、脱穀部4とフィードチェン5を駆動する。
【0052】
また、作業レバー189の操作により刈取スイッチ191がオンになると、車速同調プーリ93を介して主変速駆動力が刈取部7に伝達される。このとき、流し込みペダル195の足踏み操作が行われて流し込みスイッチ196がオンになると、刈取入力センサ204が検出する刈取部7の車速同調の入力回転数が流し込みギヤ122による回転設定以下のとき、刈取変速スライダ119を中立位置に移動させて刈取変速機構116の刈取変速出力を中立にして車速同調入力軸122の伝動をオフにし、かつ流し込みソレノイド208を作動させて流し込みギヤ122を介して刈取部7を高速カットギヤ123よりも低速で定速駆動する。一方、流し込みスイッチ196がオンになったとき、刈取部7の車速同調の入力回転数が流し込みギヤ122による回転設定以上の場合、刈取変速機構116の刈取変速出力を中立にして同調入力軸112の伝動をオフにし、かつ高速カットソレノイド209の動作によって高速カットギヤ123を介して刈取部7を流し込みギヤ122よりも高速の最高回転で定速駆動する。
【0053】
また、後進スイッチ194がオフのときで、車速センサ201・202によって検出する車軸55が停止しているとき、刈取変速機構116を中立にして刈取部7の車速同調駆動を中止する。一方、車軸55が駆動されていると、走行モータ39の副変速出力が低速のときで、刈取入力センサ204が検出する刈取部7の車速同調の入力回転が高速カットギヤ123による回転設定以上のとき、高速カットソレノイド209を作動させ、刈取変速機構116を中立にし、高速カットギヤ123を介して刈取部7を最高速で定速駆動する高速カット動作を行わせる。
【0054】
また、走行モータ39の副変速出力が低速のときで、刈取部7の入力回転が設定以上のときで、自動スイッチ200がオンのとき、直接駆動スイッチ199がオン操作されると、高速運転ソレノイド211を作動させて定速クラッチ76を入にし、走行変速部材40を介することなく、エンジン21の駆動力を定速クラッチ76から副変速機構47に直接伝達させ、高速運転動作させる。
【0055】
さらに、前記エンジン21を作動させるキースイッチをオンにして作業コントローラ198に電源を印加させると、低速ソレノイド212がオンになって副変速バルブ86作動させ、走行モータ39の斜板84を低速に切換える。そして、主変速レバー81操作によって走行ポンプ38の斜板79角度を変更して走行させると共に、副変速スイッチ197を高速にすることにより、副変速バルブ86が高速に切換わると共に、副変速スイッチ197を低速操作して副変速バルブ86が低速に切換えられているとき、主変速レバー81を走行ポンプ38が最高速になるように操作することにより、走行ポンプ38の容積効率が90乃至95パーセントになる最高速度付近で、主変速レバー81によって高速運転スイッチ193がオンになり、主変速レバー81の最高速度操作が検出されると、低速及び高速ソレノイド212・213を自動的にオフにして副変速バルブ86を中立に維持させ、副変速シリンダ85を油タンク側に短絡させて該シリンダ85のピストンを自由に出入させ、走行ポンプ38の吐出油圧がチャージポンプ78油圧になるように、走行モータ39の斜板84をポンプ38油圧によって中立側に戻すと共に、高速運転ソレノイド211を自動的にオンにして車速定速バルブ147を切換え、車速定速シリンダ146を作動させて定速クラッチ76を入にし、走行変速部材40を介することなく、エンジン21の駆動力を定速クラッチ76から副変速機構47に直接伝達させ、左右の走行クローラ2を駆動させるもので、定速クラッチ76を入にした後、約0.2秒経過してから、副変速バルブ86を中立にし、走行モータ39の斜板84を遅延させてフリーにする。
【0056】
上記から明らかなように、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構である走行変速部材40の油圧ポンプ38の変速出力により、走行部である走行クローラ2を駆動すると共に、最高速付近で走行変速部材40の入力側と出力側を直結させる車速定速機構である定速クラッチ76を設ける作業車において、車速が最高速の付近で走行クローラ2を油圧変速から定速駆動に移行させた後、走行変速部材40の油圧モータ39の出力調整をフリーにする。そして、スムーズに走行を行うことができる構造で、最高速付近での馬力損失を低減させると共に、走行クローラ2を油圧変速から定速駆動に切換えるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ、取扱い性を向上させる。
【0057】
また、直接駆動スイッチ199がオフのとき、刈取変速スイッチ197の操作により、刈取変速機構116の刈取変速出力を低速または高速に切換え、各ギヤ117・118の一方を介して車速同調入力により刈取部7を低速または高速駆動し、起立している穀稈を低速で、または倒伏している穀稈を高速で刈取る。
【0058】
さらに、図35の車速制御フローチャートと、図36の車速と刈取部7の回転数の関係を示す出力線図に示す如く、前記主変速レバー81の増速操作によって車速と刈取部7の回転数を同調させて上げて高速で収穫作業を行うとき、刈取部7の高速カット動作を行わせるまでは、走行変速部材40の出力により走行クローラ2を無段変速し乍ら刈取部7を車速同調させて駆動すると共に、車速が刈取部7の高速カット位置まで上がると、高速カットソレノイド209を自動的に励磁動作させ、刈取定速機構121を介してエンジン21出力を刈取部7に伝え、刈取部7を定速駆動する高速カット動作を行わせる。また、車速が最高速付近まで上がったとき、または主変速レバー81の最高速操作により高速運転スイッチ197がオンになったとき、高速運転ソレノイド211を自動的に励磁動作させ、車速定速クラッチ76を入動作させ、走行変速部材40の入力側と出力側を直結する車速ロック動作を行わせ、走行クローラ2を最高速付近の車速ロック位置で高速駆動する。
【0059】
上記から明らかなように、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構である走行変速部材40の油圧ポンプ38の変速出力により、走行部である走行クローラ2及び作業部である刈取部7を駆動すると共に、最高速付近で走行変速部材40の入力側と出力側を直結させる車速定速機構である定速クラッチ76と、刈取部7を定速駆動させる作業定速機構である刈取定速機構121を設ける作業車において、作業最高速の手前で刈取部7を車速同調から定速駆動に移行させる。そして、車速に同調した作業速度でスムーズに作業を行うことができる構造で、最高速付近での馬力損失を低減させると共に、刈取部7を車速同調から定速駆動に切換えるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ、取扱い性を向上させる。また、刈取部7を車速同調から定速駆動に移行させたとき、車速を上げた後、走行クローラ2を油圧変速駆動から定速駆動に移行させるもので、刈取部7を車速同調から定速駆動に移行させた後、最高速付近に車速を上げた後、走行クローラ2を定速駆動させ、最高速付近での馬力損失を低減すると共に、走行変速部材40の入力側と出力側を直結させるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ、取扱い性を向上させる。
【0060】
また、前記の車速ロック動作状態で走行クローラ2と刈取部7を定速駆動しているとき、主変速レバー81の減速側操作により車速を下げると、刈取部7の高速カット位置に車速が下がるまでは、車速定速クラッチ76の切により、走行クローラ2を走行変速部材40の無段変速出力により駆動し乍ら、刈取部7を定速駆動すると共に、車速が刈取部7の高速カット位置まで下がると、高速カットソレノイド209がオフになって刈取高速ソレノイド206をオンにし、刈取部7を車速同調させて駆動する。
【0061】
上記から明らかなように、最高速付近からの車速の減速により、走行クローラ2を定速駆動から油圧変速駆動に切換えたとき、車速がさらに減速した後、刈取部7を定速駆動から車速同調に切換える。そして、刈取部7を定速駆動から車速同調に切換えるときのショック、または走行変速部材40の入力側と出力側の直結を解除させるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させ、取扱い性を向上させる。
【0062】
以上実施例から明らかなように本発明は、請求項1の如く、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構40の油圧ポンプ38の変速出力により、走行部2及び作業部7を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構40の入力側と出力側を直結させる車速定速機構76と、作業部7を定速駆動させる作業定速機構121を設ける作業車において、作業最高速の手前で作業部7を車速同調から定速駆動に移行させるもので、車速に同調した作業速度でスムーズに作業を行うことができる構造で、最高速付近での馬力損失を低減することができると共に、作業部7を車速同調から定速駆動に切換えるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させることができ、取扱い性を向上させることができる。
【0063】
また、請求項2の如く、作業部7を車速同調から定速駆動に移行させたとき、車速を上げた後、走行部2を油圧変速駆動から定速駆動に移行させるもので、作業部7を車速同調から定速駆動に移行させた後、最高速付近に車速を上げた後、走行部2を定速駆動させるから、最高速付近での馬力損失を低減することができると共に、油圧変速機構40の入力側と出力側を直結させるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させることができ、取扱い性を向上させることができる。
【0064】
また、請求項3の如く、最高速付近からの車速の減速により、走行部2を定速駆動から油圧変速駆動に切換えたとき、車速がさらに減速した後、作業部7を定速駆動から車速同調に切換えるもので、作業部7を定速駆動から車速同調に切換えるときのショック、または油圧変速機構40の入力側と出力側の直結を解除させるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させることができ、取扱い性を向上させることができる。
【0065】
また、請求項4の如く、最高速手前以下の速度で、油圧変速機構40の油圧ポンプ38の変速出力により、走行部2を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構40の入力側と出力側を直結させる車速定速機構76を設ける作業車において、車速が最高速の付近で走行部2を油圧変速から定速駆動に移行させた後、油圧変速機構40の油圧モータ39の出力調整をフリーにするもので、スムーズに走行を行うことができる構造で、最高速付近での馬力損失を低減することができると共に、走行部2を油圧変速から定速駆動に切換えるときのショックなど、作業者が感じるショックを緩和させることができ、取扱い性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】コンバインの斜視図。
【図2】同側面図。
【図3】同平面説明図。
【図4】前部機体の側面説明図。
【図5】同正面説明図。
【図6】駆動部の側面説明図。
【図7】同正面説明図。
【図8】同平面説明図。
【図9】同ミッションケースの駆動系統図。
【図10】同平面図。
【図11】同断面背面図。
【図12】前図の拡大図。
【図13】同拡大図。
【図14】エンジン出力系統図。
【図15】油圧回路図。
【図16】カウンタケースの駆動系統図。
【図17】同断面平面図。
【図18】同拡大図。
【図19】同断面側面図。
【図20】同外観正面図。
【図21】同平面図。
【図22】同側面図。
【図23】脱穀クラッチ部の平面図。
【図24】同背面図。
【図25】同部分図。
【図26】脱穀シリンダ部の断面図。
【図27】油路ベースの底面図。
【図28】同断面側面図。
【図29】刈取変速シリンダ部の断面図。
【図30】刈取定速シリンダ部の断面図。
【図31】フォーク軸部の断面背面図。
【図32】同説明図。
【図33】制御回路図。
【図34】前図の収穫作業制御フローチャート。
【図35】同車速制御フローチャート。
【図36】走行ポンプ出力線図。
【符号の説明】
【0067】
2 走行クローラ(走行部)
7 刈取部(作業部)
38 油圧走行ポンプ
39 油圧走行モータ
40 走行変速部材(油圧変速機構)
76 車速定速クラッチ(車速定速機構)
121 刈取定速機構(作業定速機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部及び作業部を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を直結させる車速定速機構と、作業部を定速駆動させる作業定速機構を設ける作業車において、作業最高速の手前で作業部を車速同調から定速駆動に移行させることを特徴とする作業車。
【請求項2】
作業部を車速同調から定速駆動に移行させたとき、車速を上げた後、走行部を油圧変速駆動から定速駆動に移行させることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
最高速付近からの車速の減速により、走行部を定速駆動から油圧変速駆動に切換えたとき、車速がさらに減速した後、作業部を定速駆動から車速同調に切換えることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
最高速手前以下の速度で、油圧変速機構の油圧ポンプの変速出力により、走行部を駆動すると共に、最高速付近で油圧変速機構の入力側と出力側を直結させる車速定速機構を設ける作業車において、車速が最高速の付近で走行部を油圧変速から定速駆動に移行させた後、油圧変速機構の油圧モータの出力調整をフリーにすることを特徴とする作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2007−247906(P2007−247906A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122908(P2007−122908)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【分割の表示】特願2002−266618(P2002−266618)の分割
【原出願日】平成14年9月12日(2002.9.12)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】